(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、本発明の一実施形態のシステムを説明する。
【0014】
図1に示すシステムは、1以上の画像形成装置100と、それら画像形成装置100とインターネット300を介して通信可能な管理装置200とを含む。
【0015】
画像形成装置100は、プリンタ、スキャナ、コピー機、ファクシミリ装置、またはこれらのうちの1以上を兼ね備える複合機である。
図3(詳細は後述)に示した例では、画像形成装置100は、印刷のためのプリント機構130と、原稿の光学的読み取りのためのスキャン機構140とを備えており、これらの機構を用いることで印刷、スキャン、コピー等の処理を行う。ただしこれは一例に過ぎず、印刷のみ、スキャンのみといった単機能の画像形成装置にも本実施形態の手法は適用可能である。画像形成装置100は、例えばオフィス内のローカルエリアネットワーク12又は携帯電話網等を介してインターネット300に接続されている。
【0016】
本実施形態では、利用シーンの一例として、オフィス内に設置された画像形成装置100Aを新型機の画像形成装置100Bに置き換える場合を、画像形成装置100Aのヘルプ情報に対してユーザが追加したユーザ固有の情報を、画像形成装置100Bのヘルプ情報に移行させる(詳細は後述)。例えばこの移行の処理の後、移行元の画像形成装置100Bはオフィスから撤去される。
【0017】
管理装置200は、画像形成装置100に対してヘルプ情報を提供する。ヘルプ情報の「提供」は、画像形成装置100からの要求が無くても管理装置200が能動的に提供するプッシュ(Push)方式の提供であってもよいし、HTTP(HyperText Transfer Protocol)リクエスト等の画像形成装置100からの要求に応じて提供するというプル(Pull)方式の提供であってもよい。画像形成装置100等が設置されたネットワーク等の環境に適した方式を用いればよい。提供するヘルプ情報には、例えば、画像形成装置100の各種操作方法に関する説明情報や、各種障害(エラー)への対処方法等を説明する情報等が含まれる。管理装置200は、画像形成装置100の使用状態等を表す管理情報や、画像形成装置100で生じたエラーに関する情報等を画像形成装置100から取得する。そして、それら取得した情報に従い、その画像形成装置100にとって有益である可能性が高いヘルプ情報を特定し、特定したヘルプ情報をその画像形成装置100に提供する。
【0018】
なお、提供するヘルプ情報を特定するために管理装置200が用いる、画像形成装置100の管理情報やエラー情報等の情報は、遠隔保守のためにサーバが画像形成装置100から取得する情報と共通するものが多い。そこで、遠隔保守を行うサーバが、ヘルプ情報を提供する本実施形態の管理装置200の機能を併せ持つようにしてもよい。
【0019】
以下、管理装置200及び画像形成装置100について更に詳しく説明する。
【0020】
管理装置200は、ヘルプDB(データベース)210、ヘルプ提供部220、ヘルプ移行処理部230、管理情報DB240を有する。
【0021】
ヘルプDB210は、ヘルプ情報を保持するデータベースである。ヘルプDB210には、多数のヘルプ項目が記憶されている。個々のヘルプ項目は、それぞれ、その項目を一意に識別するヘルプIDと、その項目についてのヘルプ情報の内容であるヘルプ内容とを含んでいる。ヘルプ内容は、当該ヘルプ項目の話題に対応するヘルプ記事の内容であり、例えば、画像形成装置100のある特定の操作についての操作方法の説明や、特定のエラーに対する対処方法の説明等である。
【0022】
またヘルプDB210には、各機種の画像形成装置100が利用可能なヘルプ項目群の目次を表す目次情報や、個々のヘルプ項目を検索するための検索インデックス情報等を含んでいてもよい。目次に含まれる個々の見出しには、その見出しに対応するヘルプ項目がリンクされており、見出しを選択することでヘルプ項目を呼び出すことができる。また、検索インデックス情報を用いることで、ユーザが入力したキーワードに該当するヘルプ項目を検索することもできる。管理装置200が複数の機種の画像形成装置100に対応する場合、ヘルプDB210には、機種毎に、その機種に対応するヘルプの目次情報やヘルプ項目群が格納される。
【0023】
