特許第6547343号(P6547343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6547343-ガスバリア性フィルム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547343
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】ガスバリア性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 9/00 20060101AFI20190711BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20190711BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20190711BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20190711BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   B32B9/00 A
   B32B27/30 A
   B32B27/00 101
   B32B27/40
   B65D65/40 D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-52279(P2015-52279)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-172328(P2016-172328A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大沢 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉原 俊昭
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−064423(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/061726(WO,A1)
【文献】 特開2010−173133(JP,A)
【文献】 特開2014−172286(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/034773(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B65D65/00− 65/46
C09J 1/00− 5/10
9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一方の面に、無機物と有機物からなるアンカーコート層と、無機酸化物層と、有機物または無機物を含む有機物からなるオーバーコート層とがこの順序で積層されており、
前記アンカーコート層は、(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート樹脂と、変性シリコーンオイルとのグラフト共重合体からなり、
前記変性シリコーンオイルは、片末端に反応性基を有する反応性ジメチルシリコーンオイルであり、
前記反応性ジメチルシリコーンオイルの前記片末端の反応性基が、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基のいずれかを有し、
前記アンカーコート層のガラス転移温度が、40℃以上150℃以下であることを特徴とする、ガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記アンカーコート層の厚みが、1nm以上10,000nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記無機酸化物層は、SiOよりなり、Xが1.5であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記無機酸化物層の総膜厚が、10nm以上150nm以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記オーバーコート層は、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物とを含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記オーバーコート層の厚みが、5nm以上600nm以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性及び密着性に優れたフィルムに関する
【背景技術】
【0002】
ガスバリア性フィルムは、ハードディスクや半導体モジュールなどの精密電子部品類、太陽電池のバックシート、食品や医薬品等の包装分野、あるいは非包装分野で酸素および水蒸気を遮断する必要がある部材の分野に広く用いられている。
【0003】
精密電子部品類の包装用途においては、金属部分の腐食、絶縁不良などを防止するために包装材料を透過する酸素や水蒸気、その他内容物を変質させる気体を遮断するガスバリア性を備える包装体が求められている。また、食品包装用途においては、蛋白質や油脂などの酸化や変質を抑制し、味や鮮度を保持できることが必要である。また無菌状態での取り扱いが必要とされる医薬品類の包装用途においては、有効成分の変質を抑制し、効能を維持できることが必要である。
【0004】
そのため、上記の用途の包装体には、従来から温度、湿度などに影響されないアルミニウムなどの金属箔やアルミニウム蒸着フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)などの樹脂フィルムや、これらの樹脂フィルムをラミネートまたはコーティングしたプラスチックフィルムなどが好んで用いられてきた。
【0005】
しかし、ガスバリア性樹脂フィルムやガスバリア性樹脂をコーティングしたフィルムは、温度依存性が大きく、高いガスバリア性を維持できない。さらに、PVDCやPANなどは、使用後の廃棄、焼却の際に有害物質が発生する原因となる可能性を有していた。
【0006】
