(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547908
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】イメージング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
A61B10/00 E
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-524879(P2018-524879)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2017007180
(87)【国際公開番号】WO2018003169
(87)【国際公開日】20180104
【審査請求日】2018年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-129670(P2016-129670)
(32)【優先日】2016年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】秋田 典孝
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−000540(JP,A)
【文献】
特開2008−183394(JP,A)
【文献】
特表2010−520589(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/092882(WO,A1)
【文献】
国際公開第2003/019072(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/007785(WO,A1)
【文献】
特開2012−115514(JP,A)
【文献】
特開2006−081842(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0167357(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第104605824(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に投与された蛍光色素を励起させるための励起光を前記被検者に向けて照射する励起用光源と、励起光が照射されることにより前記蛍光色素から発生した蛍光を撮影することにより蛍光画像を取得するカメラと、を備えた照明・撮影部と、
前記被検者に近接した位置から、前記被検者に投与された蛍光色素を励起させるための励起光を前記被検者に向けて照射するための、ハンディ型の励起用補助光源部と、
を備えたことを特徴とするイメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイメージング装置において、
前記励起用補助光源部は、光源と、当該光源を点灯させるためのバッテリーとを備えるイメージング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のイメージング装置において、
前記光源はLEDであり、
前記バッテリーは、定電流回路を介して前記LEDに接続されるイメージング装置。
【請求項4】
請求項1に記載のイメージング装置において、
前記照明・撮影部は、支持部材により支持されているイメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被検者の体内に投与された蛍光色素に対して励起光を照射し、この蛍光色素から発生する蛍光を撮影するイメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外科手術において生体の内部の視認が困難な血管、リンパ管、リンパ節等を可視化する方法として、色素法や、放射性同位元素を予め投入するR.I.法が利用されてきた。これに対して、近年、近赤外蛍光イメージングと呼称される手法が、外科手術における血管造影に利用されている。この近赤外蛍光イメージングにおいては、蛍光色素であるインドシアニングリーン(ICG)をインジェクタ等により注入することで患部に投与する。そして、このインドシアニングリーンにその波長が600〜850nm(ナノメータ)程度の近赤外光を励起光として照射すると、インドシアニングリーンは750〜900nm程度の波長の近赤外蛍光を発する。この蛍光を、近赤外光を検出可能な撮像素子で撮影し、その画像を液晶表示パネル等の表示部に表示する。この近赤外蛍光イメージングによれば、体表から20mm程度までの深さに存在する血管やリンパ管等の観察が可能となる。
【0003】
