特許第6548156号(P6548156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大王製紙株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6548156-使い捨ておむつ 図000002
  • 特許6548156-使い捨ておむつ 図000003
  • 特許6548156-使い捨ておむつ 図000004
  • 特許6548156-使い捨ておむつ 図000005
  • 特許6548156-使い捨ておむつ 図000006
  • 特許6548156-使い捨ておむつ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548156
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   A61F13/56 210
   A61F13/56 211
   A61F13/56 213
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-70286(P2015-70286)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-189822(P2016-189822A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】小野 良都
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−154701(JP,A)
【文献】 特開2014−094264(JP,A)
【文献】 特表2005−514530(JP,A)
【文献】 特開2004−121363(JP,A)
【文献】 特開2013−081599(JP,A)
【文献】 特開平09−038128(JP,A)
【文献】 特開2013−111419(JP,A)
【文献】 特開2013−081650(JP,A)
【文献】 特開2011−115245(JP,A)
【文献】 特開平10−146359(JP,A)
【文献】 特開2004−065929(JP,A)
【文献】 特開2008−006272(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0267034(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体側に設けられた液透過性のトップシートと、反身体側に設けられた液不透過性のバックシートと、前記トップシートとバックシートの間に挟持された排泄物を吸収する吸収体と、前記バックシートの反身体側に設けられた外装シートを備えた使い捨ておむつにおいて、
前記外装シートの背側部の両側部に内面に係止部を有するファスニングテープを設け、
前記外装シートにおける腹側部における吸収体と重なる部位に、前記係止部と係止する複数の被係止部を形成し、
前記被係止部を外装シートの外面から外部に向かって突出して形成し、
前記被係止部を、前記吸収体の外部に向かって凸形状に形成された部位と、前記部位を覆うバックシートと外装シートで形成し、
前記被係止部の外周部に、エンボスからなる区画線を形成して、前記被係止部を相互に分離したことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記複数の被係止部を使い捨ておむつの幅方向の中心に対して対称な位置にそれぞれ形成した請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記対称な位置に形成された被係止部に、同一マークを印刷した請求項2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記複数の被係止部の密度を、前記複数の被係止部が設けられていない吸収体の密度よりも低い密度に設定した請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記複数の被係止部の突出部の段差を0.8〜8.0mmに設定した請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファスニングテープの係止部を係止する装着者の腹側に位置する外装シートの部位に、外装シートの外面から外部に向かって突出する被係止部が形成された使い捨ておむつ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートの間に設けられた排泄物を吸収する吸収体を外装シートの身体側部である内面に設け、外装シートの背側の両側部に設けたファスニングテープの係止部を、外装シートの腹側の被係止部に係止させて装着者に装着する使い捨ておむつが知られている。
これら使い捨ておむつを装着者に容易に装着するために、外装シートの腹側に係止位置を印刷した被係止シートを設ける技術が開示されている。(特許文献1)
また、ファスニングテープの係止部と外装シートの腹側に設けた係止シートの係止力を高めるために、外装シートと被係止シートの間にウレタンフォーム等から形成された緩衝材を設ける技術が開示されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−153952号公報
【特許文献2】特開平9−154883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された係止位置が印刷された被係止シートは、触感性能を有しないために、特に視覚障害者が使い捨ておむつを装着者に装着する困難性を低減することができない。また、特許文献2に開示された緩衝材は、被係止シートの下面の全面に設けられているために、特に視覚障害者が使い捨ておむつを装着者に装着する困難性を低減することができず、別に緩衝材を製造必要があることから製造コストを上昇させる恐れがある。
そこで、本発明の主たる課題は、視覚障害者や、夜間に健常者が使い捨ておむつを装着者に容易に装着できるファスニングテープの係止部が係止される装着者の腹側に位置する外装シートの部位に、外装シートの外面から外部に向かって突出する被係止部が形成された使い捨ておむつ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、身体側に設けられた液透過性のトップシートと、反身体側に設けられた液不透過性のバックシートと、前記トップシートとバックシートの間に挟持された排泄物を吸収する吸収体と、前記バックシートの反身体側に設けられた外装シートを備えた使い捨ておむつにおいて、
