(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記封入体の側縁には、前記シート部材の側縁が前記封入体の内方に折れ曲がっているものであって、前記冷媒が蒸発したときに前記封入体の内容積を増大させるように拡開する拡開部が形成されている、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の冷却部材。
前記放熱板の前記吸熱部には、前記接合部のうち前記放熱板と接合された接合部に接近する方向に延びる溝が形成されている請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の冷却部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によると、伝熱流体を封入するために、パイプには強度が必要とされていた。なぜならば、伝熱流体が発熱体から熱を受けて蒸発すると、伝熱流体の体積が増大し、パイプ内の圧力が高まるからである。パイプ内に伝熱流体を液密に封入し、且つ、比較的に強度の高いパイプを用いることは、製造コストの増大を招いていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、製造コストが低減された冷却部材、及び、これを用いた蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、冷却部材であって、シート部材が少なくとも1つの接合部において接合されてなる液密な封入体と、前記封入体内に封入された冷媒と、前記接合部のうち少なくとも1つの接合部において前記封入体の内面と液密に接合されており、且つ、前記封入体内に位置する吸熱部、及び前記封入体の外部に位置する放熱部を有する放熱板と、を備える。
【0007】
本発明によれば、冷媒が蒸発すると、シート部材が変形することにより封入体の内容積が増大する。これにより、封入体内の圧力が下がる。この結果、内容積が変化しない金属製の容器によって冷却部材を形成する場合に比べて、封入体内の耐圧性を低くすることができる。これにより、冷却部材の製造コストを低減することができる。
【0008】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
【0009】
前記シート部材は金属製シートを含むことが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、金属製のシートは熱伝導性が高いので、封入体の内部の熱を、封入体の外部へと速やかに移動させ、外部空間に熱を放散させることができる。
【0011】
前記シート部材は、前記金属製シートの表面に合成樹脂フィルムが積層されたラミネートフィルムであることが好ましい。
【0012】
上記の態様によれば、ラミネートフィルムを熱融着するという簡易な手法により、封入体を形成することができる。
【0013】
前記封入体の側縁には、前記シート部材の側縁が前記封入体の内方に折れ曲がっているものであって、前記冷媒が蒸発したときに前記封入体の内容積を増大させるように拡開する拡開部が形成されていることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、冷媒が蒸発して封入体内の圧力が上昇したときに、拡開部が拡開変形することにより、封入体内の圧力を一層低下させることができる。これにより、冷却部材の製造コストを一層低減させることができる。
【0015】
前記封入体内には、前記冷媒を吸収する吸収シートが配されていることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、吸収シート内に冷媒が吸収されて保持されるので、吸収シートが配された領域内において、冷媒を均一に配することができる。これにより、冷却部材の冷却効率にムラが生じることを抑制することができる。
【0017】
前記封入体内には板状のセパレータが配されており、前記セパレータには、前記接合部のうち前記放熱板と接合された接合部に接近する方向に延びる溝が形成されていることが好ましい。
【0018】
また、前記放熱板の前記吸熱部には、前記接合部のうち前記放熱板と接合された接合部に接近する方向に延びる溝が形成されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、蒸発した冷媒は、セパレータ又は放熱板に形成された溝内を流通することにより、放熱板と接続された接合部に接近するようになっている。放熱板と接合された接合部に接近した冷媒の蒸気は、放熱板の吸熱部と接触して熱を放熱板に伝達する。放熱板に伝達された熱は、吸熱部から速やかに放熱部へと伝導され、放熱部から冷却部材の外部へと放散される。このように本構成によれば、蒸発した冷媒は、溝内を流通した後、放熱板に接合された接合部の近傍において放熱板へと熱を伝達するので、熱は速やかに放熱部へと伝導した後、冷却部材の外部に熱を速やかに放散させることができる。