ヘルプ提供部220は、画像形成装置100のヘルプ取得部114からヘルプ取得要求を受け取り、これに応じて画像形成装置100にヘルプ項目を送信する。例えば、ヘルプ提供部220は、取得したいヘルプIDを指定したヘルプ取得要求を受け取ると、そのヘルプIDに対応するヘルプ項目をヘルプDB210から読み出し、その画像形成装置100に返信する。
【0024】
ヘルプ移行処理部230は、指定された移行元の画像形成装置100Aに登録されているヘルプに関するユーザ固有情報を、移行先の画像形成装置100Bのヘルプに移行するための処理を行う。ヘルプ移行処理部230は、移行指示受付部232、移行元情報取得部234及び変換部236を有する。移行指示受付部232は、画像形成装置100からヘルプに関するユーザ固有情報の移行指示を受け付ける。この指示は、移行元の画像形成装置100Aから受けてもよいし、移行先の画像形成装置100Bから受け付けてもよい。移行指示には、移行元と移行先を特定する情報が含まれていればよい。移行元情報取得部234は、移行元の画像形成装置100Aから、ユーザがその画像形成装置100Aのヘルプ情報に対して加えたユーザ固有情報を取得する。ユーザ固有情報には、例えばヘルプ情報に対してユーザが付け加えた注記がある。またユーザがよく行う比較的複雑な作業の各ステップについてのヘルプ情報をまとめたものもその一例である。変換部236は、移行元から取得したユーザ固有情報を、移行先の画像形成装置100Bに適したものに変換し、変換結果のユーザ固有情報をその移行先に提供する。機種が異なれば、持っている機能や装置の外観が異なるためヘルプ情報の個々の項目の記事内容やそれら項目群の構成が変わってくるため、変換部236は、移行元と移行先の間の機種の違いによるヘルプ情報の違いに合わせて、ユーザ固有情報を変換するのである。
【0025】
管理情報DB240には、変換部236の上述の変換処理の際に参照される管理情報が記憶されている。この管理情報の中には、機種ごとの画面・ヘルプツリー情報242と、移行元と移行先の機種の組合せごとの機種間対応テーブル244が含まれる。
【0026】
機種ごとの画面・ヘルプツリー情報242は、当該機種の画像形成装置100の操作画面及びヘルプ画面が構成するツリー構造を表す情報である。例えば、メインメニュー画面からコピー操作画面を呼び出し、コピー操作画面から画質調整画面や出力形式(両面/片面等)指定画面を呼び出す等、操作画面の遷移がツリー構造をなしている。操作画面を参照して説明を行うと分かりやすい等のことから、通常、ヘルプ画面は、操作画面に対応付けて管理されている。このため、ヘルプ画面も、操作画面と同じツリー構造をなす。この操作画面及びそれに対応するヘルプ画面のツリー構造が画面・ヘルプツリー情報242に示される。具体例は後述する。個々のヘルプ画面に表示される内容が、それぞれ1つのヘルプ項目である。
【0027】
機種間対応テーブル244には、移行元と移行先の機種の組合せごとに、移行元から移行先への画面ツリーの変化を示す情報が登録されている。またこの機種間対応テーブル244には、移行元の画面(操作画面及びこれに対応するヘルプ画面)に対応する移行先のヘルプ画面のファイル(すなわちその画面を規定するヘルプ項目のファイル)を特定する情報が保持される。
【0028】
次に、
図3を参照して、画像形成装置100の構成の一例を説明する。
制御部110、プリント機構130及びスキャン機構140を有する。
【0029】
プリント機構130は、媒体に対してインクやトナーにより画像を印刷するための機械的な機構である。スキャン機構140は、原稿を光学的に読み取って電気的な画像信号を生成する機構である。
【0030】
制御部110は、画像形成装置100の制御を行う情報処理装置である。制御部110は、プリント機構130やスキャン機構140の制御、タッチパネル等の入出力装置を用いたUI(ユーザインタフェース)処理等のための各種の機能を備えているが、図には特にヘルプ情報の管理に関連する機能(ヘルプUI部112〜ユーザ固有情報受信部122)を示している。
【0031】
