(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル酸アルキルエステルと、メタクリル酸アルキルエステルと、水素結合性モノマーとを含むモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体、硬化剤および有機溶剤とを含み、
前記メタクリル酸アルキルエステルは、炭素数1〜2のアルキル鎖を有するモノマーおよび炭素数3〜10のアルキル鎖を有するモノマーを含み、
前記水素結合性モノマーは、カルボキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、水酸基含有モノマー、ウレア結合含有モノマー、またはウレタン結合含有モノマーであって、
前記水素結合性モノマーは、カルボキシル基含有モノマーをモノマー混合物100重量%中に3〜15重量%含む、フィルム用粘着剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について詳細に説明する前に用語を定義する。まず、シート、フィルムおよびテープは、同義語である。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を含む。(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートを含む。モノマーは、エチレン性不飽和二重結合含有単量体である。水素結合性モノマーは、水素結合性の水素原子を分子内に有するモノマーである。被着体は、粘着シートを貼り付ける相手方をいう。また官能基数は平均個数である。
【0014】
本発明のフィルム用粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルと、メタクリル酸アルキルエステルと、水素結合性モノマーとを含むモノマー混合物を共重合してなるアクリル系共重合体、硬化剤および有機溶剤とを含み、前記水素結合性モノマーは、カルボキシル基含有モノマーをモノマー混合物100重量%中に3〜15重量%含む。
【0015】
また本発明のフィルム用粘着剤は、上記の構成により不揮発分を50重量%以上に設定した場合でも塗工が可能であるため、生産性およびコストダウンの向上が可能になる。
本発明のフィルム用粘着剤は、塗工により形成した粘着剤層を備えた粘着シートとして使用することが好ましい。なお、「フィルム用」とは、基材にプラスチックフィルムを使用することを意味する。
【0016】
本発明においてアクリル系共重合体は、アクリル酸アルキルエステルと、メタクリル酸アルキルエステルと、水素結合性モノマーとを含むモノマー混合物を、溶液重合によって共重合した重合体である。共重合の重合方法は、透明性に優れ、分子量調整が容易な点から溶液重合が好ましい。なお、本明細書で溶液重合は、紫外線重合、塊状重合等の溶媒に水を用いない重合方法を包含している。
【0017】
アクリル酸アルキルエステルは、モノマー混合物100重量%中に50〜85重量%を使用することが好ましく、60〜80重量%がより好ましい。アクリル酸アルキルエステルを使用すると粘着力と凝集力の両立が容易になる。
【0018】
アクリル酸アルキルエステルは、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸n−オクタデシル、アクリル酸イソオクタデシル、およびアクリル酸イソボルニル等が挙げられる。アルキル鎖の構造は、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれの構造を有しても良い。これらの中でも直鎖構造または分岐構造のアルキル鎖が好ましく、特にアクリル酸n−ブチルは、粘着力と凝集力のバランスが良好な粘着物性を得やすいという点から好ましい。
アクリル酸アルキルエステルは、単独または2種類以上を併用できる。
【0019】
メタクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸アルキルエステルと比較してホモポリマーのガラス転移温度(以下、Tgともいう)が高く、アクリル系共重合体のTgを上昇させる機能があり、その結果、アクリル系共重合体自体の凝集力が向上するため、打痕抑制に寄与する。メタクリル酸アルキルエステルは、モノマー混合物100重量%中に5〜25重量%を使用することが好ましく、10〜20重量%がより好ましい。5〜25重量%の範囲で使用することで粘着力と凝集力がバランスよく向上する。
また、メタクリル酸アルキルエステルは、ホモポリマーのTgは10℃〜200℃が好ましい。Tgが10℃〜200℃になることで凝集力がより向上する。
なお、ホモポリマーのTgは文献値を使用する。
【0020】
メタクリル酸アルキルエステルは、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸n−オクタデシル、メタクリル酸イソオクタデシル、およびメタクリル酸イソボルニル等が挙げられる。アルキル鎖の構造は、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれの構造を有しても良い。これらの中でもホモポリマーのTgが10℃〜200℃である、メタクリル酸メチル(Tg:105℃)、メタクリル酸エチル(Tg:65℃)、メタクリル酸プロピル(Tg:35℃)、メタクリル酸n−ブチル(Tg:20℃)、メタクリル酸イソブチル(Tg:53℃)、メタクリル酸t−ブチル(Tg:118℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(Tg:83℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg:180℃)が好ましく、直鎖構造または分岐構造のアルキル鎖を有するメタクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
なお、これら以外のモノマーのTg値はポリマーハンドブック第3版に記載の値とする。
メタクリル酸アルキルエステルは、単独または2種類以上を併用できる。
【0021】
