(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
茸栽培用培養液
本発明の茸栽培用培養液は、米糠の水懸濁液を破砕撹拌して得られた米糠破砕抽出物を含有することを特徴とする。
【0018】
(米糠破砕抽出物)
米糠破砕抽出物は、米糠の水懸濁水を破砕撹拌して得られる。
米糠とは、玄米を精白して白米を製造する際に副生するものであって、玄米の果皮、種皮、外胚乳、糊粉層等が含まれる。本発明では、米糠として、玄米を精白した際に副生したものをそのまま用いてもよいし、更に乾燥又は加熱処理したものを用いてもよい。また、米糠の市販品を用いてもよい。
【0019】
米糠の水懸濁液に使用される水は、特に限定されず、水道水、イオン交換水、蒸留水、超純水等のいずれであってもよいが、不純物が少ない点で、イオン交換水、蒸留水又は超純水が好ましい。
【0020】
米糠の水懸濁液に含まれる水と米糠の比率は、茸の生育のための栄養源として必要とされる量に応じて適宜設定でき、例えば、水100質量部に対して米糠は20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましい。栄養源の量が多い程、茸の生育は良好となるので、茸栽培用培養液に含まれる米糠破砕抽出物の濃度は高い方が好ましい。より高濃度の米糠破砕抽出物を含む茸栽培用培養液とするには、水と米糠の比率は、水100質量部に対して米糠が60質量部以上であってもよい。米糠が多すぎると米糠破砕抽出液が効率良く得られないため、水100質量部に対して米糠は100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましい。茸栽培用培養液を効率良く製造できる観点からは、水100質量部に対して米糠は30質量部以上80質量部以下が好ましく、30質量部以上45質量部以下がより好ましい。
【0021】
破砕撹拌は、米糠の組織を物理的に破砕することである。破砕撹拌は、米糠の組織を破砕することができる方法であれば、特に限定されず、例えば、回転撹拌羽根により米糠を破砕するミルミキサー等により行うことができる。本発明における破壊撹拌は、家庭用ミキサー等でも行うことができる。
【0022】
破砕撹拌は、抽出効率や米糠の変性などの観点から、0〜40℃で行うことが好ましく、15〜35℃で行うことがより好ましい。
【0023】
米糠の水懸濁液を破砕撹拌した後、固形分を除去して米糠破砕抽出物を得ることができる。ここでの固形分とは、比較的粒径の大きい米糠の水不溶性の破砕残留物である。米糠破砕抽出物は、破砕撹拌後の米糠の懸濁液から前記固形分を除去した液体画分である。
【0024】
前記固形分を除去して液体画分を回収する方法としては、水懸濁液を固相と液相に分離できる方法であれば特に限定されず、例えば、フィルターを用いたろ過、フィルタープレス、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いることができ、なかでも、ろ過が好ましい。前記固形分の除去では、水懸濁液中に含まれる粒径約100μm以上のものが除去されることが好ましい。
【0025】
前記固形分を除去して得られる米糠破砕抽出物中には、微小な米糠の水不溶性破砕残留物が残存していてもよい。微小な残留物を除去するのにコストがかかるので、粒径が100μm程度より小さい微小残留物は含んでいてもよい。前記米糠破砕抽出物(液体画分)に含まれる米糠の水不溶性破砕残留物は、従来の、米糠の水懸濁液を高温高圧処理して、同様に固形分を除去して得られた熱湯抽出液に含まれる水不溶性の残留物と比べると、粒子がより小さく、均一である。
【0026】
前記液体画分である米糠破砕抽出物(「米糠破砕抽出液」ともいう。)は、従来の前記熱湯抽出液と比較して収量が多い。これは、前述のとおり、米糠破砕抽出液に含まれる水不溶性破砕残留物が、熱湯抽出液に含まれる水不溶性残留物より粒子が小さく、均一であるため、水懸濁液から液体画分を効率良く回収することができ、その結果、米糠破砕抽出液の収量が、熱湯抽出液よりも高くなると考えられる。
また、米糠破砕抽出液では、一週間程度静置しても水不溶性破砕残留物が沈降せず、分離がみられない。このことも、水不溶性破砕残留物の粒子が小さく、均一であるからと考えられる。
【0027】
米糠破砕抽出物に含まれる水不溶性破砕残留物は、水と分離しない程度の粒子の小ささであることが好ましい。具体的には、前記水不溶性破砕残留物の粒径としては、10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。前記粒径は、光学顕微鏡(拡大倍率600倍)で直接観察された粒子の直径を30点測定し、平均値を算出して得られた値である。
【0028】
前述の液体画分である米糠破砕抽出液に、更に米糠を添加して破砕撹拌することにより、より高濃度の米糠破砕抽出物を含む培養液を製造することができる。前記米糠破砕抽出液は、粘性が比較的低い。これは、破砕抽出により得られる米糠破砕抽出物の成分が熱で変性されていないためと考えられる。
【0029】
