特許第6548107号(P6548107)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人情報通信研究機構の特許一覧

<>
  • 特許6548107-センサネットワークの休止制御システム 図000014
  • 特許6548107-センサネットワークの休止制御システム 図000015
  • 特許6548107-センサネットワークの休止制御システム 図000016
  • 特許6548107-センサネットワークの休止制御システム 図000017
  • 特許6548107-センサネットワークの休止制御システム 図000018
  • 特許6548107-センサネットワークの休止制御システム 図000019
  • 特許6548107-センサネットワークの休止制御システム 図000020
  • 特許6548107-センサネットワークの休止制御システム 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548107
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】センサネットワークの休止制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08C 17/00 20060101AFI20190711BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20190711BHJP
【FI】
   G08C17/00 Z
   H04W52/02
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-7081(P2015-7081)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-133915(P2016-133915A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】荘司 洋三
(72)【発明者】
【氏名】新熊 亮一
(72)【発明者】
【氏名】劉 巍
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−8275(JP,A)
【文献】 特開2013−196608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 17/00−17/06
G01D 21/00−21/02
H04W 52/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が有意状態か又は非有意状態かを判別可能なセンサを、監視空間内にある全ての対象物毎に設置したセンサネットワークと、
上記センサネットワークにおける一のセンサから一の対象物が有意状態である旨を判別された場合には、予め取得した各対象物間の有意状態及び非有意状態の相関関係に基づいて、他の対象物に対して設置された他のセンサの状態を制御する制御手段とを備え、
上記センサネットワークは、各対象物が有意状態か、又は非有意状態かを同時に判別することを1回又は複数回実行し、
上記制御手段は、上記センサネットワークによる判別結果に基づいて、2つの対象物間で共に有意状態にある場合に当該対象物間においてより正の相関に近づけることにより、又は当該対象物間でいずれか一方が非有意状態である場合に当該対象物間においてより負の相関に近づけることにより、上記相関関係を予め取得すること
を特徴とするセンサネットワークの休止制御システム。
【請求項2】
上記制御手段は、上記センサネットワークにおける一のセンサから一の対象物が有意状態である旨を判別された場合には、予め取得した各対象物間の有意状態及び非有意状態の相関関係に基づいて、当該一の対象物と負の相関関係にある他の対象物に対して設置された他のセンサを休止状態とするように制御すること
を特徴とする請求項1記載のセンサネットワークの休止制御システム。
【請求項3】
上記制御手段は、当該一の対象物と正の相関関係にある他の対象物に対して設置された他のセンサを起動し続けるように制御すること
を特徴とする請求項1又は2記載のセンサネットワークの休止制御システム。
【請求項4】
上記センサネットワークは、上記監視空間内にある3以上の対象物毎に上記センサを設置し、
上記制御手段は、当該一の対象物と負の相関関係にある他の対象物に対して設置された他のセンサをリスト化し、これらリスト化された他のセンサを何れも休止状態とするように制御すること
を特徴とする請求項2記載のセンサネットワークの休止制御システム。
【請求項5】
上記センサネットワークは、上記監視空間としての家屋に設置され、家屋に配設される設備としての各対象物が有意状態か、又は非有意状態かを同時に判別することを1又は複数回実行し、
上記制御手段は、複数の上記家屋からの上記センサネットワークによる判別結果に基づいて、互いに異なる対象物間で共に有意状態にある場合に当該対象物間の相関をより正に近づけ、いずれか一方が非有意状態である場合に当該備品間の相関をより負に近づけることにより、上記相関関係を予め取得すること
を特徴とする請求項1記載のセンサネットワークの休止制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視空間内にある対象物毎に設置したセンサを介してそれぞれの対象物の状態を検出するセンサネットワークにおいて、そのセンサの起動に要する電力を削減する上で好適なセンサネットワークの休止制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年において、IT(情報技術)を使用して家庭内のエネルギー消費が最適化されるように制御する、いわゆる省エネ住宅としてのスマートハウスが普及しつつある。このスマートハウスでは、家電機器や照明機器、風呂周辺機器、さらには水道や電気の供給口、家具等の各対象物をネットワークで結び、エネルギー監理システム(Home Energy Management System)を介して、各対象物の稼動状況を可視化する。またスマートハウスでは、エネルギー監理システムを介して各対象物のエネルギー使用を管理し自動制御を行うこともできる。エネルギー監理システムを介して実際にこれら各対象物の稼働状況を把握する際には、当該対象物毎にセンサを設置し、各センサから検出された情報を有効的に活用する。
【0003】
