特許第6547557号(P6547557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547557
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   B60C13/00 D
   B60C13/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-191769(P2015-191769)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-65383(P2017-65383A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】太田 博己
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−048217(JP,A)
【文献】 特開2004−017829(JP,A)
【文献】 特開2014−125108(JP,A)
【文献】 特開2013−216119(JP,A)
【文献】 特開2004−017828(JP,A)
【文献】 特開平09−226328(JP,A)
【文献】 特開平09−039518(JP,A)
【文献】 特開平09−164820(JP,A)
【文献】 特開平11−198614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部を具えた空気入りタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、タイヤ半径方向にのびかつタイヤ周方向に並べられた複数の畝状のリッジと、隣合う前記リッジ間に形成されたタイヤ半径方向にのびる細溝とを含む装飾模様が形成され、
前記リッジは、前記細溝の溝底からの高さであるリッジ高さと、タイヤ周方向の幅であるリッジ幅とを有し、
前記リッジ高さ及び前記リッジ幅が、タイヤ半径方向で変化しており、
前記リッジは、前記リッジ幅が最小となるくびれ部を少なくとも一つ含み、かつ、前記各くびれ部において前記リッジ高さが最小となることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
サイドウォール部を具えた空気入りタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、タイヤ半径方向にのびかつタイヤ周方向に並べられた複数の畝状のリッジと、隣合う前記リッジ間に形成されたタイヤ半径方向にのびる細溝とを含む装飾模様が形成され、
前記リッジは、前記細溝の溝底からの高さであるリッジ高さと、タイヤ周方向の幅であるリッジ幅とを有し、
前記リッジ高さ及び前記リッジ幅が、タイヤ半径方向で変化しており、
前記リッジは、前記リッジ幅が最小となるくびれ部を2つ以上含んでいることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】
サイドウォール部を具えた空気入りタイヤであって、
前記サイドウォール部の表面に、タイヤ半径方向にのびかつタイヤ周方向に並べられた複数の畝状のリッジと、隣合う前記リッジ間に形成されたタイヤ半径方向にのびる細溝とを含む装飾模様が形成され、
前記リッジは、前記細溝の溝底からの高さであるリッジ高さと、タイヤ周方向の幅であるリッジ幅とを有し、
前記リッジ高さ及び前記リッジ幅が、タイヤ半径方向で変化しており、
前記リッジは、タイヤ半径方向の長さの中央部に前記リッジ幅が最小となるくびれ部が設けられていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記リッジは、前記くびれ部からリッジ幅が漸増する拡幅部を含んでいる請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記サイドウォール部の正面視において、前記各リッジは、タイヤ回転軸を通るタイヤ半径方向線に関して線対称形状を有する請求項1乃至のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記サイドウォール部の正面視において、前記リッジは、タイヤ周方向に、異なる形成ピッチで並べられている請求項1乃至のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部の表面に複数の畝状のリッジを含む装飾模様が形成された空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10(a)及びそのA−A断面である図10(b)に示されるように、サイドウォール部bに、装飾模様cが形成された空気入りタイヤaが提案されている(例えば、下記特許文献1)。装飾模様cは、タイヤ半径方向にのびかつタイヤ周方向に並べられた複数の畝状のリッジdと、リッジd、d間に形成されたタイヤ半径方向にのびる細溝eとを含んでいる。
