特許第6547571号(P6547571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547571
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】コネクタ及び端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/70 20060101AFI20190711BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20190711BHJP
   H01R 4/62 20060101ALN20190711BHJP
【FI】
   H01R4/70 K
   H01R4/18 A
   !H01R4/62 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-201647(P2015-201647)
(22)【出願日】2015年10月12日
(65)【公開番号】特開2017-76456(P2017-76456A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竣哉
(72)【発明者】
【氏名】大森 康雄
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
(72)【発明者】
【氏名】中田 丈博
(72)【発明者】
【氏名】山野 能章
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
【審査官】 山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−003856(JP,A)
【文献】 特開2012−079494(JP,A)
【文献】 特開2012−084267(JP,A)
【文献】 特開2003−297447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/70
H01R 4/18
H01R 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、前記芯線を包囲する絶縁被覆とを有していて、前端部では前記芯線が露出されている被覆電線と、
端子本体部を有する端子金具と、
前記端子金具の後端部に形成され、前記被覆電線の前端部に対し包囲するように圧着されたバレル部と、
前記バレル部を構成し、前記端子本体部の基底部に連なる基板部と、
前記バレル部を構成し、前記基板部の幅方向両側縁から対をなして延出するカシメ片と、
前記バレル部を全周に亘って包囲し、前記被覆電線の前端部を液密状に覆うモールド部と、
前記端子金具の全体を収容する端子収容室が形成されたハウジングとを備えており、
前記基板部が、前記基底部に対して底上げした形態であり、
前記バレル部には、前記被覆電線の前端よりも前方の領域において前記対をなすカシメ片の延出端縁同士の間隔を広げた形態であり、前記バレル部内の圧着空間を前記バレル部の外周面に開口させる連通部が形成されているコネクタ。
【請求項2】
前記バレル部は、前記絶縁被覆と非接触の状態で前記芯線の露出領域に対し包囲するように圧着されており、
前記モールド部が、前記芯線のうち前記バレル部との圧着部を含む露出領域の全体と、前記絶縁被覆の前端部とを液密状に覆っており、
前記端子収容室内には、前記端子金具の全体と、前記モールド部のうち前記絶縁被覆の前端よりも前方の領域のみとが収容されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
芯線と、前記芯線を包囲する絶縁被覆とを有していて、前端部では前記芯線が露出されている被覆電線と、
端子本体部を有する端子金具と、
前記端子金具の後端部に形成され、前記被覆電線の前端部に対し包囲するように圧着されたバレル部と、
前記バレル部を構成し、前記端子本体部の基底部に連なる基板部と、
前記バレル部を構成し、前記基板部の幅方向両側縁から対をなして延出するカシメ片と、
前記バレル部を全周に亘って包囲し、前記被覆電線の前端部を液密状に覆うモールド部とを備え、
前記端子金具の全体がハウジングに形成した端子収容室に収容されるようになっているものであって、
前記基板部が、前記基底部に対して底上げした形態であり、
前記バレル部には、前記被覆電線の前端よりも前方の領域において前記対をなすカシメ片の延出端縁同士の間隔を広げた形態であり、前記バレル部内の圧着空間を前記バレル部の外周面に開口させる連通部が形成されている端子付き電線。
【請求項4】
前記バレル部は、前記絶縁被覆と非接触の状態で前記芯線の露出領域に対し包囲するように圧着されており、
前記モールド部が、前記芯線のうち前記バレル部との圧着部を含む露出領域の全体と、前記絶縁被覆の前端部とを液密状に覆っており、
