(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転部材の固定時において、前記脱落防止手段は、前記中心軸方向において、前記開口よりも前記他方の側に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の回転式作業機。
前記脱落防止手段は、前記段差部よりも前記一方の側における前記外周面よりも前記中心軸から見て突出するように、前記段差部よりも前記他方の側における前記外周面に装着され、弾性体で構成されたOリングであることを特徴とする請求項4に記載の回転式作業機。
前記脱落防止手段は、前記カラーの嵌装時において前記段差部よりも前記他方の側に位置し、前記カラーの内面において前記中心軸側に突出するように形成された係止部であることを特徴とする請求項3に記載の回転式作業機。
前記開口の内径が異なる複数種類の前記回転部材のうちの1つと、前記内径に対応した外径をもつ複数種類の前記カラーのうちの1つとが組み合わせて用いられることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の回転式作業機。
【背景技術】
【0002】
回転する回転部材を回転させることによって作業を行う回転式作業機として、例えば切断作業や研削作業を行う切断機、例えばエンジンカッタが知られている。エンジンカッタにおいては、動力源となるエンジンによって回転駆動されるスピンドル(回転軸)に、円板状のホイール(回転部材)が装着される。ホイールの外周には、例えばダイヤモンド砥粒等が固定されるため、回転するホイールを被切断部材等に当接させることによって、切断作業や研磨作業を行うことができる。こうした構成のエンジンカッタの構成は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
エンジンカッタにおいて、ホイールは消耗部品であり、その摩耗時には交換作業が行われる。また、作業内容に応じて最適なホイールが作業者によって選択されて使用される。このため、ホイールのスピンドルへの脱着作業は、通常は作業者によって行われ、エンジンカッタは、この作業が容易かつ確実に行われるような構造とされる。なお、エンジン以外の動力源、例えばモータが用いられる切断機においても、同様の構造が用いられる。
【0004】
図7は、このエンジンカッタにおけるスピンドルの中心軸(スピンドル中心軸X)に沿った構造を示す断面図であり、スピンドルに対するホイールの取り付け構造が主に示されている。ここで、
図7(a)はホイールが装着される前の状態、
図7(c)はホイールが装着された状態、
図7(b)は、ホイールを装着する際の途中の状態、をそれぞれ示す。スピンドル80は、スピンドル中心軸Xの周りで
図7における左側(スピンドル80の根元側)から回転駆動され、ホイール100は、その面内方向が
図7の紙面垂直方向とされた大きな円板形状とされる。
図7(a)に示されるように、スピンドル80には、ホイール100よりも小径とされた第1フランジ91が固定されている。
図7(a)に示された構造中の部品は全て回転方向において互いに固定され、この構造は、スピンドル中心軸Xの周りで一体となって回転可能とされる。
【0005】
この状態で、
図7(c)に示されるように、スピンドル80を貫通させる開口が中心に設けられたホイール100が、図中右側(先端側)から左側(根元側)に向かって、この開口にスピンドル80を貫通させた状態で装着される。更に、第1フランジ91と同等の外径をもちスピンドル80を貫通させる開口が中心に設けられた第2フランジ92、第2フランジ92よりも小径とされ同様の開口が中心に設けられた固定具93が、それぞれ図中右側から各々の開口にスピンドル80を貫通させた状態で順次装着される。
【0006】
スピンドル80の先端側(
図7(a)における右側)から根元側にかけては、内面にねじ切り加工が施された固定用孔部80Aが設けられ、
図7(c)に示されるように、この状態で、この固定用孔部80Aに先端側からボルト94を装着することができる。また、第1フランジ91の外周部はスピンドル80の先端側に向かって、第2フランジ92、固定具93の外周部はスピンドル80の根元側に向かって湾曲した形状とされるため、ボルト94をスピンドル80の先端側から固定用孔部80Aに装着することによって、ホイール100を第1フランジ91と第2フランジ92で挟持してスピンドル80に固定することができる。また、この脱着作業を容易に行うことができる。
【0007】