ところで、このようなセンサをスマートハウス内にある各対象物について設置し、これを常時起動させることにより対象物の稼働状況を監視することとなれば、その分においてセンサにより消費される電力が大きくなってしまい、電力コストが過大となってしまう。このため、センサの起動に伴う電力の使用の効率化を図ることにより、これら電力コストを低減させる必要があった。これに加えて、スマートハウスの主なコンセプトが省エネ住宅であることから、太陽光発電等を介して得られた再生可能エネルギーを限られた範囲で使用しなければならないケースも生じ、或いは予め実装された限られたバッテリーのみを介して電力を供給しなければならない場合もある。このため、センサに対して消費される電力を削減するための技術がますます求められる状況となっている。
【0004】
このため、エネルギー監理システムにおけるセンサの使用電力の削減方法に関して各種研究が行われている(例えば、非特許文献1参照。)。この非特許文献1の開示技術では、スマートハウス内の住人の位置情報に基づいて制御を行うことをその基本コンセプトとしている。つまり、住人の位置情報を先ず取得し、住人が居る部屋のセンサは起動させ続ける一方で、住人が居ない部屋のセンサは全て休止状態とする。これにより、休止させたセンサの分に応じて使用電力の削減が図れることとなる。
【0005】
しかしながら、この非特許文献1の開示技術では、以下3つの問題点がある。
【0006】
第1に、洗濯機や電子レンジ等のような家電機器等では、当該家電機器を作動させつつ住人が別の部屋に居る場合がある。かかる場合において住人が居る部屋のセンサのみ起動し、それ以外の部屋のセンサを休止させてしまうと、その時点において実際に稼動している家電機器のエネルギーの使用状況を検出することができないという問題点が生じる。
【0007】
第2に、住人の位置情報を例えばGPS(Global Positioning System)等により検出しようとする場合において、特に住人がスマートハウスの屋内に居る場合にはGPSによる高精度な位置情報の検出が難しい場合がある。
【0008】
第3に、住人のスマートハウス内における位置情報を直接的に使用するのは、住人のプライバシーの観点から望ましくないという問題点もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Pensas, Harri, Miika Valtonen, and Jukka Vanhala. "Wireless sensor networks energy optimization using user location information in smart homes."Broadband and Wireless Computing, Communication and Applications (BWCCA), 2011 International Conference on. IEEE, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、スマートハウス内等の監視空間内にある対象物毎に設置したセンサを介してそれぞれの対象物の状態を検出するセンサネットワークにおいて、住人の位置情報に依存することなく、そのセンサの起動に要する電力を効果的に削減することができ、しかもセンサとして基本的に求められる検出精度を維持し、検出した情報の高速なデジタルデータ化を実現することが可能なセンサネットワークの休止制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係るセンサネットワークの休止制御システムは、 対象物が有意状態か又は非有意状態かを判別可能なセンサを、監視空間内にある全ての対象物毎に設置したセンサネットワークと、上記センサネットワークにおける一のセンサから一の対象物が有意状態である旨を判別された場合には、予め取得した各対象物間の有意状態及び非有意状態の相関関係に基づいて、他の対象物に対して設置された他のセンサの状態を制御する制御手段とを備え、上記センサネットワークは、各対象物が有意状態か、又は非有意状態かを同時に判別することを1回又は複数回実行し、上記制御手段は、上記センサネットワークによる判別結果に基づいて、2つの対象物間で共に有意状態にある場合に当該対象物間においてより正の相関に近づけることにより、又は当該対象物間でいずれか一方が非有意状態である場合に当該対象物間においてより負の相関に近づけることにより、上記相関関係を予め取得することを特徴とする。
【0012】
第2発明に係るセンサネットワークの休止制御システムは、第1発明において、上記制御手段は、上記センサネットワークにおける一のセンサから一の対象物が有意状態である旨を判別された場合には、予め取得した各対象物間の有意状態及び非有意状態の相関関係に基づいて、当該一の対象物と負の相関関係にある他の対象物に対して設置された他のセンサを休止状態とするように制御することを特徴とする。
【0013】
第3発明に係るセンサネットワークの休止制御システムは、第1又は第2発明において、上記制御手段は、当該一の対象物と正の相関関係にある他の対象物に対して設置された他のセンサを起動し続けるように制御することを特徴とする。
【0014】
第4発明に係るセンサネットワークの休止制御システムは、第2発明において、上記センサネットワークは、上記監視空間内にある3以上の対象物毎に上記センサを設置し、上記制御手段は、当該一の対象物と負の相関関係にある他の対象物に対して設置された他のセンサをリスト化し、これらリスト化された他のセンサを何れも休止状態とするように制御することを特徴とする。
【0015】
第5発明に係るセンサネットワークの休止制御システムは、第1発明において、上記センサネットワークは、上記監視空間としての家屋に設置され、家屋に配設される設備としての各対象物が有意状態か、又は非有意状態かを同時に判別することを1又は複数回実行し、上記制御手段は、複数の上記家屋からの上記センサネットワークによる判別結果に基づいて、互いに異なる対象物間で共に有意状態にある場合に当該対象物間の相関をより正に近づけ、いずれか一方が非有意状態である場合に当該備品間の相関をより負に近づけることにより、上記相関関係を予め取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述した構成からなる本発明によれば、有意状態を検出した一のセンサとの関係において、正の相関を持つ他のセンサについては最低限起動し続けることにより、有意状態を漏れなく検出することができ、検出精度を維持することができる。また、有意状態を検出した一のセンサとの関係において、負の相関にある他のセンサを休止させることで、センサの起動に要する電力を効果的に削減することができる。
【0018】
特に本発明によれば、住人の位置情報に依存することなく、そのセンサの起動に要する電力を効果的に削減することができる。このため、洗濯機や電子レンジ等のような家電機器等の対象物は、作動させつつ住人が別の部屋に居る場合もあるが、このような対象物も必要に応じてセンサを介して検出を継続させることができるため、検出漏れを防ぐことが可能となる。また、住人の位置情報を例えばGPS等により検出する必要も無くなり、さらに住人のプライバシーの観点からも問題も生じなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システムの全体構成を示す図である。
