(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547302
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】クーラントゴミ回収装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20190711BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20190711BHJP
B01D 17/00 20060101ALI20190711BHJP
C02F 1/24 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
B23Q11/10 E
B01D17/00 503A
C02F1/24 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-7840(P2015-7840)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-132066(P2016-132066A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 計史
(72)【発明者】
【氏名】小林 真樹
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 正輝
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−268244(JP,A)
【文献】
特開2001−137743(JP,A)
【文献】
特開2011−045836(JP,A)
【文献】
特開2001−149716(JP,A)
【文献】
特開2005−177965(JP,A)
【文献】
特開2003−175437(JP,A)
【文献】
特開2006−043820(JP,A)
【文献】
特開2001−310236(JP,A)
【文献】
米国特許第06391198(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00,11/10,
B01D 17/00,
C02F 1/20−1/26,1/30−1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンタンクから金属加工機にクーラントを供給し、その金属加工機から排出されたクーラントをマグネットセパレータに導入して金属ゴミを分離すると共に金属ゴミを分離したクーラントをダーティータンクに導入し、前記ダーティータンクでクーラントをダーティークーラントとクリーンクーラントとに分離すると共に、クリーンクーラントを前記クリーンタンクに供給するためのクーラントゴミ回収装置であって、
前記ダーティータンクと前記クリーンタンクとの間に設けられ、前記ダーティータンクからのクリーンクーラントから油分を分離回収する油水分離器を備え、
前記油水分離器は、前記クリーンクーラントを溜める油分離槽と、前記油分離槽の一側に設けられた前記クリーンクーラントの入口と、前記油分離槽の他側に設けられた前記クリーンクーラントの出口と、前記油分離槽内に上下に互い違いに設けられ、前記油分離槽の一側から他側に流れる前記クリーンクーラントの流れを上下に蛇行させるための第1上側仕切り板、下側仕切り板及び第2上側仕切り板と、前記油分離槽内のクリーンクーラントの液面に浮上した油分を回収する油回収管とを備え、
前記第1上側仕切り板と前記下側仕切り板と前記第2上側仕切り板は、上下に延びると共に、前記油分離槽の一側から他側に向かう第1方向において順番にかつ間隔を隔てて配置され、
前記第1上側仕切り板と前記第2上側仕切り板は、前記油分離槽の底面と離間された下端と、前記液面の下方から上方に延びる上部とを有し、
前記下側仕切り板は、その上下の中間部分であって前記液面より下方に位置された切欠と、前記切欠の上方に形成され前記液面の下方から上方に延びる上部とを有し、
前記第1上側仕切り板及び前記下側仕切り板間の間隔と、前記下側仕切り板及び前記第2上側仕切り板間の間隔と、前記第1上側仕切り板及び前記油分離槽の底面間の間隔と、前記切欠の高さと、前記第2上側仕切り板及び前記油分離槽の底面間の間隔とが、同じに設定され、
前記油分離槽の一側と前記第1上側仕切り板の上部との間に、浮上した油分が溜まる第1油溜め部が形成され、
前記第1上側仕切り板の上部と前記下側仕切り板間の上部との間に、浮上した油分が溜まる第2油溜め部が形成され、
