【実施例】
【0107】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
[前駆体ポリアミド(1)溶液の調製および高分子化合物(1)の膜の製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP基を含むジアミンとしてのHFIP−MDA、7.5g(14.1mmol)、溶媒としてのジメチルアセトアミド(以下、DMAcと呼ぶことがある)42gを加え、窒素雰囲気下、温度−78℃で20分間攪拌した。イソフタル酸クロリド、2.86g(14.1mmol)をDMAc、8gに溶解させて加え、低温恒温反応槽を用いて温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴につけて3時間攪拌し、次いで室温で2時間攪拌し、前駆体となるポリアミド(1)を含む溶液を調製した。ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと呼ぶことがある)装置(東ソー株式会社製、機種名HLC−8320GPC、カラム名:TSKgel SuperHZM−H、溶媒:テトラヒドロフラン(以下、THFと呼ぶことがある))で前駆体ポリアミド(1)の分子量を測定したところ、前駆体ポリアミド(1)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=156000、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.87であった。
【0108】
得られた前駆体ポリアミド(1)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転速度300rpmに達した後、回転数300rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で1時間加熱し環化反応させた後に冷却し、ガラス基板から膜を剥がし、高分子化合物(1)の膜を得た。株式会社ニコン製デジタル測長機、機種名:DIGIMICRO MH−15で高分子化合物(1)の膜の膜厚を測定したところ29μmであった。
【0109】
本発明の気体分離膜が含む高分子化合物(1)の反応経路を以下の反応式に示す。
【0110】
【化29】
【0111】
実施例2
[前駆体ポリアミド(2)溶液の調製および高分子化合物(2)の製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP基を含むジアミンとしてのHFIP−MDA、7.5g(14.1mmol)、溶媒としてのDMAc、42gを加え、窒素雰囲気下、低温恒温反応槽を用いて温度−78℃で20分間攪拌した。テレフタル酸クロリド、2.86g(14.1mmol)をDMAc、8gに溶解させて加え、温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴に漬けて3時間撹拌し、次いで室温で2時間攪拌し、前駆体となるポリアミド(2)を含む溶液を調製した。前述のGPC装置で前駆体ポリアミド(2)の分子量を測定したところ、前駆体ポリアミド(2)の分子量はMw=85700、Mw/Mn=1.68であった。
【0112】
得られた前駆体ポリアミド(2)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転数300rpmに達した後、回転数300rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で1時間加熱し環化反応させた後に冷却し、ガラス基板から膜を剥がし、高分子化合物(2)の膜を得た。前述の測長機で高分子化合物(2)の膜の膜厚を測定したところ20μmであった。
【0113】
以上の操作における、高分子化合物(2)の合成経路を以下の反応式に示す。
【0114】
【化30】
【0115】
実施例3
[前駆体ポリアミド(3)溶液の調製および高分子化合物(3)の膜の製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP基を含むジアミンとしてのHFIP−MDA、7.5g(14.1mmol)、溶媒としてのDMAc、42gを加え、窒素雰囲気下、低温恒温反応槽を用いて温度−78℃で20分間攪拌した。4,4'−ビフェニルカルボニルクロリド、3.94g(14.1mmol)をDMAc、8gに溶解させて加え、温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴に漬けて3時間撹拌し,次いで室温で2時間攪拌し、前駆体となるポリアミド(3)を含む溶液を調製した。前述のGPC装置で前駆体ポリアミド(3)の分子量の測定したところ、前駆体ポリアミド(3)の分子量はMw=62400、Mw/Mn=1.67であった。
【0116】
得られた前駆体ポリアミド(3)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転数300rpmに達した後、回転数300rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で1時間、加熱し環化反応させた後に冷却し、ガラス基板から膜を剥がし、高分子化合物(3)の膜を得た。前述の側長機で高分子化合物(3)の膜の膜厚を測定したところ18μmであった。
【0117】
以上の操作における、高分子化合物(3)の合成経路を以下の反応式に示す。
【0118】
【化31】
【0119】
実施例4
