特許第6547997号(P6547997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6547997
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/16 20180101AFI20190711BHJP
   F21S 41/24 20180101ALI20190711BHJP
   F21S 41/63 20180101ALI20190711BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20190711BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20190711BHJP
【FI】
   F21S41/16
   F21S41/24
   F21S41/63
   F21W102:13
   F21Y115:30
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-260276(P2014-260276)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-122504(P2016-122504A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ラコ
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 竜舞
(72)【発明者】
【氏名】中里 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 直史
【審査官】 山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/024385(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/083741(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/073237(WO,A1)
【文献】 特開2013−229174(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013008075(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00 − 45/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトルが連続した白色光のスーパーコンティニウム光を出力するスーパーコンティニウム光源と、
前記スーパーコンティニウム光源が出力する前記スーパーコンティニウム光を制御する光学系と、
前記スーパーコンティニウム光を前記スーパーコンティニウム光源から前記光学系まで伝搬する伝送用光ファイバと、
を備えた車両用灯具であり、
前記伝送用光ファイバは、前記スーパーコンティニウム光源のコヒーレント性を低減する伝送用光ファイバであり、
前記伝送用光ファイバが、マルチモード光ファイバまたはステップインデックス型光ファイバの何れかを含む光ファイバである、車両用灯具。
【請求項2】
前記スーパーコンティニウム光源は、パルスレーザー光源又はCWレーザー光源と、前記パルスレーザー光源が出力するパルスレーザー光又は前記CWレーザー光源が出力するCWレーザー光を、前記スーパーコンティニウム光に変換して出力する非線形光学媒質と、を備えた請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記非線形光学媒質は、前記パルスレーザー光源が出力するパルスレーザー光又は前記CWレーザー光源が出力するCWレーザー光を、前記スーパーコンティニウム光に変換して出力するように構成された変換用光ファイバである請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記スーパーコンティニウム光源が出力する前記スーパーコンティニウム光を制御する光学系は凸状の投影レンズを備えており、
前記伝送用光ファイバの出射端面から出射される前記スーパーコンティニウム光の指向特性がランバシアン配光より狭く、
前記伝送用光ファイバの出射端面は前記投影レンズの後側焦点近傍に位置され、
前記光学系は、前記伝送用光ファイバの出射端面から出射する前記スーパーコンティニウム光を制御する請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記光学系は、前記変換用光ファイバの出射端面から出射する前記スーパーコンティニウム光を制御する請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記スーパーコンティニウム光のうち、予め定められた可視波長領域以外の光を除去する除去手段を備えており、
前記光学系は、前記スーパーコンティニウム光のうち、前記除去手段によって予め定められた可視波長領域以外の光が除去された光を制御する請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記除去手段は、光学フィルタ又はダイクロイックミラーである請求項6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記スーパーコンティニウム光の少なくとも一部のコヒーレント性を低減するインコヒーレント化手段を備えており、
前記インコヒーレント化手段が、グレーチングセルアレイからなる回折光学素子、又はホログラム光学素子の少なくとも1以上を備え、
