特許第6547412号(P6547412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547412
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】車高変更装置および車高変更方法
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/017 20060101AFI20190711BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20190711BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   B60G17/017
   B60G17/015 C
   B60J5/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-102497(P2015-102497)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-215810(P2016-215810A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】日吉 武男
【審査官】 高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−126207(JP,A)
【文献】 特開2003−237505(JP,A)
【文献】 特開2007−022226(JP,A)
【文献】 特開昭61−184110(JP,A)
【文献】 特開平09−058245(JP,A)
【文献】 特開平11−123210(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0079626(US,A1)
【文献】 カナダ国特許出願公開第2639811(CA,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた扉の開閉スイッチと、
前記扉の開閉動作を行う扉開閉機構と、
前記扉の開閉状態を検知する扉開閉センサと、
前記車体の高さを前記扉の開閉状態に応じて変更する車高変更機構と、
前記開閉スイッチが操作されてから所定時間が経過した場合に前記扉開閉機構に前記扉の開閉を行わせ、前記扉開閉センサにより前記扉の開閉開始が検出された場合に、前記車高変更機構に前記車体の高さを変更させる制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記扉の開閉が開始してから完了するまでの間に、前記扉の開閉状態を変更する割り込みを受信したとき、当該割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものであるか否かを判定し、当該割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものであった場合は、当該割り込みに応じて前記扉開閉機構に前記扉を開閉させるとともに、前記車高変更機構に当該割り込みに応じた前記扉の開閉状態に応じて前記車体の高さを変更させ、前記割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものでなかった場合は、前記扉開閉機構に扉の開閉状態を反転させ、前記車高変更機構には前記車体の高さの変更を行わせない、
車高変更装置。
【請求項2】
前記扉の開閉動作範囲内の物体の存在を検知する光電センサをさらに有し、
前記開閉スイッチの操作によるものではない割り込みは、前記光電センサにより物体の存在が検知されたことを示す信号である、
請求項に記載の車高変更装置。
【請求項3】
前記扉からの車椅子の乗り込みを補助するスロープと、
前記スロープを使用中であるか否かを判定する車椅子センサと、
をさらに有し、
前記開閉スイッチの操作によるものではない割り込みは、前記車椅子センサにより前記スロープが使用中であることが検知されたことを示す信号である、
請求項に記載の車高変更装置。
【請求項4】
車体に設けられた扉の開閉スイッチが操作されてから所定時間が経過した場合に、扉開閉機構に前記扉の開閉を行わせる扉開閉ステップと、
前記扉の開閉状態を検知する扉開閉センサにより前記扉の開閉開始が検出された場合に、前記扉の開閉に伴い、車高変更機構に前記車体の高さを変更させる高さ変更ステップと、
前記扉の開閉が開始してから完了するまでの間に、前記扉の開閉状態を変更する割り込みを受信したとき、当該割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものであるか否かを判定するステップと、
