【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスター局の仮基準局送信制御手段による仮基準局への校正信号送信指示は、所定時間毎に連続して行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の周波数校正システム。
前記マスター局の仮基準局送信制御手段から仮基準局への校正信号送信指示は、有線による直接通信で行うようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の周波数校正システム。
前記スレーブ局の時刻校正手段は、予め定めた時刻補正実行条件が達成されるまで校正時刻差ΔTを複数回に亘って取得し、その平均である平均値で被校正クロックの時刻を補正するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の周波数校正システム。
前記スレーブ局の時刻校正手段は、校正時刻差ΔTから計時基準周波数の逆数の整数倍となる粗調整時刻差ΔTcと、計時基準周波数の逆数に満たない微調整時刻差ΔTfとを求め、粗調整時刻差ΔTcに基づいて被校正クロックの時刻カウンタを校正し、微調整時刻差ΔTfを計時基準周波数信号との位相差に換算した時刻微調整位相差ΔΦfを求めて、前記周波数校正手段へ供給し、
前記スレーブ局の周波数校正手段は、時刻校正手段より供給された時刻微調整位相差ΔΦfに基づいて、位相ロックポイントを修正するようにしたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の周波数校正システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明では、GPS衛星からの時間情報をマスターサイトとスレーブサイトで同時に受信する必要があるため、事前の準備が非常に煩雑であり、利便性が高いとは言えないし、その分だけ高コストになってしまう。加えて、特許文献1に記載の発明では、GPS衛星から情報を受信した後に,マスターサイトとスレーブサイト間で受信データを比較する必要があるために、別途通信手段を設けなければならない点でも、利便性が低い。
【0006】
そこで、本発明は、マスター局におけるマスタークロックの周波数発生器とスレーブ局におけるスレーブクロックの周波数発生器との位相差を簡便かつ低コストで取得して、スレーブクロックの発振周波数を校正できる周波数校正システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係る周波数校正システムは、時計の基準となり得る高精度の計時基準周波数の信号を生成する周波数発生器が備わったマスタークロックを用いて無線通信を行うマスター局と、自局の通信用周波数信号を生成する周波数発生器が備わった仮基準クロックを有し、該仮基準クロックで生成した搬送波時計の基準となり得る高精度の計時基準周波数の信号を生成する周波数発生器が備わったマスタークロックを用いて無線通信を行うマスター局と、自局の通信用周波数信号を生成する周波数発生器が備わった仮基準クロックを有し、該仮基準クロックで生成した搬送波に所要の送信情報を乗せた校正信号を送信する仮基準局と、自局時計の基準として用いる計時基準周波数の信号を生成する周波数発生器が備わった被校正クロックを備え、前記仮基準局からの校正信号を受信して、被校正クロックの計時基準周波数をマスタークロックの計時基準周波数に校正する1又は複数のスレーブ局と、から成る周波数校正システムであって、前記マスター局には、仮基準局より第1時刻t1に送信された校正信号を受信して、校正信号の搬送波とマスタークロックで生成した基準周波数信号との位相差であるマスター局位相差ΦM
t1を求めるマスター局位相差取得手段と、前記第1時刻t1から校正信号の送受信に必要十分な時間が経過した第2時刻t2に、前記マスター局位相差ΦM