【0020】
また、本発明に係る蓄電モジュールは、冷却部材と、前記冷却部材が収容された筐体と、前記筐体内に収容されて、少なくとも外面の一部が前記冷却部材と接触する蓄電素子と、を備える。
【0021】
上記の構成によれば、蓄電素子で発生した熱は、蓄電素子の外面の一部と接触する冷却部材によって吸収される。冷却部材は液密に形成されており、冷媒は液密に形成された冷却部材の内部に封入されているので、蓄電モジュールの筐体を液密に構成する必要がない。この結果、蓄電素子の製造コストを低減させることができる。
【0022】
また、蓄電モジュールは、前記筐体にはスリットが形成されており、前記放熱部は前記スリットに挿通されて前記筐体の外部に露出していることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、筐体の外部に露出された放熱部から効率よく熱を放散させることができるので、蓄電素子の放熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、冷却部材又は蓄電素子の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、
図1ないし
図14を参照しつつ説明する。本実施形態に係る蓄電モジュール10は、筐体11と、筐体11の内部に収容された蓄電素子12と、筐体11の内部に収容されると共に蓄電素子12の外面の一部に接触する冷却部材13と、を備える。以下の説明においては、X方向を右方とし、Y方向を前方とし、Z方向を上方として説明する。また、同一形状をなす複数の部材については、一部の部材について符号を付し、他の部材については符号を省略することがある。
【0027】
(筐体11)
図1に示すように、筐体11は、全体として略直方体形状をなしている。
図2に示すように、筐体11は、上方に開口すると共に上方から見て略長方形状をなすロアケース14と、ロアケース14の上部に取り付けられるものであって、断面形状が略長方形状をなす角筒状のミドルケース15と、ミドルケース15の上端部に取り付けられてミドルケース15の上方を覆う略長方形状の板状をなすアッパーケース16と、を備える。ミドルケース15の下端縁は、ロアケース14の上端縁の形状に倣った形状を有しており、ミドルケース15の上端縁は、アッパーケース16の側縁に倣った形状を有している。
【0028】
ロアケース14、ミドルケース15、及びアッパーケース16は、それぞれ、合成樹脂、金属等、任意の材料により形成することができる。ロアケース14、ミドルケース15、及びアッパーケース16は、それぞれ異なる材料で形成されてもよく、また、同一の材料で形成される構成としてもよい。
【0029】
ロアケース14とミドルケース15とは、ロック部材と被ロック部材との係合構造、ねじ止め構造、接着材による接着等、公知の手法によって互いに組み付けることができる。同様に、ミドルケース15とアッパーケース16とは、ロック部材と被ロック部材との係合構造、ねじ止め構造、接着材による接着等、公知の手法によって互いに組み付けることができる。また、ロアケース14、ミドルケース15、及びアッパーケース16が金属からなる場合には、レーザー溶接、ロウ付け等の公知の手法により接合することができる。本実施形態においては、ロアケース14、ミドルケース15、及びアッパーケース16は、互いに液密でない状態で組み付けられている。なお、ロアケース14、ミドルケース15、及びアッパーケース16は、互いに液密に組み付けられていてもよい。
【0030】
図3に示すように、筐体11の下端部寄りの位置には、筐体11の前端部寄りの位置に、左右両方向に突出する一対の電力端子17が配されている。
図4及び
図5に示すように、電力端子17は金属板材からなる。電力端子17は、絶縁性の材料からなるグロメット18を介して、筐体11に組み付けられている。ロアケース14の上端縁と、ミドルケース15の下端縁には、グロメット18を取り付けるための取り付け凹部19がそれぞれ形成されている。
【0031】
図3に示すように、アッパーケース16の上面には、前後方向に延びる複数(本実施形態では5つ)のスリット20が、筐体11の内外を連通して設けられている。スリット20内には、後述する放熱部21が挿通されるようになっている。
【0032】
(蓄電素子12)
図5及び
図6に示すように、蓄電素子12は、一対の電池用ラミネートシート23の間に図示しない蓄電要素を挟んで、電池用ラミネートシート23の側縁を、熱融着等の公知の手法により液密に接合してなる。
図9に示すように、蓄電素子12の下端縁からは、金属箔状をなす正極端子24と、負極端子25とが、電池用ラミネートシート23の内面と液密状態で、電池用ラミネートシート23の内側から外側へと突出している。正極端子24と負極端子25とは前後方向に間隔を開けて並んで配されている。正極端子24及び負極端子25は、それぞれ、蓄電要素と電気的に接続されている。