図2】監視空間としての家屋をスマートハウスで構成する場合の例を示す図である。
図3】家屋における各対象物に対してそれぞれセンサを割り当てた例を示す図である。
図4】本発明を適用した休止制御システムの処理動作について説明するための図である。
図5】複数のセンサが有意状態を検出した場合の処理動作について説明するための図である。
図6】本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システムの処理フローを示すフローチャートである。
図7】本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システムの作用効果を検証する上で行ったシミュレーションについて説明するための図である。
図8】本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システムの作用効果を検証する上で行ったシミュレーションについて説明するための他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システムを実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0021】
図1は、本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システム1の全体構成を示している。このセンサネットワークの休止制御システム1は、家屋3内に設置された各対象物11と、この各対象物11の状態を判別するセンサ21の集合からなるセンサネットワーク2とを備えている。また休止制御システム1は、このようなセンサネットワーク2がそれぞれ配備された複数の家屋3からのセンサデータを受信するセンサデータ集約局4と、このセンサデータ集約局4に対して広帯域回線を介して接続されたクラウドコンピューティングシステム5とを備えている。
【0022】
クラウドコンピューティングシステム5は、ネットワーク上に存在するサーバによって提供されるサービスなどを行うものであり、インターネットをベースとしたコンピュータの利用形態の一つである。クラウドコンピューティングシステム5を示す図1中の雲の中にはハードウェアやソフトウェアの実体があるが、その中身を意識することなく利用することができる。このようなクラウドコンピューティングシステム5は、一般的にクラウド提供業者によって提供される場合が多く、契約により処理の委託等を行うことで、1又は複数の情報処理装置(コンピュータ)を用いて目的の処理を実行することが可能となる。
【0023】
家屋3には、家電機器や照明機器、風呂周辺機器、さらには水道や電気の供給口、家具等を始めとした監視対象の対象物11が設置されている。ちなみにこの家屋3をスマートハウスで構成するようにしてもよい。スマートハウスは、IT(情報技術)を使用して家庭内のエネルギー消費が最適化されるように制御する可能ないわゆる省エネ住宅であり、家庭用のエネルギー監視システムであるエネルギー監理システム(Home Energy Management System)22が導入されている。図2は、この家屋3をスマートハウスで構成する場合の例を示している。エネルギー監理システム22は、家屋3に設置されたセンサネットワーク2に接続することによって構築される。エネルギー監理システム22は、このセンサネットワーク2を介して検出された各対象物11に関する情報に基づいて、家庭内におけるエネルギー消費量を監視し、それに基づいて家電の動作を管理、制御する。また、エネルギー監理システム22は、これら家庭内におけるエネルギーの消費量に関する情報や、家電の管理、制御情報を、図1に示すようにWSN(Wireless Sensor Network)を介して他の家屋3やセンサデータ集約局4へ送信する。なおエネルギー監理システム22により監視されているエネルギー消費量は、エネルギー監理システム22に接続されたスマートメータ23に表示させることにより、これを住人に対して可視化させるようにしてもよい。
【0024】
センサデータ集約局4は、各家屋3から送信されてきた情報を集約し、必要に応じてこれらを集計、解析した上でクラウドコンピューティングシステム5へと送信する。
【0025】
センサ21は、対象物の状態を判別する受信デバイスであり、例えば住人がいるか否かを、或いはドアの開閉等を判別するための赤外線センサや、室内の空気の温度や冷蔵庫内の温度等を測定するための温度センサ、家電機器の動作状態を判別するためのセンシング機器、照明が付いているか否かを判別するための照度センサ、水道が使用されているか否かを判別するための水道メータ等である。即ち、このセンサ21は、対象物の状態を判別することができるものであればいかなる形態を採用するものであってもよい。このセンサ21は、一の対象物11に対してそれぞれ一つずつ個別に割り当てられる。
【0026】
図3は、家屋3における各対象物11に対してそれぞれセンサ21を割り当てた例を示している。例えば、対象物11aはトイレであるが、このトイレの状態を検出するためのセンサ21aが割り当てられる。また対象物11bはバスルームであるが、このバスルームの状態を検出するためのセンサ21bが割り当てられる。対象物11cはキッチンにおけるIHクッキングヒーターであるが、このクッキングヒーターの状態を検出するためのセンサ21cが割り当てられる。対象物11dはダイニングルームにおける椅子であるが、この椅子の状態を検出するためのセンサ21dが割り当てられる。対象物11eはリビングルームにおける椅子であるが、この椅子の状態を検出するためのセンサ21eが割り当てられる。対象物11fはベッドであるが、このベッドの状態を検出するためのセンサ21fが割り当てられる。対象物11gは玄関のドアであるが、このドアの状態を検出するためのセンサ21gが割り当てられる。
【0027】
これら家屋3には、これらセンサ21a〜21gがノード状に配置されており、これらによりセンサネットワーク2が形成されることになる。そして、このセンサネットワーク2を構成する各センサ21a〜21gの検出情報は、それぞれに接続されているエネルギー監理システム22に集約されることとなる。また、このエネルギー監理システム22は、センサネットワーク2、ひいてはこれを構成するセンサ21a〜21gをそれぞれ制御することも可能となる。
【0028】
