(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面上に周波数選択素子を配置することによって、透過周波数帯の選択性(選択透過または選択遮蔽)を具備した周波数選択板(FSS:frequency selective surfaces)が知られている(たとえば、下記特許文献1参照)。
下記特許文献1では、平面上に同形状の周波数選択素子を配置することによって特定の周波数帯に共鳴する性能を備えたアンテナが開示されている。
【0003】
また従来、被印刷物に対して印刷を行う際に、多関節ロボットを用いて3次元的に被印刷体とプリントヘッドとの相対位置を変化させて印刷をおこなう技術が知られている。
たとえば、下記特許文献2には、プリントヘッドを多関節ロボットにツールとして持たせ、物体の湾曲した表面上に印刷をおこなう技術が開示されている。
【0004】
例えば、航空機の機体のように曲面形状を有する部材に周波数選択素子を付加する方法として、下記特許文献2のように多関節ロボットにプリントヘッドを保持させて3次元的に移動しながら印刷を行う方法が採られている。
より詳細には、インクジェット式のプリントヘッドを用いて、銀ナノ粒子含有インク等の導電性インクを所定の形状に吐出させ、硬化させることにより周波数選択素子を形成する。
一般にインクジェット式のプリントヘッドは、被印刷物の移動方向と直交する方向に複数個のインク吐出ノズルが配列されており、版代わりとなるビットマップの画像データに基づいて一定の間隔でインクを射出する制御を行っている。プリントヘッドは所定の幅を有し、この幅で印刷範囲をカバーすることで効率的な印刷が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10は、従来技術にかかる印刷装置において、プリントヘッドに不良が生じた場合の印刷結果を示す説明図である。
図10は、平面状の基材80に複数のクロスダイポール型の周波数選択素子(以下、「クロスダイポール型素子82」という)を印刷した様子を示している。印刷装置のプリントヘッドは、1回の走査につき2つのクロスダイポール型素子82を印刷可能な幅を有している。クロスダイポール型素子82は、プリントヘッドの走査方向に沿った線分である第1のダイポール部82Aと、プリントヘッドの走査方向と直交する線分である第2のダイポール部82Bとによって構成されている。
ここで、プリントヘッドのインクノズルの一部、例えば1回の走査につき印刷される2つのクロスダイポール型素子のうち紙面左側の素子84を印刷するインクノズルの一部にインク詰まりが生じた場合、素子84の第1のダイポール部82Aに印刷の欠陥Fが生じ、第2のダイポール部82Bの長手方向の長さが分断される。
インクジェット印刷には、インクノズルの詰まりによる印刷不良が生じやすいという課題があり、特に周波数選択素子に欠陥Fのような断線が生じると、素子の共振周波数にずれが生じて、周波数選択板の性能が低下する場合があるという課題がある。
周波数選択素子の性能を決定する支配的要素は、素子を構成するダイポール長であり、素子の長手方向に沿った断線(第1のダイポール部82Aにおける断線)の影響と比較して、素子を長手方向に分断する断線(第2のダイポール部82Bにおける断線)は素子性能への影響が大きくなる。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、同一形状の図柄を複数印刷するに際して印刷品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、請求項1の発明にかかる印刷方法は、被印刷体とプリントヘッドとの相対位置を変化させながら前記被印刷体上に同一形状の図柄を複数印刷する印刷方法であって、前記図柄の形状データを取得する形状取得工程と、前記図柄を、所定の太さを有し、それぞれ異なる方向に延在する複数の線分に分割する分割工程と、前記線分の前記延在方向に沿って前記プリントヘッドまたは前記被印刷体を直線移動させて当該線分を印刷する工程を、前記複数の線分それぞれに対して行う印刷工程と、