前記光学系は、前記インコヒーレント化手段によって少なくとも一部の光のコヒーレント性が低減された前記スーパーコンティニウム光を制御する請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記光学系は、ロービーム用配光パターンが形成されるように、前記スーパーコンティニウム光源が出力する前記スーパーコンティニウム光を制御する光学系として構成されている請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項10】
前記光学系は、ハイビーム用配光パターンが形成されるように、前記スーパーコンティニウム光源が出力する前記スーパーコンティニウム光を制御する光学系として構成されている請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用灯具。













【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に係り、特に、スーパーコンティニウム光源を用いた車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用灯具の分野においては、LD(レーザーダイオード)等の半導体発光素子を用いた車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図22は、特許文献1に記載の車両用灯具200の概略構成図である。
【0004】
図22に示すように、特許文献1に記載の車両用灯具200は、半導体レーザー素子202、集光レンズ203、蛍光体228、半導体レーザー素子202が出射し、集光レンズ203で集光されたレーザー光を蛍光体228まで伝搬する光ファイバ241、光ファイバ241によって伝搬されたレーザー光を受けて蛍光体228が発光する白色光を制御する反射鏡229等を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−17096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具200においては、蛍光体228に起因する様々な問題、例えば、蛍光体が発光する光のスペクトルが2つのピーク及び当該2つのピーク間に形成される深い谷間を含むため(すなわち、蛍光体が発光する光のスペクトルが太陽光に近い連続性を持たないため)演色性が低くなるという問題や蛍光体が発光する光の色がその発光面に対する角度に応じて変化するという色分離発生の問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、演色性低下や色分離発生の要因となる蛍光体が省略された車両用灯具(すなわち、従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高く、かつ、色分離発生を抑制することができる車両用灯具)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、可視波長領域を含むスーパーコンティニウム光を出力するスーパーコンティニウム光源と、前記スーパーコンティニウム光源が出力する前記スーパーコンティニウム光を制御する光学系と、を備えた車両用灯具であることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、演色性低下や色分離発生の要因となる蛍光体が省略された車両用灯具(すなわち、従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高く、かつ、色分離発生を抑制することができる車両用灯具)を提供することができる。
【0010】
蛍光体を省略することができるのは、スーパーコンティニウム光源が出力するスーパーコンティニウム光が既に白色光であることによるものである。
【0011】
従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高くなるのは、スーパーコンティニウム光のスペクトルが太陽光に近い連続性を持つことによるものである。
【0012】
色分離発生を抑制することができるのは、蛍光体を用いていないため、スーパーコンティニウム光の色が角度に応じて変化しない(又はほとんど変化しない)ことによるものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スーパーコンティニウム光源は、パルスレーザー光源又はCWレーザー光源と、前記パルスレーザー光源が出力するパルスレーザー光又は前記CWレーザー光源が出力するCWレーザー光を、前記スーパーコンティニウム光に変換して出力する非線形光学媒質と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記非線形光学媒質は、前記パルスレーザー光源が出力するパルスレーザー光又は前記CWレーザー光源が出力するCWレーザー光を、前記スーパーコンティニウム光に変換して出力するように構成された変換用光ファイバであることを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明において、前記スーパーコンティニウム光を前記スーパーコンティニウム光源から前記光学系まで伝搬する伝送用光ファイバをさらに備えており、前記光学系は、前記伝送用光ファイバの出射端面から出射する前記スーパーコンティニウム光を制御することを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、伝送用光ファイバとして車両用灯具に適した光ファイバを用いることができる。また、伝送用光ファイバに不具合が発生した場合であっても、当該伝送用光ファイバを容易に交換することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記光学系は、前記変換用光ファイバの出射端面から出射する前記スーパーコンティニウム光を制御することを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、伝送用光ファイバが不要となる。