ホイール100を円滑に回転させるためには、ホイール100の中心とスピンドル中心軸Xとを高い精度で一致させることが必要である。これによって、使用時の振動が低減し、エンジンカッタやホイール100の寿命を長くすることもできる。ホイール100の開口の内径とこの開口と対向するスピンドル80の外周部(スピンドル外周部81)の外径が一致していれば、ホイールの装着時にホイール100の中心とスピンドル中心軸Xとは一致する。しかしながら、複数の種類が存在するホイール100に設けられた開口の内径寸法は、必ずしも統一されておらず、例えば20mm、25.4mm、30.5mmのものが流通している。こうした複数種類のホイール100を同一のエンジンカッタで使用可能とするために、ホイール100の開口とスピンドル80の間には、
図7(b)(c)に示されるように、円筒形状のカラー95が設けられる。
図7(b)に示されるように、ホイール100等を装着する前に、スピンドル80(スピンドル外周部81)に、予めカラー95が先端側から嵌装される。その後、
図7(c)に示されるように、その中心をスピンドル中心軸Xと一致させた状態でホイール100をスピンドル80に装着・固定することができる。
【0008】
カラー95は、円筒形状の小さな部品であり、その外径は、前記のホイール100の開口の内径に対応し、その内径はスピンドル外周部81の外径に対応する。ここで、1台のエンジンカッタについては、その内径を1種類に設定することができるため、外径のみが異なる複数種類のカラー95を準備し、ホイール100の種類に応じたカラー95を選択して用いることにより、様々な種類のホイール100をこのエンジンカッタで用いることができる。カラー95は例えば鋼材等で構成され、これを安価に得ることができる。
【0009】
カラー95やホイール100をそれぞれ容易に脱着可能とするために、実際にはカラー95の外面とホイール100の開口の内面との間、及びカラー95の内面とスピンドル外周部81の外周面との間には、僅かな隙間が設けられる。この隙間は、ホイール100のスピンドル80への装着時に大きながたつきが発生しない程度に小さく設定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図7(b)(c)に示されるように、カラー95は、ホイール100等と比べて小型で軽量の部品である。カラー95とスピンドル外周部81の間には僅かな隙間が設けられているため、例えばホイール100をスピンドル80から取り外す場合に、
図7(b)の状態において、カラー95が不意にスピンドル80(スピンドル外周部81)から脱落することがあった。特に、ホイール100の交換作業は、エンジンカッタが実際に使用される作業現場で行われる場合が多いために、脱落したカラー95を紛失する場合もあった。
【0012】
このため、ホイールの交換作業を容易に行うことができ、かつカラーの脱落が抑制された回転式作業機が望まれた。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の回転式作業機は、動力源によって中心軸の周りで回転駆動されるスピンドルと、開口を具備し、前記スピンドルに対して前記中心軸方向の一方の側に向けて他方の側から前記開口に前記スピンドルを貫通させた形態で前記スピンドルに対して固定される回転部材と、前記回転部材の固定時に前記スピンドルの外周面と前記開口の内面との間に介在するように前記スピンドルに対して嵌装されるカラーと、を具備する回転式作業機であって、前記スピンドル、前記カラーのうちの一方に、前記カラーが前記スピンドルに嵌装された状態において前記一方の側への前記カラーの移動を規制することによって前記カラーが前記スピンドルから脱落することを抑制する脱落防止手段が設けられ、前記脱落防止手段は、前記スピンドル、前記カラーのうちの他方に当接することによって、前記カラーの移動を規制することを特徴とする。
本発明の回転式作業機は、前記回転部材の固定時において、前記脱落防止手段が、前記中心軸方向において、前記開口よりも前記他方の側に設けられたことを特徴とする。
本発明の回転式作業機は、動力源によって中心軸の周りで回転駆動されるスピンドルと、開口を具備し、前記スピンドルに対して前記中心軸方向の一方の側に向けて他方の側から前記開口に前記スピンドルを貫通させた形態で前記スピンドルに対して固定される回転部材と、前記回転部材の固定時に前記スピンドルの外周面と前記開口の内面との間に介在するように前記スピンドルに対して嵌装されるカラーと、を具備する回転式作業機であって、
前記スピンドル、前記カラーのうちの一方に、前記カラーが前記スピンドルに嵌装された状態において前記一方の側への前記カラーの移動を規制することによって前記カラーが前記スピンドルから脱落することを抑制する脱落防止手段が設けられ、前記スピンドルにおいて、前記外周面には、前記他方の側における前記スピンドルの外径が前記一方の側における前記外径よりも小さくなるように段差部が設けられ、前記カラーの嵌装時において、前記脱落防止手段は、前記段差部よりも前記他方の側に設けられたことを特徴とする。
本発明の回転式作業機において、前記カラーの内面は円筒形状とされたことを特徴とする。