【0003】
一般に、サイドウォール部bは、ゴムの厚さが薄く、内部構造材であるカーカスの継ぎ目や残留空気等により、バルジやデントと呼ばれる凹凸が目立ちやすい。従来のタイヤaでは、サイドウォール部bに設けられた装飾模様cが、前記凹凸を目立たなくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−17829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装飾模様cは、各リッジdが一定の幅及び高さを持っているため、装飾模様cのいずれの位置においても明暗の差が一様に等しく、凹凸を目立たなくさせる目隠し効果を十分に発揮することができなかった。また、タイヤaに空気圧を充填することにより、サイドウォール部bが膨張すると、各リッジdの表面部に応力が集中し、そこからクラックが生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、サイドウォール部の凹凸を目立たなくさせる目隠し効果を向上しかつリッジを起点としたクラックを抑制しうる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち、請求項1記載の発明は、サイドウォール部を具えた空気入りタイヤであって、前記サイドウォール部の表面に、タイヤ半径方向にのびかつタイヤ周方向に並べられた複数の畝状のリッジと、隣合う前記リッジ間に形成されたタイヤ半径方向にのびる細溝とを含む装飾模様が形成され、前記リッジは、前記細溝の溝底からの高さであるリッジ高さと、タイヤ周方向の幅であるリッジ幅とを有し、前記リッジ高さ及び前記リッジ幅が、タイヤ半径方向で変化していることを特徴とする。
【0008】
また請求項2に記載の発明は、前記リッジは、前記リッジ幅が最小となるくびれ部を少なくとも一つ含んでいる請求項1記載の空気入りタイヤである。
【0009】
また請求項3に記載の発明は、前記リッジは、前記リッジ幅が最小となるくびれ部を少なくとも一つ含み、かつ、前記各くびれ部において前記リッジ高さが最小となる請求項1又は2記載の空気入りタイヤである。
【0010】
また請求項4に記載の発明は、前記リッジは、前記リッジ幅が最小となるくびれ部と、前記くびれ部からリッジ幅が漸増する拡幅部とを含んでいる請求項2又は3記載の空気入りタイヤである。
【0011】
また請求項5に記載の発明は、前記リッジは、前記くびれ部を2つ以上含んでいる請求項2乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0012】
また請求項6に記載の発明は、前記リッジは、タイヤ半径方向の長さの中央部に前記くびれ部が設けられている請求項2乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0013】
また請求項7に記載の発明は、前記サイドウォール部の正面視において、前記各リッジは、タイヤ回転軸を通るタイヤ半径方向線に関して線対称形状を有する請求項1乃至5のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【0014】
また請求項8に記載の発明は、前記サイドウォール部の正面視において、前記リッジは、タイヤ周方向に、異なる形成ピッチで並べられている請求項1乃至7のいずれかに記載の空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の空気入りタイヤは、リッジ高さ及びリッジ幅がタイヤ半径方向に変化するリッジを含む装飾模様が形成されたサイドウォール部を具える。このような装飾模様は、リッジ高さ又はリッジ幅が大きい位置では、リッジ間の細溝内で光が反射され難くなり、細溝が暗く視認される。逆に、リッジ高さ又はリッジ幅が小さい位置では、細溝内により多くの光が反射され細溝が明るく視認される。即ち、本発明では、装飾模様に、明暗の差が大きくなる部分を含ませることができる。従って、装飾模様は、サイドウォール部の凹凸を、明暗の差により、さらにぼかして目立たなくさせ、目隠し効果を向上させることができる。
【0016】
また本発明によれば、各リッジは、リッジ高さ又はリッジ幅が小さい位置では、リッジの剛性が小さくなり、変形し易くなる。このため、内圧充填時には、この剛性の小さな部分でリッジに作用する応力が緩和される。従って、リッジを起点としたクラックの発生を抑制することができる。
【0017】
さらに、装飾模様による明暗の差を用い、装飾模様に沿って標章を形成した場合には、明暗の差が視覚に作用し、標章を立体的に視認させることもでき、標章のデザイン性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態を示す空気入りタイヤの要部拡大正面図である。