アルミニウムなどの金属箔やアルミニウム蒸着フィルムを用いた包装材料は、ガスバリア性には優れるが、レトルト耐性がないことや、不透明であるため包装材料を透過して内容物を識別することが難しいことに加え、使用後の廃棄の際に不燃物として処理しなければならないこと、金属探知機による異物検査ができないことや、電子レンジでの加熱処理ができないこと等の欠点を有していた。
【0007】
また、これらの欠点を克服した包装用材料として、最近では酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの無機酸化物を透明な基材フィルム上に蒸着したガスバリア性フィルムが上市されている。これらのガスバリア性蒸着フィルムは金属蒸着フィルムほどではないが、酸素、水蒸気などのガス遮断性を有していることが知られている。しかし、これらの無機酸化物蒸着フィルムでは、高いガスバリア性と、高温高湿下(85℃85%RH)や耐候試験後の層間の密着強度については未だ不十分である。
【0008】
尚、本願に関係する技術として、例えば、特許文献1に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5103184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の従来技術の問題を解決しようとするものであり、高いガスバリア性を有すると共に、高温高湿下や耐候試験後にも高い層間密着性を有するガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るガスバリア性フィルムは、基材の少なくとも一方の面に、無機物と有機物からなるアンカーコート層と、無機酸化物層と、有機物または無機物を含む有機物からなるオーバーコート層とがこの順序で積層されたものである。アンカーコート層は、(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート樹脂と、変性シリコーンオイルとのグラフト共重合体からなる。変性シリコーンオイルは、片末端に反応性基を有する反応性ジメチルシリコーンオイルである。反応性ジメチルシリコーンオイルの片末端の反応性基が、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基のいずれかを有する。アンカーコート層のガラス転移温度が、40℃以上150℃以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高いガスバリア性を有すると共に、高温高湿下や耐候試験後にも高い層間密着性を有するガスバリア性フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムの断面図
図2】本発明の一実施形態に係るラミネートガスバリア性フィルムの断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムの断面図である。ガスバリア性フィルム5は、高分子フィルム基材1の上に、アンカーコート層2、無機酸化物層3、オーバーコート層4をこの順に積層したものである。
【0016】
高分子フィルム基材1は、特に制限を受けるものではなく公知のものを使用することが出来る。高分子フィルム基材1として、例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド系(ナイロン−6、ナイロン−66等)、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、アクリル、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等)などの高分子のフィルム基材が挙げられるが、特に限定されない。
【0017】
高分子フィルム基材1として、透明フィルムを用いることは、大量生産に適するため好ましい。また、厚みに関しては、特に制限を受けるものではなく、ガスバリア性フィルムを形成する蒸着加工などの加工性を考慮すると、実用的には6μm以上188μm以下の範囲が好ましい。
【0018】
アンカーコート層2は、(メタ)アクリル樹脂と、イソシアネート樹脂と、変性シリコーンオイルとのグラフト共重合体からなる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル樹脂」なる用語は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の両方の総称として用いる。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」なる用語は、アクリル酸とメタクリル酸の両方の総称として用いる。
【0019】
アンカーコート層2を構成する(メタ)アクリル樹脂には、2種類以上の(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体を用いる。(メタ)アクリル酸として、例えば、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)などが挙げられるが、特に限定されない。また、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとして、例えば、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート(EA)、プロピルアクリレート(PA)、ブチルアクリレート(BA)、シクロヘキシルアクリレート(CHA)、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、プロピルメタクリレート(PMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシブチルメタクリレート(HBMA)などが挙げられるが、特に限定されない。層間の密着性を維持するためには、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートの群から1つ以上選択することが好ましい。また、ヒドロキシル基やカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーの場合、イソシアネートと反応し、層間密着力が向上するため導入することが好ましい。
【0020】