を含み、前記分割工程では、前記線分の太さが前記プリントヘッドのヘッド幅よりも小さい所定幅以下になるように前記図柄を分割し、前記図柄が前記所定幅よりも大きい幅を有する場合、前記図柄全体を第1の方向に延在する第1の線分群に分割するとともに、前記図柄全体を前記第1の方向と異なる第2の方向に延在する第2の線分群に分割し、前記印刷工程では、前記第1の線分群に含まれる線分を前記第1の方向に沿って1つずつ印刷するとともに、前記第1の線分群に重畳して前記第2の線分群に含まれる線分を前記第2の方向に沿って1つずつ印刷する、ことを特徴とする。
請求項
2の発明にかかる印刷方法は、前記分割工程では、前記図柄が曲線の箇所を含む場合には、前記曲線の箇所を複数の線分で形成される多角形に近似する、ことを特徴とする。
請求項
3の発明にかかる印刷方法は、前記プリントヘッドは、前記図柄を形成するインクを前記被印刷体に対して吐出するインク吐出口を備えるインクジェットプリントヘッドであり、前記印刷工程では、前記インクジェットプリントヘッドが備える前記インク吐出口のうち一部から前記インクを吐出させて印刷をおこなう、ことを特徴とする。
請求項
4の発明にかかる印刷方法は、前記印刷工程では、多軸ロボットを用いて前記被印刷体と前記プリントヘッドとの相対位置を変化させながら印刷を行う、ことを特徴とする。
請求項
5の発明にかかる印刷方法は、前記図柄は、周波数選択素子である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被印刷体上に同一形状の図柄を複数印刷する際に、印刷する図柄を、複数の線分に分割し、各線分の延在方向に沿ってプリントヘッドまたは被印刷体を直線移動させて印刷を行うので、プリントヘッドの一部領域で不良が生じた場合でも図柄を長手方向に分割する断線を生じさせることなく印刷を行うことができる。
本発明によれば、プリントヘッドのヘッド幅よりも小さい所定幅以下の線分に図柄を分割するので、プリントヘッドの1回の走査で1本以上の線分を印刷完了することができる。
本発明によれば、図柄が所定幅よりも大きい幅を有する場合、図柄全体を2種類の線分群に分割し、それぞれの線分群を重畳して印刷するので、プリントヘッドの一部領域で不良が生じた際に面積が大きい図柄を印刷する場合でも、図形を分割する断線を生じさせることなく印刷を行うことができる。
本発明によれば、図柄が曲線の箇所を含む場合には曲線の箇所を複数の線分で形成される多角形に近似するので、図柄が曲線の箇所を含む場合にも断線を生じさせることなく印刷を行うことができる。
本発明によれば、インクジェットプリントヘッドが備えるインク吐出口のうち一部のみを用いて印刷するので、一部のインク吐出口にインク詰まりが生じた場合に、インク詰まりが生じたインクインク吐出口を避けて、プリントヘッド上の他の領域で印刷を行うことができ、プリントヘッドの使用可能期間を延長して印刷コストを低減する上で有利となる。
本発明によれば、多軸ロボットを用いて被印刷体とプリントヘッドとの相対位置を変化させながら印刷を行うので、被印刷体への印刷の自由度を向上させる上で有利となる。
本発明によれば、長手方向の断線を生じさせることなく周波数選択素子を印刷することができるので、周波数選択板(FSS)の性能を安定させる上で有利となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる印刷方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
本実施の形態では、多関節ロボットを用いて被印刷体とプリントヘッドとの相対位置を変化させながら印刷を行う印刷装置に対して本発明にかかる印刷方法を適用する場合を例にして説明する。
また、本実施の形態では同一形状の図柄として周波数選択素子を複数印刷するものとする。
【0012】
図1は、実施の形態にかかる印刷装置10の構成を示す説明図である。
印刷装置10は、基材20の表面に配線パターンを印刷する。本実施の形態では、被印刷体(ワーク)の一例として、平面状の基材20を用いている。
印刷装置10は、プリントヘッド102、多関節ロボット104、印刷制御装置108および図示しないインク硬化手段によって構成され、基材20の表面に画像を印刷する。
【0013】