[前駆体ポリアミド(4)溶液の調製および高分子化合物(4)の膜の製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP基を含むジアミンとしてのHFIP−mTB、21.8g(40.0mmol)、溶媒としてのジメチルアセトアミド(以下、DMAcと呼ぶことがある)60gを加え、窒素雰囲気下、温度−78℃で20分間攪拌した。4,4'−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(以下、OBBCと表す場合がある)、11.8g(40.0mmol)をDMAc、70gに溶解させて加え、低温恒温反応槽を用いて温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴につけて3時間攪拌し、次いで室温で2時間攪拌し、前駆体となるポリアミド(4)を含む溶液を調製した。ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと呼ぶことがある)装置(東ソー株式会社製、機種名HLC−8320GPC、カラム名:TSKgel SuperHZM−H、溶媒:テトラヒドロフラン(以下、THFと呼ぶことがある))で前駆体ポリアミド(4)の分子量を測定したところ、前駆体ポリアミド(4)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=227700、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.83であった。
【0120】
得られた前駆体ポリアミド(4)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転速度500rpmに達した後、回転数500rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度250℃で1時間加熱し環化反応させた後に冷却し、ガラス基板から膜を剥がし、高分子化合物(4)の膜を得た。前述の測長機で高分子化合物(4)の膜の膜厚を測定したところ45μmであった。
【0121】
本発明の気体分離膜が含む高分子化合物(4)の反応経路を以下の反応式に示す。
【0122】
【化32】
【0123】
実施例5
[前駆体ポリアミド(5)溶液の調製および高分子化合物(5)の膜の製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mL三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP基を含むジアミンとしてのHFIP−mTB、7.5g(13.8mmol)、溶媒としてのDMAc、42gを加え、窒素雰囲気下、低温恒温反応槽を用いて温度−78℃で20分間攪拌した。イソフタル酸クロリド、2.80g(13.8mmol)をDMAc、8gに溶解させて加え、温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴に漬けて3時間撹拌し、次いで室温で2時間攪拌し、前駆体となるポリアミド(5)を含む溶液を調製した。前述のGPC装置で前駆体ポリアミド(4)の分子量を測定したところ、前駆体ポリアミド(5)の分子量はMw=43100、Mw/Mn=1.69であった。
【0124】
得られた前駆体ポリアミド(5)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転数300rpmに達した後、回転数300rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さの膜となるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で1時間加熱して環化反応させた後に冷却し、ガラス基板から膜を剥がすことで、高分子化合物(5)の膜を得た。前述の測長機で高分子化合物(5)の膜の膜厚を測定したところ13μmであった。
【0125】
以上の操作における、高分子化合物(5)の合成経路の以下の反応式に示す。
【0126】
【化33】
【0127】
実施例6
[前駆体ポリアミド(6)溶液の調製および高分子化合物(6)の膜の製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP基を含むジアミンとしてのHFIP−mTB、7.5g(13.8mmol)、溶媒としてのDMAc、42gを加え、窒素雰囲気下、温度−78℃で20分間攪拌した。イソフタル酸クロリド、1.40g(6.9mmol)およびテレフタル酸クロリド、1.40g(6.9mmol)を、DMAc、8gに溶解させて加え、低温恒温反応槽を用いて温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴に漬けて3時間撹拌し、次いで室温で2時間攪拌し、前駆体となる前駆体ポリアミド(6)を含む溶液を調製した。前述のGPC装置で前駆体ポリアミド(6)の分子量を測定したところ、ポリアミド(6)の分子量はMw=79800,Mw/Mn=1.76であった。
【0128】
得られた前駆体ポリアミド(6)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転数300rpmに達した後、回転数300rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で1時間加熱し環化反応させた後で冷却し、ガラス基板から膜を剥がし、高分子化合物(6)の膜を得た。前述の側長機で高分子化合物(6)の膜の膜厚を測定したところ28μmであった。
【0129】
以上の操作における、高分子化合物(6)の合成経路を以下の反応式に示す。
【0130】
【化34】
【0131】
実施例7
[前駆体ポリアミド(7)溶液の調製および高分子化合物(7)の膜の製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP基を含むジアミンとしてのHFIP−mTB、7.5g(13.8mmol)、溶媒としてのDMAc、42gを加え、窒素雰囲気下、温度−78℃で20分間攪拌した。イソフタル酸クロリド、1.40g(6.9mmol)および4,4'−ビフェニルカルボニルクロリド、1.93g(6.9mmol)を、DMAc、8gに溶解させて加え、温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴に漬けて3時間撹拌し、次いで室温で2時間攪拌し、前駆体となる前駆体ポリアミド(7)を含む溶液を調製した。前述のGPC装置で前駆体ポリアミド(7)の分子量を測定したところ、Mw=57300、Mw/Mn=1.87であった。
