(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板は、単一の材料によって製造されたものに限られず、表面に膜が形成されるものが存在する。例えば、半導体製品を製造する為に用いられるSi基板は、Si単体で形成された製品だけでなく、Si基板の表面を酸化することにより、表面にSiO
2の膜が形成された製品等がある。
【0007】
ここで、表面にSiO
2等の膜を形成する過程で膜中に混入する不純物と、膜を形成後に膜の表面に付着する不純物とが存在する。不純物の混入を少なくするためには、膜中に存在する不純物と、膜の表面に存在する不純物と、を個別に知る必要がある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のような蛍光X線分析システムや、当該蛍光X線分析システムに上記特許文献2のような基板処理装置を組み合わせた蛍光X線分析システムは、膜中に存在する不純物と、膜の表面に存在する不純物と、を個別に分析することはできなかった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、膜中に存在する不純物と、膜の表面に存在する不純物と、を個別に分析することができる基板汚染分析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の基板汚染分析システムは、第1基板の表面に形成された膜と反応する気体に曝して、前記膜を溶解する気相分解装置と、前記膜が溶解される前に被測定物を第1測定位置に移動させる第1回収動作と、前記膜が溶解された後に前記被測定物を第2測定位置に移動させる第2回収動作と、を行う回収装置と、前記回収装置が前記第1回収動作及び前記第2回収動作を行うごとに、前記被測定物を分析する分析装置と、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の基板汚染分析システムは、請求項1に記載の基板汚染分析システムにおいて、前記被測定物は、前記膜の表面に存在する第1被測定物と、前記膜の中に存在する第2被測定物と、を含み、前記第1回収動作によって移動される前記被測定物は、前記第1被測定物を含み、前記第2回収動作によって移動される前記被測定物は、前記第2被測定物を含み、前記分析装置は、前記第1被測定物と前記第2被測定物を個別に分析する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の基板汚染分析システムは、請求項2に記載の基板汚染分析システムにおいて、前記分析装置は、前記第1基板に対し1次X線を全反射角未満の入射角で照射し、出射された蛍光X線に基づいて前記被測定物を分析する全反射型の蛍光X線分析装置であって、前記回収装置は、前記第1被測定物を前記膜の上の前記第1測定位置に移動させる前記第1回収動作を行い、前記蛍光X線分析装置は、前記第1被測定物に1次X線を照射して前記第1被測定物を分析し、前記気相分解装置は、前記膜の表面に前記第1被測定物が存在する状態で前記膜を溶解し、前記回収装置は、前記膜が溶解された後、前記第1被測定物とともに前記第2被測定物を前記第1基板表面の前記第2測定位置に移動させる前記第2回収動作を行い、前記蛍光X線分析装置は、前記第1被測定物とともに前記第2被測定物に1次X線を照射し、前記第1被測定物及び第2被測定物をあわせて分析し、該分析の結果から前記第1被測定物の分析結果を差し引いて前記第2被測定物の分析結果を算出する、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の基板汚染分析システムは、請求項3に記載の基板汚染分析システムにおいて、前記第1測定位置と前記第2測定位置は、前記第1基板上の同じ位置であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の基板汚染分析システムは、請求項2に記載の基板汚染分析システムにおいて、前記回収装置は、前記第1被測定物を前記第1基板とは異なる第2基板表面の前記第1測定位置に移動させる前記第1回収動作を行い、前記気相分解装置は、前記膜の表面から前記第1被測定物が除去された状態で前記膜を溶解し、前記回収装置は、前記膜が溶解された後、前記第2被測定物を前記第1基板表面の前記第2測定位置に移動させる前記第2回収動作を行い、前記蛍光X線分析装置は、前記回収装置が前記第2回収動作を行う間に前記第1被測定物を分析し、前記回収装置が前記第2回収動作を行った後に前記第2被測定物を分析する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の基板汚染分析システムは、請求項2に記載の基板汚染分析システムにおいて、前記回収装置は、前記第1被測定物を前記第1基板とは異なる第2基板表面の前記第1測定位置に移動させる前記第1回収動作を行い、前記気