特許第6548077号(P6548077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6548077運動精神機能評価システム、及びスポーツ映像方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548077
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】運動精神機能評価システム、及びスポーツ映像方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20190711BHJP
   G06Q 50/22 20180101ALI20190711BHJP
【FI】
   G16H20/00
   G06Q50/22
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-147228(P2015-147228)
(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2017-27476(P2017-27476A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】515198289
【氏名又は名称】株式会社にしむら
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】西村 将典
【審査官】 岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−277226(JP,A)
【文献】 特開2014−153962(JP,A)
【文献】 西村将典,スポーツ映像の鑑賞が高齢者に及ぼす影響,[online],2013年 9月29日,p.28-31,[令和1年5月10日検索], インターネット,URL,http://web.archive.org/web/20130929163936/http://www.waseda.jp/sem-hirata/nishimura_rp.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00−80/00
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力手段と、入力手段から入力されたデータ及び予め記憶保持された処方データを複数記憶する記憶手段と、複数の処方データから少なくともいずれかを選択する処方選択制御手段と、処方を出力する出力手段と、を備えた運動精神機能評価システムであって、
前記入力手段は、
FIM評価表の各観察項目における評価点数のデータと、MOSES評価表の各観察項目における評価点数のデータと、HDS−R評価表の各質問項目における評価点数のデータと、が入力可能であり、
前記記憶手段は、
互いに異なる処方が割り当てられている処方データを予め複数記憶保持しており、
前記処方選択制御手段は、
入力手段により入力されたFIM評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のFIM用能力点数に各々換算し、該換算したFIM用能力点数の平均値を算出し、算出したFIM用能力点数平均値に基づいてFIM用高低評価(A)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択し、
かつ、入力手段により入力されたMOSES評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のMOSES用能力点数に各々換算し、該換算したMOSES用能力点数の平均値を算出し、算出したMOSES用能力点数平均値に基づいてMOSES用高低評価(B)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択し、
かつ、入力手段により入力されたHDS−R評価表に関するデータに基づき、各質問項目の総点数を所定のHDS−R用能力点数に換算し、換算したHDS−R用能力点数に基づいてHDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択する高低評価選択制御内容と、
高低評価選択制御内容で選択した各高低評価(A,B,C)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B,C)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データを選択する処方データ選択制御内容と、
を具備し、
前記出力手段は、
前記処方データ選択制御内容で選択した処方データに対応する処方を出力する
ことを特徴とする運動精神機能評価システム。
【請求項2】
前記処方選択制御手段は、
前記高低評価選択制御内容において、入力手段により入力されたHDS−R評価表に関するデータに基づき、各質問項目の総点数を所定のHDS−R用能力点数に換算し、換算したHDS−R用能力点数に基づいてHDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するというHDS−Rに関する一連の制御を無効とし、
高低評価選択制御内容で選択した各高低評価(A,B)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データを選択する処方データ選択制御内容を具備している
請求項1に記載の運動精神機能評価システム。
【請求項3】
前記処方選択制御手段の高低評価選択制御内容にあって、
前記FIM用能力点数は、序列化された複数の数値段階に設定されており、かつFIM評価表で定められている評価点数が大きいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、各評価点数がFIM用能力点数に割り当てられており、