また、近年、腫瘍を蛍光標識して手術ナビゲーションに利用する手法が注目されている。腫瘍を蛍光標識するための蛍光標識剤としては、5−アミノレブリン酸(5−ALA/5−Aminolevulinic Acid)が使用される。この5−アミノレブリン酸(以下、これを略称するときは「5−ALA」という)を被検者に投与した場合、5−ALAは蛍光色素であるPpIX(protoporphyrinIX/プロトポルフィリンナイン)に代謝される。なお、このPpIXは癌細胞に特異的に蓄積する。そして、5−ALAの代謝物であるPpIXに向けて410nm程度の波長の可視光を照射すると、PpIXからおよそ630nm程度の波長の赤色の可視光が蛍光として発光される。このPpIXからの蛍光を観察することにより、インドシアニングリーンの場合と同様、癌細胞を確認することが可能となる。
【0004】
特許文献1には、インドシアニングリーンが投与された生体の被検臓器に対して、インドシアニングリーンの励起光を照射して得られた近赤外蛍光の強度分布イメージと、インドシアニングリーン投与前の被検臓器に対して、X線、核磁気共鳴または超音波を作用させて得られた癌病巣分布イメージとを比較し、近赤外蛍光の強度分布イメージで検出されるが癌病巣分布イメージでは検出されない領域のデータを、癌の副病巣領域データとして収集するデータ収集方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、カメラと、赤外光源と、可視光源とを一体化した照明・撮影部を使用して、被検者に対する赤外光および可視光の照射と、カメラによる撮影とを行う照明・撮影部を備えたイメージング装置が開示されている。そして、この照明・撮影部は、アームにより移動可能に支持されている。この照明・撮影部を被検者に向けて配置することにより、被検者における任意の領域に対して、赤外光および可視光の照射と、カメラによる撮影とを同時に実行することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/139466号
【特許文献2】国際公開第2015/092882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インドシアニングリーンを利用して、例えば、乳腺外科における乳癌の手術を行う場合には、センチネルリンパ節の位置を迅速に特定する必要がある。このセンチネルリンパ節は、癌細胞がリンパ流に乗って最初に到達するリンパ節のことである。このセンチネルリンパ節に癌細胞が発見されない場合には、リンパ節に乳癌の転移がないと判断することができる。
【0008】
この乳腺外科におけるセンチネルリンパ節の生検においては、センチネルリンパ節に蓄積されたインドシアニングリーンを視認性よく、かつ、高感度で可視化することが要求される。しかしながら、乳房のセンチネルリンパ節は、脂肪量や体表からの深さ等について個人差があることから、このインドシアニングリーンからの近赤外蛍光を適切に視認できない場合がある。
【0009】
すなわち、特許文献2に記載されたように、インドシアニングリーンを励起するための赤外光源とカメラとを一体化した構成においては、赤外光の照射方向と撮影方向とを一致させることができるという利点があるが、カメラにより被検者の患部を含む周辺領域を撮影する必要があること等の理由により、患部とカメラとの距離(Working Distance)を数十センチ以上に設定する必要がある。このため、赤外光源からの赤外光を、インドシアニングリーンに対する十分な励起光エネルギー密度で患部に到達させることができない場合がある。このような場合には、インドシアニングリーンからの近赤外蛍光を適切に視認できないことになる。
【0010】
例えば、単一の点光源の場合においては、光のエネルギー密度は距離の二乗に反比例する。このため、被検者と赤外光源との間に一定の距離を保ったままで被検者の患部に到達する赤外線のエネルギー密度を向上させるためには、距離による減衰を補うだけの光量を得るために、高出力の光源、あるいは、多数の光源が必要となる。このため、装置が複雑となり重量が増加するばかりではなく、装置のコストアップになる、あるいは光源での発熱量増加に伴う冷却機構が必要となるという問題が生ずることになる。
【0011】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、簡易で低コストでありながら、励起光を効率的に被検者に照射して、鮮明な蛍光画像を取得することが可能なイメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、被検者に投与された蛍光色素を励起させるための励起光を前記被検者に向けて照射する励起用光源と、励起光が照射されることにより前記蛍光色素から発生した蛍光を撮影することにより蛍光画像を取得するカメラと、を備えた照明・撮影部と、前記被検者に近接した位置から、前記被検者に投与された蛍光色素を励起させるための励起光を前記被検者に向けて照射するための、ハンディ型の励起用補助光源部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記励起用補助光源部は、光源と、当該光源を点灯させるためのバッテリーとを備える。