図2図1のサイドウォール部のタイヤ子午線断面図である。
図3】装飾模様の拡大斜視図である。
図4】他の装飾模様の拡大斜視図である。
図5】他の装飾模様の拡大斜視図である。
図6】他の装飾模様の拡大斜視図である。
図7】他の装飾模様の拡大斜視図である。
図8】他の装飾模様の拡大斜視図である。
図9】他の装飾模様の拡大斜視図である。
図10】(a)は従来の空気入りタイヤの部分正面図、(b)はそのA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」と記載される場合がある)1のサイドウォール部2の正面図が示される。図1に示されるように、サイドウォール部2の表面2Sには、複数の畝状のリッジ3と、リッジ3間に形成された細溝4とを含む装飾模様5が形成されている。
【0020】
装飾模様5は、タイヤ回転軸の回りをタイヤ周方向にのびる帯状体である。装飾模様5は、例えば、タイヤ周方向に連続してのびる環状、又は、タイヤ周方向の一部に形成される円弧状のいずれでもよい。
【0021】
リッジ3は、タイヤ半径方向にのびかつタイヤ周方向に並べられている。このため、リッジ3、3間に形成された細溝4もタイヤ半径方向にのびている。
【0022】
図2は、タイヤ1のタイヤ回転軸を含む子午線断面である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、トレッド部10からサイドウォール部2をへてビード部(図示省略)のビードコア(図示省略)に至るカーカス11と、カーカス11のタイヤ軸方向外側かつサイドウォール部2に配されたサイドウォールゴム2Gとを具えている。装飾模様5は、サイドウォールゴム2Gに、例えば、加硫成形によって形成される。
【0023】
図2に示されるように、本実施形態の装飾模様5は、タイヤ周方向にのびる外側リブ6aと、内側リブ6bとの間をタイヤ半径方向にのびている。本実施形態では、リッジ3及び細溝4のタイヤ半径方向の両端部は、それぞれ外側リブ6a及び内側リブ6bに接続されている。
【0024】
外側リブ6a及び内側リブ6bは、タイヤ軸方向の外方に隆起するもので、例えば、サイドウォール部2の表面2Sにおいて、タイヤ周方向に連続して形成される。該リブ6a及びリブ6bは、各リッジ3及び各細溝4の両端部を補強し、これらを起点としたクラックの発生を抑制することができる。
【0025】
図3には、装飾模様5の模式的な斜視図が示される。図3では、タイヤ周方向及びタイヤ半径方向が夫々直線的に例示される。図3に示されるように、リッジ3は、リッジ高さRh及びリッジ幅Rwが、タイヤ半径方向で変化している。
【0026】
このような装飾模様5によれば、リッジ高さRh又はリッジ幅Rwが小さい位置では、細溝4の溝底4a等に、より多くの光が達して反射され、細溝4が明るく視認される。逆に、リッジ高さRh又はリッジ幅Rwが大きい位置では、細溝4の溝底4a等に光が達し難く、細溝4が暗く視認される。このため、装飾模様5は、明暗の差が大きくなる部分を含むことができる。従って、本実施形態の装飾模様5は、明暗の差によりサイドウォール部2の凹凸をぼかし、該凹凸を目立たなくする目隠し効果をより一層向上させることができる。
【0027】
また、本実施形態の装飾模様5によれば、明暗の差を用いることにより、例えば、装飾模様5に沿って標章を形成することができ、標章のデザイン性を向上させる点でも望ましい。さらに、本実施形態の装飾模様5によれば、リッジ高さRh又はリッジ幅Rwが小さい位置では、リッジ3の剛性が小さくなり、リッジ3が変形し易くなる。従って、例えば、タイヤ1に空気圧が充填された場合、サイドウォールゴム2Gの変形に伴ってリッジ3に応力が作用しても、リッジ3の剛性が相対的に小さい部分でその応力が緩和される。これにより、リッジ3を起点としたクラックの発生を抑制することができる。
【0028】
図3に示されるように、リッジ3は、例えば、少なくとも一つのくびれ部7を含んでいることが好ましく、くびれ部7は、リッジ幅Rwが最小となる部分である。本実施形態のリッジ3は、くびれ部7において、リッジ幅Rw及びリッジ高さRhがともに最小となる。このようなリッジ3は、くびれ部7に隣合う細溝4の溝底4aにより多くの光が達して反射され、細溝4を局部的に明るく視認させる。また、リッジ3のくびれ部7は、リッジ幅Rw及びリッジ高さRhが最小であるため、剛性が相対的に小さく変形し易い。従って、リッジ3に作用する応力は、くびれ部7で緩和され、クラックの発生がさらに効果的に抑制される。
【0029】
