(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1プラネタリ機構、前記第2プラネタリ機構、前記第3プラネタリ機構及び前記第4プラネタリ機構は、前記入力軸の軸線に直角な方向に向かって順不同に配置される、請求項1又は2に記載の車両用自動変速機。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の車両用自動変速機の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態において、車両用自動変速機は、車両に搭載されたエンジンが出力する回転駆動力を変速する装置として用いられる。車両は、車両用自動変速機により変速された回転駆動力が差動装置などを介して駆動輪に伝達され、車両用自動変速機において成立した所定の変速段で前進または後進するように構成される。
【0026】
<第1実施形態>
本発明の車両用自動変速機の第1実施形態は、種々の構成が考えられるが、先ず、それらを包括した構成を示す
図1のレバーダイアグラムを参照して説明する。この車両用自動変速機1は、入力軸N、出力軸T、シングルピ
ニオン式又はダブルピ
ニオン式の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4を備える。第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、入力軸Nに沿って順不同に配置される。なお、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、入力軸Nの軸線Lに直角な方向に向かって順不同に配置、すなわち入力軸Nの軸線Lに対し、軸方向の同一位置でかつ径方向外側に順不同に配置することも可能である。
【0027】
各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、第1要素N11,N21,N31,N41、第2要素N12,N22,N32,N42、第3要素N13,N23,N33,N43を有している。第1要素N11,N21,N31,N41、第2要素N12,N22,N32,N42、第3要素N13,N23,N33,N43は、プラネタリ機構を構成するサンギヤ、キャリア、リングギヤのいずれかとなる。
【0028】
そして、車両用自動変速機1は、6つの係合要素(第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4及び第1、第2ブレーキB1,B2)を備える。第3クラッチCL3は、
図1の△で示す3箇所のうち、任意の1箇所に配置される。第4クラッチCL4は、
図1の○で示す3箇所のうち、任意の1箇所に配置される。この車両用自動変速機1は、上記6つの係合要素のうち、3つの係合要素を係合することによって11個の前進変速段及び1つの後進変速段を形成する。
【0029】
各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の各要素N11,N21,N31,N41,N12,N22,N32,N42,N13,N23,N33,N43は、連結部材J1,J2,J3,J4,J5,J6,J7,J8のいずれかを介して別のプラネタリ機構のいずれかの要素と連結し、もしくは更に第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4のいずれかを介して別のプラネタリ機構のいずれかの要素と連結を選択可能であり、又は第1、第2ブレーキB1,B2のどちらかを介して固定部材Kと連結を選択可能である。
【0030】
具体的には、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2は、第1連結部材J1を介して連結している。第1プラネタリ機構P1の第1要素N11は、第1ブレーキB1により固定部材Kとの連結を選択可能であり、また第2クラッチCL2により第1連結部材J1及び第3連結部材J3を介して第2プラネタリ機構P2の第1要素N21との連結を選択可能である。第1プラネタリ機構P1の第2要素N12は、入力軸Nと連結しており、また第1クラッチCL1により第1連結部材J1及び第3連結部材J3を介して第2プラネタリ機構P2の第1要素N21との連結を選択可能である。第1プラネタリ機構P1の第3要素N13は、第2連結部材J2を介して第4プラネタリ機構P4の第1要素N41と連結している。
【0031】
第2プラネタリ機構P2の第1要素N21は、第3連結部材J3を介して第1連結部材J1と連結し、又は第3連結部材J3に第3クラッチCL3が配置されたときは第3クラッチCL3により第3連結部材J3を介して第1連結部材J1との連結を選択可能である。第2プラネタリ機構P2の第2要素N22は、第4連結部材J4を介して第2連結部材J2と連結し、又は第4連結部材J4に第3クラッチCL3が配置されたときは第3クラッチCL3により第4連結部材J4を介して第2連結部材J2との連結を選択可能である。第2プラネタリ機構P2の第3要素N23は、第5連結部材J5を介して出力軸Tと連結し、又は第5連結部材J5に第3クラッチCL3が配置されたときは第3クラッチCL3により第4連結部材J4を介して出力軸Tとの連結を選択可能である。
【0032】
第3プラネタリ機構P3の第1要素N31は、第6連結部材J6を介して第4プラネタリ機構P4の第3要素N43と連結し、又は第6連結部材J6に第4クラッチCL4が配置されたときは第4クラッチCL4により第6連結部材J6を介して第4プラネタリ機構P4の第3要素N43との連結を選択可能である。第3プラネタリ機構P3の第2要素N32は、第7連結部材J7を介して第4プラネタリ機構P4の第2要素N42と連結し、又は第7連結部材J7に第4クラッチCL4が配置されたときは第4クラッチCL4により第7連結部材J7を介して第4プラネタリ機構P4の第2要素N42との連結を選択可能である。第3プラネタリ機構P3の第3要素N33は、第8連結部材J8を介して第1連結部材J1と連結し、又は第8連結部材J8に第4クラッチCL4が配置されたときは第4クラッチCL4により第8連結部材J8を介して第1連結部材J1との連結を選択可能である。
【0033】
第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、出力軸Tと連結している。第4プラネタリ機構P4の第3要素P43は、第2ブレーキB2により固定部材Kとの連結を選択可能である。
第3クラッチCL3は、第3連結部材J3、第4連結部材J4、第5連結部材J5のいずれか1部材に設置される。第4クラッチCL4は、第6連結部材J6、第7連結部材J7、第8連結部材J8のいずれか1部材に設置される。
【0034】
<第1実施形態の第1具体例>
次に、
図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第1具体例の概略構成について
図2を参照して説明する。なお、
図2においては、
図1に示す車両用自動変速機1の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付す。
【0035】
この車両用自動変速機10は、入力側(
図2の左側)から出力側(
図2の右側)に向かって軸方向に並設された4つのシングルピニオン式の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4と、各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4を構成する要素同士を選択的に係脱可能に連結する4つの第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4と、所定の要素をハウジングH(固定部材)に係脱可能に固定する2つの第1、第2ブレーキB1,B2とを備える。なお、第3クラッチCL3は、
図2の△で示す3箇所のうち、任意の1箇所に配置され、第4クラッチCL4は、
図2の○で示す3箇所のうち、任意の1箇所に配置される。
【0036】
