(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持体の一部に前記水分吸着層を透視する透明な発色窓部を設け、前記水分吸着層には水溶性の発色剤が吸着され、前記水分吸着層が吸着した水分の量に応じて発色する度合いを前記発色窓部から視認して発汗量を測定可能に設けられた請求項1乃至3のいずれか記載の発汗量測定用パッチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている発汗量測定装置は、装置が大きく高価である。このため、各種の作業や運動の際に、人に装着して作業現場等で容易に利用できるものではない。また、特許文献2の水分蒸散量測定パッチは、目視により簡易的に検知するものであり、熱中症の発生を事前に察知して未然に防止する機能は有していない。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、軽量で簡単に装着することができ、発汗量を電気的に正確に測定することができる発汗量測定用パッチと発汗量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
被験者の身体の測定対象面に貼付されるフィルムと、前記フィルムに形成され水分が通過する開口部と、前記フィルムの前記
被験者の身体と反対側の面に取り付けられ前記開口部を覆う水分吸着層と
を有した汗吸着部を備え、前記
汗吸着部を覆う支持体が設けられ、
前記支持体の前記フィルム側には、前記水分吸着層が吸着した水分の量を電気的に測定するための一対の電極が設けられている発汗量測定用パッチである。
【0009】
前記電極の少なくとも一方が前記支持体と一体に設けられて電極部が形成され、前記汗吸着部が前記電極部に対して絶縁されて着脱自在に形成されている。
【0010】
前記一対の電極は、互いに対面する側縁部に凹凸が形成されて、互いに対面する側縁部の長さが長くなるように形成されている。また、前記フィルムの、前記水分吸着層と反対側の面には、前記開口部を覆う水分透過層が設けられているとよい。
【0011】
前記支持体の一部に、前記水分吸着層を透視する透明な発色窓部を設け、前記水分吸着層には水溶性の発色剤が吸着され、前記水分吸着層が吸着した水分の量に応じて発色する度合いを前記発色窓部から視認して発汗量を測定する構成を加えてもよい。
【0012】
また本発明は、
被験者の身体の測定対象面に貼付されるフィルムと、前記フィルムに形成され水分が通過する開口部と、前記フィルムの前記
被験者の身体と反対側の面に取り付けられ前記開口部を覆う水分吸着層と
を有した汗吸着部を備え、前記
汗吸着部を覆う支持体が設けられ、
前記支持体の前記フィルム側には、前記水分吸着層が吸着した水分の量を電気的に測定するための一対の電極
が設けられ、前記電極の少なくとも一方が前記支持体と一体に設けられて電極部が形成され、前記汗吸着部が前記電極部に対して絶縁されて着脱自在に形成されている発汗量測定用パッチが設けられ、前記発汗量測定用パッチ
の前記電極部が、発汗量を測定する測定部本体に電気的に接続され、前記一対の電極間の電気的な値を測定し演算して発汗量を測定する発汗量測定装置である。
【0013】
前記発汗量測定装置には、演算された発汗量を表示する表示手段が設けられ、前記表示手段は例えば液晶画面である。
【0014】
前記発汗量測定装置には、演算された発汗量が所定の値または所定の傾向を示したときに通報する警報手段を備えてもよい。
【0015】
前記発汗量測定装置はバンド部が設けられ、前記バンド部により被験者の身体の一部に装着可能である。
【0016】
前記発汗量測定装置には温度センサ及び脈拍センサが設けられてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の発汗量測定用パッチと発汗量測定装置は、軽量で簡単に装着することができ、発汗量等を電気的に正確に測定することができ、デジタル化と可視化を容易に図ることができる。さらに、測定した発汗量により熱中症の発生を事前に察知し、予防に役立つものである。発汗量測定用パッチはシート状で、薄くて小形、軽量であり、また柔らかいため曲面の測定も容易であり、被験者の身体の一部に違和感なく装着することができる。測定中は、被験者の行動が自由であり、任意の場所で行う各種の作業や運動の際の熱中症を予防することができる。また低コストであり、手軽に取り入れることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1〜