当該割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものであった場合に、当該割り込みに応じて前記扉開閉機構に前記扉を開閉させるとともに、前記車高変更機構に当該割り込みに応じた前記扉の開閉状態に応じて前記車体の高さを変更させるステップと、
前記割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものでなかった場合に、前記扉開閉機構に扉の開閉状態を反転させ、前記車高変更機構には前記車体の高さの変更を行わせないステップと、
を有する車高変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉開閉時に車体の高さを変更できる車高変更装置および車高変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばバス等の車両では、車両の側面に人員が乗降するための扉が設けられている。そして、乗客の乗り降りを行いやすくするため、当該扉の開閉に伴って、車体の高さを変更する技術が広く用いられている。この扉の開閉に伴い車高を変更する機能は、ニーリング機能と呼ばれる。ニーリング機能は、例えば車軸と車体との間に設けられた空気ばね内の空気圧を調節することによって実現されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ドアの開閉スイッチとニーリング機能のスイッチとが連動しており、ドアの開閉操作に連動して車体の高さの変更動作が行われることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−193940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バス等の乗客が乗降するための扉を有する車両においては、一般に運転手が扉の開閉スイッチを操作してから、実際に扉が開閉するまでの間にタイムラグが設けられている。そして、扉の周囲には、扉の開閉を周囲に報知するための扉開閉予告ブザー等が設置されなければならないことが国土交通省の保安基準にて定められている(道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 [2008.07.07] 別添106(ワンマンバスの構造要件))。そのため、従来の車両では、扉開閉スイッチが操作されてから実際に扉が開閉するまでの間、扉開閉ブザーが鳴るように構成されている。
【0006】
バスの運転手は、扉を開閉する前に扉の周囲にいる乗客に注意を促すために、扉の開閉は行わずに扉開閉予告ブザーを何度か鳴らす動作を行うことがある。例えばバスの運転手は、上述したタイムラグ中に扉開閉スイッチを反転させ、短時間で複数回扉開閉スイッチをオン/オフする。これにより、扉開閉予告ブザーのみ鳴らして扉の開閉は実際に開始される前にキャンセルすることができる。
【0007】
しかし、特許文献1のように、ドアの開閉スイッチとニーリング機能のスイッチとが連動している場合、バスの運転手が扉開閉予告ブザーを何度か鳴らす動作を行おうとすると、扉開閉スイッチのオン/オフの度にニーリング機能が作動してしまう。ニーリング機能は扉からの乗降をサポートするために車高を変更するものであるから、扉が開閉しないにもかかわらずニーリング機能のみが作動してしまう状況は、意味が無いだけでなく、車内の乗客に不快感を与えてしまう原因となる。
【0008】
本発明の目的は、扉の開閉が行われないにもかかわらずニーリング機能が作動する状況を生じさせず、車内の乗客に不快感を与えない車高変更装置および車高変更方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車高変更装置は、車体に設けられた扉の開閉スイッチと、前記扉の開閉動作を行う扉開閉機構と、前記扉の開閉状態を検知する扉開閉センサと、前記車体の高さを前記扉の開閉状態に応じて変更する車高変更機構と、前記開閉スイッチが操作されてから所定時間が経過した場合に前記扉開閉機構に前記扉の開閉を行わせ、前記扉開閉センサにより前記扉の開閉開始が検出された場合に、前記車高変更機構に前記車体の高さを変更させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記扉の開閉が開始してから完了するまでの間に、前記扉の開閉状態を変更する割り込みを受信したとき、当該割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものであるか否かを判定し、当該割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものであった場合は、当該割り込みに応じて前記扉開閉機構に前記扉を開閉させるとともに、前記車高変更機構に当該割り込みに応じた前記扉の開閉状態に応じて前記車体の高さを変更させ、前記割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものでなかった場合は、前記扉開閉機構に扉の開閉状態を反転させ、前記車高変更機構には前記車体の高さの変更を行わせない