前述の液体画分を回収することにより得られる米糠破砕抽出液は、後述するように、そのまま茸栽培用培養液として使用することができる。また、米糠破砕抽出液を、濃縮したり、希釈したりして、茸栽培用培養液として使用することもできる。更に、米糠破砕抽出液を乾燥させて水分を除去して粉末状の米糠破砕抽出物を調製してもよい。粉末状の米糠破砕抽出物は、使用時に水と適宜混合して、茸栽培用培養液として使用できる。前記米糠破砕抽出液の濃縮液、又は、前記粉末状の米糠破砕抽出物は、茸栽培用培養液の栄養源の添加剤として使用することができる。
【0030】
(茸栽培用培養液)
本発明の茸栽培用培養液は、前述の米糠破砕抽出物を含む。
前述したように、前述の液体画分を回収することにより得られる米糠破砕抽出液は、茸栽培用培養液としてそのまま使用することができる。また、前記米糠破砕抽出液を濃縮したり、水を添加して希釈したりして、茸栽培用培養液として使用することもできる。濃縮方法としては、特に限定されず、減圧蒸留等の公知の方法で行うことができる。更に、前記米糠破砕抽出液を乾燥して水分を除去して調製した粉末状の米糠破砕抽出物に水を適宜添加して、茸栽培用培養液として使用することもできる。乾燥方法としては、特に限定されず、流動層乾燥、風乾、棚乾燥、凍結乾燥等の公知の方法により行うことができる。
【0031】
本発明の茸栽培用培養液における米糠破砕抽出物の量は、茸の生育に十分な量であれば特に限定されないが、例えば、米糠原料換算で、好ましくは200g/L以上であり、より好ましくは300〜1000g/Lであり、更に好ましくは400〜1000g/Lであり、特に好ましくは400〜800g/Lである。
なお、米糠原料換算量とは、その米糠破砕抽出物量を得るために要した米糠の量である。具体的には、原料に用いた米糠の重量(g)を得られた抽出液の量(L)で除した値である。
【0032】
本発明の茸栽培用培養液は、茸の生育に必要な炭素源又は窒素源を含む。炭素源又は窒素源としては、たんぱく質、脂質又は炭水化物が挙げられる。培養液中のこれらの濃度は、茸の生育に必要とされる炭素源及び窒素源の量となるよう適宜設定すればよい。
前記炭素源又は窒素源となるたんぱく質、脂質及び炭水化物は、含有量が多いほど、一般に茸の生育がより良好となるが、例えば、これらの含有量は、通常、茸栽培用培養液100mL中、たんぱく質が1〜3.6g程度、脂質が2〜7g程度、炭水化物が2〜7g程度である。
なお、たんぱく質の量はケルダール法により測定して得られる値である。脂質の量は、ソックスレー抽出法により測定して得られる値である。炭水化物の量は、後述するように、100−(水分+たんぱく質+脂質+灰分)の計算法により算出して得られる値である。
【0033】
前記の米糠破砕抽出物を含む本発明の茸栽培用培養液は、茸栽培の栄養源として十分な成分を含むものであるが、必要に応じて他の栄養源を含んでいてもよい。他の栄養源としては、例えば、ふすま、コーンブラン、オカラ、ビール酵母、ダイズ粕等の不溶性栄養源;これらの不溶性栄養源の水抽出物、スクロース、カザミノ酸、無機塩類、塩酸チアミン等の可溶性栄養源等の従来公知の栄養源が挙げられる。これらの栄養源は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
栽培用培地中の栄養源の含量については、栽培対象となる茸の種類、使用する栄養源の種類等に応じて適宜設定すればよい。本発明において、不溶性栄養源の使用量を減らす程、栽培後に培養基材の再利用のための回収が容易になるため、不溶性栄養源の使用量は低量であることが好ましい。不溶性栄養源の使用量を低減する場合、不溶性栄養源の水抽出物を使用することにより、茸の生育に必要とされる栄養源を補うことができる。使用される栽培用培地において、可溶性栄養源と不溶性栄養源の添加比率については、使用する各栄養源の種類と菌糸の増殖具合等を勘案して、適宜設定すればよい。
【0035】
本発明の茸栽培用培養液は、後述するように各種茸の栽培に広く適用することができる。また、本発明の茸栽培用培養液は、従来公知の茸の栽培方法に広く適用することができる。また、本発明の茸栽培用培養液は、茸の種菌の培養にも適用することができる。
【0036】
このように本発明の茸栽培用培養液は、茸栽培に好適な培養液であるが、茸以外の培養液として適用することもできる。本発明の茸栽培用培養液を適用し得る対象としては、特に限定されないが、例えば、茸以外の菌類が挙げられ、具体的には、カビ、酵母、植物病原菌等が挙げられる。
【0037】
茸栽培用培養液の製造方法
本発明の茸栽培用培養液の製造方法は、米糠の水懸濁液を破砕撹拌する工程、及び、固形分を除去して米糠破砕抽出物を得る工程を含むことを特徴とする。
前記米糠の水懸濁液を破砕撹拌する工程としては、前述の「米糠破砕抽出物」の項に記載の、米糠の水懸濁液を破砕撹拌する方法と同様の方法が挙げられる。前記固形分を除去して米糠破砕抽出物を得る工程としては、前述の「米糠破砕抽出物」の項に記載の、固形分を除去して米糠破砕抽出物を得る方法と同様の方法が挙げられる。
【0038】
本発明の茸栽培用培養液を用いた茸の栽培方法、及び、茸の種菌の培養方法を以下に詳述する。
茸の栽培方法、及び、茸の種菌の培養方法
(栽培対象となる茸)