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の発明において、前記スーパーコンティニウム光のうち、予め定められた可視波長領域以外の光を除去する除去手段を備えており、前記光学系は、前記スーパーコンティニウム光のうち、前記除去手段によって予め定められた可視波長領域以外の光が除去された光を制御することを特徴とする。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、スーパーコンティニウム光のうち紫外線及び/又は赤外線が、車両用灯具構成部材(例えば、アウターレンズ、投影レンズ)及び/又はその周辺部材(例えば、ハウジング、エクステンション)に劣化等の影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、前記除去手段は、光学フィルタ又はダイクロイックミラーであることを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、請求項6と同様の効果を奏することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の発明において、前記スーパーコンティニウム光の少なくとも一部をインコヒーレント化するインコヒーレント化手段を備えており、前記光学系は、前記インコヒーレント化手段によって少なくとも一部がインコヒーレント化された前記スーパーコンティニウム光を制御することを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、レーザー光の特性があるスーパーコンティニウム光をインコヒーレント化できるため、アイセーフを実現できる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の発明において、前記光学系は、ロービーム用配光パターンが形成されるように、前記スーパーコンティニウム光源が出力する前記スーパーコンティニウム光を制御する光学系として構成されていることを特徴とする。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、演色性低下や色分離発生の要因となる蛍光体が省略された車両用灯具(すなわち、従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高く、かつ、色分離発生を抑制することができる車両用灯具)において、ロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の発明において、前記光学系は、ハイビーム用配光パターンが形成されるように、前記スーパーコンティニウム光源が出力する前記スーパーコンティニウム光を制御する光学系として構成されていることを特徴とする。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、演色性低下や色分離発生の要因となる蛍光体が省略された車両用灯具(すなわち、従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高く、かつ、色分離発生を抑制することができる車両用灯具)において、ハイビーム用配光パターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、演色性低下や色分離発生の要因となる蛍光体が省略された車両用灯具(すなわち、従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高く、かつ、色分離発生を抑制することができる車両用灯具)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態である車両用灯具10の縦断面図である。
図2】ハイビーム用配光パターンPHiの例である。
図3】(a)青色LD素子24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24の正面図、(b)側面図(断面図)である。
図4】白色LD光源が出力する光のスペクトルを表す図である。
図5】(a)白色LD光源の指向特性を表す図、(b)SC光源(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18b)の指向特性を表す図である。
図6】(a)〜(e)それぞれ、型名「WhiteLase Micro」、「SC400」、「SCUV-3」、「SC450」、「SC480」が出力するSC光のスペクトルの例である。
図7】(a)(b)可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12の構成例である。
図8】可視波長領域を含むSC光のスペクトル例である。
図9】可視波長領域を含むSC光のスペクトル例である。
図10】可視波長領域を含むSC光のスペクトル例である。
図11】可視波長領域を含むSC光のスペクトル例である。
図12】可視波長領域を含むSC光のスペクトル例である。
図13】可視波長領域を含むSC光のスペクトル例である。
図14】(a)テーパーファイバの例、(b)可視波長領域を含むSC光のスペクトル例である。
図15】可視波長領域を含むSC光のスペクトル例である。
図16】除去手段14の内部構造を説明するための断面図である。
図17】伝送用光ファイバ18の例である。
図18】(a)(b)インコヒーレント化手段の例である。
図19】(a)〜(c)インコヒーレント化手段の例である。
図20】車両用灯具10を制御するシステム構成例である。