ヘルプUI部112は、ユーザにヘルプ情報を表示又は印刷するためのUI処理を行う。例えばヘルプUI部112は、ヘルプの目次情報を画像形成装置100の画面に表示する。表示された目次の中からユーザが詳細情報を見たい項目の見出しを選択すると、ヘルプUI部112は、選択された見出しに対応するヘルプ項目をヘルプキャッシュ116から探す。目的のヘルプ項目がヘルプキャッシュ116内から見つかった場合は、そのヘルプ項目のヘルプ内容を画面に表示等する。見つからなかった場合は、ヘルプ取得部114にそのヘルプ項目を管理装置200から取得させる。そして取得されたヘルプ項目を画面表示する。ヘルプUI部112は、ユーザの指示に応じて、ヘルプ内容を画面表示する代わりに、又はこれに加えて、ヘルプ内容を印刷出力してもよい。またヘルプUI部112は、画像形成装置100にてエラーが生じた場合に、そのエラーに関するヘルプ項目を画面表示する。
【0032】
ヘルプ取得部114は、ユーザから指定されたヘルプ項目や発生したエラーに対応するヘルプ項目がヘルプキャッシュ116内にない場合に、そのヘルプ項目を管理装置200から取得し、ヘルプキャッシュ116に格納する。
【0033】
ヘルプキャッシュ116は、ヘルプ取得部114が管理装置200から取得したヘルプ項目を記憶する装置である。ヘルプキャッシュ116は、LRU(Least Recently Used)のような公知のキャッシュアルゴリズムを用いて管理されており、空き容量が少なくなると、記憶しているヘルプ項目の中で最近あまり使われなくなったものを削除する。
【0034】
ユーザ固有情報保持部118は、ユーザがヘルプ情報に関して入力したユーザ固有情報を保持する。
【0035】
ユーザ固有情報送信部120は、当該画像形成装置100が移行元に指定された場合に、ユーザ固有情報保持部118に保持されたユーザ固有情報を管理装置200に送信する。
【0036】
ユーザ固有情報受信部122は、当該画像形成装置100が移行先に指定された場合に、変換部236が生成した変換後のユーザ固有情報を管理装置200から受信し、ユーザ固有情報保持部118に格納する。
【0037】
以下、具体的な事例を参照しつつ、本実施形態におけるヘルプのユーザ固有情報の移行の仕組みを説明する。
【0038】
まず、想定事例として、移行元の画像形成装置100Aにて利用可能な「スキャンtoマイPC」機能のための設定操作についてのヘルプのユーザ固有情報を、移行先の画像形成装置100Bに移行する場合を考える。「スキャンtoマイPC」とは、スキャンした画像をあらかじめ登録したPCに転送する機能であり、この機能を使うためには、ネットワークの設定、スキャン設定、取得したいファイル形式等の複数項目の設定が必要である。それら複数項目の設定のために複数の操作手順を要するため、設定作業が難しくヘルプを参照しながら操作される傾向にある。それぞれの設定項目について、例えば以下のような事情がある。
【0039】
まずオフィスのネットワーク環境に関しては、従来IPv4が使われるのが一般的であるが、近年では、IPv6が利用され始めている。そのため、ユーザのオフィスのネットワーク環境がどちらのバージョンを用いているのか予め設定する必要がある。またファイル送信プロトコルについては、従来FTP(File Transfer Protocol)やSMB(Server Message Base)等が使われており、最近ではMicrosoft(登録商標)社が提唱するWSD(Web Service on Devices)やApple(登録商標)社のAirPrint(商標)のスキャンプロトコルも採用され始めている。これらの転送プロトコルは、送信先の自分のPCでもそれぞれのプロトコルで受信可能に設定しておく必要があり、送信者は、送信時に、送信先の自分のPCでどのプロトコルが受信可能かに応じて、今回画像形成装置100で用いる転送プロトコルを選択する必要がある。また、スキャンした画像の宛先(送信先)を設定する方法として、IPアドレスをユーザが手入力する方法、画像形成装置100に記憶されたアドレス帳を参照して入力する方法、LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)サーバを参照して検索する方法、Microsoft社のActiveDirectory(登録商標)サーバを参照して検索する方法等があり、それらのうちいずれが利用可能かはユーザ(オフィス)の環境によって異なる。また、オフィスによっては、予め登録された宛先しか送信できないようなセキュリティポリシーが設定されたいる場合もある。また、ICカード型社員証によるカード認証が採用されているオフィスでは、「スキャンtoマイPC」機能を用いる際、画像形成装置100に社員証のICカードをかざして認証を受けることが必要な場合もある。またスキャンパラメータの設定では、スキャン画像の向き(たて/よこ)、スキャン画像のサイズ、解像度、カラー/白黒、シャープネス、地色除去する/しない、ファイル形式等の多くのパラメータを設定する必要がある。スキャンした画像をOCR(光学的文字認識)処理してテキストデータを抽出したい場合は「高解像度600Dpi、シャープネスを強く、地色除去する」という設定が適している等、スキャン画像の用途ごとに適した設定があり、用途に応じた適切な設定を行うのは難しい。また、スキャン原稿の原稿台への載置の際、原稿台に対し左奥に原稿を突き当てた状態で載置する機種もあれば、原稿台の搬送路の中央に合わせて載置する機種もある。