図5はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の発汗量測定装置10は、発汗量測定用パッチ12と、本体14と、これらを電気的に接続するコード16と、本体14に取り付けられ本体14を身体に装着するバンド部18から成る。バンド部18は、ここでは被験者の手首に巻き回すものであり、発汗量測定装置10は腕時計形である。
【0020】
発汗量測定用パッチ12は、シート状の薄形で、長方形の角を丸めた形状に作られている。発汗量測定用パッチ12の構造は、
図2〜
図5に示すように、被験者の皮膚に直接貼り付ける汗吸着部20と、汗吸着部20に吸着された汗の量を電気的に測定する電極部22を、積層して組み合せて設けられている。
【0021】
汗吸着部20は、
図3(b)、
図4(b)に示すように、支持体となるフィルム24が設けられている。フィルム24の素材は、柔軟性を有し強靭な樹脂フィルムで作られている。例えば、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ナイロン、ウレタン等が使用される。厚さは、20〜100μmであり、好ましくは50〜75μmである。フィルム24は、長方形の角を丸めた形状にカットされている。フィルム24の中心には、所定形状の開口部26が形成されている。フィルム24の一方の側面24aには、粘着剤28が均一に取り付けられている。粘着剤28は、例えばアクリル系粘着剤である。
【0022】
さらに、フィルム24の裏面側である側面24aには、フィルム24の開口部26を覆う大きさの水分透過層36が設けられている。水分透過層36は、開口部26よりも少し大きい任意の形状に形成され、開口部26の周縁部の粘着剤28の粘着力により取り付けられている。水分透過層36は不織布等で作られている。水分透過層36は、測定する汗の状態に合わせて、親水性か疎水性かを選択する。例えば発汗が液体である温熱性発汗を測定する場合は、親水性の不織布を使用し、発汗が気体状態である精神性発汗を測定する場合は、疎水性の不織布を使用する。フィルム24の側面24aの粘着剤28には、使用前に他の部材に粘着しないように剥離紙38が粘着されて取り付けられている。
【0023】
フィルム24の、側面24aと反対側の側面24bには、水分吸着層30が設けられている。水分吸着層30は、ろ紙や和紙、レーヨンその他のセルロース系の親水性材料のシート材を所定形状に裁断したものである。ここでは、フィルム24の開口部26を覆う大きさであり、例えばフィルム24の長手方向に沿う一方向に長い矩形である。
【0024】
フィルム24の側面24bには、水分吸着層30を覆って両面粘着シート32が取り付けられている。両面粘着シート32は、粘着性のある基材がシート状に成形されたものでもよく、また樹脂シート等の両面に粘着剤が塗布されたものでもよい。両面粘着シート32の粘着力により、水分吸着層30はフィルム24に重ねられた状態で取り付けられる。両面粘着シート32の、フィルム24と反対側の面には、電極部22の大きさの開口が形成された表面被覆シート35が貼付され、開口部には両面粘着シート32が使用前に他の部材に粘着しないように剥離紙34が粘着されて取り付けられている。
【0025】
剥離紙34,38が取り付けられた発汗量測定用パッチ12は、図示しない樹脂フィルム等の袋に包装され、密封されている。これによって空気中の湿度による変質を防ぐことができる。なお、汗吸着部20は、使用後に破棄する。
【0026】
汗吸着部20の両面粘着シート32に重ねられて取り付けられる電極部22は、
図3(a)、
図4(a)に示すように、支持体40が設けられている。支持体40は、樹脂板等のフレキシブルなシートやフィルム状の板材でも良く、適宜の強度と柔軟性があれば良いもので、吸汗部20よりも一回り小さい形状にカットされたものであり、素材は適宜に選択可能である。支持体40の裏面側には、一対の電極42a,42bが設けられている。電極42a,42bは、その間の静電容量を基に発汗量を測定するものであり、発汗量が増加するにつれて静電容量が小さくなることを利用したものである。
