(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547849
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】放射線装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/12 20060101AFI20190711BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
A61B6/12
A61B6/00 350S
A61B6/00 350P
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-558827(P2017-558827)
(86)(22)【出願日】2015年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2015086553
(87)【国際公開番号】WO2017115432
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】ダルジ ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】酒井 滝人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 敬一
(72)【発明者】
【氏名】マット セバスティアン
【審査官】
井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−128578(JP,A)
【文献】
特開2014−50747(JP,A)
【文献】
特開2013−46750(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0154771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出された放射線に基づいて複数の放射線画像を取得する放射線装置であって、
被検体に向けて放射線を照射して、当該被検体を透過した放射線を検出する放射線撮影によって、時系列の前記放射線画像を順次に生成する放射線画像生成手段と、
順次に生成された当該放射線画像のそれぞれについて、所定の対象物が有する特徴点の位置を取得する特徴点位置取得手段と、
順次に生成された前記特徴点が形成する軌跡の範囲内における所定の点を表示すべき位置として決定する特徴点表示位置決定手段と、
前記特徴点の位置が表示位置に一致するように、前記放射線画像を位置合わせして得られた位置合わせ後の放射線画像を補正画像として、時系列の当該補正画像を順次に生成する補正画像生成手段と、
前記補正画像を順次に表示するように制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする放射線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線装置において、
前記特徴点は、前記順次に生成された各放射線画像のそれぞれについて、複数抽出することを特徴とする放射線装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線装置において、
前記特徴点表示位置決定手段は、時系列の前記各特徴点の位置に基づいて所定の位置を算出し、算出された当該所定の位置を前記複数の特徴点の各々の表示すべき位置として順次に決定することを特徴とする放射線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線装置において、
前記特徴点表示位置決定手段は、
前記複数の特徴点の位置の平均値を順次に決定し、決定された当該平均値を順次に取得する対象物位置取得手段をさらに備え、
前記特徴点表示位置決定手段は、前記平均値に対する相対的な前記複数の特徴点の位置を保ったまま前記平均値が所定の位置になるように、前記複数の特徴点の各々の表示すべき位置を、前記複数の特徴点の各々の表示位置として順次に決定することを特徴とする放射線装置。
【請求項5】
検出された放射線に基づいて複数の放射線画像を取得する放射線装置であって、
被検体に向けて放射線を照射して、当該被検体を透過した放射線を検出する放射線撮影によって、時系列の前記放射線画像を順次に生成する放射線画像生成手段と、
順次に生成された当該放射線画像に基づいて所定の対象物が有する複数の特徴点の位置を順次に抽出し、時系列の前記複数の特徴点の位置を順次に取得する特徴点位置取得手段と、
順次に抽出された同一フレーム毎の前記複数の特徴点の位置の平均値を順次に決定し、時系列の前記平均値を順次に取得する対象物位置取得手段と、
順次に抽出された同一フレーム毎の前記複数の特徴点の位置に基づいて前記対象物の方向を順次に決定し、時系列の前記対象物の方向を順次に取得する対象物方向取得手段と、
順次に取得された時系列の前記対象物が形成する軌跡の範囲内における所定の点を、表示すべき前記対象物の表示位置として順次に決定する対象物表示位置決定手段と、
順次に取得された時系列の前記対象物の方向に基づいて、表示すべき前記対象物の表示方向を順次に決定する対象物表示方向決定手段と、
前記平均値が前記対象物の表示位置に一致し、かつ、前記対象物の方向が前記対象物の表示方向に一致するように、前記放射線画像を位置合わせして得られた位置合わせ後の放射線画像を補正画像として、時系列の当該補正画像を順次に生成する補正画像生成手段と、
前記補正画像を順次に表示するように制御する表示制御手段と
を備えることを特徴とする放射線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の放射線装置において、
前記対象物方向取得手段は、前記複数の特徴点に対する回帰直線の方向に基づいて所定の方向を算出し、算出された当該所定の方向を前記対象物の方向として順次に取得することを特徴とする放射線装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の放射線装置において、
前記対象物表示位置決定手段は、順次に取得された時系列の前記平均値に基づいて、所定の位置を算出し、算出された当該所定の位置を前記対象物の表示位置として順次に決定し、
前記対象物表示方向決定手段は、順次に取得された時系列の前記対象物の方向に基づいて、所定の方向を算出し、算出された当該所定の方向を前記対象物の表示方向として順次に決定することを特徴とする放射線装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の放射線装置において、
前記表示制御手段は、前記補正画像の所定の領域を拡大して順次に表示することを特徴とする放射線装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の放射線装置において、
前記補正画像生成手段は、時系列の前記放射線画像に対して時間差分を行い、当該時間差分により背景差分画像を順次に生成する背景差分画像生成手段をさらに備え、
前記補正画像生成手段は、当該背景差分画像を位置合わせして得られた位置合わせ後の背景差分画像を前記補正画像として、時系列の当該補正画像を順次に生成することを特徴とする放射線装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の放射線装置において、
前記補正画像生成手段は、時系列の前記補正画像に対して時間積分を行い、当該時間積分により時間積分補正画像を順次に生成する時間積分補正画像手段をさらに備え、
前記表示制御手段は、当該時間積分補正画像を順次に表示するように制御することを特徴とする放射線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、検出された放射線に基づいて複数の放射線画像を取得する放射線装置に係り、特に、放射線画像に基づいて所定の対象物が有する複数の特徴点を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線画像に基づいて所定の対象物が有する複数の特徴点を抽出する技術において、所定の対象物としては、被検体の血管や、被検体の体内に挿入するデバイスが挙げられる。以下、放射線としてX線を例に採って説明する。被検体の体内に挿入するデバイスとしては、インターベンション治療等に用いられるステントあるいはステントに付属するマーカや、血管内超音波(IVUS: intravascular ultrasound)に用いられるプローブや、心臓血管の診断に用いられる装置(CVS: cardiovascular systems)に用いられるカテーテルなどがある。
【0003】
デバイスを被検体の体内に挿入する際にはデバイスの特徴点を抽出し、特徴点を基準に位置合わせをすることで、複数フレームのX線画像を重ね合わせる時間積分を行ってデバイスを強調表示する(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
より具体的に説明すると、特許文献1:特表2005−510288号公報では、対象物の特徴点を抽出し、対象物の参照点(マーカ)の位置合わせをし、位置合わせされた対象物を背景とともに時間積分され、フェードされた(すなわち弱まった)背景に積分画像を強調表示する。
【0005】
また、特許文献2:特表2008−520320号公報では、関心領域(ROI: Region Of Interest)から少なくとも2つの特徴点を抽出し、各特徴点を個別に位置合わせし、個別に位置合わせされた画像を生成し、各位置合わせされた画像を重み付け加算し、重ね合わされた関心対象(関心のあるオブジェクト)の画像を生成する。
【0006】
また、特許文献3:特開2010−131371号公報では、対象物の特徴点の位置を抽出し、過去フレームの基準画像における特徴点の位置に各画像を位置合わせし、位置合わせされた画像をリアルタイム表示する。
【0007】
