(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無線通信端末と無線信号を送受信する無線アンテナを有する複数の無線アンテナ装置と、無線アンテナ装置を介して無線通信端末との信号の送受信処理を行う信号処理装置との間のデータ伝送を行う光通信ネットワークシステムを構成する親局通信装置において、
それぞれの上記無線アンテナ装置に接続された子局通信装置と、スター型ネットワークにより接続し、上記信号処理装置から供給されたデータを処理して上記子局通信装置への下り信号として送出する処理、及びそれぞれの上記子局通信装置から受信した上り信号を処理して上記信号処理装置に送信するものであって、上記子局通信装置からの上り信号の受信を行う際には上記子局通信装置への上り信号送信許可を行うデータ送受信処理部と、
上記データ送受信処理部が処理する下り信号を参照して、上記無線通信端末への通信制御信号を抽出し、抽出した通信制御信号に基づいて、上記無線通信端末から送信される上り信号を予測し、上記予測の結果に基づいて、上記データ送受信処理部を制御して、当該無線通信端末が接続する上記無線アンテナ装置に対応する上記子局通信装置へ、上記予測の結果に基づいた上り信号の送信許可を送信させる帯域制御処理手段と
を有することを特徴とする親局通信装置。
上記データ送受信処理部が処理する下り信号を参照して、上記無線通信端末への上り信号送信に係る資源割当の通知信号を取得し、取得した資源割当の通信信号に基づいて、上記無線通信端末から送信される上り信号のデータ量を予測し、予測した上り信号のデータ量を考慮した上り信号の送信許可を予め上記子局通信装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の親局通信装置。
上記データ送受信処理部が処理する下り信号を参照して、上記無線通信端末への上り信号送信に係る資源割当の通知信号を取得し、取得した資源割当の通信信号に基づいて、上記無線通信端末から送信される上り信号のデータ量及び送信タイミングを予測し、予測した上り信号のデータ量及び送信タイミングを考慮した上り信号の送信許可を、予め上記子局通信装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の親局通信装置。
無線通信端末と無線信号を送受信する無線アンテナを有する複数の無線アンテナ装置と、無線アンテナ装置を介して無線通信端末との信号の送受信処理を行う信号処理装置との間をスター型ネットワークにより接続する光通信ネットワークシステムにおいて、
それぞれの上記無線アンテナ装置に接続された子局通信装置と、上記信号処理装置と接続すると共にそれぞれの上記子局通信装置とスター型ネットワークにより接続する親局通信装置とを備え、
上記親局通信装置として請求項1〜3のいずれかに記載の親局通信装置を適用したことを特徴とする光通信ネットワークシステム。
無線通信端末と、上記無線通信端末と無線信号を送受信する無線アンテナを有する複数の無線アンテナ装置と、上記無線アンテナ装置を介して上記無線通信端末との信号の送受信処理を行う信号処理装置と、それぞれの上記無線アンテナ装置と親局通信装置との間をスター型ネットワークにより接続する光通信ネットワークシステムとを備える通信システムにおいて、上記光通信ネットワークシステムとして請求項4に記載の光通信ネットワークシステムを適用したことを特徴とする通信システム。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯電話等のデジタル無線通信端末と接続するための基地局設備(通信キャリア側の通信設備)として、C−RAN(Centralized Radio Access Network)と呼ばれる通信システムがある。
【0003】
C−RANでは、基地局機能は、無線の信号処理を行うBBU(Base Band Unit)と、アンテナ部分である複数のRRH(Remote Radio Head)に分離され、両者は通常光ファイバで直接接続される。また、C−RANでは、1台のBBUで、複数台のRRHを収容する構成としている。C−RANでは、この様な構成とする事で、サイズが大きく重量の重いBBUだけを、通信キャリアのビル内(例えば、電話局の局舎内)に設置し、比較的重量の軽いアンテナ部分(RRH)を、屋外(例えば、電柱やマンションの屋上等)に設置することができる。電柱やマンションの構造上、設置可能な装置の重量やスペースは制限されるため、屋外に設置する装置はより小型で軽量であることが望ましい。
【0004】
また、従来のC−RANでは、隣接するセルや端末間で協調して干渉雑音を小さくするCOMP(Coordinated Multi−point)と呼ばれる技術が適用される。C−RANでは、は特にCoS(Coordinated Scheduling)技術が関係する。C−RANでは、例えば、RRHの送信電力が端末の送信電力より遥かに大きい事に着目し、端末が通信すべきRRHに送信している間、隣接するRRHは送信を停止するといった手段でCoS(COMP)が実現される。