【0027】
電極42a,42bは、
図2〜
図4に示すように、支持体40の長手方向に沿う一方向に長い幅3mm〜5mmの矩形の棒状に形成され、互いに平行に並べられて設けられている。電極42a,42bの厚さは、0.05mm〜3.0mmである。一対の電極42a,42bの材質は、各対の素材を「/」で区切ると、Cu/Cu、Cu/Zn、Al/Al、ステンレス/ステンレス、C(炭素粉末)/C、Au/Au、Ag/Ag等である。C/Cの場合は、コストが安価であり、またCを含んだ塗料を用いてパネルなどに印刷することにより、自由な形状を容易に得ることができる。
【0028】
電極42a,42bの端部は、図示しない変換回路が設けられた回路部48に接続され、回路部48の回路から配線が支持体40の長手方向の一方の端部40aに延出して、コネクタ44内に接続され、コード16に繋がっている。電子回路部48の変換回路は、電極42a,42bにより検出した静電容量を電気的データとして送信するものである。電極部22は、コード16や本体14とともに繰り返し使用することができる。
【0029】
支持体40及び電極42a,42bは、絶縁性の樹脂フィルム43に接着剤45で接着されて固定され、樹脂フィルム43により電極42a,42bは支持体40と一体に設けられている。
【0030】
コード16の両端部は、
図1に示すようにコネクタ44,46が取り付けられて、コネクタ44,46を、発汗量測定用パッチ12または本体14と着脱式に形成してもよい。本体14には、回路部48から送られてくるデータを演算する図示しない演算手段、警報手段、電池などを搭載するケース50が設けられ、ケース50の表面には測定値を表示する表示手段である液晶画面52が設けられている。
【0031】
なお、本体14を手首に取り付けるバンド部18に、感温素子による温度センサ54と光センサによる脈拍センサ56が設けられ、体温と脈拍を測定して発汗量とともに身体の状態の傾向を察知するものでもよい。また、発汗量と体温、脈拍数の変化に基づいて異常な発汗状態、例えば熱中症に起因する発汗を検知するようにしてもよい。これは、例えば体温が38℃以上、発汗量の増加が減少するか停止する傾向、脈拍数の上昇が上限で停止する傾向の3つの条件を満たしたときに、異常な発汗状態を通報するように条件設定する。
【0032】
さらに本体14に警報手段を設け、音や振動を出して警報を発するようにするとよい。また、被験者の体温が38℃を検知し、かつ脈拍数の上昇が上限で変化しなくなると、警報手段が警報音や振動を発するとともに、液晶画面52は体温と脈拍の数値を点滅させ、さらに発汗量の増加が一定時間停止すると、警報手段はさらに長い音や振動を発するとともに液晶画面52は体温と脈拍と発汗量の数値を点滅させて注意を促すようにしてもよい。特に、工事現場等の騒音のある環境では、振動による警報が有効であり、液晶画面52による文字表示とともに具体的な警報を発することも有効である。
【0033】
次に、この実施形態の発汗量測定装置10の使用方法について説明する。まず、汗吸着部20から剥離紙34をはがし、表面被覆シート35の開口部の両面粘着シート32を露出させ、電極部22の樹脂フィルム43側を表面被覆シート35の開口部に合わせて貼り付けて、
図5に示すように発汗量測定用パッチ12を作る。そして発汗量測定用パッチ12を、コード16を介して本体14に接続し、本体14をバンド部18により被験者の手首に取り付ける。さらに発汗量測定用パッチ12の汗吸着部20から剥離紙38をはがし、粘着剤28を露出させ、被験者の皮膚、例えば腕の皮膚に発汗量測定用パッチ12を貼り付ける。このとき、発汗量測定用パッチ12を貼り付ける前に、腕の汗等の水分を予めふき取っておく。貼付後、その状態で所定時間放置し発汗量の測定を行う。測定時間は、数分〜24時間であり、例えば3分間でもよい。
【0034】