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記光源はLEDであり、前記バッテリーは、定電流回路を介して前記LEDに接続される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記照明・撮影部は、支持部材により支持されている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、照明・撮影部における励起用光源からの励起光に加え、励起用補助光源部を利用して被検者に対して近距離から励起光を照射することにより、励起光を効率的に被検者に照射することができ、鮮明な蛍光画像を取得することが可能となる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、バッテリーにより光源を点灯させることから、給電のための配線が不要となる。このため、励起用補助光源部を滅菌ドレープ等により覆うことができ、極めて容易に清浄な状態を維持することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、バッテリーから給電を受けたLEDから照射される励起光の照度が徐々に小さくなることを防止することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、支持部材により支持された照明・撮影部における励起用光源からの照射光と励起用補助光源部からの励起光との作用により発生した蛍光画像を照明・撮影部における撮影部により、効率的に撮影することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明に係るイメージング装置の装置本体を示す斜視図である。
【
図2】この発明に係るイメージング装置の装置本体を示す側面図である。
【
図3】この発明に係るイメージング装置の装置本体を示す平面図である。
【
図7A】励起用補助光源51から照射される近赤外光の照度と時間との関係を示すグラフである。
【
図7B】励起用補助光源51から照射される近赤外光の照度と時間との関係を示すグラフである。
【
図8】この発明に係るイメージング装置を利用して蛍光画像の撮影を行う様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この発明に係るイメージング装置は、照明・撮影部12を備えた装置本体と、励起用補助光源部50とから構成される。最初に、装置本体の構成について説明する。
図1は、この発明に係るイメージング装置の装置本体を示す斜視図である。
図2は、この発明に係るイメージング装置の装置本体を示す側面図である。
図3は、この発明に係るイメージング装置の装置本体を示す平面図である。
【0022】
この発明に係るイメージング装置の装置本体は、被検者の体内に注入された蛍光色素としてのインドシアニングリーンに対し励起光を照射し、このインドシアニングリーンから放射される蛍光を撮影するためのものであり、4個の車輪13を備えた台車11と、この台車11の上面における台車11の進行方向の前方(
図2および
図3における左方向)付近に配設されたアーム機構30と、このアーム機構30にサブアーム41を介して配設された照明・撮影部12と、モニター15とを備える。台車11の進行方向の後方には、台車11を移動するときに使用されるハンドル14が付設されている。また、台車11の上面には、このイメージング装置を遠隔操作するためのリモコンを装着するための凹部16が形成されている。
【0023】
上述したアーム機構30は、台車11の進行方向の前方側に配設されている。このアーム機構30は、台車11の進行方向の前方側に立設された支柱36上に配設された支持部37に対して、ヒンジ部33により連結された第1アーム部材31を備える。この第1アーム部材31は、ヒンジ部33の作用により、支柱36および支持部37を介して、台車11に対して揺動可能となっている。なお、上述したモニター15は、支柱36に付設されている。
【0024】
この第1アーム部材31の上端には、第2アーム部材32がヒンジ部34により連結されている。この第2アーム部材32は、ヒンジ部34の作用により、第1アーム部材31に対して揺動可能となっている。このため、第1アーム部材31と第2アーム部材32とは、
図2において符号Cを付した仮想線で示すように、第1アーム部材31と第2アーム部材32とが第1アーム部材31と第2アーム部材32との連結部であるヒンジ部34を中心として所定の角度開いた撮影姿勢と、
図1から
図3において符号Aを付した実線で示すように、第1アーム部材31と第2アーム部材32とが近接する待機姿勢とをとることが可能となっている。
【0025】
第2アーム部材32の下端には、支持部43がヒンジ部35により連結されている。この支持部43は、ヒンジ部35の作用により、第2アーム部材32に対して揺動可能となっている。この支持部43には、回転軸42が支持されている。そして、照明・撮影部12を支持したサブアーム41は、第2アーム部材32の先端に配設された回転軸42を中心に回動する。このため、照明・撮影部12は、このサブアーム41の回動により、