リッジ3は、例えば、くびれ部7からタイヤ半径方向にリッジ幅Rwが漸増する拡幅部8を含んでいる。本実施形態のリッジ3は、拡幅部8において、例えば、リッジ幅Rw及びリッジ高さRhがともに漸増する。また、各拡幅部8は、くびれ部7から夫々外側リブ6a又は内側リブ6bまで連続してのびている。このようなリッジ3は、拡幅部8によりリッジ3に作用する応力をタイヤ半径方向に分散することができる。従って、タイヤ1への内圧充填中等、リッジ3に作用する応力をより緩和することができる。
【0030】
リッジ3は、例えば、そのタイヤ半径方向の長さの中央部3Aにくびれ部7が設けられているのが望ましい。本実施形態のリッジ3は、タイヤ半径方向の長さの中央部3Aに設けられた1つのくびれ部7を含んで構成されている。中央部3Aは、リッジ長さLの中心から内外に夫々15%の領域とされる。このようなリッジ3は、リッジ幅Rw及びリッジ高さRhが最小となる点であるくびれ部7と、くびれ部7の両側に同一の長さでのびる一対の拡幅部8、8とを含んでいる。このため、リッジ3に作用する応力は、一対の拡幅部8により効果的に分散され、かつ、くびれ部7により確実に緩和される。
【0031】
リッジ高さRhは、細溝4の最も深い溝底4aからの高さである。該リッジ高さRhは、0.2〜2mmであるのが望ましい。リッジ高さRhが0.2mmより小さい場合、溝底4aとの差が小さく、リッジ3による目隠し効果が十分に得られないおそれがある。逆に、リッジ高さRhが、2mmより大きい場合、リッジ3にクラックが生じやすくなる。このような観点より、リッジ高さRhは、より好ましくは、0.4〜0.8mmである。
【0032】
リッジ幅Rwは、リッジ3のタイヤ周方向の幅である。該リッジ幅Rwは、0.2〜2.5mmであるのが望ましい。リッジ幅Rwが0.2mmより小さい場合、リッジ3による目隠し効果が十分に得られないおそれがある。逆に、リッジ幅Rwが、2.5mmより大きい場合、リッジ3にクラックが生じやすくなる。このような観点より、リッジ幅Rwは、より好ましくは、0.6〜1.2mmである。
【0033】
リッジ3は、サイドウォール部2の正面視(タイヤ回転軸の一端側からの視点)において、例えば、タイヤ回転軸を通るタイヤ半径方向線CL(本実施形態では中心線として示される)に関して線対称形状を有しているのが望ましい。このようなリッジ3は、タイヤ半径方向線CLのタイヤ周方向のいずれか一方側からサイドウォール部2が視認される場合であっても、装飾模様5に明暗の差を含ませることができる。
【0034】
本実施形態のリッジ3は、装飾模様5の横断面(リッジ3の長手方向と直角な断面)において、例えば、三角形状に形成される。このようなリッジ3は、タイヤ外側に向かって剛性が小さくなり、リッジ3のタイヤ外側に集中する表面歪等をより効果的に緩和することができる。
【0035】
本実施形態の装飾模様5は、タイヤ周方向に隣り合うリッジ3の構成がいずれも同一であり、隣り合うリッジ3の形成ピッチPが一定のものが示されている。このような装飾模様5では、各リッジ3がタイヤ周方向に規則的に整列される。従って、装飾模様5において、特定のリッジ3に大きな応力が作用することが抑制される。
【0036】
リッジ3の形成ピッチPは、0.5〜5.0mmであるのが望ましい。リッジ3の形成ピッチPが0.5mmより小さい場合、リッジ3が小さく、リッジ3による目隠し効果が十分に得られないおそれがある。逆に、形成ピッチPが、5.0mmより大きい場合、リッジ3の溝幅Rw又は細溝4の溝底4aの幅が大きくなり、リッジ3にクラックが生じやすくなる。このような観点より、リッジ幅Rwは、より好ましくは、0.6〜3.0mmである。
【0037】
また、装飾模様5は、1つのサイドウォール部2に、100〜1800本のリッジ3を含むのが望ましい。リッジ3の数が100本より少ない場合、タイヤ周方向のリッジ3の成形ピッチP及びリッジ3のリッジ幅Rwが大きくなる傾向がある。このため、各リッジ3の剛性が大きくなり、クラックが生じやすくなる。逆に、リッジ3の数が1800本より多い場合、各リッジ3が小さくなる傾向があり、装飾模様5の加工に多大な時間を要するおそれがある。このような観点より、装飾模様5は、より好ましくは、タイヤ周方向に600〜1500本のリッジ3を含むのが望ましい。
【0038】
図4乃至図9には、他の実施形態のリッジが形成された装飾模様5が拡大された斜視図が示される。以下、本実施形態と同一の構成には同一の符号が付され、その詳細な説明が省略される。
【0039】
図4の実施形態では、リッジ3は、タイヤ半径方向に複数(この実施形態では2つ)のくびれ部7a、7bを含んでいる。また、リッジ3は、各くびれ部7a、7bの両側に同一の長さでのびる4つの拡幅部8を含んでいる。このため、リッジ3に作用する応力は、各拡幅部8により効果的に分散され、かつ、各くびれ部7a、7bにより確実に緩和される。
【0040】