この間に発生する腕の汗を水分透過層36がとらえ、その水分はフィルム24の開口部26を通過して水分吸着層30に吸着される。水分吸着層30に吸着される汗の量が増加すると、電極42a,42bの静電容量が変化し演算手段により水分吸着層30に吸着される発汗量を演算推定する。測定水分の範囲は、例えば0〜200μlであり、全身温熱性発汗量に換算すると0〜2000mlまで測定可能である。発汗量の推定と同時に、温度センサ54で体温を測定し、脈拍センサ56で脈拍数を測定する。演算された発汗量と体温、脈拍数は液晶画面52に表示される。また、発汗量と体温、脈拍数の変化に基づいて異常な発汗状態、例えば熱中症に起因する発汗を検知したとき、異常な発汗状態を通報するように警報手段を作動させる。また、発汗量、体温、脈拍数を、通信モジュールで監視センターや管理者、家族等に送信することにより、監視センターで管理可能にしてもよい。また、被験者の携帯用端末機器等に送信することにより、データの管理やグラフ化を行い、自分でチェックしてもよい。
【0035】
この実施形態の発汗量測定装置10と発汗量測定用パッチ12によれば、軽量で簡単に装着することができ、発汗量を電気的に正確に測定することができる。発汗量測定装置10は、小形で軽量なため携帯可能であり、適用範囲を広くすることができる。各種の作業や運動の支障とならず、あらゆる状況下での作業や運動の際の発汗量を連続的に測定して熱中症の発生を事前に察知して未然に防止することができる。例えば、工事現場の作業員や、高温環境下での運転員や保守作業員の熱中症予防管理を容易に行うことができる。発汗量測定用パッチ12は、皮膚に直接貼着することにより発汗量を確実に定量することが可能であり、低コストで、手軽に測定することができる。また、水分吸着層30に吸着される汗により変化する静電容量に基づいて電気的に発汗量を検知するため、正確に測定することができる。体温、脈拍数、及び発汗量の変化に基づいて人の異常な発汗状態を監視することができるため、多くの生体値変化の検出が必要な症例(例えば熱中症)でも、事前に発生を察知することができる。しかも、身体を傷つけることがなく、非侵襲によって発汗量を測定することができる。
【0036】
水分吸着層30には親水性の材料を使用しているため、発汗による含水量が簡単に飽和せず、多量の水分を吸着することができる。長時間の作業や運動の際にも、多量の発汗を測定することができる。
【0037】
また、気体状の微量な精神性発汗を測定することもできるので、ストレス・興奮・痛み等の精神的な刺激を数量化することが可能となる。例えば、発汗量測定装置10を装着して、自動車運転や日常の作業、危険作業などに従事するときに、発汗量を定量することによりストレスの度合いを数値化することが可能となる。さらに、発汗量測定装置10を装着して種々の作業や生活等個々の行動の、所定の単位当たりの発汗量を調べることにより、どの作業や生活等からどれだけの精神的ストレスを受けているか容易に分析することが可能になる。その他、長時間の積算水分量を測定することもできる。
【0038】
発汗量測定装置10と発汗量測定用パッチ12は、医療機関で、治療や検査の時に感じる患者の痛みや不安から生じるストレスを、治療中の長時間連続的に測定することができる。これにより例えば、学校や職場での生徒や社員間の人間関係、いじめによるストレス等を数値化することが可能であり、また一般の人が自分の心の状態をセルフチェックすることが可能となるので、QOL(生活の質)向上に役立つ。また睡眠時の精神性発汗量は覚醒時に比較して低くなることを利用して、熟睡の度合いを測定することもできる。これにより、被介護者、入院患者の熟睡状況を簡単に確認することができる。その他、自律神経失調症や睡眠時無呼吸症候群等、睡眠障害が存在する疾患の治療に用いることができる。
【0039】
さらに、精神性発汗の他に、不感蒸散(TEWL)を測定して皮膚のバリア機能、スキンケアの効果、保湿力、肌荒れのチェックを行うことができる。また、手足や背中、腹部等全身の温熱性発汗を測定して、不汗症や、寝汗等のチェックを行うことができる。これは、皮膚科の医師や美容の専門家による診断に使用でき、また、一般の人が自分の皮膚の状態を自宅や職場などいつでも定量測定することができる。
【0040】
発汗量測定用パッチ12は、薄形であり、皮膚に貼着した状態で違和感がなく、被験者の動作や心理に影響を与えることがなく快適に測定することができる。汗吸着部20と電極部22が別体に設けられ、測定時に簡単に貼り合わせて組み立てることができ、測定後は、汗を吸着した汗吸着部20のみを取り換えて、常に新しい汗吸着部20を用いて測定することができる。電極部22は、繰り返し使用することができ、使い捨てではないので環境に与える影響が少ないものとなり、またコストを抑えることができる。