前記外装シートの背側部の両側部に内面に係止部を有するファスニングテープを設け、 前記外装シートにおける腹側部における吸収体と重なる部位に、前記係止部と係止する複数の被係止部を形成し、前記被係止部を外装シートの外面から外部に向かって突出して形成し、前記被係止部を、前記吸収体の外部に向かって凸形状に形成された部位と、前記部位を覆うバックシートと外装シートで形成し、前記被係止部の外周部に、エンボスからなる区画線を形成して、前記被係止部を相互に分離したことを特徴とする使い捨ておむつである。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記複数の被係止部を使い捨ておむつの幅方向の中心に対して対称な位置にそれぞれ形成した請求項1記載の使い捨ておむつである。
【0007】
請求項3に係る発明は、前記対称な位置に形成された被係止部に、同一マークを印刷した請求項2記載の使い捨ておむつである。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記複数の被係止部の密度を、前記複数の被係止部が設けられていない吸収体の密度よりも低い密度に設定した請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつである。
【0009】
請求項5に係る発明は、前記複数の被係止部の突出部の段差を0.8〜8.0mmに設定した請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつである。
【0010】
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、外装シートの背側部の両側部に内面に係止部を有するファスニングテープを設け、外装シートにおける腹側部における吸収体と重なる部位に、係止部と係止する複数の被係止部を形成し、被係止部を外装シートの外面から外部に向かって突出して形成し、被係止部を、吸収体の外部に向かって凸形状に形成された部位と、部位を覆うバックシートと外装シートで形成し、被係止部の外周部に、エンボスからなる区画線を形成して、被係止部を相互に分離したので、外装シートの外面から外部に向かって突出した被係止部による触感を頼りにして視覚障害者にあっても使い捨ておむつを装着者に容易に装着することができる。また、健常者にあっても夜間に使い捨ておむつを装着者に容易に装着することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明による効果に加えて、複数の被係止部を使い捨ておむつの幅方向の中心に対して対称な位置にそれぞれ形成しているので、ファスニングテープの係止部を幅方向の中心に対して対称な位置に形成された被係止部に係止することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明による効果に加えて、対称な位置に形成された被係止部に、同一マークを印刷しているので、同一マークを頼りにして視覚障害者にあっても使い捨ておむつを装着者により容易に装着することができる、また、健常者にあっても夜間に使い捨ておむつを装着者により容易に装着することができる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、複数の被係止部の密度を、複数の被係止部が設けられていない吸収体の密度よりも低い密度に設定しているので、ファスニングテープの係止部と被係止部の係止強度を高めることができる。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明による効果に加えて、複数の被係止部の突出部の段差を0.8〜8.0mmに設定しているので、触感性能をより一層高めることができる。
【0016】
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】テープタイプ使い捨ておむつを展開した内面平面図である。
図2】テープタイプ使い捨ておむつを展開した外面平面図である。
図3図1のX1−X1断面図である。
図4】外装シートに形成された被係止部の要部を拡大した外面平面図である。
図5図4のX1−X1断面図である。
図6】被係止部の製造方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<テープタイプ使い捨ておむつ>
本発明の外装シート12の腹側部から外側に向かって所定の段差Aを設けて形成された被係止部13の理解を容易にするために、先ず、テープタイプ使い捨ておむつ100について添付図面を参照して詳説する。なお、本明細書において「前後方向」とは、腹側と背側を結ぶ方向を言い、「幅方向」とは、前後方向と直交する方向を言い、「上下方向」とは、テープタイプ使い捨ておむつ100の装着状態において胴回り方向と直交する方向を言うものとする。
【0019】
図1〜3に示すように、テープタイプ使い捨ておむつ100は、身体側面に設けられた液透過性のトップシート10と、反身体側面に設けられた液不透過性のバックシート11と、トップシート10とバックシート11の間に挟持された吸収要素20とから形成されている。また、バックシート11の反身体側面である外面には、不織布等から形成された外装シート12が設けられている。なお、トップシート10と吸収要素20の間には、トップシート10に透過した排泄物を吸収要素20に素早く移動させると共に排泄物の逆戻りを防止する中間シート15を設けるのが好適である。
【0020】
吸収要素20の幅方向における左右側には、所定の間隔を隔てて排泄物の外部への漏れを防止する不織布等から形成された立体ギャザー30がそれぞれ設けられており、また、立体ギャザー30の幅方向における左右側には、所定の間隔を隔てて排泄物の外部への漏れを防止する平面ギャザー40が設けられている。
【0021】
吸収要素20の前後方向における前後側には、吸収要素20が延在されていないエンドフラップ部EFがそれぞれ形成され、同様に、吸収要素20の幅方向における左右側には、吸収要素20が延在されていないサイドフラップ部SFがそれぞれ形成されている。
【0022】
サイドフラップ部SFの前後方向における後部には、テープタイプ使い捨ておむつ100を装着時に装着する際に使用するファスニングテープ50がそれぞれ設けられている。なお、本実施形態においては、テープタイプ使い捨ておむつ100を装着時に装着する際には、ファスニングテープ50の内面に設けられた係止部52を外装シート12の背側部に形成された被係止部13に係止される。
【0023】
次に、トップシート10等の素材および特徴部分について順に説明する。
(トップシート)
トップシート10は、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシート等で形成することができる。また、不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維等を例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0024】
