(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における打込機の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示す打込機10は、止具としての釘11を打撃するドライバブレード12と、ドライバブレード12に打撃力を加える圧力室13と、圧力室13を形成する蓄圧容器14と、蓄圧容器14を収容したシリンダケース15と、ドライバブレード12に固定されたピストン16と、を有する。シリンダケース15は、筒形状の胴部15Aと、胴部15Aの第1端部に連続する壁部15Bと、を有する。胴部15Aの第2端部は開口されている。また、打込機10は、シリンダケース15内に設けられ、かつ、ピストン16を動作可能に支持するシリンダ17と、シリンダケース15の胴部15Aに固定されたテールカバー18と、を有する。テールカバー18は、胴部15Aの第2端部に固定されている。さらに、シリンダケース15の外部に電動モータ19が設けられ、電動モータ19の動力をドライバブレード12に伝達する動力機構20が設けられている。シリンダケース15の胴部15Aに連続するハンドル21が設けられている。また、ハンドル21において、胴部15Aとは反対側の端部に装着部22が設けられている。装着部22へ着脱可能な蓄電池23が設けられ、蓄電池23は、電動モータ19に電力を供給する。また、釘11を収容するマガジン24が設けられ、マガジン24はテールカバー18へ取り付けられている。
【0013】
シリンダケース15は、金属製または合成樹脂製である。シリンダケース15内に、蓄圧容器14及びシリンダ17が設けられている。蓄圧容器14及びシリンダ17は、金属製である。蓄圧容器14は、中空の本体25と、本体25に連続するボス部26と、を有し、本体25内に圧力室13が形成されている。ボス部26は環状である。シリンダ17は、円筒形状の胴部27と、シリンダ17の中心線A1方向における第1端部に設けた固定部28と、を有する。中心線A1方向で固定部28の反対に位置する第2端部は、ボス部26内へ配置されており、圧力室13とシリンダ17内とがつながっている。テールカバー18と、シリンダケース15の胴部15Aとの間に、ホルダ29が介在されている。ホルダ29は金属製または合成樹脂製であり、ホルダ29は保持孔30を有する。テールカバー18は、ベース部31と、ベース部31に連続するノーズ部32と、を有する。ベース部31は、ねじ部材33によりホルダ29へ固定されており、ホルダ29はシリンダケース15へ固定されている。固定部28は、保持孔30へ配置されており、固定部28は、テールカバー18とホルダ29とにより挟まれて、中心線A1に沿った方向で位置決め固定されている。
【0014】
ピストン16及びドライバブレード12は、シリンダ17の中心線A1に沿った方向に移動可能である。中心線A1は、シリンダ17及びドライバブレード12において共通である。シリンダ17は、ピストン16及びドライバブレード12の動作方向を直線状に規制するガイド部材である。ピストン16の外周面にシール部材34が取り付けられており、シール部材34がシリンダ17の内周面に接触してシール面を形成する。圧力室13に空気が封入されており、シール部材34は圧力室13を気密に維持する。ピストン16は、圧力室13の圧力を受けて、テールカバー18へ近づく向きで押される。シリンダ17内であって、圧力室13とつながる空気室80は、圧力室13の一部を形成する。空気室80は、ピストン上室とも呼ばれる。ドライバブレード12は釘11を打撃する要素であり、かつ、棒形状である。ドライバブレード12は金属製である。
【0015】
蓄電池23は、収容ケース35と、収容ケース35内に収容した複数の電池セルとを有する。電池セルは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セルは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池等を用いることができる。蓄電池23は直流電源である。
【0016】
電動モータ19はモータケース36内に設けられ、モータケース36はテールカバー18に固定されている。電動モータ19は、モータケース36に対して回転しないステータ37と、モータケース36内で回転可能なロータ38と、を備えている。ステータ37は、ステータコアに導線を巻いたものである。電動モータ19は、ブラシレスモータである。ロータ38は、出力軸39と、出力軸39に固定されたロータコア40と、を備えている。出力軸39は、2個の軸受41により支持されており、ロータ38は、軸線A2を中心として回転可能である。ロータコア40に永久磁石が取り付けられている。