【0041】
なお、この実施形態の発汗量測定装置10と発汗量測定用パッチ12は、電極42a,42bは静電容量ではなく、電気抵抗又は電流値、電圧値等から発汗量を演算するものでもよい。これは、発汗量が増加するにつれて電気抵抗と電圧が小さくなり、電流が大きくなることを利用するものである。電気抵抗又は電流値等から発汗量を演算する場合は、電極42a,42bと、水分吸着層30の間に位置する樹脂フィルム43と両面粘着シート32が不要であり、汗吸着部20と電極部22を貼り合わせる際に取り除くことで通電を確保して測定することができる。また、水分吸着層30を挟んで電極42a,42bを積層する構造にしてもよく、これにより測定する静電容量が安定化するものである。この時、一方の電極42aをコード16側に固定して繰り返し使用し、他方の電極42bを水分吸着層30に取り付けて使用後に廃棄するものでもよい。
【0042】
次に
発汗量測定装置の他の実施形態について
図6に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の発汗量測定装置58の発汗量測定用パッチ60は、第一実施形態の汗吸着部20と電極部22が一体となったものである。発汗量測定用パッチ60の支持体となるフィルム24が設けられ、フィルム24の中心には、開口部26が形成されている。フィルム24の一方の側面24aには、粘着剤28が均一に取り付けられている。
【0043】
フィルム24の裏面側である側面24aには、フィルム24の開口部26を覆う大きさの水分透過層36が設けられ、開口部26の周縁部の粘着剤28の粘着力により取り付けられている。また、フィルム24の側面24aの粘着剤28には、剥離紙38が粘着されて取り付けられている。
【0044】
フィルム24の、側面24aと反対側の側面24bには、水分吸着層30が設けられている。さらにフィルム24の側面24bには、水分吸着層30を覆って両面粘着シート32が取り付けられている。両面粘着シート32の粘着力により、水分吸着層30はフィルム24に重ねられた状態で取り付けられる。
【0045】
両面粘着シート32の、フィルム24と反対側の面の中央部分に、一対の電極62a,62bが接着されて設けられている。電極62a,62bは、静電容量を測定するものである。電極62a,62bの端部は、回路部48の図示しない変換回路に接続され、コネクタ44を介してコード16に接続されている。両面粘着シート32の、フィルム24と反対側の面には、一対の電極62a,62bを覆って支持体64が貼り付けられている。支持体64は、フィルム24とほぼ同じ形状である。
【0046】
なお、発汗量測定用パッチ60は、使用後に破棄する使い捨てタイプであり、コストを考慮すると電極62a,62bは、印刷により形成可能な上記C/Cによる構成が好ましい。
【0047】
次に、この実施形態の発汗量測定装置58の使用方法について説明する。上記実施形態と同様に、発汗量測定用パッチ60を、コード16を介して本体14に接続し、本体14をバンド部18により被験者の手首に取り付ける。これとともに、発汗量測定用パッチ60の剥離紙38をはがし、被験者の皮膚に貼り付ける。貼付後、その状態で所定時間放置し発汗量の測定を行う。これにより、測定期間中に発生する腕の局所発汗を水分透過層36がとらえ、その水分はフィルム24の開口部26を通過して水分吸着層30に吸着される。水分吸着層30に吸着される汗の量が増加すると、電極62a,62b間の静電容量が変化し、演算手段により水分吸着層30に吸着される発汗量を演算推定する。
【0048】
この実施形態の発汗量測定装置58と発汗量測定用パッチ60によれば、上記実施形態と同様の効果を有するものである。発汗量測定用パッチ60は汗吸着部20と電極部22に分かれていないため、使用する際に組み立てる手間がかからず、簡単である。また、電極部22に設けられていた樹脂フィルム43を省くことができ、両面粘着シート32を絶縁体として兼用することができる。
【0049】
次に、この発明の
他の実施形態について
図7に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の発汗量測定装置67の発汗量測定用パッチ68は、一対の電極70a,70bの静電容量から発汗量を測定するものであり、