前記下側仕切り板間の上部と前記第2上側仕切り板の上部との間に、浮上した油分が溜まる第3油溜め部が形成され、
前記第1油溜め部、前記第2油溜め部及び前記第3油溜め部のそれぞれに、前記油回収管が配置されている
ことを特徴とするクーラントゴミ回収装置。
【請求項2】
前記油分離槽の一側には、上部が側方に突出する拡幅部が設けられ、
前記拡幅部には、前記入口が設けられ、前記入口には、クリーンクーラントを前記油分離槽内に供給するための吸引ポンプが設けられ、前記吸引ポンプの吐出口は、上方に向けられてクリーンクーラントを前記液面に向けて吐出し、前記拡幅部内に供給されたクリーンクーラントの流れの勢いを弱めるための邪魔板が、前記拡幅部の基端に位置して設けられ、
前記邪魔板は、上下に延びて形成されると共に、上端が前記液面から下方に離間され、かつ、下端が前記油分離槽の側面及び前記拡幅部から離間するように配置された
請求項1に記載のクーラントゴミ回収装置。
【請求項3】
前記第1上側仕切り板と前記邪魔板との間の位置に前記油回収管が配設された請求項2に記載のクーラントゴミ回収装置。
【請求項4】
前記油回収管は案内管を介して油回収槽に接続され、前記油回収槽には、オイルスキマーが設けられ、
前記油回収槽には、前記油回収槽で油分が回収されたクーラントからさらに油分を分離する分離槽が接続された請求項1から3のいずれか一項に記載のクーラントゴミ回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工機から排出されるクーラントから金属ゴミ等のゴミを回収するクーラントゴミ回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属加工機から排出されたクーラントから金属ゴミ等のゴミを回収するクーラントゴミ回収装置としては、金属加工機からのクーラントを、マグネットセパレータ及びダーティータンクに通して金属ゴミ等のゴミを回収したのち、ゴミを回収したクーラントをクリーンタンクに供給し、クリーンタンクから金属加工機に再供給するものが知られている。
【0003】
かかるクーラントゴミ回収装置では、ダーティータンク内で水流を発生させ、ゴミを中心に集めて回収するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−328309号公報
【特許文献2】特開2014−014731号公報
【特許文献3】実開平07−017389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ダーティータンクは、水流を発生させるものであるため、油分は浮上せず、油分を回収することはできないという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、クーラントから油分を良好に分離回収できるクーラントゴミ回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、クリーンタンクから金属加工機にクーラントを供給し、その金属加工機から排出されたクーラントをマグネットセパレータに導入して金属ゴミを分離すると共に金属ゴミを分離したクーラントをダーティータンクに導入し、前記ダーティータンクでクーラントをダーティークーラントとクリーンクーラントとに分離すると共に、クリーンクーラントを前記クリーンタンクに供給するためのクーラントゴミ回収装置であって、前記ダーティータンクと前記クリーンタンクとの間に、前記ダーティータンクからのクリーンクーラントから油分を分離回収する油水分離器を設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクーラントゴミ回収装置によれば、クーラントから油分を良好に分離回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るクーラントゴミ回収装置の要部拡大図である。
【
図2】クーラントゴミ回収装置の全体説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図2に示すように、クーラントゴミ回収装置1は、研磨機、旋盤等の金属加工機2に接続され金属加工機2から排出された水等からなるクーラントから金属ゴミを分離するマグネットセパレータ3と、マグネットセパレータ3から排出されたクーラントをダーティークーラントとクリーンクーラントとに分離すると共にダーティークーラントをマグネットセパレータ3に供給するダーティータンク4と、ダーティータンク4から排出されたクリーンクーラントを収容すると共に金属加工機2に供給するクリーンタンク5とを備える。