センサ21は、それぞれ割り当てられた対象物11に関する状態について、有意状態(以下、Valuable Event:VE)か又は非有意状態(以下、Negligible Event:NE)かを判別し、その判別結果をエネルギー監理システム22へ送信する。このとき、センサ21は、VEが検出された場合のみ、その判別結果をエネルギー監理システム22へと送信し、NEの場合には、特にその判別結果をエネルギー監理システム22へ送信しなくてもよいし、あえてNEである旨を送信するようにしてもよい。ちなみに、このVE又はNEの判別結果は、エネルギー監理システム22を介して他の家屋3やセンサデータ集約局4へ送信され、更にはこのセンサデータ集約局4を介してクラウドコンピューティングシステム5へと送信されることになる。即ち、センサ21によるVE、NEの判別結果は最終的にクラウドコンピューティングシステム5にレポートされることとなるが、このとき、VEが発生した場合のみレポートが行われ、NEが発生している場合は、特段レポートが行われない場合もあることは勿論である。
【0029】
ここでいうVE又はNEはユーザ側又はシステム側において自由に設定することができる。表1は、設定したVEの例を示している。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示すようにセンサ21におけるSbedは、対象物11として寝具(ベッド)の状態を検出するものである。このセンサ21におけるSbedは、ベッドの状態を監視し、住人がベッドで寝ている状態を検出した場合に、これをVEとして認識することとなる。また住人がベッドで寝ている状態以外は、何れもNEとして認識することとなる。
【0032】
センサ21におけるSseatは、対象物11として椅子の状態を検出するものである。このセンサ21におけるSseatは、椅子の状態を監視し、住人が椅子に座っている状態を検出した場合に、これをVEとして認識することとなる。また住人が椅子に座っている状態以外は、何れもNEとして認識することとなる。
【0033】
センサ21におけるSmaindoorは、対象物11として玄関のドアの状態を検出するものである。このセンサ21におけるSmaindoorは、玄関のドアの状態を監視し、玄関のドアが開いている状態を検出した場合に、これをVEとして認識することとなる。また玄関のドアが開いている状態以外、換言すれば玄関のドアが閉まっている状態は、何れもNEとして認識することとなる。
【0034】
センサ21におけるSshowerは、対象物11としてシャワーの状態を検出するものである。このセンサ21におけるSshowerは、シャワーの使用状態を監視し、シャワーが住人によって使用されている状態を検出した場合に、これをVEとして認識することとなる。またシャワーが住人によって使用されている状態以外は、何れもNEとして認識することとなる。
【0035】
センサ21におけるSTVは、対象物11としてテレビジョン受像機の状態を検出するものである。このセンサ21におけるSTVは、テレビジョン受像機の使用状態を監視し、テレビジョン受像機が住人によって使用されている状態を検出した場合に、これをVEとして認識することとなる。またテレビジョン受像機が住人によって使用されている状態以外は、何れもNEとして認識することとなる。
【0036】
センサ21におけるSmicrowaveは、対象物11として電子レンジの状態を検出するものである。このセンサ21におけるSmicrowaveは、電子レンジの使用状態を監視し、電子レンジの電源がONの状態を検出した場合に、これをVEとして認識することとなる。また電子レンジの電源がON以外、即ちOFFの状態を検出した場合は、NEとして認識することとなる。
【0037】
センサ21におけるSFridgeは、対象物11として冷蔵庫の状態を検出するものである。このセンサ21におけるSFridgeは、冷蔵庫の使用状態を監視し、冷蔵庫の電源がONの状態を検出した場合に、これをVEとして認識することとなる。また冷蔵庫の電源がON以外、即ちOFFの状態を検出した場合は、NEとして認識することとなる。
【0038】
なお、センサ21は、同じ対象物11としてのベッドの状態を検出する上で、VEの検出条件を任意に設定するようにしてもよい。例えばSbedは、住人がベッドで寝ていなくても、単にベッドから半径約3m以内に居る場合をVEと認識し、それ以外をNEと認識するようにしてもよい。また、例えばSFridgeは、冷蔵庫が空いている状態をVEと認識し、それ以外をNEと認識するようにしてもよい。
【0039】
また、上述した表1の例以外に、例えば室内の温度を計測するセンサ21がある場合には、例えば、住人が生活する上で最適な温度である16℃〜30℃はNEと認識し、住人が生活する上で特に高齢者にとって気温が低すぎる温度である16℃未満、又は高齢者にとって気温が高すぎる30℃超の場合には、VEと認識するようにしてもよい。これらVE、NEと認識する上での温度範囲も自由に設定可能であることは勿論である。
このようにしてそれぞれのセンサ21毎に設定されたVEが検出された場合には、価値のある有用な情報としてエネルギー監理システム22或いはクラウドコンピューティングシステム5により管理され、活用されることとなる。
【0040】
次に、本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システム1の実際の動作について説明をする。この休止制御システム1の処理動作を実行する上では、図4に示すように、センサネットワーク2に加えて、制御部10が必要となる。この制御部10は、大きく分類して論理相関行列生成ブロック6と、制御ブロック7を有している。制御部10は、例えばエネルギー監理システム22として具現化されるものであってもよいし、クラウドコンピューティングシステム5として具現化されるものであってもよい。また制御部10は、これらエネルギー監理システム22、或いはクラウドコンピューティングシステム5とは異なるデバイスとして具現化されるものであってもよい。何れの場合においても、この制御部10は、センサネットワーク2から各対象物11についての状態に関する情報を取得することができ、またセンサネットワーク2を構成するセンサ21毎にその状態を制御することが可能なデバイスとして具現化される。
【0041】
また制御部10内において論理相関行列生成ブロック6と、制御ブロック7が明確に区別されている場合に限定されるものではなく、これらの動作を一つのユニット又はフローで行うようにしてもよい。また論理相関行列生成ブロック6、並びに制御ブロック7において実行する処理の分担も後述に限定されるものではなく互いに異ならせてもよい。
【0042】
先ず学習用データの取得を行う。学習用データの取得は、センサネットワーク2を構成するセンサ21を介して、それぞれ対象物11がVEかNEかを検出する。
【0043】