図1から
図3において符号Aを付した実線で、あるいは、
図2において符号Cを付した仮想線で示すように、撮影姿勢または待機姿勢をとるためのアーム機構30に対して台車11の進行方向の前方側の位置と、
図2および
図3において符号Bを付した仮想線で示すように、台車11を移動させる時の姿勢であるアーム機構30に対して台車11の進行方向の後方側の位置との間を移動する。
【0026】
図4は、照明・撮影部12の斜視図である。
【0027】
この照明・撮影部12は、近赤外線および可視光を検出可能な複数の撮像素子を備えたカメラ21と、このカメラ21の外周部に配設された6個のLEDよりなる可視光源22と、6個のLEDよりなる励起用光源23と、1個のLEDよりなる確認用光源24とを備える。可視光源22は、可視光を照射する。励起用光源23は、インドシアニングリーンを励起させるための励起光であるその波長が760nmの近赤外光を照射する。また、確認用光源24は、インドシアニングリーンから発生する蛍光の波長と近似するその波長が810nmの近赤外光を照射する。なお、励起用光源23の波長は、760nmに限定されず、インドシアニングリーンを励起できる波長であればよい。確認用光源24の波長は、810nmに限定されず、インドシアニングリーンが発する波長以上であってもよい。
【0028】
次に、励起用補助光源部50の構成について説明する。
図5は、励起用補助光源部50の斜視図である。また、
図6は、励起用補助光源部50の断面概要図である。
【0029】
この励起用補助光源部50は、片手で持てるサイズであるハンディ型のものである。この励起用補助光源部50は、ケーシング57内に、ハイパワーLEDからなる励起用補助光源51を備える。励起用補助光源51は、照明・撮影部12における励起用光源23と同様、蛍光色素としてのインドシアニングリーンを励起させるための励起光であるその波長が760nmの近赤外光を照射する。この励起用補助光源51の周囲には、反射ミラー52が配設されている。また、励起用補助光源51の前方には、インドシアニングリーンから発生する蛍光の波長に相当する波長の光を遮断するためのローパスフィルタ53が配設されている。ケーシング57におけるローパスフィルタ53の前面は、アクリル製の保護カバー54により覆われている。
【0030】
励起用補助光源51は、光源駆動基板55に接続されている。この光源駆動基板55は、ケーシング57内に直列に配設された2個のバッテリー65のプラス側と端子61を介して接続されるとともに、バッテリー65のマイナス側と、端子62、導電線63、押しボタンスイッチ64を介して接続されている。この光源駆動基板55は、定電流回路56を備える。すなわち、バッテリー65は、定電流回路56を介してLEDからなる励起用補助光源51に接続されている。
【0031】
なお、上述したように、励起用補助光源部50として、バッテリー65を内蔵した構成を採用することにより、給電のための配線が不要となる。このため、励起用補助光源部50を滅菌ドレープ等により覆うことができ、極めて容易に清浄な状態を維持することが可能となる。このとき、励起用補助光源51の点灯および消灯を、押しボタンスイッチ64により行う構成であることから、点灯および消灯動作を、滅菌ドレープ等を介して容易に実行することが可能となる。
【0032】
図7Aおよび
図7Bは、励起用補助光源51から照射される近赤外光の照度と時間との関係を示すグラフである。なお、
図7Aは、バッテリー65と励起用補助光源51とを直接接続した場合を示し、
図7Bは、バッテリー65を、定電流回路56を介して励起用補助光源51に接続した場合を示している。
【0033】
バッテリー65と励起用補助光源51とを直接接続した場合においては、ハイパワーLEDからなる励起用補助光源51の温度上昇等により、時間の経過に伴って励起用補助光源51に流れる電流が徐々に低下し、これにより、励起用補助光源51から照射される励起光による照度が徐々に小さくなる。これに対して、バッテリー65を、定電流回路56を介して励起用補助光源51に接続した場合においては、励起用補助光源51に流れる電流を一定に維持することができ、励起用補助光源51から照射される励起光による照度を一定の時間、一定の照度に維持することが可能となる。
【0034】
次に、この発明に係るイメージング装置を使用して外科の手術を行う場合の動作について説明する。
図8は、この発明に係るイメージング装置を利用して蛍光画像の撮影を行う様子を示す説明図である。なお、以下の説明においては、被検者(患者)Mに対して手術を行う場合について説明する。
【0035】
この発明に係るイメージング装置を使用して手術を行う場合には、最初に、照明・撮影部12における確認用光源24を点灯するとともに、そのときの画像をカメラ21により撮影する。確認用光源24からは、インドシアニングリーンから発生する蛍光の波長と近似する、その波長が810nmの近赤外光が照射される。この近赤外光は、人の目では確認することができない。一方、確認用光源24から波長が810nmの近赤外光を照射するとともに、この照射領域の画像をカメラ21により撮影した場合、カメラ21が正常に動作していた場合においては、近赤外光が照射された領域の画像がカメラ21により撮影され、その画像が図示を省略した表示部に表示される。これにより、カメラ21の動作確認を容易に実行することが可能となる。