プリントヘッド102は、多関節ロボット104に支持され移動可能であるとともに、画像を形成するインクを基材20に対して吐出するインクノズル102A(インク吐出口)を複数個備える。多関節ロボット104を用いることによって、基材20に対するプリントヘッド102の移動方向が任意に調整可能となる。
プリントヘッド102は、たとえばインクノズル102Aからのインク吐出方向が重力方向と略一致するように下向きに支持されている。
インクノズル102Aは、プリントヘッド102の幅方向に一列に配置されている。多関節ロボット104がプリントヘッド102を移動させる際には、プリントヘッド102の移動方向に対してプリントヘッド102の幅方向が直交するようにプリントヘッド102の向きが調整される。
プリントヘッド102は、例えば幅が3〜4cm程度であり、この幅に500個程度のインクノズル102Aが配置されている。
【0014】
プリントヘッド102から吐出されるインクは、たとえば、エネルギー照射によって硬化する硬化型インクである。導体素材を用いた硬化型インクによって周波数選択素子のパターンを描画し、インク硬化手段を用いてインクを硬化させることによって、基材20の表面に周波数選択素子を形成することが可能となる。
インク硬化手段は、硬化型インクの種類に合わせて、たとえばレーザ、熱源、フラッシュ光、UV光などを照射することにより、基材20の表面に吐出された硬化型インクを硬化させる。
インク硬化手段は、多関節ロボットにツールとして持たせずに、支持部材等に固定して設置することによって安全性を向上させることができる。
【0015】
多関節ロボット104は、プリントヘッド102を作業点に固定して保持しながら作業点を移動させることにより基材20とプリントヘッド102との相対位置を変化させる。
図1では、多関節ロボット104でプリントヘッド102を保持した状態を図示している。多関節ロボット104は、具体的には軸方向に移動可能な多軸ロボットであり、望ましくは4軸以上の移動方向を有する多軸ロボットである。
本実施の形態では、多軸ロボットとして6軸多関節ロボットである多関節ロボット104を用いる。
【0016】
図2は、多関節ロボット104の構成例を示す説明図である。
図2に示した多関節ロボット104は6軸多関節ロボットであり、主に体部104A、腕部104B、手首部104Cによって構成される。
本実施の形態では、プリントヘッド102は治具を介して手首部104Cに支持され、多関節ロボット104の移動に追従して移動される。
【0017】
多関節ロボット104の体部104Aは、S軸を中心として回転可能であり、また、L軸を中心として前後方向に揺動可能である。
多関節ロボット104の腕部104Bは、R軸を中心に回転可能であり、また、U軸を中心として上下方向に揺動可能である。
多関節ロボット104の手首部104Cは、T軸を中心に回転可能であり、また、B軸を中心に上下方向に揺動可能である。
より詳細には、多関節ロボット104の各部(体部104A、腕部104B、手首部104C)には、それぞれの移動軸(S軸、L軸、R軸、U軸、T軸、B軸)に沿った支軸、および各支軸を回転させるモータが設けられている。各モータは、後述する印刷制御装置108により回転量が制御される。
【0018】
多関節ロボット104の位置や姿勢を規定する座標系として、体部104Aの接地中心を原点とするベース座標系(X,Y,Z)と、作業点(手首部104Cに支持される治具の先端部)を原点とするツール座標系(Xm,Ym,Zm)とがある。ベース座標系は他の座標系の基準となり変化しないが、ツール座標系は各軸の角度変化により変化する。
多関節ロボット104の位置や姿勢を変化させるには、各座標系に対して移動量(位置偏差や回転偏差)および変位速度を入力する。
【0019】
図1の説明に戻り、印刷制御装置108は、印刷装置10で印刷する図柄の形状データや基材20上における前記図柄の配置位置、図柄の印刷方向を示す印刷方向情報を含む印刷指示情報に基づいて、多関節ロボット104の移動方向および移動量を制御して、プリントヘッド102を基材20に対して所望の位置に移動させる(ロボットコントローラ機能)とともに、プリントヘッド102によるインクの吐出タイミングおよび吐出量を制御して基材20に所望の画像を印刷するよう制御する(プリントドライバ機能)。
【0020】