また、特許文献4:特表2013−521969号公報では、対象物の参照点(マーカ)の周期的な軌跡に基づいて位置合わせして補正画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2005−510288号公報
【特許文献2】特表2008−520320号公報
【特許文献3】特開2010−131371号公報
【特許文献4】特表2013−521969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した位置合わせを行ったとしても、動く対象物が必ずしも適切な位置・方向・大きさに表示されるとは限らないという問題点がある。
経皮的冠動脈形成術(PTCA: Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty) では、狭窄の病変部にステント付きのガイドワイヤ(カテーテル)を被検体(患者)の体内に挿入して、患者の心臓が拍動した状態でX線透視画像を見ながら、ステントを正確な位置に留置する必要がある。また、カテーテル大動脈弁置換術(TAVR: Transcatheter Aortic Valve Replacement) では、PTCAと同様に、人工弁を正確な位置に留置する必要がある。特に、TAVRの場合、もし人工弁の留置位置・角度を誤ったり、人工弁が脱落した場合には、患者に致命的な影響を与えかねず、術者には非常に慎重な位置決めが要求される。
【0010】
そこで、上述した特許文献1:特表2005−510288号公報,特許文献2:特表2008−520320号公報並びに特許文献3:特開2010−131371号公報に例示する方法で、動く対象物の特徴点を固定して表示することで、ステント等の対象物の正確な位置決めを可能にする努力がなされてきた。対象物の特徴点を固定する位置は、第1フレーム(最初のフレーム)の対象物の位置や、予め定められた画面上の所定の位置とすることなどが提案されている。
【0011】
しかし、第1フレームの対象物の位置が、対象物の固定位置・方向・大きさとして、術者にとって常に適切であるとは限らない。また、予め定められた所定の位置に特徴点を固定した場合、本来の対象物の方向や大きさの情報が完全に失われてしまうので、血管の近位・遠位の区別やステントの長さが画像から直感的にわかりにくくなってしまう。また、術中にリアルタイム表示するので、適切な固定位置のフレームを術者が手動選択することも困難である。
【0012】
そこで、上述した特許文献4:特表2013−521969号公報のように、デバイスのマーカの周期的な軌跡に基づいて位置合わせして補正画像を生成することも考えられるが、周期的な軌跡上に位置するマーカなどの対象物はそのままであって、必ずしも正確な場所に位置するとは限らない。
【0013】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、動く対象物を適切な位置・方向・大きさに設定して表示する放射線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、この発明(前者の発明)の放射線装置は、検出された放射線に基づいて複数の放射線画像を取得する放射線装置であって、被検体に向けて放射線を照射して、当該被検体を透過した放射線を検出する放射線撮影によって、時系列の前記放射線画像を順次に生成する放射線画像生成手段と、順次に生成された当該放射線画像に基づいて所定の対象物が有する複数の特徴点の位置を順次に抽出し、時系列の前記複数の特徴点の位置を順次に取得する特徴点位置取得手段と、順次に取得された時系列の前記特徴点の位置に基づいて、前記複数の特徴点の各々の表示すべき位置を、前記対象物の各々の表示位置として順次に決定する特徴点表示位置決定手段と、前記各特徴点の位置が表示位置に一致するように、前記放射線画像を位置合わせして得られた位置合わせ後の放射線画像を補正画像として、時系列の当該補正画像を順次に生成する補正画像生成手段と、前記補正画像を順次に表示するように制御する表示制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
この発明(前者の発明)の放射線装置によれば、時系列(複数フレーム)の特徴点の位置に基づいて、当該フレームの特徴点の各々の表示位置を順次に決定するので、動く対象物を適切な位置・方向・大きさに設定して表示することができる。また、複数の特徴点を抽出することで対象物の方向および大きさの情報も保持され、対象物(例えば血管)の近位・遠位の区別やデバイス(例えばステント)の長さが画像から直感的にわかるという効果をも奏する。また、複数の特徴点の位置および複数の表示位置を用いて位置合わせを行うので、最終的に表示される補正画像自身も正確な位置・方向に設定することができる。
また、前者の発明において、特徴点は、順次に生成された各放射線画像のそれぞれについて、複数抽出してもよい。もちろん、特徴点は、単数抽出してもよい。
【0016】
また、前者の発明において、時系列の各特徴点の位置に基づいて所定の位置を算出し、算出された当該所定の位置を複数の特徴点の各々の表示すべき位置として順次に決定するのが好ましい。このような算出により特徴点の表示位置を適切に自動的に決定することができる。特に、時系列の各特徴点の位置を平均する場合には、表示位置の動きが徐々にゆっくりとなり、最終的に動き(例えば拍動)による各特徴点の平均の位置に収束する。よって、最終的に動く対象物を平均の位置・平均の方向・平均の大きさに固定して表示することができる。また、そこに至るまでの過程も、徐々にゆっくりと自然に切り替わり、不自然さを感じさせない。また、時系列の各特徴点の位置の中央値を用いれば、特徴点の抽出ミスのフレームがあった場合でも頑健である。
【0017】
また、時系列の各特徴点の位置を平均する場合には、開始フレームから所定の位置に固定して、その点を中心とした特徴点の位置の回転および大きさの変化が徐々にゆっくりとなり、上述したように最終的に対象物を平均の方向・平均の大きさに固定して表示することができる。対象物の画面上の位置に関わらず、適当な位置に表示することができる。また、時系列の各特徴点の位置を平均する場合や時系列の各特徴点の位置の中央値を用いる場合には、特徴点の各々の表示位置を複数の特徴点の位置の平均または中央値とすることで、最終的に対象物の適切な位置を表示(画面)の中心に設定することができる。
【0018】
また、前者の発明において、特徴点表示位置決定手段は、複数の特徴点の位置
の平均値を順次に決定し、決定された当該
平均値を順次に取得する対象物位置取得手段をさらに備え、特徴点表示位置決定手段は、
平均値に対する相対的な複数の特徴点の位置を保ったまま
平均値が所定の位置になるように、複数の特徴点の各々の表示すべき位置を、複数の特徴点の各々の表示位置として順次に決定してもよい。この場合には、対象物の長さや大きさを保った状態で、動く対象物を適切な位置・方向に設定して表示することができる。
【0020】
また、前者の発明とは別の発明(後者の発明)の放射線装置は、検出された放射線に基づいて複数の放射線画像を取得する放射線装置であって、被検体に向けて放射線を照射して、当該被検体を透過した放射線を検出する放射線撮影によって、時系列の前記放射線画像を順次に生成する放射線画像生成手段と、順次に生成された当該放射線画像に基づいて所定の対象物が有する複数の特徴点の位置を順次に抽出し、時系列の前記複数の特徴点の位置を順次に取得する特徴点位置取得手段と、順次に抽出された同一フレーム毎の前記複数の特徴点の位置
の平均値を順次に決定し、時系列の前記
平均値を順次に取得する対象物位置取得手段と、順次に抽出された同一フレーム毎の前記複数の特徴点の位置に基づいて前記対象物の方向を順次に決定し、時系列の前記対象物の方向を順次に取得する対象物方向取得手段と、順次に取得された時系列の前記対象物
が形成する軌跡の範囲内における所定の点を、表示すべき前記対象物の表示位置
として順次に決定する対象物表示位置決定手段と、順次に取得された時系列の前記対象物の方向に基づいて、表示すべき前記対象物の表示方向を順次に決定する対象物表示方向決定手段と、前記
平均値が前記対象物の表示位置に一致し、かつ、前記対象物の方向が前記対象物の表示方向に一致するように、前記放射線画像を位置合わせして得られた位置合わせ後の放射線画像を補正画像として、時系列の当該補正画像を順次に生成する補正画像生成手段と、前記補正画像を順次に表示するように制御する表示制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0021】
この発明(後者の発明)の放射線装置によれば、時系列(複数フレーム)の特徴点の位置・方向に基づいて、当該フレームの対象物の各々の表示位置・表示方向を順次に決定するので、動く対象物を適切な位置・方向に設定して表示することができる。また、複数の特徴点に基づく対象物の方向が考慮されて対象物の方向を表示するので、方向が変わっても対象物自身を変形させることがなく対象物の形状が不自然になることがない。また、前者の発明と同様に、複数の特徴点を抽出することで対象物の方向および大きさの情報も保持され、対象物(例えば血管)の近位・遠位の区別やデバイス(例えばステント)の長さが画像から直感的にわかるという効果をも奏する。また、
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置および方向を用いて位置合わせを行うので、最終的に表示される補正画像自身も正確な位置・方向に設定することができる。
まとめと、前者の発明および後者の発明の位置合わせは以下の観点で異なる。前者の発明では、移動,回転,(等方または非等方)拡大縮小または変形をする。デバイス(例えばステント)は、平均の位置・角度・大きさ(形状)に収束する。大きさも平均することができる反面、非等方的な拡大縮小や変形は、画像を不自然にしかねない。また、計算コストも大きい。後者の発明では、移動,回転をする。デバイス(例えばステント)は、平均の位置・角度に収束する。大きさを平均することができないが、変形を伴わないので、画像が不自然にならない。また、実際には大きさの変化は小さく、さほど問題にならない。また、計算コストは小さい。