本発明の回転式作業機は、動力源によって中心軸の周りで回転駆動されるスピンドルと、開口を具備し、前記スピンドルに対して前記中心軸方向の一方の側に向けて他方の側から前記開口に前記スピンドルを貫通させた形態で前記スピンドルに対して固定される回転部材と、前記回転部材の固定時に前記スピンドルの外周面と前記開口の内面との間に介在するように前記スピンドルに対して嵌装されるカラーと、を具備する回転式作業機であって、
前記スピンドル、前記カラーのうちの一方に、前記カラーが前記スピンドルに嵌装された状態において前記一方の側への前記カラーの移動を規制することによって前記カラーが前記スピンドルから脱落することを抑制する脱落防止手段が設けられ、前記脱落防止手段は、前記カラーの嵌装時において、前記スピンドルの外周面と前記カラーの内面との間に配され、弾性体で構成されたことを特徴とする。
本発明の回転式作業機において、前記脱落防止手段は、前記スピンドルに装着されたOリングであることを特徴とする。
本発明の回転式作業機において、前記脱落防止手段は、前記段差部よりも前記一方の側における前記外周面よりも前記中心軸から見て突出するように、前記段差部よりも前記他方の側における前記外周面に装着され、弾性体で構成されたOリングであることを特徴とする。
本発明の回転式作業機は、動力源によって中心軸の周りで回転駆動されるスピンドルと、開口を具備し、前記スピンドルに対して前記中心軸方向の一方の側に向けて他方の側から前記開口に前記スピンドルを貫通させた形態で前記スピンドルに対して固定される回転部材と、前記回転部材の固定時に前記スピンドルの外周面と前記開口の内面との間に介在するように前記スピンドルに対して嵌装されるカラーと、を具備する回転式作業機であって、
前記スピンドル、前記カラーのうちの一方に、前記カラーが前記スピンドルに嵌装された状態において前記一方の側への前記カラーの移動を規制することによって前記カラーが前記スピンドルから脱落することを抑制する脱落防止手段が設けられ、前記脱落防止手段は、磁力によって前記カラーの嵌装時における前記カラーの前記一方の側への移動を規制することを特徴とする。
本発明の回転式作業機において、前記脱落防止手段は、前記カラーの嵌装時において前記段差部よりも前記他方の側に位置し、前記カラーの内面において前記中心軸側に突出するように形成された係止部であることを特徴とする。
本発明の回転式作業機において、前記カラーの少なくとも一部は弾性変形可能な材料で構成されたことを特徴とする。
本発明の回転式作業機は、前記開口の内径が異なる複数種類の前記回転部材のうちの1つと、前記内径に対応した外径をもつ複数種類の前記カラーのうちの1つとが組み合わせて用いられることを特徴とする。
本発明の回転式作業機は、円板形状とされた前記回転部材によって切断作業を行う切断機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成されているので、ホイールの交換作業を容易に行うことができ、かつカラーの脱落が抑制された回転式作業機を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態となるエンジンカッタ(切断機:回転式作業機)について説明する。このエンジンカッタにおいても、
図7の構造と同様に、様々な内径寸法の開口を具備するホイール使用するために、スピンドルにカラーが嵌装された状態で、ホイール等が装着される。この際、カラーが嵌装されホイールが装着されない状態でのカラーのスピンドルからの脱落を抑制する脱落防止手段が、スピンドル、カラーのうちの少なくともいずれかに設けられている。ここで、脱落防止手段は、カラーが少なくともスピンドルの先端側に移動することを規制することによって、カラーの自重による脱落を防止する。ただし、作業者が力を加えることによって、カラーをスピンドルから容易に取り外すこともできる。
【0018】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態となるエンジンカッタ(回転式作業機)の構成について説明する。
図1は、このエンジンカッタ1全体の構成を示す側面図である。このエンジンカッタ1においては、動力源となるエンジン(図示せず)がそのクランク軸が紙面垂直方向に沿うように、本体10の内部に設けられている。本体10には、前方(図中左方)に向かって延伸するようにアーム20が固定され、アーム20の前端付近には、ホイール100の回転軸となるスピンドル30が
図1において紙面垂直方向に沿うように設けられる。ホイール100は、アーム20に対して図中の紙面手前側において、このスピンドル30に装着される。
【0019】