【0012】
ダーティータンク4には、ダーティークーラント、すなわち、ゴミを含むクーラントを取り出すためのダーティー流路8が接続されると共に、クリーンクーラントを取り出すためのクリーン流路10が接続されている。
【0013】
ダーティー流路8は、マグネットセパレータ3に接続されている。ダーティー流路8には、ダーティータンク4からダーティークーラントを吸い込むダーティーポンプ12が接続されている。
【0014】
クリーン流路10は、クリーンタンク5を介して金属加工機2に接続されている。クリーンタンク5、金属加工機2間のクリーン流路10には、クリーンタンク5からクーラントを吸い込んで金属加工機2に供給する供給ポンプ(図示せず)が設けられている。
【0015】
また、ダーティータンク4、クリーンタンク5間のクリーン流路10には、クリーンクーラントから油分を分離回収するトラップ式の油水分離器13が設けられている。
【0016】
図1に示すように、油水分離器13は、クリーンクーラントを溜める第一油分離槽14と、第一油分離槽14内に設けられた複数の仕切り板15a、15bと、油分を回収するための油回収管16とを備える。
【0017】
第一油分離槽14は、箱形に形成されている。第一油分離槽14の一側には、上部のみが側方に突出する拡幅部17が設けられており、拡幅部17には、クリーンクーラントの入口18が設けられると共に、拡幅部17内に供給されたクリーンクーラントの流れの勢いを弱めるための邪魔板19が拡幅部17の基端に位置して設けられている。邪魔板19は、上下に延びて形成されると共に、上端がクーラントの液面から下方に離間され、かつ、下端が第一油分離槽14の側面及び拡幅部17から離間するように配置されている。また、第一油分離槽14の入口18には、ダーティータンク4からクリーンクーラントを吸引して第一油分離槽14内に供給するための吸引ポンプ20が設けられている。吸引ポンプ20は、吐出口21がクリーンクーラント内に位置するように拡幅部17の底面22に取り付けられている。拡幅部17の底面22は、第一油分離槽14の他側方向に向かうにつれて下がるように傾斜されている。吸引ポンプ20の吐出口21は、上方に向けられており、クリーンクーラントを液面に向けて吐出するようになっている。また、第一油分離槽14の他側には、クリーンクーラントの出口23が設けられている。これにより、第一油分離槽14は、一側から供給されるクリーンクーラントを溜めつつ他側に流すようになっている。第一油分離槽14の出口23は、クリーンタンク5側のクリーン流路10に接続されている。
【0018】
仕切り板15a、15bは、第一油分離槽14の一側から他側に流れるクリーンクーラントの流れを上下に蛇行させるためのものであり、第一油分離槽14の一側と他側との間に上下に互い違いに設けられている。仕切り板15a、15bには、上下に延びると共に下端が第一油分離槽14の底面と離間される上側仕切り板15aと、上側仕切り板15a間に上下に延びて配置され、上下の中間が切り欠かれた下側仕切り板15bとがある。上側仕切り板15a及び下側仕切り板15bは、第一油分離槽14内のクーラントの液面24よりも上方に延びるように形成されており、上側仕切り板15aと下側仕切り板15bとの間には、浮上した油分が溜まる油溜め部25が形成される。また、仕切り板15a、15bは、上側仕切り板15aと下側仕切り板15bとの間隔Aと、上側仕切り板15aと第一油分離槽14の底面との間隔Bと、下側仕切り板15bの切欠の高さCとは全て同じとなるように配置されており、吸引ポンプ20から出口23までの間に形成されるクーラントの流路が全長に亘って同じ断面積となっている。
【0019】
油回収管16は、油溜め部25のそれぞれに上下に延びて配設される。また、油回収管16の上部には、上方に向かうにつれて拡径する落とし管部26が設けられている。落とし管部26は、上端の開口がクーラントの液面24近傍かつ液面24より若干低い位置で開口している。これにより、油溜め部25の液面24に浮上した油分が少量のクーラントと共に落とし管部26に流れ込むようになっている。それぞれの油回収管16の下端は、水平方向に延びる案内管27に接続されている。案内管27は油回収槽28に接続されている。
【0020】
油回収槽28は、第一油分離槽14で分離された油分濃度の高いクーラントから油分を回収するためのものであり、上下に長く形成されている。案内管27は、油回収槽28の上方から油回収槽28に挿入して接続されている。油回収槽28には、回転するスクリュー(図示せず)で油分を回収するオイルスキマー29が設けられている。なお、オイルスキマー29は、循環するベルトで油を回収するタイプであってもよく、他のタイプであってもよい。また、油回収槽28の下部には、油分と分離されたクーラントを第二分離槽30に供給するためのクーラント回収管31が接続されている。