さらに、第1、第2クラッチCL1,CL2同士を連結する第1連結部材J1と、所定の要素同士を連結する第2連結部材J2と、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4と所定の要素とを連結するための第3、第4、第5、第6、第7、第8連結部材J3,J4,J5,J6,J7,J8及び第1、第2クラッチCL1,CL2と所定の要素を連結する連結部材W1,W2と、第1、第2ブレーキB1,B2と所定の要素とを固定するための第1、第2ブレーキ連結部材V1,V2と、入力軸Nと、出力軸Tと、入力軸Nと所定の要素とを連結するための入力軸連結部材U1と、出力軸Tと所定の要素とを連結するための出力軸連結部材U2とを備える。
【0037】
また、この車両用自動変速機10は、車両の制御ECU2による制御信号に基づいて各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4、各ブレーキB1,B2からなる係合要素の作動状態を制御される。そして、本実施形態においては、上記の係合要素のうち3つの係合要素を作動させることによって、入力軸Nから入力される回転駆動力を、前進11速段及び後進1速段の何れかに変速して、出力軸Tから出力可能な構成となっている。車両用自動変速機10おける係合要素の作動状態と成立する変速段に関する詳細については後述する。
【0038】
入力軸N及び出力軸Tは、ハウジングHに対し、回転軸線L周りに回転可能に支承されている。入力軸Nは、図略のクラッチ装置などを介してエンジンの回転駆動力を車両用自動変速機1に入力する軸部材である。出力軸Tは、入力軸Nと同軸上に配置され、変速された回転駆動力を図略の差動装置などを介して駆動輪に出力する軸部材である。
【0039】
各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、キャリアC1,C2,C3,C4に回転可能に支持されたピニオンギヤQ1,Q2,Q3,Q4がサンギヤS1,S2,S3,S4及びリングギヤR1,R2,R3,R4に噛合するシングルピニオン式であり、入力側から順に第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4と称する。そして、各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の各要素は、第1、第2、第3、第4サンギヤS1,S2,S3,S4、第1、第2、第3、第4キャリアC1,C2,C3,C4、第1、第2、第3、第4リングギヤR1,R2,R3,R4と称する。
【0040】
なお、この車両用自動変速機10においては、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4は、シングルピニオン式であるため、第1、第2、第3、第4サンギヤS1,S2,S3,S4が
図1の第1要素N11,N21,N31,N41に相当し、第1、第2、第3、第4キャリアC1,C2,C3,C4が
図1の第2要素N12,N22,N32,N42に相当し、第1、第2、第3、第4リングギヤR1,R2,R3,R4が
図1の第3要素N13,N23,N33,N43に相当する。
【0041】
第1プラネタリ機構P1は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、及び第1サンギヤS1と第1リングギヤR1とに噛合する第1ピ
ニオンQ1を支承する第1キャリアC1で構成される。
第2プラネタリ機構P2は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、及び第2サンギヤS2と第2リングギヤR2とに噛合する第2ピ
ニオンQ2を支承する第2キャリアC2で構成される。
第3プラネタリ機構P3は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、及び第3サンギヤS3と第3リングギヤR3とに噛合する第3ピ
ニオンQ3を支承する第3キャリアC3で構成される。
第4プラネタリ機構P4は、回転軸線Lと同軸に回転可能に支承された第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、及び第4サンギヤS4と第4リングギヤR4とに噛合する第4ピ
ニオンQ4を支承する第4キャリアC4で構成される。
【0042】
各ブレーキB1,B2は、ハウジングHに設けられ、所定の要素の回転を制動する係合要素である。本実施形態では、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4と同様に、ハウジングHに形成された油路から供給される油圧によって作動する油圧式としている。これにより、各ブレーキB1,B2は、例えば制御ECU2による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから油圧を供給されると、図示しないディスクにパッドを押圧して、対象とする所定の要素の回転を制動する。そして、油圧ポンプによる油圧の供給が遮断されると、ディスクからパッドを離間させて、所定の要素の回転を許容する。
【0043】
各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、複数の要素同士を選択的に連結可能な係合要素である。本実施形態では、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、常開型であり、供給される油圧によって作動する油圧式としている。これにより、各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4は、例えば制御ECU2による制御指令に基づいて作動する油圧ポンプから入力軸NやハウジングHに形成された油路を介して油圧を供給されると、図示しない複数のクラッチ板を接触させて、対象の要素間で駆動力が伝達されるように要素同士を連結する。そして、上記の油圧ポンプによる油圧の供給が遮断されると、クラッチ板同士を離間させて、対象の要素間で駆動力が伝達されないように要素同士を離脱させる。
【0044】
次に、車両用自動変速機10における連結状態について説明する。
第1連結部材J1は、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2とを連結する。第2連結部材J2は、第1リングギヤR1と第4サンギヤS4とを連結する。第3連結部材J3は、第2サンギヤS2と第1連結部材J1とを連結状態、又は第3連結部材J3に第3クラッチCL3が配置されたときは係脱可能な連結状態の一方にする。第4連結部材J4は、第2キャリアC2と第2連結部材J2とを連結状態、又は第4連結部材J4に第3クラッチCL3が配置されたときは係脱可能な連結状態の一方にする。第5連結部材J5は、第2リングギヤR2と出力軸Tとを連結状態、又は第5連結部材J5に第3クラッチCL3が配置されたときは係脱可能な連結状態の一方にする。
【0045】
第6連結部材J6は、第3サンギヤS3と第4リングギヤR4とを連結状態、又は第6連結部材J6に第4クラッチCL4が配置されたときは係脱可能な連結状態の一方にする。第7連結部材J7は、第3キャリアC3と第4キャリアC4とを連結状態、又は第7連結部材J7に第4クラッチCL4が配置されたときは係脱可能な連結状態の一方にする。第8連結部材J8は、第3リングギヤR3と第1連結部材J1とを連結状態、又は第8連結部材J8に第4クラッチCL4が配置されたときは係脱可能な連結状態の一方にする。
【0046】
入力軸Nは、第1リングギヤR1の外側を通って軸線方向に延在する入力軸連結部材U1を介して第1キャリアC1に連結されている。
出力軸Tは、出力軸連結部材U2を介して第4キャリアC4に連結されている。
第1ブレーキB1は、第1ブレーキ連結部材V1に連結されている第1サンギヤS1の回転を、第1ブレーキ連結部材V1を介して制動する。
第2ブレーキB2は、第2ブレーキ連結部材V2に連結されている第3リングギヤR3の回転を、第2ブレーキ連結部材V2を介して制動する。
【0047】
第1クラッチCL1の一方は、第1連結部材J1に連結され、第1クラッチCL1の他方は、第1サンギヤS1の内側を通って軸線方向に延在する第1クラッチ連結部材W1を介して第1キャリアC1に連結される。第1クラッチCL1は、第1キャリアC1と第1連結部材J1とを係脱可能に連結する。
第2クラッチCL2の一方は、第1連結部材J1に連結され、第2クラッチCL2の他方は、第1ブレーキ連結部材V1に連結された第2クラッチ連結部材W2を介して第1サンギヤS1に連結される。第2クラッチCL2は、第1サンギヤS1と第1連結部材J1とを係脱可能に連結する。