【0036】
しかる後、被検者Mにインドシアニングリーンを注射により注入する。そして、被検者Mの患部Sに向けて、照明・撮影部12における励起用光源23から近赤外線を照射するとともに可視光源22から可視光を照射する。なお、励起用光源23から照射される近赤外光としては、上述したように、インドシアニングリーンが蛍光を発するための励起光として作用する760nmの近赤外光が採用される。これにより、インドシアニングリーンは、約800nmをピークとする近赤外領域の蛍光を発生させる。
【0037】
そして、被検者Mの患部S付近を照明・撮影部12におけるカメラ21により撮影する。このカメラ21は、近赤外光と可視光とを検出することが可能となっている。カメラ21により撮影された近赤外画像および可視画像は、画像処理部により、近赤外画像および可視画像を表示部に表示可能な画像データに変換され、図示しない液晶表示パネル等の表示部に表示される。また、必要に応じ、画像処理部は、近赤外画像データと可視画像データとを利用して、可視画像と近赤外画像とを融合させた合成画像を作成する。
【0038】
このときには、照明・撮影部12と被検者Mとの間には、数十センチ以上の距離(Working Distance)が存在する。一方、患部Sであるセンチネルリンパ節は、脂肪量や体表からの深さ等について個人差がある。このため、インドシアニングリーンからの近赤外蛍光を適切に視認できない場合がある。このような場合においては、
図8に示すように、励起用補助光源部50が使用される。
【0039】
この励起用補助光源部50は、予め、滅菌ドレープにより覆っておく。そして、操作者が、ハンディ型の励起用補助光源部50を手に持ち、
図8に示すように、被検者Mの体表面に近い位置から患部Sに向けて励起光を照射する。
【0040】
上述したように、光のエネルギー密度は距離の二乗に反比例する。このため、照明・撮影部12における励起用光源23と被検者Mとの距離を70センチメートルとし、励起用補助光源部50における励起用補助光源51の保護カバー54と被検者の体表面との距離を10センチメートルとした場合においては、励起光の射出強度が同一の場合には、励起用補助光源部50を利用した場合には、約50倍の強度の励起光を被検者Mに照射することができる。このため、
図8に示すような小型・軽量のハンディ型の励起用補助光源部50を使用した場合においても、照明・撮影部12における励起用光源23を使用した場合の数倍の励起効果を得ることができる。また、ハンディ型の励起用補助光源部50を使用した場合においては、患部Sにあわせて最も適切な位置および方向から励起光を照射することが可能となる。このため、視認性の悪いセンチネルリンパ節等の患部Sについても、鮮明な画像を得ることが可能となる。なお、近接の距離として、励起用補助光源51の保護カバー54と被検者の体表面との距離は、30cm以下で、かつ、被験者Mとの接触がない距離とする。
【0041】
このとき、この励起用補助光源部50においては、バッテリー65を、定電流回路56を介してハイパワーLEDからなる励起用補助光源51に接続していることから、励起用補助光源51に流れる電流を一定に維持することができる。これにより、励起用補助光源51から照射される励起光による照度を一定の時間、一定の照度に維持することが可能となる。
【0042】
以上のように、この実施形態に係るイメージング装置においては、支持部材としてのアーム機構30により支持された照明・撮影部12により患部Sへの励起光の照明と患部Sの撮影とを実行しながら、励起用補助光源部50を使用して被検者Mの患部Sに近い位置から患部Sに向けて励起光を照射することができることから、効率的に、極めて鮮明なインドシアニングリーンの励起画像を得ることが可能となる。
【0043】
なお、上述した実施形態においては、蛍光色素を含む材料としてインドシアニングリーンを使用し、このインドシアニングリーンに対して600nm〜850nm程度の近赤外光を励起光として照射することにより、インドシアニングリーンからおおよそ810nmをピークとする近赤外領域の蛍光を発光させる場合について説明したが、近赤外線以外の光を使用してもよい。
【0044】
また、蛍光色素として、インドシアニングリーンを使用するかわりに、上述した5−ALA等の、その他の蛍光色素を使用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
12 照明・撮影部
21 カメラ
22 可視光源
23 励起用光源
24 確認用光源
30 アーム機構
50 励起用補助光源部
51 励起用補助光源
52 反射ミラー
53 ローパスフィルタ
54 保護カバー
55 光源駆動用基板
56 定電流回路
65 バッテリー
M 被検者
S 患部