相分解装置は、前記膜の表面から前記第1被測定物が除去された状態で前記膜を溶解し、前記回収装置は、前記膜が溶解された後、前記第2被測定物を前記第2基板表面の前記第2測定位置に移動させる前記第2回収動作を行い、前記蛍光X線分析装置は、前記第2基板の表面に移動された前記第1被測定物及び前記第2被測定物に対してそれぞれ個別に1次X線を照射し、前記第1被測定物及び第2被測定物を個別に分析する、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の基板汚染分析システムは、請求項1乃至6のいずれかに記載の基板汚染分析システムにおいて、前記回収装置は、前記被測定物を取り込む液滴を滴下する滴下口と、滴下された前記液滴の周囲に気体を吹き付ける噴出口と、を有するノズルを有することを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の基板汚染分析システムは、請求項7に記載の基板汚染分析システムにおいて、前記回収装置は、前記被測定物を回収した液滴を移動する際に、前記液滴を保持する液滴保持部を有することを特徴とする。
【0018】
請求項9に記載の基板汚染分析システムは、請求項7または8に記載の基板汚染分析システムにおいて、前記第1回収動作において前記回収装置が滴下する液滴は硝酸を含む溶液であって、前記第2回収動作において前記回収装置が滴下する液滴はフッ化水素酸を含む溶液であることを特徴とする。
【0019】
請求項10に記載の基板汚染分析システムは、請求項1または2に記載の基板汚染分析システムにおいて、前記分析装置は、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1乃至4、8及び9に記載の発明によれば、膜中に存在する不純物と、膜の表面に存在する不純物と、を個別に分析することができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明によれば、分析に要する時間を短縮することができる。
【0022】
また、請求項6に記載の発明によれば、基板を再度利用する場合に、再処理を行う手間を省くことができる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明によれば、回収動作を行う際に、液滴が基板上に残留することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施形態]
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、第1の実施形態という)を説明する。
図1(a)は、本発明に係る基板汚染分析システム100を上面から見た図である。
図1(b)は、本発明に係る基板汚染分析システム100を側面から見た図である。基板汚染分析システム100は、搬送装置102と、気相分解装置104と、回収装置106と、蛍光X線分析装置108と、を有する。
【0026】
なお、
図1に示した配置レイアウトは一例に過ぎず、他の配置レイアウトであってもよい。例えば、
図1に示した基板汚染分析システム100に含まれる分析装置は、蛍光X線分析装置108であるが、蛍光X線分析装置108に代えて、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置を設ける構成としてもよい。誘導結合プラズマ質量分析装置及び原子吸光分光分析装置の詳細については、従来技術と同様であるため説明を省略する。
【0027】
搬送装置102は、測定対象となる基板を搬送する。具体的には、例えば、搬送装置102は、高さを変化できる台座部110と、台座部110を移動させるレール部112と、基板を載置するハンド部114と、伸縮する伸縮部116と、とを有する。搬送装置102は、台座部110と、レール部112と、伸縮部116が動作することにより、基板を気相分解装置104と、回収装置106と、蛍光X線分析装置108と、の間で搬送する。基板には、後述する第1基板602と第2基板604が含まれる。
【0028】
図2(a)は、気相分解装置104を上面から見た図である。
図2(b)は、気相分解装置104を側面から見た図である。気相分解装置104は、気相分解室202と、シャッター204と、基板載置台206と、導入管208と、排出管210と、を有する。気相分解室202は、例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ酸により腐食しない材料で形成される。
【0029】
シャッター204は、搬送装置102が配置された部屋と接する面に設けられた搬入口に配置される。シャッター204は、基板を気相分解装置104に搬入または搬出する際に開閉される。基板載置台206は、搬送装置102によって搬送された基板が載置される。導入管208は、基板の表面に形成された膜を溶解する気体等を、気相分解室202に導入する。排出管210は、当該気体を気相分解室202から排出する。