前記端子収容室内には、前記端子金具の全体と、前記モールド部のうち前記絶縁被覆の前端よりも前方の領域のみとが収容されるようになっている請求項3に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ及び端子付き電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルミニウム製の芯線を絶縁被覆で包囲した被覆電線の前端部に、銅製の端子金具のバレル部を圧着によって接続し、芯線とバレル部との圧着部分を合成樹脂製のモールド部で液密状に包囲することで防食する技術が開示されている。バレル部は、基板部の幅方向両側縁から対をなすカシメ片を延出させた形態であり、基板部の前端部は、端子本体部の基底部の後端部に連なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−003856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モールド部は、バレル部を全周に亘って覆っている。そのため、端子本体部の基底部とモールド部の下面との間で高低差が生じ、端子金具を端子収容室内に挿入したときに、端子金具の姿勢が不安定になることが懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、バレル部がモールド部で包囲された形態の端子金具を、端子収容室に安定して収容することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明のコネクタは、
芯線と、前記芯線を包囲する絶縁被覆とを有していて、前端部では前記芯線が露出されている被覆電線と、
端子本体部を有する端子金具と、
前記端子金具の後端部に形成され、前記被覆電線の前端部に対し包囲するように圧着されたバレル部と、
前記バレル部を構成し、前記端子本体部の基底部に連なる基板部と、
前記バレル部を構成し、前記基板部の幅方向両側縁から対をなして延出するカシメ片と、
前記バレル部を全周に亘って包囲し、前記被覆電線の前端部を液密状に覆うモールド部と、
前記端子金具の全体を収容する端子収容室が形成されたハウジングとを備えており、
前記基板部が、前記基底部に対して底上げした形態であり、
前記バレル部には、前記被覆電線の前端よりも前方の領域において前記対をなすカシメ片の延出端縁同士の間隔を広げた形態であり、前記バレル部内の圧着空間を前記バレル部の外周面に開口させる連通部が形成されている。
【0007】
第2の発明の端子付き電線は、
芯線と、前記芯線を包囲する絶縁被覆とを有していて、前端部では前記芯線が露出されている被覆電線と、
端子本体部を有する端子金具と、
前記端子金具の後端部に形成され、前記被覆電線の前端部に対し包囲するように圧着されたバレル部と、
前記バレル部を構成し、前記端子本体部の基底部に連なる基板部と、
前記バレル部を構成し、前記基板部の幅方向両側縁から対をなして延出するカシメ片と、
前記バレル部を全周に亘って包囲し、前記被覆電線の前端部を液密状に覆うモールド部とを備え、
前記端子金具の全体がハウジングに形成した端子収容室に収容されるようになっているものであって、
前記基板部が、前記基底部に対して底上げした形態であり、
前記バレル部には、前記被覆電線の前端よりも前方の領域において前記対をなすカシメ片の延出端縁同士の間隔を広げた形態であり、前記バレル部内の圧着空間を前記バレル部の外周面に開口させる連通部が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
第1及び第2の発明によれば、端子本体部の基底部の下面と、モールド部のうちバレル部を包囲する領域の下面との間の高低差を小さく、又は解消できる。したがって、端子収容室の内壁の形状がフラットであっても、端子金具を安定した姿勢で端子収容室内に収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1のコネクタの斜視図
図2】コネクタの正面図
図3図2のX−X線断面図
図4】端子付き電線の斜視図
図5】端子付き電線の側面図
図6】端子付き電線の断面図
図7】端子付き電線においてモールド部を形成する前の状態をあらわす斜視図
図8】端子付き電線においてモールド部を形成する前の状態をあらわす断面図
図9】端子付き電線においてモールド部を形成する前の状態をあらわす平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、前記バレル部は、前記絶縁被覆と非接触の状態で前記芯線の露出領域に対し包囲するように圧着されており、前記モールド部が、前記芯線のうち前記バレル部との圧着部を含む露出領域の全体と、前記絶縁被覆の前端部とを液密状に覆っており、前記端子収容室内には、前記端子金具の全体と、前記モールド部のうち前記絶縁被覆の前端よりも前方の領域のみとが収容されていてもよい。