(バックシート)
バックシート11は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とでバックシートが構成される。)等で形成することができる。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、バックシート11として用いることができる。
【0025】
(外装シート)
外装シート12は、吸収要素20の反身体側である外面に設けられ着用者に装着するための部分である。外装シート12は、前後方向における中央部の両側部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を囲む部位となる。
【0026】
外装シート12は、ファスニングテープ50の係止部52が係止できる不織布で形成することができる。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10〜50g/m2、特に15〜30g/m2のものが望ましい。
【0027】
(被係止部)
図4,5に示すように、外装シート12の前後方向の前部であって、吸収要素20の上側に位置する部位には、ファスニングテープ50の係止部52を係止する外装シート12の外面を外側に向かって略凸形状に形成した複数の被係止部13が形成されている。被係止部13は、外側に向かって略凸形状に形成された吸収体21と、略凸形状に形成された吸収体21に沿って外面側に設けられた包装シート22と、バックシート11と、外装シート12で形成され、各被係止部13の外周部は、エンボス等によって形成された区画線14で相互に分離されている。これにより、突出して形成された被係止部13の触感を手掛かりに、視覚障害者にあってもテープタイプ使い捨ておむつ100を装着者に容易に装着することができる。また、健常者にあっても夜間にテープタイプ使い捨ておむつ100を装着者に容易に装着することができる。
【0028】
また、被係止部13における左右方向で対称な位置に形成された被係止部13には、同一マークを付すのが好適である。本実施形態においては、左右方向で対称な位置に形成された被係止部13にそれぞれローマ字が付されているが、数字、動物等の図柄を付すこともできる。これによって、突出して形成された被係止部13の触感と、左右方向で対称な位置に形成された被係止部13に付されたマークを手掛かりに、視覚障害者にあってもテープタイプ使い捨ておむつ100を装着者により容易に装着することができる、また、健常者にあっても夜間にテープタイプ使い捨ておむつ100を装着者により容易に装着することができる。
【0029】
(中間シート)
中間シート15は、トップシート10と同様の素材で形成することができる。中間シート15は、トップシート10に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート15の素材は、トップシート10と同程度の融点をもつものが好ましい。中間シート15に不織布を用いる場合、その不織布の繊維の繊度は2.0〜5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0030】
(吸収要素)
吸収要素20は、吸収体21と、吸収体21を包む包装シート22とから形成されている。なお、吸収体21を包む包装シート22を用いることなく吸収体21のみから形成することもできる。
【0031】
(吸収体)
吸収体21は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100〜300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30〜120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1〜16dtex、好ましくは1〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5〜75個、好ましくは10〜50個、さらに好ましくは15〜50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0032】
吸収体21は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0033】
吸収体21の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート22上にある形態も排除されるものではない。
【0034】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150〜400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系等のものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体等のものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0035】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体21内に供給された液が吸収体21外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0036】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体21の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50〜350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0037】
(包装シート)
包装シート22は、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等で形成されている。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン等を使用できる。繊維目付けは、5〜40g/m2、特に10〜30g/m2のものが望ましい。
【0038】
(立体ギャザー)
立体ギャザー30は、トップシート10の内面を伝わって幅方向に向かって移動する尿や軟便等の排泄物を阻止して横漏れを防止する部分である。立体ギャザー30は、実質的に幅方向に連続する撥水性不織布からなるギャザーシート31と、ギャザーシート31に対して前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状の弾性伸縮部材32によって形成されている。
【0039】