【0030】
ここで、第1基板602(
図6参照)は、測定対象である基板である。例えば、第1基板602は、表面にSiO
2等の膜が形成されたSi基板である。当該Si基板は、分析対象である被測定物が含まれる。被測定物は、膜の表面に存在する第1被測定物608(
図6参照)と、膜の中に存在する第2被測定物610と、を含む。具体的には、例えば、第1被測定物608は、Si基板の上にSiO
2膜を形成した後に、SiO
2膜の表面に付着した不純物である。また、第2被測定物610(
図6参照)は、SiO
2等を形成する過程でSiO
2の膜中に混入した不純物である。第1被測定物608及び第2被測定物610は、例えばFeやNi等である。
【0031】
気相分解装置104は、第1基板602の表面に形成された膜と反応する気体に曝して、膜を溶解する。例えば、気相分解装置104は、当該Si基板をフッ化水素に曝して、表面のSiO
2膜を溶解する。当該化学反応は、下記化学式で表される。
【化1】
【0032】
具体的には、まず、シャッター204が開けられる。第1基板602は、搬送装置102によって搬入口から気相分解室202に搬送され、基板載置台206に載置される。シャッター204は、ハンド部114が搬入口の外に移動した後、閉じられる。その後、導入管208を介して気相分解室202にフッ酸が導入される。当該フッ酸は、第1基板602の表面に形成されたSiO
2等の膜を溶解する。膜が溶解された後、排出管210を介してフッ酸が排出される。
【0033】
図3(a)は、回収装置106を上面から見た図である。
図3(b)は、回収装置106を側面から見た図である。回収装置106は、膜が溶解される前に被測定物を第1測定位置に移動させる第1回収動作と、膜が溶解された後に被測定物を第2測定位置に移動させる第2回収動作と、を行う。第1回収動作によって移動される被測定物は、第1被測定物608を含み、第2回収動作によって移動される被測定物は、第2被測定物610を含む。
【0034】
回収装置106は、回収室302と、保管室304と、を有する。回収室302には、シャッター306と、回転台308と、回収部310と、乾燥部312と、配管314と、が配置される。保管室304には、配管314と、液体容器316と、調整弁320と、ポンプ322と、が配置される。なお、
図3では、回収室302と保管室304が隣接して配置されているが、保管室304は回収室302と離れた場所であってもよい。また、保管室304を設けない構成としてもよい。
【0035】
シャッター306は、搬送装置102が配置された部屋と接する面に設けられた搬入口に配置される。シャッター306は、基板を回収室302に搬入または搬出する際に開閉される。回転台308は、基板を水平面内で回転させる。基板は、回転台308の回転軸に中心を合わせて載置される。
【0036】
回収部310は、基板に液滴を滴下するとともに、滴下された液滴を基板面上で移動させて、被測定物を液滴中に取り込む。回収部310は、液滴に被測定物を回収した後、基板の予め設定した位置で液滴をノズル326から離す。これにより、被測定物が取り込まれた液滴が基板上の所定の位置に残される。
【0037】
具体的には、回収部310は、回収アーム324と、ノズル326と、液滴保持部410と、を含んで構成される。回収アーム324は、先端部にノズル326が取り付けられ、ノズル326と接続された配管314が配置される。回収アーム324は、ノズル326が液滴を保持した状態で、液滴を基板の中心から基板端部に向かって移動させる。回収アーム324が液滴を移動させる際、回転台308が基板を回転させることで、液滴は基板全体に付着した被測定物を取り込む。
【0038】
図4は、ノズル326近傍を概略的に示す断面図である。ノズル326は、筐体402と、滴下口404と、吸い込み口406と、噴出口408と、を含んで構成される。筐体402は、滴下口404と、吸い込み口406と、噴出口408と、を有する。
【0039】
滴下口404は、配管314と接続され、液体容器316から供給された液滴を基板に滴下する。当該液滴は、被測定物を取り込む。例えば、第1回収動作において回収装置106が滴下する液滴は硝酸が含まれる溶液である。また、第2回収動作において回収装置106が滴下する液滴はフッ化水素酸溶液が含まれる溶液である。なお、滴下口404の先端は、筐体402の基板と対する面から離れて配置される。これにより、滴下された後にノズル326に保持された液滴が、滴下口404と接触することを防止できる。
【0040】
吸い込み口406は、液滴保持部410及び配管314を介してポンプ322と接続される。吸い込み口406は、被測定物を取り込んだ液滴を吸い上げる。吸い上げられた液滴は、液滴保持部410によって保持される。液滴保持部410は、被測定物を回収した液滴を第1基板602から第2基板604に移動する際に、液滴を保持する。液滴保持部410は、例えばシリンジである。