また、メタクリル酸アルキルエステルは、炭素数が1〜2のアルキル基を有するモノマーおよび炭素数が3〜10のアルキル基を有するモノマーを併用することで、粘着力と凝集力をより高度に両立できる。具体的には、モノマー混合物100重量%中に炭素数が1〜2のアルキル基を有するモノマーを3〜20重量%、および炭素数が3〜10のアルキル基を有するモノマーを2〜20重量%を含むことが好ましく、炭素数が1〜2のアルキル基を有するモノマーを5〜15重量%、および炭素数が3〜10のアルキル基を有するモノマーを5〜15重量%を含むことがより好ましい。
【0022】
本発明において水素結合性モノマーは、アクリル系共重合体内やアクリル系共重合体同士で水素結合を形成することでアクリル系共重合体自体での凝集力向上に寄与し、打痕を抑制する。そのため、ある一定量以上のモノマー量を必要とする、具体的には、カルボキシル基含有モノマーをモノマー混合物100重量%中に3〜15重量%含むことが必要である。
また、水素結合性モノマーは、カルボキシル基含有モノマー以外にアミド基含有モノマー、水酸基含有モノマー、ウレア結合含有モノマー、ウレタン結合含有モノマー等からなる群より選択される1種以上を併用できる。この場合、水素結合性モノマーは、モノマー混合物100重量%中に7〜25重量%を含み、中でもアミド基含有モノマー、および水酸基含有モノマーからなる群より選択される1種以上のモノマーをモノマー混合物100重量%中に4〜20重量%含むことが好ましい。前記配合により、所望の水素結合を形成し打痕を抑制しながら、物性調整の余地を大きくできる。アミド基含有モノマー及び水素結合性モノマーを使用すると粘着剤の極性が高くなり耐油性を向上できる。
【0023】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、p−カルボキシベンジルアクリル酸エステル、エチレンオキサイド変性(EO付加モル数:2〜18)フタル酸アクリル酸エステル、フタル酸モノヒドロキシプロピルアクリル酸エステル、コハク酸モノヒドロキシエチルアクリル酸エステル、アクリル酸β−カルボキシエチル、アクリル酸2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびフマル酸等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
カルボキシル基含有モノマーは、単独または2種類以上を併用できる。
【0024】
カルボキシル基含有モノマーは、モノマー混合物100重量%のうち3〜15重量%を含む必要があり、4〜12重量%がより好ましい。また、カルボキシル基含有モノマー以外の水素結合性モノマーを併用する場合には、カルボキシル基含有モノマーは、モノマー混合物100重量%のうち4〜12重量%を含むことが好ましく、4〜10重量%がより好ましい。カルボキシル基含有モノマーを3〜15重量%含むと打痕の抑制、粘着力向上、および耐油性向上等の特性が得られる。
【0025】
アミド基含有モノマーは、アミド基を有し、かつ、窒素原子に水素原子が1〜2個結合しているモノマーであり、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、およびN−(ブトキシメチル)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。なお、アミド基を有するが窒素原子に水素原子が結合しておらず水素結合性を有さないモノマーは、本発明のアミド基含有モノマーには含まれない。
【0026】
水酸基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステルなどのグリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル;
カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸エステル、およびヒドロキシエチルアクリルアミド等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0027】
ウレア結合含有モノマーは、例えばアミノ基含有モノマーに単官能イソシアネート化合物を反応させたモノマー、イソシアネート基含有モノマーに単官能アミン化合物を反応させたモノマー等が挙げられる。
【0028】
ウレタン結合含有モノマーは、例えば水酸基含有モノマーに単官能イソシアネート化合物を反応させたモノマー、イソシアネート基含有モノマーに単官能アルコール化合物を反応させたモノマー等が挙げられる。
水素結合性モノマーは、単独または2種類以上を併用できる。
【0029】
アクリル系共重合体の合成に使用するアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、および水素結合性モノマー以外のモノマーは、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、芳香環含有モノマー、アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマー、およびその他ビニルモノマー等が挙げられる。
【0030】
エポキシ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、および(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。エポキシ基含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中に0.01〜5重量部を含むことが好ましい。
【0031】
アミノ基含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、および(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルが挙げられる。アミノ基含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中に0.01〜1重量部を含むことが好ましい。
【0032】
