(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548123
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】RFタグ
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20190711BHJP
H01Q 9/30 20060101ALI20190711BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20190711BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 240
G06K19/077 280
G06K19/077 296
G06K19/077 156
H01Q9/30
H01Q1/38
H01Q1/42
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-40743(P2016-40743)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-157068(P2017-157068A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】514174213
【氏名又は名称】株式会社フェニックスソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉村 詩朗
(72)【発明者】
【氏名】庭田 達次
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 準登
【審査官】
境 周一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−087726(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0068209(US,A1)
【文献】
特開2006−039991(JP,A)
【文献】
特開2015−225579(JP,A)
【文献】
特開2010−185809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 1/00−21/08
H01Q 1/00−9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空隙を有する導体製部材の当該空隙内に取り付けられるRFタグであり、
自由空間アンテナと、共振回路と、ICチップと、閉鎖空間アンテナと、当該閉鎖空間アンテナを支持する基板を少なくとも備えており、
前記自由空間アンテナはその一部が前記空隙から外部に露出しており、
前記基板は前記閉鎖空間アンテナを前記導体製部材の内面に接触させずに支持することを特徴とするRFタグ。
【請求項2】
前記自由空間アンテナがヘリカルアンテナであることを特徴とする請求項1に記載のRFタグ。
【請求項3】
受信電波の波長をλとした場合に、
前記自由空間アンテナが外部に露出している部分の電気的長さがλ/4であることを特徴とする請求項1又は2に記載のRFタグ。
【請求項4】
前記自由空間アンテナが外部に露出している部分を覆うキャップを備えており、当該キャップが電波を透過する素材から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のRFタグ。
【請求項5】
前記閉鎖空間アンテナ、前記基板及び前記導体製部材でコンデンサ部が構成され、当該コンデンサ部の容量を調整することで共振周波数を調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のRFタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はRFタグに関し、特に、内部に空隙を有する導体製の部材に対して、当該空隙内に取り付けることができ、且つ高い通信性能を有するRFタグを提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)が利用されている。
RFIDシステムで使用するRFタグにはアンテナ及びICチップが格納されており、リーダ・ライタのアンテナから送信された搬送波をRFタグのアンテナで受信し、ICチップに記録されている識別データ等を反射波に乗せてリーダ・ライタへ返送することで非接触で交信する仕組みになっている。
【0003】
RFタグの用途の一つとして、各種部材に取り付けることで当該部材の個数管理、廃棄管理、位置管理等を行うことが挙げられる。
例えば特許文献1には、コンピュータの製造工場等において、ディスプレイ、電源、バッテリー等の部品それぞれにRFタグを取り付け、各作業台でRFタグに格納された各種情報を読み取りながら組み立てていく物品製造システムが開示されている。
また、特許文献2には、荷物搬送用ボックスの表面の一部にRFタグを取り付ける個数管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−181557号公報
【特許文献2】特開2003−226434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来技術では以下のような問題がある。
すなわち、いずれの技術もRFタグを部品や荷物搬送用ボックスの表面に露出させた状態で取り付けることで読み取り精度を高めている。
しかし、RFタグが表面に露出していると、組み立て時や搬送時に他の部品やボックス等がRFタグに衝突し、破損してしまうおそれがある。
また、RFタグ全般の問題として、RFタグを導体(金属物等)に近づけると共振周波数がずれてしまい通信に支障が出るという問題や、RFタグを取り付けた面の裏側の面に電波を照射した場合には通信できないという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような問題を考慮して、内部に空隙を有する導体製の部材に対して、当該空隙内に取り付けることができ、且つ高い通信性能を有するRFタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のRFタグは、内部に空隙を有する導体製部材の当該空隙内に取り付けられるRFタグであり、自由空間アンテナと、共振回路と、ICチップと、閉鎖空間アンテナと、当該閉鎖空間アンテナを支持する基板を少なくとも備えており、前記自由空間アンテナはその一部が前記空隙から外部に露出しており、前記基板は前記閉鎖空間アンテナを前記導体製部材の内面に接触させずに支持することを特徴とする。
また、前記自由空間アンテナがヘリカルアンテナであることを特徴とする。
また、受信電波の波長をλとした場合に、前記自由空間アンテナが外部に露出している部分の電気的長さがλ/4であることを特徴とする。
また、前記自由空間アンテナが外部に露出している部分を覆うキャップを備えており、当該キャップが電波を透過する素材から成ることを特徴とする。
また、前記閉鎖空間アンテナ、前記基板及び前記導体製部材でコンデンサ部が構成され、当該コンデンサ部の容量を調整することで共振周波数を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、RFタグの大部分が導体製部材の空隙内に位置することになるので、RFタグが衝突等により破損する事態を防止できる。