【0040】
例えば、「スキャンtoマイPC」機能を利用するため、画像形成装置100AにおいてIPアドレス設定画面を開いている段階で、ユーザがその設定画面中に示されるヘルプボタンを押下すると、
図4に例示するヘルプ画面500が表示される。このヘルプ画面500は、IPアドレス設定画面の画像の上に、それぞれのヘルプ対象箇所から吹き出す吹き出しの形で説明が表示されている。例えば、IPアドレスの入力欄に対応する吹き出し502には、「0〜255の範囲で設定します」という説明が示され、アドレス取得方法の選択肢に対応する吹き出し504には、「お使いのネットワーク環境に応じて設定してください」との説明が示されている。またファイル転送プロトコル設定画面を開いている段階で、ユーザがその設定画面中に示されるヘルプボタンを押下すると、
図5に例示するヘルプ画面510が表示される。このヘルプ画面510には、「FTP」と「SMB」の2つの選択肢のそれぞれについて、その選択肢を選択する場合の注意点が吹き出し512,514に示されている。
【0041】
設定作業を円滑に行うため、ユーザは、画像形成装置100の操作マニュアルのうちそれら各設定項目を説明するページを抜粋し、「スキャンtoマイPC」用の専用マニュアルを作成することもある。また、この専用マニュアルの各設定項目のページに、そのユーザのネットワーク環境やスキャン用途においてよく用いる設定値をメモ書きすることも行われている。このような紙ベースの工夫を電子的に実現することも考えられる。すなわち、電子的なヘルプ情報のうち、「スキャンtoマイPC」の設定や利用の操作手順に従って、関連するヘルプ項目群を配列した「スキャンtoマイPC」用のヘルプを作成しておくことが考えられる。またその専用ヘルプのうちの各設定項目に関する部分に、よく用いる設定値をメモ書きのように関連付けておくことも考えられる。このような特定作業のために編集した電子的なヘルプを規定する情報や、このヘルプに対してユーザが設定した値が、ユーザ固有情報保持部118に保持される。
【0042】
この想定事例では、画像形成装置100Aから画像形成装置100Bへの移行において、「スキャンtoマイPC」のための設定等が
図6に示すように変わるとする。図中「旧機種」と題しているのが移行元の画像形成装置100Aにおける設定等を示しており、「新機種」と題しているのが移行先の画像形成装置100Bにおける設定等を示している。例えば、図中の「IPアドレス設定」機能についてみると、旧機種ではIPv4形式のアドレスのみが設定可能であり、そのアドレスの取得方法は、手動設定かDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を用いるかのいずれかである。なお、この図では、手動かDHCPかのように選択肢がある項目については、ユーザがカスタマイズ作業で設定(選択)した選択肢の名前の前に「○」印を付している。例えば旧機種のIPアドレス設定におけるアドレス取得方法は、DHCPにカスタマイズされている。一方、新機種では、IPv4形式の他にIPv6形式のアドレスも設定可能となっており、それぞれの形式について、アドレス取得方法の選択肢が示されている。
【0043】
図7に、この想定事例における移行元の画像形成装置100Aの画面・ヘルプツリー情報(