【0005】
さらに、従来のC−RANではBBUとRRHとの間の通信にスター型ネットワークであるPON(Passive Opticai Network)を適用することが検討されつつある。PONは、光ファイバを用いたアクセス網の形式で、スプリッタにより、1:Nの多分岐光ファイパと時分割多重分離や波長多重分離技術等を用いて、複数の加入側終端装置(Optical Network Unit: ONU)を、1台の局側終端装置(Optical Line Terminal:OLT)で収容する構成となっている。
【0006】
従来、C−RANでRRHとBBUを接続するための接続手段は、通常専用線(RRHごとの専用の光ファイバ)が用いられていたが、PONを適用することで、局側終端装置と複数の加入側終端装置との間の光ファイバー数や距離を低減することができる。従来、C−RANにPONを適用した技術としては、例えば、特許文献1の記載技術がある。
【0007】
特許文献1の記載技術では、各BBU−RRH区間をPONで構成している。すなわち、特許文献1の記載技術では、BBUにPONのOLTが接続されており、各RRHにPONのONUが接続されている。したがって、特許文献1の記載技術では、上流側から順に、BBU、OLT、ONU、RRH、ユーザ端末(以下、「User Equipment」、「UE」とも呼ぶ)の順に接続されている。
【0008】
しかしながら、RRHとBBUとの間をPONで接続する場合には、2つの課題がある。第1の課題は、C−RANでRRHとBBUを接続する信号の形式であるCPRI(Common Public Radio Interface)は、デジタル信号ではあるが、アナログ信号をA/D変換しただけの信号に近く、パケットベースではない(符号化されていない)ため、PONではそのまま伝送できないことである、また第2の課題としては、CPRIを伝送するための帯域が実質的な情報量の10倍程度必要となる点である。
【0009】
従来、上述の第1の課題を解決する方法としては、OLTと各ONUとの間で、固定周期でパケットを送受信する事で、実質的に専用線の様な固定帯域の伝送線路を提供する方法がある。また、従来、上述の第2の課題に対する解決方法としては、CPRIの信号を可逆圧縮(符号化)し、Ethernet(登録商標)等のパケットに挿入して、PONの区間を伝送する方法がある(特許文献1参照)。さらに、従来、上述の第2の課題に対する解決方法としては、RRHとBBU間の通信トラフィックに応じてPONで送受信するパケットの量やタイミングを変化させることで、より効率的なデータ伝送を行う方法がある(特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による親局通信装置、光通信ネットワークシステム、及び通信システムの一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0020】
(A−1)実施形態の構成
図2は、実施形態に係る通信システム1の全体構成について示したブロック図である。
【0021】
図3は、通信システム1を構成する各装置の内部構成、及びパケットの流れについて示した説明図(ブロック図)である。
【0022】
通信システム1は、ユーザが所持する無線通信端末としてのUE30を、コア側ネットワークNに接続させるC−RANの形式の通信システムである。
【0023】
通信システム1は、電話局の局舎内に配置された信号処理装置としてのBBU10と、BBU10の配下に接続された3つのアンテナ装置としてのRRH20(20−1、20−2、20−3)とを有している。そして、通信システム1では、各RRH20が1つのセルCを構成し、当該セルC内のUE20と接続する。この実施形態では、
図2に示すように、RRH20−1、20−2、20−3がそれぞれセルC−1、C−2、C−3を構成している。なお、この実施形態では、BBU10の配下に接続するRRH20の数(セルの数)は限定されないものである。また、BBU10は、上位側ネットワークとしてのコア側ネットワークNに接続されている。
【0024】
そして、通信システム1では、BBU10とRRH20−1、20−2、20−3との間の有線区間がPON2(光通信ネットワークシステム)により接続されている。PON2は、電話局の局舎内でBBU10の配下(下流側)に接続されるOLT40(親局通信装置)と、各RRH20に接続されるONU50(子局通信装置)とを有している。PON2では、OLT40に接続された光ファイバ60がスプリッタ50により分岐され、それぞれONU50−1、50−2、50−3に接続されている。この実施形態では、