本発明に用いることができる茸の種類については、特に限定されず、例えば、ヒラタケ、エノキタケ、エリンギ、タモギタケ、ブナシメジ、ナメコ、ハタケシメジ、シイタケ、マイタケ、ヤナギマツタケ等が挙げられる。これらの中でも、ヒラタケ、エノキタケ、タモギタケ、ブナシメジ、エリンギ、ヤナギマツタケ、シイタケは、本発明における栽培方法の適用対象茸として好適である。また、本発明の栽培方法は、従来公知の茸のみならず、将来、新たに発見又は作出される茸に対しても適用することができる。
【0039】
(栽培用培地)
茸の栽培方法、又は、茸の種菌の培養方法において、栽培用培地として、前述の茸栽培用培養液と、培養基材とを含む栽培用培地を使用する。前述の茸栽培用培養液と、培養基材とを含む茸栽培用培地もまた本発明の一つである。
【0040】
(培養基材)
茸の菌床栽培、又は、茸の種菌の培養方法において使用される培養基材としては、特に限定されず、おが屑(おが粉)、段ボール紙、球状木材等の木質系基材、ガラスビーズ、セラミックボール等の無機系基材、合成樹脂材からなる粒状基材、繊維基材等の公知のものが挙げられる。なかでも、培養基材としては、栽培後の廃棄物の量を少なくすることができる点で、再利用可能な繊維基材が好ましい。
【0041】
本発明において、再利用可能な繊維基材とは、繊維で形成されている基材であり、茸栽培培地用又は茸種菌培養用の培養基材として一度使用しても、一般的な家庭用洗濯機又は商業用の洗濯機等で洗浄して再利用することができるものを指す。
【0042】
茸の菌床栽培の培養基材として使用される再利用可能な繊維基材は、繊維から形成されている線状又はシート状の基材であることが好ましい。また、洗濯機等で洗浄してもその形状が保持されるものが好ましい。このような繊維基材として、具体的には、糸、縄、紐、綱等の線状繊維基材、又は、不織布、織物、編物、フェルト等のシート状繊維基材が例示される。これらの中でも、不織布、織物、編物、フェルト等のシート状繊維基材は、栽培後の回収、洗浄が容易であるため、本発明において好適に使用される。
また、前記再利用可能な繊維基材は、茸が生育可能な足場を形成できるような三次元形状を形成できる基材であることが好ましい。このような三次元形状としては、例えば、棒状、錐上、立方状等、好ましくは棒状が挙げられる。前記三次元形状を有する基材を形成する方法としては、例えば、複数の前記線状繊維基材を束ねて棒状の培養基材としたり、前記シート状繊維基材を渦巻き状にして棒状の培養基材とする方法が挙げられる。
【0043】
茸種菌の培養の培養基材に適用する再利用可能な繊維基材は、再利用可能な繊維からなり、一方向に延びる三次元形状を有することが好ましい。このような三次元形状は、菌糸を蔓延しやすくするだけでなく、菌糸が蔓延した後に種菌として使用される場合に、移動されるだけで植菌ができ、機械を用いた種菌の出し入れや持ち運びを容易にして、菌床栽培における植菌の自動化の可能にも寄与する。このような三次元形状としては、例えば、棒状、錐上、立方状等、好ましくは棒状が挙げられる。このような三次元形状の好適な一例として、底面積が0.5〜2cm
2程度、好ましくは0.5〜1.5cm
2程度、更に好ましくは0.6〜1cm
2程度であり、且つ高さが4〜7cm、更に好ましくは5〜7cmの棒状が挙げられる。菌床栽培用の容器の高さに応じて適宜調製することもできる。
【0044】
前記三次元形状を前記繊維によって形成する方法としては、例えば、不織布、織物、編物、フェルト等のシート状繊維基材を重ね合せて固定する方法、当該シート状繊維基材を渦巻き状にして固定する方法等が挙げられる。また、糸、縄、紐、綱等の線状繊維基材を撚り合わせることによって、前記三次元形状を前記繊維によって形成することもできる。
【0045】
再利用可能な繊維基材を構成する繊維については、特に制限されず、天然繊維又は化学繊維の別を問わない。繊維基材を構成できる天然繊維の具体例としては、木綿、麻、羊毛、絹、カシミア等が挙げられる。また、繊維基材を構成できる化学繊維の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド、ポリアクリロニトリル等のアクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリウレタン等の合成繊維;レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維;アセテート、プロミックス等の半合成繊維が挙げられる。これらの繊維は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
前記再利用可能な繊維基材は、栽培用培地等において保水材としての役割も果たすので、本発明では、保水能力が高いものを使用することが望ましい。
【0047】
(茸の栽培方法)
本発明の茸の栽培方法は、前述の茸栽培用培養液と、前述の培養基材とを含む栽培用培地を用いて、茸を菌床栽培することを特徴とする。
茸の菌床栽培の方法としては、ビン栽培、袋栽培、箱栽培等のいずれであってもよいが、好ましくはビン栽培、袋栽培が挙げられ、より好ましくはビン栽培が挙げられる。本発明において、本発明の茸栽培用培養液を用いること以外は、ビン栽培、袋栽培、箱栽培等の菌床栽培の条件は、通常の茸の菌床栽培と同様である。