t1を送信情報として含む校正信号を送信するよう仮基準局へ指示する仮基準局送信制御手段と、を設け、前記仮基準局には、前記マスター局からの送信指示に基づき、仮基準クロックで生成した仮基準周波数の搬送波に送信情報を乗せた校正信号を送信する校正信号送信手段、を設け、前記スレーブ局には、前記仮基準局より第1時刻t1に送信された校正信号を受信して、校正信号の搬送波と被校正クロックで生成した被校正周波数信号との位相差であるスレーブ局位相差ΦS
t1を求めるスレーブ局位相差取得手段と、前記仮基準局より第2時刻t2に送信された校正信号を受信して、仮基準局からの送信情報であるマスター局位相差ΦM
t1を取得するマスター局情報取得手段と、前記仮基準クロックによる仮基準周波数信号と被校正クロックによる被校正周波数信号との位相差であるスレーブ局位相差ΦS
t1と、同じく仮基準クロックによる仮基準周波数信号とマスタークロックによる基準周波数信号との位相差であるマスター局位相差ΦM
t1との差を求めることで、被校正クロックによる被校正周波数信号とマスタークロックによる基準周波数信号との位相差である校正位相差ΔΦ
t1を得る校正位相差取得手段と、前記校正位相差取得手段により取得した校正位相差ΔΦ
t1に基づいて、被校正クロックの計時基準周波数がマスタークロックの計時基準周波数となるように位相ロックさせる周波数校正手段と、を設けたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の周波数校正システムにおいて、前記マスター局の仮基準局送信制御手段による仮基準局への校正信号送信指示は、所定時間毎に連続して行うようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の周波数校正システムにおいて、前記マスター局の仮基準局送信制御手段から仮基準局への校正信号送信指示は、有線による直接通信で行うようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の周波数校正システムにおいて、前記マスター局には、仮基準局より第1時刻t1に送信された校正信号を受信した時刻であるマスター局受信時刻TM
t1を前記マスタークロックより取得するマスター局受信時刻取得手段を設け、前記仮基準局送信制御手段は、前記マスター局位相差ΦM
t1およびマスター局受信時刻TM
t1を送信情報として仮基準局へ指示し、前記スレーブ局には、仮基準局より第1時刻t1に送信された校正信号を受信した時刻であるスレーブ局受信時刻TS
t1を前記被校正クロックより取得するスレーブ局受信時刻取得手段と、前記マスター局情報取得手段が仮基準局より第2時刻t2に送信された校正信号より取得したマスター局受信時刻TM
t1と、スレーブ局受信時刻取得手段により取得したスレーブ局受信時刻TS
t1との差である校正時刻差ΔT
t1を求める校正時刻差取得手段と、前記校正時刻差取得手段によって取得された校正時刻差ΔT
t1に基づいて、被校正クロックの時刻カウンタを補正する時刻校正手段と、を設けるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の周波数校正システムにおいて、前記スレーブ局の時刻校正手段は、予め定めた時刻補正実行条件が達成されるまで校正時刻差ΔTを複数回に亘って取得し、その平均である平均値で被校正クロックの時刻を補正するようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、請求項4又は請求項5に記載の周波数校正システムにおいて、前記スレーブ局の時刻校正手段は、校正時刻差ΔTから計時基準周波数の逆数の整数倍となる粗調整時刻差ΔTcと、計時基準周波数の逆数に満たない微調整時刻差ΔTfとを求め、粗調整時刻差ΔTcに基づいて被校正クロックの時刻カウンタを校正し、微調整時刻差ΔTfを計時基準周波数信号との位相差に換算した時刻微調整位相差ΔΦfを求めて、前記周波数校正手段へ供給し、前記スレーブ局の周波数校正手段は、時刻校正手段より供給された時刻微調整位相差ΔΦfに基づいて、位相ロックポイントを修正するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る周波数校正システムによれば、マスター局の制御下におかれる仮基準局から第1時刻t1と第2時刻t2に送信する2回分の校正信号を受信可能なスレーブ局において、被校正クロックで生成される被校正周波数とマスタークロックで生成される基準周波数との位相差である校正位相差ΔΦ