第3クラッチCL3は、第3連結部材J3、第4連結部材J4及び第5連結部材J5のうち、1つ選択される第1選択連結部材J3、J4又はJ5に配置され、第1選択連結部材J3、J4又はJ5を係脱可能な連結状態にする。なお、第3クラッチCL3が配置されない残りの連結部材は、連結状態となる。
【0048】
第4クラッチCL4は、第6連結部材J6、第7連結部材J7及び第8連結部材J8のうち、1つ選択される第2選択連結部材J6、J7又はJ8に配置され、第2選択連結部材J6、J7又はJ8を係脱可能な連結状態にする。なお、第4クラッチCL4が配置されない残りの連結部材は、連結状態となる。
以上のように構成された車両用自動変速機10は、第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4、第1及び第2ブレーキB1,B2を選択的に作動して第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の要素の回転を規制することにより、前進11段、後進1段の変速段を形成することができる。
【0049】
<第1実施形態の第1具体例の一態様>
例えば、
図3に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第1具体例の一態様である車両用自動変速機11は、
図2に示す車両用自動変速機10の第4連結部材J4に第3クラッチCL3を配置し、第8連結部材J8に第4クラッチCL4を配置した変速機である。この車両用自動変速機11において、
図4の係合表に示すように第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4、第1及び第2ブレーキB1,B2を選択的に作動して第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の要素の回転を規制することにより、前進11段、後進1段の変速段を成立することができる。係合表において、各変速段に対応する各クラッチCL1,CL2,CL3,CL4、各ブレーキB1,B2の作動状態を示しており、欄に丸印が付されている場合、係合状態にあることを示す。なお、第4速段は、選択する係合要素を変更することにより4つ(4th,4th’,4th’’,4th’’’)選択可能である。
【0050】
例えば、車両用自動変速機11におけるLow速段は、係合表によると、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3及び第2ブレーキB2が係合状態にある。車両用自動変速機11がLow速段から第1速段に移行するには、第3クラッチCL3及び第2ブレーキB2の係合状態を維持しつつ、係合状態にする係合要素を第1クラッチCL1から第2クラッチCL2に切り換える。このように、車両用自動変速機11は、係合表に示すように、係合状態にする3つの係合要素のうち1つを切り換えることによって、隣り合う変速段に移行可能としている。
【0051】
一般的に、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構においては、サンギヤの回転数Ns、キャリアの回転数Nc、リングギヤの回転数Nrとプラネタリ機構のギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρとの関係は、下記式(1)で示され、各変速段におけるギヤ比は、式(1)に基づいて算出される。
【0052】
車両用自動変速機11の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の第1、第2、第3、第4サンギヤS1,S2,S3,S4の歯数をZs1,Zs2,Zs3,Zs4、第1、第2、第3、第4リングギヤR1,R2,R3,R4の歯数をZr1,Zr2,Zr3,Zr4とすると、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4のギヤ比ρ1,ρ2,ρ3,ρ4は、ρ1=Zs1/Zr1,ρ2=Zs2/Zr2,ρ3=Zs3/Zr3,ρ4=Zs4/Zr4である。
【0053】
Ns=(1+1/ρ)・Nc−1/ρ・Nr・・・(1)
【0054】
車両用自動変速機11において後進変速段形成時の第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の各要素の回転速度比は、
図5に示す速度線図のようになる。速度線図は、第1、第2、第3、第4プラネタリ機構P1,P2,P3,P4の第1、第2、第3、第4サンギヤS1,S2,S3,S4、第1、第2、第3、第4キャリアC1,C2,C3,C4、第1、第2、第3、第4リングギヤR1,R2,R3,R4からなる各要素を横軸方向にギヤ比ρ1,ρ2,ρ3,ρ4に対応させた間隔で配置し、縦軸方向に各要素に対応してその回転速度比を取ったものである。
【0055】
ここで、課題で説明したように、従来の4つのプラネタリ機構を備える車両用自動変速機では、
図27に示すように、後進変速段形成時に、第2サンギヤS42が高速回転(回転速度比Hb)に晒されるので、第1ブレーキB41及び第2クラッチCL42は、相対回転速度が大きくなって急激な温度上昇等が発生し易くなる等の問題がある。
しかし、本実施形態の車両用自動変速機11では、
図5に示すように後進変速段形成時に、第1ブレーキB1、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4を係合状態にして第1サンギヤS1、第2サンギヤS2及び第3リングギヤR3を固定することにより、第2リングギヤR2及び第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第3キャリアC3から第4キャリアC4を介して出力軸Tに出力される。
【0056】
第3サンギヤS3及び第4リングギヤR4は、同一回転で第4キャリアC4の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第3サンギヤS3の回転速度比は、第3プラネタリ機構P3に着目して算出すると、第3リングギヤR3が固定され、第3キャリアC3が出力回転であるので、ギヤ比ρ3(=第3サンギヤS3の歯数/第3リングギヤR3の歯数)の逆数+1と、出力回転速度比とを積算した値h1となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機11では、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。
【0057】
また、本実施形態の車両用自動変速機11では、後進変速段形成時に、第1キャリアC1は、入力軸Nの回転が入力され、第1サンギヤS1は、第1ブレーキB1により固定されているので、第1リングギヤR1は、増速の回転を得ており、前進段のうち4,6,8〜10速段を構成しているときと同じ回転を得ているため、後進変速時特有の特異な回転を生じない。
【0058】
また、本実施形態の車両用自動変速機11によると、第3サンギヤS3及び第4リングギヤR4をハウジングHに係脱可能な第2ブレーキB2は、相対回転速度が大きくならないので急激な温度上昇等の発生を抑制することができる。また、第3サンギヤS3を支持している軸受等は、耐久性が向上する。また、第3サンギヤS3に連結している軸に油路を形成している場合は、軸上に設置されているシーリングの耐久性も向上する。
【0059】
<第1実施形態の第2具体例>
次に、
図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第2具体例の概略構成について
図3に対応させて示す
図6を参照して説明する。なお、
図6においては、
図3に示す車両用自動変速機11の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機12は、入力軸Nを第1プラネタリ機構P1の内径側から連結している点で第1具体例の車両用自動変速機11と異なる構成となっている。すなわち、入力軸Nは、第1サンギヤS1の内側を通って軸線方向に延在する入力軸連結部材U1を介して第1キャリアC1に連結されている。このような構成の車両用自動変速機12においても、第1具体例の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