前記MOSES用能力点数は、序列化された複数の数値段階に設定されており、かつMOSES評価表で定められている評価点数が小さいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、各評価点数がMOSES用能力点数に割り当てられており、
前記HDS−R用能力点数は、序列化された複数の数値段階に設定されており、かつHDS−R評価表で定められている総点数が大きいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、総点数がHDS−R用能力点数に割り当てられており、
しかも、前記FIM用能力点数と、前記MOSES用能力点数と、前記HDS−R用能力点数とは、互いに同じ数の数値段階とされている、
請求項1又は請求項2に記載の運動精神機能評価システム。
【請求項4】
前記処方選択制御手段にあって、
前記FIM用能力点数平均値が所定の値以上である場合に、FIM用高低評価(A)については高の評価を選択し、
前記MOSES用能力点数平均値が所定の値以上である場合に、MOSES用高低評価(B)については高の評価を選択し、
前記HDS−R用能力点数が所定の値以上である場合に、HDS−R用高低評価(C)については高の評価を選択する
請求項3に記載の運動精神機能評価システム。
【請求項5】
前記複数の処方データのなかに、スポーツ映像を対象者に視聴させる内容を含む処方に対応する処方データが含まれている
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の運動精神機能評価システム。
【請求項6】
請求項5に記載の運動精神機能評価システムを用いたスポーツ映像方法であって、
FIM評価表の各観察項目における評価点数のデータと、MOSES評価表の各観察項目における評価点数のデータと、HDS−R評価表の各質問項目における評価点数のデータと、を入力するステップと、
入力されたFIM評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のFIM用能力点数に各々換算し、該換算したFIM用能力点数の平均値を算出し、算出したFIM用能力点数平均値に基づいてFIM用高低評価(A)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップと、
入力されたMOSES評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のMOSES用能力点数に各々換算し、該換算したMOSES用能力点数の平均値を算出し、算出したMOSES用能力点数平均値に基づいてMOSES用高低評価(B)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップと、
入力されたHDS−R評価表に関するデータに基づき、各質問項目の総点数を所定のHDS−R用能力点数に換算し、換算したHDS−R用能力点数に基づいてHDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップと、
選択した各高低評価(A,B,C)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B,C)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データを選択するステップと、
処方データのなかに含まれている、スポーツ映像を対象者に視聴させる内容の処方に基づいてスポーツ映像を視聴させるステップと、
を含む
ことを特徴とするスポーツ映像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば介護老人保健施設の入所者などを対象者とした運動精神機能評価システム、及びスポーツ映像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されているように、入所者の管理として、いわゆるFIM(Function Independence Measure:機能的自立度評価表)が利用されていることは知られている。また、別の評価手法として、非特許文献1に開示されているように、いわゆるMOSES(Multidimension Observateion Scale for Subject 高齢者用多元観察尺度)も知られている。さらに、高次脳機能障害を判定し、改善効果を評価する方法として、いわゆるHDS−R(長谷川式簡易知能評価スケール)が利用されていることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−35171号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「平成21年度認知症介護研究報告書」 社会福祉法人 仁至会 認知症介護研究・研修大府センター 平成22年3月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したいずれの評価方式とも、それぞれ単独で利用されているだけで、互いに連関して利用されることは一般的ではなかった。
【0006】
ところで、本来、介護老人保健施設の役割は、入所者の在宅復帰を目指すことにある。しかし、実際には、在宅復帰を果たす割合は少数に限られている。ここで、施設の入所者は、各々異なった介護を必要としているが、介護を行う者は、上記評価方式を単独で利用して得られる情報のみを利用して介護を行っていたため、適切な介護が提供できないことがあった。
【0007】
例えば、個々の評価法には一定の基準が設けられているものの、在宅復帰に必要な評価基準は示されていないため、例えばHDS−Rが10点以下であっても、具体的に排泄行動が可能であれば在宅復帰が可能であると判断することができる場合がある。
【0008】
そこで、本発明者らは、かかる課題を解決すべく、上記した3つの評価方法を取り入れつつ、例えば高齢である入所者がスポーツ映像を視聴する環境を整え、入所者の状態変化の把握と、認知症の予防・症状遅延・社会性の向上、さらには運動機能の維持・向上を図ることを試みた。
【0009】