【0022】
対象物の表示位置や表示方向を決定する前段階として、対象物の表示位置や表示方向の基となる
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置や方向を下記のような算出で決定してもよい。すなわち
、複数の特徴点に対する回帰直線の方向に基づいて所定の方向を算出し、算出された当該所定の方向を対象物の方向として順次に取得する。このような算出により
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置・
対象物の方向を適切に自動的に決定することができる。
【0023】
また、後者の発明において、順次に取得された時系列の
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置・
対象物の方向に基づいて所定の位置・方向を算出し、算出された当該所定の位置・方向を対象物の表示位置・表示方向として順次に決定するのが好ましい。このような算出により対象物の表示位置・表示方向を適切に自動的に決定することができる。特に、
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置
をさらに平均する場合・
対象物の方向を平均する場合には、表示位置・表示方向の動きが徐々にゆっくりとなり、最終的に動き(例えば拍動)による
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置・
対象物の方向の動きの平均に収束する。よって、最終的に動く対象物を平均の位置・平均の方向に固定して表示することができる。また、そこに至るまでの過程も、徐々にゆっくりと自然に切り替わり、不自然さを感じさせない。また、時系列の
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置・
対象物の方向の中央値を用いれば、特徴点の抽出ミスのフレームがあった場合でも頑健である。
【0024】
また、時系列の
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置
をさらに平均する場合・
対象物の方向を平均する場合や
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置・
対象物の方向の中央値を用いる場合には、対象物の表示位置・表示方向を時系列の
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置・
対象物の方向の平均または中央値とすることで、対象物の適切な位置を表示(画面)の中心に設定し、対象物を適切な方向に設定することができる。
【0025】
前者の発明および後者の発明において、補正画像の所定の領域を拡大して順次に表示することで、対象物をより詳細に観察することができる。特徴点が対象物と一体となっている場合には、
(複数の特徴点の位置の平均値に一致した)対象物の位置がわかっているので、対象物周辺を拡大表示することができる。特徴点が対象物と離れている場合には、特徴点に対する対象物の相対位置から対象物が存在すると推定される位置を拡大して表示することができる。または、術者などのユーザが表示領域を指定し、所望の位置を拡大して表示することができる。
【0026】
前者の発明および後者の発明において、補正画像生成手段は、時系列の放射線画像に対して時間差分を行い、当該時間差分により背景差分画像を順次に生成する背景差分画像生成手段をさらに備え、補正画像生成手段は、当該背景差分画像を位置合わせして得られた位置合わせ後の背景差分画像を補正画像として、時系列の当該補正画像を順次に生成するのが好ましい。すなわち、対象物の位置合わせ前に時間差分による背景差分を予め行うことで、元画像(放射線画像)の替わりに動きの少ない背景を除去した背景差分画像を表示することができる。背景が予め消えている背景差分画像を表示することで、位置合わせされない背景が動くことによる関心領域の視認性の低下や不快感が発生しない。
【0027】
前者の発明および後者の発明において、補正画像生成手段は、時系列の補正画像に対して時間積分を行い、当該時間積分により時間積分補正画像を順次に生成する時間積分補正画像手段をさらに備え、表示制御手段は、当該時間積分補正画像を順次に表示するように制御するのが好ましい。すなわち、対象物の位置合わせ後に時間積分を行うことで、ノイズを削減し、低コントラストで微細な対象物の視認を向上させることができる。位置合わせされない背景の時間積分を行うことで、位置合わせされない背景が動くことによる関心領域の視認性の低下や不快感を低減させることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明(前者の発明)に係る放射線装置によれば、時系列(複数フレーム)の特徴点の位置に基づいて、当該フレームの対象物の各々の表示位置を順次に決定するので、動く対象物を適切な位置・方向・大きさに設定して表示することができる。
また、前者の発明とは別の発明(前者の発明)に係る放射線装置によれば、時系列(複数フレーム)の特徴点の位置・方向に基づいて、当該フレームの対象物の各々の表示位置・表示方向を順次に決定するので、動く対象物を適切な位置・方向に設定して表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】各実施例に係るCアームを備えたX線装置の正面図である。
【
図2】実施例1に係るX線装置における画像処理系のブロック図である。
【
図3】経皮的冠動脈形成術で得られたPTCA画像の模式図である。
【
図4】バルーンマーカおよびステントの拡大図である。
【
図5】実施例1に係るマーカおよび表示位置の動きの模式図である。
【
図6】位置合わせによる補正画像の一例を示す模式図である。
【
図7】背景差分画像を位置合わせする場合における補正画像生成部の周辺のブロック図である。
【
図8】時系列の補正画像に対して時間積分を行う場合における補正画像生成部の周辺のブロック図である。
【
図9】実施例2に係るX線装置における画像処理系のブロック図である。
【
図10】ステントの位置および角度の模式図である。
【
図11】実施例2に係るマーカの中点および表示位置の動きの模式図である。
【
図12】カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)に適用した場合における補正画像の一例を示す模式図である。
【
図13】実施例1に関する変形例に係る表示態様の一例を示す模式図である。
【
図14】実施例2に関する変形例に係る表示態様の一例を示す模式図である。
【
図15】実施例1に関するさらなる変形例に係るX線装置における画像処理系のブロック図である。
【実施例1】
【0030】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、各実施例に係るCアームを備えたX線装置の正面図であり、
図2は、実施例1に係るX線装置における画像処理系のブロック図である。後述する実施例2も含めて、本実施例1では、放射線として、X線を例に採って説明するとともに、インターベンション治療などのインターベンション放射線医学(IVR: intervention radiology)として、経皮的冠動脈形成術(PTCA)を例に採って説明する。なお、
図1に示すCアーム23を備えたX線装置は、心臓血管の診断に用いられるCVS装置として利用される。
【0031】
後述する実施例2も含めて、本実施例1に係るX線装置は、
図1に示すように、被検体Mを載置する天板1と、その被検体Mの透視または動画再生のための撮影を行う映像系2とを備えるとともに、
図2に示すように、画像処理系3を備えている。天板1は、
図1に示すように、昇降および水平移動可能に構成されている。ここで、動画再生とは、透視のようなリアルタイム表示と相違して、過去の撮影で得られた時系列の各画像を逐次に表示しながら動画として再生表示することを示す。
【0032】
先ず、映像系2について
図1を参照して説明する。映像系2は、床面(図中のxy平面)に設置された基台部21と、基台部21に支持されたCアーム支持部22と、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23と、Cアーム23の一端に支持されたX線管24と、他端に支持されたフラットパネル型X線検出器(FPD: Flat Panel Detector)25とを備えている。Cアーム23の一端に支持されたX線管24のX線照射側にはX線の照視野を制御するコリメータ26を配設している。
【0033】
また、床面に対して基台部21を鉛直軸(図中のz軸)心周りに回転移動させる第1映像系移動部27を備えている。第1映像系移動部27は、モータ27aと、モータ27aの回転を伝達するベルト27bと、ベルト27bに伝達された回転を鉛直軸心周りの回転に変換するギヤボックス27cと、ギヤボックス27cからの鉛直軸心周りの回転を伝達するギヤ27dと、このギヤ27dに噛合されたギヤ27eとを備えている。ギヤ27eは、図示を省略するベアリングが介在された状態で、床面に固定されている。モータ27aが回転駆動することで、ベルト27b,ギヤボックス27cおよびギヤ27dを介して、ギヤ27eが鉛直軸心周りに回転して、このギヤ27eの回転によって、床面に対して基台部21が鉛直軸心周りに回転移動する。また、第1映像系移動部27によって基台部21が鉛直軸心周りに回転移動することで、基台部21に支持されたCアーム支持部22も鉛直軸心周りに回転移動し、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23も鉛直軸心周りに回転移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびフラットパネル型X線検出器(FPD)25も鉛直軸心周りに回転移動する。以上のように、第1映像系移動部27は、映像系2を鉛直軸心周りに回転移動させる。