【0017】
また、モータケース36内に減速機42が設けられている。減速機42は、電動モータ19とドライバブレード12との間の動力伝達経路に配置されている。減速機42は、
図4及び
図5のように、第1プラネタリギヤ機構43、第2プラネタリギヤ機構44、第3プラネタリギヤ機構45を備えており、第1プラネタリギヤ機構43〜第3プラネタリギヤ機構45は、軸線A2を中心として同心状に配置されている。第2プラネタリギヤ機構44は、軸線A2に沿った方向で第1プラネタリギヤ機構43と第3プラネタリギヤ機構45との間に配置されている。第1プラネタリギヤ機構43は、第1サンギヤS1と、第1サンギヤS1と同心状に配置された第1リングギヤR1と、第1サンギヤS1及び第1リングギヤR1に噛み合う第1ピニオンギヤP1を自転、かつ、公転可能に支持した第1キャリヤC1と、を備えている。第1サンギヤS1は、減速機42の入力要素である。
【0018】
第2プラネタリギヤ機構44は、第2サンギヤS2と、第2サンギヤS2と同心状に配置された第2リングギヤR2と、第2サンギヤS2及び第2リングギヤR2に噛み合う第2ピニオンギヤP2を自転、かつ、公転可能に支持した第2キャリヤC2と、を備えている。第3プラネタリギヤ機構45は、第3サンギヤS3と、第3サンギヤS3と同心状に配置された第3リングギヤR3と、第3サンギヤS3及び第3リングギヤR3に噛み合う第3ピニオンギヤP3を自転、かつ、公転可能に支持した第3キャリヤC3と、を備えている。第3キャリヤC3は、減速機42の出力要素である。第3キャリヤC3は、駆動軸46に連結されており、駆動軸46は、第3キャリヤC3と共に一体回転する。
【0019】
第1サンギヤS1は、出力軸39に固定されており、第1リングギヤR1は、モータケース36に固定されている。第1キャリヤC1は、軸線A2を中心とするアウターギヤ47を備えている。第2サンギヤS2と第1キャリヤC1とが一体回転するように連結されている。また、モータケース36の内周面に固定されたブレーキギヤ48が設けられている。第2リングギヤR2は、軸線A2に沿った方向に移動可能である。第2リングギヤR2は、軸線A2に沿った方向における停止位置を、第1位置と第2位置とに切り替え可能である。
【0020】
第2リングギヤR2は、
図5で軸線A2よりも下に示す第1位置で停止すると、第2ピニオンギヤP2及びブレーキギヤ48に噛み合い、かつ、アウターギヤ47には噛み合わない。第2リングギヤR2は、
図5で軸線A2よりも上に示す第2位置で停止すると、第2ピニオンギヤP2及びアウターギヤ47に噛み合い、かつ、ブレーキギヤ48には噛み合わない。さらに、ハンドル21または装着部22にモード切替スイッチが設けられている。モード切替スイッチは、減速機42の変速比を切り替える要素である。作業者がモード切替スイッチを操作すると、第2リングギヤR2の位置が切り替えられる。
【0021】
電動モータ19に電力が供給されて出力軸39が回転する。出力軸39の回転力は、減速機42を経て駆動軸46へ伝達される。減速機42の回転要素の状態は、以下の通りである。第2リングギヤR2は、モード切替スイッチの操作によりローモードが選択されていると、第1位置で停止する。つまり、第2リングギヤR2は、
図5で軸線A2よりも下に示すように、第2ピニオンギヤP2及びブレーキギヤ48に噛み合い、かつ、アウターギヤ47には噛み合わない。
【0022】
ローモードが選択されている場合、第1リングギヤR1は反力要素であり、出力軸39の回転力が第1サンギヤS1に入力されると、その回転力は第1キャリヤC1から出力される。第1キャリヤC1と共に第2サンギヤS2が一体回転し、かつ、第2リングギヤR2が反力要素となり、第2キャリヤC2から回転力が出力される。第2キャリヤC2と共に第3サンギヤS3が一体回転し、かつ、第3リングギヤR3が反力要素となり、第3キャリヤC3の回転力が駆動軸46へ伝達される。減速機42の変速比は、減速機42の入力要素である第1サンギヤS1の回転速度と、減速機42の出力要素である第3キャリヤC3の回転速度と、の比であり、第3キャリヤC3の回転速度は、第1サンギヤS1の回転速度よりも低速となり、回転力が増幅される。
【0023】
これに対して、ハイモードが選択されると、第2リングギヤR2は、