印刷制御装置108は、たとえばCPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成されるコンピュータである。
印刷制御装置108は、上記CPUが各種プログラムを実行することにより、メインコントローラ、多関節ロボット104を制御するロボットコントローラ、プリントヘッド102を制御するプリントドライバを実現する。
なお、これらの機能をそれぞれ別個の処理装置で行うようにしてもよい。
【0021】
図3は、印刷装置10における印刷処理の手順を示すフローチャートである。
印刷装置10は、まず今回印刷する図柄、すなわち周波数選択素子の形状データおよび基材20上における各周波数選択素子の配置位置を示す位置情報を取得する(ステップS300)。
形状データの取得は、例えば作業者が印刷制御装置108のモニタ上で今回印刷する周波数選択素子の形状および寸法を選択することによって行う。
また、外部の装置から印刷制御装置108に形状データを入力するようにしてもよい。
指定する周波数選択素子は1種類(同一の形状および大きさ)に限らず、複数種類の周波数選択素子を周期的に配置するようにしてもよい。
また、位置情報の取得は、例えば作業者が印刷制御装置108のモニタ上で周波数選択素子の配列パターンや各素子間の間隔などを入力し、印刷制御装置108が基材20上における各周波数選択素子の配置位置を算出することによって行う。周波数選択素子の配列パターンとしては、例えば正方形配列や正三角形配列などがある。
【0022】
つぎに、印刷制御装置108は、指定された周波数選択素子を、所定の太さを有し、それぞれ異なる方向に延在する複数の線分に分割する(ステップS302)。なお、この分割工程は、作業者が印刷制御装置108を操作して行ってもよい。
このとき、分割した線分の太さがプリントヘッド102のヘッド幅よりも小さい所定幅以下になるように図柄を分割する。
所定幅とは、例えばプリントヘッド102のインクノズル102Aのうち隣り合う所定個で印刷できる幅とする。すなわち、プリントヘッド102が備えるインクノズル102Aのうち一部のみを用いて印刷可能な幅である。
図4〜
図8は、周波数選択素子の線分への分割例である。
なお、
図4〜
図8に示す各周波数選択素子の大きさ(幅)は、プリントヘッド102のヘッド幅よりも小さいものとし、
図4〜
図6に示す各周波数選択素子を構成する線の太さは、上記所定幅よりも小さいものとする。
【0023】
図4Aは、クロスダイポール型の周波数選択素子50である。
この場合、周波数選択素子50を、
図4Bに示すような方向D1に延びる第1の線分50Aと、
図4Cに示すような方向D1と直交する方向である方向D2に延びる第2の線分50Bとに分割する。また各線分の太さは、ステップS300で指定された周波数選択素子50の寸法通りとする。
【0024】
図5Aは、トリポール型の周波数選択素子52である。
この場合、周波数選択素子52を、
図5Bに示すような方向D3に延びる第1の線分52Aと、
図5Cに示すような方向D4に延びる第2の線分52Bと、
図5Dに示すような方向D5に延びる第3の線分52Cとに分割する。また各線分の太さは、ステップS300で指定された周波数選択素子52の寸法通りとする。
【0025】
図6Aは、円形ループ型の周波数選択素子54であり、曲線の箇所を含んでいる。
この場合、まず
図6Bに示すように、円形の箇所(周波数選択素子54においては全部分)を複数の線分で形成される多角形に近似する。
図6Bでは、円形の周波数選択素子54を八角形のループ型素子56に近似している。
そして、八角形のループ型素子56を、それぞれ方向D6〜D13に延びる直線56A〜56Hに分割する。
【0026】
図7Aは、正方形パッチの周波数選択素子58であり、その幅は上記所定幅よりも大きいものとする。
この場合、まず
図7Bに示すように、周波数選択素子58の図柄全体を方向D14(第1の方向)に延在する第1の線分群58Aに分割する。次に
図7Cに示すように、周波数選択素子58の図柄全体を方向D14(第1の方向)と異なる方向D15(第2の方向)に延在する第2の線分群58Bに分割する。