図21】車両用灯具10(ハイビーム用灯具ユニット16)の動作例を示すフローチャートである。
図22】特許文献1に記載の車両用灯具200の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態である車両用灯具10の縦断面図である。図2は、車両用灯具10により形成されるハイビーム用配光パターンPHiの例である。
【0035】
図1に示すように、車両用灯具10は、可視波長領域を含むスーパーコンティニウム光(以下、SC光と称する)を出力するスーパーコンティニウム光源12(以下、SC光源と称する)、SC光源12が出力するSC光のうち、予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光を除去(カット)する除去手段14、SC光源12が出力するSC光を制御する光学系16(例えば、ハイビーム用灯具ユニット)、SC光源12が出力するSC光をハイビーム用灯具ユニット16まで伝搬する伝送用光ファイバ18等を備えた車両用前照灯として構成されている。
【0036】
ハイビーム用灯具ユニット16は、伝送用光ファイバ18の出射端面18bを光源とする灯具ユニットで、投影レンズ22等を備えており、ハウジング40とこれに組み付けられたアウターレンズ42との間に構成された灯室44内に配置されている。なお、SC光源12も灯室44内に配置してもよい。
【0037】
伝送用光ファイバ18は、その出射端部がランプ筐体48に取り付けられたスリーブ46に形成された光ファイバ挿入穴に挿入され、かつ、その出射端面18bが投影レンズ22の後側焦点近傍に位置した状態で当該スリーブ46に保持されている。伝送用光ファイバ18の入射端部は、除去手段14に着脱自在に装着されている。
【0038】
投影レンズ22は、例えば、前方側表面が凸レンズ面、後方側表面が平面の凸レンズで、レンズホルダ50によって保持された状態で、伝送用光ファイバ18の出射端面18bの前方に配置されている。なお、符号52が示すのは光軸調整機構であり、符号54が示すのは電源・信号線であり、符号56が示すのはエクステンションであり、符号58が示すのは受光センサであり、符号60が示すのは受光センサ信号線であり、符号62が示すのは放熱板である。
【0039】
SC光源12が出力する可視波長領域を含むSC光は、除去手段14によって予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光が除去された後、集光レンズ20(図16参照)で集光され、伝送用光ファイバ18の入射端面18aから当該伝送用光ファイバ18内部に導入されて出射端面18bまで伝搬されて当該出射端面18bから出射し、投影レンズ22を透過して前方に照射されて図2に示すハイビーム用配光パターンPHiを形成する。
【0040】
スーパーコンティニウムとは、超短光パルス等、例えば、パルスレーザー光源が出力するレーザー光(パルスレーザー光)又はCW(Continuous Wave)レーザー光源が出力するレーザー光(CWレーザー光。連続光とも称される)を非線形光学材料に入射した際、自己位相変調、相互位相変調、4光波混合、ラマン散乱等の非線形光学効果により、そのスペクトルが連続的に急激に広がる現象のことである。この現象によりスペクトルが広がった光は、SC光と呼ばれる。SC光は多波長コヒーレント光であるため、スペックルノイズが非常に弱く(肉眼では感じない)、スッペックルノイズ対策を施さなくても照明用光源に用いることができる。
【0041】
SC光源12(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18b)をハイビーム用灯具ユニット16等の車両用灯具の光源として用いることの利点は、次のとおりである。
【0042】
第1に、図3(a)、図3(b)に示すように、青色LD素子24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24と比べ、黄色蛍光体24b(波長変換部材)が不要となる。
【0043】
これは、青色LD素子24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24においては、青色LD素子24aからの青色レーザー光を受けた黄色蛍光体24b(波長変換部材)が、これを透過する青色レーザー光と青色レーザー光による発光(黄色光)との混色による白色光(疑似白色光)を放出するのに対して、SC光源12においては、当該SC光源12が出力するSC光(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光)が既に白色光であることによるものである。
【0044】
なお、図3(b)中、符号24cが示すのは集光レンズであり、符号24dが示すのは光ファイバであり、符号24eが示すのは黄色蛍光体24b、拡散部材24f及び光ファイバ24dの出射端部を保持するスリーブであり、符号24fが示すのは光ファイバ24dの出射端部から出射して黄色蛍光体24bに入射する青色LD素子24aからのレーザー光を拡散させる拡散部材である。
【0045】
第2に、青色LD光源24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24と比べ、演色性が向上する。
【0046】
これは、青色LD光源24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24においては、図4に示すように、そのスペクトルが2つのピーク及び当該2つのピーク間に形成される深い谷間を含むのに対して、SC光源12(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18b)においては、図6図8図15に示すように、そのスペクトルが太陽光に近い連続性を持つことによるものである。