【0033】
図7及び
図8に示すように、蓄電素子12は、左右方向に複数(本実施形態では6つ)並べて配されている。左右方向に隣り合う蓄電素子12は、一の正極端子24の隣に他の負極端子25が位置し、また、一の負極端子25の隣に他の正極端子24が位置するように配されている。隣り合って位置する正極端子24と負極端子25とは、互いに近づく方向に折り曲げられ、正極端子24と負極端子25とが上下方向に重ねられた状態でレーザー溶接、超音波用溶接、ロウ付け等の公知の手法により電気的に接続されている。これにより、複数の蓄電素子12は直列に接続されている。
【0034】
本実施形態においては、蓄電素子12として、例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池等の二次電池を用いてもよく、また、蓄電素子12としては、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタを用いてもよい。このように蓄電素子12としては、必要に応じて任意の蓄電素子12を適宜に選択できる。
【0035】
(冷却部材13)
図10に示すように、冷却部材13は、液密に形成された封入体26の内部に冷媒27が封入されてなる。封入体26内に封入される冷媒27の量は、必要に応じて適宜に選択できる。冷媒27は、例えば、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロケトン、フッ素不活性液体等を用いることができる。冷媒27は、絶縁性を有していてもよく、また、導電性を有していてもよい。冷却部材13の上下方向の高さ寸法は、蓄電素子12の上下方向の高さ寸法よりも大きく設定されている。
【0036】
(封入体26)
図11に示すように、封入体26は、略長方形状をなす第1ラミネートシート28(シート部材の一例)と、第1ラミネートシート28よりも前後方向にやや延長された拡開部39を有する略長方形状をなす第2ラミネートシート29(シート部材の一例)とを、接合部30において接着、溶着等の公知の手法により液密に接合してなる。
【0037】
第1ラミネートシート28、及び第2ラミネートシート29は、金属製シートの両面に、合成樹脂製のフィルムが積層されてなる。金属製シートを構成する金属としては、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。合成樹脂製のフィルムを構成する合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド等、必要に応じて任意の合成樹脂を適宜に選択できる。
【0038】
封入体26の上端縁に形成された接合部30Aにおいては、金属製の放熱板32が、第1ラミネートシート28の内面、及び第2ラミネートシート29の内面と、シール材31を介して液密に接合されている。図中、シール材31は放熱板32側に塗布されている構成とされているが、シール材31は第1ラミネートシート28の内面、及び第2ラミネートシート29の内面に塗布されている構成としてもよい。
【0039】
(放熱板32)
放熱板32は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス等の金属材料からなる。放熱板32は、封入体26の内部に位置する吸熱部33と、封入体26の外部に位置する放熱部21と、を備える。放熱部21は、放熱板32が、第1ラミネートシート28、及び第2ラミネートシート29と液密に接合された接合部30Aから上方に突出して形成されている。放熱板32の前後両側縁と、下縁は、封入体26の内部に位置しており、第1ラミネートシート28と第2ラミネートシート29との間に挟まれていはいない。
【0040】
図11〜
図13にしめすように、封入体26の内部には、放熱板32の吸熱部33を左右方向から挟む一対のセパレータ34が収容されている。セパレータ34は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス等の金属、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂等、必要に応じて任意の材料で形成される。
【0041】
(セパレータ34)
セパレータ34は略長方形状をなす板状をなしている。セパレータ34の一面には、上下方向に延びる複数の溝35が、前後方向に並んで形成されている。
図11〜
図13に示すように、複数の溝35は、セパレータ34の下端縁から上端縁にまで達している。セパレータ34のうち、溝35が形成されている面と反対側の面は、平坦面36とされている。一対のセパレータ34は、平坦面36を放熱板32側に向けた姿勢で封入体26の内部に配されている。換言すると、放熱板32は、セパレータ34の平坦面36と接触している(