【0034】
また、基台部21に対してCアーム支持部22を被検体Mの体軸(図中のx軸)に対して水平面で直交する軸(図中のy軸)心周りに回転移動させる第2映像系移動部28を備えている。第2映像系移動部28は、モータ28aと、モータ28aの回転を伝達するベルト28bと、ベルト28bに伝達された回転を体軸に対して水平面で直交する軸心周りの回転に変換するギヤボックス28cと、ギヤボックス28cからの体軸に対して水平面で直交する軸心周りの回転を伝達するギヤ28dと、このギヤ28dに噛合されたギヤ28eとを備えている。ギヤ28eは、図示を省略するベアリングが介在された状態で、基台部21に固定されている。モータ28aが回転駆動することで、ベルト28b,ギヤボックス28cおよびギヤ28dを介して、ギヤ28eが体軸に対して水平面で直交する軸心周りに回転して、このギヤ28eの回転によって、基台部21に対してCアーム支持部22が体軸に対して水平面で直交する軸心周りに回転移動する。また、Cアーム支持部22に支持されたCアーム23も体軸に対して水平面で直交する軸心周りに回転移動し、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25も体軸に対して水平面で直交する軸心周りに回転移動する。以上のように、第2映像系移動部28は、映像系2を体軸に対して水平面で直交する軸心周りに回転移動させる。
【0035】
また、Cアーム23を被検体Mの体軸(図中のx軸)心周りに回転移動させる第3映像系移動部29を備えている。Cアーム23はレール形状で形成されており、第3映像系移動部29は、Cアーム23の溝部に嵌合した2つのベアリング29aと、Cアーム23の外周面に沿って付設されたベルト29bと、ベルト29bの一部を巻き取るモータ29cとを備えている。モータ29cが回転駆動することで、ベルト29bが周回し、それに伴ってベアリング29aに対してCアーム23が摺動する。この摺動によりCアーム23が、体軸心周りに回転移動する。また、Cアーム23に支持されたX線管24およびFPD25も体軸心周りに回転移動する。以上のように、第3映像系移動部29は、映像系2を体軸心周りに回転移動させる。
【0036】
このように、X線管24を支持しFPD25を支持するCアーム23は、第3映像系移動部29による体軸心周りの回転移動の方向に沿って「C」の字で湾曲されて形成されており、Cアーム23の湾曲方向に沿ってX線管24およびFPD25が体軸心周りに回転移動するとも言える。また、第2映像系移動部28は、Cアーム23の体軸心周りの回転移動とは別の方向である体軸に対して水平面で直交する軸心周りの回転移動の方向にCアーム23を回転移動させることで、映像系2を体軸に対して水平面で直交する軸心周りに回転移動させるとも言える。
【0037】
この他に、基台部21、Cアーム支持部22あるいはCアーム23を水平方向(例えば図中のx方向またはy方向)に平行移動させることで、映像系2を水平方向に平行移動させる映像系移動部(図示省略)や、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸心周りに回転移動させるFPD移動部(図示省略)などを備えている。また、Cアーム23自体、またはCアーム23に支持されたX線管24やFPD25の自重によるたわみ(位置ズレ)を調整するために、たわみ方向に回転移動させる映像系調整部(図示省略)を備えてもよい。また、Cアーム支持部22またはCアーム23を鉛直軸に沿って昇降移動させることで、映像系2を鉛直軸に沿って平行移動させる映像系昇降部(図示省略)を備えてもよい。
【0038】
なお、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸方向に沿って、FPD25を平行移動させるFPD移動部(図示省略)を備えてもよい。この場合には、Cアーム23がFPD25を支持する支持軸が、X線管24からFPD25に下ろした垂線(すなわち照射中心軸)方向に平行であるので、FPD移動部が支持軸方向に沿ってFPD25を平行移動させることで、FPD25を垂線方向に沿って平行移動させることになる。すなわち、X線管24からFPD25に垂線を下ろした距離(すなわちSID)をFPD移動部が可変にして、映像系2を垂線方向に沿って平行移動させる。
【0039】
天板1や映像系2を上述のように移動させて、X線管24から照射されたX線をFPD25が検出して得られたX線検出信号を、後述する画像処理系3で処理することで被検体MのX線画像を得る。特に、透視または動画再生のための撮影では、所望の位置にX線管24およびFPD25を設置して、造影剤を投与する前の被検体Mを天板1に載置して、所望の姿勢に被検体Mをセッティングした状態で被検体MのX線画像(元画像)を取得する。各々の画像やそれらに基づく画像処理については、詳しく後述する。
【0040】
次に、画像処理系3について
図2を参照して説明する。画像処理系3は、透視または動画再生のための撮影において、X線検出信号に基づくFPD25の検出面に投影された時系列のX線画像(元画像)P
10(
図3を参照)を順次に生成するX線画像生成部31と、順次に生成された当該X線画像(元画像)P
10に基づいて所定の対象物が有する複数の特徴点の位置を順次に抽出し、時系列の複数の特徴点の位置を順次に取得する特徴点位置取得部32と、順次に取得された時系列の特徴点の位置に基づいて、複数の特徴点の各々の表示すべき位置を、特徴点の各々の表示位置として順次に決定する特徴点表示位置決定部33と、各特徴点の位置が各表示位置に一致するように、X線画像(元画像)P
10を位置合わせして得られた位置合わせ後のX線画像を補正画像P
20(
図6を参照)として、時系列の当該補正画像P
20を順次に生成する補正画像生成部34と、補正画像P
20を順次に表示するように制御する表示制御部35とを備えている。
【0041】
X線画像生成部31は、この発明における放射線画像生成手段に相当し、特徴点位置取得部32および後述する入力部41は、この発明における特徴点位置取得手段に相当し、特徴点表示位置決定部33は、この発明における特徴点表示位置決定手段に相当し、補正画像生成部34は、この発明における補正画像生成手段に相当し、表示制御部35は、この発明における表示制御手段に相当する。
【0042】
その他に、画像処理系3は、マーカなどに代表される特徴点を入力することにより、特徴点の位置を手動で指定する入力部41と、画像処理系3の各構成を統括制御するコントローラ42と、特に、動画再生のための撮影で得られたX線画像(元画像)P
10や補正画像P
20などの各画像を一旦記憶する画像メモリ部43と、特徴点の位置および方向や各画像(特に最終的に得られる補正画像P
20)を表示するモニタ44とを備えている。
【0043】
入力部41は、ユーザが入力したデータや命令を入力するためであって、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。コントローラ42は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。画像メモリ部43は、RAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。なお、
図2では、図示の便宜上、コントローラ42から、コントローラ42が制御する構成を結ぶ結線については、図示を省略する。
【0044】
X線画像生成部31は、被検体M(
図1を参照)に向けてX線を照射して、当該被検体Mを透過したX線を(FPD25が)検出するX線撮影によって、時系列のX線画像(元画像)P
10を順次に生成する。順次に生成されたX線画像(元画像)P
10を画像メモリ部43に送り込む。なお、透視の場合には、画像をリアルタイム表示するために、X線画像(元画像)P
10を画像メモリ部43に送り込んで記憶せずに、特徴点位置取得部32に送り込む。もちろん、多少のタイムラグが生じても問題がない場合には、透視においてもX線画像(元画像)P
10を画像メモリ部43に送り込んでもよい。
【0045】
順次に生成されたX線画像(元画像)P
10を画像メモリ部43に書き込んで記憶する。特徴点の位置を抽出して取得する,あるいは位置合わせするために、画像メモリ部43に記憶されたX線画像(元画像)P
10を読み出して、特徴点位置取得部32および補正画像生成部34に送り込む。
【0046】
特徴点位置取得部32は、順次に生成されたX線画像(元画像)P
10に基づいて所定の対象物が有する複数の特徴点の位置を順次に抽出し、時系列の複数の特徴点の位置を順次に取得する。順次に取得された時系列の複数の特徴点の位置を特徴点表示位置決定部33および補正画像生成部34に送り込む。なお、適宜、必要に応じて、順次に取得された時系列の複数の特徴点の位置をRAMなどの記憶媒体に書き込んで記憶する。
【0047】
特徴点表示位置決定部33は、順次に取得された時系列の特徴点の位置に基づいて、複数の特徴点の各々の表示すべき位置を、特徴点の各々の表示位置として順次に決定する。本実施例1では、特徴点表示位置決定部33は、時系列の各特徴点の位置に基づいて所定の位置を算出し、算出された当該所定の位置を複数の特徴点の各々の表示すべき位置として順次に決定する。具体的な算出については特に限定されないが、時系列の各特徴点の平均値または中央値を、対象物の各々の表示位置として順次に決定する。この他にも、例えば最頻値を対象物の各々の表示位置として順次に決定してもよい。特徴点(マーカ)および上述した算出によって得られた表示位置の具体的な動きについては、
図5で後述する。各表示位置を補正画像生成部34に送り込む。
【0048】
補正画像生成部34は、各特徴点の位置が各表示位置に一致するように、X線画像(元画像)P
10を位置合わせして得られた位置合わせ後のX線画像を補正画像P
20として、時系列の当該補正画像P