図5で軸線A2よりも上に示す第2位置で停止する。つまり、第2リングギヤR2は、第2ピニオンギヤP2及びアウターギヤ47に噛み合い、かつ、ブレーキギヤ48には噛み合わない。ハイモードが選択されている場合、出力軸39の回転力が第1サンギヤS1に入力されると、第1リングギヤR1は反力要素となり、第1キャリヤC1は回転力を出力する。第2プラネタリギヤ機構44は、第2サンギヤS2と第2リングギヤR2と第2キャリヤC2とが一体回転する。さらに、第2キャリヤC2と共に第3サンギヤS3が一体回転し、かつ、第3リングギヤR3が反力要素となり、第3キャリヤC3の回転力が駆動軸46へ伝達される。ハイモードが選択された場合における減速機42の変速比は、ローモードが選択された場合における減速機42の変速比よりも小さい。
【0024】
動力機構20は、駆動軸46の回転力をドライバブレード12の往復動作力に変換する。動力機構20は、
図2及び
図3のように、駆動軸46に固定された円板49と、円板49の外周面に形成されたピニオン50と、ドライバブレード12に設けられたラック51と、を備えている。打込機10を側面視すると、駆動軸46の軸線A2は、中心線A1と交差しない。円板49は駆動軸46と共に一体回転可能であり、ピニオン50は、円板49の回転方向における一定の角度範囲に形成されている。
【0025】
ピニオン50は、凸部と凹部とを、円板49の回転方向に交互に配置したものである。ラック51は、凸部と凹部とを、ドライバブレード12の長手方向に交互に配置したものである。ピニオン50は、ラック51に噛み合った状態と、ラック51から離れた状態とに、切り替わる。駆動軸46が
図3で時計回りで回転し、かつ、ピニオン50がラック51に噛み合っていると、駆動軸46の回転力はドライバブレード12に伝達されて、ドライバブレード12及びピストン16は、蓄圧容器14へ近づく向きで中心線A1方向に動作する。ピニオン50がラック51から離れていると、駆動軸46の回転力はドライバブレード12へ伝達されない。
【0026】
シリンダ17の固定部28と、テールカバー18のベース部31との間にバンパ52が設けられている。ベース部31に凹部53が設けられ、バンパ52は、凹部53から固定部28内に亘って配置されている。バンパ52の一部は、固定部28内に配置されている。バンパ52は、ピストン16がテールカバー18に近づく向きで移動する場合に、ピストン16の移動範囲を規制するストッパの役割を果たす。また、バンパ52は、ピストン16及びドライバブレード12の運動エネルギを吸収する緩衝装置であり、バンパ52はゴム状弾性体、例えば、エラストマーで一体成形されている。特に、耐熱性に優れた熱硬化性エラストマーが好ましい。また、バンパ52は、ピストン16及びドライバブレード12が、中心線A1方向に移動する範囲を規制するストッパとしての役割を持つ。
【0027】
バンパ52を中心線A1方向に貫通するガイド孔54が形成されている。ドライバブレード12は、ガイド孔54で中心線A1方向に往復動作可能に設けられている。バンパ52は、中心線A1に対して垂直な平面視で、
図6(A)のように、外周形状が円形である。さらに、
図3のように、バンパ52の外周面には、中心線A1に沿った方向でノーズ部32に近づくほど、直径が大きくなる向きのテーパが付与されている。また、固定部28の内周面には、中心線A1に沿った方向でノーズ部32に近づくほど、直径が大きくなる向きのテーパが付与されている。
【0028】
テールカバー18は、金属製または合成樹脂製であり、テールカバー18のノーズ部32に射出口55が設けられている。射出口55は、中心線A1と平行な方向に配置されており、射出口55は、ガイド孔54へつながっている。ドライバブレード12は、射出口55内で中心線A1方向に移動可能である。マガジン24が保持している釘11は、1本づつ射出口55へ供給される。
図1のように、ノーズ部32にプッシュレバー56が取り付けられている。プッシュレバー56は、テールカバー18に対して中心線A1に沿った方向に所定の範囲で移動可能である。
【0029】
プッシュレバー56に接触子58が設けられ、ノーズ部32にストッパ59,60が設けられている。プッシュレバー56は、圧縮バネ57の力で中心線A1に沿った方向に押され、接触子58がストッパ60に接触して停止している。具体的には、プッシュレバー56は、圧縮バネ57の力でベース部31から離れる向きに押されている。プッシュレバー56を被打込部材へ押し付けると、プッシュレバー56は、圧縮バネ57の力に抗してベース部31へ近づく向きで移動し、接触子58がストッパ59へ接触し、プッシュレバー56が停止する。
【0030】