芳香環含有モノマーは、例えば(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール、(メタ)アクリル酸ビフェニル、スチレン、ビニルトルエン、およびα-メチルスチレン等が挙げられる。芳香環含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中に1〜15重量部を含むことが好ましい。
【0033】
アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、例えばアクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、およびフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。アルコキシ(ポリ)アルキレンオキサイド含有モノマーは、モノマー混合物100重量%中に1〜15重量部を含むことが好ましい。
【0034】
その他ビニルモノマーは、例えば酢酸ビニル、およびアクリロニトリル等が挙げられる。その他ビニルモノマーは、モノマー混合物100重量%中に1〜15重量部を含むことが好ましい。
【0035】
本発明のアクリル系共重合体は、ラジカル重合開始剤を使用してモノマー混合物を溶液重合することで得る。溶液重合は、有機溶剤の存在下で、モノマー混合物100重量部に対しラジカル重合開始剤を0.001〜1重量部用いたラジカル重合によって行うことができる。通常、ラジカル重合は、窒素気流下で、50℃〜90℃程度の温度で6時間〜20時間行うことができる。また、ラジカル重合の際、連鎖移動剤を使用してアクリル系共重合体の重量平均分子量を適宜調整できる。
【0036】
連鎖移動剤は、例えばn−ドデシルメルカプタン、メルカプトイソブチルアルコール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、グリシジルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー、四塩化炭素、クロロホルム、およびハイドロキノン等が挙げられる。
【0037】
ラジカル重合開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物が一般的である。
【0038】
アゾ系化合物は、例えば2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、および2,2'−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)等が挙げられる。
【0039】
有機過酸化物は、例えば過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、およびジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0040】
本発明においてアクリル系共重合体の重量平均分子量は、15万〜40万が好ましく、20万〜40万がより好ましい。重量平均分子量を15万〜40万の範囲にすることで、粘着物性と塗工性を高いレベルで両立できる。なお、本発明において重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0041】
本発明においてアクリル系共重合体は、有機溶剤で不揮発分を50〜65重量%に調整したときに、25℃における粘度が1,000〜20,000mPa・sであることが好ましく、粘度1,500〜15,000mPa・sがより好ましい。これらの不揮発分および粘度にすることで塗工性を確保しながら従来の粘着剤より有機溶剤の使用量を削減し、さらに乾燥時間を早めることができる。なお、粘度は、25℃雰囲気下、B型粘度計を使用して、#4ローター、30rpmで回転開始1分後に測定した粘度である。
【0042】
本発明のフィルム用粘着剤は、硬化がほとんど進行していない塗工直後に粘着剤層の凝集力が高く打痕を抑制できるため粘着シートの歩留まりが高く、生産性に優れている。具体的には硬化剤を配合、塗工、乾燥して得られた粘着層膜厚25μmの粘着シートを、塗工後10分以内に貼付け面積25×25cm
2、23℃相対湿度50%で1kgの荷重を1時間かけた際の保持力(以下、塗工直後保持力とする)によって評価することができ、塗工直後保持力の粘着シートのズレが10mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。塗工直後保持力のズレを10mm以下にすることで、粘着シートを生産する際の打痕を低減することができる。
【0043】
本発明において硬化剤は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、エチレンイミン化合物、金属キレート化合物、およびアミン化合物からなる群より選択される1種以上が好ましく、エポキシ化合物および金属キレート化合物より好ましい。エポキシ化合物、金属キレート化合物を使用することで、粘着剤の不揮発分濃度を高めるために有機溶剤としてアルコール系溶剤を使用した場合、適度な架橋密度が得られる。
【0044】
エポキシ化合物は、例えばビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0045】
エチレンイミン化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、およびトリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン等が挙げられる。
【0046】
金属キレート化合物は、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウム等の多価金属と、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0047】
アミン化合物は、例えばヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂およびメチレン樹脂等が挙げられる。
【0048】