図7に示すように、支持体40の長手方向に沿う一方向に長い形状に形成され、互いに平行に並べられて設けられている。電極70a,70bは、互いに対面する側縁部に凹凸が形成されてくし形に形成され、凹凸が互いに組み合わされて、互いに対面する側縁部が長く形成されている。なお、電極70a,70bの形状は自由に変更可能であり、これ以外に円形等でもよい。電極70a,70bの材料がC/Cの場合は、炭素を含んだ塗料でパネルなどに印刷することにより自由な形状を得ることができる。電極70a,70bの端部は、回路部48の図示しない変換回路に接続され、コネクタ44を介してコード16に接続されている。
【0050】
この実施形態の発汗量測定装置67と発汗量測定用パッチ68によれば、上記実施形態と同様の使用方法であり同様の効果を有するものである。電極70a,70bは、互いに対面する側縁部が長く形成されているため、より正確に発汗量を測定することができる。電極70a,70bは、静電容量以外に、電気抵抗又は電流値等から発汗量を演算するものでも使用することができる。
【0051】
次に、この発明の
さらに他の実施形態について
図8、
図9に基づいて説明する。なお、ここで、上記実施形態と同様の部材は同様の符号を付して説明を省略する。この実施形態の発汗量測定装置72の発汗量測定用パッチ74は、発汗量を発汗量測定用パッチ74の表面で容易に目視可能にするとともに、電気的な測定を行うものである。発汗量測定用パッチ74は、支持体となる支持体76が設けられ、支持体76は透明であり、長方形の角を丸めた形状に切断されている。支持体76の素材は自由に選択可能である。
【0052】
支持体76の表面76aには、所定の文字や絵柄が描かれた印刷部78が設けられている。印刷部78は、支持体76の中心に透明な発色窓部80が設けられている。発色窓部80の内側には支持体76が透過し、支持体76の裏面76bに設けられた後述する水分吸着層86が視認される。発色窓部80の形状は、支持体76の長手方向に沿う長い矩形である。発色窓部80の長手方向に沿う一方の側縁部には、発汗量を示す目盛82が印刷されている。
【0053】
支持体76の裏面76bには粘着剤84が均一に取り付けられている。そして、支持体76の裏面76bには、発色窓部80に対向する位置に水分吸着層86が粘着剤84により設けられている。水分透過層36は、水分吸着層30とろ紙や和紙、レーヨンその他のセルロース系の親水性材料のシート材を所定形状に裁断したものであり、白色等の薄い色である。水分吸着層86は発色窓部80の長手方向よりも長く、幅方向も発色窓部80より広い矩形に設けられている。水分吸着層86は、発色窓部80の目盛82の数値が小さい端部よりも所定長さに突出して設けられ、突出した部分は発色剤貯蔵部88となる。
【0054】
発色剤貯蔵部88には、発色剤90が吸着され乾燥されて取り付けられている。発色剤90は水溶性であり、顔料、染料から選ばれた1種または複数種類を混合し、目視判定に適した色から選ばれる。発色剤90には溶解促進剤が混合され、溶解促進剤により発色剤90の水分への溶解と水分吸着層86への浸透速度は著しく早くなる。溶解促進剤は、例えば親水性高分子材料や界面活性剤等である。
【0055】
水分吸着層86の、支持体76と反対側の面には、水分不透過性のフィルム92が水分吸着層86を覆って設けられている。フィルム92は水分吸着層86よりもわずかに大きいものである。水分吸着層86に連なる発色剤貯蔵部88は、フィルム92の端部92aから外側に突出し露出している。フィルム92は、例えばポリプロピレン等のフィルムである。フィルム92の、水分吸着層86と反対側の面には、粘着剤94が均一に塗布されている。
【0056】
支持体76の裏面76bには、水分透過層96が設けられている。水分透過層96は、支持体76よりも小さい形状で、少なくとも発色剤貯蔵部88の全体を覆う大きさである。水分透過層96の接着は、フィルム92に接する所は粘着剤94に、支持体76に接する所は粘着剤84により貼り付けられている。水分透過層96は、ポリエステル、ポリプロピレン等の疎水性の不織布または織布である。
【0057】