【0048】
以下、例としてビン栽培及び袋栽培を挙げて、本発明の茸の栽培方法を実施する方法について説明する。
【0049】
[ビン栽培]
ビン栽培による菌床栽培は、ビン詰め、殺菌、接種、培養、必要に応じて菌掻き、芽出し、生育、収穫等の各工程を経て行われる。
【0050】
「ビン詰め」とは、前記栽培用培地を培養ビンに詰める工程である。ビン詰めは、予め調製した前記栽培用培地を培養ビンに詰めてもよく、また前記繊維基材を培養ビンに収容した後に、前述の茸栽培用培養液を培養ビンに添加してもよい。培養ビンに収容する栽培用培地の量については、培養ビンの大きさに応じて適宜設定されるが、通常、栽培用培地が、培養ビンの容積の80〜95%を占めるように圧詰すればよい。
【0051】
「殺菌」とは、培養ビンや栽培用培地の中の微生物を死滅させる工程である。殺菌は、通常、加熱殺菌法により行われる。殺菌の具体的条件として、100〜130℃で10〜30分間が挙げられる。
【0052】
「接種」とは、殺菌後に放冷した栽培用培地に、種菌を植え付ける工程である。種菌としては、液体培地で培養して得られた液体種菌、寒天培地で培養して得られた固体種菌のいずれを使用してもよい。種菌の接種量については、一般的なビン栽培の場合と同様である。
【0053】
「培養」とは、菌糸を蔓延させて成熟させる工程である。培養の条件については、使用する茸の種類、培養ビンの大きさ等に応じて適宜設定されるが、通常、25℃、暗黒の条件で8〜36日間程度が挙げられる。より具体的には、25℃、暗黒の条件下で、ヒラタケであれば約8〜36日、エノキタケであれば約13〜36日、エリンギであれば約10〜31日、タモギタケであれば約9〜16日、ブナシメジであれば約14〜33日が挙げられる。なお、培養時の相対湿度は瓶のフタを閉めた状態で行うため、ほぼ100%である。
【0054】
「菌掻き」とは、必要に応じて行なわれる工程であり、種菌部分と培養基表面をかき取る工程である。
【0055】
「芽出し」とは、子実体原基や幼子実体を形成・生育させていく工程である。芽出しの条件については、使用する茸の種類に応じて適宜設定されるが、通常、10〜1000ルクス、15〜18℃の条件で3〜30日間程度が挙げられる。より具体的には、10〜1000ルクス、15〜18℃の条件で、ヒラタケであれば約7〜15日、エノキタケであれば約12〜19日、エリンギであれば約11〜18日、タモギタケであれば約3〜11日、ブナシメジであれば約18〜30日が挙げられる。なお、芽出し時の相対湿度は瓶のフタを閉めた状態で行うため、ほぼ100%である。
【0056】
「生育」とは、子実体原基や幼子実体を収穫可能な成熟子実体に生育させる工程である。また、菌掻き後又は芽出し中に、必要に応じて水を栽培用培地に注水することにより、培地中の水分量の調整を行ってもよい。生育の条件については、使用する茸の種類、培養ビンの大きさ等に応じて適宜設定されるが、通常、10〜1000ルクス、15〜18℃の条件で6〜16日間程度が挙げられる。より具体的には、10〜1000ルクス、15〜18℃の条件で、ヒラタケであれば約6〜8日、エノキタケであれば約9〜11日、エリンギであれば約9〜11日、タモギタケであれば約6〜8日、ブナシメジであれば約12〜16日が挙げられる。なお、生育時の相対湿度は瓶のフタを閉めた状態で行うため、ほぼ100%である。
【0057】
以上の工程を行うことにより、茸の成熟子実体を得ることができる。茸の成熟子実体を収穫すると、茸のビン栽培の全工程を終了する。
【0058】
ビン栽培に適した茸の種類としては、例えば、エノキタケ、ヒラタケ、タモギタケ、ブナシメジ、エリンギ、ヤナギマツタケ又はシイタケ等が挙げられる。
【0059】
[袋栽培]
袋栽培による菌床栽培は、袋詰め、殺菌、接種、培養、芽出し、生育、収穫等の各工程を経て行われる。
【0060】
「袋詰め」とは、前記栽培用培地を培養袋に詰める工程である。袋詰めは、前記繊維基材に前述の茸栽培用培養液を含浸させた後に培養袋に詰めて行ってもよく、培養袋に繊維基材を詰めた後に前述の茸栽培用培養液を含浸させてもよい。また、培養袋に詰める栽培用培地の量については、培養袋や繊維基材の大きさに応じて適宜設定され得るが、通常、培養袋の容積に対して42〜71%程度となるように調整すればよい。
【0061】
「殺菌」及び「接種」については、前記ビン栽培において記載される通りである。なお、「接種」工程における種菌の接種量については、一般的な袋栽培の場合と同様である。
【0062】
「培養」についても前記ビン栽培の場合と同様の工程を指す。袋栽培の場合の培養の条件についても、使用する茸の種類、培養ビンの大きさ等に応じて適宜設定され、通常、25℃、暗黒の条件で13〜90日間程度が挙げられる。より具体的には、25℃、暗黒の条件下で、タモギタケであれば約17〜20日、ヒラタケであれば約13〜18日、シイタケであれば約90日が挙げられる。なお、培養時の相対湿度は袋のフタを閉めた状態で行うため、ほぼ100%である。
【0063】