本発明は、上記3つの評価法に基づき、目的に応じて最適な対応を選択することができる運動精神機能評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、入力手段と、入力手段から入力されたデータ及び予め記憶保持された処方データを複数記憶する記憶手段と、複数の処方データから少なくともいずれかを選択する処方選択制御手段と、処方を出力する出力手段と、を備えた運動精神機能評価システムであって、
前記入力手段は、
FIM評価表の各観察項目における評価点数のデータと、MOSES評価表の各観察項目における評価点数のデータと、HDS−R評価表の各質問項目における評価点数のデータと、が入力可能であり、
前記記憶手段は、
互いに異なる処方が割り当てられている処方データを予め複数記憶保持しており、
前記処方選択制御手段は、
入力手段により入力されたFIM評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のFIM用能力点数に各々換算し、該換算したFIM用能力点数の平均値を算出し、算出したFIM用能力点数平均値に基づいてFIM用高低評価(A)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択し、
かつ、入力手段により入力されたMOSES評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のMOSES用能力点数に各々換算し、該換算したMOSES用能力点数の平均値を算出し、算出したMOSES用能力点数平均値に基づいてMOSES用高低評価(B)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択し、
かつ、入力手段により入力されたHDS−R評価表に関するデータに基づき、各質問項目の総点数を所定のHDS−R用能力点数に換算し、換算したHDS−R用能力点数に基づいてHDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択する高低評価選択制御内容と、
高低評価選択制御内容で選択した各高低評価(A,B,C)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B,C)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データを選択する処方データ選択制御内容と、
を具備し、
前記出力手段は、
前記処方データ選択制御内容で選択した処方データに対応する処方を出力する
ことを特徴とする運動精神機能評価システムである。
【0011】
かかる構成にあっては、例えば音声入力機能を具備する端末等で構成される入力手段を用いて、1)FIM評価表の各観察項目における評価点数、2)MOSES評価表の各観察項目における評価点数、及び、3)HDS−R評価表の各質問項目における評価点数を入力する。そうすると、各評価点数が前記記憶装置に記憶される。そして、前記処方選択制御手段が、入力された評価点数を、所定の能力点数に換算する。すなわち、FIM評価表の所定の観察項目の評価点数が所定の規準に従ってFIM用能力点数に換算され、その平均値が算出される。また、MOSES評価表の所定の観察項目の評価点数が所定の規準に従ってMOSES用能力点数に換算され、その平均値が算出される。さらに、HDS−R評価表の総点数が、所定の規準に従ってHDS−R用能力点数に換算される。そしてさらに、各能力点数について、予め定められた規準に従って高低評価が選択される。具体的には、高評価又は低評価が選択される。そうすると、1)FIM評価表、2)MOSES評価表、及び3)HDS−R評価表において、それぞれ「高」又は「低」の評価が割り当てられ、これらの高低評価(A,B,C)の組み合わせパターンが定まる。本発明は、このようにして定まった高低評価の組み合わせパターンに基づいて、あらかじめ準備されている複数の処方データを所定の規準に従って選択し、選択した処方データに対応する処方を出力手段で出力する。かかる構成とすることにより、例えば在宅復帰に必要な観察事項や質問事項を上記3つの評価法からあらかじめ抽出し、抽出した観察事項や質問事項の評価点数について重みを考慮しながら能力点数を割り当て、そして、各評価法の能力点数に基づく高低評価に沿って、入所者に適切な処方を提供することが可能となる。
【0012】
また、前記処方選択制御手段は、
前記高低評価選択制御内容において、入力手段により入力されたHDS−R評価表に関するデータに基づき、各質問項目の総点数を所定のHDS−R用能力点数に換算し、換算したHDS−R用能力点数に基づいてHDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するというHDS−Rに関する一連の制御を無効とし、
高低評価選択制御内容で選択した各高低評価(A,B)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データを選択する処方データ選択制御内容を具備している構成としてもよい。
【0013】
ここで、HDS−Rは、特殊な条件を満たす状況によっては適応がふさわしくない場合もあり、HDS−R評価表を用いず、FIM評価表およびMOSES評価表のみを用いて処方データを選択することで、適切な処方を提供できる運動精神機能評価システムとすることができる。
【0014】
また、前記処方選択制御手段の高低評価選択制御内容にあって、
前記FIM用能力点数は、序列化された複数の数値段階に設定されており、かつFIM評価表で定められている評価点数が大きいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、各評価点数がFIM用能力点数に割り当てられており、
前記MOSES用能力点数は、序列化された複数の数値段階に設定されており、かつMOSES評価表で定められている評価点数が小さいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、各評価点数がMOSES用能力点数に割り当てられており、