20を順次に生成する。順次に生成された補正画像P
20を画像メモリ部43に送り込む。なお、透視の場合には、画像をリアルタイム表示するために、補正画像P
20を画像メモリ部43に送り込んで記憶せずに、モニタ44に送り込む。もちろん、多少のタイムラグが生じても問題がない場合には、透視においても補正画像P
20を画像メモリ部43に送り込んでもよい。
【0049】
順次に生成された補正画像P
20を画像メモリ部43に書き込んで記憶する。モニタ44に時系列の各補正画像P
20を逐次に表示するために、画像メモリ部43に記憶された補正画像P
20を読み出して、モニタ44に送り込む。なお、
図2では、X線画像(元画像)P
10および補正画像P
20を同一の画像メモリ部43に記憶したが、X線画像(元画像)P
10,補正画像P
20を互いに別々の画像メモリ部に記憶してもよい。
【0050】
表示制御部35は、モニタ44に補正画像P
20を順次に表示するように制御する。このようにして、時系列の補正画像P
20が動画としてモニタ44に表示されることになる。
【0051】
コントローラ42と同様に、X線画像生成部31や特徴点位置取得部32や特徴点表示位置決定部33や補正画像生成部34は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。表示制御部35は、画像処理に用いられるGPU(Graphics Processing Unit)などで構成されている。なお、これらのX線画像生成部31や特徴点位置取得部32や特徴点表示位置決定部33や補正画像生成部34についてもGPUで構成してもよい。
【0052】
次に、一連の撮影および画像処理について、
図1〜
図2とともに、
図3〜
図8を参照して説明する。
図3は、経皮的冠動脈形成術で得られたPTCA画像の模式図であり、
図4は、バルーンマーカおよびステントの拡大図であり、
図5は、実施例1に係るマーカおよび表示位置の動きの模式図であり、
図6は、位置合わせによる補正画像の一例を示す模式図であり、
図7は、背景差分画像を位置合わせする場合における補正画像生成部の周辺のブロック図であり、
図8は、時系列の補正画像に対して時間積分を行う場合における補正画像生成部の周辺のブロック図である。
【0053】
先ず、
図1に示すCアーム23を備えたCVS装置で、患者である被検体M(
図1を参照)を動画撮影する。FPD25(
図1および
図2を参照)の検出面に投影されたX線画像(元画像)P
10(
図3を参照)をX線画像生成部31(
図2を参照)が生成する。なお、生成された元画像P
10は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)で得られたPTCA画像となり、
図3に示すような画像となる。
【0054】
図3に示すように、元画像P
10には、2つのバルーンマーカm(
図4も参照)と実質的に一体となって動くステントS(
図4も参照)が写り込んでおり、例えば
図3中の矢印の方向に、バルーンマーカmおよびステントSが拍動および呼吸で動いている。
図4に示すように、バルーンマーカmは高コントラストで容易に視認することができる一方、ステントSは低コントラストで微細な構造を持つので、拍動で激しく動いている場合には、特に細部の観察が難しい。
【0055】
次に、元画像P
10中の各バルーンマーカmの位置を特徴点の位置として、例示した特許文献で開示された公知の手法等により特徴点位置取得部32(
図2を参照)がリアルタイムに抽出する。なお、具体的な特徴点の抽出手法については公知の手法であるので、その説明を省略する。抽出されたフレーム毎の各マーカの位置情報(すなわち特徴点の位置)を時系列の情報としてRAMなどの記憶媒体に書き込んで記憶する。この際、各フレームの2つのマーカを対応付けて互いに区別する必要がある。
【0056】
そこで、通常、画面左上が冠動脈近位部で、画面右下が冠動脈遠位部であることを利用し、画像左上を基準として、そこからマーカまでの距離(画像左上からマーカまでの画素数)を算出し、距離が近い(画素数が少ない)方を「マーカ1」,距離が遠い(画素数が多い)方を「マーカ2」としてそれぞれ対応付ける。マーカの対応付けの方法は、形状が異なる場合には形状を利用してもよいし、他の解剖学的情報などを利用してもよい。また、抽出される特徴点は、このように必ずしも対象物と一体となっている必要はなく、対象物と実質的に一体となって動くものであってもよい。また、全てのマーカを特徴点位置取得部32などの中央演算処理装置(CPU)により自動的に抽出してもよいし、適切なマーカをユーザが入力部41(
図2を参照)により手動で指定してもよい。
【0057】
次に、
図5(図中では2つのマーカ)に示すように、特徴点表示位置決定部33(
図2を参照)は各マーカの位置(
図5中の黒丸を参照)の平均を算出し、各マーカの表示位置(
図5中の灰色の丸を参照)とする。つまり、各マーカの表示位置は、第1フレーム(開始フレーム)での表示位置は元のマーカの位置そのものであるが、第2フレームでの表示位置は第1フレームのマーカと第2フレームのマーカとの中点となり、第3フレームでの表示位置は第1フレームから第3フレームのマーカの平均で、凡そ第2フレームのマーカ位置付近となり、以後同様に、各マーカの位置の平均を表示位置として求めていく。
【0058】
よって、各マーカの表示位置は、実際のマーカの動きに比して、
図5中の灰色の丸に示すように徐々にゆっくりとなっていき、拍動による動きが1周期以上となったところで、その平均位置付近に収束する。ある程度動きが小さくなったところで、表示位置を更新する(すなわち表示位置を順次に求める)のを止めて、表示位置を固定してもよい。平均値の替わりに中央値を用いてもよく、特徴点の抽出ミスによる異常な座標(画素位置)が含まれていても、適切な位置を求めることができる。
【0059】
次に、各特徴点(ここでは各マーカ)の位置が各表示位置に一致するように、
図6に示すように、補正画像生成部34(
図2を参照)は元画像P
10を位置合わせして得られた位置合わせ後のX線画像を補正画像P
20としてリアルタイムで作成する。ステントは3次元の動きをしているにも関わらず、2次元の画像に投影されているので、ステントは画像上で平行移動や回転移動に加え、投影角度によりマーカの間隔が長短に変化し、あたかもステントの長さが変わったかのように写り込むことになる。このため、平行移動および回転移動に加え、この間隔を合わせるためにステントの軸方向に拡大・縮小も行い、各マーカの位置が重なるようにする。これにより、対象物は平均の位置・平均の方向・平均の大きさに最終的に常に固定される。
【0060】
なお、位置合わせの対象となる画像については、元画像P
10の替わりに、背景差分画像P
15(
図7を参照)を用いてもよい。具体的には、
図7に示すように、補正画像生成部34は、時系列のX線画像(元画像)P
10に対して時間差分を行い、当該時間差分により背景差分画像P
15を順次に生成する減算器34aをさらに備える。そして、補正画像生成部34は、当該背景差分画像P
15を位置合わせして得られた位置合わせ後の背景差分画像を補正画像P
20として、時系列の当該補正画像P
20を順次に生成する。減算器34aは、画像メモリ部43に接続されている。なお、画像メモリ部43と減算器34aとの間に遅延回路(図示省略)を設けて、過去フレームの元画像P
10を遅延回路にて遅延させてもよい。減算器34aはオペアンプや抵抗で構成されている。減算器34aは、この発明における背景差分画像生成手段に相当する。
【0061】
減算器34aは、現在フレームの元画像P
10と過去フレームの元画像P
10との差分、すなわち元画像P
10に対して時間差分を行うことにより、背景の動いていない部分を消去することができる。なお、差分については、過去の複数フレームにわたって得られた画像の平均を過去フレームの元画像P
10として用いて差分を行うようにしてもよい。複数フレームの画像の平均を過去フレームの元画像P
10として用いて差分を行う場合には、統計ノイズを低減させることができるという効果をも奏する。また、現在フレームの元画像P
10よりも1フレーム前の直近のフレームを過去フレームの元画像P
10として用いて差分を行うのが好ましい。平均や単一を問わずに、直近のフレームを過去フレームの元画像P
10として用いて差分を行うことで、X線の曝射レートより動きの遅い呼吸による動きなどを差分によって排除することができる。
【0062】
また、位置合わせ後の補正画像P
20に対して時間積分を行ってもよい。具体的には、
図8に示すように、補正画像生成部34は、時系列の補正画像P
20に対して時間積分を行い、当該時間積分により時間積分補正画像P
25を順次に生成する積分器34bをさらに備える。そして、表示制御部35は、当該時間積分補正画像P
25を順次に表示するように制御する。このようにして、当該時間積分補正画像P
25がモニタ44(
図2を参照)に表示されることになる。なお、時間積分補正画像P
25を画像メモリ部43に一旦記憶してから、モニタ44に表示するように制御してもよい。積分器34bはオペアンプや抵抗やコンデンサ(静電容量)で構成されている。また、位置合わせ後の補正画像P
20に対して過去フレームの補正画像P
20に関するテンポラルフィルタまたはリカーシブフィルタ(再帰的演算)をかけてもよい。積分器34bは、この発明における時間積分補正画像手段に相当する。
【0063】
最後に、時系列の補正画像P
20(
図8の時間積分の場合には時間積分補正画像P
25)をモニタ44にリアルタイムに表示するように表示制御部35は制御する。ここでは、透視のようなリアルタイム表示について説明したが、動画再生の場合も、各画像を画像メモリ43に書き込んで記憶してから再生時に読み出すのを除けば、リアルタイム表示と同様なので、動画再生の具体的な説明を省略する。
【0064】