ギャザーシート31の基部は、幅方向におけるトップシート10の内面の左右側部に固着始端を有し、固着始端から左右側に延在して、幅方向におけるバックシート11の内面の左右側部と、幅方向における外装シート12の内面の左右側部にホットメルト等の接着剤によって固定されている。
【0040】
前後方向における立体ギャザー30の中間部の固着始端より内側の部位は、トップシート10の上面に非固定とされ、立体ギャザー30の前後部の固着始端より内側の部位は、トップシート10の上面に固定されている。これにより、前後方向における立体ギャザー30の中間部は、弾性伸縮部材32の収縮力によって身体側に向かって起立し、装着時に装着者の脚周りに密着して、脚周りからのいわゆる横漏れが防止することができる。
【0041】
(平面ギャザー)
平面ギャザー40は、立体ギャザー30を超えて幅方向に向かって移動する排泄物を阻止して横漏れを防止する部分である。平面ギャザー40は、ギャザーシート31と、バックシート11と、ギャザーシート31とバックシート11の間に挟持されたギャザーシート31等に対して前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状の弾性伸縮部材41によって形成されている。
【0042】
(ファスニングテープ)
ファスニングテープ50は、前後方向におけるサイドフラップSFの後部に設けられている。ファスニングテープ50は、基材51と、基材51の内面に設けられた係止部52から形成されている。
【0043】
基材51は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材から形成することができる。また、基材51の基部は、ホットメルトの接着剤等によってサイドフラップSFを形成するギャザーシート31と外装シート12の間に固定されている。
【0044】
係止部52は、メカニカルファスナーのフック材から形成することができる。フック材とは、多数の係合突起を有する部材である。係合突起の形状としては、レ字状、J字状、マッシュルーム状、T字状、ダブルJ字状等がある。
【0045】
<被係止部の製造方法>
次に、被係止部13の製造方法について説明する。なお、図6における上側が反身体側の外面を示し、下側が身体面側の内面を示している。また、左側が製造工程の上流側を示し、右側が製造工程の下流側を示している。
図6(a)に示すように、トップシート10の面に、吸収体21を包装シート22で包装した吸収要素20を上載する。この時点において、吸収要素20の上下方向の厚みは、略均一に形成されている。また、トップシート10の面と吸収要素20の面は、ホットメルト等の接着剤で固定される。なお、本実施形態にあっては、吸収要素20の上下方向の厚みは、略均一に形成しているが、後述する腹側吸収要素20Aに対応する部位の厚みを、背側吸収要素20Bに対応する部位の厚みよりも厚く形成することもできる。
【0046】
次に、図6(b)に示すように、トップシート10の面上に固定された吸収要素20は、一対の圧延ロール(図示省略)によって、テープタイプ使い捨ておむつ100を装着した場合において、装着者の腹側に位置する吸収要素20の製造工程の下流側の部位の厚さは、装着者の背側に位置する吸収要素20の製造工程の下流側の部位20Aの厚さよりも厚く形成されている。すなわち、吸収要素20の製造工程の下流側の部位(便宜的に腹側吸収要素20Aと言う。)の密度は、吸収要素20の製造工程の上流側の部位(便宜的に背側吸収要素20Bと言う。)の密度よりも低く形成されている。
【0047】
次に、図6(c)に示すように、吸収要素20の外面に、バックシート11を上載し、さらに、バックシート11の外面に、外装シート12を上載する。また、吸収要素20の外面とバックシート11の内面は、ホットメルト等の接着剤で固定され、バックシート11の外面と外装シート12の内面は、ホットメルト等の接着剤で固定される。
【0048】
次に、図6(d)に示すように、外装シート12の外面から吸収要素20に向けてエンボス加工を行い、腹側吸収要素20Aに複数の被係止部13と被係止部13の外周部を区画する区画線14を形成し、被係止部13の上下方向の先端部を、背側吸収要素20Bの外面よりも外部に突出するように形成する。また、腹側吸収要素20Aと隣接する腹側吸収要素20Aは、区画線14によって分離されている。これにより、突出して形成された被係止部13の触感を手掛かりに、視覚障害者にあってもテープタイプ使い捨ておむつ100を装着者に容易に装着することができる。また、健常者にあっても夜間にテープタイプ使い捨ておむつ100を装着者に容易に装着することができる。また、被係止部13の密度が低いことから、被係止部13にファスニングテープ50の係止部52を強固に係止することもできる。
【0049】
側面視において被係止部13の先端と背側吸収要素20Bの段差Aは、0.8〜8.0mm、好ましくは1.0〜5.0mmに設定するのが好適である。0.8mm未満であると、十分な触感性能を発揮することができない。一方、8.0mm超であると凹凸が目立ちテープタイプ使い捨ておむつ100の腹部の外観を損ねる恐れがある。また、段差Aは、被係止部13が形成された腹側吸収要素20Aの部位の厚みから背側吸収要素20Bの厚みを減算することによって求められる。なお、図6(a)に示すように、本実施形態にあっては、吸収要素20の上下方向の厚みは、略均一に形成しているが、腹側吸収要素20Aに対応する部位の厚みを、背側吸収要素20Bに対応する部位の厚みよりも厚く形成することもできる。
【0050】
<明細書中の用語の説明>
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度20±5℃、相対湿度65%以下)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から米坪板(200mm×250mm、±2mm)を使用し、200mm×250mm(±2mm)の寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、20倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES−G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:10gf/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・「吸水量」は、JIS K7223−1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、テープタイプ使い捨ておむつに利用可能なものである。
【符号の説明】
【0052】
10 トップシート
11 バックシート
12 外装シート
13 被係止部
14 区画線
21 吸収体
50 ファスニングテープ
52 係止部
A 段差
図1
図2
図3
図4
図5
図6