ホイール100の後部側は、アーム20に固定されたホイールガード21で覆われ、ホイールガード21から露出したホイール100の前部を用いて、切断作業等を行うことができる。一方、ホイール100の後部側の領域はホイールガード21で覆われるため、作業者等が誤ってホイール100に触れることが防止される。ただし、ホイールガード21からホイール100が露出する領域は、
図1においては前部とされているが、この領域は、ホイールガード21のスピンドル30の周りにおける角度を調整することによって、適宜設定が可能である。この調整を行うため、ホイールガード21の外周には角度調整レバー21Aが設けられている。
【0020】
本体10の前方かつホイール100の後方には、本体10を上側からまたぐ環状とされ作業者の一方の手で把持されるフロントハンドル11が固定されており、本体10の後方側には、作業者の他方の手で把持される環状のリアハンドル12が設けられている。作業者は、ホイール100の後方に位置し、フロントハンドル11及びリアハンドル12を把持してこのエンジンカッタ1を持つことができる。リアハンドル12における本体10との上側の連結部付近の下側には、エンジンの出力を制御するためのスロットルレバー13が設けられている。また、リアハンドル12の上側には、ロックレバー14が設けられており、作業者は、ロックレバー14を押し下げた状態においてのみスロットルレバー13を操作することができる。
【0021】
図2は、スピンドル30の中心軸(スピンドル中心軸(中心軸)X)に沿ったこのエンジンカッタ1の断面図であり、
図1におけるA−A方向の断面を示している。
図2における左側(
図1における紙面向こう側)において、スピンドル30にはこれを駆動するための円板状のスピンドル側プーリ25が固定されている。また、
図1において本体10の紙面向こう側においてエンジンのクランク軸にはエンジン側プーリ(図示せず)が固定されている。エンジン側プーリとスピンドル側プーリ25との間にはアーム20の内部を通って駆動用のベルト(図示せず)が掛け渡されている。また、アーム20の前端側において、スピンドル30は、ベアリング26で回転自在に指示されている。このため、クランク軸(エンジン)によってスピンドル30が回転駆動される。
【0022】
図2におけるスピンドル30のベアリング26よりも右側(先端側:一方の側)には、スピンドル中心軸Xの外側に広がる形状の第1フランジ41が固定される。また、スピンドル30の先端側(
図1(a)における右側)から根元側にかけては、内面にねじ切り加工が施された固定用孔部30Aが設けられる。第1フランジ41よりも先端側におけるスピンドル30には、ホイール100、第2フランジ42、固定具43が順次装着され、この状態で、スピンドル30の先端側から固定用孔部30Aにボルト44が装着される。第1フランジ41、第2フランジ42、固定具43、ボルト44は、
図7におけるものと同様である。このため、
図7の構造と同様に、この構成によって、ホイール100をスピンドル30に固定することができる。
【0023】
このエンジンカッタ1においても、
図7の構造と同様に、円筒形状のカラー45が、スピンドル30におけるスピンドル外周部31とホイール100の開口との間に介在するように、スピンドル30に嵌装される。充分な機械的強度が得られる鋼材等でカラー45が構成される点も同様である。ただし、カラー45に関わる構造が、
図7の構造とは異なり、前記の通り、このエンジンカッタ1においては、カラー45のスピンドル30(スピンドル外周部31)からの脱落を抑制する脱落防止手段が設けられている。このエンジンカッタ1においては、脱落防止手段はスピンドル30側に設けられており、
図7の構成と同様に円筒形状の内面、外面を具備するカラー45が用いられる。
【0024】
図3は、
図2におけるスピンドル30周辺のカラー45に関わる構造を拡大して示す断面図であり、ホイール100を装着する際の構成を示す。ここで、
図3(a)はカラー45、ホイール100等がいずれもスピンドル30に装着されない状態、
図3(b)はカラー45のみが嵌装されホイール100等は装着されない状態、
図3(c)はカラー45、ホイール100等が全て装着され固定された状態(エンジンカッタ1が使用される際の状態)をそれぞれ示す。
【0025】
図3(a)に示されるように、スピンドル外周部31の外周面は、スピンドル中心軸(中心軸)Xに沿った方向においては平坦とされておらず、この外周面には段差部31Aが設けられている。段差部31Aよりも根元側(
図3(a)における左側:他方の側)、先端側(一方の側)のどちらにおいても、スピンドル外周部31の外周面は円筒形状とされているが、この円筒形状の外径は、段差部31Aよりも根元側で、その先端側よりも小さく設定されている。すなわち、スピンドル外周部31の外周は、段差部31Aよりも根元側でスピンドル中心軸X側に掘り下げられている。また、
図3(a)に示された構造全体は、一体となってスピンドル中心軸Xの周りで回転する。