図2に示すように、RRH20−1、20−2、20−3に、それぞれONU50−1、50−2、50−3が接続されている。すなわち、各ONU50は、対応するRRH20と同じロケーション(例えば、マンションの屋上や電柱の上等)で各RRH20の上流側に接続されている。
【0025】
なお、PON2を構成するOLT40及びONU50のインタフェースとしては種々のPONやGE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標)−Passive Optical Network)のインタフェース(例えば、IEEE802.3ahで規定されるインタフェース)を適用することができる。
【0026】
すなわち、通信システム1では、
図2に示すように上流側から順に、BBU10、OLT40、ONU50、RRH20、UE30の順に接続されている。
【0027】
この実施形態では
図3に示すように、UE30は、RRH20と無線通信するためのUE無線通信処理部31、及びUEアプリケーション32を有しているものとする。UE30は、例えば、スマートホンやモバイルルータ等のユーザが所持するモバイル通信端末である。なお、UE30としては種々の無線通信端末を適用することができる、この実施形態では説明を簡易とするため
図3に示す構成であるものとして説明する。UE30は、RRH20及びBBU10を介してコア側のネットワーク(例えば、インターネット等のネットワーク)に接続する。UEアプリケーション32は、コア側ネットワークN(または、コア側ネットワークNを経由した他のネットワーク)に接続される他の通信装置やサーバと通信することにより機能するアプリケーションソフトウェアである。
【0028】
次に、
図3を用いて、BBU10の内部構成について説明する。
図3に示すようにこの実施形態のBBU10は、上りパケット構成機能11、下り無線信号情報構成機能12、統計情報保持機能13、要求RB受付機能14、上り必要RB量予想機能15、及びRB割当スケジューリング機能16を有している。なお、
図3では、BBU10の機能で、PON2の区間のデータ伝送処理に直接関係のない機能(例えば、UE30に係るハンドオーバ制御機能等)の構成については図示を省略している。
【0029】
上りパケット構成機能11は、RRH20(UE30)から、PON2を経由してRRH20(UE30)から受信した上り信号を処理して、上流側(コア側ネットワークN)に送信する上りパケットを生成して送信(コア側ネットワークNに送信)する。上りパケット構成機能11は、コア側ネットワークNにパケットを送出する際に、当該パケットのコピーを統計情報保持機能13及び要求RB受付機能14に供給する。上りパケット構成機能11は、自装置宛に送信された制御信号については、コア側ネットワークNに送信せずに統計情報保持機能13や要求RB受付機能14に供給する。
【0030】
下り無線信号情報構成機能12は、上流側(コア側ネットワークN)から受信した下り方向のパケットを処理して、UE30(RRH20)に送信する無線信号のデータ構成(例えば、無線通信用に符号化済の無線信号のデータ構成)を行い、下流側(OLT40)に送出する。すなわち、下り無線信号情報構成機能12は、生成した下り方向の無線信号のデータ(情報)について、PON2を介してRRH20(UE30)に送信する処理を行う。
【0031】
統計情報保持機能13は、供給された上り方向のパケットを分析(例えば、RRH20ごとに使用された帯域の推移等)を算出して保持する。
【0032】
要求RB受付機能14は、各RRH20(各UE30)からのリソースブロック(以下、「RB」とも呼ぶ)の要求を受け付ける機能を担っている。RBとは資源としての無線帯域を割当てる単位である。BBU10では、UE30から上り方向のRB要求(以下、「上りRB要求」と呼ぶ)を受付けて、当該上りRB要求に応じてUE30に対するRB(上り方向の無線帯域)を割当てる処理を行う。すなわち、各UE30は、上り方向のデータ送信を行う際に、BBU10から所定量のデータ送信(上り方向のRB)を許可する通知(以下、「上りRB通知」と呼ぶ)を取得する必要がある。要求RB受付機能14は、上りパケット構成機能11から、上り方向のパケット(データ)が供給されると、当該上り方向のパケットを分析して上りRB要求を抽出する処理を行う。
【0033】
上り必要RB量予想機能15は、例えば、統計情報保持機能13で保持されている統計情報と、要求RB受付機能14で受付した上りRB要求の履歴とに基づいて、次に各UE30から要求される上り方向のRB量を予測する処理を行う。上り必要RB量予想機能15による予測処理については種々の予測アルゴリズムを適用することができるため詳しい説明については省略する。
【0034】
RB割当スケジューリング機能16は、上り必要RB量予想機能15が行った予測に基づいて、上り方向のRBを割り当てるスケジューリングを行う。
【0035】