【0047】
第3に、青色LD光源24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24と比べ、指向特性を狭くすることができる(その結果、より小さい投影レンズ22により多くの光を入光させることができる。つまり、投影レンズ22のさらなる小型化、ひいては車両用灯具10のさらなる小型化を実現できる)。
【0048】
これは、青色LD光源24aと黄色蛍光体24b(波長変換部材)とを組み合わせて構成される白色LD光源24においては、図5(a)に示すように、その指向特性がランバーシアンとなるのに対して、SC光源12(正確には、伝送用光ファイバ18の出射端面18b)においては、図5(b)に示すように、その指向特性を狭くすることができることによるものである。例えば、伝送用光ファイバ18としてNA=0.2の光ファイバを用いることで、θna=11.5°の指向特性とすることができる。NAを調整することで、指向特性をさらに狭くすることができる。
【0049】
可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12としては、例えば、Fianium社製のスーパーコンティニュアム白色光源 WhiteLaseシリーズ 型名「WhiteLase Micro」、「SC400」、「SCUV-3」、「SC450」、「SC480」等を用いることができる。
【0050】
これらは、いずれも、パルスレーザー光源(例えば、パルス幅:6ps, 繰り返し周波数:20-100MHz)及び光ファイバ等の非線形光学媒質を備えており、図6(a)〜図6(e)に示すように、可視波長領域を含むSC光を出力する(http://www.tokyoinst.co.jp/product_file/file/FI01_cat01_ja.pdf、http://forc-photonics.ru/data/files/sc-450-450-pp.pdf、及び、http://www.fianium.com/pdf/WhiteLase_SC480_BrightLase_v1.pdf参照)。図6(a)〜図6(e)は、それぞれ、型名「WhiteLase Micro」、「SC400」、「SCUV-3」、「SC450」、「SC480」が出力するSC光のスペクトルの例である。
【0051】
一般的に、可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源12は、図7(a)、図7(b)に示すように、パルスレーザー光源12a(又はCWレーザー光源)、パルスレーザー光源12aが出力するパルスレーザー光(又はCWレーザー光源が出力するCWレーザー光)を、SC光に変換して出力する非線形光学媒質12b等を備えている。図7(a)はU.S. Pat. No. 6097870に記載の可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源の例、図7(b)はU.S. Pat. No. 6611643に記載の可視波長領域を含むSC光を出力するSC光源の例である。図7(b)中の符号11が示すのは合焦光学系である。
【0052】
パルスレーザー光源12aとしては、例えば、モードロックレーザー光源(例えば、チタンサファイアレーザー光源)を用いることができる(October 1, 2000 / Vol. 25, No. 19 / OPTICS LETTERS、http://www.nlo.hw.ac.uk/node/8、及び、特開2002-82286参照)。また、ファイバレーザー光源(例えば、エルビウムドープファイバを用いたリング型レーザー光源)を用いることもできる(特開2009-169041参照)。また、Qスイッチレーザー光源等を用いることもできる(US. Pub. No. 2014153888参照)。
【0053】
CWレーザー光源としては、例えば、ファイバレーザー光源(例えば、イットリウムドープファイバ)を用いることができる(http://cdn.intechopen.com/pdfs-wm/26780.pdf参照)。
【0054】
非線形光学媒質12bとしては、パルスレーザー光源12aが出力するパルスレーザー光(又はCWレーザー光源が出力するCWレーザー光)を、SC光に変換して出力するように構成された変換用光ファイバ、例えば、微細構造ファイバ(microstructured optical fibre)、テーパーファイバ(tapered fiber)等を用いることができる。微細構造ファイバ12bは、フォトニック結晶ファイバ(PCF:photonic crystal fiber)、ホーリーファイバー(holey fiber)又は空孔アシスト型光ファイバ(hole-assisted fiber)として知られている。
【0055】
例えば、微細構造ファイバ12bとしては、U.S. Pat. No. 6097870に記載のもの(例えば、コア直径 : 0.5 - 7μm)を用いることができる。この場合、図8に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0056】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、US. Pub. No. 2014153888に記載のもの(例えば、コア直径:1 - 5μm)を用いることができる。この場合、図9に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0057】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、23 June 2008/Vol. 16, No. 13 / OPTICS EXPRESS 9671に記載のものを用いることができる。