【0021】
第二分離槽30は、油回収槽28で油分が回収されたクーラントからさらに油分を分離するためのものであり、上下に長く形成されている。第二分離槽30内には、クーラントが頂部近傍まで溜められる。クーラント回収管31は、第二分離槽30の下部から第二分離槽30内に挿入されると共に第二分離槽30内で上方に延び、上端がクーラントの液面近傍かつ液面より下方で開口するように配管されている。また、第二分離槽30には、第二分離槽30でさらに油分と分離されたクーラントをダーティータンク4に供給するためのクーラント戻し管32が、クーラント回収管31の上端開口より下方に位置して接続されている。
【0023】
クリーンタンク5に溜められたクーラントは、金属加工機2に供給される。金属加工機2から排出された使用済みのクーラントは、マグネットセパレータ3に導入されクーラントから削りかすや研磨かす等の金属ゴミが回収される。この後、金属ゴミが分離回収されたクーラントは、ダーティータンク4に導入され、ゴミを含むダーティークーラントとクリーンクーラントとに分離される。ダーティークーラントは、マグネットセパレータ3に供給され、再度金属ゴミが分離回収される。
【0024】
また、クリーンクーラントは、吸引ポンプ20に吸引され、第一油分離槽14に供給される。吸引ポンプ20から上方に吐出されたクリーンクーラントは、拡幅部17内の液面24で折り返されると共に邪魔板19に当たり、流れの勢いが弱まる。この後、クリーンクーラントは、仕切り板15a、15bに沿って上下に蛇行して流れる。このとき、クリーンクーラントが流れる流路は全長に亘って同じ断面積にされているため、クリーンクーラントは、乱れることなくゆっくりと流れ、クリーンクーラントに含まれる油分がクリーンクーラントから分離して浮上する。このようにして油分が分離されたクリーンクーラントは、出口23から排出され、クリーンタンク5に供給される。
【0025】
一方、クリーンクーラントの液面24近傍まで浮上した油分は、少量のクリーンクーラントと共に油回収管16の落とし管部26に流れ落ち、案内管27を経て油回収槽28に供給される。油回収槽28に供給された油分は、オイルスキマー29によって回収され、油分濃度が薄くなったクリーンクーラントは、クーラント回収管31を経て第二分離槽30に供給される。第二分離槽30では、第二分離槽30内に溜められたクーラント中に油回収槽28からのクリーンクーラントがゆっくりとした速度で供給される。クリーンクーラント中に残存する油分は浮上し、液面よりも下方のクリーンクーラントがクーラント戻し管32からダーティータンク4に供給される。
【0026】
このように、ダーティータンク4とクリーンタンク5との間に、ダーティータンク4からのクリーンクーラントから油分を分離回収する油水分離器13を設けたため、ダーティータンク4からクリーンタンク5に供給されるクーラントから油分を良好に分離回収できる。
【0027】
油水分離器13は、クリーンクーラントを溜める第一油分離槽14の一側にクリーンクーラントの入口18を設けると共に他側に出口23を設け、第一油分離槽14内に、一側から他側に流れるクリーンクーラントの流れを上下に蛇行させるための仕切り板15a、15bを上下に互い違いに設けると共に、仕切り板15a、15b間で浮上した油分を回収するための油回収管16をクーラントの液面24近傍で開口して設けて形成されるものとしたため、クリーンクーラントを流しながら油分を浮上させることができ、クリーンクーラントから連続的に油分を分離回収することができる。また、クリーンクーラントに含まれる油分を第一油分離槽14の一側から他側にかけて段階的に減らすことができ、油分を確実に減らすことができる。
【0028】
油回収管16は上下に延びて配置され、油回収管16の上部には、上方に向かうにつれて拡径する落とし管部26が設けられるものとしたため、液面24近傍に浮上した油分を効率よく回収できる。
【0029】
油回収管16は案内管27を介して油回収槽28に接続され、油回収槽28には、オイルスキマー29が設けられるものとしたため、油回収槽28に油分を集めて濃縮させることができ、オイルスキマー29で油分を確実に回収できる。
【符号の説明】
【0030】
1 クーラントゴミ回収装置
2 金属加工機
3 マグネットセパレータ
4 ダーティータンク
5 クリーンタンク
13 油水分離器