図3(a)では、スピンドル30、スピンドル外周部31、第1フランジ41はそれぞれ別体とされて製造されたものが互いに固定されて一体化されているが、これらは製造時から一体化されていてもよい。
【0026】
ここで、段差部31Aよりも根元側において、スピンドル外周部31の円筒形状の外周面には、弾性体(ゴム等)で構成された円環状のOリング(脱落防止手段)32が、スピンドル中心軸Xに沿った2箇所で装着されている。Oリング32の線径は、Oリング32の装着時において、スピンドル外周部31の段差部31Aよりも先端側の外周面よりもスピンドル中心軸XからみてOリング32が外側に突出するように設定される。
【0027】
カラー45が装着された
図3(b)の状態においては、
図7の構成と同様に、カラー45の内面と、段差部31Aよりも先端側のスピンドル外周部31の外周面との間には、僅かな隙間が存在するように設定される。また、カラー45のスピンドル中心軸X方向に沿った長さ(円筒形状の高さ)は、カラー45の装着時において、2つのOリング32が装着された領域と、段差部31Aよりも先端側の領域とを共に覆うことができる程度の長さに設定される。このため、
図3(b)に示されるように、カラー45がスピンドル30(スピンドル外周部31)に装着された状態では、段差部31Aよりも根元側ではカラー45の内面とOリング32とが当接し、Oリング32がこれによって弾性変形し、その応力によってカラー45の内面が支持される。これにより、Oリング32は、カラー45がスピンドル中心軸Xに沿って移動することを規制する。一方、段差部31Aよりも先端側の状況は
図7の構成と同様であるため、装着時におけるカラー45のがたつきは抑制される。
【0028】
この構造に対して更にホイール100等が装着された
図3(c)の状態においては、ホイール100あるいはこれに設けられた開口は、スピンドル中心軸Xに沿った方向において、段差部31Aよりも先端側に位置するように設定される。第1フランジ41のスピンドル30に対する取り付け位置あるいは第1フランジ41の湾曲形状を調整することによって、スピンドル中心軸Xに沿った方向におけるホイール100のスピンドル30に対する取り付け位置を調整することができる。このため、
図3(c)に示されるように、ホイール100は、カラー45と、スピンドル外周部31における段差部31Aよりも先端側の領域で支持された状態で、第1フランジ41と第2フランジ42によって挟持されて固定される。この状況は、
図7の構造と同様である。
【0029】
この構成においては、段差部31Aよりも根元側で外径の小さな領域に装着されたOリング32が、
図3(b)の状態においてカラー45が自重によって脱落することを防止する。一方、Oリング32の弾性力は小さいため、作業者が力を加えることによって、カラー45をスピンドル30から取り外すこともできる。このため、例えばカラー45が自重によって脱落することは抑制されるが、その脱着を容易に行うこともできる。
【0030】
Oリング32が装着された後に、Oリング32の位置が変動することは好ましくないが、Oリング32は、その弾性力によってスピンドル外周部31に固定されるため、装着後には移動しにくい。ただし、段差部31Aを急峻な形状で形成すれば、少なくともOリング32が段差部31Aよりも先端側に移動することは抑制される。すなわち、段差部31AはOリング32のストッパとして機能する。
【0031】
また、例えば、開口が小さなホイールを用いる場合には、カラー45を用いずにこのホイールを直接スピンドル30(スピンドル外周部31)に装着することもできる。
図4は、こうしたホイール101を装着する場合における構造を
図3(c)に対応して示す図である。ホイール100、101は、装着時に段差部31Aよりも先端側に位置するように構成されているため、この場合には、ホイール101の開口をスピンドル外周部31の段差部31Aよりも先端側の外周面で直接支持することができる。また、この場合にOリング32は全く機能しないが、Oリング32はエンジンカッタ1の動作に悪影響を与えないため、Oリング32を取り外す必要はない。
【0032】
すなわち、ホイールの固定時においてホイールあるいはその開口の位置が段差部31Aよりも先端側となるような構成とすれば、開口の内径が異なる2種類のホイール100、101をそれぞれ
図3、
図4の形態で、このエンジンカッタ1において用いることができる。また、前記の通り、外径のみの異なるカラーを更に用いることにより、
図3の形態で更に多くの種類のホイールを用いることもできる。
【0033】
なお、
図7の構成において、スピンドル80とスピンドル外周部81とを別体の部品として製造し、その後でスピンドル80にスピンドル外周部81を圧入・固定して