「芽出し」についても前記ビン栽培の場合と同様の工程を指す。袋栽培の場合の芽出しの条件についても、使用する茸の種類に応じて適宜設定され、通常、10〜1000ルクス、15〜18℃の条件で3〜10日間程度が挙げられる。より具体的には、10〜1000ルクス、15〜18℃の条件で、タモギタケであれば約3〜7日、ヒラタケであれば約6〜10日、シイタケであれば約5〜7日が挙げられる。なお、通常、芽出しは袋から培養基を取り出し、表面を露出させて行い、培養基への散水後、相対湿度が80〜100%の環境下で行われる。また、芽出し中に、必要に応じて水を栽培用培地に散水することにより、培地中の水分量の調整を行ってもよい。
【0064】
「生育」についても前記ビン栽培の場合と同様の工程を指す。袋栽培の場合の生育の条件についても、使用する茸の種類、培養ビンの大きさ等に応じて適宜設定され、通常、10〜1000ルクス、15〜18℃の条件で7〜10日間程度が挙げられる。より具体的には、10〜1000ルクス、15〜18℃の条件で、タモギタケであれば約7〜9日、ヒラタケであれば約7〜10日、シイタケであれば約7〜9日が挙げられる。なお、生育は、通常、袋から培養基を取り出し、表面を露出させた状態で行い、相対湿度が80〜100%の環境下で行われる。また、生育中に、必要に応じて水を栽培用培地に散水することにより、培地中の水分量の調整を行ってもよい。
【0065】
以上の工程を行うことにより、茸の成熟子実体を得ることができる。茸の成熟子実体を収穫すると、茸の袋栽培の全工程を終了する。
【0066】
袋栽培に適した茸の種類としては、エノキタケ、ヒラタケ、タモギタケ、ブナシメジ、エリンギ、ヤナギマツタケ又はシイタケ等が挙げられ、中でもシイタケは菌糸の成長方向が一定ではないため袋栽培の対象となる茸として好適である。
【0067】
本発明の茸栽培方法において、培養基材として、前述の再利用可能な繊維基材を用いた場合は、前記繊維基材は、茸の栽培後に使用後の培地から回収され、洗浄されて、再度培養基材として再利用することができる。前記繊維基材は、使用後からの回収が容易であり、洗濯機等の既存の洗浄装置で簡便に洗浄することができる。このように、本発明の茸栽培方法においては、茸の栽培後に栽培用培地から前記繊維基材を回収し、前記繊維基材を培養基材として再利用して茸の栽培を繰り返し行うことが好ましい。
【0068】
(茸種菌の培養方法)
茸の菌床栽培用種菌は、前述の培養基材に、前述の茸栽培用培養液を含浸させ、茸の菌体を接種することにより製造される。
【0069】
茸の菌床栽培用種菌の製造において、前記茸栽培用培養液を含浸させた培養基材に茸の菌体を接種する前に、加熱殺菌により、液体培地及び培養基材を無菌状態にしておくことが望ましい。
【0070】
前記茸栽培用培養液を含浸させた培養基材に茸の菌体を接種した後に、暗黒条件下で、22〜25℃程度、好ましくは24〜25℃程度で、96〜144時間程度、好ましくは100〜130時間程度の条件で培養を行うことによって、前記培養基材の少なくとも一部に、茸の菌糸が形成され、茸の菌床栽培用種菌が得られる。
【0071】
茸種菌の培養においても、培養基材として、前述の再利用可能な繊維基材を用いた場合は、菌床栽培用の茸種菌の培養基材を回収し、必要に応じて洗浄した後に、再度、菌床栽培用の茸種菌の培養基材及び栽培用培地の繊維基材として再利用することができる。菌床栽培用の茸種菌の培養基材及び栽培用培地の繊維基材の洗浄は、洗濯機等の既存の洗浄装置で簡便に行うことができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
【0073】
実施例1
米糠の破砕抽出液の調製
水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液を得た。
【0074】
比較例1
米糠の熱湯抽出液の調製
水600mL当たりに米糠200gを加え、121℃10分で高温高圧滅菌を行い、放冷後、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の熱湯抽出液を得た。
【0075】
得られたそれぞれの破砕抽出液と熱湯抽出液の収量と成分を表1に示す。なお、各成分の含有量については、水分は常圧加熱乾燥法により、たんぱく質はケルダール法により、脂質はソックスレー抽出法により、灰分は直接灰化法により測定した。炭水化物は、抽出液の重量から、水分、たんぱく質、脂質及び灰分量を除いて算出した。エネルギー量は、定量したたんぱく質、脂質及び算出した炭水化物の量に係数(たんぱく質 4kcal/g、脂質 9kcal/g、炭水化物 4kcal/g)を乗じたものの総和とした。表1から、破砕抽出液は、熱湯抽出液と成分はほぼ同じであるが、収量が高いことがわかった。
【0076】
【表1】
【0077】
得られた抽出液を光学顕微鏡(拡大倍率600倍)で観察し、各抽出液に含まれる水不溶性残留物の粒子の直径を30点測定し、その平均値を得た。その結果を表2に示す。
図1に熱湯抽出液の光学顕微鏡写真を、
図2に破砕抽出液の光学顕微鏡写真を示す。いずれも拡大倍率は600倍である。
【0078】
【表2】
【0079】
表2から、破砕抽出液に含まれる水不溶性残留物の方が、熱湯抽出液に含まれる水不溶性残留物よりも、粒径が小さく、ばらつきも小さいことがわかった。