発汗量測定用パッチ74には、支持体76の裏面76bに、図示しない一対の電極が設けられている。一対の電極の形状は自由に設定可能であり、上記実施形態の矩形の棒状や、くし形、円形等である。一対の電極は静電容量から発汗量を測定するものであり、一対の電極と、水分吸着層86との間を絶縁する樹脂シート等が設けられている。一対の電極の端部は、図示しない変換回路に接続され、支持体76の一方の端部76cに延出しコネクタ44を介してコード16に接続されている。なお、測定は、静電容量ではなく、電気抵抗又は電流値等から発汗量を演算するものでもよく、この場合は水分吸着層86との間を絶縁する樹脂シートが不要であり、水分吸着層86に、一対の電極が接触するように設けられる。
【0058】
支持体76の裏面76bには、水分吸着層86やフィルム92、水分透過層96を覆って剥離紙98が貼り合わされている。剥離紙98が取り付けられた発汗量測定用パッチ74は、図示しない樹脂フィルム等の袋に包装され、密封されている。
【0059】
次に、この実施形態の発汗量測定装置72の使用方法について説明する。上記各実施形態と同様に、発汗量測定用パッチ74を、コード16を介して本体14に接続し、本体14をバンド部18により被験者の手首に取り付ける。発汗量測定用パッチ74の剥離紙98を剥がし、被験者の腕の皮膚に貼り付ける。貼付後、その状態で所定時間放置し発汗量の測定を行う。この間に発生する腕の汗を水分透過層96がとらえ、その水分はフィルム92の端部に露出する発色剤貯蔵部88に吸着される。発色剤貯蔵部88に吸着される汗の量が増加すると、発色剤90が汗に溶解し、発色剤90により染色された汗が水分吸着層86に浸み込む。汗の量が増えることに伴い、染色された汗は水分吸着層86の発色剤貯蔵部88と反対側の端部に向かって進出し、到達距離が長くなる。所定時間経過後、水分吸着層86の色の到達距離を発色窓部80から見て、目盛82と比較して発汗量を目視により測定する。発色窓部80からの目視による測定の測定時間、反応速度、測定範囲などは水分吸着層86の形状や面積、厚み等を適宜選択することによって任意に調整することができる。
【0060】
また、水分吸着層86に浸み込む汗の量が増加すると、一対の電極の静電容量が変化し演算手段により水分吸着層86に浸み込んだ発汗量を演算し推定する。
【0061】
この実施形態の発汗量測定装置72と発汗量測定用パッチ74によれば、上記実施形態と同様の効果を有するものである。発汗量を、目視による測定と、電気的測定との2種類の方法で行い、電気的測定部分を簡略化したり、目視及び電気的想定の両方を行うことにより、より正確に測定することもできる。目視による測定は発色の度合いを確認するもので見やすいため、作業中や運動中でも容易に発汗量を確認することができる。
【0062】
なお、本発明の発汗量測定装置と発汗量測定用パッチは上記各実施の形態に限定されるものではなく、被験者の手首以外の部位に取り付けるものでもよい。本体やバンド部、発汗量測定用パッチの形状は、取り付ける部位に合わせて大きさや形状等を適宜変更することが可能である。測定する対象は、温熱性発汗や精神性発汗の他に、皮膚蒸散水分等を測定することができる。人以外に、動物や植物の水分蒸散量を測定してもよい。1個の本体に、複数個の発汗量測定用パッチを接続可能とし、複数個所の測定を同時に行うものでもよい。コードと、発汗量測定用パッチ、本体の接続は、コネクタを設ける方法以外に、ハンダやクリップ等、自由に変更可能である。コードはコイルスプリングなどで作られて自由に伸縮したり屈曲したりするものでもよい。
【実施例】
【0063】
次に、この発明の発汗量測定装置の一実施例の測定結果について以下に説明する。この実施例では、電極を20mm×17mm、発汗量測定用パッチを30mm×30mmの大きさに形成し、発汗量測定用パッチの水分吸着層に、汗に相当する水分を注入することによる静電容量の変化によって、測定される周波数の変化を記録した。発汗量測定用パッチは、ヒトの前腕部に貼付し、実際の使用状態と同様とした。そして、貼付後、定期的に100μlの蒸留水を、マイクロシリンジを用いて発汗量測定用パッチの水分吸着層に注入し、検出される周波数を測定した。
【0064】
その結果、
図10に示すグラフように、水分の量が増加するに従い周波数が低下することが確認された。従って、ヒトの皮膚に貼付して貼付部分が発汗した場合も、同様に汗の吸着とともにその時点で検出される周波数が変化し、水分量と周波数の関係を式又はテーブルとして発汗量測定装置内に持っていることにより、周波数から発汗量を知ることができる。