t1を簡便に得ることができ、被校正クロックの被校正周波数をマスタークロックの基準周波数と同等精度に校正することが可能となる。しかも、スレーブ局が校正位相差ΔΦ
t1を求めるために必要なマスター局側の情報を、第2時刻t2に送信される校正信号によってスレーブ局へ送ることができるので、マスター局側の情報をマスター局からスレーブ局へ送るための通信手段を別途設ける必要がない点でも利便性が高い。よって、低コストで利便性の高い周波数校正システムを構築できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る周波数校正システムの実施形態につき説明する。なお、本実施形態における周波数校正システムでは、周波数校正に加えて、時刻校正も可能なものとした。
【0016】
図1に示す周波数校正システム1は、マスター局2と、該マスター局2と有線で接続されて送信タイミング等を制御される仮基準局3と、該仮基準局3が所定の通信プロトコルに基づいて送信する校正信号を受信可能な第1スレーブ局4a、第2スレーブ局4b、第3スレーブ局4c、第4スレーブ局4dから成る。なお、第1〜第4スレーブ局4a〜4dは、例示に過ぎず、1局のスレーブ局のみで構成することもできるし、数百〜数億のスレーブ局が散在していても構わない。また、各スレーブ局4a〜4dに必須の構成は同じであるから、以下の説明で特にスレーブ局の区別を要しない場合は、単にスレーブ局4という。また、マスター局2と仮基準局3のペアを複数箇所に分散配置すれば、仮基準局3による送信エリアが狭くても、より広範囲にあるスレーブ局4の周波数校正を実現できる。
【0017】
マスター局2は、上記仮基準局3より送信される校正信号(後に詳述する)をアンテナ21および受信機22で受信する。この受信機22では、時計の基準となり得る高精度のマスタークロック23から供給される周波数信号を用いる。また、受信機22によって得られた情報はPC等で構成した演算処理装置24に供給され、この演算処理装置24によって仮基準局3を制御する。なお、マスター局2から仮基準局3への制御は、無線通信で行う事も可能であるが、有線接続であれば、信頼性の高い制御を行える利点がある。
【0018】
仮基準局3は、マスター局2の制御下にあり、マスター局2の演算処理装置24からの指示に基づくタイミングで所要の情報を含んだ校正信号をアンテナ31より送信する。なお、仮基準局3の送信機32は、マスター局2の演算処理装置24から供給された所要情報を、仮基準クロック33より供給される周波数信号の搬送波に変調信号として乗せて送信する。
【0019】
スレーブ局4は、仮基準局3より送信された校正信号をアンテナ41及び受信機42で受信する。この受信機42では、上記マスタークロック23に比べて精度が落ちる被校正クロック43から供給される周波数信号を用いる。また、受信機42によって得られた情報はPC等で構成した演算処理装置44に供給され、この演算処理装置44によって被校正クロック43の校正を行う。すなわち、スレーブ局4で用いるスレーブクロックが、周波数及び時刻の校正対象となる被校正クロック43である。
【0020】
次に、周波数校正システム1を構成する各局の詳細な構成を説明する。
【0021】
まず、周波数校正システム1における動作開始に当たっては、マスター局2における演算処理装置24の仮基準局送信制御手段24bが、仮基準局3における送信機32の校正信号送信手段32aに指示したタイミング(例えば、第1時刻)で、仮基準クロック33の周波数発生器33aによって生成した周波数信号の搬送波に所要情報を変調信号して乗せた校正信号を送信する。ただし、初回の校正信号送信時には、マスター局2の演算処理装置24から送信すべき所要情報が指示されていない。
【0022】