図7(a)の形態とする場合には、同一のスピンドル80に対して、外径の異なる複数の種類のスピンドル外周部81を組み合わせることもできる。これによって異なる種類のホイール100に対して最適化されたスピンドル外周部81をスピンドル80と組み合わせて用いることも不可能ではない。しかしながら、エンジンカッタとして完成後の状態においては、スピンドル外周部81とスピンドル80とを分離する、あるいはスピンドル外周部81が固定されたスピンドル80を交換することは容易ではない。このため、例えばエンジンカッタを用いて切断作業を行っている作業現場でこの交換作業を行うことは実際には極めて困難である。これに対して、上記の構成においては、脱着が容易であるカラー45を交換するだけで、異なる種類のホイール100に対して最適化をすることができ、切断作業を行っている作業現場でホイール100やカラー45の交換作業を容易に行うことができる。上記の構成においては、この際にカラー45が脱落して紛失することが抑制される。
【0034】
上記の例では、Oリング32はスピンドル中心軸Xの方向に沿った2箇所で設けられたが、その数は任意であり、1箇所にのみ設けてもよい。逆に、この数が多い方がカラーの脱落を抑制する効果は大きくなるが、Oリングを装着するために要する領域(段差部31Aよりも根元側の領域)の幅を広くとる必要がある。特に
図4に示されるように、段差部31Aよりも先端側でホイール100を固定する構成とする場合には、段差部31Aよりも先端側でカラー45がスピンドル外周部31を覆う領域の幅も広くとる必要があるため、結局、カラー及びスピンドル外周部をスピンドル中心軸X方向で長くすることが必要となる。このため、Oリングの数は、エンジンカッタの構造やホイールの厚さ等に応じて設定される。また、スピンドル外周部の根元側において、各Oリングが個別に装着される溝を設けてもよい。この場合には、最も先端側に設けられた溝の先端側の側面が前記の段差部に対応する。
【0035】
また、
図4のようにカラーを用いずにホイールを装着することを許容せず、ホイールを装着する際には必ずカラーを要する構成としてもよい。この場合には、スピンドル外周部に段差部を設けずにOリング(脱落防止手段)を装着することができ、スピンドル中心軸Xの方向において、Oリングが装着された領域とホイールが装着される領域とを重複させることができる。このため、カラー及びスピンドル外周部、あるいはスピンドルの全長を短くすることができる。この場合においても、外径の異なる複数種類のカラーを用いることによって、開口径の異なる複数種類のホイールを用いることができ、この交換作業の際のカラーの脱落が上記と同様に抑制される。
【0036】
また、前記の構成とは逆に、スピンドル外周部における段差部よりも先端側の外径を根元側よりも細くし、先端側にOリングを装着することもできる。この場合には、ホイールが装着される領域を段差部よりも根元側とすれば、
図4の構成におけるスピンドル外周部等が左右方向において反転した形態で、カラーを用いずにホイールを装着することができる。
【0037】
ただし、
図3のように段差部31Aよりも根元側におけるスピンドル外周部31の外径が細くなるように段差部31Aを設けた場合には、段差部31Aは、Oリング32が先端側に移動して脱落することを抑制するストッパとして機能する。このため、
図3のように段差部31Aよりも根元側におけるスピンドル外周部31の外径を細くした構成が最も好ましい。あるいは、ホイールやカラーの脱着時にOリング(脱落防止手段)がスピンドル側から脱落することを防止するためには、Oリングは、ホイールあるいはその開口よりもスピンドルの根元側に設けられることが好ましい。
【0038】
上記の構成は、
図7に示された従来の構造にOリング(脱落防止手段)を装着する、あるいは更に、この際にスピンドル外周部に段差部を設けることによって実現することができる。このため、上記の脱落防止手段が設けられたエンジンカッタ1を安価に得ることができる。
【0039】
なお、上記の構成において、カラー45は、ホイール100の装着時にガイドとして機能することによってホイール100の中心とスピンドル中心軸Xとを整合させるために用いられる。
図3(c)に示されるようにホイール100が装着されてボルト44で固定された後は、ホイール100は第1フランジ41、第2フランジ42によって挟持されることによって保持され、ホイール100の装着後、エンジンカッタ1が使用される際には、カラー45には大きな負荷は加わらない。このため、カラー45を、機械的強度の高い鋼材ではなく、軽量安価な樹脂材料等で構成してもよい。このようにカラーを軽量とした場合には特に脱落しやすくなるのに対し、上記の構成によって、この脱落を防止することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るエンジンカッタにおいても、上記と同様にスピンドル側に脱落防止手段が設けられている。
図5(a)、(b)は、この場合のカラー45に関わる構造を