図2では符号242)の内容を例示する。図中「画面ツリー」の列の各行には、それぞれ各操作画面の画面IDと表題が示されている。この例では画面IDは4桁の整数である。操作画面は3階層(記載を省略したホーム画面を入れると4階層)からなるツリー構造をなしており、画面IDの最上位桁(4桁目)が1階層目の分類を、その次の桁が2階層目の分類を、そしてその次の2桁が3階層目の分類を表している。例えば、画面ID「1000」の(メインの)設定画面上には、画面ID「1100」のネットワーク設定画面や画面ID「1200」のセキュリティ設定画面を呼び出すためのボタンやタブ等のGUI(グラフィカルユーザインタフェース)部品が表示され、そのGUI部品を選択することで、所望の種類の設定画面が呼び出される構成となっている。ヘルプ画面(ヘルプ項目)は、操作画面に対応しているので、操作画面の画面IDと同じ値のヘルプIDで識別される。また図中「ヘルプ情報ファイル」の列の各行には、それぞれ当該行のID(画面ID=ヘルプID)に対応するヘルプ画面(ヘルプ項目)の内容を表すファイルのファイル名が示されている。例えば、全機種のヘルプ情報を保持している管理装置200のヘルプDB210が、管理装置200のファイルシステム内で「/helpfile」というパスのフォルダであり、そのフォルダ内には、機種Aの場合は「/helpfile/device-type-A」というように機種ごとにフォルダが用意されているとする。この場合、機種Aの「ネットワーク設定」画面についてのヘルプ画面のファイルは、「/helpfile/device-type-A/1100.help」というパスで表される。なお、「.help」という拡張子はあくまで説明のためのものであり、実際にはヘルプ項目のファイルはXML(eXtensible Markup Language)形式やHTML(Hypertext Markup Language)形式等の形式で表現されている。
【0044】
図8に、この想定事例において用いられる機種間対応テーブル(
図2では符号244)の内容を例示する。例示する機種間対応テーブルは、機種A(画像形成装置100A)から機種B(画像形成装置100B)に移行する場合についての、画面・ヘルプツリーの変更部分や、個々のヘルプファイルの変更内容が示されている。
図8に示すように、この事例では、機種Aにおける「1101:IPアドレス設定」の操作画面(及びヘルプ画面)が、機種Bでは「11010:IPv4とIPv6選択」(バージョン選択)、「11011:IPアドレス設定(v4)」(IPv4形式のアドレス設定)、及び「11012:IPアドレス設定(v6)」(IPv6形式のアドレス設定)という3つの操作画面(及びヘルプ画面)に分かれている。そして、それら3つの操作画面にそれぞれ対応する3つのヘルプ画面を表すヘルプ情報ファイルのファイル名が「ファイル」欄に示されている。また、
図8の例では、機種Bは機種Aとは原稿載置方法が異なるため、機種B用の原稿載置のヘルプ画面のファイル名と、そのヘルプ画面内に表示される解説画像のファイル名が「ファイル」欄に示されている。
【0045】
また、図示は省略したが、機種間対応テーブルには、操作画面(及びヘルプ画面)のレベルでの対応関係だけでなく、操作画面内の設定項目(入力欄、選択肢)レベルの対応関係の情報も含まれている。例えば、上述した「1101:IPアドレス設定」の例のように、旧機種Aの1つの操作画面が新機種Bの複数の操作画面に対応する場合、機種A・B間対応テーブルには、旧機種の操作画面に対する各設定項目が、新機種のそれら複数の操作画面のうちのどの画面のどの設定項目に対応するのかを示す対応関係の情報が含まれる。
【0046】
機種間対応テーブルは、画像形成装置100又は管理装置200のメーカー等が用意すればよい。
【0047】
図9に、「スキャンtoマイPC」機能を利用する場合における一連の操作画面の遷移を示す操作手順情報の例を示す。
図9に示すように、画像形成装置100Aで「スキャンtoマイPC」機能を利用する場合には、まずIPアドレス設定画面(ID=1101)でIPアドレスを設定し、次にファイル転送プロトコル設定画面(ID=1401)でファイル転送プロトコルを設定し、といった具合に順に設定をしていく。そして、画像処理画面(ID=2201)で地色除去や出力ファイル形式を設定すると、原稿載置画面(ID=2401)が表示され、ユーザはその画面に従って原稿を原稿台に載置し、開始ボタンを押す。
【0048】
ここに例示したように、操作手順情報は、ある機能を利用する場合の一連の操作の操作画面のIDを並べたものであり、これはそれら一連の操作画面に対応するヘルプ画面のIDの系列でもある。この操作手順情報は、画像形成装置100Aのユーザ固有情報の一項目としてユーザ固有情報保持部118に登録されている。
【0049】