前記HDS−R用能力点数は、序列化された複数の数値段階に設定されており、かつHDS−R評価表で定められている総点数が大きいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、総点数がHDS−R用能力点数に割り当てられており、
しかも、前記FIM用能力点数と、前記MOSES用能力点数と、前記HDS−R用能力点数とは、互いに同じ数の数値段階とされていることが望ましい。
【0015】
ここで、FIM評価表にあっては、点数が高得点であるほど自立としての評価に近いと判断される。一方、MOSES評価表にあっては、点数が高得点であるほど全介助としての評価に近いと判断される。したがって、上述の構成とすることにより、各評価法の評価点数の順位の相違について、整合性を確保して高低評価を選択することが可能となる。
【0016】
また、前記処方選択制御手段にあって、
前記FIM用能力点数平均値が所定の値以上である場合に、FIM用高低評価(A)については高の評価を選択し、
前記MOSES用能力点数平均値が所定の値以上である場合に、MOSES用高低評価(B)については高の評価を選択し、
前記HDS−R用能力点数が所定の値以上である場合に、HDS−R用高低評価(C)については高の評価を選択する
構成が望ましい。
【0017】
かかる構成とすることにより、各評価表の高低評価を、例えば在宅復帰可能な能力レベルに合わせて選択することが可能となる。
【0018】
また、前記複数の処方データのなかに、スポーツ映像を対象者に視聴させる内容を含む処方に対応する処方データが含まれていることが望ましい。
【0019】
かかる構成とすることにより、高齢者が容易かつ効果的に行えるスポーツ鑑賞を通じて、いわゆる日常生活動作(ADL)を拡大させることができる。
【0020】
特に、上記の運動精神機能評価システムを用いたスポーツ映像方法が提案される。すなわち、
FIM評価表の各観察項目における評価点数のデータと、MOSES評価表の各観察項目における評価点数のデータと、HDS−R評価表の各質問項目における評価点数のデータと、を入力するステップと、
入力されたFIM評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のFIM用能力点数に各々換算し、該換算したFIM用能力点数の平均値を算出し、算出したFIM用能力点数平均値に基づいてFIM用高低評価(A)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップと、
入力されたMOSES評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のMOSES用能力点数に各々換算し、該換算したMOSES用能力点数の平均値を算出し、算出したMOSES用能力点数平均値に基づいてMOSES用高低評価(B)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップと、
入力されたHDS−R評価表に関するデータに基づき、各質問項目の総点数を所定のHDS−R用能力点数に換算し、換算したHDS−R用能力点数に基づいてHDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップと、
選択した各高低評価(A,B,C)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B,C)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データを選択するステップと、
処方データのなかに含まれている、スポーツ映像を対象者に視聴させる内容の処方に基づいてスポーツ映像を視聴させるステップと、
を含む
ことを特徴とするスポーツ映像方法である。
【0021】
かかる構成とすることにより、スポーツ映像を見せることによって例えば要介護高齢者の運動・精神機能を維持又は向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のシステムは、1)FIM評価表、2)MOSES評価表、及び3)HDS−R評価表を用いた上で、最適な処方を迅速に選択して提供することができる効果がある。
【0023】
また、本発明の方法は、スポーツ映像を見ることによって例えば要介護高齢者の運動・精神機能を維持又は向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】運動精神機能評価システムの概要図である。
図2】FIM評価表を示す説明図である。
図3】MOSES評価表を示す説明図である。
図4】HDS−R評価表を示す説明図である。
図5】FIM評価表の観察項目とMOSES評価表の観察項目との相関を示す図表である。
図6】評価点数と能力点数との相関を示す図表である。
図7】観察項目と能力点数との相関を示す図表である。
図8】高低評価の組み合わせと処方データとの相関を示す図表である。
図9】在宅復帰を可能とする要素の概要を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明にかかる運動精神機能評価システムの実施例を説明する。なお、本発明は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0026】
図1に示すように、運動精神機能評価システム1は、例えば院内LANで構成される通信網2に接続可能な、管理サーバ3、入力手段4、及び出力手段5と、を具備している。
【0027】
なお、前記通信網2としては、公知の通信網が適宜利用可能であり、インターネット回線通信網であってもよい。
【0028】
なお、本実施例の前記入力手段4は、携帯電話端末で構成することができ、音声でデータ入力することができる。
【0029】
また、前記出力手段5としては、公知のパーソナルコンピュータのディスプレイ、携帯端末のディスプレイ、あるいはプリンタによって紙出力するもので構成できる。
【0030】