イソシアネート化合物は、2個のイソシアネート基を有する、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネート等のイソシアネートモノマーを変性したビュレット体、ヌレート体、ならびにアダクト体等が好ましい。
芳香族ジイソシアネートは、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、および4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートは、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族ジイソシアネートは、例えばキシリレンジイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートは、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0049】
ビュレット体とは、イソシアネートモノマーが自己縮合して形成したビュレット結合を有する自己縮合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
ヌレート体とは、イソシアネートモノマーの3量体であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
アダクト体とは、上記イソシアネートモノマーと3官能以上の低分子活性水素含有化合物とを反応させてなる、3官能以上のイソシアネート化合物をいい、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、などが挙げられる。
【0050】
本発明のフィルム用粘着剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して、硬化剤を0.01〜5重量部を含むことが好ましく、0.01〜3重量部がより好ましい。硬化剤の含有量が0.01〜5重量部になることで被着体への密着性と、十分な凝集力が得られる。
【0051】
本発明において有機溶剤は、アクリル系共重合体を溶液重合する際の反応溶剤や、アクリル系共重合体合成後の希釈溶剤として使用する。有機溶剤は、25℃1気圧における沸点が150℃以下であることが好ましい。150℃以下であることで粘着剤を塗工、乾燥する際に有機溶剤が揮発し、除去することが容易になる。有機溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、トルエン、キシレン、ヘキサンなどの炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤が挙げられる。これらの中でも反応溶剤としては、酢酸エチルを主成分とし、アルコール系溶剤を併用することが適度な分子量に調整しやすいため好ましい。希釈溶剤としては、アルコール系溶剤が粘着剤の粘度上昇を抑制することができるため好ましく、1級アルコール系溶剤がより好ましい。1級アルコール系溶剤は、例えばメタノール、エタノールが挙げられる。アルコール系溶剤は、アクリル系共重合体が有するカルボキシル基、水酸基、アミド基等の官能基と水素結合するためにアクリル系共重合体同士の水素結合を適度に抑制できることでフィルム用粘着剤の粘度が低下する。一方、アルコール系溶剤は粘着剤を塗工、乾燥する際に除去されるため粘着剤層中のアクリル系共重合体同士の水素結合を抑制しない。したがって、塗工直後の粘着剤層の凝集力は維持できるので打痕の抑制には影響しない。
【0052】
有機溶剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して、40〜150重量部を含むことが好ましく、55〜100重量部がより好ましい。有機溶剤は、単独また2種類以上を適宜選択できる。
【0053】
本発明の粘着剤は、さらに粘着付与樹脂を含むことも出来る。粘着付与樹脂を含むことで粘着力がより向上する。
【0054】
粘着付与樹脂は、例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(油性フェノール樹脂)等が好ましい。粘着付与樹脂は、単独または2種以上を併用できる。
【0055】
粘着付与樹脂は、アクリル系共重合体100重量部に対して、5〜30重量部配合することが好ましく、5〜20重量部がより好ましい。
【0056】
本発明の粘着剤は、さらにシランカップリング剤を含むこともできる。
【0057】
シランカップリング剤は、例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、および3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、およびビニルメチルジエトキシシラン等のビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、およびN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、およびテトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物;
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、および分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジン等が挙げられる。
シランカップリング剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.001〜3重量部を含むことが出来る。
【0058】
本発明のフィルム用粘着剤は、課題解決が出来る範囲であれば任意成分として、各種樹脂、硬化触媒、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を配合しても良い。
【0059】
本発明の粘着シートは、基材と、本発明のフィルム用粘着剤から形成した粘着剤層を備えている。また別の態様として、芯材の両面に粘着剤層を備えた両面粘着シート、または基材および芯材を有さず粘着剤層のみで構成されたキャスト粘着シートも好ましい。前記粘着剤層は、粘着剤を基材上に塗工し、乾燥することで形成できる。または、粘着剤を剥離性シート上に塗工し、乾燥して粘着剤層を形成した後、基材を貼り合わせることで形成できる。なお粘着剤層の基材または芯材と接しない面に剥離性シートを貼り合わせて保管するのが通常である。