図14参照)。
【0042】
図11に示すように、封入体26の内部には、更に、一対の吸収シート37が収納されている。吸収シート37は略長方形状をなしており、セパレータ34と略同じ大きさに形成されている。一対の吸収シート37は、左右方向についてセパレータ34の外側からセパレータ34を挟むように配されている。
図14に示すように、セパレータ34に形成された溝35の内壁と、吸収シート37との間に形成された空間は、蒸発して気体となった冷媒27の蒸気が、上方へと流通する通気路38となっている。
【0043】
図12に示すように、セパレータ34が封入体26の内部に収容された状態において、複数の溝35は、第1ラミネートシート28と第2ラミネートシート29との接合部30のうち、放熱板32が液密に接合された接合部30に接近する方向に沿って延びる形態になっている。換言すると、
図12において、放熱板32が液密に接合された接合部30が上側に位置する姿勢で冷却部材13を配した場合において、セパレータ34は、封入体26の内部において、セパレータ34の板面が上下方向に沿う姿勢で配されている。そして、セパレータ34に形成された溝35は上下方向に沿って延びている。
【0044】
本実施形態においては、複数の溝35は、上下方向に沿って互いに平行に延びている。なお、複数の溝35は、互いに平行に設けられていなくてもよい。また、溝35は、直線状に形成されていてもよいし、また、曲線状に形成されていてもよい。
【0045】
(吸収シート37)
吸収シート37は、冷媒27を吸収可能な材料により形成されている。吸収シート37は、冷媒27を吸収可能な材料を繊維状に加工したものを織物としたものであってもよく、また、不織布としたものであってもよい。不織布の形態としては、繊維シート、ウェブ(繊維だけで構成された薄い膜状のシート)、又はバット(毛布状の繊維)であってもよい。吸収シート37を構成する材料としては、天然繊維でもよく、また、合成樹脂からなる合成繊維であってもよく、また、天然繊維と合成繊維の双方を用いたものであってもよい。
【0046】
(拡開部39)
図13に示すように、第2ラミネートシート29の前後両端部に設けられた拡開部39は、第1ラミネートシート28と第2ラミネートシート29とが接合された状態では、封入体26の内方に折り畳まれた状態(折れ曲がった状態)になっている。この拡開部39は、冷媒27が蒸発して気体になることにより封入体26の内部の圧力が上昇した際に、左右方向に拡開変形するようになっている。すると、封入体26の内容積が増大するので、封入体26の内圧が減少するようになっている。この結果、封入体26に要求される物理的な強度を低減することが可能となっている。
【0047】
特に、冷却部材13のうち、蓄電素子12よりも上方に位置する部分の拡開部39が、左右方向に拡開変形することにより、封入体26の内容積が増大するようになっている。
【0048】
(実施形態の作用、効果)
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態に係る冷却部材13は、第1ラミネートシート28及び第2ラミネートシート29が少なくとも1つの接合部30において接合されてなる液密な封入体26と、封入体26内に封入された冷媒27と、接合部30のうち少なくとも1つの接合部30Aにおいて封入体26の内面と液密に接合されており、且つ、封入体26内に位置する吸熱部33、及び封入体26の外部に位置する放熱部21を有する放熱板32と、を備える。
【0049】
本実施形態によれば、冷媒27が蒸発して気体になると、封入体26の内部の圧力が増大する。すると、第1ラミネートシート28及び第2ラミネートシート29が変形することにより、封入体26の内容積が増大する。これにより、封入体26内の圧力が下がる。この結果、内容積が変化しない金属製の容器によって冷却部材13を形成する場合に比べて、封入体26内の耐圧性を低くすることができる。これにより、冷却部材13の製造コストを低減することができる。
【0050】
第1ラミネートシート28及び第2ラミネートシート29は金属製シートを含む。金属製シートは比較的に熱伝導性が高いので、封入体26の内部の熱を封入体26の外部へと速やかに移動させ、外部空間に放散させることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、シート部材は、金属製シートの表面に合成樹脂フィルムが積層された第1ラミネートシート28及び第2ラミネートシート29とされている。
【0052】
これにより、ラミネートフィルムを熱融着するという簡易な手法により、封入体26を形成することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、封入体26の側縁には、第2ラミネートシート29の側縁が封入体26の内方に折れ曲がっているものであって、冷媒27が蒸発したときに封入体26の内容積を増大させるように拡開する拡開部39が形成されていることが好ましい。