そして、下り無線信号情報構成機能12は、RB割当スケジューリング機能16で行われたスケジューリングの結果に基づいて、各UE30宛に、上り方向のRBを割り当てるための上りRB通知を生成(上りRB通知の信号を生成)して送信する。
【0036】
次に、OLT40の内部構成について説明する。
【0037】
OLT40は、データ送受信処理部としてのパケット処理部41、パケット情報複製機能42、上りRB情報抽出機能43、及び動的帯域割当計算機能部44を有している。
【0038】
パケット処理部41は、BBU10から供給された下り方向のパケットを処理(いずれかのONU5を宛先とするPON2上のパケットに変換)して、PON2上に送出する処理を行う。また、パケット処理部41は、いずれかのONU50から受信したパケットを処理(BBU10に送信可能なパケットに変換)して、BBU10へ送信する。
【0039】
パケット処理部41は、例えば、IEEE802.3ahに規定されるGE−PON上のパケット処理構成のうち、動的帯域割当に係る処理構成(上りRB情報抽出機能43、及び動的帯域割当計算機能部44)を除外した処理構成により実現することができる。
【0040】
パケット情報複製機能42は、BBU10からパケット処理部41に供給される下り方向のパケットを複製して、上りRB情報抽出機能43に供給する処理を行う。
【0041】
上りRB情報抽出機能43は、パケット情報複製機能42から供給されたパケット(BBU10からの下り方向のパケット)から、上りRB通知を抽出する処理を行う。そして、上りRB情報抽出機能43は、抽出した上りRB通知を動的帯域割当計算機能部44に供給する。
【0042】
動的帯域割当計算機能部44は、PON2上の各ONU50に対して上り方向のデータ送信の帯域割当を行い、各ONU50からの上り信号が割り当てた帯域以下となるようにパケット処理部41を制御する処理を行う。具体的には、動的帯域割当計算機能部44は、各ONU50からの上り信号が割り当てた帯域以下となるように、パケット処理部41が各ONU50に送信するGRANT信号(GATE信号)の送信タイミング及び内容(各GRANT信号で許可する上り信号のデータ量)を制御する。なお、動的帯域割当計算機能部44が行う動的帯域割当の具体的方式については限定されないものであり、例えば、種々のGE−PON上のDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)アルゴリズムを一部に利用するようにしてもよい。
【0043】
そして、動的帯域割当計算機能部44は、パケット処理部41が各ONU50から受信したREPORT信号の内容と、上りRB情報抽出機能43から供給された上りRB通知の内容も考慮して、各ONU50に対して割当てる処理を行う。動的帯域割当計算機能部44が上りRB通知の内容を考慮した動的帯域割当を行う処理の詳細については後述する。
【0044】
以上のように、OLT40では、上りRB情報抽出機能43及び動的帯域割当計算機能部44により帯域制御処理手段が実現されている。
【0045】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有するこの実施形態の通信システム1の動作を説明する。
【0046】
図1は、通信システム1の動作の例について示したシーケンス図である。
【0047】
図1では、RRH20−1により構成されるセルC−1に接続するUE30が上り方向のデータ送信を行う例について示している。
【0048】
図1では、初期状態において、OLT40とONU50−1との間の初期コネクションは確立しているものとして説明する。また、
図1では、初期状態において、BBU10とRRH20−1との間の初期コネクションは確立しているものとして説明する。
【0049】
上述のような初期状態において、UE30がRRH20−1と無線通信可能な状態となってセルC−1に参加し、UE30とBBU10との間でのコネクションが確立したものとする(S101)。このときのUE30とBBU10との間の接続シーケンスについては種々のC−RANと同様の処理を適用することができるため詳しい説明については省略する。
【0050】
次に、BBU10の上り必要RB量予想機能15では、UE30に対して、必要であると予想される上り方向のRBが算出される。そして、BBU10では、RB割当スケジューリング機能16により、上り必要RB量予想機能15で予想されたRBに対する調整及びスケジューリング(送信時刻の決定)が行われる。このとき、RB割当スケジューリング機能16では、他の端末に対して予想された上り方向のRBも考慮して、当該UE30に対する最終的なRBの量を決定する。以下では、RB割当スケジューリング機能16が当該UE30に対して最終的に決定した上り方向のRBの量を「A」と表すものとする。以上のように、RB割当スケジューリング機能16は、上り必要RB量予想機能15により必要と予想されたRBに基づいて、最終的に割当てるRBの量と時刻(当該量のデータ送信タイミング)を決定する。そして、RB割当スケジューリング機能16により決定されたRBの量Aと時刻が設定された上りRB通知が、下り無線信号情報構成機能12により下り信号として構成され、UE30宛に送出される(S102)。