【0041】
噴出口408は、滴下された液滴の周囲に気体を吹き付ける。具体的には、噴出口は、筐体402の中心を囲うように配置され、滴下された液滴の周囲に窒素等の気体を吹き付ける。これにより、基板の濡れ性が高い場合であっても、ノズル326が移動する際に、被測定物を取り込んだ液滴がノズル326から離れてしまう事態を防止する。
【0042】
乾燥部312は、液滴を乾燥させ、被測定物を基板の表面上に保持させる。具体的には、例えば、乾燥部312は、ハロゲンランプであり、乾燥部移動手段(図示なし)により液滴上に配置される。乾燥部312は、ノズル326から離された液滴を加熱し、乾燥させる。基板の液滴が乾燥された領域には、測定対象である被測定物が残される。
【0043】
なお、蛍光X線分析装置108に代えて、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置を設ける構成とする場合には、被測定物は、液体のまま容器(図示なし)に移され、分析装置に搬送される。当該容器は、例えばバイアルである。当該構成とする場合、回収装置106は、乾燥部312を有しない構成としてもよい。
【0044】
液体容器316は、ノズル326に供給する液体が入れられる。具体的には、液体容器は316、保管室304に2個配置される。当該2個の液体容器316には、異なる2種類の液体が入れられる。例えば、液体容器316の一方は、硝酸を含む溶液が入れられる。また、液体容器316の他方は、フッ化水素酸溶液を含む溶液が入れられる。液体容器316は、配管314を介して外部から圧力を加えられることにより、内部の液体をノズル326に供給する。調整弁320は、ノズル326に気体または液体を供給する各配管314に備えられ、ノズル326に供給する液体または気体の量を調節する。
【0045】
配管314は、ノズル326と、液体容器316またはポンプ322とを接続する。また、配管は、ノズル326と、回収装置106の外部に配置された気体容器(図示なし)とを接続する。具体的には、配管314の片側の端部はノズル326の滴下口404と接続され、他方の端部は、分岐して硝酸及びフッ化水素酸溶液が入った液体容器316と接続される。また、配管314は、液滴保持部410とポンプ322を接続する。さらに、配管314は、噴出口408と、窒素が封入された気体容器と、を接続する。
【0046】
ポンプ322は、配管314及び液滴保持部410内部の気圧を制御することにより、基板に滴下された液滴を液滴保持部410内に吸い上げる。これにより、液滴は、液滴保持部410に保持される。
【0047】
蛍光X線分析装置108は、回収装置106が第1回収動作及び第2回収動作を行うごとに、被測定物に1次X線を照射し、出射された蛍光X線に基づいて被測定物を分析する。第1の実施形態における蛍光X線分析装置108は、第1基板602に対し1次X線を全反射角未満の入射角で照射して全反射させる全反射型の蛍光X線分析装置108である。
【0048】
蛍光X線分析装置108は、試料台118と、X線源120と、検出器122と、計数器124と、分析部126と、を有する。試料台118は、測定対象となる試料が載置される。具体的には、
図1に示すように、基板は、測定面を上側にして、試料台118に載置される。
【0049】
X線源120は、蛍光X線を発生させる1次X線を、基板の表面に照射する。具体的には、X線源120は、基板の表面に配置された第1被測定物608又は第2被測定物610に1次X線を照射する。2次X線が照射された第1被測定物608又は第2被測定物610は、蛍光X線を出射する。
【0050】
検出器122は、Si(Li)またはSDD等の検出器である。具体的には、検出器122は、蛍光X線の強度を測定し、測定した蛍光X線のエネルギーに応じた波高値を有するパルス信号を出力する。
【0051】
計数器124は、検出器122の測定強度として出力されるパルス信号を、波高値に応じて計数する。具体的には、例えば、計数器124は、マルチチャンネルアナライザであって、検出器122の出力パルス信号を、蛍光X線のエネルギーに対応した各チャンネル毎に計数し、蛍光X線の強度として出力する。なお、蛍光X線を分光する場合には、分光された蛍光X線を測定する検出器122の出力を取得する計数器124は、分光されたエネルギーに対応する波高値範囲のみのパルス信号を計数するシングルチャンネルアナライザであってもよい。
【0052】
分析部126は、計数器124の計数結果から、試料に含まれる元素を定量分析する。具体的には、例えば、分析部126は、計数器124の計数結果を用い、検量線法やFP(ファンダメンタルパラメータ)法により定量分析する。
【0053】