なお、第1の線分群58Aおよび第2の線分群58Bを構成する各線分の太さWは、上記所定幅以下とする。また、各線分の太さWは一定でなくてもよい。また、方向D14と方向D15は異なる方向であればよく、直交していなくてもよい。また、周波数選択素子58を3つ以上の線分群に分割して、3つ以上の方向から重畳して印刷を行ってもよい。
【0027】
図8Aは、円形パッチの周波数選択素子60であり、その幅は上記所定幅よりも大きく、また曲線の箇所を含んでいる。
この場合、まず
図8Bに示すように、円形の箇所(周波数選択素子60においては全部分)を複数の線分で形成される多角形に近似する。
図8Bでは、円形の周波数選択素子60を八角形のパッチ素子62に近似している。
その後、パッチ素子62の図柄全体を方向D16(第1の方向)に延在する第1の線分群62Aに分割するとともに、パッチ素子62の図柄全体を方向D16(第1の方向)と異なる方向D17(第2の方向)に延在する第2の線分群62Bに分割する。
図7に示す正方形パッチの場合と同様に、第1の線分群62Aおよび第2の線分群62Bを構成する各線分の太さWは上記所定幅以下とし、また各線分の太さWは一定でなくてもよい。また、方向D16と方向D17は異なる方向であればよく、直交していなくてもよい。また、周波数選択素子62を3つ以上の線分群に分割して、3つ以上の方向から重畳して印刷を行ってもよい。
なお、
図7や
図8に示すような面状のパッチでは、複数の線分に分割することなく、その形状をそのまま印刷方向を異ならせて複数回印刷するようにしてもよい。
【0028】
図3の説明に戻り、印刷装置10は、ステップS302で分割した各線分の延在方向に沿ってプリントヘッド102を直線移動させて当該線分を印刷する工程を、複数の線分それぞれに対して行う。
すなわち、ステップS302で分割した各線分のうち1つを選択して、当該線分の延在方向に沿ってプリントヘッド102を直線移動させて、基材20上に当該線分を印刷する(ステップS304)。周波数選択素子を構成する全ての線分を印刷するまでは(ステップS306:No)、プリントヘッド102の移動方向を変更して(ステップS308)、ステップS304に戻り、残りの線分の印刷をくり返す。
そして、周波数選択素子を構成する全ての線分を印刷すると(ステップS306:Yes)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0029】
なお、周波数選択素子がパッチ型(
図7および
図8参照)の場合は、第1の線分群に含まれる線分を第1の方向に沿って1つずつ印刷するとともに、第1の線分群に重畳して第2の線分群に含まれる線分を第2の方向に沿って1つずつ印刷する。すなわち、2方向から重ねて印刷を行う。
【0030】
また、ステップS304では、プリントヘッド102が1回の走査につき複数の周波数選択素子を印刷可能な幅を有している場合には、1回の走査につき複数の周波数選択素子を印刷する。
図10と同じ配列で周波数選択素子を印刷する場合を例にして説明すると、まずプリントヘッド102を第1のダイポール部82Aの延在方向に沿って複数回走査して基材20上の第1のダイポール部82Aを全て印刷する。このとき、1回の走査につき幅方向に2つずつ第1のダイポール部82Aが印刷される。
つぎに、プリントヘッド102の移動方向を第2のダイポール部82Bの延在方向に変更し、第2のダイポール部82Bの延在方向に沿って複数回走査して基材20上の第2のダイポール部82Bを全て印刷する。
【0031】
図9は、印刷装置10を用いて印刷した周波数選択素子の一例を示す説明図である。
図9には、クロスダイポール型の周波数選択素子64を印刷した様子を示しており、周波数選択素子64は第1の方向D18に延びる第1のダイポール部64Aと、第1の方向D18と直交する第2の方向D19に延びる第2のダイポール部64Bとによって構成されている。
ここで、インクノズル102Aの一部に不良が生じ、第1のダイポール部64Aに欠陥Fが生じたとする。
従来であれば、周波数選択素子64は1回の走査で印刷完了され、第1のダイポール部64Aと第2のダイポール部64Bとの交差領域Cも第1のダイポール部64Aを印刷したインクノズル102Aで印刷されるため、周波数選択素子64に断線が生じる(
図10参照)。
