【実施例1】
【0009】
図1乃至
図4を参照して実施例1を説明する。
図1に記載された多素子センサは、シリコンなどのチップ1に形成され、複数のセンサ素子(Sensor Element(1,2,3,4,・・・2
n))が形成された受光部2と、増幅回路3と、受光部2の出力信号を制御する複数のスイッチ(SW(1,2,3,4,・・・2
n))4と、デコード回路(Decoder)5と、フリップフロップ回路(T-F/F)6と、パワーオンリセット回路(Power ON Reset)7と、シュミット入力回路8とを備えている。
多素子センサを構成する内部回路が形成されたチップ1の周辺には内部回路に出入する信号を受容する外部端子が形成されている。これら外部端子には、参照電圧(Vref)を含むVrefクロック信号(VREF)が内部回路に供給される参照電圧クロック端子11、多素子センサの出力が外部に導出される出力信号端子10、電源電圧端子12及び接地電源端子13等がある。この実施例では参照電圧クロック端子11から入力されるVrefクロック信号(VREF)を、参照電圧(Vref)と接地電圧(VSS)との間で変化するクロックとすることで、クロック信号(CLK)と出力タイミングでの基準電圧(センサー素子の参照電圧節点の電圧)、及び差動増幅回路における比較電圧が得られる。そのため、外部からクロック信号(CLK)を得る目的だけの信号を供給する必要がなくなり、クロック信号供給端子を不要にすることが出来る。
【0010】
チップ1は、参照電圧クロック端子11を有している。そして、この参照電圧クロック端子11は、参照電圧と接地電圧の繰り返しからなるクロック信号が供給されるためクロック端子を兼ねている。
受光部2は、複数のセンサ素子(2
n個(n=1,2,3,・・・))から構成されている。この実施例では、n=2の場合について説明する。センサ素子は、参照電圧節点14と出力節点15を備え、各センサ素子の参照電圧節点14はチップ1の辺部に形成された参照電圧クロック端子11が接続され、各々の前記出力節点15側にはMOSトランジスタなどのスイッチ(SW1,SW2,SW3,SW4,・・・)4の一端が接続されている。センサ素子は、入射する赤外線のエネルギー量に応じた熱起電力によって変化する前記出力節点15の電圧を検出信号としている。前記センサ素子は、参照電圧節点14が前記参照電圧クロック端子11に接続されているため、前記検出信号は参照電圧(Vref)を基準にした電圧値となる。スイッチ4の数は、センサ素子数に対応している。スイッチ4の他端は、増幅回路3を構成する非反転アンプの正相入力端子(+)に接続されている。前記アンプの逆相入力端子(−)は、参照電圧クロック端子11に接続されている。前記増幅回路3の出力端子は、チップ1の辺部に形成された多素子センサの出力信号端子10に接続されている。前記アンプの出力端子と逆相入力端子との間には抵抗Rg2が挿入されている。抵抗Rg2のアンプの出力端子が接続されている一端と反対の他端には、抵抗Rg1の一端が接続され、抵抗Rg1の他端は、参照電圧クロック端子11に接続されている。
【0011】
増幅回路3は、前記センサ素子の検出信号を所定の電圧と比較してその差を増幅した出力を生成する。前記アンプのゲインGは、G=1+Rg2/Rg1である。増幅回路3は、前記所定の電圧を入力させる端子が参照電圧クロック端子11と接続され、それによって参照電圧と前記検出信号とを比較して出力を生成する。
デコード回路5は、センサ素子の各々が出力する検出信号を増幅回路3へ択一的に順次入力させるために、参照電圧クロック端子11から入力されるクロック信号の電圧レベルの変化の進行に応じて複数のスイッチ(SW1,SW2,SW3,SW4,・・・)を順次導通させていく。
【0012】
図1に示すように、フリップフロップ回路6の出力信号を生成するクロック信号(CLK)は、参照電圧クロック端子11より供給されるVrefクロック信号(VREF)と、電源電圧(Vdd)及び接地電圧(Vss)間の抵抗分割から形成される基準電圧(Vth)とからシュミット入力回路8で生成される。
ここで生成されたクロック信号(CLK)は、
図3に示すように、フリップフロップ回路6に入力される。また、フリップフロップ回路6には電源電圧(Vdd)の投入に伴って生成されるリセット信号(Power On Reset)がパワーオンリセット回路7を介して入力される。リセット信号の入力後、フリップフロップ回路6は、クロック信号(CLK)により制御されて、出力信号(OUT1、OUT2)が生成される。
図2に示すように、電源電圧端子12の電圧は、電源投入に伴って接地電圧(Vss)から電源電圧(Vdd)へと変化するが、その過程でパワーオンリセット回路7は、低レベルから高レベルへと変化するリセット信号(Power On Reset)を生成する。パワーオンリセット回路7からのリセット信号でリセットされたフリップフロップ回路6の2ビットの出力OUT1、OUT2は、クロック信号(CLK)の進行に応じて順次インクリメントされて、デコード回路5に入力され、スイッチSW1、SW2、SW3、SW4を順次活性化する。即ち、