アンカーコート層2を構成するイソシアネート基含有樹脂としては、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4‘−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソサネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4‘−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等の各種ジイソシアネート、及びそれらの各種変性物、及びそれらを多官能化したダイマー体、アダクト体、アロファネート体、トリマー体、カルボジイミドアダクト体、ビウレット体、またそれらの重合物、及び多価アルコールを付加した重合物が挙げられる。特に基材との密着性や紫外線による黄変の影響が少ないヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートが好ましい。
【0021】
アンカーコート層2を構成する変性シリコーンオイルとは、直鎖状のシロキサン骨格を有し、分子構造中に、水素又は炭化水素基以外の基を有するものを言う。変性シリコーンオイルとしては、変性シリコーンオイルとして市販されているものを使用することができる。中でも、分子構造中にジメチルシリコーン骨格を有するものが好ましい。また、アンカーコート層の耐久性や基材との層間密着性を向上させるため、分子構造中にジメチルシリコーン骨格を有し、かつ分子構造中に熱硬化性樹脂との反応が可能な反応性基を有する反応性ジメチルシリコーンオイルが特に好ましい。反応性基としては、ポリシロキサンの側鎖の一部に導入されたものであってもよいし、ポリシロキサンの片末端又は両末端に導入されたものであってもよいし、ポリシロキサンの側鎖に加えて、片末端又は両末端に導入されたものであってもよい。特に片末端に反応性基があるものが好ましい。片末端の反応性基が反応した場合、シリコーン鎖が樹脂側鎖にぶら下がったシリコーングラフト共重合体を得ることができ、潤滑性、離型性、耐磨耗性、撥水性といった樹脂の表面特性を改質することが可能となる。アンカーコート層表面の特性を改質することで、アクリル樹脂やイソシアネート基含有樹脂の選択の自由度が向上する。ガラス転移温度の低い樹脂または反応性が低い硬化剤を使用する場合、ロール・ツー・ロールで塗工し、乾燥後の巻取りでブロッキングが発生する場合があるが、表面の特性を改質することでブロッキングを抑制することができる。また上記反応性基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メタクリル基などが挙げられる。
【0022】
分子構造中にエポキシ基を有するシリコーンオイルには市販品を用いることができ、例えば、片末端にアミノ基を有する「X−22−173BX」(官能基当量2,500g/mol)、「X−22−173DX」(官能基当量4,500g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられ、これらは単独もしくは複数組み合わせても良い。
【0023】
分子構造中に水酸基を有するシリコーンオイルには市販品を用いることができ、例えば、片末端に水酸基を有する「X−22−170BX」(官能基当量20g/mol)、「X−22−170DX」(官能基当量12g/mol)、「X−22−176DX」(官能基当量35g/mol)、「X−22−176GX−A」(官能基当量8g/mol)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられ、これらは単独もしくは複数組み合わせても良い。
【0024】
分子構造中にカルボキシル基を有するシリコーンオイルには市販品を用いることができ、例えば、片末端にカルボキシル基を有する「X−22−3710」(官能基当量1,450g/mol)(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
分子構造中にメタクリル基を有するシリコーンオイルには市販品を用いることができ、例えば、片末端にメタクリル基を有する「X−22−174ASX」(官能基当量900g/mol)、「X−22−174BX」(官能基当量2,300g/mol)、「KF−2012」(官能基当量4,600g/mol)、「X−22−2426」(官能基当量12,000g/mol)、「X−22−2475」(官能基当量420g/mol)、(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
上述した反応性ジメチルシリコーンオイルは、(メタ)アクリル樹脂に対して0.1〜80質量%の割合で添加することが好ましい。0.1%未満や80%を超える場合、十分な層間密着性が得られない恐れがある。
【0027】
アンカーコート層2の硬化膜のガラス転移温度Tgは、40℃以上150℃以下が好ましい。40℃未満では耐久性が低く、十分な層間密着性が得られない恐れがある。また、150℃以上では折り曲げ、引張りなどの外的要因により、膜に亀裂が生じ、バリア性が低下する恐れがある。
【0028】
アンカーコート層2の厚みは、通常1〜10,000nm、好ましくは50〜100nmである。膜厚が10,000nmを超える場合、膜の内部応力により高分子フィルム基材1から剥離し易くなり、1nm未満になると、膜厚が均一にならない可能性がある。また、高分子フィルム基材1への塗膜の接着性を向上させるため、塗工前に高分子フィルム基材1の表面に化学処理、放電処理などを施してもよい。コーティング方式はバーコーター、ナイフコート、ダイコート、(リバース)グラビアコート、マイクログラビアコート、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷などが挙げられるが特に限定されない。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
無機酸化物層3の成膜手段としては、真空蒸着方式のうち、電子ビームやレーザービーム等による加熱蒸着法が好ましく用いられ、特に電子ビーム加熱蒸着法が、成膜速度や無機酸化物蒸着用材料への昇温降温が短時間で行える点で有効である。
【0030】
無機酸化物層3に用いる金属には、珪素、アルミニウム、チタン、スズ、亜鉛、インジウム、マグネシウムの群から選択される1種類以上を用いることができる。
【0031】
蒸発した蒸着用材料によってアンカーコート層2の表面上に形成される無機酸化物層3の厚さは、一般的には5nm以上300nm以下の範囲内が望ましく、さらに好ましくは10nm以上150nm以下で、その値は適宜選択される。