【0060】
<第1実施形態の第3具体例>
次に、
図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第3具体例の概略構成について
図3に対応させて示す
図7を参照して説明する。なお、
図7においては、
図3に示す車両用自動変速機11の構成部と同一の構成部は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機13は、シングルピ
ニオン式の第2プラネタリ機構P2をダブルピ
ニオン式の第2プラネタリ機構P2に変更した点で
図3に示す車両用自動変速機11と異なる構成となっている。
【0061】
この第3具体例においては、ダブルピニオン式の第2プラネタリ機構P2を用いているため、第2プラネタリ機構P2の各要素は、第2サンギヤS2が本発明の「第1要素」に相当し、第2リングギヤR2が本発明の「第2要素」に相当し、第2キャリアC2が本発明の「第3要素」に相当する。
【0062】
この車両用自動変速機13では、第2キャリアC2は、第5連結部材J5を介して第3キャリアC3及び第4キャリアC4に連結され、第2リングギヤR2は、第4連結部材J4を介して第3クラッチCL3に連結されている。このような構成の車両用自動変速機13においても、第1具体例の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
なお、ダブルピニオン式の第2プラネタリ機構P2を用いた場合、第2プラネタリ機構P2の各要素を、第2キャリアC2を本発明の「第1要素」、第2リングギヤR2を本発明の「第2要素」、第2サンギヤS2を本発明の「第3要素」となるように構成してもよい。
【0063】
<第1実施形態の第4具体例>
次に、
図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第4具体例の概略構成について
図3に対応させて示す
図8を参照して説明する。なお、
図8においては、
図3に示す車両用自動変速機11の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機14は、シングルピ
ニオン式の第3プラネタリ機構P3をダブルピ
ニオン式の第3プラネタリ機構P3に変更した点で
図3に示す車両用自動変速機11と異なる構成となっている。
【0064】
この第4具体例においては、ダブルピニオン式の第3プラネタリ機構P3を用いているため、第3プラネタリ機構P3の各要素は、第3サンギヤS3が本発明の「第1要素」に相当し、第3リングギヤR3が本発明の「第2要素」に相当し、第3キャリアC3が本発明の「第3要素」に相当する。
【0065】
この車両用自動変速機14では、第3キャリアC3は、第8連結部材J8を介して第4クラッチCL4に連結され、第3リングギヤR3は、第5連結部材J5を介して第2リングギヤR2及び第4キャリアC4に連結されている。このような構成の車両用自動変速機14においても、第1具体例の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
なお、ダブルピニオン式の第3プラネタリ機構P3を用いた場合、第3プラネタリ機構P3の各要素を、第3キャリアC3を本発明の「第1要素」、第3リングギヤR3を本発明の「第2要素」、第3サンギヤS3を本発明の「第3要素」となるように構成してもよい。
【0066】
<第1実施形態の第5具体例>
次に、
図1に示す第1実施形態の車両用自動変速機1の第5具体例の概略構成について
図3に対応させて示す
図9を参照して説明する。なお、
図9においては、
図3に示す車両用自動変速機11の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機15は、シングルピ
ニオン式の第2、第3プラネタリ機構P2,P3をダブルピ
ニオン式の第2、第3プラネタリ機構P2,P3に変更した点で
図3に示す車両用自動変速機11と異なる構成となっている。
【0067】
この第5具体例においては、ダブルピニオン式の第2、第3プラネタリ機構P2,P3を用いているため、第2、第3プラネタリ機構P2,P3の各要素は、第2、第3サンギヤS2,S3が本発明の「第1要素」に相当し、第2、第3リングギヤR2,R3が本発明の「第2要素」に相当し、第2、第3キャリアC2,C3が本発明の「第3要素」に相当する。
【0068】
この車両用自動変速機15では、第2キャリアC2は、第5連結部材J5を介して第3リングギヤR3及び第4キャリアC4に連結され、第2リングギヤR2は、第4連結部材J4を介して第3クラッチCL3に連結されている。第3キャリアC3は、第8連結部材J8を介して第4クラッチCL4に連結されている。このような構成の車両用自動変速機15においても、第1具体例の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、ダブルピニオン式の第2、第3プラネタリ機構P2,P3を用いた場合、第2、第3プラネタリ機構P2,P3の各要素を、第2サンギヤS2、第3キャリアC3を本発明の「第1要素」、第2リングギヤR2、第3リングギヤR3を本発明の「第2要素」、第2キャリアC2、第3サンギヤS3を本発明の「第3要素」となるように構成してもよい。
【0070】
また、ダブルピニオン式の第2、第3プラネタリ機構P2,P3を用いた場合、第2、第3プラネタリ機構P2,P3の各要素を、第2キャリアC2、第3キャリアC3を本発明の「第1要素」、第2リングギヤR2、第3リングギヤR3を本発明の「第2要素」、第2サンギヤS2、第3サンギヤS3を本発明の「第3要素」となるように構成してもよい。
【0071】
また、ダブルピニオン式の第2、第3プラネタリ機構P2,P3を用いた場合、第2、第3プラネタリ機構P2,P3の各要素を、第2キャリアC2、第3サンギヤS3を本発明の「第1要素」、第2リングギヤR2、第3リングギヤR3を本発明の「第2要素」、第2サンギヤS2、第3キャリアC3を本発明の「第3要素」となるように構成してもよい。
【0072】
<第2実施形態>
本発明の車両用自動変速機の第2実施形態及び第2実施形態の第1具体例を、
図1及び
図3にそれぞれ対応させて示す
図10及び
図11を参照して説明する。なお、
図10及び
図11においては、
図1及び
図3に示す車両用自動変速機1,11の構成部材と同一の構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機2,21は、
図1及び
図3の車両用自動変速機1,11において、第3ブレーキB3を追加し、連結部材、クラッチ、ブレーキの繋ぎは概略据え置いた構成である。
【0073】
この車両用自動変速機21では、第3ブレーキB3は、第3ブレーキ連結部材V3に連結されている第3プラネタリ機構P3の第3リングギヤR3(
図10の車両用自動変速機2においては第3要素N33)の回転を、第3ブレーキ連結部材V3を介して制動する。
図12に示すように、この車両用自動変速機21では、第3ブレーキB3と、第2ブレーキB2を除く他の係合要素(第1、第2、第3、第4クラッチCL1,CL2,CL3,CL4及び第1ブレーキB1)のうち2つの係合要素を係合することにより、既存の後進変速段Rev.4の他に3つの後進変速段Rev.3,Rev2,Rev1を追加できる。なお、既存の後進変速段Rev.4は、選択する係合要素を変更することにより3つ(Rev.4,Rev.4’,Rev.4’’)選択可能である。
【0074】
図13〜
図16は、後進変速段Rev.4(Rev.4’,Rev.4’’),Rev.3,Rev2,Rev1における回転速度比を示す図である。なお、
図13に示す後進変速段Rev.4(Rev.4’,Rev.4’’)は、
図5に示す後進変速段と同一であるため、説明を省略する。
図14に示すように、後進変速段Rev.3形成時は、第3ブレーキB3、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2を係合状態にして第2キャリアC2及び第3リングギヤR3を固定することにより、第2リングギヤR2及び第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第4キャリアC4を介して出力軸Tに出力される。