図3(a)、(c)にそれぞれ対応させて示す断面図であり、
図5(c)は、そのB−B方向の断面図である。
図5(b)は、
図5(c)におけるC−C方向の断面に対応している。ここに示された部分以外の構造は、
図1におけるものと同様である。
【0041】
この場合においても、前記のエンジンカッタ1と同様のカラー45、ホイール100等が用いられるが、脱落防止手段が前記の場合とは異なる。
図5(a)に示されるように、ここで用いられるスピンドル50におけるスピンドル外周部51にも、前記と同様の段差部51Aが設けられている。ただし、この段差部51Aよりも根元側においては、前記のOリング32とは異なり、代わりに永久磁石(脱落防止手段)52が固定されている。
図5(c)に示されるように、永久磁石52は、スピンドル外周部51の周方向においてスピンドル中心軸Xを挟んで対称な2箇所に設けられている。また、永久磁石52の最外部は、スピンドル外周部51における段差部51Aよりも先端側の外周面よりも外側に突出しない形状とされる。
【0042】
この場合においても、
図5(b)に示されるように、前記と同様にカラー45を用い、ホイール100等を、固定用孔部50Aにボルト44を装着することによってスピンドル50に装着することができる。この際、カラー45を磁性材料である鋼材で構成すれば、カラー45と永久磁石52との間には引力が働くため、永久磁石52のスピンドル50(スピンドル外周部51)からの脱落を抑制することができる。一方、カラー45はスピンドル外周部51に固定されてはいないため、作業者が力を加えることでカラー45を取り外すことは容易である。このため、前記のOリング32を用いた場合と同様の効果を奏する。
【0043】
前記のOリング32を用いた場合には、カラー45を装着した際にOリング32とカラー45の内面とが当接する。これに対して、永久磁石52を上記のようにスピンドル外周部51における段差部51Aよりも先端側の外周面よりも突出しないようにすれば、カラー45の装着時においても、永久磁石52とカラー45とは当接することがない。このため、前記のOリング32を用いた場合には、Oリング32の摩耗や劣化が発生する可能性があるのに対して、永久磁石52を用いた場合には、永久磁石52の摩耗や劣化は発生せず、これを用いたエンジンカッタにおいては、頻繁にホイールの交換が行われる場合でも、特に高い耐久性が得られる。また、
図4の構成と同様に、カラー45を用いずにホイール101を装着することも可能である。この際に、永久磁石52が障害となることもない。
【0044】
上記の構成においては、カラー45の少なくとも一部を磁性材料で構成することが要求されるが、鋼材には磁性材料となるものと、非磁性材料となるものとが存在し、どちらを用いても同様にカラー45を製造することができる。このため、前記のOリング32を用いる場合と同様に、実際には上記の構造は従来のエンジンカッタにおけるスピンドル側の構造を変更するだけで実現することができる。
【0045】
なお、上記の構成において、
図5(c)に示されるように、永久磁石52はスピンドル中心軸Xに対して対称な2箇所に設けられたが、その数や構成は任意であり、例えばこれを1箇所においてのみ設けることもできる。ただし、永久磁石が固定された状態でスピンドル、スピンドル外周部はスピンドル中心軸Xの周りで回転するため、上記のようにスピンドル中心軸Xに対して対称な構成とすることが、振動の低減等のためには好ましい。永久磁石は残留磁気をもたないカラー45を吸引するためのみに用いられるために、その磁場(磁化)の方向は上記の効果を奏する限りにおいて任意である。例えば、永久磁石をスピンドル外周部に沿った円筒形状とすることもできる。また、スピンドル外周部における段差部よりも根元側を永久磁石で埋め込んだ形態としてもよい。
【0046】
また、上記の例ではスピンドル50側に永久磁石52が固定されたが、例えばカラー側に永久磁石を設ける、あるいはカラー自身を着磁して構成することによって、スピンドル外周部とカラーとの間に引力(磁力)が働くような構成とすることも可能である。しかしながら、この場合には、カラーの磁気によってスピンドル(スピンドル外周部)以外の部品、例えばホイールや第2フランジ等にもカラーが吸着されることがある。このため、永久磁石52がスピンドル外周部51の根元側に設けられ、カラー45がスピンドル50の根元側に吸引される
図5の構成が特に好ましい。すなわち、この構成においても、前記のOリングと同様に、永久磁石(脱落防止手段)をスピンドルの根元側に設けることが好ましい。
【0047】
また、永久磁石は前記のOリングと異なり弾性変形はしないが、このようにスピンドル外周部において段差部を設け、スピンドル外周部における外径の小さな領域に永久磁石を設けることにより、永久磁石とカラーとが当接することなく、かつカラーの移動を規制することができる。ただし、永久磁石とカラーとが当接することを許容すれば、段差部を設けず、例えばスピンドル外周部の表面の一部を着磁してもよい。