上述の本実施例1に係るX線装置によれば、時系列(複数フレーム)の特徴点(ここではマーカ)の位置に基づいて、当該フレームの特徴点(マーカ)の各々の表示位置を順次に決定するので、動く対象物(血管)を適切な位置・方向・大きさに設定して表示することができる。また、複数の特徴点(マーカ)を抽出することで対象物(例えば血管)の方向および大きさの情報も保持され、対象物(血管)の近位・遠位の区別やデバイス(例えばステント)の長さが画像から直感的にわかるという効果をも奏する。また、複数の特徴点(マーカ)の位置および複数の表示位置を用いて位置合わせを行うので、最終的に表示される補正画像自身も正確な位置・方向に設定することができる。
また、本実施例1において、特徴点(マーカ)は、順次に生成された各画像のそれぞれについて、複数抽出してもよい。もちろん、特徴点(マーカ)は、単数抽出してもよい。
【0065】
本実施例1において、時系列の各特徴点(各マーカ)の位置に基づいて所定の位置を算出し、算出された当該所定の位置を複数の特徴点(マーカ)の各々の表示すべき位置として順次に決定するのが好ましい。このような算出により特徴点(マーカ)の表示位置を適切に自動的に決定することができる。特に、時系列の各特徴点(各マーカ)の位置を平均する場合には、
図5でも述べたように表示位置の動きが徐々にゆっくりとなり、最終的に動き(例えば拍動)による各特徴点(各マーカ)の平均の位置に収束する。よって、最終的に動く対象物(血管)を平均の位置・平均の方向・平均の大きさに固定して表示することができる。また、そこに至るまでの過程も、徐々にゆっくりと自然に切り替わり、不自然さを感じさせない。また、時系列の各特徴点(各マーカ)の位置の中央値を用いれば、特徴点(マーカ)の抽出ミスのフレームがあった場合でも頑健である。
【0066】
また、時系列の各特徴点(各マーカ)の位置を平均する場合には、開始フレームから所定の位置に固定して、その点を中心とした特徴点(マーカ)の位置の回転および大きさの変化が徐々にゆっくりとなり、上述したように最終的に対象物(血管)を平均の方向・平均の大きさに固定して表示することができる。対象物(血管)の画面上の位置に関わらず、適当な位置に表示することができる。また、時系列の各特徴点(各マーカ)の位置を平均する場合や時系列の各特徴点(各マーカ)の位置の中央値を用いる場合には、特徴点(マーカ)の各々の表示位置を複数の特徴点(マーカ)の位置の平均または中央値とすることで、最終的に対象物(血管)の適切な位置を表示(画面)の中心に設定することができる。
【0067】
また、本実施例1において、
図7でも述べたように、補正画像生成手段(本実施例1では補正画像生成部34)は、時系列の放射線画像(各実施例では元画像P
10)に対して時間差分を行い、当該時間差分により背景差分画像を順次に生成する背景差分画像生成手段(本実施例1では減算器34a)をさらに備え、補正画像生成手段(補正画像生成部34)は、当該背景差分画像を位置合わせして得られた位置合わせ後の背景差分画像を補正画像として、時系列の当該補正画像を順次に生成するのが好ましい。すなわち、対象物(血管)の位置合わせ前に時間差分による背景差分を予め行うことで、元画像の替わりに動きの少ない背景を除去した背景差分画像を表示することができる。背景が予め消えている背景差分画像を表示することで、位置合わせされない背景が動くことによる関心領域の視認性の低下や不快感が発生しない。
【0068】
また、本実施例1において、
図8でも述べたように、補正画像生成手段(補正画像生成部34)は、時系列の補正画像に対して時間積分を行い、当該時間積分により時間積分補正画像を順次に生成する時間積分補正画像手段(本実施例1では積分器34b)をさらに備え、表示制御手段(本実施例1では表示制御部35)は、当該時間積分補正画像を順次に表示するように制御するのが好ましい。すなわち、対象物(血管)の位置合わせ後に時間積分を行うことで、ノイズを削減し、低コントラストで微細な対象物(血管)の視認を向上させることができる。位置合わせされない背景の時間積分を行うことで、位置合わせされない背景が動くことによる関心領域の視認性の低下や不快感を低減させることができる。
【実施例2】
【0069】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図9は、実施例2に係るX線装置における画像処理系のブロック図である。上述した実施例1と共通する構成については、同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0070】
図9に示すように、本実施例2の画像処理系3は、上述した実施例1と同様のX線画像生成部31と特徴点位置取得部32と補正画像生成部34と表示制御部35とを備えている。上述した実施例1では特徴点表示位置決定部33(
図2を参照)を画像処理系3は備えていたが、本実施例2では、
図9に示すように、順次に抽出された同一フレーム毎の複数の特徴点の位置に基づいて対象物の位置を順次に決定し、時系列の対象物の位置を順次に取得する対象物位置取得部51と、順次に抽出された同一フレーム毎の複数の特徴点の位置に基づいて対象物の方向を順次に決定し、時系列の対象物の方向を順次に取得する対象物方向取得部52と、順次に取得された時系列の対象物の位置に基づいて、表示すべき対象物の表示位置を順次に決定する対象物表示位置決定部53と、順次に取得された時系列の対象物の方向に基づいて、表示すべき対象物の表示方向を順次に決定する対象物表示方向決定部54とを備えている。
【0071】
本実施例2でも、X線画像生成部31は、この発明における放射線画像生成手段に相当し、特徴点位置取得部32および入力部41は、この発明における特徴点位置取得手段に相当し、補正画像生成部34は、この発明における補正画像生成手段に相当し、表示制御部35は、この発明における表示制御手段に相当する。また、本実施例2では、対象物位置取得部51は、この発明における対象物位置取得手段に相当し、対象物方向取得部52は、この発明における対象物方向取得手段に相当し、対象物表示位置決定部53は、この発明における対象物表示位置決定手段に相当し、対象物表示方向決定部54は、この発明における対象物表示方向決定手段に相当する。
【0072】
その他に、画像処理系3は、上述した実施例1と同様の入力部41とコントローラ42と画像メモリ部43とモニタ44とを備えている。また、コントローラ42と同様に、対象物位置取得部51や対象物方向取得部52や対象物表示位置決定部53や対象物表示方向決定部54は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。なお、これらの対象物位置取得部51や対象物方向取得部52や対象物表示位置決定部53や対象物表示方向決定部54についてもGPUで構成してもよい。
【0073】
上述した実施例1と同様に、X線画像生成部31は、被検体M(
図1を参照)に向けてX線を照射して、当該被検体Mを透過したX線を(FPD25が)検出するX線撮影によって、時系列のX線画像(元画像)P
10(
図3を参照)を順次に生成する。順次に生成されたX線画像(元画像)P
10を画像メモリ部43に送り込んで書き込んで記憶する。特徴点の位置を抽出して取得する,あるいは位置合わせするために、画像メモリ部43に記憶されたX線画像(元画像)P
10を読み出して、特徴点位置取得部32および補正画像生成部34に送り込む。
【0074】
上述した実施例1と同様に、特徴点位置取得部32は、順次に生成されたX線画像(元画像)P
10に基づいて所定の対象物が有する複数の特徴点の位置を順次に抽出し、時系列の複数の特徴点の位置を順次に取得する。本実施例2では、順次に抽出された複数の特徴点を、対象物位置取得部51および対象物方向取得部52に送り込む。
【0075】
対象物位置取得部51は、順次に抽出された同一フレーム毎の複数の特徴点の位置に基づいて対象物の位置を順次に決定し、時系列の対象物の位置を順次に取得する。本実施例2では、対象物位置取得部51は、同一フレーム毎の複数の特徴点の位置に基づいて所定の位置を算出し、算出された当該所定の位置を対象物の位置として順次に決定する。具体的な算出については特に限定されないが、同一フレーム毎の複数の特徴点の平均値または中央値を、対象物の位置として順次に決定する。算出によって得られた対象物(例えばステント)の位置については、
図10で後述する。対象物の位置を、対象物表示位置決定部53および補正画像生成部34に送り込む。
【0076】
対象物方向取得部52は、順次に抽出された同一フレーム毎の複数の特徴点の位置に基づいて対象物の方向を順次に決定し、時系列の対象物の方向を順次に取得する。本実施例2では、同一フレーム毎の複数の特徴点に対する回帰直線の方向に基づいて所定の方向を算出し、算出された当該所定の方向を対象物の方向として順次に決定する。算出によって得られた対象物(ステント)の方向(角度)についても、
図10で後述する。対象物の方向を、対象物表示方向決定部54および補正画像生成部34に送り込む。
【0077】
対象物表示位置決定部53は、順次に取得された時系列の対象物の位置に基づいて、表示すべき対象物の表示位置を順次に決定する。本実施例2では、順次に取得された時系列の対象物の位置に基づいて所定の位置を算出し、算出された当該所定の位置を対象物の表示位置として順次に決定する。具体的な算出については特に限定されないが、時系列の対象物の位置の平均値または中央値を、対象物の表示位置として順次に決定する。この他にも、上述した実施例1と同様に、例えば最頻値を対象物の表示位置として順次に決定してもよい。対象物の位置(マーカの中点)および上述した算出によって得られた表示位置の具体的な動きについては、
図11で後述する。表示位置を補正画像生成部34に送り込む。
【0078】
対象物表示方向決定部54は、順次に取得された時系列の対象物の方向に基づいて、表示すべき対象物の表示方向を順次に決定する。本実施例2では、順次に取得された時系列の対象物の方向に基づいて所定の方向を算出し、算出された当該所定の方向を対象物の表示方向として順次に決定する。具体的な算出については特に限定されないが、時系列の対象物の角度の平均値または中央値を、対象物の表示方向として順次に決定する。この他にも、本実施例2の対象物表示位置決定部53と同様に、例えば最頻値を対象物の表示方向として順次に決定してもよい。対象物の位置(マーカの中点)および上述した算出によって得られた表示方向については、