【0010】
本発明の車高変更方法は、車体に設けられた扉の開閉スイッチが操作されてから所定時間が経過した場合に、扉開閉機構に前記扉の開閉を行わせる扉開閉ステップと、前記扉の開閉状態を検知する扉開閉センサにより前記扉の開閉開始が検出された場合に、前記扉の開閉に伴い、車高変更機構に前記車体の高さを変更させる高さ変更ステップと、前記扉の開閉が開始してから完了するまでの間に、前記扉の開閉状態を変更する割り込みを受信したとき、当該割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものであるか否かを判定するステップと、当該割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものであった場合に、当該割り込みに応じて前記扉開閉機構に前記扉を開閉させるとともに、前記車高変更機構に当該割り込みに応じた前記扉の開閉状態に応じて前記車体の高さを変更させるステップと、前記割り込みが前記開閉スイッチの操作によるものでなかった場合に、前記扉開閉機構に扉の開閉状態を反転させ、前記車高変更機構には前記車体の高さの変更を行わせないステップと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、扉の開閉が行われないにもかかわらずニーリング機能が作動する状況を生じさせさせず、車内の乗客に不快感を与えない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】車高変更装置の構成の一例を示す図
図2】扉の開閉が開始されるときの制御部による制御の一例を示すフローチャート
図3】扉の開閉が開始し始めてから終了するまでの動作を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の車高変更装置100の構成の一例を示す図である。車高変更装置100は、例えばバス等、運転手の操作によって扉の開閉を行うことができる車両に設けられる。
【0014】
図1に示すように、車高変更装置100は、扉1、扉開閉機構2、扉開閉センサ3、開閉スイッチ4、扉開閉予告ブザー5、車高変更機構6、光電センサ7、車椅子スロープ8、制御部9を有する。
【0015】
扉1は、車両の側面に設けられた扉である。扉1には、例えば引戸式、折戸式、片開き式、スイングアウト式等、種々の形式の扉が採用されうる。扉1の開閉前には、車両の乗客に対する予告あるいは警告として、後述する扉開閉予告ブザー5が鳴るように構成されている。また、扉1の付近には、開閉中の扉への乗客の接近を検出するために、後述する光電センサ7が設けられる。
【0016】
扉開閉機構2は、制御部9の制御に基づき、例えば空気圧、油圧、モータ等により扉1の開閉を行う。例えば空気圧を利用した扉開閉機構2の場合、具体的には、後述する開閉スイッチ4の操作に応じて、制御部9が扉1の開動作、あるいは閉動作を要求すると、当該要求に応じて、扉開閉機構2は圧縮空気を供給または排気等することにより、扉1の開動作または閉動作を行う。
【0017】
扉開閉センサ3は、扉1が開いた状態であるか、閉じた状態であるかを検出するセンサである。
【0018】
開閉スイッチ4は、車両の運転席付近に設けられ、扉1を開閉させるためのスイッチである。詳細には、開閉スイッチ4が開側あるいは閉側に操作されると、制御部9がこれを検出し、当該操作に応じて、扉1を開く、あるいは閉じるように上述した扉開閉機構2を動作させる。なお、制御部9の制御により、開閉スイッチ4が開側あるいは閉側に操作されてから、扉開閉機構2に実際に扉1を開かせる、あるいは閉じさせるまでに若干のタイムラグ(例えば0.8秒間)が設けられている。
【0019】
扉開閉予告ブザー5は、鳴ることにより扉1の周囲の乗客に扉1の開閉を予告するためのものである。扉開閉予告ブザー5は、上述した開閉スイッチ4の操作から実際に扉1が開閉するまでのタイムラグの間に鳴ることで、扉1が開閉動作をすることに対する注意を周囲の乗客に促すことができる。
【0020】