【0048】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係るエンジンカッタにおいては、カラー側に脱落防止手段が設けられている。
図6は、この場合の構成を
図3と同様に示す断面図である。
【0049】
カラーが装着されていない
図6(a)の状態における形態は、第1の実施の形態における
図3(a)においてOリング32が装着されない状態と同様である。すなわち、スピンドル外周部31には段差部31Aが設けられ、段差部31Aよりも根元側は、その先端側が掘り下げられた形態とされている。このため、スピンドル30、スピンドル外周部31等としては、第1の実施の形態におけるものと共通のものを用いることができる。
【0050】
ただし、ここで用いられるカラー60は、第1の実施の形態で用いられたカラー45とは異なる。カラー60が装着された状態に対応する
図6(b)に示されるように、カラー60の内面には、内側に向かって突出した係止部(脱落防止手段)60Aが根元側に設けられている。
図6(b)においては係止部60Aの断面形状が示されているが、係止部60Aは、
図5(c)における永久磁石52と同様にスピンドル中心軸Xに対して対称な2箇所に設けられていてもよく、スピンドル外周部31の外周を囲むように連続的に設けられていてもよい。
【0051】
この構造の場合には、カラー60をスピンドル外周部31Aの先端側(
図6b)における右側)から嵌装する際に、カラー60が僅かに弾性変形することが好ましいため、カラー60は、少なくともその一部が、弾性変形可能な材料で構成される。このため、このカラー60を樹脂材料で構成することが好ましい。この場合、係止部60Aをカラー60の成形時に容易に形成することができる。
【0052】
なお、この場合においても、
図4に示されたホイール101を、
図4と同様にカラー60を用いずに装着することができる。
【0053】
また、第1、第2の実施の形態においては、スピンドル外周部の外径が段差部よりも先端側で細くされた形態においても、脱落防止手段を設けることが可能であった。これに対し、第3の実施の形態においては、スピンドル外周部の外径を段差部よりも根元側で細くすることによって、カラー60の脱落が抑制される。ただし、段差部よりも根元側の広い範囲においてスピンドル外周部の外径を細くする必要はなく、例えば係止部を収容できる程度に細い溝をスピンドル外周部に設けてもよい。この場合には、溝の先端側の側面が、前記の段差部に対応する。また、係止部の形状は、上記の効果を奏する限りにおいて任意である。
【0054】
また、
図6の構成においては、カラー60側に設けられた突起部である係止部60Aが、スピンドル外周部31(スピンドル30)側に係止されたが、逆に、スピンドル外周部(スピンドル)側に突起部である係止部を設け、これをカラーの内面に係止させることもできる。また、上記の例ではカラー60が弾性変形することによって係止部60Aが段差部31Aよりも根元側まで移動可能とされたが、スピンドル外周部に、スピンドル中心軸X方向に沿って係止部60Aが通過可能な溝を形成してもよく、この場合には、溝を介して係止部60Aを段差部31Aよりも根元側まで移動させることができる。このようにしても、係止部60Aをスピンドル外周部の溝以外の部分で係止させることにより抜け止めを図ることができ、スピンドル外周部の周方向の一部に段差があっても支障無くホイール100を保持することができる。
【0055】
上記の第1〜3の実施の形態においては、それぞれにおける脱落防止手段によって、カラーのスピンドル中心軸X方向における先端側(一方の側)への移動が規制された。これらの構造を組み合わせることも可能である。また、上記の構造以外によっても、カラーの移動を規制し、かつ力を加えることによってこの規制に抗してカラーを取り外すことができる構造であれば、脱落防止手段として用いることができる。
【0056】
また、上記の例では、スピンドル外周部のカラーと接する外周面及びカラーのスピンドル外周面と接する内面の形状が円筒形状、すなわち、これらのスピンドル中心軸に垂直な断面形状が円形であるものとした。しかしながら、この断面形状は、スピンドルに対するカラーの嵌装、ホイールの装着が可能な限りにおいて任意である。この場合においても、同様に脱落防止手段を設けることができる。
【0057】
また、上記の例ではエンジンカッタについて説明されたが、スピンドルに対して回転部材が装着・固定される回転式作業機であれば、同様にカラー及び脱落防止手段を用いることによって、仕様の異なる様々な回転部材に対応することができ、カラーの脱落を抑制することができる。これによって、回転部材の交換作業を容易に行うことができる。