表2は、センサ21におけるSbed、Sshower、STVについて実際に学習用データを取得した例を示している。表2中の"1"は、VEのデータが検出された旨を示すものであり、表2中の"0"は、NEのデータが検出された旨を示すものである。センサ21から得られるデータは、例えば温度や湿度、照度、電気使用量、家電機器のON又はOFFか、赤外センサの感度等、多岐に亘るものであるため、これらをVEか、或いはNEかで表示するために、“1”、又は“0”で表すことで、一元化して表示し、後段における論理相関の算出の効率を向上させる。
【0044】
この例では、タイムスロット1〜タイムスロット4の4回に分けて、それぞれセンサ21毎に学習用データを取得したものである。各タイムスロットにおいて、学習用データの取得時点は、センサ21におけるSbed、Sshower、STV間で互いに同時点とされている。表2の例では学習用データの取得回数が4回であるがこれに限定されるものではなく、いかなる取得回数とされていてもよい。この学習用データの取得回数が多くなるにつれて、学習精度が向上することになるため好ましい。また学習用データの取得は、所定のタイムスロット回数分のデータを取得した後に終了する場合に限定されるものではなく、随時更新されるものであってもよい。
【0045】
【表2】
【0046】
このようにしてセンサネットワーク2から得られた学習用データは、制御部10へ送られることとなる。
【0047】
制御部10ではこのような学習用データを受信し、論理相関行列生成ブロック6において解析を行うことにより論理相関を求める。
【0048】
論理相関行列生成ブロック6では、先ず得られた学習用データについて、様々なセンサ21から取得したデータに対して事前処理を施す(事前処理ステップS11)。この事前処理では、得られた表2に示すような学習用データをベクトルに変換する。このベクトル変換においては、Sshower、STVを例に挙げた場合に、これらの学習用データをそのままコピーしたベクトルCshower、CTVにより表示する。表3は、このCshower、CTVの例である。このベクトル変換を終了させた後、事前処理ステップS11を終了し、次のフィルタリングステップS12へ移行する。
【0049】
【表3】
【0050】
フィルタリングステップS12では、互いに比較する2つのベクトルのうち、ともに“0”の行を削除する処理を行う。表3の例では、Cshower、CTVにおける最上段の行は、ともに“0”であることから、この行は削除する(表4参照。)。
【0051】
【表4】
【0052】
センサ21におけるSshower、STVが同じタイムスロットにおいてともにNEを検出したということは、センサ21におけるSshower、STV間において互いに論理相関が無いことを意味している。かかる場合には、センサ21におけるSshower、STV間においてVEが同時に発生することは無い。このため、かかる行を消去しても全く問題は無く、またこれを消去することで全体の計算処理量を低減させることが可能となる。
【0053】
次に正規化ステップS13へ移行する。この正規化ステップS13では、ベクトルの正規化を行う。実際には、ステップS12においてフィルタリングしたベクトルCshower、CTVについて下記式に代入することにより、正規化を行う。
【0054】
【数1】
・・・・・・・・・・・・(1)
【0055】
【数2】
・・・・・・・・・・・・(2)
【0056】
【数3】
・・・・・・・・・・・・(3)
【0057】
この式においてiは、フィルタリング後のタイムスロットの通し番号を意味する。表4の例では、上から1段目がi=1、上から2段目がi=2、上から3段目がi=3である。また、(2)式のE(C)は、ベクトルCの平均値である。Kは、フィルタリング後のタイムスロットの数であり、表4の例では3である。(3)式のSD(C)は、ベクトルCの標準偏差である。
【0058】
表4のベクトルのデータ(2)式に代入してE(C)を求め、また(3)式に代入することによりSD(C)を求める。そして最後にこれら求めたE(C)、SD(C)を(1)式に代入することにより、正規化ベクトルCiを求める。表5は、求めた正規化ベクトルの例を示している。
【0059】
【表5】
【0060】
次にステップS14へ移行し、論理相関の計算を行う。この論理相関の計算は、ステップS13において求めた正規化ベクトルを、下記の(4)式に代入することにより行う。
【0061】
【数4】
・・・・(4)
【0062】
(4)式には、表5におけるCshower、CTVを代入することにより論理相関を計算する。これにより、論理相関係数r(Sshower、STV)を求めることができる。表6は、このようにしてSshower、STV、Sbed間において論理相関係数を求めた例を示している。
【0063】
【表6】
【0064】
上述したステップS11〜ステップS14の処理動作を、例えば表1に示す全てのセンサ21間において実行することにより、全てのセンサ21間の論理相関行列ができることとなる。例えば論理相関行列生成ブロック6より、以下の表7に示すような論理相関行列が生成されたものとする。
【0065】
【表7】
【0066】
この論理相関行列では、例えばSbed,Sseat間や、STV,Sseat間は、互いに正の論理相関である。即ち、過去の学習において、一方のセンサ21により対象物11についてVEが検出されている場合に、他方のセンサ21により対象物11についてVEが検出されている頻度が高いことを示している。例えば、Sbed,SseatのVEの相関が正であることは、住人がベッドで寝ている状態と、住人が椅子に座っていることが同時に行われている頻度が高いことが示されている。またSTV,SseatのVEの相関が正であることは、テレビジョン受像機が点いていることと、住人が椅子に座っていることが同時に行われている頻度が高く、特に相関係数が1であることから、一方がVEである場合に他方も100%VEであることが示されている。
【0067】
また、この論理相関行列では、例えばSbed,Sshower間や、Sseat,Sshower間は、互いに負の論理相関である。即ち、過去の学習において、一方のセンサ21により対象物11についてVEが検出されている場合に、他方のセンサ21により対象物11についてVEが検出されていない、換言すればNEが検出されている頻度が高いことを示している。例えば、Sbed,SshowerのVEの相関が負であることは、住人がベッドで寝ている状態と、シャワーが使われていることが同時に行われている頻度が低いことが示されている。またSseat,SshowerのVEの相関が負であることは、住人が椅子に座っていることと、シャワーが使われていることが同時に行われている頻度が低いことが示されている。
【0068】