【0051】
そして、UE30宛の上りRB通知(量A)はOLT40、ONU50−1、及びRRH20−1を経由して、UE30のUE無線通信処理部31に到達することになる(S103〜S105)。
【0052】
このとき、OLT40では、パケット処理部41により、UE30宛の上りRB通知(量A)が複製されて上りRB情報抽出機能43に供給される。そして、上りRB情報抽出機能43では、当該上りRB通知(量A)が抽出されて、動的帯域割当計算機能部44に転送される。そして、動的帯域割当計算機能部44は、量Aに相当する上り方向の帯域(PON2上の帯域)をUE30(ONU50−1)に対して割当てる(S106)。このとき、動的帯域割当計算機能部44は、上りRB通知で指定されたRBの量をPON2上の単位(PON2上で帯域(データ量)を表す単位)に変換する変換式を用いた処理を行うようにしてもよい。例えば、動的帯域割当計算機能部44は、上りRB通知に設定されたRBの量(値)に所定の係数を乗じることで、PON2上の単位に変換するようにしてもよい。また、このとき、動的帯域割当計算機能部44は、上りRB通知に設定された時刻を考慮して、実際にUE30から送出されるデータをONU50−1が転送するタイミング(以下、「予想転送タイミング」と呼ぶ)を予想して、GRANT信号に反映するようにしてもよい。例えば、動的帯域割当計算機能部44は、上りRB通知に設定された時刻に、一定時間の遅延を加えた時刻(上りRB通知に設定された時刻から一定時間経過後の時刻)を予想転送タイミングとして設定するようにしてもよい。
【0053】
次に、パケット処理部41は、動的帯域割当計算機能部44により割り当てられた帯域(データ量)のデータ送信を、予想転送タイミングに許可する旨のGRANT信号(制御信号)を、ONU50−1宛に送信する(S107)。
【0054】
一方、UE30のUEアプリケーション32においては、量BのRBに相当する上り方向のデータ送信を行うイベントが発生したものとする。そして、UEアプリケーション32は、UE無線通信処理部31に対して、量Bに相当するデータを供給する(S108)。
【0055】
このとき、UE無線通信処理部31は、既に量Aの上りRB通知を取得しているので、量B<量Aであれば一度の送信で全てのデータ送信を行うことができる。しかし、ここでは、量B>量Aであるものとして以後の説明を行う。この場合、UE無線通信処理部31は、BBU10に対して、量Aの分だけデータ送信を行うと共に、不足分である量B−AのRBを要求する上りRB要求を送信すると判断することになる。この場合、UE無線通信処理部31では、量B−Aの分のトラフィックデータが残留することになる。
【0056】
したがって、ここでは、UE30(UE無線通信処理部31)は、BBU10宛に、上りRB通知で指定された時刻に、量Aのデータ送信を行う際に、量B−Aの分の上りRB要求を付加するものとする(S109)。なお、上りRB要求(量B−A)については、量Aのデータ送信の付加情報として取り扱われ、量Aのデータ送信の範囲内で送信可能であるものとして以下の説明を行う。
【0057】
そして、UE30から送出されたデータ(量A)が、RRH20−1、ONU50−1及びOLT40を経由してBBU10に到達する(S110〜S112)。
【0058】
このとき、ONU50−1では、既に上述のステップS107でOLT40から量AのRBに相当するデータ送信の許可(GRANT)を取得しているので、OLT40に別途許可(REPORT信号を送信して別途GRANTを取得する処理)を行う必要がない。したがって、このとき、ONU50−1は、UE30から送出されたデータ(量A)を取得すると、遅滞なく当該データをOLT40に送信することが可能となる。
【0059】
そして、BBU10では、UE30から供給された量Aのデータが、上りパケット構成機能11により所定の処理(例えば、上りパケットの生成処理)が実行される。このとき、要求RB受付機能14では、UE30からの上りRB要求が抽出され、上り必要RB量予想機能15に供給される。そして、上り必要RB量予想機能15及びRB割当スケジューリング機能16により、上りRB要求(不足量B−A)を勘案した上りRBの量とその時刻が決定される。このとき、RB割当スケジューリング機能16により最終的に決定された上り方向のRBの量を「C」と表すものとする。そして、RB割当スケジューリング機能16により決定されたRBの量Cと時刻が設定された上りRB通知が、下り無線信号情報構成機能12により下り信号として構成され、UE30宛に送出される(S113)。
【0060】