【0132】
得られた前駆体ポリアミド(7)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板に展開し、スピンコーターにて10秒で回転速度300rpmに達した後、回転数300rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さの膜となるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で1時間加熱し環化反応させた後で冷却し、ガラス基板から膜を剥がし、高分子化合物(7)の膜を得た。前述の測長機で高分子化合物膜(7)の膜厚を測定したところ、膜厚は21μmであった。
【0133】
以上の操作における、高分子化合物(7)の合成経路を以下の反応式に示す。
【0134】
【化35】
【0135】
実施例8
[前駆体ポリアミド(8)溶液の調製および高分子化合物(8)の膜の製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP基を含むジアミンとしてのHFIP−mTB、21.8g(40.0mmol)、溶媒としてのジメチルアセトアミド(以下、DMAcと呼ぶことがある)60gを加え、窒素雰囲気下、温度−78℃で20分間攪拌した。OBBC、11.8g(40.0mmol)をDMAc、70gに溶解させて加え、低温恒温反応槽を用いて温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴につけて3時間攪拌し、次いで室温で2時間攪拌し、前駆体となるポリアミド(8)を含む溶液を調製した。ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと呼ぶことがある)装置(東ソー株式会社製、機種名HLC−8320GPC、カラム名:TSKgel SuperHZM−H、溶媒:テトラヒドロフラン(以下、THFと呼ぶことがある))で前駆体ポリアミド(8)の分子量を測定したところ、前駆体ポリアミド(1)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=134200、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.81であった。
【0136】
得られた前駆体ポリアミド(8)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転速度800rpmに達した後、回転数800rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度250℃で1時間加熱し環化反応させた後に冷却し、ガラス基板から膜を剥がし、高分子化合物(8)の膜を得た。前述の測長機で高分子化合物(8)の膜の膜厚を測定したところ68μmであった。
【0137】
本発明の気体分離膜が含む高分子化合物(8)の反応経路を以下の反応式に示す。
【0138】
【化36】
【0139】
比較例1
[高分子化合物(9)の調製および製膜]
窒素導入管を備えた内容積500mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP−MDA、58.3g(110mmol)と、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと呼ぶことがある)、32.4g(110mmol)と、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、温度20℃で20分間攪拌した。次いで、反応系にピリジン34.8g(440mmol)、無水酢酸44.9g(440mmol)の順に加え,さらに24時間攪拌し、イミド化反応を行い、高分子化合物(9)を含む溶液を調製した。前述のGPC装置で分子量を測定したところ、Mw=91000,Mw/Mn=1.84であった。
【0140】
得られた高分子化合物(9)の溶液を加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転数800rpmに達した後、回転数800rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で2時間加熱した後で冷却し、ガラス基板から膜を剥がすことで、以下の反応式に示す繰り返し単位のみからなる高分子化合物(9)の膜を得た。前述の側長機で高分子化合物(7)の膜の膜厚を測定したところ43μmであった。
【0141】
以上の操作における、高分子化合物(9)の合成経路を以下の反応式に示す。高分子化合物(9)は複素環構造を有していない。
【0142】
【化37】
【0143】
比較例2
[高分子化合物(10)の調製および製膜]
窒素導入管を備えた内容積500mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、BPDA、32.4g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、温度20℃で20分間攪拌した。次いで、反応系にピリジン34.8g(440mmol)、無水酢酸44.9g(440mmol)の順に加え,さらに24時間攪拌し、イミド化反応を行い高分子化合物(10)を含む溶液を調製した。前述のGPC装置で分子量を測定したところ、Mw=134000、Mw/Mn=1.97であった。
【0144】
得られた高分子化合物(10)を含む溶液にDMAc、150gを加え希釈し加圧濾過した後、ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転数1200rpmに達した後、回転数1200rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で2時間加熱した後で冷却し、ガラス基板から膜を剥がすことで高分子化合物(10)の膜を得た。前述の側長機で高分子化合物(10)の膜の膜厚を測定したところ51μmであった。
【0145】
以上の操作における、高分子化合物(10)の合成経路を以下の反応式に示す。高分子化合物(10)は複素環構造を有していない。