即ち、2つのセンサ21間の全ての組み合わせに対して論理相関を求める。そして、2つのセンサ21が同時にVEを検出しているときには、論理相関をより正の相関へと近づける。一方のセンサ21がVEを検出している時点で、他方のセンサ21がNEを検出しているときは、負の論理相関に近づける。また一方のセンサ21がVEを検出しているときに、他方のセンサがVE、NEの何れを検出しているのか明確ではない場合、つまり、相関係数が0に近い場合には、論理相関が無いものと判断する。
【0069】
なお、論理相関行列を生成することは必須ではなく、単に2つのセンサ21間にて相関関係を判別するのみであってもよい。
【0070】
例えば表7に示す論理相関行列において、STV,Sshowerは、論理相関係数が0であり、ンサ21がVEを検出しているときに、他方のセンサがVE、NEの何れを検出しているのか明確ではなく、論理相関が無い場合である。しかしながら、このような場合においても、閾値を設定し、仮に閾値以上であれば正の論理相関である旨を判別し、閾値未満であれば負の論理相関である旨を判別する。例えば閾値が−0.3であれば、論理相関係数が0であっても正の論理相関である旨を判別することになる。なお、この閾値はシステム側、或いはユーザ側において自由に設定できる。
【0071】
論理相関行列生成ブロック6は、このようにして生成した論理相関行列を制御ブロック7へと送信する。制御ブロック7は、論理相関行列生成ブロック6から論理相関行列を受信し、これに基づいてセンサネットワークを制御する。
【0072】
制御ブロック7による制御を行う場合には、先ずセンサネットワーク2から最新のセンサデータを受信する。かかる場合には、センサネットワーク2を構成するセンサ21を介して、それぞれ対象物11がVEかNEかを検出し、これを制御ブロック7へと送信する。
【0073】
制御ブロック7は、各センサ21がそれぞれVEを受信したか否かを先ず判別する。その結果、NEを受信したセンサ21については処理フローから除外する。そして、一のセンサ21から一の対象物11がVEである旨を判別された場合には、予め取得した論理相関行列における相関関係に基づいて、他の対象物11に対して設置された他のセンサ21の状態を制御する。
【0074】
例えば、制御ブロック既に下記の表8の論理相関行列を取得している場合において、センサ21におけるSbedがVEである旨が判別された場合を検討する。事前学習の結果からSbedとの間で負の相関を持つのは、Sshower、STVである。つまり事前学習より、Sbedにより検出されている一の対象物11(ベッド)がVEである場合に、Sshower、STVにより検出されている他の対象物11(シャワー、テレビジョン受像機)がNEである頻度が圧倒的に高い。かかる場合にはSbedにより検出されている一の対象物11(ベッド)がVEを検出している時点では、Sshower、STVにより他の対象物11(シャワー、テレビジョン受像機)の状態を検出し続けても、結局はVEを検出できず、NEしか検出できない。換言すれば、Sbedにより検出されている一の対象物11(ベッド)がVEを検出している時点では、Sshower、STVにより他の対象物11(シャワー、テレビジョン受像機)の検出をし続けるのは無駄な動作になってしまい、これらSshower、STVのセンサ21の起動に要する電力が無駄になってしまう。このため、制御ブロック7は、このようなSbedとの間で負の相関を持つSshower、STVのセンサ21については休止状態となるように制御を行う。これにより、このSshower、STVのセンサ21について休止状態にできる分において、本システムにおいて使用する電力を削減することが可能となる。
【0075】
【表8】
【0076】
また、センサ21におけるSbedがVEである旨が判別された場合にこれと正の相関を持つのは、Sseatである。つまり事前学習より、Sbedにより検出されている一の対象物11(ベッド)がVEである場合に、Sseatにより検出されている他の対象物11(椅子)がVEである頻度が圧倒的に高い。かかる場合にはSbedにより検出されている一の対象物11(ベッド)がVEを検出している時点で、Sseatにより他の対象物11(椅子)の検出をし続けない限り、そこからVEを検出することができなくなってしまう。このため、制御ブロック7は、このようなSbedとの間で正の相関を持つSseatのセンサ21については休止状態とすることなく起動させ続けるように制御を行う。これにより、センサ21として基本的に求められる検出精度を維持すること可能となる。
【0077】
同様に、制御ブロック既に表8の論理相関行列を取得している場合において、センサ21におけるSTVがVEである旨が判別された場合においても、同様に他のセンサSbed、Sshower、Sseatとの間で予め取得した相関関係に基づいて処理動作を行う。事前学習の結果からSTVとの間で負の相関を持つのはSbedである。このため、STVにより検出されている一の対象物11(テレビジョン受像機)がVEを検出している時点では、Sbedにより他の対象物11(ベッド)の検出をし続けるのは無駄な動作になってしまい、これらSbedのセンサ21の起動に要する電力が無駄になってしまう。このため、制御ブロック7は、このようなSTVとの間で負の相関を持つSbedのセンサ21については休止状態となるように制御を行う。これにより、このSbedのセンサ21について休止状態にできる分において、本システムにおいて使用する電力を削減することが可能となる。
【0078】
また、センサ21におけるSTVがVEである旨が判別された場合にこれと正の相関を持つのは、Sseatである。かかる場合にはSTVにより検出されている一の対象物11(テレビジョン受像機)がVEを検出している時点で、Sseatにより他の対象物11(椅子)の検出をし続けない限り、そこからVEを検出することができなくなってしまう。このため、制御ブロック7は、このようなSTVとの間で正の相関を持つSseatのセンサ21については休止状態とすることなく起動させ続けるように制御を行う。これにより、センサ21として基本的に求められる検出精度を維持すること可能となる。
【0079】
センサ21におけるSTVがVEである旨が判別された場合にこれと相関係数が0であり、特段相関を持たないSshowerについては、上述のように閾値を設定し、仮に閾値以上であれば正の論理相関である旨を判別し、閾値未満であれば負の論理相関である旨を判別する。例えば閾値が−0.3であれば、論理相関係数が0であっても正の論理相関である旨を判別することになる。
【0080】
これらの動作を全てのVEを検出したセンサ21について実行することにより、表8の論理相関行列を構成する全ての行にあるセンサ21について、正の相関を有する他のセンサ21のみ起動させ続け、それ以外の負の相関を有する他のセンサ21を休止させることが可能となる。
【0081】