この場合、図10に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0058】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、http://cdn.intechopen.com/pdfs-wm/26780.pdfに記載のものを用いることができる。この場合、図11に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0059】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、http://www.osa-opn.org/home/articles/volume_23/issue_3/features/of-the-art_photonic_crystal_fiber/#.VIbBOMkorpIに記載のものを用いることができる。この場合、図12に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0060】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、特開2009-169041に記載のものを用いることができる。この場合、図13に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0061】
また例えば、微細構造ファイバ12bとしては、U.S. Pat. No. 6611643に記載のものを用いることができる。この場合、可視波長領域を含むSC光(図示せず)を出力することができる。
【0062】
また例えば、テーパーファイバ(tapered fiber)としては、October 1, 2000 / Vol. 25, No. 19 / OPTICS LETTERS 1415に記載のもの(例えば、コア直径:8.2μm、ウエスト直径:1.5 - 2.0μm。図14(a)参照)を用いることができる。この場合、図14(b)に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0063】
また例えば、非線形光学媒質としては、http://www.nlo.hw.ac.uk/node/8に記載のものを用いることができる。この場合、図15に示す可視波長領域を含むSC光を出力することができる。
【0064】
図16は、除去手段14の内部構造を説明するための断面図である。
【0065】
図16に示すように、除去手段14は、SC光のうち、予め定められた可視波長領域以外の光(例えば、図8中の符号A1、A2が示す領域)を除去する手段である。除去手段14が除去する予め定められた可視波長領域は、分光視感効率(又はCIE標準分光視感効率)を考慮すると、450 nm - 700 nmが好ましい。もちろん、これに限らず、除去手段14が除去する予め定められた可視波長領域の上限値及び下限値は、適宜増減してもよく、例えば、460 nm - 630 nmであってもよいし、それ以外であってもよい。
【0066】
除去手段14によれば、SC光のうち紫外線及び/又は赤外線が、車両用灯具10構成部材(例えば、アウターレンズ42、投影レンズ22)及び/又はその周辺部材(例えば、ハウジング40、エクステンション56)に劣化等の影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0067】
除去手段14は、SC光源12と伝送用光ファイバ18(入射端面18a)との間に配置されている。もちろん、これに限らず、除去手段14は、伝送用光ファイバ18の途中に配置されていてもよいし、伝送用光ファイバ18の出射端面18b側に配置されていてもよい。
【0068】
除去手段14は、例えば、SC光のうち、可視波長領域の下限近傍波長(例えば、450 nm)未満の光(例えば、図8中の領域A1参照)を除去する第1除去手段14a、SC光のうち、可視波長領域の上限近傍波長(例えば、700 nm)越えの光(例えば、図8中の領域A2参照)を除去する第2除去手段14bを含む。
【0069】
第1除去手段14aは、例えば、SC光源12が出力するSC光の光路上に配置され、可視波長領域の下限近傍波長(例えば、450 nm)未満の光(例えば、図8中の領域A1参照)をカットし、それ以上の光を通過させる光学フィルタである。もちろん、これに限らず、第1除去手段14aは、可視波長領域の下限近傍波長(例えば、450 nm)未満の光を側方(例えば、側方に配置された紫外光吸収材)に向けて反射し、かつ、それ未満の光を通過させるダイクロイックミラー(いずれも図示せず)であってもよい。
【0070】
第2除去手段14bは、例えば、第1除去手段14aを通過したSC光の光路上に配置され、可視波長領域の上限近傍波長(例えば、750 nm)越えの光(例えば、図8中の領域A2参照)を側方(例えば、側方に配置された赤外光吸収材14c)に向けて反射し、かつ、それ以下の光を通過させるダイクロイックミラーである。もちろん、これに限らず、第2除去手段14bは、可視波長領域の上限近傍波長(例えば、750 nm)越えの光をカットし、それ以上の光を通過させる光学フィルタ(図示せず)であってもよい。
【0071】
図17は、伝送用光ファイバ18の例である。
【0072】
図17(a)に示すように、伝送用光ファイバ18は、入射端面18aと入射端面18aから導入されるSC光が出射する出射端面18bとを含むコア18cと、コア18cの周囲を取り囲むクラッド18dと、を含む光ファイバで、クラッド18dの周囲は、被覆18eで覆われている。なお、コア18c及びクラッド18dの材質は、石英ガラスであってもよいし、合成樹脂であってもよいし、それ以外の材質であってもよい。