なお、この校正信号の送信手法は特に限定されるものではなく、マスター局2およびスレーブ局4で容易に受信できる通信プロトコルを用いれば、本発明の周波数校正システム1を導入し易いので、利便性を高められる。例えば、近距離無線通信規格の一つであるZigBee(登録商標)を採用した市販の無線通信装置を仮基準局3として用い、2.4GHz帯で校正信号の送信を行えば、無線免許が必要なく、且つマスター局2による仮基準局3の制御も容易である。
【0023】
上記のようにして、第1時刻に仮基準局3より送信された校正信号を受信するマスター局2では、受信機22の復調手段22aによって校正信号を復調する。この復調処理には、マスタークロック23の周波数発生器23aで発生させた基準周波数と、時刻カウンタ23bによって計時される時刻情報が用いられ、復調信号が時系列に演算処理装置24へ入力される。なお、マスタークロック23の時刻カウンタ23bには、極めて高精度の周波数発生器23aから計時基準周波数の信号が供給されており、このクロックをカウントすることで、時刻カウンタ23bの時刻は高精度な時刻となる。なお、時刻カウンタ23bにて更新される時刻を可視表示する時刻表示器を別途設けても良い。
【0024】
上記復調手段22aからの復調信号は、演算処理装置24の搬送波位相および時刻取得手段24aに入力され、搬送波位相を取得する。この搬送波位相とは、校正信号の搬送波(仮基準局3における仮基準クロック33の周波数発生器33aで発生させた基準周波数信号)とマスタークロック23の周波数発生器23aで生成した基準周波数信号との位相差(以下、マスター局位相差ΦM
t1という)である。なお、この搬送波位相および時刻取得手段24aでは、マスター局2における校正信号の受信時刻(以下、マスター局受信時刻TM
t1という)も取得する。
【0025】
このように、マスター局2の受信機22とマスタークロック23と演算処理装置24が協働することで、「仮基準局より第1時刻に送信された校正信号を受信して、校正信号の搬送波とマスタークロックで生成した基準周波数信号との位相差であるマスター局位相差ΦM
t1を求めるマスター局位相差取得手段」としての機能と、「仮基準局より第1時刻に送信された校正信号を受信した時刻であるマスター局受信時刻TM
t1を前記マスタークロックより取得するマスター局受信時刻取得手段」としての機能を備えるものとなる。なお、マスター局位相差取得手段およびマスター局受信時刻取得手段によるマスター局位相差ΦM
t1、マスター局受信時刻TM
t1の取得手法は特に限定されるものではなく、デジタル無線通信の直交変調・復調の原理を用いたデジタル処理で求めても良いし、アナログ的に求めるようにしても構わない。
【0026】
上記のようにして搬送波位相および時刻取得手段24aにより取得されたマスター局位相差ΦM
t1、マスター局受信時刻TM
t1は、演算処理手段24の仮基準局送信制御手段24bへ供給され、上記第1時刻から校正信号の送受信に必要十分な時間(例えば、0.1秒)が経過した第2時刻に、前記マスター局位相差ΦM
t1およびマスター局受信時刻TM
t1を送信情報として含む校正信号を送信するよう仮基準局3における送信機32の校正信号送信手段32aへ指示する。なお、周波数校正システム1としては、校正信号に含ませる送信情報はマスター局位相差ΦM
t1だけでも良いが、マスター局受信時刻TM
t1も併せて送信情報に含ませるようにすれば、スレーブ局4の時刻を高精度に校正することが可能となる。
【0027】
そして、マスター局2における演算処理装置24の仮基準局送信制御手段24bからの送信指示を受けた仮基準局3における送信機32の校正信号送信手段32aは、第2時刻に、仮基準クロック33の周波数発生器33aで生成した仮基準周波数の搬送波に送信情報(マスター局位相差ΦM
t1およびマスター局受信時刻TM
t1)を変調して搬送波に乗せた校正信号(2回目)を送信する。
【0028】
上記のようにして第2時刻に仮基準局3より送信された校正信号(2回目)を受信したマスター局2では、上述したと同様に、マスター局位相差ΦM
t2およびマスター局受信時刻TM
t2を取得し、上記第2時刻から校正信号の送受信に必要十分な時間(例えば、0.1秒)が経過した第3時刻に、前記マスター局位相差ΦM
t2およびマスター局受信時刻TM