ここで、分析部126は、第1被測定物608と第2被測定物610を個別に分析する。第1の実施形態においては、分析部126は、膜の表面に存在する第1被測定物608に1次X線を照射し、第1被測定物608を分析する。さらに、分析部126は、第1基板602の表面に存在する第1被測定物608とともに第2被測定物610に1次X線を照射し、第1被測定物608及び第2被測定物610をあわせて分析する。該分析結果から第1被測定物608の分析結果を差し引いて第2被測定物610の分析結果を算出する。
【0054】
続いて、第1の実施形態における基板汚染分析システム100が行う処理について、
図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお、
図6(a)に示すように、第1基板602は、SiO
2膜が表面に形成されたSi基板であって、SiO
2膜の表面に第1被測定物608が存在し、SiO
2膜の中に第2被測定物610が存在するものとする。また、初期状態として、第1基板602が、搬送装置102が備えられた搬送室に隣接する準備室に載置されているものとして説明する。
【0055】
まず、搬送装置102は、第1基板602を回収装置106に搬送する(S501)。具体的には、搬送装置102は、準備室に載置されている第1基板602を回収装置106の回転台308に搬送する。
【0056】
回収装置106は、第1被測定物608を膜の上の第1測定位置に移動する(第1回収動作)(S502)。具体的には、回収装置106は、ノズル326の滴下口404から硝酸を含む溶液を滴下し、回収アーム324を動かしながら回転台308を回転させる。これにより、滴下された硝酸を含む液滴にSiO
2膜606の表面に付着した第1被測定物608が取り込まれる。液滴は、第1測定位置においてノズル326が離される。その後、乾燥部312が液滴を乾燥することにより、第1被測定物608が第1基板602上の第1測定位置に残される。
【0057】
搬送装置102は、第1基板602を蛍光X線分析装置108に搬送する(S503)。具体的には、搬送装置102は、第1基板602を回収装置106から蛍光X線分析装置108の試料台118に搬送する。
【0058】
蛍光X線分析装置108は、第1被測定物608に1次X線を照射して第1被測定物608を分析する(S504)。具体的には、
図6(b)に示すように、全反射型の蛍光X線分析装置108は、第1基板602の第1測定位置に、低入射角で1次X線を照射する。ここで、1次X線は、第1基板602に対して低入射角で照射されるため、SiO
2膜606の表面で全反射される。従って、1次X線は、SiO
2膜606の内部に進入しないため、SiO
2膜606の中に存在する第2被測定物610からは蛍光X線は出射されない。検出器122は、第1被測定物608から出射した蛍光X線の強度を測定し、パルス信号を計数器124に出力する。分析部126は、計数器124の出力に基づいて第1被測定物608に含まれる元素を分析する。例えば、分析部126は、第1被測定物608には、3.0×10
10atom/cm
2のFe元素と、1.5×10
10atom/cm
2のNi元素と、が含まれる旨の分析結果を取得する。
【0059】
なお、誘導結合プラズマ質量分析装置を設ける構成の場合には、誘導結合プラズマ質量分析装置は、アルゴンプラズマ中に霧化された第1被測定物608を導入する。そして、誘導結合プラズマ質量分析装置は、第1被測定物608に含まれる励起された原子が低いエネルギー準位に戻るときに放出される発光線(スペクトル線)を測定することで、第1被測定物608中の元素の分析を行う。また、原子吸光分光分析装置を設ける構成の場合には、原子吸光分光分析装置は、霧化された第1被測定物608に光を照射し、その吸収スペクトルを測定することで、第1被測定物608中の元素の分析を行う。
【0060】
搬送装置102は、第1基板602を気相分解装置104に搬送する(S505)。具体的には、搬送装置102は、第1基板602を蛍光X線分析装置108から気相分解装置104の基板載置台206に搬送する。
【0061】
気相分解装置104は、膜の表面に第1被測定物608が存在する状態で膜を溶解する(S506)。具体的には、
図7(a)に示すように、気相分解装置104は、気相分解室202にフッ酸を導入し、SiO
2膜606の表面に第1被測定物608が存在する状態でSiO
2膜606を溶解する。これにより第1基板602の表面には、第1被測定物608と、SiO
2膜606に含まれていた第2被測定物610が残される。
【0062】
搬送装置102は、第1基板602を回収装置106に搬送する(S507)。具体的には、搬送装置102は、第1基板602を気相分解装置104から回収装置106の回転台308に搬送する。
【0063】