車高変更機構6は、車両の車軸に設けられた空気ばね61の空気圧を調節することにより、車体の高さを変更する。車高変更機構6は、車体を少なくとも2種類の高さに変更することができる。具体的には、車高変更機構6は、扉1が開いたときに、通常より車高を低くする動作を行う。また、車高変更機構6は、扉1が閉じたときには、走行に支障が無い通常の高さまで車高を復帰する動作を行う。このような構成により、扉1が開いたときには、地上から扉1部分の車両の床までの距離が短くなり、扉1から乗客が容易に乗降することができるようになる。
【0021】
車高変更機構6は、空気ばね61、空気タンク62、電磁弁63を有する。空気ばね61は、車両の車軸に設けられた懸架装置であり、圧縮空気の圧力により懸架を行うものである。空気タンク62は、空気ばね61に供給する圧縮空気を貯留するタンクである。電磁弁63は、空気タンク62から空気ばね61への圧縮空気供給路に設けられた弁であり、制御部9の制御に応じて開閉することで、空気ばね61への圧縮空気の供給量を調節する。空気タンク62に貯留された圧縮空気が電磁弁63の開閉に伴い供給あるいは排出されることにより、空気ばね61への圧縮空気の供給あるいは排出が行われる。車高を下げる場合には、制御部9の制御に応じて電磁弁63が動作し、空気ばね61から圧縮空気が排出される。反対に、車高を通常の高さに復帰させる場合には、空気ばね61に圧縮空気が供給される。
【0022】
光電センサ7は、扉1の開閉動作範囲内に人や物体の存在を検知するための光センサである。光電センサ7は、例えば扉1から乗客が乗降するために車両の車体に設けられた図示しないステップ部に設置されている。光電センサ7によりが検出されると、安全のため、例え開閉スイッチ4が操作されたとしても、扉1が開閉できなくなるように制御部9により制御される。
【0023】
車椅子スロープ8は、扉1が開いた状態において、車両への車椅子の乗降を補助するための補助部材である。車椅子スロープ8は、非使用時には車内の所定位置に収納されており、使用時には扉1の車内側から車外側へ延伸する、車椅子が通ることができるだけの幅を有した板状部材である。車椅子スロープ8は、例えば図示しないモータにより、非使用状態から使用状態、つまり板状部材を延伸した状態へと遷移するように構成されていてもよいし、あるいは、人力で使用状態へと遷移するようにしてもよい。
【0024】
車椅子スロープ8は、車椅子スロープ8が使用中であるか否かを判定する車椅子センサ81を有する。車椅子センサ81は、例えば上述した光電センサ7と同様の光センサであってもよいし、重量により車椅子の使用を検出する重量センサであってもよい。車椅子センサ81が車椅子スロープ8の使用を検出すると、安全のため、例え開閉スイッチ4が操作されたとしても、扉1が開閉できなくなるように制御部9により制御される。
【0025】
制御部9は、上述した車高変更装置100の各構成を制御する。制御部9の各構成に対する詳細な制御に関しては、以下に説明する。
【0026】
[扉1の開閉開始動作]
まず、扉1の開閉を開始する場合の動作について説明する。図2は、扉1の開閉が開始されるときの制御部9による制御の一例を示すフローチャートである。
【0027】
(ステップS1)
ステップS1において、制御部9は、開閉スイッチ4が操作されたか否かを判定する。操作されたと判定した場合、フローはステップS2に進み、そうでない場合、ステップS1の処理を繰り返す。
【0028】
(ステップS2)
ステップS1において開閉スイッチ4が操作されたと判定された場合、ステップS2において、制御部9は、扉開閉予告ブザー5を鳴らす。制御部9が扉開閉予告ブザー5を鳴らす時間の長さは、予め設定された時間である。
【0029】
(ステップS3)
ステップS3において、制御部9は、開閉スイッチ4が操作されてから所定時間が経過したか否かを判定する。経過したと判定された場合、フローはステップS4に進み、そうでない場合、フローはステップS1に戻る。なお、この所定時間は、開閉スイッチ4が操作されてから実際に扉1が開閉し始めるまでのタイムラグとして予め設定された時間であり、例えば0.8秒間である。
【0030】
(ステップS4)
ステップS3において開閉スイッチ4が操作されてから所定時間が経過したと判定された場合、ステップS4において、制御部9は、ステップS1において操作された通りに扉1の開閉を行うよう、扉開閉機構2に要求する。
【0031】
(ステップS5)
ステップS5において、制御部9は、扉開閉センサ3により扉1が開閉し始めたことが検出されたか否かを判定する。扉1が開閉し始めたことが検出された場合、フローはステップS6に進み、そうでない場合、ステップS5の処理を繰り返す。