図10に、旧機種(画像形成装置100A)の「スキャンtoマイPC」機能に対応するヘルプのユーザ固有情報の一項目として登録されている、パラメータ情報の例を示す。各行がそれぞれ各設定画面を示しており、「ユーザ設定パラメータ」の欄には各設定画面に対して設定されたパラメータの値が示されている。例えば、旧機種のIPアドレス設定画面(
図4参照)には、IPv4形式のIPアドレスを設定する欄と、IPアドレスの取得方法を指定する欄とが含まれているので、パラメータ情報中のIPアドレス設定のエントリには、それら各欄に設定されたIPアドレス及び取得方法の識別名が登録される。また、このエントリには、IPアドレスのバージョンがIPv4形式であることを示す情報も登録される。また、別の例として画像処理画面についての「ユーザ設定パラメータ」欄には、カラーか白黒か、シャープネス、地色除去の有無、出力ファイル形式の設定値が設定されている。このようなパラメータ情報は、ユーザが「スキャンtoマイPC」機能を利用するための一連の操作を行った際に、各操作画面の各設定項目に対してユーザが設定した値を自動検出して作成すればよい。
【0050】
図9及び
図10に例示した操作手順情報及びパラメータ情報は、画像形成装置100にて例えば以下のように生成される。
【0051】
すなわち、ユーザが画像形成装置100のメニュー画面等の操作画面から記録モードの開始を指示した後、実行したい処理の手順に従って、操作画面内の入力欄への値の入力、ボタンの押下やタブの選択等による画面遷移等の操作を行い、最後にその処理の終了を示す操作を行う。画像形成装置100が持つ記録機能は、記録モードの開始から、処理終了の操作までにユーザの操作により遷移していく操作画面の画面IDをその遷移の順序に対応付けて記録することで操作手順情報(
図9)を生成する。また、記録機能は、それら各操作画面の中の入力欄や選択欄等に対するユーザの入力値や選択結果の値を、その操作画面の画面ID(及びその画面内での個々の欄(設定項目)のID)に対応付けて記録することで、パラメータ情報(
図10)を生成する。なお、ユーザが入力しない値であっても、操作画面内の設定項目に関連付けられている値(例えば画面「1101」で入力されるIPアドレスのバージョンである「IPv4」)も、パラメータ情報に組み込む。これには、例えば、HTML等で記述された操作画面の情報の中に、パラメータ情報に組み込む項目を特定する情報を含めておけばよい。
【0052】
このように生成された操作手順情報及びパラメータ情報は、一意な共通の固有情報IDに対応付けて、ユーザ固有情報保持部118に登録される。すなわち、共通の固有情報IDにより、パラメータ情報と操作手順情報が相互に関連付けられる。また、その固有情報IDに対応付けて、その操作手順の記録指示を行ったユーザのユーザIDを対応付けてユーザ固有情報保持部118に登録することで、それら操作手順情報及びパラメータ情報がそのユーザについての情報であることを識別できるようにしてもよい。この場合、その操作手順情報及びパラメータ情報に基づくヘルプは、それらを記録したユーザが画像形成装置100(及びそれら情報を移行した移行先の画像形成装置100)を操作する際には提示されるが、他のユーザには提示されない(この例は画像形成装置100の利用の際にユーザが認証を受けることが前提)。もちろん、このようなユーザ限定を加えるか加えないかを個々のユーザ固有情報(操作手順情報及びパラメータ情報等)ごとに設定できるようにしてもよい。ユーザIDと対応付けられていないユーザ固有情報は、例えば全てのユーザに適用される。この場合、ユーザ固有情報は、その画像形成装置100を利用するユーザ全体を1つのユーザグループと見たときに、そのユーザグループに固有の情報である。またユーザ固有情報を、複数のユーザからなるユーザグループのグループIDに対応付けて登録することで、そのグループに属するユーザがそのユーザ固有情報を利用したヘルプを閲覧できるようにすることもできる。
【0053】
この想定事例で、例えば、旧機種(画像形成装置100A)が管理装置200と通信可能である間に、移行先の新機種(画像形成装置100B)の運用が開始されたとする。そして、例えば画像形成装置100Bの方から管理装置200に対して、画像形成装置100Aを移行元とする移行指示が発せられたとする。この場合、管理装置200の移行指示受付部232は、移行元が画像形成装置100Aでありその機種が機種Aであること、移行先が画像形成装置100Bでありその機種が機種Bであることを認識する。この認識に従い、移行元情報取得部234が、画像形成装置100Aからユーザ固有情報(