また、第2の発明は、前記バレル部は、前記絶縁被覆と非接触の状態で前記芯線の露出領域に対し包囲するように圧着されており、前記モールド部が、前記芯線のうち前記バレル部との圧着部を含む露出領域の全体と、前記絶縁被覆の前端部とを液密状に覆っており、前記端子収容室内には、前記端子金具の全体と、前記モールド部のうち前記絶縁被覆の前端よりも前方の領域のみとが収容されるようになっていてもよい。
上記構成によれば、端子金具の後端部には、絶縁被覆に圧着されるインシュレーションバレル部が形成されていないので、端子収容室の容積を拡大しなくても、モールド部のうち端子金具を包囲する領域を端子収容室内に収容することができる。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図9を参照して説明する。尚、以下の説明において、前後方向については、図3,5,6における右方を前方と定義する。上下方向については、図2,3,5,6にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。本実施例のコネクタAは、端子付き電線10と、ハウジング35とを備えて構成されている。
【0012】
端子付き電線10は、被覆電線11と、端子金具15と、モールド部30とを一体化した形態であり、全体として前後方向に細長い導電路を構成する。被覆電線11は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の芯線12と、芯線12を包囲する略円筒状の絶縁被覆13とから構成されている。被覆電線11の前端部においては、絶縁被覆13が所定長さ分だけ剥き取られ、芯線12が露出している。この芯線12の露出領域14(図6,8を参照)の前端部には、後述する端子金具15が圧着により接続されている。
【0013】
端子金具15は、所定形状に打ち抜いた銅製又は銅合金製の板材に曲げ加工等を施して成形したものであり、全体として前後方向に細長い形状をなしている。図7,8に示すように、端子金具15は、その前端側領域を構成する端子本体部16と、後端側領域を構成するバレル部23とから構成されている。
【0014】
端子本体部16は、角筒形をなす箱状接続部17と、箱状接続部17の後端に連なる連結部18とから構成されている。箱状接続部17には、端子金具15の前方から、雄形をなす相手側端子(図示省略)のタブが挿入されて接続されるようになっている。連結部18は、底壁部19の左右両側縁から一対の側壁部20を立ち上げた形態である。連結部18の底壁部19は、箱状接続部17の下壁部21と面一状に連なっており、底壁部19と下壁部21は、端子本体部16の基底部22を構成している。
【0015】
バレル部23は、前後方向に細長い基板部24と、基板部24の幅方向(左右方向)における両側縁から周方向(端子金具15長さ方向と交差する方向)に延出する対をなすカシメ片27とから構成されている。図6,8に示すように、基板部24は、その前端部が段差状に低くなるように屈曲した形状をなしている。これにより、基板部24の前端部には低板部25が形成され、基板部24のうち低板部25よりも後方の領域は、嵩上げ板部26となっている。嵩上げ板部26の前後方向の長さ寸法は、低板部25の前後寸法よりも長く設定されいる。そして、低板部25は、基底部22の後端部に対し同じ高さで面一状に連なり、嵩上げ板部26は、基底部22に対して嵩上げされている。
【0016】
バレル部23は、アプリケータと称される自動機(図示省略)により、被覆電線11(芯線12)の前端部に圧着される。圧着工程では、基板部24(嵩上げ板部26)の後端部に載置された芯線12の前端部に対し、一対のカシメ片27が包囲するように曲げ変形させられる。これにより、図8に示すように、バレル部23の内部には基板部24と一対のカシメ片27とで囲まれた圧着空間28が構成されている。この圧着空間28に収容された芯線12の前端部と、端子金具15とが導通可能に固着される。圧着状態では、被覆電線11の前端部と端子金具15がほぼ一直線状に連なった形態となる。
【0017】
バレル部23の圧着空間28のうち芯線12が収容されるのは後端部だけであり、圧着空間28のうち芯線12よりも前方の領域には、後述するモールド部30の一部が充填される。バレル部23の圧着空間28は狭いので、モールド部30の成形工程で溶融樹脂(図示省略)が圧着空間28内に流入し易くするため手段が必要となる。図8に示すように、バレル部23における芯線12の前端よりも前方の領域に、一対のカシメ片27の延出端部27E同士の間隔を広げることによって連通部29が形成されている。連通部29により、圧着空間28とバレル部23の外周面とが連通する。連通部29は、バレル部23の上面における幅方向中央部に開口している。また、連通部29の平面視における開口領域の幅寸法は、前後両端に亘って概ね一定である。
【0018】
モールド部30は、芯線12に端子金具15を圧着した後に成形される。モールド部30の成形は、周知の金型(図示省略)内にバレル部23の全体と、連結部18の後端部と、被覆電線11における絶縁被覆13の前端部とを収容し、金型の内部に溶融樹脂(図示省略)を注入し、注入した溶融樹脂を固化(硬化)させることによって行われる。成形工程では、溶融樹脂の一部が連通部29を介してバレル部23の圧着空間28内に流入する。