図5の実施形態では、リッジ3は、例えば、リッジ高さRh及びリッジ幅Rwが最小となるくびれ部7がある長さL3を持っている。該くびれ部7は、タイヤ半径方向の中央部3Aを含んで設けられるのが望ましい。このようなリッジ3は、光が反射され易い細溝4の溝底4aを、長さL3に亘りより広く視認させることができる。従って、装飾模様5に沿って標章を形成する場合、標章の形状に応じてくびれ部7の長さL3が予め設定されることにより、装飾模様5の予め設定された範囲において、明暗の差を一定とすることができ、標章のデザイン性を向上させることができる。
【0041】
くびれ部7の長さL3は、10mm以下であるのが望ましい。くびれ部7の長さL3が10mmより大きい場合、くびれ部7の剛性が大きくなり、くびれ部7にクラックが生じるおそれがある。
【0042】
図6の実施形態では、装飾模様5は、異なる構成のリッジ3を含んでいる。リッジ3は、例えば、リッジ幅Rw及びリッジ高さRhが大きい第1のリッジ3aと、これよりもリッジ幅Rw及びリッジ高さRhが小さい第2のリッジ3bとを含んでいる。これら第1のリッジ3aと第2のリッジ3bとは、例えば、形成ピッチP1、P2が異なる。このような装飾模様5では、細溝4の溝底4aの幅も異なる。このため、装飾模様5のタイヤ周方向に、明暗の差をランダムに変化させることができる。従って、サイドウォール部2の凹凸を目立たなくさせる目隠し効果をより向上させることができる。
【0043】
図7及び図8の実施形態では、リッジ3の横断面は、例えば、台形状や円弧状に形成されている。また、リッジ3は、前記横断面において、例えば、矩形状に形成されても良い(図示省略)。これらのリッジ3は、例えば、平面又は曲面からなる上面を有している。従って、細溝4の溝底4aとともに、各リッジ3の上面により光を反射させることができ、装飾模様5による標章のデザイン性を向上させることができる。
【0044】
なお、装飾模様5は、例えば、三角形状、台形形状、円形状及び矩形状等、装飾模様5の横断面において、異なる形状のリッジ3を含んで構成されても良く、標章のデザイン性をより向上させることができる。
【0045】
図9の実施形態では、リッジ3の横断面は、例えば、鋸歯状に形成されている。該鋸歯状のリッジ3は、タイヤ半径方向線CLに関して線対称な形状ではなく、例えば、タイヤ半径方向線CLのタイヤ周方向の一方側からサイドウォール部2が目視される場合には、その上面が目視不能である。従って、サイドウォール部2が前記一方側から目視された場合と逆に他方側から目視された場合とで、装飾模様5の見え方を異ならせることができ、標章のデザイン性をより向上させることができる。
【0046】
以上、本実施形態について詳述したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0047】
本発明の効果を確認するため、表1に示される各仕様に基づいて、サイドウォール部の表面に装飾模様が形成されたテスト用空気入りタイヤ(サイズ195/65R15)が試作され、目隠し性能、耐クラック性能及び加工性についてテストされた。
【0048】
また、比較のために、リッジ高さ及びリッジ幅に変化がなく、くびれ部を有しない装飾模様が形成された比較用タイヤが試作された。そして、比較用タイヤもテスト用タイヤと同様にテストされた。
各評価方法は下記の通りである。
【0049】
<目隠し性能>
各テスト用タイヤのサイドウォール部について、バルジやデント等の凹凸を肉眼で確認し、目視による凹凸の官能評価を5点法により示した。評価は、点数が大きい程、凹凸が確認できず優れる。
【0050】
<耐クラック性能>
各テスト用タイヤがテスト用リムにリム組されかつ175kPaの空気圧が充填され、しかも6.17kNの荷重が負荷された状態で、30000kmのドラム走行が実施された。この後、各テスト用タイヤの装飾模様について、リッジを起点としたクラックを肉眼で確認し、目視による各リッジの官能評価を5点法により示した。評価は、クラックの発生が確認できなかったものを5点、重大なクラックの発生が確認できたものを1点とし、点数が大きい程優れる。
【0051】
<加工性>
加工性は、各装飾模様の加工に要した時間を測定し、計測した時間に基づいて5点法により示した。評価は、点数が大きい程、加工に要した時間が短く優れる。
テストの結果が表1に示される。
【0052】
【表1】
【0053】
テストの結果、リッジ高さ及びリッジ幅がタイヤ半径方向に変化している実施例のタイヤの方が、サイドウォール部の凹凸を目立たなくさせる目隠し効果に優れかつリッジを起点としたクラックを抑制しうることが確認できた。
【符号の説明】
【0054】
1 空気入りタイヤ
2 サイドウォール部
2S 表面
3 リッジ
4 細溝
5 装飾模様
7 くびれ部
8 拡幅部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10