【0073】
伝送用光ファイバ18は、シングルモード光ファイバであってもよいし、マルチモード光ファイバであってもよいし、ステップインデックス型光ファイバであってもよいし、グレーデッドインデックス型光ファイバであってもよい。SC光のコヒーレンスを低下させるには、伝送用光ファイバ18としてマルチモード光ファイバを用いるのが望ましい。
【0074】
伝送用光ファイバ18の断面形状は、円形(図17(a)参照)であってもよいし、矩形(図17(b)参照)であってもよいし、それ以外の形状であってもよい。車両用灯具の光源としては、端面出射強度がトップハット型となる断面形状が矩形の光ファイバを用いるのが特に望ましい。
【0075】
伝送用光ファイバ18として車両用灯具10に適した光ファイバ(例えば、断面形状がコア直径100μm〜800μmの円形の光ファイバ、又は、断面形状がコア100μm×100μm〜200μm×400μmの矩形の光ファイバ)を用いることができる。また、伝送用光ファイバ18はSC光源12に対して着脱自在であるため、当該伝送用光ファイバ18に不具合が発生した場合であっても、当該伝送用光ファイバ18を容易に交換することができる。
【0076】
伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光は、次のインコヒーレント化手段により、そのコヒーレンス性を低減できる。インコヒーレント化手段によれば、レーザー光の特性があるSC光をインコヒーレント化できるため、アイセーフを実現できる。なお、インコヒーレント化手段は省略してもよい。
【0077】
例えば、伝送用光ファイバ18としてマルチモード光ファイバを用いることで、空間的コヒーレンス性を低減できる(時間的コヒーレンス性も若干低減できる)。これは、SC光が伝搬される間に強度分布が均一化されることによるものである。また、伝送用光ファイバ18(マルチモード光ファイバ)を長くする、伝送用光ファイバ18(マルチモード光ファイバ)に対して捻り(キンク)を加える、又は、伝送用光ファイバ18(マルチモード光ファイバ)のループ数を増やすことで、空間的コヒーレンス性をさらに低減できる。特に、伝送用光ファイバ18として断面形状が矩形の光ファイバ(図17(b)参照)を用いることで、断面形状が円形の光ファイバより効果的に空間的コヒーレンス性を低減できる。
【0078】
また、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光は、伝送用光ファイバ18に対して高周波振動を加えることで、そのコヒーレンス性を低減できる。
【0079】
例えば、図18(a)に示すように、ループした伝送用光ファイバ18に対してその径方向又は円周方向に振動子26により1.2MHz程度の高周波振動を加えることで、空間的コヒーレンス性や時間的コヒーレンス性を低減できる。これは、伝送用光ファイバ18の屈折率が経時的に変動することによるものである。
【0080】
また、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光は、図18(b)に示すように、伝送用光ファイバ18の途中に相互に不等長の複数の分岐光ファイバを並列に配置することで、時間的なコヒーレンス性を低下できる。この場合、伝送用光ファイバ18としてマルチモード光ファイバを用いることで、空間的コヒーレンス性を同時に低減できる。
【0081】
また、伝送用光ファイバ18の出射端面18bから出射するSC光は、インコヒーレント化素子28により、そのコヒーレンス性を低減できる。
【0082】
例えば、図19(a)に示すように、伝送用光ファイバ18の出射端面18b側にインコヒーレント化素子28を配置することで、コヒーレンス性を低減できる。
【0083】
インコヒーレント化素子28としては、例えば、散乱剤が分散した光透性部材を用いることができる。この場合、空間的コヒーレンス性を低減できる。インコヒーレント化素子として、光透性のガラスに空孔径1μm〜5μm程度の空孔を分散した回折散乱板や、光透性の低屈折ガラス(n=1.4以下)に粒径1μm〜5μm程度の光透性の高屈折材である炭化ケイ素(SiC)、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミ(AlN)、酸化チタン(TiO2)等を分散した回折散乱板を用いることで、狭い指向特性を損なわずにインコヒーレント性を低減できる。粒径が1μm〜5μmであれば、レイリー散乱のように広く拡散せず、前方散乱するため、狭い指向特性を保持できる(図19(b)中のθna+α参照)。なお、図19(b)中、θnaは、インコヒーレント化素子28を用いない場合の指向特性を表している。
【0084】
また、インコヒーレント化素子28としては、グレーチングセルアレイ等の回折光学素子(DOE)やホログラム光学素子(HOE)を用いることもできる。
【0085】
また、インコヒーレント化素子28としては、紫外線で励起される蛍光体(青、青緑、緑、黄色、橙、赤)を光透性の樹脂、ガラス又は結晶体からなる基板躯体に分散させた蛍光散乱板を用いることもできる。蛍光体に基板躯体と異なる屈折率の散乱体を加えてもよい。この蛍光散乱板を用いる場合、第1除去手段14aを省略することができる。なお、蛍光体の量はSC光の可視光スペクトルが太陽光の可視光スペクトルに近似するように加えるのが望ましい。
【0086】
次に、車両用灯具10を制御するシステム構成例について図20を参照しながら説明する。
【0087】
図20は、車両用灯具10を制御するシステム構成例である。
【0088】