そして、UE30宛の上りRB通知(量C)はOLT40、ONU50−1、及びRRH20−1を経由して、UE30のUE無線通信処理部31に到達することになる(S114〜S116)。
【0061】
このとき、OLT40の動的帯域割当計算機能部44は、上述のステップS106と同様に、上りRB通知(量C)に相当する上り方向の帯域をUE30に対して割当てる(S117)。
【0062】
次に、パケット処理部41は、動的帯域割当計算機能部44により割り当てられた帯域(データ量)のデータ送信を、予想転送タイミングに許可する旨のGRANT信号(制御信号)を、ONU50−1宛に送信する(S118)。
【0063】
そして、UE30(UE無線通信処理部31)は、BBU10宛に、上りRB通知で指定された時刻に、量B−Aのデータ送信を行う(S119)。なお、ここでは、C>(B−A)でありUE無線通信処理部31において、RBの量の不足は生じないものとする。
【0064】
そして、UE30から送出されたデータ(量B−A)が、RRH20−1、ONU50−1及びOLT40を経由してBBU10に到達する(S120〜S122)。
【0065】
このとき、ONU50−1では、既に上述のステップS118でOLT40から量CのRBに相当するデータ送信の許可(GRANT)を取得しているので、UE30から送出されたデータ(量B−A)を取得すると、遅滞なく当該データをOLT40に送信することが可能となる。
【0066】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0067】
通信システム1では、OLT40が、BBU10からUE30宛に送信された上りRB通知の内容を取得して分析し、その分析結果に基づいて、UE30で必要となる帯域(データ量)を予め割当てるGRANT信号を、対応するONU50(当該UE30が接続するRRH20に係るONU50)に送信する処理を行っている(例えば、
図1のステップS106、S107参照)。これにより、ONU50では、UE30から上りRB通知に従った上り方向のデータ送信が行われた場合でも、予めOLT40から取得しているデータ送信の許可(GRANT)を利用して、遅滞なく当該データをOLT40に送信することが可能となる(例えば、
図1のステップS111参照)。
【0068】
ここで、仮に、OLT40が、上りRB通知に基づいて、先行的にGRANT信号を送信する処理を行わない場合を想定する。この場合、ONU50は、UE30から送出されたデータを取得してから、上り方向のデータ送信を要求(上り方向の帯域(リソース)を要求)するREPORT信号をOLT40に送信し、OLT40から当該REPORT信号に対応するGRANT信号(上り方向のデータ送信の許可)を得た後、初めてデータ送信を開始することができる。これに対して、この実施形態の通信システム1のONU50は、予め取得しているGRANT信号に従ってUE30からのデータを転送すればよいため、遅滞なく(極めて高効率に)上り方向のデータ転送処理を行うことができる。
【0069】
また、この実施形態の通信システム1では、OLT40とONU50との間で定期的に通信するのではなく、必要なときに必要なデータだけ転送されることから、結果的にONU50のスリープ時間を長くすることが可能となり、省電力な動作が可能なる。例えば、OLT40と各ONU50との間で、固定周期でパケットを送受信する事で、実質的に専用線の様な固定帯域の伝送線路を提供する場合は、ONU50のスリープ時間を長く取ることが難しいが、この実施形態のように、上りRB通知に基づいて上り方向の帯域を確保することでONU50を効率的に動作させてスリープ時間をより長く確保できることになる。
【0070】
さらに、この実施形態の通信システム1では、OLT40がBBU10からの下り信号を複製して分析し、UE30からの上り信号に先んじて、ONU50との間の上り信号の帯域を確保するだけであるため、BBU10及びRRH20については従来のC−RANに対応した装置をそのまま適用することができる。言い換えると、BBU10及びRRH20から見て、PON2の区間は単なる伝送路として見ることができるためその存在を意識せずに透過的に通信することが可能な構成となっている。したがって、例えば、既存の設備としてBBU10及びRRH20が存在する場合でも、後から有線区間にPON2を挿入(又は既存の有線区間のPONをこの実施形態のPON2に置き換え)するだけで、既存の設備について上述の各効果を奏することが可能となる。
【0071】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0072】
(B−1)上記の実施形態では、C−RANに準拠したBBU10とRRH20との間をPON2で伝送する構成について示したが、PON2はC−RANに限定されず、種々の無線基地局(アンテナ装置と信号処理装置に分離された基地局)の有線区間のデータ伝送に適用し得る。