【0060】
前記基材は、例えばセロハン、プラスチック、ゴム、発泡体等が好ましい。基材の形状は、板状およびフィルム状が選択できるが、取り扱いが容易であるフィルムが好ましい。基材は、単独または2種以上の積層体を使用できる。
【0061】
また、芯材は、不織布およびプラスチックが好ましい。
【0062】
剥離性シートは、紙、プラスチック等の表面に剥離処理がされている。剥離処理は、通常、シリコーン系剥離剤またはフッ素系剥離剤を使用する。
【0063】
前記プラスチックは、例えばポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン;
ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル
ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリアクリル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ等が挙げられる。
【0064】
粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等の公知の塗工装置を使用できる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線、減圧法等の公知の乾燥装置を使用できる。乾燥温度は、通常60〜160℃程度である。
【0065】
粘着剤層の厚さは、通常1〜300μm程度であり、1〜100μmが好ましい。1〜300μmの範囲にあることで粘着物性を適切な範囲に調整できる。
【0066】
本発明の粘着シートの粘着力は、被着体のステンレス(SUS)板に対して15N/25mm以上が好ましく、18N/25mm以上がより好ましい。粘着力が15N/25mm以上あることで被着体からの浮き剥がれが起きにくい。なお、粘着力は、高いほど良いため特に上限値の必要は無いが、強いて挙げれば30N/25mm程度であろう。
【0067】
本発明の粘着シートの粘着剤層は、そのゲル分率が40〜75重量%であることが好ましく、45〜70重量%がより好ましい。ゲル分率が40〜75重量%であることで、密着性、凝集力をより高いレベルで両立できる。なお、本発明でゲル分率は、所定の大きさの粘着シートをSUS200メッシュ(およそ 目開き:0.077mm、線径:0.05mm程度)に貼り付けた後、酢酸エチルに浸漬し、50℃で24時間抽出した後、100℃で30分乾燥後、下記数式(1)で算出した数値である。
数式(1) ゲル分率(重量%)=(G2/G1)×100
G1:酢酸エチルで抽出する前の粘着剤層の重量
G2:酢酸エチルで抽出・乾燥した後の粘着剤層の重量
【0068】
本発明の粘着剤は、耐油性が求められる台所周りや自動車周りの貼り付け用粘着剤として好適であるほか、一般ラベル・シール、粘着性光学フィルム、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【実施例】
【0069】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」をそれぞれ意味するものとする。
【0070】
(実施例1)
[アクリル系共重合体の合成]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に窒素雰囲気下、モノマーとしてアクリル酸n−ブチル82部、メタクリル酸メチル10部、アクリル酸8部、反応溶剤として酢酸エチル82部、開始剤として2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と記述する。)0.07部の原料混合物の半量を反応容器に仕込み、残りの半量を滴下管に仕込んだ。撹拌しながら反応容器の加熱を行い、還流を確認してから、滴下管の原料混合物を1時間かけて滴下し、その後、還流温度で2時間反応した。次いで、AIBN 0.05部を反応溶液に添加しさらに5時間反応を継続した。その後、反応容器を冷却し、希釈溶剤として酢酸エチル15部を加え、アクリル系共重合体溶液を得た。
【0071】
得られたアクリル系共重合体溶液について、不揮発分、粘度、重量平均分子量を以下の方法に従って求めた。その結果を表1に示す。
【0072】
<不揮発分の測定>
不揮発分の測定は、電気オーブンで150℃−20分後の乾燥前後の重量比から求めた。
【0073】
<粘度の測定>
粘度の測定は、25℃において、B型粘度計により#4ローターを用いて30rpmで回転開始1分後に測定した。
【0074】
<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量の測定は、島津製作所製GPC「LC−GPCシステム」を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
装置名 : 島津製作所社製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム : 東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を直列に連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/min
カラム温度 : 40℃
【0075】
[粘着シートの作成]
得られたアクリル系共重合体溶液中のアクリル系共重合体100部に対して、硬化剤としてイソシアネート化合物のコロネートL(トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体:日本ポリウレタン社製)を5部(不揮発分換算)を配合し、粘着剤を得た。