ハンドル21にトリガ73が設けられており、ハンドル21内にトリガスイッチ61が設けられている。トリガスイッチ61は、トリガ73の操作によりオン及びオフが切り替わる。装着部22内に制御基板62が設けられており、制御基板62は、コントローラ及びインバータ回路を有する。インバータ回路は、電動モータ19のステータ37及び電池セルに接続されている。インバータ回路は、ステータ37に接続された複数のスイッチング素子を備え、コントローラは、複数のスイッチング素子のオン・オフを切り替える。インバータ回路は、蓄電池23から電動モータ19に供給する電力を制御する。コントローラは、トリガスイッチ61の信号、モード切替スイッチの信号を処理する。
【0031】
また、電動モータ19のロータ38の回転方向の位相を検出する位相検出センサが設けられている。コントローラは、位相検出センサの信号に基づいて、ロータ38の回転方向の位置及び回転数を求めることができる。コントローラは、位相検出センサの信号及び減速機42の変速比に基づいて、駆動軸46の回転方向の位置、つまり、回転角度を推定する。
【0032】
次に、打込機10の使用例を説明する。トリガ73が操作されておらず、トリガスイッチ61がオフされていると、電動モータ19は停止している。また、ピストン16は、
図3のように圧力室13の圧力でバンパ52に押し付けられている。つまり、ピストン16は下死点で停止している。
【0033】
コントローラは、プッシュレバー56が被打込部材に押し付けられたこと、かつ、トリガスイッチ61がオンされていること、を検出すると、電動モータ19を一方向に所定角度回転した後、電動モータ19を停止する。電動モータ19の回転力は、減速機42を経由して駆動軸46に伝達される。駆動軸46及び円板49は、
図3で時計回りに回転する。円板49が回転すると、ピニオン50がラック51に噛み合い、円板49の回転力は、ドライバブレード12の動作力に変換される。このため、ピストン16は下死点から上死点に向けて移動し、圧力室13の圧力が上昇する。
【0034】
ピストン16が、
図1のように上死点に到達し、
図2のように、ピニオン50がラック51から解放された後、コントローラは電動モータ19を停止する。コントローラは、電動モータ19が回転を開始した時点から停止させるまでの回転角度を予め記憶している。または、モータ19の負荷電流等を検知して信号を出力する負荷センサを設け、コントローラが、負荷センサの信号を処理して、ピニオン50がラック51から解放されたことを検出できるようにしてもよい。
【0035】
ピニオン50がラック51から解放されると、ドライバブレード12を上昇させる力が解除され、ピストン16は圧力室13の圧力で下降する。このため、ドライバブレード12は、射出口55にある釘11を打撃し、釘11は被打込部材へ打ち込まれる。
【0036】
また、ピストン16は、釘11が被打込部材へ打ち込まれた後、
図3のようにバンパ52へ衝突する。バンパ52は弾性変形し、バンパ52はピストン16及びドライバブレード12の運動エネルギを吸収する。電動モータ19は、回転を開始した時点から、釘11が被打込部材へ打ち込まれた後、ピニオン50がラック51へ係合する前の時点までの回転角度で停止する。
【0037】
作業者は、釘11を被打込部材へ打ち込んだ後、トリガスイッチ61をオンした状態で、プッシュレバー56を被打込部材から離す。作業者が、再度、プッシュレバー56を被打込部材へ押し付けると、電動モータ19が一方向に所定角度回転して釘11を被打込部材へ打ち込み、電動モータ19が停止する。以後、作業者は上記操作を繰り返し、釘11を順次、対象物へ打ち込む。
【0038】
ピストン16が上死点から下死点へ向けて動作すると、ピストン16はバンパ52に衝突して停止する。バンパ52は弾性変形することで運動エネルギ、つまり、衝撃荷重を吸収する。このため、バンパ52は発熱する可能性があり、本実施形態の打込機10は、バンパ52の温度上昇を抑制する冷却機構を有する。冷却機構は、
図2、
図3、
図6(A),(B)に示されている。冷却機構は、第1通気路63、第2通気路64及び第3通気路65を含む。第1通気路63は、固定部28の内面に形成されている。第1通気路63は、固定部28の内面に、円周方向で間隔をおいて複数設けられている。
【0039】