【0019】
図6に示すように、成形後のモールド部30は、バレル部23の全体と、芯線12のうちバレル部23との圧着部を含む露出領域14の全体と、被覆電線11のうち絶縁被覆13が残存する領域の前端部とを全周に亘り液密状に包囲している。また、モールド部30の前端部の一部は、バレル部23よりも前方において連結部18の内部に収容されている。モールド部30のうちバレル部23の嵩上げ板部26を覆う底部領域の下面(外面)は、端子本体部16の基底部22の下面(外面)とほぼ同じ高さ、詳しくは、基底部22の下面より僅かに高い位置となっている。
【0020】
図3に示すように、被覆電線11の前端部と端子金具15とモールド部30が一体化された端子付き電線10は、ハウジング35の後方から端子収容室36内に挿入されている。挿入状態では、端子金具15の全体と、芯線12の露出領域14のうち後端部を除いた大部分とが端子収容室36内に収容されている。したがって、被覆電線11のうち絶縁被覆13が芯線12を包囲している領域は、その全体が端子収容室36(ハウジング35)の外部に配されている。
【0021】
モールド部30のうち端子収容室36内に収容されて端子金具15の全体と芯線12の露出領域14を液密状に包囲する領域は収容部31となっている。モールド部30のうち、端子収容室36(ハウジング35)の後方外部において芯線12の露出領域14の後端部と絶縁被覆13の前端部とを液密状に包囲する領域は、突出部32となっている。モールド部30の突出部32は、モールド部30被覆電線11のうちモールド部30よりも後方の領域が上下に曲げられたときに、その曲げの影響を端子金具15側へ伝わるのを抑制する機能を有している。
【0022】
即ち、モールド部30の突出部32には、モールド部30の上下方向の曲げ剛性を高める為の補強手段33として、上下一対の補強部34が形成されている。補強部34は、突出量域のほぼ全長に亘り、絶縁被覆13の上面側の厚さと絶縁被覆13の下面側の厚さを、収容部31の厚さよりも厚くした形態である。つまり、補強部34(突出部32)では、モールド部30の高さ寸法が収容部31よりも大きい。尚、補強部34(突出部32)の幅寸法は、収容部31の幅寸法と同じである。
【0023】
上述のように本実施例1のコネクタAは、複数の端子収容室36が形成されたハウジング35と、各端子収容室36に個別に挿入される複数の端子付き電線10とを備えている。端子付き電線10は、被覆電線11と端子金具15とモールド部30とを備えている。被覆電線11は、芯線12と、芯線12を包囲する絶縁被覆13とを有していて、被覆電線11の前端部では芯線12が露出されている。端子金具15の後端部には、絶縁被覆13と非接触の状態で芯線12の露出領域14に対し包囲するように圧着されたバレル部23が形成されている。即ち、バレル部23は、被覆電線11の前端部に圧着されている。
【0024】
モールド部30は、被覆電線11の前端部(即ち、芯線12のうちバレル部23との圧着部を含む露出領域14の全体と、絶縁被覆13の前端部と)を液密状に覆っている。芯線12はアルミニウム又はアルミニウム合金製であるのに対し、端子金具15は銅又は銅合金製であることから、芯線12と端子金具15(バレル部23)との接触部分における防食手段として、芯線12と端子金具15(バレル部23)との接触部分を合成樹脂製のモールド部30で液密状に包囲している。
【0025】
絶縁被覆13の外径は芯線12の外径より大きいため、モールド部30のうち絶縁被覆13を包囲する領域(突出部32)の外径は、モールド部30のうち芯線12を包囲する領域(収容部31)よりも大きくなる。この点に鑑みて、本実施例1の端子付き電線10を構成する端子金具15の後端部には、絶縁被覆13に対して包囲するように圧着されるインシュレーションバレル部を形成していない。そして、端子付き電線10のうち端子収容室36に収容するのは、端子金具15の全体と、モールド部30の前端部(即ち、モールド部30のうち絶縁被覆13の前端よりも前方の領域のみ)としている。但し、端子収容室36内には、絶縁被覆13は収容されていない。これにより、端子収容室36の容積(高さ寸法や幅寸法)を拡大しなくても、モールド部30のうち端子金具15を包囲する領域全体を端子収容室36内に収容することができた。
【0026】
本実施例の端子金具15に形成されていないインシュレーションバレル部は、ハウジング35の外部における被覆電線11の曲げの影響が端子金具15と芯線12との圧着部分に及ぶのを抑制する曲げ抑制機能を備えている。そのため、本実施例のモールド部30には、防水機能だけでなく、インシュレーションバレル部に替わって曲げ抑制機能も求められる。そこで、本実施例の端子付き電線10には、モールド部30のうちハウジング35外へ突出した突出部32の剛性を端子金具掛けるための補強手段33として補強部34が設けられている。
【0027】