【0075】
第3サンギヤS3及び第4リングギヤR4は、同一回転で第4キャリアC4の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第3サンギヤS3の回転速度比は、第3プラネタリ機構P3に着目して算出すると、第3リングギヤR3が固定され、第3キャリアC3が出力回転であるので、ギヤ比ρ3(=第3サンギヤS3の歯数/第3リングギヤR3の歯数)の逆数+1と、出力回転速度比とを積算した値h2となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。
【0076】
また、
図15に示すように、後進変速段Rev.2形成時は、第3ブレーキB3、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3を係合状態にして第3リングギヤR3を固定することにより、第2リングギヤR2及び第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第4キャリアC4を介して出力軸Tに出力される。
【0077】
第4サンギヤS4及び第1リングギヤR1は、同一回転で回転し、第1サンギヤS1及び第2サンギヤS2は、同一回転で高速回転となる。しかし、第1サンギヤS1(第2サンギヤS2)の回転速度比は、第1プラネタリ機構P1に着目して算出すると、第1リングギヤR1の回転速度比が1より小さいが0より大きく、第1キャリアC1が入力回転であるので、ギヤ比ρ1(=第1サンギヤS1の歯数/第1リングギヤR1の歯数)の逆数と、1−R1の回転速度比とを積算し、1を足した値h3となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。
【0078】
また、
図16に示すように、後進変速段形成Rev.1形成時は、第3ブレーキB3、第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3を係合状態にして第3リングギヤR3を固定することにより、第2リングギヤR2及び第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第4キャリアC4を介して出力軸Tに出力される。この場合も
図15の説明と同様に、第1サンギヤS1の回転速度比はh4となるため、従来の車両用自動変速機40の第2サンギヤS42の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。
【0079】
図17は、各後進変速段Rev.4(Rev.4’,Rev.4’’),Rev.3,Rev2,Rev1における回転速度比を纏めて示す図である。この図から明らかなように、後進変速段を出力ギヤ比が大きくなる側に追加しても、
図16に示す第1サンギヤS1の回転が最高回転速度であり、従来の車両用自動変速機10の第2サンギヤS12の回転速度比Hbのような高速回転に達することはない。よって、車両用自動変速機21では、第2クラッチCL2及び第1ブレーキB1の急激な温度上昇等の発生を防止できる。また、第2実施形態の車両用自動変速機21においても、第1実施形態の車両用自動変速機11と同様の効果を得ることができる。
【0080】
ところで、車両用自動変速機21が後進変速段Rev.4に形成されているときは、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1には、出力の反力が掛かることになる。すなわち、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、各プラネタリ機構P1,P2,P3,P4のギヤ比ρ1,ρ2,ρ3.ρ4で表されるトルク分担比で反力を受ける必要があり、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1が大型化する。具体的には、
図18に示すように、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比は大きい値となる。なお、
図18では、Rev.4,Rev.4’,Rev.4’’,Rev.3,Rev2,Rev1の順に図の左側から右側に向けて示す。
【0081】
そこで、車両用自動変速機21では、後進変速段Rev.4’形成時は、第2クラッチCL2は係合状態にせずに解放状態のままとし、第1ブレーキB1を係合状態にして第1サンギヤS1を固定するとともに、第3ブレーキB3を係合状態にして第3リングギヤR3を固定し、第4クラッチCL4を係合状態にして第2サンギヤS2と第3リングギヤR3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0082】
これにより、
図18に示すように、第2クラッチCL2は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第4クラッチCL4は第3ブレーキB3で固定されてトルク分担比は0になり、第1ブレーキB1のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2と同時に係合状態となっていないときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進変速段Rev.4と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0083】
また、後進変速段Rev.4’’形成時は、第1ブレーキB1は係合状態にせずに解放状態のままとし、第3ブレーキB3を係合状態にして第3リングギヤR3を固定し、第2クラッチCL2を係合状態にして第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とを連結するとともに、第4クラッチCL4を係合状態にして第2サンギヤS2と第3リングギヤR3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0084】
これにより、
図18に示すように、第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進変速段Rev.4と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0085】
また、後進変速段Rev.3形成時は、第1ブレーキB1は係合状態にせずに解放状態のままとし、第3ブレーキB3を係合状態にして第3リングギヤR3を固定し、第1クラッチCL1を係合状態にして第1キャリアC1と第2サンギヤS2とを連結するとともに、第2クラッチCL2を係合状態にして第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0086】
これにより、
図18に示すように、第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2のトルク分担比は前進変速段で第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進変速段Rev.4と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0087】
また、後進変速段Rev.2形成時は、第1ブレーキB1は係合状態にせずに解放状態のままとし、第3ブレーキB3を係合状態にして第3リングギヤR3を固定し、第2クラッチCL2を係合状態にして第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とを連結するとともに、第3クラッチCL3を係合状態にして第1サンギヤS1と第2キャリアC2と第3サンギヤS3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0088】
これにより、
図18に示すように、第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進変速段Rev.4と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0089】