【0146】
【化38】
【0147】
比較例3
[高分子化合物(11)の調製および製膜]
窒素導入管を備えた内容積300mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すHFIP−mTB、7.5g(13.8mmol)と、DMAc、15gを加え、窒素雰囲気下、低温恒温反応槽を用いて温度−78℃で20分間攪拌した。次いで、イソフタル酸クロリド、1.40g(6.89mmol)を加え、温度−78℃で10分間攪拌した後、フラスコ底部を氷浴につけて3時間攪拌した。その後、BPDA、2.03g(6.89mmol)、DMAc、2gの順番に加え、室温で2時間攪拌した。反応系にピリジン2.18g(27.6mmol)、無水酢酸、2.82g(27.6mmol)の順に加え、さらに24時間攪拌し、ポリアミドイミド(11)を含む溶液を作製した。前述のGPC装置で分子量を測定したところ、Mw=52400、Mw/Mn=1.66であった。
【0148】
得られたポリアミドイミド(11)を含む溶液を加圧濾過した後、ガラス基板に塗布した。ガラス基板上に展開し、スピンコーターにて10秒で回転数500rpmに達した後、回転数500rpmで10秒間保持し、ガラス基板上に均一な厚さとなるように塗布した。窒素雰囲気下、温度300℃で1時間加熱した後で冷却し、ガラス基板から膜を剥がすことで高分子化合物(11)の膜を得た。前述の側長機で高分子化合物(11)の膜の膜厚を測定したところ47μmであった。
【0149】
以上の操作における、高分子化合物(11)の合成経路を以下の反応式に示す。高分子化合物(11)はHFIP基と複素環構造の両方を有している。
【0150】
【化39】
【0151】
実施例1〜8における本発明の範疇の複素環構造を含む高分子化合物(1)〜(4)、(6)〜(8)を以下の表1に、比較例1〜3の本発明の範疇にない高分子化合物(9)〜(11)を以下の表2に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
本発明の範疇の実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)と本発明の範疇にない比較例1の高分子化合物(9)は、原料化合物に前記HFIP−MDAを用いた高分子化合物である。本発明の範疇の実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)と本発明の範疇にないと比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)は、原料化合物に前記HFIP−mTBを用いた高分子化合物である。
【0155】
実施例6の高分子化合物(6)、実施例7の高分子化合物(7)、比較例3の高分子化合物(11)は、原料化合物としてHFIP基を有するジアミン1モル量に対して、イソフタル酸クロリド、0.5モル等量、およびそれぞれ別個のジカルボン酸誘導体0.5モル等量、又はテトラカルボン酸二無水物0.5モル等量を用いており、原料化合物の当量比に対応する割合でそれぞれの原料に由来する構造を有している。比較例1〜3の高分子化合物(9)〜(11)は、テトラカルボン酸二無水物であるBPDAに由来したHFIP基を有するポリイミド構造を有している。
[透過性の評価方法]
透過性の評価には、ガス透過率測定装置(GTRテック株式会社製、GTR−2ADF)を用い、差圧式圧力計法により測定した。
【0156】
具体的には、ステンレス製のセルに膜面積3.14cm
2の気体分離膜を配置し、温度35℃の条件で、水素ガス(H
2)、ヘリウムガス(He)、メタンガス(CH
4)、炭酸ガス(CO
2)、窒素ガス(N
2)および酸素ガス(O
2)を用い、供給ガス圧を150kPaで各ガスの透過係数を測定した。ガスの選択性は、2種類のガスの透過係数より算出した。
[実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜および比較例1の高分子化合物(9)からなる膜の透過係数の測定、およびそれから算出した膜の選択性]
実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)、比較例1の高分子化合物(9)からなる膜の透過性の測定結果を表3に示す。
【0157】
【表3】
【0158】
表3の透過係数から算出した気体の選択性を表4に示す。
【0159】
【表4】
【0160】
以下、表3および表4について説明する。
<透過係数>
測定した全ての気体において、実施例1〜4のHFIP−MDAを用いた高分子化合物(1)〜(4)からなる膜の透過係数は、比較例1の含フッ素ポリイミド化合物である高分子化合物(9)からなる膜の透過係数より高かった。
<二酸化炭素の透過性>
実施例1〜3の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜のCO
2の透過係数は、比較例1の高分子化合物(9)からなるCO
2の透過係数より高かった。
<メタンの透過性>
実施例1〜3の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜のCH
4の透過係数は、比較例1の高分子化合物(9)からなるCH
4の透過係数より高かった。
<二酸化炭素とメタンの選択性>
実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜の選択性CO
2/CH
4は、比較例1の高分子化合物(9)からなる膜の選択性と同程度であり、気体分離膜としての十分な選択性を示した。比較例1の高分子化合物(9)からなる膜に比べ、透過性に優れる実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜の方が、小さな膜面積でも短時間でより多くの量のCO
2とCH
4を含むガスを分離処理できる。
<窒素の透過性>
実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜のN
2の透過係数は、比較例1の高分子化合物(7)からなるCO