図9,
図10参照)を取得する。そして変換部236が、機種Aから機種Bへの変換を表す機種A・B間対応テーブル(
図8参照)を参照し、画像形成装置100Aから取得したユーザ固有情報を画像形成装置100B用に変換する。
【0054】
この変換では、旧機種Aから取得したユーザ固有情報に含まれる操作手順情報(
図9)を、機種A・B間対応テーブル(
図8参照)を参照して、新機種B用の操作手順情報に変換する。すなわち、機種A用の操作手順情報の各ステップの各画面IDを、機種A・B間対応テーブルに示される対応する1以上の画面IDに変換する。例えば、
図9に示した操作手順情報を機種B用に変換する際には、機種A用の最初のステップである画面ID「1101」を、対応する機種B用の3つの画面ID「11010」、「11011」、「11012」の並びに変換する。機種A用の次のステップである画面ID「1401」は、そのテーブルにエントリがないので、機種B用でも同じ画面ID「1401」となる。このようにして、機種A用の操作手順情報の全ステップの画面IDを、機種B用の対応する画面IDに変換することで、機種B用の操作手順情報が完成する。また、生成した機種B用の操作手順情報の各画面IDに対して、機種A・B間対応テーブルに示されたヘルプ画面のファイルを対応付けることで、機種B用の「スキャンtoマイPC」のヘルプ画面集を作成する。
【0055】
また、変換部236の変換では、旧機種Aから取得したユーザ固有情報に含まれるパラメータ情報(
図10)を、機種A・B間対応テーブル(
図8)に従って、機種B用に変換する。例えば、機種Aの画面「1101」のパラメータ「IPv4」、「123.100.001.010」、「取得方法:DHCP」を、それぞれ機種Bの対応する画面「11010」(「IPv4」について)、「11011」(残りの2つのパラメータについて)にそれぞれ対応付けることで、
図10に示したのと同様の機種B用のパラメータ情報を生成する。
【0056】
このように変換されたユーザ固有情報を取得した新機種Bの画像形成装置100Bは、「スキャンtoマイPC」機能の実行が指示された場合、そのユーザ固有情報中の操作手順情報に従って、順に操作画面を表示していく。そして、いずれかの操作画面でヘルプを呼び出すボタンが押下されると、その操作画面の画面ID(すなわちヘルプID)に対応するヘルプ画面のファイルと、そのユーザ固有情報中のパラメータ情報内でその画面IDに対応付けられているパラメータとに基づいて、ヘルプ画面を生成し、表示する。
【0057】
例えば、機種Aの操作画面「1101」に対応する機種Bの操作画面「11010」から呼び出されるヘルプ画面の表示例を
図11に示す。この表示例では、画面ID「11010」に対応付けてパラメータ情報に含まれている値「IPv4」が、この画面内の設定項目(IPのバージョンの選択欄)に対応付けられたユーザ固有ヘルプの定型文「お使いのネットワーク環境では、***が選択されていました」(***にパラメータが代入される)と組み合わされることで、ユーザ固有ヘルプ522が生成され、これを表示したヘルプ画面520が表示される。
【0058】
また
図12には、機種Aの同じ操作画面「1101」に対応する機種Bの別の操作画面「11011」から呼び出されるヘルプ画面530の表示例が示される。この例では、画面ID「11010」に対応付けてパラメータ情報に含まれているパラメータ値「123.100.001.010」及び「取得方法:DHCP」を、この画面に対応付けられたユーザ固有ヘルプの定型分と組み合わせることで、ユーザ固有のヘルプ記事532が生成されている。またこの例では、元々のヘルプ画面の情報に含まれるヘルプ記事534(ユーザ固有情報を用いないヘルプ)も合わせて表示されている。ヘルプUI部112は、ヘルプ記事がユーザ固有情報を参照しているか否かで、そのヘルプ記事の表示形態を区別してもよい。
図12の例では、ユーザ固有情報を参照するヘルプ記事532と参照しないヘルプ記事534とで、吹き出しの背景色を異ならせている。
【0059】
また、
図13には、移行先の機種Bについての画像読取設定(ID=「2101」)のヘルプ画面540の表示例が示される。また移行元の機種Aにおける画像読取設定のヘルプ画面550の表示例が
図14に示される。機種Bのヘルプ画面540には、パラメータ情報(