【0080】
更に、得られた抽出液を800mL容ガラスビンにそれぞれ入れて蓋をし、温度約5〜6℃で約7日間静置した。約7日間静置後の抽出液の様子の写真を
図3に示す。
図3より、約7日間静置後、熱湯抽出液は分離が見られたが、破砕抽出液は分離が見られなかった。
【0081】
実施例2
(米糠の破砕抽出液の調製)
水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出した。ここで得られた液体画分600mL当たりに米糠200gを再度加え、同様の操作を行うことで、米糠の破砕抽出液を得た。
【0082】
比較例2
(米糠の熱湯抽出液の調製)
水600mL当たりに米糠200gを加え、121℃10分で高温高圧滅菌を行い、放冷後、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出した。ここで得られた液体画分600mL当たりに米糠200gを再度加え、同様の操作を行うことで、米糠の熱湯抽出液を得た。
【0083】
得られた破砕抽出液と熱湯抽出液の様子を示した写真を
図4及び
図5に示す。水600mL当たりに米糠計400gを添加した場合、熱湯抽出液では、粘性が高くなり、茸の栽培用溶液として使用できないほどドロドロの状態になった(
図5)のに対し、破砕抽出液では、粘性は高くなく、茸の栽培用溶液として使用可能であった(
図4)。
【0084】
比較例3及び4
水600mL当たりに米糠200gを加え、それぞれ静置、又は、撹拌した後、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の水抽出液を得た。撹拌は、2分おきに薬さじで数回かき混ぜることを計60分行った。静置は60分間行った。各成分の含有量については、前述した方法と同様の方法で測定した。得られた水抽出液の組成を実施例1の破砕抽出液と共に表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
表3から、破砕抽出液は、静置又は撹拌により得られる水抽出液と比較して、たんぱく質、脂質、灰分、炭水化物のいずれの成分量も多く、培養液として優れることがわかった。
【0087】
実施例3:エノキタケの栽培
1.培養液の調製
水600mL当たりに米糠200g加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液を得た。
【0088】
2.栽培用培地の調製
200mL容のポリプロピレンカップ(内径7cm、表1に示す条件1の場合)又は1L容のポリプロピレンボトル(内径8.5cm、表1に示す条件2の場合)に、表1に示す各種繊維素材を表1に示す形状で詰め込んだ。次いで、前記で調製した米糠の破砕抽出液を、表1に示す量添加し、アルミホイル又はメンブレン付きのポリプロピレン製のネジ口蓋をした。これを、121℃で1時間、高温高圧滅菌することにより、栽培用培地を調製した。
【0089】
3.エノキタケの栽培
エノキタケの保存菌株を、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を含む直径90mmのシャーレ上で、25℃の暗黒条件下で14日間培養させたものを種菌とした。生育した菌糸を直径3mmのコルクボーラーで打ち抜き、前記で調製した栽培用培地の表面に10個または40個植菌した。25℃、暗黒条件下で所定期間培養して、菌糸を培地全体に蔓延させた。
【0090】
その後、ポリプロピレンカップを用いた場合は菌掻き作業を行い、5mLの6〜7℃の冷水を注水した。ポリプロピレンボトルを用いた場合は6〜7℃の冷水に1時間の冠水作業を行った。その後、水を張った水槽に入れ、15℃、300luxの光条件下において所定期間培養(表4)をすると、子実体原基を確認した。同条件下で更に栽培すると、成熟した子実体が得られた。
【0091】
【表4】
【0092】
実施例4:ヒラタケの栽培
1.培養液の調製
水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌した。破砕撹拌後、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液を得た。
【0093】
2.栽培用培地の調製
200mL容のポリプロピレンカップ(内径7cm、表2に示す条件1の場合)又は1L容のポリプロピレンボトル(内径8.5cm、表2に示す条件2の場合)に、表2に示す各種繊維素材を表2に示す形状で詰め込んだ。次いで、前記で調製した培養液を表2に示す量添加し、アルミホイル又はメンブレン付きのポリプロピレン製のネジ口蓋をした。これを、121℃で1時間、高温高圧滅菌することにより、栽培用培地を調製した。
【0094】
3.ヒラタケの栽培
ヒラタケの保存菌株を、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を含む直径90mmのシャーレ上で、25℃の暗黒条件下で14日間培養させたものを種菌とした。生育した菌糸を直径3mmのコルクボーラーで打ち抜き、前記で調製した栽培用培地の表面に10個または40個植菌した。25℃、暗黒条件下で所定期間培養して、菌糸を培地全体に蔓延させた。