かかる構成にあって、介護職員や看護師は、入力手段4を使って、図2に示すFIM評価表の各観察項目における評価点数と、図3に示すMOSES評価表の各観察項目における評価点数と、図4に示すHDS−R評価表の各質問項目における評価点数と、を音声により入力することができる。
【0031】
そうすると、前記管理サーバ3の記憶領域には、FIM評価表の各観察項目における評価点数のデータと、MOSES評価表の各観察項目における評価点数のデータと、HDS−R評価表の各質問項目における評価点数のデータと、が記憶保持される。
【0032】
具体的には、入所者Aに関して、図5に示すように、上記各評価点数が記憶保持される。また、図示しないが、HDS−Rについて例えば総点数が29点と記憶保持される。
【0033】
ところで、本発明者らは、FIMとMOSESに関して、在宅復帰を目指す指標を作成すべく、3つの目標を定めた。具体的には、図5に示すように、1)排泄行動、2)コミュニティーへの参加、3)問題解決である。
【0034】
そして、各目標に対応する観察項目を、FIMの観察項目及びMOSESの観察項目から抽出し、それらを各目標ごとに分類した。
【0035】
〔高低評価選択制御内容〕
次に、管理サーバ3の高低評価選択制御内容について説明する。
入力手段4により入力されたFIM評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のFIM用能力点数に各々換算する。具体的には、図7に示すように、前記目標の一つである排泄行動に関して、該当するFIM評価表の観察項目の評価点数(1〜7点)を5段階のFIM用能力点数(1〜5点)に各々換算する。
【0036】
ここで、図6に示すように、前記FIM用能力点数は、序列化された複数の数値段階(ここでは5段階)に設定されており、かつFIM評価表で定められている評価点数が大きいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、各評価点数がFIM用能力点数に割り当てられている。
【0037】
したがって、入所者Aの場合、目標としての「排泄行動」に関して、能力点数はそれぞれ、トイレ動作「5」、排尿管理「5」、排便管理「5」、移乗(トイレ)「5」、歩行「5」、車いす「5」、階段「1」、移乗(ベッド・椅子・車いす)「5」となる。
【0038】
次に、「排泄行動」に関して、換算したFIM用能力点数の平均値を算出する。そして、算出したFIM用能力点数平均値に基づいて、FIM用高低評価(A)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択する。なお、本実施例においては、FIM用能力点数平均値が、「4.0」以上の場合には、「高」評価を選択し、「4.0」未満の場合には、「低」評価を選択するようにしている。
【0039】
したがって、入所者Aの場合、目標としての「排泄行動」に関して、FIM用高低評価(A)は「高」となる。
【0040】
同様に、入力手段4により入力されたMOSES評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のMOSES用能力点数に各々換算する。具体的には、図7に示すように、前記目標の一つである排泄行動に関して、該当するMOSES評価表の観察項目の評価点数(1〜5点)を5段階のFIM用能力点数(1〜5点)に各々換算する。
【0041】
ここで、図6に示すように、前記MOSES用能力点数は、序列化された複数の数値段階(ここでは5段階)に設定されており、かつMOSES評価表で定められている評価点数が小さいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、各評価点数がMOSES用能力点数に割り当てられている。
【0042】
したがって、入所者Aの場合、目標としての「排泄行動」に関して、能力点数はそれぞれ、トイレの使用「4」、失禁「5」、移動能力「4」、ベッド昇降「5」となる。
【0043】
さらに、「排泄行動」に関して、換算したMOSES用能力点数の平均値を算出する。そして、算出したMOSES用能力点数平均値に基づいて、MOSES用高低評価(B)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択する。なお、本実施例においては、MOSES用能力点数平均値が、「4.0」以上の場合には、「高」評価を選択し、「4.0」未満の場合には、「低」評価を選択するようにしている。
【0044】
したがって、入所者Aの場合、目標としての「排泄行動」に関して、MOSES用高低評価(B)は「高」となる。
【0045】
次に、HDS−Rに関して説明する。
入力手段4により入力されたHDS−R評価表に関するデータに基づき、各質問項目の総点数を算出する。そして、算出した総点数を、所定のHDS−R用能力点数に換算する。具体的には、図6に示すように、前記目標の一つである排泄行動に関して、該当するHDS−R評価表の各質問項目の総点数(0〜30点)を5段階のHDS−R用能力点数(1〜5点)に各々換算する。
【0046】
ここで、前記HDS−R用能力点数は、序列化された複数の数値段階(ここでは5段階)に設定されており、かつHDS−R評価表で定められている総点数が大きいほど、同じ数値もしくは大きな数値の能力点数となるように、総点数がHDS−R用能力点数に割り当てられている。
【0047】
したがって、入所者Aの場合、HDS−R用能力点数は「5」となる。
【0048】
さらに、「排泄行動」に関して、換算したHDS−R用能力点数に基づいて、HDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択する。なお、本実施例においては、HDS−R用能力点数が、「4」,「5」の場合には、「高」評価を選択し、「1」,「2」,「3」の場合には、「低」評価を選択するようにしている。
【0049】
したがって、入所者Aの場合、HDS−R用高低評価(C)は「高」となる。
【0050】