t2を送信情報として含む校正信号を送信するよう仮基準局3における送信機32の校正信号送信手段32aへ指示する。これにより、仮基準局3における送信機32の校正信号送信手段32aは、第3時刻に、仮基準クロック33の周波数発生器33aで生成した仮基準周波数の搬送波に送信情報(マスター局位相差ΦM
t2およびマスター局受信時刻TM
t2)を乗せた校正信号(3回目)を送信する。
【0029】
以下、同様にして、N回目の校正信号には、N−1回目の校正信号受信時にマスター局2が取得した送信情報(マスター局位相差ΦM
N-1およびマスター局受信時刻TM
N-1)が変調されて搬送波に乗せられることとなる。後述するように、スレーブ局4において周波数校正および時刻校正を行うためには、最低限、連続した2回の校正信号を受信できれば良いのであるが、本実施形態の周波数校正システム1のように、マスター局2の仮基準局送信制御手段24bによる仮基準局3への校正信号送信指示を、所定時間毎に連続して行えば、スレーブ局4は、テレビ放送やラジオ放送を受信するように、任意のタイミングで校正信号を受信して周波数校正および時刻校正を行う事ができるので、利便性の高いものとなる。
【0030】
なお、仮基準局3より送信される校正信号が何回目であるかは、校正信号の送信情報の一つとして含ませたパケットID(例えば、連続する送信番号)によってマスター局2およびスレーブ局4で知ることができる。また、校正信号の送信情報として、マスター局2に固有の通信局IDもしくは仮基準局3に固有の通信局IDを含めておけば、校正のためのマスタークロック23がどのマスター局2のものかを判定できる。例えば、マスター局2Aの制御下にある仮基準局3Aとマスター局2Bの制御下にある仮基準局3Bの両局から校正信号を受信できる位置にあるスレーブ局4では、仮基準局3Aからの校正信号と仮基準局3Bからの校正信号とを識別できるので、何れか一方の仮基準局からの校正信号を選んで、周波数校正および時刻校正に用いることができる。
【0031】
上記のようにして、第1時刻に仮基準局3より送信された校正信号を受信するスレーブ局4では、受信機42の復調手段42aによって校正信号を復調する。この復調処理には、被校正クロック43の周波数発生器43aで発生させた基準周波数と、時刻カウンタ43bによって計時される時刻情報が用いられ、復調信号が時系列に演算処理装置44へ入力される。なお、被校正クロック43の時刻カウンタ43bには、上述したマスタークロック23の周波数発生器23aに比べて低精度の周波数発生器43aから計時基準周波数の信号が供給されており、このクロックをカウントすることで、時刻カウンタ43bは自局内時刻を計時している。なお、時刻カウンタ43bにて更新される時刻を可視表示する時刻表示器を別途設けても良い。
【0032】
上記復調手段42aからの復調信号は、演算処理装置44の搬送波位相および時刻取得手段44aに入力され、搬送波位相を取得する。この搬送波位相とは、校正信号の搬送波(仮基準局3における仮基準クロック33の周波数発生器33aで発生させた基準周波数信号)と被校正クロック43の周波数発生器43aで生成した基準周波数信号との位相差(以下、スレーブ局位相差ΦS
t1という)である。なお、この搬送波位相および時刻取得手段44aでは、スレーブ局4における校正信号の受信時刻(以下、スレーブ局受信時刻TS
t1という)も取得する。
【0033】
このように、スレーブ局4の受信機42と被校正クロック43と演算処理装置44が協働することで、「仮基準局より第1時刻t1に送信された校正信号を受信して、校正信号の搬送波と被校正クロックで生成した被校正周波数信号との位相差であるスレーブ局位相差ΦS
t1を求めるスレーブ局位相差取得手段」としての機能と、「仮基準局より第1時刻t1に送信された校正信号を受信した時刻であるスレーブ局受信時刻TS
t1を前記被校正クロックより取得するスレーブ局受信時刻取得手段」としての機能を備えるものとなる。なお、スレーブ局位相差取得手段およびスレーブ局受信時刻取得手段によるスレーブ局位相差ΦS
t1、スレーブ局受信時刻TS