【0032】
(ステップS6)
ステップS5において扉開閉センサ3により扉1が開閉し始めたことが検出された場合、ステップS6において、制御部9は、車高変更機構6に、扉1の開閉に合わせて車高の変更を行わせるように制御する。具体的には、制御部9は、ステップS1で開閉スイッチ4が開側に操作された場合は、車高が低くなるように、ステップS1で開閉スイッチ4が閉側に操作された場合は、車高を元の高さに戻すように制御する。
【0033】
以上のように、本実施の形態の車高変更装置100においては、開閉スイッチ4における開閉操作ではなく、実際に扉1が開閉を開始したことを契機として、車高変更機構6が車高を変化させる。これにより、例えば運転手が扉1の開閉を行わずに扉開閉予告ブザー5を鳴らして扉1付近の乗客に注意を促したい場合等、開閉スイッチ4が短時間に複数回操作された場合には、車高の変更動作が行われず、乗客に不快感を与えないようにすることができる。
【0034】
[扉1が開閉開始してから開閉終了するまでの間の動作]
次に、図2において説明したように扉1が開閉開始した後の車高変更装置100の動作について説明する。図3は、扉1の開閉が開始し始めてから終了するまでの動作を説明するためのフローチャートである。
【0035】
(ステップS11)
ステップS11の処理は、扉1が開き始め、あるいは閉まり始めてから、開閉が完了するまでの間に実行される処理である。ステップS11において、制御部9は、何らかの割り込みがあったか否かを判定する。割り込みがあったと判定された場合、フローはステップS12に進み、そうでない場合、フローはステップS14に進む。
【0036】
本ステップS11において想定される割り込みは、以下の2種類である。1つ目は、開閉スイッチ4の反転操作、つまり、扉1が開きかけ、あるいは閉まりかけであるにもかかわらず、車両の運転手が、扉1を閉める、あるいは開く操作を開閉スイッチ4に対して行うことによるもの、すなわち開閉スイッチ4の反転操作によるものである。ここで、本実施の形態では、扉1が閉まりかけた状態から開閉スイッチ4の操作に応じて扉1を開き直す、あるいは扉1が開きかけた状態から開閉スイッチ4の操作に応じて扉1を閉め直す動作を、扉1の反転動作と称する。2つ目は、光電センサ7による人や物体の検出信号、あるいは車椅子センサ81による車椅子スロープ8の使用の検出信号である。すなわち、扉1が開く、あるいは閉まりかけている状態で、扉1と干渉する位置に人や物体が検出されたり、車椅子スロープ8が使用中であることが検出されたりした場合に光電センサ7あるいは車椅子センサ81から出力される信号である。
【0037】
(ステップS12)
ステップS11において割り込みがあったと判定された場合、ステップS12において、制御部9は、ステップS11における割り込みが、開閉スイッチ4の反転操作によるものであるか否かの判定を行う。割り込みが開閉スイッチ4の反転操作によるものであると判定された場合、フローはステップS13に進み、そうでない場合、フローはステップS15に進む。
【0038】
(ステップS13)
ステップS12において割り込みが開閉スイッチ4の反転操作によるものであると判定された場合、ステップS13において、制御部9は、反転操作に応じた扉1の反転動作を扉開閉機構2に行わせるとともに、当該扉1の反転動作に応じた車高の変更を車高変更機構6に行わせる。
【0039】
具体的には、扉1が閉まりかけた状態で開閉スイッチ4に対して扉1を開く操作が行われた場合、制御部9は、閉まりかけた扉1の動作をその時点で止め、その時点での扉1の位置から扉1を開くように扉開閉機構2を制御する。そして、当該扉1を開く動作に対応して、制御部9は、車高変更機構6を制御して車高を低くさせる動作を行わせる。
【0040】
また、反対に扉1が開きかけた状態で開閉スイッチ4に対して扉1を開く操作が行われた場合、制御部9は、閉まりかけた扉1の動作をその時点で止め、その時点での扉1の位置から扉1を開くように扉開閉機構2を制御する。そして、当該扉1を閉める動作に対応して、制御部9は、車高変更機構6を制御して車高を元に戻させる動作を行わせる。
【0041】
以上のようなステップS13の動作により、運転手が例えば扉1が閉まりかけてからの駆け込み乗車をしようとした乗客を発見して扉1を開く操作を行った場合等でも、安全に扉1の開閉を行うことができる。
【0042】
なお、図2に示すフローチャートのステップS1からS3の処理では、開閉スイッチ4が操作されてから所定時間経過した後、制御部9は扉1を実際に開閉させ始めることとした。しかし、ステップS13においては、制御部9は、開閉スイッチ4に対する反転操作信号を受信した場合、即座に扉1を反転動作させるように扉開閉機構2に要求する。その理由は、開閉し始めた扉1を反転させるような操作は、閉まりかけた扉1に駆け込みをしようとする乗客がいる場合等、すぐに扉1の反転動作を行うことが望ましいからである。