ここで、前記管理サーバ3には、図8に示すように、「排泄行動」に関して、8種類の処方に対応する処方データS1〜S8が記憶保持されている。また、前記複数の処方データS1〜S8のなかに、スポーツ映像を対象者に視聴させる内容を含む処方に対応する処方データが含まれている。例えば、各処方データに対応する処方としては、1)身の回りの動作訓練、2)生活動作介助、3)自主訓練、4)自己啓発、5)テレビ・動画視聴、6)他者とのコミュニケーション、7)ゲームやレクリエーション、8)スポーツ映像の視聴とすることができる。
【0051】
次に、管理サーバ3の処方データ選択制御内容を説明する。
図8に示すように、上記高低評価選択制御内容で選択した各高低評価(A,B,C)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B,C)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データS1〜S8のいずれかを選択する。
【0052】
したがって、図8を参照すれば、入所者Aの場合、処方データS1が選択される。
【0053】
さらに、目標である「コミュニティーへの参加」、及び「問題解決」についても、同様の処理内容に沿って処方データを選択する。
【0054】
なお、音声入力によって入力された評価点数のデータ、及び処方データを記憶保持する前記管理サーバ3によって、本発明にかかる記憶手段が構成される。また、上記高低評価選択制御内容と、上記処方データ選択制御内容とを実行する前記管理サーバ3によって、本発明にかかる処方選択制御手段が構成される。
【0055】
そして、前記出力手段5は、前記処方データ選択制御内容で選択された処方データに対応する処方を出力する。例えば、入所者Aについて、「排泄行動」に関しては、処方データS1に対応する処方を出力表示する。
【0056】
かかる構成とすることにより、例えば在宅復帰に必要な観察事項や質問事項を上記3つの評価法からあらかじめ抽出し、抽出した観察事項や質問事項の評価点数について重みを考慮しながら能力点数を割り当て、そして、各評価法の能力点数に基づく高低評価に沿って、入所者に適切な処方を提供することが可能となる。
【0057】
また、MOSES評価表においては他の評価法の評価点数と順位が相違しているが、上記構成とすることにより、その相違を補正して整合性を確保した上で高低評価を選択することが可能となる。
【0058】
また、スポーツ映像を対象者に視聴させる処方を導入することにより、高齢者が容易かつ効果的に行えるスポーツ鑑賞を通じて、いわゆる日常生活動作(ADL)を拡大させることができる。
【0059】
〔変形例〕
なお、上記構成において、HDS−Rに関する一連の制御を無効とする構成が提案される。
【0060】
例えば、前記入力手段4から、HDS−Rに関する一連の制御を無効とする信号を入力することにより、「HDS−R評価表に関する各質問項目の総点数を所定のHDS−R用能力点数に換算し、換算したHDS−R用能力点数に基づいてHDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するという制御をすることなく、前記高低評価選択制御内容で選択した各高低評価(A,B)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データを選択する構成としてもよい。
【0061】
かかる構成とすることにより、HDS−R評価表を用いず、FIM評価表およびMOSES評価表のみを用いて処方データを選択することで、適切な処方を提供することができる。
【0062】
特に、上記した運動精神機能評価システム1を用いたスポーツ映像方法は、スポーツ映像を見せることによって例えば要介護高齢者の運動・精神機能を維持又は向上させることができる。
【0063】
すなわち、FIM評価表の各観察項目における評価点数のデータと、MOSES評価表の各観察項目における評価点数のデータと、HDS−R評価表の各質問項目における評価点数のデータと、を入力するステップ(STEP1)と、入力されたFIM評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のFIM用能力点数に各々換算し、該換算したFIM用能力点数の平均値を算出し、算出したFIM用能力点数平均値に基づいてFIM用高低評価(A)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップ(STEP2)と、入力されたMOSES評価表に関するデータに基づき、各観察項目の評価点数のうち、予め定められた複数の観察項目の評価点数を所定のMOSES用能力点数に各々換算し、該換算したMOSES用能力点数の平均値を算出し、算出したMOSES用能力点数平均値に基づいてMOSES用高低評価(B)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップ(STEP3)と、入力されたHDS−R評価表に関するデータに基づき、各質問項目の総点数を所定のHDS−R用能力点数に換算し、換算したHDS−R用能力点数に基づいてHDS−R用高低評価(C)において少なくとも高・低の2種のうちいずれかを選択するステップ(STEP4)と、選択した各高低評価(A,B,C)の組み合わせに基づいて、高低評価(A,B,C)の組み合わせに対して予め関連付けされている前記処方データを選択するステップ(STEP5)と、処方データのなかに含まれている、スポーツ映像を対象者に視聴させる内容の処方に基づいてスポーツ映像を視聴させるステップ(STEP6)と、を具備するスポーツ映像方法が効果的である。
【0064】
なお、これまでに述べた運動精神機能評価システム1の内容に加えて、図9に示すような条件、運動項目、及び実施事項を評価点数によって数値化できるようにし、前記処方データを選択する際の高低評価に組み込むものとしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 運動精神機能評価システム
3 管理サーバ(記憶手段、処方選択制御手段)
4 入力手段
5 出力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9