【0095】
その後、ポリプロピレンカップを用いた場合は菌掻き作業を行い、5mLの6〜7℃の冷水を注水した。ポリプロピレンボトルを用いた場合は6〜7℃の冷水に1時間の冠水作業を行った。その後、水を張った水槽に入れ、15℃、300luxの光条件下において所定期間培養(表5)をすると、子実体原基を確認した。同条件下で更に栽培すると、成熟した子実体が得られた。
【0096】
【表5】
【0097】
実施例5:タモギタケの栽培
1.培養液の調製
水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液を得た。
【0098】
2.栽培用培地の調製
200mL容のポリプロピレンカップ(内径7cm、表6に示す条件1の場合)又は1L容のポリプロピレンボトル(内径8.5cm、表6に示す条件2の場合)に、表6に示す各種繊維素材を表6に示す形状で詰め込んだ。次いで、前記で調製した培養液を表1に示す量添加し、アルミホイル又はメンブレン付きのポリプロピレン製のネジ口蓋をした。これを、121℃で1時間、高温高圧滅菌することにより、栽培用培地を調製した。
【0099】
3.タモギタケの栽培
タモギタケの保存菌株を、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を含む直径90mmのシャーレ上で、25℃の暗黒条件下で14日間培養させたものを種菌とした。生育した菌糸を直径3mmのコルクボーラーで打ち抜き、前記で調製した栽培用培地の表面に10個または40個植菌した。25℃、暗黒条件下で所定期間培養して、菌糸を培地全体に蔓延させた。
【0100】
その後、ポリプロピレンカップを用いた場合は菌掻き作業を行い、5mLの6〜7℃の冷水を注水した。ポリプロピレンボトルを用いた場合は6〜7℃の冷水に1時間の冠水作業を行った。その後、水を張った水槽に入れ、15℃、300luxの光条件下において所定期間培養(表6)をすると、子実体原基を確認した。同条件下で更に栽培すると、成熟した子実体が得られた。
【0101】
【表6】
【0102】
実施例6:ブナシメジの栽培
1.培養液の調製
水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液を得た。
【0103】
2.栽培用培地の調製
200mL容のポリプロピレンカップ(内径7cm、表4に示す条件1の場合)又は1L容のポリプロピレンボトル(内径8.5cm、表4に示す条件2の場合)に、表4に示す各種繊維素材を表4示す形状で詰め込んだ。次いで、前記で調製した培養液を表4に示す量添加し、アルミホイル又はメンブレン付きのポリプロピレン製のネジ口蓋をした。これを、121 ℃で1時間、高温高圧滅菌することにより、栽培用培地を調製した。
【0104】
3.ブナシメジの栽培
ブナシメジの保存菌株を、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を含む直径90mmのシャーレ上で、25℃の暗黒条件下で14日間培養させたものを種菌とした。生育した菌糸を直径3mmのコルクボーラーで打ち抜き、前記で調製した栽培用培地の表面に10個または40個植菌した。25℃、暗黒条件下で所定期間培養して、菌糸を培地全体に蔓延させた。
【0105】
その後、ポリプロピレンカップを用いた場合は菌掻き作業を行い、5mLの6〜7℃の冷水を注水した。ポリプロピレンボトルを用いた場合は6〜7℃の冷水に1時間の冠水作業を行った。その後、水を張った水槽に入れ、15℃、300luxの光条件下において所定期間培養(表7)をすると、子実体原基を確認した。同条件下で更に栽培すると、成熟した子実体が得られた。
【0106】
【表7】
【0107】
実施例7:エリンギの栽培
1.培養液の調製
水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液を得た。
【0108】
2.栽培用培地の調製
200mL容のポリプロピレンカップ(内径7cm、表5に示す条件1の場合)又は1L容のポリプロピレンボトル(内径8.5cm、表5に示す条件2の場合)に、表5に示す各種繊維素材を表5に示す形状で詰め込んだ。次いで、前記で調製した培養液を表5に示す量添加し、アルミホイル又はメンブレン付きのポリプロピレン製のネジ口蓋をした。これを、121℃で1時間、高温高圧滅菌することにより、栽培用培地を調製した。
【0109】
3.エリンギの栽培
エリンギの保存菌株を、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を含む直径90mmのシャーレ上で、25℃の暗黒条件下で14日間培養させたものを種菌とした。生育した菌糸を直径3mmのコルクボーラーで打ち抜き、前記で調製した栽培用培地の表面に10個または40個植菌した。25℃、暗黒条件下で所定期間培養して、菌糸を培地全体に蔓延させた。
【0110】
その後、ポリプロピレンカップを用いた場合は菌掻き作業を行い、5mLの6〜7℃の冷水を注水した。ポリプロピレンボトルを用いた場合は6〜7℃の冷水に1時間の冠水作業を行った。その後、水を張った水槽に入れ、15℃、300luxの光条件下において所定期間培養(表8)をすると、子実体原基を確認した。同条件下で更に栽培すると、成熟した子実体が得られた。