即ち、本発明によれば、VEを検出した一のセンサ21との関係において、正の相関を持つ他のセンサ21については最低限起動し続けることにより、VE検出を漏れなく行うようにすることでセンサ21として基本的に求められる検出精度を維持することができる。また、VEを検出した一のセンサ21との関係において、負の相関にある他のセンサ21を休止させることで、センサ21の起動に要する電力を効果的に削減することができる。
【0082】
特に本発明によれば、住人の位置情報に依存することなく、そのセンサの起動に要する電力を効果的に削減することができる。このため、洗濯機や電子レンジ等のような家電機器等の対象物11は、作動させつつ住人が別の部屋に居る場合もあるが、このような対象物11も必要に応じてセンサ21を介して検出を継続させることができるため、検出漏れを防ぐことが可能となる。また、住人の位置情報を例えばGPS等により検出する必要も無くなり、さらに住人のプライバシーの観点からも問題も生じなくなる。
【0083】
なお、上述した例では、一のセンサ21との間で相関係数が正である他のセンサ21を何れも正の相関を有するものと判断し、一のセンサ21との間で相関係数が負である他のセンサ21を何れも負の相関を有するものと判断しているが、これに限定されるものではない。相関係数がx以上(xは0〜1までの数)を正の相関である旨を判断し、相関係数がy以下(yは0〜−1までの数)を負の相関である旨を判断するようにしてもよい。ちなみに、ここでいうx、yはユーザ側又はシステム側において自由に設定可能とされていてもよい。
【0084】
さらに上述した例では、大きく分類して、VEを検出した一のセンサ21との関係において、正の相関を持つ他のセンサ21、負の相関を持つ他のセンサ21、特段の相関を持たない他のセンサ21の大きく3段階に分類し、それぞれに応じて異なる制御を行う場合について説明をしたが、これに限定されるものではない。例えば、VEを検出した一のセンサ21との相関係数に応じて4段階以上に亘り他のセンサ21を分類するようにしてもよい。
【0085】
その一例としては、VEを検出した一のセンサ21との相関係数が、−1以上−0.5未満をグレードA、−0.5以上−0.2未満をグレードB、−0.2以上0.2未満をグレードC、0.2以上0.5未満グレードD、0.5以上1以下をグレードEの5段階に分類してよい。つまり、相関が低い順から高いほうへグレードA〜Eにランク付けしたものである。そして、グレードAに近づくほど他のセンサ21に使用する電力を低くする。これにより、相関が低いセンサ21から段階的にセンサ21に使用する電力を低くすることができるため、電力の削減と、検出精度とのバランスを図ることが可能となる。
なお、本発明によれば、予め取得した各対象物11間の有意状態及び非有意状態の相関関係に基づいて、他の対象物11に対して設置された他のセンサ21の状態を制御するものであれば、その制御の具体的な内容はいかなるものであってもよい。
【0086】
また、本発明では、制御ブロック6による制御を簡略化させる観点から、VEを検出した一のセンサに対して負の相関を有する他のセンサ21を休止させ、その休止対象外の全てのセンサ21は、VEを検出する可能性があるものと判定して起動させ続けるようにしてもよい。
【0087】
また図5に示すように、センサネットワーク2から最新のセンサデータを受信したとき、VEを検出しているセンサ21として、SA、SB、SCの複数が同時に存在していた場合においても同様に、これら複数のセンサ21と負の相関のある他のセンサ21を選択する。例えば、これら3つのセンサ21(SA、SB、SC)と負の相関の高いセンサ21として、SE、SF、SGの3つを選択するものとする。これらSE、SF、SGは、センサ21(SA、SB、SC)に対して1つでも負の相関があれば選択するものとする。そして、この選択したSE、SF、SGを休止させる。一方、選択されなかったセンサ21(SD、SH)については、起動の対象とする。
【0088】
図6は、本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システム1の処理フローを示している。
【0089】
先ずステップS21において学習用データの取得を行う。このステップS21の詳細は、上述したステップS11〜S14において記載したとおりである。
【0090】
次にステップS22へ移行し、制御ブロック6は、センサネットワーク2から最新のセンサデータを受信する。
【0091】
次にステップS23へ移行し、センサネットワーク2を構成する各センサ21について、それぞれVEが検出できているか否かを判別する。その結果、VEを検出しているセンサ21が存在していない場合には、再びステップS22へ戻る。一方、VEを検出することができたセンサ21が存在していた場合には、ステップS23へ移行する。以下、このVEを検出することができたセンサ21をSMAという。
【0092】
次にステップS24へ移行し、制御ブロック6は、SMAと異なる他のセンサ21の検出を試みる。このステップS24においてSMAとは異なる他のセンサ21(SMB)を検出することができた場合にはステップS25へ移行する。これに対して、検出したセンサ21がSMAと同一であればステップS26へ移行する。
【0093】
ステップS25に移行し、ステップS24において検出した他のセンサ21(SMB)がアクティブか否かを判別する。その結果、このセンサ21(SMB)が動作中であればステップS27へ移行し、動作中ではなく休止中であればステップS28へ移行する。
【0094】
ステップS27へ移行した場合には、センサ21(SMA)と、センサ21(SMB)との相関係数r(SMA、SMB)を上述したような論理相関行列から参照する。そして、r(SMA、SMB)≦αであるか否かを判別する。αは、負の相関である旨を判断する上での閾値であり、ユーザ側又はシステム側において自由に設定することが可能となる。r(SMA、SMB)≦αであれば、SMBとSMBとは互いに負の相関である旨を判別し、ステップS29へ移行してVEを検出したSMBに対してSMBを休止状態に制御する。これに対して、r(SMA、SMB)≦αでなければ、SMBとSMBとは互いに正の相関である旨を判別する。かかる場合には、VEを検出したSMBに対してSMBを動作させ続けることにより、SMBにとって必要なVEの検出を漏れなく継続することで検出精度を向上させる必要がある。この場合には、ステップS30へ移行し、SMBを特段休止させることなく、動作させ続ける。なお、ステップS29の動作を完了させた後もステップS30へ移行する。
【0095】