回収装置106は、膜が溶解された後、第1被測定物608とともに第2被測定物610を第1基板602表面の第2測定位置に移動する(第2回収動作)(S508)。具体的には、回収装置106は、ノズル326の滴下口404からフッ化水素酸溶液を含む溶液を滴下し、回収アーム324を動かしながら回転台308を回転させる。これにより、滴下されたフッ化水素酸溶液を含む液滴にSiO
2膜606の表面に付着した第1被測定物608及びSiO
2膜606の中に含まれていた第2被測定物610が取り込まれる。液滴は、第2測定位置においてノズル326が離される。その後、乾燥部312が液滴を乾燥することにより、第1被測定物608及び第2被測定物610が第1基板602上の第2測定位置に残される。
【0064】
なお、第1測定位置と第2測定位置は、第1基板上の同じ位置であってもよい。また、第1測定位置と第2測定位置は、第1基板上の異なる位置であってもよい。
【0065】
搬送装置102は、第1基板602を蛍光X線分析装置108に搬送する(S509)。具体的には、搬送装置102は、第1基板602を回収装置106から蛍光X線分析装置108の試料台118に搬送する。
【0066】
蛍光X線分析装置108は、第1基板602の表面に存在する第1被測定物608とともに第2被測定物610に1次X線を照射し、第1被測定物608及び第2被測定物610をあわせて分析する(S510)。具体的には、全反射型の蛍光X線分析装置108は、第1基板602の第2測定位置に、1次X線を照射する。ここで、
図7(b)に示すように、第2測定位置には、第1被測定物608と第2被測定物610が混合された状態で存在する。その為、分析部126は、第1被測定物608及び第2被測定物610に含まれる元素をあわせて分析する。例えば、分析部126は、第1被測定物608及び第2被測定物610には、5.0×10
10atom/cm
2のFe元素と、2.5×10
10atom/cm
2のNi元素と、が含まれる旨の分析結果を取得する。なお、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置を設ける構成とする場合も同様の分析結果を取得する。
【0067】
蛍光X線分析装置108は、上記分析結果から第1被測定物608の分析結果を差し引いて第2被測定物610の分析結果を算出する(S511)。具体的には、分析部126は、S510のステップで得た分析結果から、S504のステップで得た分析結果を差し引く演算を行う。その結果、分析部126は、第2被測定物610には、2.0×10
10atom/cm
2のFe元素と、1.0×10
10atom/cm
2のNi元素と、が含まれる旨の分析結果を取得する。誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置を設ける構成とする場合も、同様の演算によって、分析結果を取得する。
【0068】
なお、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置を設ける構成とする場合、S502のステップの後、第1被測定物608は液体のまま容器(図示なし)に移され、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置に導入される。また、S508のステップの後、第2被測定物610は液体のまま容器(図示なし)に移され、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置に導入される。これにより、第1被測定物608と、膜の中に存在する第2被測定物610を個別に分析することができる。
【0069】
以上により、第1基板602のSiO
2膜606の表面に存在する第1被測定物608と、SiO
2膜606の中に存在する第2被測定物610を個別に分析することができる。
【0070】
[第2の実施形態]
続いて、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態及び後述する第3の実施形態における基板汚染分析システム100の構成は、
図1乃至
図4に示す第1の実施形態における構成と同様であるため説明を省略する。また、第2及び第3の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、基板汚染分析システム100に含まれる分析装置は、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置であってもよい。
【0071】
第2及び第3の実施形態においては、第1基板602は、第1の実施形態と同様であるものとする。また、第2基板604は、Si基板であるとする。さらに、第1基板602及び第2基板604が、搬送装置102が備えられた搬送室に隣接する準備室に載置されているものとして説明する。
【0072】
図8は、第2の実施形態における基板汚染分析システム100が行う処理を示すフローチャートである。まず、搬送装置102は、第1基板602を回収装置106に搬送する(S801)。