【0111】
【表8】
【0112】
実施例8:ヤナギマツタケの栽培
1.培養液の調製
水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液を得た。
【0113】
2.栽培用培地の調製
200mL容のポリプロピレンカップ(内径7cm、表6に示す条件1の場合)又は1L容のポリプロピレンボトル(内径8.5cm、表6に示す条件2の場合)に、表6に示す各種繊維素材を表6に示す形状で詰め込んだ。次いで、前記で調製した培養液を表6に示す量添加し、アルミホイル又はメンブレン付きのポリプロピレン製のネジ口蓋をした。これを、121℃で1時間、高温高圧滅菌することにより、栽培用培地を調製した。
【0114】
3.ヤナギマツタケの栽培
ヤナギマツタケの保存菌株を、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を含む直径90mmのシャーレ上で、25℃の暗黒条件下で14日間培養させたものを種菌とした。生育した菌糸を直径3mmのコルクボーラーで打ち抜き、前記で調製した栽培用培地の表面に10個または40個植菌した。25℃、暗黒条件下で所定期間培養して、菌糸を培地全体に蔓延させた。
【0115】
その後、ポリプロピレンカップを用いた場合は菌掻き作業を行い、5mLの6〜7℃の冷水を注水した。ポリプロピレンボトルを用いた場合は6〜7℃の冷水に1時間の冠水作業を行った。その後、水を張った水槽に入れ、15℃、300luxの光条件下において所定期間培養(表9)をすると、子実体原基を確認した。同条件下で更に栽培すると、成熟した子実体が得られた。
【0116】
【表9】
【0117】
実施例9:シイタケの栽培
1.培養液の調製
水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いてろ過して液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液を得た。
【0118】
2.栽培用培地の調製
1L容のポリプロピレンボトル(内径8.5cm、表7に示す条件1の場合)に、表7に示す各種繊維素材を表7に示す形状で詰め込んだ。次いで、前記で調製した培養液を表7に示す量添加し、メンブレン付きのポリプロピレン製のネジ口蓋をした。これを、121℃で1時間、高温高圧滅菌することにより、栽培用培地を調製した。
【0119】
3.シイタケの栽培
シイタケの保存菌株を、ポテトデキストロース寒天培地(PDA培地)を含む直径90mmのシャーレ上で、25℃の暗黒条件下で14日間培養させたものを種菌とした。生育した菌糸を直径3mmのコルクボーラーで打ち抜き、前記で調製した栽培用培地の表面に40個植菌した。25℃、暗黒条件下で所定期間培養して、菌糸を培地全体に蔓延させた。
【0120】
その後、6〜7℃の冷水に1時間の冠水作業を行った。その後、水を張った水槽に入れ、15℃、300luxの光条件下において所定期間培養(表10)をすると、子実体原基を確認した。同条件下で更に栽培すると、成熟した子実体が得られた。
【0121】
【表10】
【0122】
参考実験例1:ヒラタケの栽培
水600mL当たりに米糠50gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約2分間破砕撹拌し、袋状の布(目付量260g/m
2)を用いて液体画分を取り出し、米糠の破砕抽出液Aを得た。
また、水600mL当たりに米糠200gを加えて、前記と同様にして米糠の破砕抽出液Bを得た。
得られた破砕抽出液A又はBを用いた以外は、実施例4の条件1と同様にしてヒラタケを栽培し、15℃、300luxの光条件下において11日間経過後の子実体形成の様子を観察した。結果を
図13に示す。
図13より、濃度の高い破砕抽出液の方が、ヒラタケの生育が良好になることがわかった。
【0123】
実験例
蒸留水600mL当たりに米糠200gを加え、ミキサー(製品名パワーブレンダー 14071JP、ラッセルホブス社製)で約20〜25℃で約5分間破砕撹拌した後、通常市販されているガーゼを数枚重ねたものを用いてろ過し、液体画分を取り出し、米糠破砕抽出液を得た。
含水率62±2%に調整した培地を、850mLポリプロピレン製ビンに1ビン当たり500gずつ詰め、118℃で高圧滅菌後、供試菌(エリンギ)を接種した。22±1℃、相対湿度65%、暗黒条件下で40日間培養後、15±1℃、相対湿度95%、24時間照明下で発生操作を行った。菌傘が8部開きのときに収穫し、菌糸蔓延に要した日数、栽培に要した日数、発生本数及び1ビンあたりの収量を測定した。
なお、培地として、おが粉100g(乾燥重量)に米糠100g(10%水分含有)を混合したもの(対照区)、おが粉100g(乾燥重量)に前記米糠破砕抽出液300mLを混合したもの(試験区1)、おが粉100g(乾燥重量)に米糠100g(10%水分含有)と前記米糠破砕抽出物300mLを混合したもの(試験区2)を用いた。結果を表11に示す。
【0124】
【表11】