第2通気路64は、凹部53の内面に円周方向で間隔をおいて複数配置されている。第2通気路64は、凹部53の内面に、中心線A1に沿って配置された箇所と、凹部53の径方向に沿って配置された箇所と、を含む。第2通気路64同士は、径方向における内側の端で互いにつながっている。また、第2通気路64は、第1通気路63及び射出口55へつながっている。第3通気路65は、中心線A1に沿って配置された箇所と、ベース部31の径方向に沿って配置された箇所とを含む。第3通気路65は複数設けられており、第3通気路65のうち、ベース部31の径方向に沿って配置された箇所は、ベース部31の外周面で開口されている。複数の第3通気路65は、第2通気路64へそれぞれつながり、かつ、テールカバー18の外部へそれぞれつながっている。第1通気路63、第2通気路64、第3通気路65、第4通気路67は、バンパ52の径方向で、ガイド孔54よりも外側に配置されている。
【0040】
バンパ52の熱は、第1通気路63〜第3通気路65内の空気を経て、テールカバー18の外へ伝達され、バンパ52の温度上昇を抑制できる。また、シリンダ17内にピストン16を配置し、かつ、ピストン16の外周面にシール部材34を取り付けることで、圧力室13を気密に維持保している。このため、
図2のように、ピストン16とバンパ52との間に空気室66が形成される。ピストン16は、空気室66と圧力室13とを隔てる要素である。空気室66は、ピストン下室とも呼ばれる。
【0041】
そして、テールカバー18の外部の空気は、ピストン16が上昇する行程で、第3通気路65、第2通気路64及び第1通気路63を経由して空気室66へ吸入される。これに対して、空気室66内の空気は、ピストン16が下降する行程で第1通気路63、第2通気路64及び第3通気路65を経由して、テールカバー18の外へ排出される。つまり、ピストン16が上昇及び下降することで、空気室66に対する空気の導入、空気室66からの空気の排出が行われ、空気室66の温度上昇を抑制できる。したがって、バンパ52を一層冷却することができ、バンパ52の寿命が向上する。
【0042】
さらに、バンパ52の熱は、シリンダ17またはテールカバー18を経由して、テールカバー18の外の空気へ伝達される。シリンダ17及びテールカバー18は、金属製であり、シリンダ17及びテールカバー18の熱伝導率は、ゴム状弾性体製のバンパ52の熱伝導率よりも高い。したがって、バンパ52の熱が第1通気路63〜第3通気路65内の空気に伝達されて、バンパ52の温度上昇が抑制されることに加えて、バンパ52の熱が、シリンダ17及びテールカバー18へ伝達されて、バンパ52の温度上昇を抑制できる。
【0043】
また、バンパ52自体の形状、構造は変更されておらず、バンパ52の熱をテールカバー18の外へ伝達するために、バンパ52に、空気の通気路となる溝または切り欠きを設けていない。このため、バンパ52の強度低下を抑制でき、バンパ52の寿命低下を抑制できる。さらに、ピストン16が下降する行程で、空気室66の空気がシリンダケース15の外部へ排出されるため、ピストン16が下降する場合の空気抵抗を低減できる。
【0044】
図7、
図8、
図9は、バンパ52の冷却機構の他の実施例を示す。冷却機構は、冷却機構は、第1通気路63、第4通気路67、第5通気路68、第6通気路69、第7通気路70、第8通気路72を含む。第4通気路67は、凹部53の内面に、円周方向に間隔をおいて複数設けられている。複数の第4通気路67は、複数の第1通気路63へそれぞれ接続されている。第5通気路68は、凹部53の内面に円周方向に間隔をおいて複数設けられている。複数の第5通気路68は、複数の第4通気路67へそれぞれ接続されている。第6通気路69は、凹部53の内面に円周方向で間隔をおいて複数設けられている。
【0045】
複数の第6通気路69は、それぞれ第5通気路68へ接続されている。凹部53の中央に第7通気路70が設けられており、第7通気路70は、複数の第6通気路69へつながっている。第7通気路70は、射出口55へつながっている。また、ベース部31に第8通気路72が設けられ、第8通気路72は第7通気路70へつながっている。第8通気路72は、中心線A1に沿った方向に配置されている。第8通気路72は、テールカバー18の外部へつながっている。
【0046】
さらに、冷却機構は、ベース部31に設けた第9通気路71を含む。第9通気路71は、ベース部31の径方向に沿って配置され、かつ、ベース部31の外周面に開口されている。第9通気路71は、ベース部31の円周方向に間隔をおいて複数設けられている。各第9通気路71は、テールカバー18の外部へつながっている。第6通気路69、第7通気路70、第8通気路72、第9通気路71は、バンパ52の径方向で、ガイド孔54よりも外側に配置されている。
【0047】
図7〜