2の透過係数より高かった。
<二酸化炭素と窒素の選択性>
実施例1、実施例2、実施例4の高分子化合物(1)、高分子化合物(2)、高分子化合物(4)からなる膜の選択性CO
2/N
2は、比較例1の高分子化合物(9)からなる膜の選択性より優れていた。実施例3の高分子化合物(3)からなる膜の選択性CO
2/N
2は、比較例1の高分子化合物(9)からなる膜の選択性と同等程度であり、気体分離膜としての十分な選択性を示した。
【0161】
比較例1の高分子化合物(9)からなる膜に比べ、透過性に優れる実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜の方が、小さな膜面積でも短時間でより多くの量のCO
2とN
2を含むガスを分離処理できる。
<ヘリウムの透過性>
実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜のHeの透過係数は、比較例1の高分子化合物(9)からなるHeの透過係数より高かった。
<ヘリウムとメタンの選択性>
実施例1、実施例4の高分子化合物(1)、高分子化合物(4)からなる膜の選択性He/CH
4は、比較例1の高分子化合物(9)からなる膜の選択性より優れていた。実施例2、実施例3の高分子化合物(2)、高分子化合物(3)からなる膜の選択性He/CH
4は、比較例1の高分子化合物(9)からなる膜の選択性と同等程度であり、気体分離膜としての十分な選択性を示した。
【0162】
比較例1の高分子化合物(9)からなる膜に比べ、透過性に優れる実施例1〜4の高分子化合物(1)〜(4)からなる膜の方が、小さな膜面積でも短時間でより多くの量のHeとCH
4を含むガスを分離処理できる。
[実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜および比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜の透過係数の測定、およびそれから算出した膜の選択性]実施例4〜5の高分子化合物(6)〜(8)、比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜の気体透過性の測定結果を表5に示す。
【0163】
【表5】
【0164】
表5の透過係数から算出した気体の選択性を表6に示す。
【0165】
【表6】
【0166】
以下、表5および表6について説明する。
<透過係数>
実施例6〜8のHFIP−mTBを用いた高分子化合物(6)〜(8)からなる膜の透過係数は、比較例2〜3の含フッ素ポリイミド化合物である高分子化合物(10)〜(11)からなる膜の透過係数より高かった。
<二酸化炭素の透過性>
実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)の透過係数は、比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなるCO
2の透過係数より高かった。
<メタンの透過性>
実施例6〜8の高分子化合物(10)〜(11)の透過係数は、比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなるCH
4の透過係数より高かった。
<二酸化炭素とメタンの選択性>
二酸化炭素とメタンの選択性に関しては、実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜の選択性CO
2/CH
4とより比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜の選択性より低いが、気体分離膜としての十分な選択性を示した。
比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜に比べ、透過性に優れる実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜の方が、小さな膜面積でも短時間でより多くの量のCO
2とCH
4を含むガスを分離処理できる。
<窒素の透過性>
実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜のN
2の透過係数は比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜のN
2の透過係数より高かった。
<二酸化炭素と窒素の選択性>
実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜の選択性CO
2/N
2は、比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜の選択性より低いが、気体分離膜としての十分な選択性を示した。
比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜に比べ、透過性に優れる実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜の方が、小さな膜面積でも短時間でより多くの量のCO
2とN
2を含むガスを分離処理できる。
<ヘリウムの透過性>
実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜の透過係数比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなるHeの透過係数より高かった。
<ヘリウムとメタンの選択性>
実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜の選択性He/CH
4は、比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜の選択性はより低いが、気体分離膜としての十分な選択性を示した。比較例2〜3の高分子化合物(10)〜(11)からなる膜に比べ、透過性に優れる実施例6〜8の高分子化合物(6)〜(8)からなる膜の方が、小さな膜面積でも短時間でより多くの量のHeとCH
4を含むガスを分離処理することができる。