t1の取得手法は特に限定されるものではなく、デジタル無線通信の直交変調・復調の原理を用いたデジタル処理で求めても良いし、アナログ的に求めるようにしても構わない。
【0034】
上記搬送波位相および時刻取得手段44aによって取得したスレーブ局位相差ΦS
t1は校正位相差取得手段44cに供給され、スレーブ局受信時刻TS
t1は校正時刻差取得手段44dに供給される。校正位相差取得手段44cおよび校正時刻差取得手段44dは、それぞれスレーブ局位相差ΦS
t1およびスレーブ局受信時刻TS
t1を記憶しておく。
【0035】
また、復調手段42aにて復調された復調信号は、受信情報取得手段44bへも供給され、コード化された送信情報を復号する。しかしながら、第1時刻に仮基準局3より送信された校正信号(1回目)には、変調信号としてマスター局位相差およびマスター局受信時刻が含まれていないので、1回目の校正信号受信時には、受信情報取得手段44bから校正位相差取得手段44cおよび校正時刻差取得手段44dに供給する情報は無い。
【0036】
上記第1時刻から校正信号の送受信に必要十分な時間(例えば、0.1秒)が経過した第2時刻に仮基準局3より送信された校正信号(2回目)をスレーブ局4で受信すると、搬送波位相および時刻取得手段44aによって取得したスレーブ局位相差ΦS
t2は校正位相差取得手段44cに供給され、スレーブ局受信時刻TS
t2は校正時刻差取得手段44dに供給されて、少なくとも次回の校正信号受信処理まで記憶保持される。
【0037】
加えて、2回目の校正信号には、送信情報としてマスター局位相差ΦM
t1およびマスター局受信時刻TM
t1が含まれているので、受信情報取得手段44bによりデコードされ、マスター局情報(マスター局位相差ΦM
t1、マスター局受信時刻TM
t1)を取得する。すなわち、スレーブ局4の受信機42と被校正クロック43と演算処理装置44が協働することで、「仮基準局より第2時刻t2に送信された校正信号を受信して、仮基準局からの送信情報であるマスター局位相差ΦM
t1およびマスター局受信時刻TM
t1を取得するマスター局情報取得手段」としての機能を備えるものとなる。なお、マスター局位相差ΦM
t1は、演算処理装置44の校正位相差取得手段44cに供給され、マスター局受信時刻TM
t1は、演算処理装置44の校正時刻差取得手段44dに供給される。
【0038】
校正位相差取得手段44cは、スレーブ局位相差ΦS
t1(仮基準局3における仮基準クロック33の周波数発生器33aが生成した仮基準周波数信号と、スレーブ局4における被校正クロック43の周波数発生器43aが生成した被校正周波数信号との相対的な位相差)とマスター局位相差ΦM
t1(仮基準局3における仮基準クロック33の周波数発生器33aが生成した仮基準周波数信号と、マスター局2におけるマスタークロック23の周波数発生器23aが生成した基準周波数信号との相対的な位相差)との差である校正位相差ΔΦ
t1を求める。この校正位相差ΔΦ
t1は、被校正クロック43の周波数発生器43aが生成する被校正周波数信号とマスタークロック23の周波数発生器23aが生成する基準周波数信号との位相差である。
【0039】
この校正位相差ΔΦ
t1は周波数校正手段44eへ供給される。この周波数校正手段44eは、校正位相差ΔΦ
t1に基づいて被校正クロック43の周波数発生器43aを制御し、周波数発生器43aから時刻カウンタ43bに出力される計時基準周波数が、マスタークロック23の周波数発生器23aが時刻カウンタ23bに出力される計時基準周波数と一致するように位相ロックさせる。これにより、スレーブ局4の被校正クロック43をマスタークロック23並みの精度に校正することができる。
【0040】
また、校正時刻差取得手段44dは、マスター局受信時刻TM
t1(第2時刻に仮基準局3から送信された校正信号の送信情報に含まれていた情報)とスレーブ局受信時刻TS
t1(第1時刻に搬送波位相および時刻取得手段44aにより取得した情報)との差である校正時刻差ΔT
t1を求める。
【0041】
この校正時刻差ΔT
t1は時刻校正手段44fへ供給される。この時刻校正手段44fは、校正時刻差ΔT