また、後進変速段Rev.1形成時は、第1ブレーキB1は係合状態にせずに解放状態のままとし、第3ブレーキB3を係合状態にして第3リングギヤR3を固定し、第1クラッチCL1を係合状態にして第1キャリアC1と第2サンギヤS2とを連結するとともに、第3クラッチCL3を係合状態にして第1サンギヤS1と第2キャリアC2と第3サンギヤS3とを連結することにより、第3キャリアC3に逆回転駆動力を作り出す。
【0090】
これにより、
図18に示すように、第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3のトルク分担比は前進変速段で第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3が同時に係合状態となっているときと同じで、第3クラッチCL3のトルク分担比が若干大きい値となるが、第1クラッチCL1のトルク分担比は比較的小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。つまり、後進変速段Rev.4と比較して、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1のトルク分担比を大幅に減少させることができる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0091】
<第2実施形態の第2具体例>
次に、
図10に示す第2実施形態の車両用自動変速機2の第2具体例の概略構成について
図11に対応させて示す
図19を参照して説明する。なお、
図19においては、
図11に示す構成部材と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機22は、第3プラネタリ機構P3と第4プラネタリ機構P4とを入れ替えた点で第1具体例の車両用自動変速機21と異なる構成となっている。すなわち、車両用自動変速機22は、入力側(
図19の左側)から出力側(
図19の右側)に向かって軸方向に、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第4プラネタリ機構P4、第3プラネタリ機構P3の順に並設した構成となっている。このような構成の車両用自動変速機22においても、第1具体例の車両用自動変速機21と同様の効果を得ることができる。
【0092】
<第2実施形態の第3具体例>
次に、
図10に示す第2実施形態の車両用自動変速機2の第3具体例の概略構成について
図11に対応させて示す
図20を参照して説明する。なお、
図20においては、
図11に示す構成部材と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機23は、第2プラネタリ機構P2と第3プラネタリ機構P3とを入れ替えた点、及び第3クラッチCL3を第4連結部材J4から第5連結部材J5に配置替えした点で第1具体例の車両用自動変速機21と異なる構成となっている。すなわち、車両用自動変速機23は、入力側(
図20の左側)から出力側(
図20の右側)に向かって軸方向に、第1プラネタリ機構P1、第3プラネタリ機構P3、第2プラネタリ機構P2、第4プラネタリ機構P4の順に並設した構成となっている。そして、第3クラッチCL3は、第3キャリアC3及び第2リングギヤR2を係合による連結状態にする。このような構成の車両用自動変速機23においても、第1具体例の車両用自動変速機21と同様の効果を得ることができる。
【0093】
<第2実施形態の第4具体例>
次に、
図10に示す第2実施形態の車両用自動変速機2の第4具体例の概略構成について
図11に対応させて示す
図21を参照して説明する。なお、
図21においては、
図11に示す構成部材と同一構成部材は同一番号を付して詳細な説明を省略する。この車両用自動変速機24は、第2プラネタリ機構P2と第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4とを入れ替えた点、及び第3クラッチCL3を第4連結部材J4から第5連結部材J5に配置替えした点で第2実施形態の第3具体例の車両用自動変速機23と異なる構成となっている。すなわち、車両用自動変速機24は、入力側(
図20の左側)から出力側(
図20の右側)に向かって軸方向に、第1プラネタリ機構P1、第3プラネタリ機構P3、第4プラネタリ機構P4、第2プラネタリ機構P2の順に並設した構成となっている。そして、第3クラッチCL3は、第3キャリアC3及び第2リングギヤR2を係合による連結状態にする。このような構成の車両用自動変速機13においても、第1具体例の車両用自動変速機21と同様の効果を得ることができる。
【0094】
(効果)
第1実施形態(第1〜第5具体例を含む)の車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、第1要素N11,N21,N31,N41、第2要素N12,N22,N32,N42及び第3要素N13,N23,N33,N43をそれぞれ有する第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4と、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と連結する入力軸Nと、第4プラネタリ機構P4の第2要素N42と連結する出力軸Tと、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3及び第4クラッチCL4並びに第1ブレーキB1及び第2ブレーキB2の6つの係合要素と、第1クラッチCL1と第2クラッチCL2とを連結する第1連結部材J1と、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13と第4プラネタリ機構P4の第1要素N41とを連結する第2連結部材J2と、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21と第1連結部材J1とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第3連結部材J3と、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22と第2連結部材J2とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第4連結部材J4と、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23と出力軸Tとを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第5連結部材J5と、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31と第4プラネタリ機構P4の第3要素N43とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第6連結部材J6と、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32と第4プラネタリ機構P4の第2要素N42とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第7連結部材J7と、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と第1連結部材J1とを連結状態又は係脱可能な連結状態の一方にすることが可能な第8連結部材J8と、を備える。
【0095】
そして、第1ブレーキB1は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定し、第2ブレーキB2は、第4プラネタリ機構P4の第3要素N43を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定し、第1クラッチCL1は、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と第1連結部材J1とを係脱可能に連結し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係脱可能に連結し、第3クラッチCL3は、第3連結部材J3、第4連結部材J4及び第5連結部材J5のうち、1つ選択される第1選択連結部材に配置され、第1選択連結部材を係脱可能な連結状態にし、第4クラッチCL4は、第6連結部材J6、第7連結部材J7及び第8連結部材J8のうち、1つ選択される第2選択連結部材に配置され、第2選択連結部材を係脱可能な連結状態にし、第3クラッチCL3が配置されない第3連結部材J3、第4連結部材J4及び第5連結部材J5を連結状態にするとともに、第4クラッチCL4が配置されない第6連結部材J6、第7連結部材J7及び第8連結部材J8を連結状態にし、6つの係合要素のうちの3つの係合要素を係合することにより、前進11段速及び少なくとも後進1段速を形成する。