図11で後述する。表示方向を補正画像生成部34に送り込む。
【0079】
補正画像生成部34は、対象物の位置が対象物の表示位置に一致し、かつ、対象物の方向が対象物の表示方向に一致するように、X線画像(元画像)P
10を位置合わせして得られた位置合わせ後のX線画像を補正画像P
20(
図6を参照)として、時系列の当該補正画像P
20を順次に生成する。順次に生成された補正画像P
20を画像メモリ部43に送り込んで書き込んで記憶する。モニタ44に時系列の各補正画像P
20を逐次に表示するために、画像メモリ部43に記憶された補正画像P
20を読み出して、モニタ44に送り込む。
【0080】
上述した実施例1と同様に、表示制御部35は、モニタ44に補正画像P
20を順次に表示するように制御することで、時系列の補正画像P
20が動画としてモニタ44に表示されることになる。
【0081】
次に、一連の撮影および画像処理について、上述した実施例1での
図1,
図3および
図6〜
図8と、本実施例2の
図9とともに、
図10および
図11を参照して説明する。
図10は、ステントの位置および角度の模式図であり、
図11は、実施例2に係るマーカの中点および表示位置の動きの模式図である。なお、表示方向については、最終結果のみを
図11で図示する。
【0082】
上述した実施例1と同様に、先ず、
図1に示すCアーム23を備えたCVS装置で、患者である被検体M(
図1を参照)を動画撮影する。FPD25(
図1および
図9を参照)の検出面に投影されたX線画像(元画像)P
10(
図3を参照)をX線画像生成部31(
図9を参照)が生成して、当該元画像P
10は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)で得られたPTCA画像となり、
図3に示すような画像となる。
【0083】
上述した実施例1と同様に、元画像P
10中の各バルーンマーカの位置を特徴点の位置として、例示した特許文献で開示された公知の手法等により特徴点位置取得部32(
図9を参照)がリアルタイムに抽出する。
【0084】
そして、
図10に示すように、2つのマーカmの位置の平均を対象物位置取得部51(
図9を参照)が算出する。
図10では、マーカmの数が2つであるので、2つのマーカmの位置の平均は、2つのマーカmの位置の中点Cとなる。この中点CがステントSを代表する位置に相当する。もちろん、マーカの数は3つ以上であってもよく、対象物位置取得部51は複数(3つ以上)のマーカの位置(すなわち特徴点の位置)の平均値を算出してもよい。
【0085】
一方、
図10に示すように、2つのマーカmに対する回帰直線の角度αを対象物方向取得部52(
図9を参照)が算出する。
図10では、マーカmの数が2つであるので、2つのマーカmに対する回帰直線は、2つのマーカmを結ぶ直線となる。この直線の角度αがステントの方向に相当する。もちろん、マーカの数は3つ以上であってもよく、対象物方向取得部52は複数(3つ以上)のマーカ(すなわち特徴点)に対する回帰直線を求めればよい。3つ以上の特徴点に対する回帰直線を求める場合には、最小二乗法などの公知の手法を用いればよい。
【0086】
また、
図10では、角度αは、水平方向の画素ラインと2つのマーカmを結ぶ直線とがなす角度であったが、垂直方向の画素ラインと2つのマーカmを結ぶ直線とがなす角度を、直線の角度としてもよい。また、対象物方向取得部52により得られる対象物(すなわちステント)の方向は、
図10のような直線の角度に限定されず、2つのマーカmのうち一方の座標を基準とした他方の座標に関するベクトルであってもよい。
【0087】
対象物位置取得部51や対象物方向取得部52で得られたフレーム毎の中点Cおよび角度αを時系列の情報としてRAMなどの記憶媒体に書き込んで記憶する。上述した実施例1でも述べたように、この際、各フレームの2つのマーカを対応付けて互いに区別する必要がある。
【0088】
そこで、上述した実施例1でも述べたように、通常、画面左上が冠動脈近位部で、画面右下が冠動脈遠位部であることを利用し、画像左上を基準として、そこからマーカまでの距離を算出し、距離が近い方を「マーカ1」,距離が遠い方を「マーカ2」としてそれぞれ対応付ける。本実施例2においても、適切なマーカをユーザが入力部41(
図2を参照)により手動で指定してもよい。
【0089】
次に、
図11(図中では2つのマーカ)に示すように、対象物表示位置決定部53(
図9を参照)は時系列の中点Cの位置(
図11中の黒丸を参照)の平均を算出し、ステントの表示位置(
図11中の灰色の丸を参照)とする。また、対象物表示角度決定部54(
図9を参照)は時系列の角度の平均を算出し、ステントの表示方向とする。
【0090】
よって、ステントの表示位置および表示方向の動きは、実際のステントの動きに比して、
図11中の灰色の丸に示すように徐々にゆっくりとなっていき、拍動による動きが1周期以上となったところで、その平均位置・平均方向付近に収束する。ある程度動きが小さくなったところで、表示位置および表示方向を更新する(すなわち表示位置・表示方向を順次に求める)のを止めて、表示位置および表示方向を固定してもよい。平均値の替わりに中央値を用いてもよく、特徴点の抽出ミスによる異常な座標(画素位置)が含まれていても、適切な位置および方向を求めることができる。
【0091】
次に、マーカの中点が表示位置に一致し、かつ、ステントの方向が表示方向に一致するように、補正画像生成部34(
図9を参照)は元画像P
10を位置合わせして得られた位置合わせ後のX線画像を補正画像P
20(
図6を参照)としてリアルタイムで作成する。なお、上述した実施例1と異なり、ステントの大きさは元画像P
10から変更されず、平行移動および回転移動のみである。このために、元画像P
10は変形されることはない。
【0092】
本実施例2においても、上述した実施例1と同様に、位置合わせの対象となる画像については、元画像P
10の替わりに、背景差分画像P
15(
図7を参照)を用いてもよい。背景差分画像P
15については、上述した実施例1と同じであるので、その説明を省略する。
【0093】
また、本実施例2においても、上述した実施例1と同様に、位置合わせ後の補正画像P
20に対して時間積分を行ってもよい。時間積分によって得られた時間積分補正画像P
25(
図8を参照)を順次に表示する。時間積分補正画像P
25については、上述した実施例1と同じであるので、その説明を省略する。
【0094】
最後に、時系列の補正画像P
20(
図8の時間積分の場合には時間積分補正画像P
25)をモニタ44にリアルタイムに表示するように表示制御部35は制御する。
【0095】
上述の本実施例2に係るX線装置によれば、時系列(複数フレーム)の特徴点(ここではマーカ)の位置・方向に基づいて、当該フレームの対象物(例えばステント)の各々の表示位置・表示方向を順次に決定するので、動く対象物(ステント)を適切な位置・方向に設定して表示することができる。また、複数の特徴点(マーカ)に基づく対象物(ステント)の方向が考慮されて対象物(ステント)の方向を表示するので、方向が変わっても対象物(ステント)自身を変形させることがなく対象物(ステント)の形状が不自然になることがない。また、上述した実施例1と同様に、複数の特徴点(マーカ)を抽出することで対象物(ステント)の方向および大きさの情報も保持され、対象物(例えば血管)の近位・遠位の区別やデバイス(例えばステント)の長さが画像から直感的にわかるという効果をも奏する。また、対象物の位置および方向(ここではマーカの中点およびステントの方向)を用いて位置合わせを行うので、最終的に表示される補正画像自身も正確な位置・方向に設定することができる。
まとめと、上述した実施例1および本実施例2の位置合わせは以下の観点で異なる。実施例1では、移動,回転,(等方または非等方)拡大縮小または変形をする。デバイス(例えばステント)は、平均の位置・角度・大きさ(形状)に収束する。大きさも平均することができる反面、非等方的な拡大縮小や変形は、画像を不自然にしかねない。また、計算コストも大きい。本実施例2では、移動,回転をする。デバイス(例えばステント)は、平均の位置・角度に収束する。大きさを平均することができないが、変形を伴わないので、画像が不自然にならない。また、実際には大きさの変化は小さく、さほど問題にならない。また、計算コストは小さい。
【0096】
対象物(ステント)の表示位置や表示方向を決定する前段階として、本実施例2では対象物(ステント)の表示位置や表示方向の基となる対象物の位置や方向を上述した算出で決定している。すなわち、複数の特徴点(マーカ)の位置に基づいて所定の位置を算出し、算出された当該所定の位置を対象物(ステント)の位置として順次に取得し、複数の特徴点(マーカ)に対する回帰直線の方向に基づいて所定の方向を算出し、算出された当該所定の方向を対象物(ステント)の方向として順次に取得する。例えば、
図10に示すように、2つのマーカmの中点を対象物の位置として求め、2つのマーカmを結ぶ直線の角度αをステントSの方向、すなわち対象物の方向として求めている。このような算出により対象物の位置・方向を適切に自動的に(本実施例2ではマーカの中点・ステントの方向として)決定することができる。
【0097】
また、本実施例2において、順次に取得された時系列の対象物の位置・方向(マーカの中点・ステントの方向)に基づいて所定の位置・方向を算出し、算出された当該所定の位置・方向を対象物(ステント)の表示位置・表示方向として順次に決定するのが好ましい。このような算出により対象物(ステント)の表示位置・表示方向を適切に自動的に決定することができる。特に、対象物(ステント)の位置・方向を平均する場合には、