t1に基づいて、被校正クロック43の時刻カウンタ43bの時刻を補正するのである。なお、仮基準局3からマスター局2までの距離と、仮基準局3からスレーブ局4までの距離が異なれば、それだけ両局の受信時刻に誤差が生じてしまうため、スレーブ局4の時刻校正手段44fによって行う時刻カウンタ43bに対する時刻校正を行っても、マスタークロック23の時刻カウンタ23bの時刻と完全に一致させることはできないが、十分実用的な精度での時刻校正が可能である。
【0042】
ここで、
図2を参照しつつ、スレーブ局4で行う周波数校正および時刻校正を時系列に説明する。
【0043】
例えば、マスター局2からの指示により、仮基準局3からN回目の校正信号が送信されたとき、これをスレーブ局4は第1時刻における校正信号として受信したものとする。N回目の校正信号には、送信情報としてマスター局位相差ΦM
N-1およびマスター局受信時刻TM
N-1が含まれており、これを受信したスレーブ局4の受信機42は、受信情報としてマスター局位相差ΦM
N-1およびマスター局受信時刻TM
N-1を取得すると共に、スレーブ局位相差ΦS
Nおよびスレーブ局受信時刻TS
Nを取得し、これらを演算処理装置44へ供給する。なお、スレーブ局4においては、これが最初の校正信号受信であるから、マスター局位相差ΦM
N-1およびマスター局受信時刻TM
N-1は使用しない。また、マスター局2では、仮基準局3からN回目の校正信号を受信して、マスター局位相差ΦM
Nおよびマスター局受信時刻TM
Nを取得しておく。
【0044】
続いて、マスター局2からの指示により、仮基準局3からN+1回目の校正信号が送信されると、これをスレーブ局4は第2時刻における校正信号として受信する。N+1回目の校正信号には、送信情報としてマスター局位相差ΦM
Nおよびマスター局受信時刻TM
Nが含まれており、これを受信したスレーブ局4の受信機42は、受信情報としてマスター局位相差ΦM
Nおよびマスター局受信時刻TM
Nを取得すると共に、スレーブ局位相差ΦS
N+1およびスレーブ局受信時刻TS
N+1を取得し、これらを演算処理装置44へ供給する。
【0045】
演算処理装置44では、N回目の校正信号受信時に受け取ったスレーブ局位相差ΦS
Nおよびスレーブ局受信時刻TS
Nと、今回(N+1回目)に受け取ったマスター局位相差ΦM
Nおよびマスター局受信時刻TM
Nに基づいて、校正位相差ΔΦ
Nと校正時刻差ΔT
Nを求める。ここで、N回目の校正信号受信時に求めた校正位相差ΔΦ
N=ΦS
N−ΦM
N、N回目の校正信号受信時に求めた校正時刻差ΔT
N=TS
N−TM
N、である。
【0046】
続いて、マスター局2からの指示により、仮基準局3からN+2回目の校正信号が送信されると、これをスレーブ局4は3回目の送信信号として受信する。N+2回目の校正信号には、送信情報としてマスター局位相差ΦM
N+1およびマスター局受信時刻TM
N+1が含まれており、これを受信したスレーブ局4の受信機42は、受信情報としてマスター局位相差ΦM
N+1およびマスター局受信時刻TM
N+1を取得すると共に、スレーブ局位相差ΦS
N+2およびスレーブ局受信時刻TS
N+2を取得し、これらを演算処理装置44へ供給する。
【0047】
演算処理装置44では、N+1回目の校正信号受信時に受け取ったスレーブ局位相差ΦS
N+1およびスレーブ局受信時刻TS
N+1と、今回(N+2回目)に受け取ったマスター局位相差ΦM
N+1およびマスター局受信時刻TM
N+1に基づいて、校正位相差ΔΦ
N+1と校正時刻差ΔT
N+1を求める。ここで、N+1回目の校正信号受信時に求めた校正位相差ΔΦ
N+1=ΦS
N+1−ΦM
N+1、N+1回目の校正信号受信時に求めた校正時刻差ΔT
N+1=TS
N+1−TM
N+1、である。
【0048】
上述したように、本実施形態に係る周波数校正システム1によれば、マスター局2の制御によって仮基準局3より連続的に校正信号を送信させるので、スレーブ局4は、被校正クロック43で生成される被校正周波数とマスタークロック23で生成される基準周波数との位相差である校正位相差ΔΦを簡便に得ることができ、仮基準局3からの伝搬時間が変動しなければ、被校正クロック43の被校正周波数をマスタークロック23の基準周波数と同等精度に校正することが可能となる。しかも、スレーブ局4が校正位相差ΔΦを求めるために必要なマスター局2側の情報(マスター局位相差ΦM