【0043】
ステップS13において扉1の反転動作および車高変更動作が行われた後、フローはステップS11に戻る。これにより、駆け込みの乗客が存在する、扉1付近が乗客で混雑している、等の理由から運転手が短時間に扉1の開閉を複数回行うような動作に対応することができる。
【0044】
(ステップS14)
ステップS11において割り込みがないと判定された場合、ステップS14において、制御部9は、扉1の開閉が完了したか否かを判定する。この判定は、例えば扉開閉センサ3の検出結果に応じて行えばよい。扉1の開閉が完了したと判定された場合、制御部9は処理を終了し、開閉が完了していないと判定された場合、フローはステップS11に戻る。
【0045】
(ステップS15)
ステップS12において割り込みが開閉スイッチ4の反転操作によるものではない場合、ステップS15において、制御部9は、扉1の反転動作を扉開閉機構2に行わせる。ここで、割り込みが開閉スイッチ4の反転操作によるものではない場合とは、具体的には、ステップS11における割り込みが、光電センサ7による扉1付近の人や物体の検出信号、あるいは車椅子センサ81による車椅子スロープ8の使用の検出によるものである場合等である。
【0046】
このような場合、上述したように、制御部9は、扉1の反転動作を扉開閉機構2に行わせるものの、当該反転動作に対応した車高変更動作は車高変更機構6に行わせない。その理由は、光電センサ7による扉1付近の人や物体の検出、あるいは車椅子センサ81による車椅子スロープ8の使用の検出等は安全性の確保のために行われるものであり、このような場合における車高変更動作は、当該安全性を損なう恐れがあるからである。なお、安全性が損なわれる具体的な例としては、例えば、扉1に乗客が挟まれたり、車椅子スロープ8を使用して乗降中の車椅子使用者に扉1が接触したり、といった事態が挙げられる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態の車高変更装置100によれば、制御部9は、開閉スイッチ4が操作されてから所定時間が経過したことを条件に扉開閉機構2に扉1の開閉を行わせ、扉開閉センサ3により扉の開閉が始まったことを条件に、車高変更機構6に車体の高さを変更させる。
【0048】
すなわち、本実施の形態の車高変更装置100では、開閉スイッチ4における開閉操作ではなく、実際に扉1が開閉を開始したことを契機として、車高変更機構6が車高を変化させる。これにより、例えば運転手が扉1の開閉を行わずに扉開閉予告ブザー5を鳴らして扉1付近の乗客に注意を促したい場合等、開閉スイッチ4が短時間に複数回操作された場合には、車高の変更動作が行われず、乗客に不快感を与えないようにすることができる。
【0049】
また、本実施の形態の車高変更装置100によれば、扉1の開閉が開始してから完了するまでの間に、何らかの割り込みがあった場合、その割り込みが開閉スイッチ4の反転操作によるものであった場合には、制御部9は扉開閉機構2に扉1を反転させるとともに、車高変更機構6に車高を扉1の開閉状態に応じて変更させる。一方、割り込みが開閉スイッチ4の反転操作によるものではなく、例えば光電センサ7による扉1付近の人や物体の検出、あるいは車椅子センサ81による車椅子スロープ8の使用の検出によるものであった場合には、制御部9は扉開閉機構2に扉1を反転させるものの、車高変更機構6には車高を変更させない。
【0050】
このように、本実施の形態の車高変更装置100によれば、扉1の開閉が開始してから完了するまでの間に開閉スイッチ4の反転操作によるもの以外の割り込みが生じた場合、例えば光電センサ7による扉1付近の人や物体の検出、あるいは車椅子センサ81による車椅子スロープ8の使用の検出等、車両運行上の安全性を確保するための割り込みであるとして、車高変更機構6による車高の変更動作を行わない。従って、車両運行上の安全性をより高めることができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、扉開閉時に車体の高さを変更できる車高変更装置に好適である。
【符号の説明】
【0052】
100 車高変更装置
1 扉
2 扉開閉機構
3 扉開閉センサ
4 開閉スイッチ
5 扉開閉予告ブザー
6 車高変更機構
61 空気ばね
62 空気タンク
63 電磁弁
7 光電センサ
8 車椅子スロープ
81 車椅子センサ
9 制御部
図1
図2
図3