【0096】
そして、この車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、後進変速段形成時、第1ブレーキB1は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と固定部材K(H)とを固定し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係合により連結し、第4クラッチCL4は、第2選択連結部材を係合による連結状態にすることを要旨とする。
【0097】
この構成の車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)では、後進変速段形成時、第1ブレーキB1、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4を係合状態にして第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21及び第3プラネタリ機構P3の第3要素N33を固定することにより、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタり機構P4の第2要素N42に逆回転駆動力を作り出す。この逆回転駆動力は、第4プラネタリ機構P4の第2要素N42を介して出力軸Tに出力される。
【0098】
第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、同一回転で第4プラネタリ機構P4の第2要素N42の回転(出力回転)よりも高速回転となる。しかし、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31の回転は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33が固定され、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32が出力回転であるので、従来の車両用自動変速機30,40と比較して高速回転に達することはない。
【0099】
また、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、入力軸Nに沿って順不同に配置される。これにより、回転軸線Lと直角な方向にコンパクトな車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)の構成の自由度が高まる。
また、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、入力軸Nの軸線に直角な方向に向かって順不同に配置される。これにより、回転軸線L方向にコンパクトな車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)の構成の自由度が高まる。
【0100】
また、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4の各第1要素N11,N21,N31,N41はサンギヤであり、各第2要素N12,N22,N32,N42はキャリアであり、各第3要素N13,N23,N33,N43はリングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構のみで構成することができる。
【0101】
また、第1プラネタリ機構P1、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第2プラネタリ機構P2は、ダブルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、3つのシングルピ
ニオン式プラネタリ機構と1つのダブルピ
ニオン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0102】
また、第1プラネタリ機構P1、第3プラネタリ機構P3及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第2プラネタリ機構P2は、ダブルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、3つのシングルピ
ニオン式プラネタリ機構と1つのダブルピ
ニオン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0103】
また、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第3プラネタリ機構P3は、ダブルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、3つのシングルピ
ニオン式プラネタリ機構と1つのダブルピ
ニオン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0104】
また、第1プラネタリ機構P1、第2プラネタリ機構P2及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第3プラネタリ機構P3は、ダブルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、3つのシングルピ
ニオン式プラネタリ機構と1つのダブルピ
ニオン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0105】
また、第1プラネタリ機構P1及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第2プラネタリ機構P2及び第3プラネタリ機構P3は、ダブルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、2つのシングルピ
ニオン式プラネタリ機構と2つのダブルピ
ニオン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0106】
また、第1プラネタリ機構P1及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第2プラネタリ機構P2及び第3プラネタリ機構P3は、ダブルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、2つのシングルピ
ニオン式プラネタリ機構と2つのダブルピ
ニオン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0107】
また、第1プラネタリ機構P1及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第2プラネタリ機構P2及び第3プラネタリ機構P3は、ダブルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、2つのシングルピ
ニオン式プラネタリ機構と2つのダブルピ
ニオン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0108】
また、第1プラネタリ機構P1及び第4プラネタリ機構P4は、シングルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第2プラネタリ機構P2及び第3プラネタリ機構P3は、ダブルピ