【0054】
これにより、冷媒27が蒸発して封入体26内の圧力が上昇したときに、拡開部39が拡開変形することにより、封入体26内の圧力を一層低下させることができる。これにより、冷却部材13の製造コストを一層低減させることができる。
【0055】
本実施形態によれば、封入体26内には、冷媒27を吸収する吸収シート37が配されている。これにより、吸収シート37内に冷媒27が吸収されて保持されるので、吸収シート37が配された領域内において、冷媒27を均一に配することができる。これにより、冷却部材13の冷却効率にムラが生じることを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、封入体26内には板状のセパレータ34が配されており、セパレータ34には、接合部30のうち放熱板32と接合された接合部30Aに接近する方向に延びる溝35が形成されている。
【0057】
これにより、蒸発した冷媒27は、セパレータ34に形成された溝35内を流通することにより、放熱板32と接続された接合部30Aに接近するようになっている。本実施形態に係る溝35は上下方向に延びて形成されており、封入体26の下端部寄りの位置で発生した冷媒27蒸気は、溝35を流通することにより上方へと移動し、放熱板32と接合された接合部30Aの近傍へと移動する。放熱板32と接合された接合部30Aに接近した冷媒27の蒸気は、放熱板32の吸熱部33と接触して熱を放熱板32に伝達する。放熱板32に伝達された熱は、吸熱部33から速やかに放熱部21へと伝導され、放熱部21から冷却部材13の外部へと放散される。このように本構成によれば、蒸発した冷媒27は、溝35内を流通した後、放熱板32に接合された接合部30Aの近傍において放熱板32へと熱を伝達するので、熱は速やかに放熱部21へと伝導した後、冷却部材13の外部に熱を速やかに放散させることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る蓄電モジュール10は、冷却部材13と、冷却部材13が収容された筐体11と、筐体11内に収容されて、少なくとも外面の一部が冷却部材13と接触する蓄電素子12と、備える。
【0059】
本実施形態によれば、蓄電素子12で発生した熱は、蓄電素子12の外面の一部と接触する冷却部材13によって吸収される。冷却部材13に吸収された熱は、上記のようにして放熱部21から放散される。この結果、蓄電素子12を効率よく冷却することができる。
【0060】
上記の冷却部材13は液密に形成されており、冷媒27は液密に形成された冷却部材13の内部に封入されているので、蓄電モジュール10の筐体11を液密に構成する必要がない。この結果、蓄電素子12の製造コストを低減させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、電池モジュールの筐体11にはスリット20が形成されており、放熱部21はスリット20に挿通されて筐体11の外部に露出している。これにより、筐体11の外部に露出された放熱部21から効率よく熱を放散させることができるので、蓄電素子12の放熱性を向上させることができる。
【0062】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を、
図15ないし
図22を参照しつつ説明する。
図16及び
図17に示すように、本実施形態に係る蓄電モジュール70においては、筐体71の内部に、複数(本実施形態では6つ)の蓄電素子12が並べられており、各蓄電素子12の間には冷却部材50が介されている。筐体71内に、複数(本実施形態では5つ)の冷却部材50が収容されている。
【0063】
図18及び
図19に示すように、冷却部材50においては、封入体51の上端縁に形成された接合部30Aにおいて、金属製の放熱板53が、第1ラミネートシート54の内面、及び第2ラミネートシート55の内面と、シール材56を介して液密に接合されている。図中、シール材56は放熱板53側に塗布されている構成とされているが、シール材56は第1ラミネートシート54の内面、及び第2ラミネートシート55の内面に塗布されている構成としてもよい。
【0064】
放熱板53は、封入体51の上端縁から上方に突出して封入体51の外部に位置する放熱部57と、封入体51の内部に位置する吸熱部58と、を備える。
【0065】
吸熱部58の左右両側面には、上下方向に延びる複数の溝59が形成されている。吸熱部58に複数の溝59が形成されていることにより、吸熱部58を上下方向から見ると、吸熱部58は凹凸形状をなしている。
【0066】
吸熱部58に形成された溝59は、吸熱部58の下端部から上方へ略四分の三の部分においては、