図10)におけるID「2101」のパラメータを提示するユーザ固有ヘルプ542が表示されると共に、移行元のヘルプ画面550には含まれないが、移行先のヘルプ画面540には含まれる設定項目544や選択肢546が強調表示(図示例では例えば特定の色の枠線で囲む方式)されている。移行先の操作画面内の設定項目や選択肢のうち、どれが移行元の操作画面に含まれないかは、それら操作画面の情報の比較から分かるので、該当する設定項目を特定する情報を、機種間対応テーブルに、当該操作画面(移行先の機種用)の画面IDに対応付けて登録しておき、ヘルプUI部112はこの情報を参照して強調表示を行えばよい。
【0060】
「スキャンtoマイPC」の全ての操作画面にパラメータが入力されるわけではない。例えば、原稿載置画面(ID=「2401」)は原稿載置の仕方を説明するためのものであり、ユーザが設定する項目はない。このように設定項目がないヘルプ画面については、変換部236は、単に旧機種用のヘルプ画面のファイルを、新機種用のヘルプ画面のファイルに置き換えればよい。原稿載置画面の旧機種A用を
図15に、新機種B用を
図16に示す。この例では、新機種Bは旧機種Aと原稿載置の仕方が変わっているので、説明図の画像等が変更されている。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明した。以上の実施形態では、画像形成装置100Aを新たな画像形成装置100Bに置き換える場合を例にとって説明したが、上記実施形態の方式はそのような置き換えの場合に限らない。例えば、ある画像形成装置100で用いていたユーザ固有情報に基づきヘルプを別の画像形成装置100で利用したい場合にも、上記実施形態の方式を適用できる。
【0062】
また上記実施形態では、操作画面のIDとこの操作画面に対応するヘルプ画面のIDが同じ値であったが、これはあくまで一例に過ぎない。操作画面のIDとこの操作画面に対応するヘルプ画面のIDとが異なる場合には、それら両者の対応関係の情報を用意することで、上述の実施形態の方式を用いることができる。
【0063】
また上記実施形態では、画像形成装置100にヘルプ項目(画面)のデータを提供する管理装置200が、ユーザ固有のヘルプを規定する情報(ユーザ固有情報)を別機種用に変換したが、これも一例に過ぎない。ユーザ固有情報を別機種用に変換する専用の装置をネットワーク上に設けてもよい。
【0064】
また上記実施形態では、画像形成装置100は当該機種のヘルプ項目の集合のうちの一部をヘルプキャッシュ116にキャッシュし、ヘルプキャッシュ116内にないヘルプ項目は管理装置200から取得してキャッシュしていた。しかし、これは、上記実施形態に示したユーザ固有情報の変換方式の前提ではない。上記実施形態の変換方式は、当該機種用の全てのヘルプ項目の情報を記憶している画像形成装置100にも当然適用可能である。
【0065】
以上に例示した画像形成装置100の制御部110、及び管理装置200は、汎用のコンピュータに当該装置の各機能モジュールの処理を表すプログラムを実行させることにより実現される。ここで、コンピュータは、例えば、ハードウエアとして、CPU等のマイクロプロセッサ、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリメモリ(ROM)等のメモリ(一次記憶)、HDD(ハードディスクドライブ)を制御するHDDコントローラ、各種I/O(入出力)インタフェース、ローカルエリアネットワークなどのネットワークとの接続のための制御を行うネットワークインタフェース等が、たとえばバスを介して接続された回路構成を有する。また、そのバスに対し、例えばI/Oインタフェース経由で、CDやDVDなどの可搬型ディスク記録媒体に対する読み取り及び/又は書き込みのためのディスクドライブ、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体に対する読み取り及び/又は書き込みのためのメモリリーダライタ、などが接続されてもよい。上に例示した各機能モジュールの処理内容が記述されたプログラムがCDやDVD等の記録媒体を経由して、又はネットワーク等の通信手段経由で、ハードディスクドライブ等の固定記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。固定記憶装置に記憶されたプログラムがRAMに読み出されCPU等のマイクロプロセッサにより実行されることにより、上に例示した機能モジュール群が実現される。