【0073】
回収装置106は、第1被測定物608を液滴保持部410に保持する(S802)。具体的には、第1の実施形態と同様に、回収装置106は、ノズル326の滴下口404から硝酸を含む溶液を滴下し、回収アーム324を動かしながら回転台308を回転させる。これにより、滴下された硝酸を含む液滴にSiO
2膜606の表面に付着した第1被測定物608が取り込まれる。
図9(a)に示すように、ポンプ322は、配管314及び液滴保持部410内部の気圧を制御することにより、吸い込み口406を介して当該液滴を液滴保持部410内に吸い上げる。これにより、液滴は、液滴保持部410に保持される。なお、
図9(a)に示す吸い込み口406は、
図4に示すノズル326を簡略化して記載している。
【0074】
搬送装置102は、第1基板602を気相分解装置104に搬送する(S803)。また、搬送装置102は、第2基板604を回収装置106に搬送する(S804)。
【0075】
回収装置106は、第1被測定物608を第1基板602とは異なる第2基板604表面の第1測定位置に移動する(S805)。具体的には、回収装置106は、液滴保持部410に保持されていた液滴を、第2基板604表面の第1測定位置に滴下する。その後、乾燥部312が液滴を乾燥することにより、第1被測定物608が第2基板604上の第1測定位置に残される。これにより、
図9(b)に示すように、第1被測定物608は、第2基板604の第1測定位置に存在し、第2被測定物610は、第1基板602のSiO
2膜606の中に存在する状態となる。なお、S802乃至S805において回収装置106が行う動作が第1回収動作に相当する。
【0076】
その後、搬送装置102は、第2基板604を蛍光X線分析装置108に搬送する(S806)。
【0077】
蛍光X線分析装置108は、回収装置106が第2回収動作を行う間に、第2基板604の表面に移動された第1被測定物608を分析する(S807)。具体的には、
図10(a)に示すように、蛍光X線分析装置108は、第2基板604の第1測定位置に、1次X線を照射する。第1測定位置には第1被測定物608のみが存在するため、蛍光X線分析装置108は、第1被測定物608の分析結果を取得する。例えば、分析部126は、第1被測定物608には、3.0×10
10atom/cm
2のFe元素と、1.5×10
10atom/cm
2のNi元素と、が含まれる旨の分析結果を取得する。
【0078】
気相分解装置104は、膜の表面から第1被測定物608が除去された状態で膜を溶解する(S808)。具体的には、第1基板602のSiO
2膜606の表面に存在した第1被測定物608は、S802のステップにより、SiO
2膜606の表面から除去されている。この状態で、
図10(b)に示すように、気相分解装置104は、気相分解室202にフッ酸を導入し、SiO
2膜606を溶解する。これにより第1基板602の表面には、SiO
2膜606に含まれていた第2被測定物610が残される。
【0079】
搬送装置102は、第1基板602を回収装置106に搬送する(S809)。回収装置106は、膜が溶解された後、第2被測定物610を第1基板602表面の第2測定位置に移動する。(第2回収動作)(S810)。具体的には、回収装置106は、ノズル326の滴下口404からフッ化水素酸溶液を含む溶液を滴下し、回収アーム324を動かしながら回転台308を回転させる。これにより、滴下されたフッ化水素酸溶液を含む液滴にSiO
2膜606の中に含まれていた第2被測定物610が取り込まれる。液滴は、第2測定位置においてノズル326が離される。その後、乾燥部312が液滴を乾燥することにより、第2被測定物610が第1基板602上の第2測定位置に残される。
【0080】
S805乃至S807のステップと、S808乃至S810のステップは並行して行われる。これにより、時間のかかるステップであるSiO
2膜606を溶解するステップと、第1被測定物608を分析するステップと、を並行して実行できるため、全体の処理に要する時間を短縮できる。
【0081】
S807における分析が完了した後、搬送装置102は、第2基板604を準備室に搬送する(S811)。また、搬送装置102は、第1基板602を蛍光X線分析装置108に搬送する(S812)。
【0082】
蛍光X線分析装置108は、回収装置106が第2回収動作を行った後に、第1基板602の表面に移動された第1被測定物608を分析する。具体的には、
図11に示すように、蛍光X線分析装置108は、第1基板602の第2測定位置に、1次X線を照射する。第2測定位置には第2被測定物610のみが存在するため、蛍光X線分析装置108は、第2被測定物610の分析結果を取得する。例えば、分析部126は、第1被測定物608には、2.0×10
10atom/cm
2のFe元素と、1.0×10
10atom/cm