一方、ステップS28へ移行した場合には、既にセンサ21におけるSMBは、休止状態に入っている。このフェーズにおいて、r(SMA、SMB)≦αであるか否かを判別する。r(SMA、SMB)≦αであれば、SMBとSMBとは互いに負の相関である旨を判別し、ステップS31へ移行してVEを検出したSMBに対してSMBの休止状態を継続させる。これに対して、r(SMA、SMB)≦αでなければ、SMBとSMBとは互いに正の相関である旨を判別する。かかる場合には、VEを検出したSMBに対してSMBを起動させることにより、SMBにとって必要なVEの検出を漏れなく継続することで検出精度を向上させる必要がある。この場合には、ステップS30へ移行し、SMBを休止状態から起動させる。
【0096】
ステップS30に移行した場合には、SMBと比較をする他のセンサ21のうち、SMBとは異なる他のセンサ21に移行する。即ち、表8の例において、SMAがSbedであり、SMBがSshowerであると仮定した場合に、このステップS30では、このSshowerとは異なる他のSTVを選択して、再びステップS24に戻り、同様の処理を繰り返す。そして、Sbedの行について、他のセンサ21につき全て判別が終了すると、ステップS26へ移行する。ステップS26では、次のSMAに移行する。表8でいうところのSMAがSbedから、他の異なる行のSshowerに移行し、その後ステップS23へ戻り、同様の処理を繰り返す。これにより、論理相関行列を構成する全てについてセンサ21を制御することが可能となる。
【0097】
センサネットワークの休止制御システム1は、家屋3に配置される場合に限定されるものではなく、他のいかなるものを監視対象とするものであってもよい。この家屋3以外を監視対象とする場合においても同様に、その監視空間内にある全ての対象物毎にセンサ21を設置したセンサネットワーク2により構成することが可能となる。
【0098】
なお本発明においては、一のセンサ21と正の相関関係にある他のセンサが既に休止状態にある場合に、これを再度起動させる制御を行うものであってもよいことは勿論である。
【0099】
また、本発明においては、学習用データに基づいて論理相関行列を得るまでのステップについては必須とならない。即ち、上述の如き論理相関行列を予め本システム内、又は本システム外において作成しておき、実際に制御ブロック7による制御を行うときまでに、このような相関行列を取得しておくことで、上述の作用効果を得ることができることは勿論である。
【実施例1】
【0100】
表1に示すセンサ21により各VEを検出する場合を例にとり説明をする。事前学習においてSbedに対して他の対象物11が何れも負の相関を示した場合には、住人が就寝している状態をSbedによりVEとして検出した際には、他の全てのセンサ21を何れも休止状態とする。これにより、住人が就寝中は、他のセンサ21を休止させることで使用電力の低減を図ることができる。また住人が就寝中は、他のセンサ21によりVEを検出される機会が殆ど無いため、これらを全て休止させても検出精度の面において特段問題は生じない。
【0101】
これに対して、ベッドでテレビを見る習慣のある住人は、事前学習の際に、SbedとSTVとが互いに正の相関となる場合が多い。かかる場合には、住人が就寝している状態をSbedによりVEとして検出した際には、STVについては休止させることなくそのまま作動させ続け、それ以外のセンサ21を何れも休止状態とする。これにより、住人がベッドに寝ているときは、STVによりVEが検出される可能性が高いためそのまま動作させ続けることで検出漏れを無くすことができ、それ以外の他のセンサ21を休止させることで使用電力の低減を図ることができる。このようにして住人の生活習慣に応じたセンサ21の休止制御も実現することが可能となる。
【実施例2】
【0102】
以下、本発明を適用したセンサネットワークの休止制御システム1の作用効果を検証する上で行ったシミュレーションについて説明をする。
【0103】
先ず、文献“Ordonez, Fco Javier, Paula de Toledo, and Araceli Sanchis. "Activity recognition using hybrid generative/discriminative models on home environments using binary sensors."Sensors13.5 (2013): 5460-5477.”に開示されているスマートハウスの実環境から収集したセンシングデータを取得し、数値計算を行った。
【0104】
本発明例以外の比較例1は、位置情報に応じたセンサの制御方式(LSSM)を採用している。このLSSMでは、住人の位置情報に応じてセンサ21の制御を全て行う。この方式では、住人のいる部屋のセンサは全て動作させ、それ以外の部屋のセンサは全て休止させる。本発明例以外の比較例2では、センサの制御を一切行うことなく常時起動させる。
【0105】
本シミュレーションの評価指標としては、VEの検出率(VHR)とセンサのアクティブ時間率(APR)の2種がある、VHRは、発生したVEを検出した確率である。即ち、このVHRは検出精度を表すものである。また、(APR)は、センサのアクティブ時間の全評価時間帯に対する割合である。即ち、このAPRはセンシングの消費エネルギー量を表すものである。比較例2は、センサを一切休止させずに常時起動させるため、VHR、APRともに1となる。
【0106】
図7は、このVHRの評価結果である。横軸は、それぞれのセンサ21の種別であり、縦軸は、VHRの値である。結果から、本発明例と比較例2は、高いVHRの値となっており検出精度が優れていた。これに対して、比較例1は、住人の位置情報に依存する分において、特にトイレについてVHRの値が低くなっていた。即ち、比較例1では、住人がトイレ以外の場所にいた時に、トイレ内のセンサ21を休止させてしまい、ひいてはトイレに発生したVEを検出することができなかった。
【0107】
これに対して、図8は、このAPRの評価結果である。横軸は、それぞれのセンサ21の種別であり、縦軸は、APRの値である。本発明例がもっとも消費電力を低減させることができ、ついで比較例1、比較例2が続くという結果となっていた。
【0108】
比較例1では、住人がいる部屋にある複数のセンサ21は全て起動させる。このため、比較例2よりは消費電力を低減できることが示されている。これに対して、本発明例では、住人がいる部屋にある複数のセンサ21のうち、更に詳細な相関関係に基づいて、センサ21を休止させる場合もある。このため、比較例1よりもシステム全体で見た場合における消費電力を低減できていることが示されていた。
【符号の説明】
【0109】
1 休止制御システム
2 センサネットワーク
3 家屋
4 センサデータ集約局
5 クラウドコンピューティングシステム
6 論理相関行列生成ブロック
7 制御ブロック
10 制御部
11 対象物
21 センサ
22 エネルギー監理システム
23 スマートメータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8