図21に示すように、頂部が平坦な山形が繰り返し連続する構成となっている。吸熱部58の溝59のうち、吸熱部58の上端部から下方へ略四分の一の部分においては、溝59は、上方に向かうに従って左右方向について先細り形状に形成されている。なお、溝59の前後方向の幅寸法は、上下方向について一定となっている。
【0067】
図20から
図22に示すように、吸熱部58の溝59部と、第1ラミネートシート54の内面、又は第2ラミネートシート55の内面との間に形成された空間は、蒸発して気体となった冷媒27の蒸気が上方へと流通する通気路60となっている。
【0068】
放熱板53の吸熱部58に形成された複数の溝59は、封入体51の内部に配された状態で、第1ラミネートシート54と第2ラミネートシート55との接合部52のうち、放熱板53が液密に接合された接合部52に接近する方向に沿って溝59が延びた形態となっている。換言すると、
図20において、放熱板53が液密に接合された接合部52が上側に位置する姿勢で冷却部材50を配した場合において、放熱板53は、封入体51の内部において、放熱板53の板面が上下方向に沿う姿勢で配されている。そして、放熱板53の吸熱部58に形成された溝59は上下方向に沿って延びている。
【0069】
図21に示すように、第2ラミネートシート55の前後両端部に設けられた拡開部61は、第1ラミネートシート54と第2ラミネートシート55とが接合された状態では、封入体51の内方に折り畳まれた状態になっている。この拡開部61は、冷媒27が蒸発して気体になることにより封入体51の内部の圧力が上昇した際に、左右方向に拡開変形するようになっている。すると、封入体51の内容積が増大するので、封入体51の内圧が減少するようになっている。この結果、封入体51に要求される物理的な強度を低減することが可能となっている。
【0070】
本実施形態においては、封入体51の内部には、セパレータ、及び吸収シートは収容されていない。なお、収容体の内部には吸収シートが収容される構成としてもよい。
【0071】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0072】
本実施形態においては、放熱板53の吸熱部58には、接合部52のうち放熱板53と接合された接合部52に接近する方向に延びる溝59が形成されている。これにより、蒸発した冷媒27は、放熱板53の吸熱部58に形成された溝59内を流通することにより、放熱板53と接続された接合部52に接近するようになっている。本実施形態に係る溝59は上下方向に延びて形成されており、封入体51の下端部寄りの位置で発生した冷媒27蒸気は、溝59を流通することにより上方へと移動し、放熱板53と接合された接合部52の近傍へと移動する。放熱板53と接合された接合部52に接近した冷媒27の蒸気は、放熱板53の吸熱部58と接触して熱を放熱板53に伝達する。放熱板53に伝達された熱は、吸熱部58から速やかに放熱部57へと伝導され、放熱部57から冷却部材50の外部へと放散される。このように本構成によれば、蒸発した冷媒27は、溝59内を流通した後、放熱板53に接合された接合部52の近傍において放熱板53へと熱を伝達するので、熱は速やかに放熱部57へと伝導した後、冷却部材50の外部に熱を速やかに放散させることができる。
【0073】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0074】
(1)本実施形態においては、セパレータ34には複数本の溝35が形成される構成としたが、これに限られず、セパレータ34に形成された溝35は1本でもよい。
【0075】
(2)本実施形態においては、放熱板53には複数本の溝59が形成される構成としたが、これに限られず、放熱板53に形成された溝59は1本でもよい。
【0076】
(3)本実施形態においては、筐体11に形成されたスリット20は5本であったが、これに限られず、2本〜4本、又は6本以上であってもよい。
【0077】
(4)本実施形態に係る冷却部材は、蓄電モジュールに使用されたが、これに限られず、冷却部材は、電気接続箱、ECU等、任意の発熱部品に対して適宜に使用することができる。
【0078】
(5)本実施形態においては、シート部材としてラミネートシートを用いたが、これに限られず、例えばアルミニウム箔や銅箔等の金属箔からなるシート部材を用いてもよい。この場合には、シート部材同士の接合は、接着、溶接、ロウ接、ハンダ付け等により液密に接続する構成とすることができる。また、金属箔の一面に合成樹脂フィルムが積層されたシート部材を用いてもよい。この場合には、合成樹脂フィルム同士を接触させて熱融着することにより、シート部材同士を液密に接合することができる。
また、シート部材は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルや、ナイロン6,6等のポリアミドなどの、合成樹脂からなるものを用いてもよい。