【0032】
ただし、無機酸化物層3の厚みが5nm未満であると均一な膜が得られないことや、十分なバリア性能を発揮できない場合がある。また、膜厚が300nmを超える場合は、膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引張りなどの外的要因により、膜に亀裂が生じる恐れがある。
【0033】
オーバーコート層4は、硬く脆い無機酸化物層3を保護し、擦れや屈曲によるクラックの発生を防止するために設けられ、水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物を含有した成分からなる。水溶性高分子とアルコキシシランまたはその加水分解生成物とを含有するコーティング液を無機酸化物層3の上に塗工し、乾燥させることにより形成される。
【0034】
オーバーコート層4の厚みは、通常1〜6,000nm、好ましくは5〜600nmである。膜厚が6,000nmを超える場合、膜の内部応力により基材フィルム又はシートから剥離し易くなり、1nm未満になると、十分なバリア性が発現しない可能性がある。また、フィルムへの塗膜の接着性を向上させるため、塗工前に基材フィルムの表面に化学処理、放電処理などを施してもよい。オーバーコート層4の塗工方式としては、アンカーコート層1と同様に通常のコーティング方法を用いることができる。バーコーター、ナイフコート、ダイコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷などが挙げられるが特に限定されない。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリビニルピロリドン樹脂(PVP)などを用いることができ、これらを単独あるいは複数組み合わせて用いてもよい。
【0036】
アルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシランなどを用いることができる。また、アルコキシシランの加水分解生成物としては、メタノールなどのアルコールにアルコキシシランを溶解し、その溶液に塩酸などの酸の水溶液を添加し、加水分解反応させることにより調製したものが挙げられる。
【0037】
また、無機酸化物層3との密着性を上げるために、シランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するもの、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するもの、トリス‐(3‐ トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられ、これらのシランカップリング剤を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
図2は、本発明の一実施形態に係るラミネートガスバリア性フィルムの断面図
【0039】
ラミネートガスバリア性積層フィルム8は、図1のガスバリア性フィルム5の両面に、接着剤層6を介してラミネート樹脂層7を設けたものである。
【0040】
接着剤層6の材料としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、ポリエステル、ポリカーボネートポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレンイミン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリブタジエン、ワックス、カゼイン、又はそれらの混合物を主成分として含有した、無溶剤型、溶剤型、水性型、又は熱溶融型接着剤を使用することができる。
【0041】
接着剤層6の塗工方式としては、アンカーコート層2と同様に通常のコーティング方法を用いることができる。バーコーター、ナイフコート、ダイコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷などが挙げられるが特に限定されない。乾燥方法は、熱風乾燥、熱ロール乾燥、高周波照射、赤外線照射、UV照射など熱をかける方法を1種類あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15μm以上200μm以下の範囲である。なお、接着剤層6を介してラミネート樹脂層7は、図1のガスバリア積層フィルム5の片面にのみ設けてもよい。
【0042】
ラミネート樹脂層7の材料としては、その用途に応じて選択され、例えば精密電子部品の包装袋として使用される場合には、袋を密閉するためにヒートシール性を有する樹脂層が好適に使用される。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、これらの金属架橋物、又はポリ乳酸樹脂などの生分解性樹脂を使用することができる。
【0043】
また、産業資材の部材として使用される場合には、液晶表示素子、太陽電池、電磁波シールド、タッチパネル、真空断熱材、EL用基板、カラーフィルター等の用途特性に応じた樹脂フィルム層が使用され、例えば、ポリエチレンテレフタテート、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、セルローストリアセテート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、三フッ化塩化エチレン、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、など高温高湿で長期間使用可能な樹脂を使用することができる。ラミネート樹脂層7の厚さは、一般的には10μm以上500μmの範囲内である。
【0044】
ラミネート樹脂層7とガスバリア性フィルム5との貼り合わせには、例えば、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法、又は押出しラミネート法を利用することができる。例えば、押出しラミネート法を利用した場合には、接着剤層6は省略することも可能である。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0046】
<実施例1>
<アンカーコート溶液>
ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/メチルメタクリレート(MMA)/n−ブチルメタクリレート(nBMA)の割合がモル比で13/72/15(OH価:66mgKOH/g)の(メタ)アクリル樹脂に、反応性ジメチルシリコーンオイルとして片末端が水酸基のX−22−170BX(信越化学工業株式会社、官能基当量:2,800mgKOH/g)を(メタ)アクリル樹脂に対して1%添加し、イソシアネート樹脂としてタケネートD−110N(三井化学株式会社)をNCO/OH比が1.0になるように調整した塗液を、ロール・ツー・ロール方式により、16μmのPETフィルム上にダイレクトグラビア方式で塗工し、120℃で5秒乾燥させ、厚み0.05μmの膜を形性した。得られた膜を60℃で2日間硬化させ、ウレタン膜を得た。
【0047】
<無機酸化物層の積層工程>
蒸着材料として金属珪素と二酸化珪素を用い、O/Si比が1.5になるように混合した。金属珪素は50μm以下の径を有する粉末が95%以上のものを使用し、二酸化珪素には結晶構造を95%含み、50μm以下の径を有する粉末が95%以上のものを使用した。次に、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置により、電子銃から放出する電子ビームを蒸着用材料に照射し蒸発させ、アンカーコート層上に厚み30nmの酸化珪素膜を形成した。
【0048】
<オーバーコート溶液>
(1)テトラエトキシシランを0.02mol/Lの塩酸で加水分解した。
(2)けん化度99%、重合度2400のPVAの5%水溶液を調製した。
(3)(2)の溶液に(1)の溶液をSiO/PVA=60/40となる割合で加え、オーバーコート層溶液とした。無機酸化物層上にバーコーターにて塗工し、120℃で2分乾燥させ、0.4μmのオーバーコート層を形成した。
【0049】
<ガスバリア性積層フィルムへのラミネート樹脂層積層工程>
オーバーコート層が積層されたガスバリア性積層フィルムの両面に、5g/mのポリウレタン系接着剤を介して厚さ50μmの耐加水分解PET(東レ製、X10S)をドライラミネート法により積層し、ラミネートガスバリア性積層フィルムを得た。
【0050】
<実施例2>
反応性ジメチルシリコーンオイルとして片末端が水酸基のX−22−170BX(信越化学工業株式会社、官能基当量:2,800mgKOH/g)を(メタ)アクリル樹脂に対して5%添加した以外は実施例1と同様にしてラミネートガスバリア性フィルムを得た。
【0051】
<実施例3>
反応性ジメチルシリコーンオイルとして片末端がカルボキシル基のX−22−3710(信越化学工業株式会社、官能基当量:1450g/mol)とした以外は実施例1と同様にしてラミネートガスバリア性フィルムを得た。
【0052】
<実施例4>
反応性ジメチルシリコーンオイルとして片末端がカルボキシル基のX−22−3710(信越化学工業株式会社、官能基当量:1450g/mol)を(メタ)アクリル樹脂に対して5%添加したとした以外は実施例1と同様にしてラミネートガスバリア性フィルムを得た。
【0053】
<比較例1>
反応性ジメチルシリコーンオイルを添加しなかった以外は実施例1と同様にしてラミネートガスバリア性フィルムを得た。
【0054】
<比較例2>
反応性ジメチルシリコーンオイルの代わりに、非反応性ジメチルシリコーンオイルとして両末端がメチル基のKF−96L−0.65cs(信越化学工業株式会社製)とした以外は実施例1と同様にしてラミネートガスバリア性フィルムを得た。
【0055】
上記実施例1〜4及び比較例1〜2のガスバリア性フィルムについて、以下の方法で水蒸気透過率、層間密着力、硬化膜のガラス転移温度を測定評価した。
【0056】
<水蒸気透過率について>
実施例1〜4及び比較例1〜2の蒸着後のラミネートガスバリア性フィルムの水蒸気透過率を、モダンコントロール社製の水蒸気透過度測定装置(MOCON PERMATRAN 3/33)を用いて40℃90%RHの雰囲気で測定した。水蒸気透過率の測定値は、ガスバリア性の指標とした。
【0057】
<層間密着性について>
層間密着力の測定は、図2に示すラミネートガスバリア性積層フィルム8をダンプヒート(85℃85%RH下で1000時間処理)と、促進耐候性試験機(XWOM:キセノンウェザーオメーター)とでそれぞれ処理した後の層間密着力を評価した。試験片を10mm巾の短冊状に切り出し、その端部を一部剥離させ、引っ張り試験機(インストロン社製)により、300mm/min.の速度でT型剥離を行い、層間密着力が1N以上を○、1N未満を×とした。尚、剥離は、各層間の密着が十分であればオーバーコート層4と接着剤層6との間で剥離する(図2参照)。
【0058】
<ガラス転移温度について>
硬化膜のガラス転移温度は固形分20%のアンカーコート層の塗液を作製し、100℃で2時間乾燥させた。乾燥後の硬化物をアルミニウム製の容器に封入し、DSC(示差走査熱量測定)にてガラス転移温度を測定した。測定条件は−20℃から10℃/min.で250℃まで昇温、5分保持させた後、−20℃まで270℃/min.で降温させた。この条件を2サイクル実施し、2サイクル目の測定データを採用した。また、炉内に窒素ガスを流入させながら測定を実施した。
【0059】
次の表1に測定結果を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
<評価>
表1のように、実施例1〜4に係るラミネートガスバリア性フィルムは、いずれも良好な水蒸気透過度と耐久試験後の密着性とを示した。比較例1に係るラミネートガスバリア性フィルムは、耐久試験後の密着性は高かった、硬化膜のTgが低いため、水蒸気透過度が高くバリア性が低い。比較例2に係るラミネートガスバリア性フィルムは、水蒸気透過度は良好な結果を示したが、非反応性基のジメチルシリコーンオイルを用いたため膜の耐久性が低く、耐久試験後の密着性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、水蒸気などの種々のガスに対する高ガスバリア性と高温高湿下、耐候性における層間密着性と生産性を有しバリア・封止が求められる分野に幅広く適応できる。
【符号の説明】
【0063】
1…高分子フィルム基材
2…アンカーコート層
3…無機酸化物層
4…オーバーコート層
5…ガスバリア性積層フィルム
6…接着剤層
7…ラミネート樹脂層
8…ラミネートガスバリア性積層フィルム
図1
図2