補強部34は、モールド部30のうちハウジング35外への突出部32の上下方向の肉厚を、モールド部30のうち端子収容室36内に収容されている収容部31の上下方向の肉厚よりも厚くした形態である。この構成によれば、モールド部30の形状を複雑にしなくても、突出部32の上下方向への曲げ剛性を高めることができる。このようにモールド部30の突出部32の曲げ剛性を高めたので、突出部32が変形し難くなっている。これにより、モールド部30の後方において被覆電線11が曲げられても、その被覆電線11の曲げの影響がバレル部23に伝わる虞がない。
【0028】
また、端子金具15のバレル部23は、基板部24と一対のカシメ片27とを備えて構成されている。基板部24は、端子本体部16の基底部22に連なっており、カシメ片27は、基板部24の幅方向両側縁から対をなして延出している。バレル部23は、基板部24に載置された芯線12に対し、その外周を一対ののカシメ片27で包囲するようにして圧着接続されている。このバレル部23はモールド部30により全周に亘って包囲されているが、端子金具15のうちバレル部23よりも前方の端子本体部16の大部分は、モールド部30で覆われていない。バレル部23を含む端子金具15の全体は、ハウジング35の端子収容室36内に収容されている。
【0029】
上記のようにモールド部30は、バレル部23の基板部24は覆っているが、端子本体部16の基底部22は覆っていない。そのため、基底部22の外面とモールド部30のうちバレル部23を覆う領域の外面との間に段差が生じることが懸念される。このような段差が生じると、端子金具15を端子収容室36に収容したときに、基底部22の外面と端子収容室36の内壁面との間に隙間が生じ、端子収容室36内における端子金具15の姿勢が不安定になることが懸念される。
【0030】
そこで、バレル部23の基板部24を、端子本体部16の基底部22に対して底上げした形態としている。この構成によれば、端子本体部16の剥き出しになっている基底部22の下面と、モールド部30のうちバレル部23を包囲する領域の下面との間の高低差を小さく、又は解消できる。したがって、端子収容室36の内壁の形状がフラットであっても、端子金具15を安定した姿勢で端子収容室36内に収容することができる。
【0031】
また、端子金具15の後端部に形成されているバレル部23は、基板部24の幅方向両側縁から対をなすカシメ片27を延出させた形態であり、芯線12の露出領域14に対し、対をなすカシメ片27の延出端部27E同士を接近させた状態で包囲するように圧着されている。そして、芯線12のうちバレル部23との圧着部を含む露出領域14の全体はモールド部30によって液密状に覆われている。
【0032】
そして、本実施例の端子付き電線10は、芯線12の露出領域14の前端がカシメ片27の前端よりも後方に配されている。そのため、モールド部30の成形工程では、溶融樹脂をバレル部23の圧着空間28に隙間なく流入させ、芯線12の前端面をモールド部30で覆うことで防食機能の信頼性を高める必要がある。しかし、バレル部23の圧着空間28の前端の開口は狭いため、溶融樹脂が圧着空間28内に流入し難いという問題がある。
【0033】
そこで、本実施例では、バレル部23に、芯線12の前端よりも前方においてバレル部23の圧着空間28をバレル部23の外周面に開口させる連通部29を形成している。このような連通部29を形成したことにより、モールド部30を成形する際には、溶融樹脂が連通部29を通過することによってバレル部23の圧着空間28に流入し易くなる。また、連通部29は、対をなすカシメ片27の延出端部27Eの間に形成されているので、基板部24を切欠する必要がなく、基板部24の強度を低下させずに済む。
【0034】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、被覆電線の芯線をアルミニウム製又はアルミニウム合金製としたが、芯線の材料は、アルミニウムやアルミニウム合金に限らず、銅や銅合金等の他の金属であってもよい。
(2)上記実施例1では、端子金具を銅製又は銅合金製としたが、端子金具の材料は、銅や銅合金に限らず、アルミニウムやアルミニウム合金等の他の金属であってもよい。
(3)上記実施例1では、端子金具には、絶縁被覆に圧着されるインシュレーションバレル部は形成されていないが、本発明は、端子金具にインシュレーションバレル部が形成されている場合にも適用できる。
(4)上記実施例1では、端子収容室内には、被覆電線の絶縁被覆が収容されていないが、絶縁被覆の前端部が端子収容室内に収容されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
A…コネクタ
10…端子付き電線
11…被覆電線
12…芯線
13…絶縁被覆
14…芯線の露出領域
15…端子金具
16…端子本体部
22…基底部
23…バレル部
24…基板部
27…カシメ片
30…モールド部
35…ハウジング
36…端子収容室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9