また、本発明のRFタグでは、導体製部材の空隙内に位置する閉鎖空間アンテナを基板が支持する。その際に基板は閉鎖空間アンテナを導体製部材の内面に接触させずに支持するので、閉鎖空間アンテナ、基板及び導体製部材でコンデンサ部が形成される。これにより、閉鎖空間アンテナと導体製部材とが電気的に接続されることになり、閉鎖空間アンテナに接続するICチップと導体製部材とを電気的に接続して、導体製部材全体をアンテナとして利用できる。リーダ・ライタから送信された搬送波を導体製部材で受信することができるので、高い通信性能を得ることができる。
また、閉鎖空間アンテナの長さを変えることでコンデンサ部の容量を調整し、共振周波数を調整することができる。
なお、「閉鎖空間アンテナと導体製部材とが電気的に接続される」場合としては、上述のようにコンデンサ部を介して接続される場合以外に、閉鎖空間アンテナと導体製部材とを直接接触させる場合も挙げられる。閉鎖空間アンテナと導体製部材とを直接接触させるとコンデンサ部が形成されないので共振周波数の調整が難しくなり通信性能は劣るが、RFタグとして機能を果たすことはできる。
【0009】
また、自由空間アンテナとしてヘリカルアンテナを用いる場合、ヘリカルアンテナは水平垂直の両偏波の成分をもつため、無指向性という特徴を活かして確実に通信できる。この特徴を利用すればRFタグの受信・送信感度を向上できると共に、RFタグを取り付けた導体製部材が移動しても安定した通信ができる。
なお、本発明において「導体」とは一般的な意味と同様に「電気の伝導率が比較的大きな物質の総称」(広辞苑)であり、例えば金属、炭素繊維、人体、動物の体、草木、水、地面などが挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない。
また、プラスチック等の電波を透過する素材から成るキャップを用いて自由空間アンテナが外部に露出している部分を覆うことにすればRFタグの防水・防塵性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】RFタグを取り付けた状態の導体製部材の内部を示す図
【
図3】RFタグを取り付けた状態の導体製部材の透視図
【
図5】電波の受信状態及びコンデンサ部を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のRFタグの実施の形態について図面を用いて説明する。
図1〜
図3に示すように、RFタグ1は、内部に空隙101を有する導体製部材100の当該空隙101内に取り付けられることで、当該導体製部材100の識別等の各種管理を行うものである。
本実施の形態では内部に空隙101を有する導体製部材100として金属製のパイプを用いるものとする。導体製部材100は内部に空隙101を有する部材であればよく、長手方向に直交する平面における断面形状は円形に限らず、多角形であってもよい。
【0012】
RFタグ1は自由空間アンテナ10、共振回路20、ICチップ30、閉鎖空間アンテナ40、基板50及びキャップ60から概略構成されている。なお、
図3ではキャップ60の図示を省略している。
自由空間アンテナ10は第1の導体11及び第2の導体12で概略構成される。
基板50には多数の透孔13の列を前後方向に沿って一定間隔で左右2本設けている。
第1の導体は基板50の表面側において当該基板50の左右方向に対して傾斜した状態で左右の透孔13を繋いでいる。
第2の導体は基板50の裏面側において当該基板50の左右方向に対して傾斜した状態で左右の透孔13を繋いでいる。
そして、これら第1の導体11と第2の導体12を、透孔13を通して電気的に接続することで全体として所定長さのコイルを構成している。
【0013】
基板50の後方側に設けた透孔13の近傍にランド14を設けている。ランド14同士を電気的に接続することでジャンパー線15とし、自由空間アンテナ10の共振周波数を微調整することができる。
自由空間アンテナ10はその一部が導体製部材100の空隙101から外部に露出しており、露出している部分の電気的長さが使用周波数λの1/4になっている。
なお、自由空間アンテナ10として、他にもヘリカルアンテナやバーアンテナを使用してもよい。
【0014】
共振回路20とICチップ30は基板50の表面に形成されている。
図4は本実施の形態のRFタグ1の等価回路図である。符号Lはコイルを指しており、第1コンデンサC1と共振回路20を構成している。なお、第1コンデンサC1を設けずにICチップ30内のコンデンサを利用して共振回路20を構成することにしてもよい。
ICチップ30はリーダ・ライタから送信される搬送波W(
図5参照)の一部を整流し、動作するために必要な電源電圧を生成する。そして、生成した電源電圧によってICチップ30内の制御用の論理回路等が格納されたメモリ、及びリーダ・ライタとのデータの送受信を行うための通信回路等を動作させる。なお、ICチップ30に対して外部電源を入力して作動させてもよい。
【0015】
閉鎖空間アンテナ40はその一方の端部がICチップ30に接続された状態で基板50上を前後方向にのびている。
基板50は閉鎖空間アンテナ40を導体製部材100の内面に接触させないように支持している。
図5に示すように、閉鎖空間アンテナ40、基板50及び導体製部材100で第2コンデンサC2が構成される。これにより、閉鎖空間アンテナ40と導体製部材100とが電気的に接続されることになり、導体製部材100全体をアンテナとして利用することができる。また、閉鎖空間アンテナ40の長さを変えることで第2コンデンサC2の容量を調整し、共振周波数を調整することができる。
なお、閉鎖空間アンテナ40としては棒形状以外にメアンダ形状であってもよいし、或いはコイル形状であってもよい。
また、
図6に示すように、基板50と導体製部材100の内面との間にスペーサー16を介在させることで閉鎖空間アンテナ40を導体製部材100の内面に接触させないようにしてもよい。
【0016】
キャップ60は自由空間アンテナ10が外部に露出している部分を覆うための部材であり、電波を透過する素材から成る。キャップ60を使用することでRFタグ1が防水・防塵性能を得ることができる。
本実施の形態では基板50をキャップ60の内側に固定し、キャップ60を導体製部材100に固定することでRFタグ1自体を導体製部材100に固定している。なお、自由空間基板50の側面を導体製部材100の内面に固定することでRFタグ1自体を導体製部材100に固定することにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、内部に空隙を有する導体製の部材に対して、当該空隙内に取り付けることができ、且つ高い通信性能を有するRFタグに関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0018】
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
L コイル
W 搬送波
1 RFタグ
10 自由空間アンテナ
11 第1の導体
12 第2の導体
13 透孔
14 ランド
15 ジャンパー線
16 スペーサー
20 共振回路
30 ICチップ
40 閉鎖空間アンテナ
50 基板
60 キャップ
101 空隙
100 導体製部材