得られた粘着剤を、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート(PET)製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるようにアプリケーターで塗工を行い、100℃で1分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚さ50μmの基材(ポリエチレンテレフタレート製、以下、PETシートという)を貼り合せ、温度23℃相対湿度50%の条件で1週間熟成することで「剥離性シート/粘着剤層/PETシート」という構成の粘着シートを得た。
【0076】
得られた粘着シートについて、ゲル分率、塗工直後保持力、打痕性、粘着力、保持力、耐油性を以下の方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
(実施例2〜11)
モノマー、有機溶剤(反応溶剤、希釈溶剤)及び硬化剤の配合量を表1の記載に従った他は、実施例1と同様に行うことで実施例2〜11、比較例1〜2、4の重合体及び粘着シートを得た。なお、比較例3は反応途中にゲル化したため、アクリル系共重合体を得ることはできなかった。
ただし、実施例1〜8は参考例である。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の略号および化合物を以下に記載する。
n−BA : アクリル酸n−ブチル
2EHA : アクリル酸2−エチルヘキシル
MMA : メタクリル酸メチル
n−BMA : メタクリル酸n−ブチル
2EHMA : メタクリル酸2−エチルヘキシル(Tg=−10℃)
AA : アクリル酸
AAm : アクリルアミド
2HEA : アクリル酸2−ヒドロキシエチル
イソシアネート化合物 : コロネートL(日本ポリウレタン社製)
エポキシ化合物 : TETRAD X(三菱ガス化学社製)
金属キレート化合物 : アルミキレートA(川研ファインケミカル社製)
【0080】
(1)塗工直後保持力
塗工直後の粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。JIS Z0237:2000に準拠して23℃、相対湿度50%雰囲気下、塗工から10分以内に前記粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を幅30mm・縦150mmのステンレス板(SUS)の下端部幅25mm・縦25mmの部分に貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、23℃、相対湿度50%雰囲気で1kgの荷重をかけ、1時間放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シート貼付面上端部が下にズレた長さを測定し下記の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「ズレた長さが3mm未満である。非常に良好。」
○:「ズレた長さが3mm以上10mm未満である。良好。」
×:「ズレた長さが10mm以上または重りが落下。実用不可。」
【0081】
(2)打痕性
塗工直後の粘着シートを幅100mm・縦100mmの大きさの試料を2枚準備した。試料の1枚を23℃、相対湿度50%雰囲気下、ガラス板上に粘着シートを基材側を上にして静置した。その中心部付近に塗工から10分以内に直径4cm・重さ100gの円柱状の錘を置き、24時間放置した。その後、錘を取り除き粘着シートに錘の痕跡の有無を目視で確認することで打痕性を評価した。また。もう1枚の試料について重さ200gの錘に代えた以外は前記同様にして打痕性を評価した。
◎:荷重200gで痕跡なし
○:荷重100gで痕跡なし
×:痕跡あり
【0082】
(3)粘着力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。JIS Z0237:2000に準拠して23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を幅30mm・縦150mmのSUS板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着し、24時間放置した後に引張試験機を用いて180°方向に300mm/分の速度で引き剥がす180°ピール試験で粘着力を測定し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
◎:「粘着力が18N以上であり、非常に良好。」
○:「粘着力が15N以上18N未満であり、良好。」
×:「粘着力が15N未満であり、実用不可。」
【0083】
(4)保持力
得られた粘着シートを幅25mm・縦150mmの大きさに準備した。JIS Z0237:2000に準拠して23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を幅30mm・縦150mmのSUS板の下端部幅25mm・縦25mmの部分に粘着剤層を貼着し、2kgロールで1往復圧着した後、40℃雰囲気で1kgの荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シート貼付面上端部が下にズレた長さを測定し下記の評価基準に基づいて評価を行った。
○:「ズレた長さが0.5mm未満である。良好。」
×:「ズレた長さが0.5mm以上である。実用不可。」
【0084】
(5)耐油性
得られた粘着シートを幅25mm・縦50mmの大きさに準備した。23℃、相対湿度50%雰囲気下、前記粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を幅30mm・縦60mmのSUS板に貼り付け、2kgロールで1往復圧着し、24時間放置した試料を日清サラダ油(日清オイリオ社製)中に40℃で200時間浸漬した。浸漬後の粘着シートの浮き・ハガレおよび油の浸み込みを目視で観察し、下記の評価基準に基づいて評価を行った。
○:「浮き・ハガレ、油の浸み込みが見られない。良好。」
×:「浮き・ハガレ、油の浸み込みが見られる。実用不可。」
【0085】
表1の実施例1〜11に示すように本発明の粘着剤は、粘着力、塗工直後保持力、保持力、耐油性、打痕性に優れていることが分かる。これに対し、比較例1〜4では、いずれかの項目が不良となっており、実用上問題があったり、実用不可であることがわかる。