2のNi元素と、が含まれる旨の分析結果を取得する。
【0083】
以上により、第2の実施形態では、第1の実施形態と比較して短時間で、第1基板602の膜の表面に存在する第1被測定物608と、膜の中に存在する第2被測定物610を個別に分析することができる。
【0084】
なお、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置を設ける構成とする場合、S802のステップとS810のステップの後、第1被測定物608を含む液体と第2被測定物610を含む液体は、個別に容器(図示なし)に移され、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置に導入される。これにより、第1被測定物608と、膜の中に存在する第2被測定物610を個別に分析することができる。
【0085】
[第3の実施形態]
続いて、第3の実施形態について説明する。
図12は、第3の実施形態における基板汚染分析システム100が行う処理を示すフローチャートである。S1201乃至S1205のステップは、S801乃至S805のステップと同様であるため、説明を省略する。なお、S1202乃至S1205において回収装置106が行う動作が第1回収動作に相当する。その後、搬送装置102は、第2基板604を準備室に搬送する(S1206)。
【0086】
気相分解装置104は、膜の表面から第1被測定物608が除去された状態で膜を溶解する(S1207)。S1207のステップは、第2の実施形態におけるS808と同様である。膜を溶解後、搬送装置102は、第1基板602を回収装置106に搬送する(S1208)。
【0087】
回収装置106は、第2被測定物610を液滴保持部410に保持する(S1209)。具体的には、第2の実施形態におけるS802のステップと同様に、第2被測定物610が取り込まれたフッ化水素酸溶液を含む液滴を液滴保持部410内に吸い上げる。これにより、液滴は、液滴保持部410に保持される。
【0088】
次に、搬送装置102は、第1基板602を準備室に搬送する(S1210)。また、搬送装置102は、第2基板604を回収装置106に搬送する(S1211)。
【0089】
回収装置106は、膜が溶解された後、第2被測定物610を第2基板604表面の第2測定位置に移動する。(S810)。具体的には、回収装置106は、液滴保持部410に保持されていた液滴を、第2基板604表面の第2測定位置に滴下する。その後、乾燥部312が液滴を乾燥することにより、第2被測定物610が第2基板604上の第2測定位置に残される。なお、S1209乃至S1212において回収装置106が行う動作が第2回収動作に相当する。
【0090】
その後、搬送装置102は、第2基板604を蛍光X線分析装置108に搬送する(S1213)。
【0091】
蛍光X線分析装置108は、第2基板604の表面に移動された第1被測定物608及び第2被測定物610に対してそれぞれ個別に1次X線を照射し、第1被測定物608及び第2被測定物610を個別に分析する(S1214)。具体的には、
図13(a)に示すように、蛍光X線分析装置108は、第2基板604の第1測定位置に、1次X線を照射する。第1測定位置には第1被測定物608のみが存在するため、蛍光X線分析装置108は、第1被測定物608の分析結果を取得する。また、
図13(b)に示すように、蛍光X線分析装置108は、第2基板604の第2測定位置に、1次X線を照射する。第2測定位置には第2被測定物610のみが存在するため、蛍光X線分析装置108は、第2被測定物610の分析結果を取得する。
【0092】
以上により、第3の実施形態でも、第1及び第2の実施形態と同様に、第1基板602の膜の表面に存在する第1被測定物608と、膜の中に存在する第2被測定物610を個別に分析することができる。第3の実施形態によれば、第1基板602の表面に乾燥痕が残らない為、何ら処理をすることなく第1基板602を再利用することができる。
【0093】
なお、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置を設ける構成とする場合、S1202のステップとS1209のステップの後、第1被測定物608を含む液体と第2被測定物610を含む液体は、個別に容器(図示なし)に移され、誘導結合プラズマ質量分析装置または原子吸光分光分析装置に導入される。これにより、第1被測定物608と、膜の中に存在する第2被測定物610を個別に分析することができる。
【0094】
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。蛍光X線分析装置108等の構成は一例であって、これに限定されるものではない。上記の実施例で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成する構成で置き換えてもよい。