ニオン式プラネタリ機構であり、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11、第2プラネタリ機構P2の第2要素N22、第3プラネタリ機構P3の第1要素N31及び第4プラネタリ機構P4の第1要素N41は、サンギヤであり、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12、第2プラネタリ機構P2の第3要素N23、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33及び第4プラネタリ機構P4の第2要素N42は、キャリアであり、第1プラネタリ機構P1の第3要素N13、第2プラネタリ機構P2の第1要素N21、第3プラネタリ機構P3の第2要素N32及び第4プラネタリ機構P4の第3要素N43は、リングギヤである。これにより、車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)は、2つのシングルピ
ニオン式プラネタリ機構と2つのダブルピ
ニオン式プラネタリ機構の組み合わせで構成することができる。
【0109】
第2実施形態(第1〜第4具体例を含む)の車両用自動変速機2(21,22,23,24)は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定する第3ブレーキB3を備え、後進変速段形成時、第1ブレーキB1は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と固定部材K(H)とを固定し、第3ブレーキB3は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と固定部材K(H)とを固定し、第4クラッチCL4は、第6連結部材J6、第7連結部材J7及び第8連結部材J8のうち、1つの選択される第2選択連結部材を係合による連結状態にする。
【0110】
この構成の車両用自動変速機2(21,22,23,24)では、上述の車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。第2クラッチCL2は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第4クラッチCL4は第3ブレーキB3で固定されてトルク分担比は0になり、第1ブレーキB1のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2と同時に係合状態となっていないときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0111】
また、第2実施形態(第1〜第4具体例を含む)の車両用自動変速機2(21,22,23,24)は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定する第3ブレーキB3を備え、後進変速段形成時、第3ブレーキB3は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と固定部材K(H)とを固定し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係合により連結し、第4クラッチCL4は、第6連結部材J6、第7連結部材J7及び第8連結部材J8のうち、1つの選択される第2選択連結部材を係合による連結状態にする。
【0112】
この構成の車両用自動変速機2(21,22,23,24)では、上述の車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2及び第4クラッチCL4が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0113】
また、第2実施形態(第1〜第4具体例を含む)の車両用自動変速機2(21,22,23,24)は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定する第3ブレーキB3を備え、後進変速段形成時、第3ブレーキB3は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と固定部材K(H)とを固定し、第1クラッチCL1は、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と第1連結部材J1とを係合により連結し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係合により連結する。
【0114】
この構成の車両用自動変速機2(21,22,23,24)では、上述の車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2のトルク分担比は前進変速段で第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0115】
また、第2実施形態(第1〜第4具体例を含む)の車両用自動変速機2(21,22,23,24)は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定する第3ブレーキB3を備え、後進変速段形成時、第3ブレーキB3は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と固定部材K(H)とを固定し、第2クラッチCL2は、第1プラネタリ機構P1の第1要素N11と第1連結部材J1とを係合により連結し、第3クラッチCL3は、第3連結部材J3、第4連結部材J4及び第5連結部材J5のうち、1つ選択される第1選択連結部材に配置され、第1選択連結部材を係合による連結状態にする。
【0116】
この構成の車両用自動変速機2(21,22,23,24)では、上述の車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第2クラッチCl2及び第3クラッチCL3のトルク分担比は前進変速段で第2クラッチCL2及び第3クラッチCL3が同時に係合状態となっているときと同じ小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0117】
また、第2実施形態(第1〜第4具体例を含む)の車両用自動変速機2(21,22,23,24)は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33を固定部材K(H)に対し係脱可能に固定する第3ブレーキB3を備え、後進変速段形成時、第3ブレーキB3は、第3プラネタリ機構P3の第3要素N33と固定部材K(H)とを固定し、第1クラッチCL1は、第1プラネタリ機構P1の第2要素N12と第1連結部材J1とを係脱可能な係合により連結し、第3クラッチCL3は、第3連結部材J3、第4連結部材J4及び第5連結部材J5のうち、1つ選択される第1選択連結部材に配置され、第1選択連結部材を係合による連結状態にする。
【0118】
この構成の車両用自動変速機2(21,22,23,24)では、上述の車両用自動変速機1(10,11,12,13,14,15)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。第1ブレーキB1は解放状態であるのでトルク分担比は0になり、第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3のトルク分担比は前進変速段で第1クラッチCL1及び第3クラッチCL3が同時に係合状態となっているときと同じで、第3クラッチCL3のトルク分担比が若干大きい値となるが、第1クラッチCL1のトルク分担比は比較的小さい値となり、第3ブレーキB3が大部分のトルクを分担することになる。よって、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4及び第1ブレーキB1は、摩擦材の枚数やアクチュエータ室の面積を減少させて小型化でき、変速機のコストを低減でき、またトランスミッションサイズの小型化を図り内部構成の自由度を高められる。
【0119】
なお、第2実施形態の車両用自動変速機では、第3ブレーキB3をドグクラッチに変更することにより引き摺り要素を増やすことなく上述の効果を得られ、引き摺りによる燃費の悪化を抑制できる。
また、複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合せることが可能であることは、明らかである。