一方、印刷装置10を用いて印刷を行う場合、周波数選択素子64の印刷には2回の走査が行われる。すなわち、第1の方向D18に沿った走査および第2の方向D19に沿った走査である。この場合、2回目の走査時に不良が生じたインクノズル102Aが第2のダイポール部64Bを印刷する可能性はごく小さい。
このため、
図9に示すように交差領域Cで欠陥Fによる断線が補完され、導通が得られるようになる。
【0032】
さらに、印刷装置10では、印刷時に用いるのは一部のインクノズル102Aのみであるため、プリントヘッド102の使用可能期間を延長して印刷コストを低減することができる。
すなわち、一部のインクノズル102Aに不良が生じた場合に、印刷位置を調整することによって不良が生じていないインクノズル102Aのみを用いて印刷することが可能となる。
インクジェット印刷では、ノズル詰まりが印刷品質上大きな問題となる。プリントヘッド102の全幅を使用して印刷する場合には、いずれかのインクノズル102Aでインク詰まりが生じると即時プリントヘッド102全体の交換が必要になるが、一般にプリントヘッド102は高価であり、印刷コストが上昇する。
印刷装置10では、インク詰まりが生じていない良好なインクノズル102Aだけを使い続けることが可能であり、プリントヘッド102の寿命を事実上大幅に延命することができる。
【0033】
以上説明したように、実施の形態にかかる印刷方法は、基材20上に同一形状の周波数選択素子を複数印刷する際に、印刷する周波数選択素子を複数の線分に分割し、各線分の延在方向に沿ってプリントヘッド102を直線移動させて印刷を行うので、プリントヘッド102の一部領域で不良が生じた場合でも周波数選択素子を長手方向に分割する断線を生じさせることなく印刷を行うことができる。
また、実施の形態にかかる印刷方法は、プリントヘッド102のヘッド幅よりも小さい所定幅以下の線分に周波数選択素子を分割するので、プリントヘッド102の1回の走査で1本以上の線分を印刷完了することができる。
また、実施の形態にかかる印刷方法において、周波数選択素子が所定幅よりも大きい幅を有する場合、周波数選択素子全体を2種類の線分群に分割し、それぞれの線分群を重畳して印刷するので、プリントヘッド102の一部領域で不良が生じた際に面積が大きい周波数選択素子を印刷する場合でも、周波数選択素子を分割する断線を生じさせることなく印刷を行うことができる。
また、実施の形態にかかる印刷方法において、周波数選択素子が曲線の箇所を含む場合には曲線の箇所を複数の線分で形成される多角形に近似するので、周波数選択素子が曲線の箇所を含む場合にも断線を生じさせることなく印刷を行うことができる。
また、実施の形態にかかる印刷方法は、インクジェット式のプリントヘッド102が備えるインクノズル102Aのうち一部のみを用いて印刷するので、一部のインクノズル102Aにインク詰まりが生じた場合に、インク詰まりが生じたインクノズル102Aを避けて、プリントヘッド102上の他の領域で印刷を行うことができ、プリントヘッド102の使用可能期間を延長して印刷コストを低減する上で有利となる。
また、実施の形態にかかる印刷方法は、多軸ロボットである多関節ロボット104を用いて基材20とプリントヘッド102との相対位置を変化させながら印刷を行うので、基材20への印刷の自由度を向上させる上で有利となる。
また、実施の形態にかかる印刷方法は、長手方向の断線を生じさせることなく周波数選択素子を印刷することができるので、周波数選択板(FSS)の性能を安定させる上で有利となる。
【0034】
なお、本実施の形態では、印刷する図柄として周波数選択素子を例にして説明したが、これに限らず、本発明は同一形状の図柄を複数印刷する場合に広く適用することができる。
また、本実施の形態では、基材20が平面状であるものとしたが、例えば半球状基材などの曲面を有する基材を用いてもよい。
また、平面状の基材20を用いる場合には、多関節ロボット104を用いるのではなく、例えばプリントヘッド102を一方向に移動可能とするとともに、基材20を360度任意の方向に回転可能な回転台に乗せることにより、基材20に対するプリントヘッド102の移動方向の角度を任意に調整可能としてもよい。
また、例えばプリントヘッド102を固定するとともに、基材20を移動可能なテーブル等に設置して基材20を移動させることにより印刷を行ってもよい。