図20に示すように、本システムは、その全体の動作を司る演算制御装置30(CPU)を備えている。演算制御装置30には、バスを介して、ヘッドランプスイッチ32、受光センサ58、SC光源12、演算制御装置30が実行する各種プログラムが格納されたプログラム格納部(図示せず)、作業領域等として用いられるRAM(図示せず)等が接続されている。受光センサ58は、SC光の出力状態モニタや出力異常の検知をするために用いられる。これにより、SC光の出力調整や出力異常時のSC光の停止ができる。また、伝送用光フィアバ18の異常検知もできる。
【0089】
次に、上記構成の車両用灯具10(ハイビーム用灯具ユニット16)の動作例について、図21を参照しながら説明する。
【0090】
図21は、車両用灯具10(ハイビーム用灯具ユニット16)の動作例を示すフローチャートである。
【0091】
以下の処理は、演算制御装置30がプログラム格納部からRAM等に読み込まれた所定プログラムを実行することにより実現される。
【0092】
まず、ヘッドランプスイッチ32がオンされると(ステップS10)、受光センサ58から情報の読み込み及び記録情報の判別が実行され(ステップS12)、次に、SC光源12の故障判断が実行され(ステップS14)、その結果、正常と判定された場合(ステップS14:「正常」)、SC光源12がSC光を出力するように演算制御装置30によって制御される(ステップS16)。これとともに、SC光源12が正常にSC光を出力している旨がインパネ等に設けられたHLインジケータ点灯等の形態で報知される。
【0093】
SC光源12が出力する可視波長領域を含むSC光は、除去手段14によって予め定められた可視波長領域(例えば、450 nm - 700 nm)以外の光が除去された後、集光レンズ20で集光され、伝送用光ファイバ18の入射端面18aから当該伝送用光ファイバ18内部に導入されて出射端面18bまで伝搬されて当該出射端面18bから出射し、インコヒーレント化手段によって少なくとも一部がインコヒーレント化された後、投影レンズ22を透過して前方に照射されて図2(a)に示すハイビーム用配光パターンPHiを形成する。なお、SC光のインコヒーレント化は、出射端面18bから出射する前に行われてもよい。
【0094】
一方、ステップS14で故障と判定された場合(ステップS14:「故障」)、SC光源12がSC光を出力しないように演算制御装置30によって制御される(ステップS20)。これとともに、異常の記録及びSC光源12が故障した旨がインパネ等に設けられた警告灯点灯等の形態で報知される。
【0095】
以上のステップS12〜S16の処理は、ヘッドランプスイッチ32がオフ又はステップS14で故障と判定されるまで繰り返し実行される。
【0096】
本実施形態によれば、演色性低下や色分離発生の要因となる蛍光体(波長変換部材)が省略された車両用灯具10(すなわち、従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高く、かつ、色分離発生を抑制することができる車両用灯具)を提供することができる。
【0097】
蛍光体を省略することができるのは、SC光源12が出力するSC光が既に白色光であることによるものである。
【0098】
従来のLD等の半導体発光素子と蛍光体(波長変換部材)とを組み合わせた白色光源より演色性が高くなるのは、SC光のスペクトルが太陽光に近い連続性を持つことによるものである。
【0099】
色分離発生を抑制することができるのは、蛍光体を用いていないため、SC光の色が角度に応じて変化しない(又はほとんど変化しない)ことによるものである。
【0100】
次に、変形例について説明する。
【0101】
上記実施形態では、本発明をいわゆるダイレクトプロジェクション型(直射型とも称される)のハイビーム用灯具ユニットを用いた車両用前照灯に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0102】
すなわち、本発明は、ダイレクトプロジェクション型のロービーム用灯具ユニットを用いた車両用前照灯、プロジェクタ型のハイビーム用灯具ユニット(又はロービーム用灯具ユニット)を用いた車両用前照灯、リフレクタ型のハイビーム用灯具ユニット(又はロービーム用灯具ユニット)を用いた車両用前照灯、カットオフライン形成用の反射面を含むレンズ体(例えば、特開2003-317515参照)を用いた車両用前照灯、その他各種の車両用灯具(車両用前照灯等の外部照明装置、ルームランプ等の室内照明装置、クリアランスランプ等の信号−標識装置を含む)に広く適用することができる。
【0103】
また、上記実施形態では、伝送用光ファイバ18を用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0104】
例えば、伝送用光ファイバ18を省略し、変換用光ファイバ12b(非線形光学媒質)の少なくとも一部(例えば、出射端部側)を伝送用光ファイバ18として用いてもよい。このようにすれば、伝送用光ファイバ18が不要となる。
【0105】
上記実施形態及び各変形例で示した各数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができる。
【0106】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0107】
10…車両用灯具、12…スーパーコンティニウム光源、12a…パルスレーザー光源、12b…非線形光学媒質(微細構造ファイバ、変換用光ファイバ)、14、14a、14b…除去手段、14c…赤外光吸収材、16…光学系(ハイビーム用灯具ユニット)、18…伝送用光ファイバ、20…集光レンズ、22…投影レンズ、26…振動子、28…インコヒーレント化素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16
図17
図18
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図22