図9に示す冷却機構では、ピストン16が上昇する行程で、テールカバー18の外部の空気が、第9通気路71、第1通気路63を通って空気室66へ進入する。また、ピストン16が下降する行程で、空気室66内の空気は、第1通気路63、第7通気路70、第8通気路72、第9通気路71を経由して、テールカバー18の外部へ排出される。
バンパ52の熱の一部は、第7通気路70、第6通気路69、第4通気路67、第8通気路72、第9通気路71内の空気を経て、テールカバー18の外部へ伝達される。
図7〜
図9に示す冷却機構を備えた打込機10は、
図2、
図3、
図6に示す冷却機構を有する打込機10と同じ効果を得ることができる。
【0048】
また、空気室66と、テールカバー18の外部との間を行き来する空気の経路は、第1通気路63と第9通気路71との接続箇所で1回屈曲するだけである。したがって、空気の流れ抵抗が増加することを抑制でき、バンパ52を冷却する性能が一層向上する。
【0049】
ここで、本実施形態の構成と本発明の構成との対応関係を説明すると、ピストン16が、本発明のピストンに相当し、ドライバブレード12が、本発明の打撃工具及びドライバブレードに相当し、打込機10が、本発明の打込機に相当し、シリンダ17が、本発明のシリンダに相当し、シリンダケース15及びテールカバー18が、本発明のハウジングに相当し、シリンダケース15が、本発明のシリンダケースに相当し、テールカバー18が、本発明のテールカバーに相当し、バンパ52が、本発明のバンパに相当する。
【0050】
また
、圧力室13が、本発明の圧力室に相当し、空気室66が、本発明の空気室に相当する。さらに、第1通気路63、第2通気路64、第3通気路65、第4通気路67、第
9通気路71が、通気路に相当する。図3に示す第1通気路63が、第1通気路に相当し、第2通気路64が第2通気路に相当し、第3通気路65が、第3通気路に相当する。また、図7及び図8に示す第1通気路63が、通気路に相当し、第4通気路67が第2通気路に相当し、第9通気路71が、第3通気路に相当する。射出口55が、本発明の射出口に相当し、凹部53が、本発明の凹部に相当し、ガイド孔54が、本発明のガイド孔に相当し、動力機構20が、本発明の動力機構に相当し、電動モータ19が、本発明のモータに相当し、ラック51が、本発明のラックに相当し、円板49が、本発明の回転要素に相当し、ピニオン50が、本発明のピニオンに相当する。
【0051】
本発明の打込機は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、本発明におけるモータは、電動モータの他、エンジン、油圧モータ、空気圧モータを含む。電動モータは、ブラシ付きモータまたはブラシレスモータの何れでもよい。電動モータの電源は、直流電源または交流電源のいずれでもよい。打込機により被打込部材へ打ち込まれる止具は、軸形状の釘の他、コ字形の止具を含む。釘は、頭部を有する釘、頭部の無い釘を含む。本発明の打撃工具は、ドライバブレード及びドライバビットを含む。
【0052】
本発明の通気機構は、空気室とハウジングの外部とを空気が出入りする要素であり、通気路、溝、切り欠きを含む。本発明の通気機構は、バンパの温度上昇を抑制する冷却機構の役割を果たす。本発明において、「打撃工具が取り付けられたピストン」とは、打撃工具とピストンとが一体である構造、または、打撃工具とピストンとが別体であり、かつ、連結部材で連結される構造を含む。また、本発明において、バンパが、ピストンが中心線方向に動作する範囲を規制する構造は、第1の構造〜第3の構造を含む。第1の構造は、ピストンがバンパに接触する構造であり、第2の構造は、打撃工具にフランジが設けられ、フランジがバンパに接触する構造である。第3の構造は、ピストンと打撃工具とを連結する連結部材が設けられ、連結部材がバンパに接触する構造である。
【0053】
本発明の動力機構は、モータの回転力をドライバブレードの動作力に変換する機構であり、動力機構は、ラック・アンド・ピニオン機構及びカム機構を含む。本発明の打撃機構は、ピストンをバンパに向けて付勢する機構であり、本発明の打撃機構は、ハウジング内に設けた伸縮自在なベローズと、ベローズの内部に形成された圧力室と、を有する変更例1を含む。変更例1の打撃機構は、ベローズの中心線方向の端部にピストンを固定する。変更例1の打撃機構を有する打込機は、ピストンが動作してベローズが収縮すると圧力室の圧力が上昇し、ピストンが上死点に到達すると、圧力室の圧力でピストンが下死点に向けて動作し、打撃工具により止具が打撃される。