t1およびマスター局受信時刻TM
t1)を、校正信号によって送ることができるので、マスター局2側の情報をマスター局2からスレーブ局4へ送るための通信手段を別途設ける必要がない点でも利便性が高い。よって、低コストで利便性の高い周波数校正システムを構築できる。
【0049】
また、周波数校正システム1において、マスター局2とスレーブ局4とは、クロック精度による相対的な関係において定まるもので、マスター局2のマスタークロック23並みに高精度に校正された被校正クロック43を持つスレーブ局4をマスター局として機能させることも可能である。例えば、スレーブ局4の制御下におかれるサブ仮基準局を設けておき、マスター局2の制御下におかれる仮基準局3からの校正信号によって周波数校正・時刻校正を行ったスレーブ局4が、サブ仮基準局からサブ校正信号を送信すれば、このサブ校正信号を受信可能なサブスレーブ局では、スレーブ局4の被校正クロック43を基準とする周波数校正・時刻校正が可能となる。
【0050】
加えて、本実施形態に係る周波数校正システム1によれば、スレーブ局4の被校正クロック43の時刻をマスター局2のマスタークロック23並みの時刻に校正できる。なお、時刻校正手段44fは、被校正クロック43の周波数発生器43aにより生成される計時基準周波数をマスタークロック23の周波数発生器23aにより生成される計時基準周波数に一致するように位相ロックしたうえで、予め定めた時刻補正実行条件が達成されるまで校正時刻差取得手段44dより校正時刻差ΔTを複数回に亘って取得し、それら校正時刻差ΔTの平均値で被校正クロックの時刻を補正するようにしても良い。すなわち、校正時刻差ΔTを取得する度に時刻カウンタ43bを補正せずに、補正が必要と考えられるタイミングでのみ時刻校正を行うのである。これは、スレーブ局4において、被校正クロック43の周波数発生器43aにより生成される計時基準周波数がマスタークロック23の周波数発生器23aにより生成される計時基準周波数に一致するように位相ロックしているため、スレーブ局4の時刻とマスター局2の時刻とに生ずるズレを、極めて微少な値に抑えられるからである。なお、時刻補正実行条件は、校正時刻差ΔTの取得回数が600回(約1分)に達することや、校正時刻差ΔTの平均値が時刻カウンタ43bのクロックアップ間隔を超えたタイミング、校正時刻差ΔTの平均値の分散が所定の値以下になったタイミング等である。
【0051】
また、スレーブ局4の時刻校正手段44fは、校正時刻差ΔTから計時基準周波数の逆数(1周期長)の整数倍となる粗調整時刻差ΔTcと、計時基準周波数の逆数(1周期長)に満たない微調整時刻差ΔTfとを求め、粗調整時刻差ΔTcに基づいて被校正クロック43の時刻カウンタ43bを校正し、微調整時刻差ΔTfを計時基準周波数信号との位相差に換算した時刻微調整位相差ΔΦfを求めるようにしても良い。この時刻微調整位相差ΔΦfを周波数校正手段44eへ供給すると、周波数校正手段44eが時刻微調整位相差ΔΦfに基づいて、位相ロックポイントを修正する。すなわち、時刻カウンタ43bに対する時刻校正は粗調整時刻差ΔTcにより粗調整し、それでは調整しきれない微調整時刻差ΔTfを周波数発生器43aの位相をマスター周波数発生器23aに対してΔΦfだけずらすことによって微調整するのである。このように、時刻校正手段44fと周波数校正手段44eとが協働して時刻校正を行うと、一層高精度の時刻合わせが可能となる。なお、微調整位相差ΔΦfが2πを超える値を取る場合には、一度にずらすのではなく、2πよりも十分に小さい値に分けて、その小さい値ずつロックし直すことを繰り返せば、2πを超える微調整位相差ΔΦf分の微調整が可能になる。
【0052】
以上、本発明に係る周波数校正システムを実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての周波数校正システムを権利範囲として包摂するものである。