図11でも述べたように表示位置・表示方向の動きが徐々にゆっくりとなり、最終的に動き(例えば拍動)による対象物の位置・方向(マーカの中点・ステントの方向)の動きの平均に収束する。よって、最終的に動く対象物(ステント)を平均の位置・平均の方向に固定して表示することができる。また、そこに至るまでの過程も、徐々にゆっくりと自然に切り替わり、不自然さを感じさせない。また、時系列の対象物の位置・方向(マーカの中点・ステントの方向)の中央値を用いれば、特徴点の抽出ミスのフレームがあった場合でも頑健である。
【0098】
また、時系列の対象物の位置・方向(マーカの中点・ステントの方向)を平均する場合や対象物の位置・方向(マーカの中点・ステントの方向)の中央値を用いる場合には、対象物の表示位置・表示方向を時系列の対象物の位置・方向(マーカの中点・ステントの方向)の平均または中央値とすることで、対象物(ステント)の適切な位置を表示(画面)の中心に設定し、対象物(ステント)を適切な方向に設定することができる。
【0099】
また、上述した実施例1と同様に本実施例2においても、
図7でも述べたように、背景差分画像を位置合わせして得られた位置合わせ後の背景差分画像を補正画像として、時系列の当該補正画像を順次に生成するのが好ましい。すなわち、位置合わせ前に時間差分による背景差分を予め行うことで、元画像の替わりに動きの少ない背景を除去した背景差分画像を表示することができる。背景が予め消えている背景差分画像を表示することで、位置合わせされない背景が動くことによる関心領域の視認性の低下や不快感が発生しない。
【0100】
また、上述した実施例1と同様に本実施例2においても、
図8でも述べたように、時系列の補正画像に対して時間積分を行い、当該時間積分により時間積分補正画像を順次に生成して表示するのが好ましい。すなわち、位置合わせ後に時間積分を行うことで、ノイズを削減し、低コントラストで微細な対象物(ステント)の視認を向上させることができる。位置合わせされない背景の時間積分を行うことで、位置合わせされない背景が動くことによる関心領域の視認性の低下や不快感を低減させることができる。
【0101】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0102】
(1)上述した各実施例では、放射線として、X線を例に採って説明したが、X線以外の放射線(例えばラジオ波、γ線など)に適用してもよい。例えば、核医学診断および血管造影技術を組み合わせたインターベンション治療にも適用可能である。
【0103】
(2)上述した各実施例では、放射線装置(各実施例ではX線装置)は、被検体を人体とした医療用装置であったが、被検体を実装基板とした非破壊検査装置に例示されるように工業用装置に適用してもよい。特に、動的な対象物を有した被検体を撮影する場合に有用である。
【0104】
(3)上述した各実施例では、経皮的冠動脈形成術(PTCA)を例に採って説明したが、PTCA以外のインターベンション治療などのインターベンション放射線医学(IVR: intervention radiology)全般にも適用可能である。例えば、PTCA以外のIVR全般では、カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)にも適用可能である。TAVRの場合、対象物である人工弁に対する特徴点として、人工弁の金属フレームを用いることで、人工弁を固定して表示することができる。これにより、人工弁留置の際の位置決めが容易になる。逆に、大動脈弁の石灰化病変を特徴点としてもよく、この場合には留置先である大動脈弁の方が固定されて表示されることになる。
【0105】
(4)また、対象物に対応する適当な特徴点がない場合には、対象物と実質的に一体となって動く部位に、対象物とは別のマーカを挿入してもよい。例えば、
図12に示すように、人工弁の近傍に挿入されるピックテールカテーテルPCのマーカmなどが考えられる。このような場合、マーカ付近を拡大して表示するのではなく、
図12に示すように、例えば画面中央などの人工弁や大動脈弁が存在すると推定される領域(図中の点線を参照)を拡大して表示してもよい。もちろん、術者などのユーザが拡大表示したい位置を指定してもよい。
【0106】
(5)上述した実施例1では、時系列の各特徴点の位置に基づいて所定の位置(実施例1では平均値または中央値)を算出することで、特徴点の表示位置を自動的に決定し、実施例2では、時系列の対象物の位置(中点)・方向(角度)に基づいて所定の位置を算出することで、対象物の表示位置・表示方向を自動的に決定したが、必ずしも特徴点・対象物の表示位置や表示方向を自動的に決定する必要はない。例えば、実施例1において時系列の各特徴点の位置を表示して、表示結果から術者などのユーザが特徴点の表示位置を手動で決定してもよいし、実施例2において時系列の対象物の位置(中点)・方向(角度)を表示して、表示結果から術者などのユーザが対象物の表示位置・表示方向を手動で決定してもよい。
【0107】
(6)上述した実施例2では、複数の特徴点の位置に基づいて所定の位置(実施例2では中点)を算出することで、対象物の位置(中点)を自動的に決定し、複数の特徴点に対する回帰直線の方向に基づいて所定の方向(実施例2では角度)を自動的に決定したが、必ずしも対象物の位置や方向を自動的に決定する必要はない。例えば、複数の特徴点の位置を一旦表示して、表示結果から術者などのユーザが対象物の位置・方向を手動で決定してもよい。
【0108】
(7)表示制御手段(各実施例では表示制御部35)は、補正画像の所定の領域を拡大して順次に表示してもよい。補正画像の所定の領域を拡大して順次に表示することで、対象物をより詳細に観察することができる。特徴点が対象物と一体となっている場合には、対象物の位置がわかっているので、対象物周辺を拡大表示することができる。特徴点が対象物と離れている場合には、特徴点に対する対象物の相対位置から対象物が存在すると推定される位置を拡大して表示することができる。または、術者などのユーザが表示領域を指定し、所望の位置を拡大して表示することができる。
【0109】
(8)上述した実施例1において、表示制御手段(実施例1では表示制御部35)は、補正画像における対象物の位置が画面の中心に常に固定されるように当該補正画像を表示してもよい。例えば、実施例2のように2つのマーカの位置の中点を求め、ステントを代表する位置とする。このステント位置に対する各マーカの表示位置を保ったまま、
図13に示すようにステント位置を画面の中心に固定する。以下、同様に位置合わせをして、補正画像をリアルタイム表示する(図中のtは時間軸、図中の表示画像P
30を参照)。この場合、ステントの位置が画面の中心から移動せずに常に固定され、回転または拡大・縮小成分の動きのみとなる。それらの動きも、
図5や
図11でも述べたように最終的には平均されて固定される。ステントが常に中心にあるので、拡大して表示してもよい。また、元画像と並べて同時に表示してもよい。
【0110】
(9)上述した実施例2において、表示制御手段(実施例2では表示制御部35)は、
図14に示すように、2つのマーカの位置の中点を、ステントを代表する位置として画面右側に固定し、ステントの方向を縦に固定して表示してもよい(図中のtは時間軸)。この場合、ステントは画面右側で移動も回転もせずに固定され、拡大・縮小成分の動きのみとなる。実際には、投影角度が大きく変わることは少なく、ほぼ完全に固定されるとみなせる。ステントが常に右側にあるので、拡大して表示してもよい。また、元画像と並べて同時に表示してもよい(図中の元画像P
10,切り出された補正画像P
20を参照)。
【0111】
(10)上述した実施例1では、特徴点表示位置決定手段(実施例1では特徴点表示位置決定部33)は、特徴点の各々の表示位置を順次に決定する際には、
図5に示すように各々の表示位置は互いに独立して求められたが、上述した実施例2のように複数の特徴点の位置に基づいて対象物の位置(
図10のようにステントSを代表する位置である中点C)を決定した後に、当該対象物の位置に対する相対的な複数の特徴点の位置を保ったまま、対象物の各々の表示位置を順次に決定してもよい。具体的には、
図15に示すように、特徴点表示位置決定部33は、複数の特徴点の位置に基づいて対象物の位置を順次に決定し、決定された当該対象物の位置を順次に取得する対象物位置取得部33aをさらに備える。特徴点表示位置決定部33は、対象物の位置に対する相対的な複数の特徴点の位置を保ったまま対象物の位置が所定の位置になるように、複数の特徴点の各々の表示すべき位置を、複数の特徴点の各々の表示位置として順次に決定する。コントローラ42と同様に対象物位置取得部33aは中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。この場合には、対象物の長さや大きさを保った状態で、動く対象物を適切な位置・方向に設定して表示することができる。対象物位置取得部33aは、この発明における対象物位置取得手段に相当する。
【0112】
(11)特に、対象物位置取得部33aを中央演算処理装置(CPU)などで構成することで、複数の特徴点の位置に基づいて所定の位置(例えば平均値や中央値)を算出し、算出された当該所定の位置を対象物の位置として順次に取得するのが好ましい。このような算出により対象物の表示位置を適切に自動的に決定することができる。もちろん、複数の特徴点の位置を一旦表示して、表示結果から術者などのユーザが対象物の位置を手動で決定してもよい。
【符号の説明】
【0113】
31 … X線画像生成部
32 … 特徴点位置取得部
33 … 特徴点表示位置決定部
33a … 対象物位置取得部
34 … 補正画像生成部
34a … 減算器
34b … 積分器
35 … 表示制御部
41 … 入力部
51 … 対象物位置取得部
52 … 対象物方向取得部
53 … 対象物表示位置決定部
54 … 対象物表示方向決定部
P
10 … X線画像(元画像)
P
15 … 背景差分画像
P
20 … 補正画像
P
25 … 時間積分補正画像
M … 被検体