図4に示すように、順にパルスを発生させる。
この実施例において説明するデコード回路5は、
図3に示すように、例えば、4個のNOR回路(NOR1、NOR2、NOR3、NOR4)と信号を反転するNOT回路から構成されている。
【0013】
図4は、フリップフロップ回路6及びデコード回路5における信号の流れを示すタイミングチャートである。
図4に示すように、フリップフロップ回路6の出力信号(OUT1、OUT2)は、クロック信号(CLK)の立ち下がりエッジ(低レベルへの変化)に同期して(L、L)、(H、L)、(L、H)、(H、H)と変化してデコーダ回路5を構成する各NOR回路に入力する。最初の時間帯では、出力信号(L、L)が入力する。これにより、NOR回路NOR1は、出力端子にH信号が出力し、他のNOR回路NOR2、NOR3、NOR4は、出力端子にL信号を出力する。次の時間帯では、出力信号(H、L)が入力する。これにより、NOR回路NOR1、NOR3、NOR4は、出力端子にL信号が出力し、NOR回路NOR2は、出力端子にH信号を出力する。3番目の時間帯では、出力信号(L、H)が入力する。これにより、NOR回路NOR1、NOR2、NOR4は、出力端子にL信号が出力し、NOR回路NOR3は、出力端子にH信号を出力する。4番目の時間では、出力信号(H、H)が入力する。これにより、NOR回路NOR1、NOR2、NOR3は、出力端子にL信号が出力し、NOR回路NOR4は、出力端子にH信号を出力する。
【0014】
図1に示すように、デコーダ回路5の出力は、スイッチ(SW1〜SW4)4の制御端に接続され、これらスイッチ4は、受光部2のセンサ素子と増幅回路3とを接続し、両者を接離するように制御する。即ち、スイッチは、H信号によって、両者を導通する。
したがって、センサ素子の各々が出力する検出信号を増幅回路3へ択一的に順次入力させるために、クロック信号(CLK)の電圧レベルの変化の進行に応じて複数のスイッチ4を順次導通させていく(SW1→SW2→SW3→SW4)ことができる。
【0015】
一方、センサ素子においては、その参照電圧節点が参照電圧クロック端子11に接続されているため、該端子に印加される電圧(Vrefクロック信号VREF)が接地電圧(Vss)から参照電圧(Vref)へと変化するタイミングに同期して検出信号の生成が開始される。そして、検出信号は、各センサ素子の対応するスイッチ4が導通するタイミングで増幅回路3に入力され、その対応するスイッチ4が導通している間、検出信号に基づいた出力(増幅回路3の出力)が出力信号端子10に表れる。ただし、対応するスイッチ4が導通した後でも、直後は、参照電圧クロック端子11のクロック信号が低レベルの期間であり、その期間に出力される検知信号は所望の出力信号では無い。そのため、出力信号端子10における出力信号の確定時期を、参照電圧クロック端子11のクロック信号の変化から所定時間の経過を見込む必要がる。すなわち、参照電圧クロック端子11のVrefクロック信号(VREF)が高レベル(参照電圧Vref)に変化するまでの時間及び検出時間を見込み、その後の出力電圧を有効なものとすればよい。
【0016】
次に、
図1及び
図2を参照して、センサ素子の各々が出力する検出信号を増幅回路3へ択一的に順次入力させるためのクロック信号(CLK)を生成する方法を説明する。
クロック信号(CLK)を生成するためのシュミット入力回路8は、参照電圧クロック端子11とフリップフロップ回路6の入力端子間に接続されている。シュミット回路は、オペアンプに正帰還をかけることで得られる。シュミット入力回路8のオペアンプは、正相入力端子(+)、逆相入力端子(−)及び出力端子を有し、出力端子は、フリップフロップ回路6の入力端子に接続されている。正相入力端子と出力端子間には、抵抗Rh2が接続されている。また、正相入力端子と参照電圧クロック端子11間には、抵抗Rh1が接続されている。オペアンプの逆相入力端子には、基準電圧Vthが入力される。基準電圧Vthは、電源電圧Vddと接地電圧Vss間の分圧抵抗(Rt1、Rt2)比であり、Vth=Vdd*Rt1/(Rt1+Rt2)で表される。
【0017】
シュミット回路は、入力信号に対する2つのしきい値を有している。入力信号の電位が高いしきい値を超えたときにH信号の電位を出力し、逆に入力信号の電位が低いしきい値を下回ったときにL信号の電位を出力する。入力信号が低いしきい値と高いしきい値の間にあるときは、直前の電位を保持する。
【0018】
本実施例で用いるシュミット入力回路8は、Vrefクロック信号(VREF)から
図4に示すクロック信号(CLK)を作成するにあたり、
図2に示すように、入力信号(Vrefクロック信号VREF)の電位が高いしきい値(Vslh)を超えたときにH信号の電位を出力し(出力信号がL信号からH信号に切換る)、逆に入力信号の電位が低いしきい値(Vshl)を下回ったときにL信号の電位を出力する(出力信号がH信号からL信号に切換る)。そして、電圧レベルVslhは、Vslh=Vth+Vth*(Rh1/Rh2)で表わされ、電圧レベルVshlは、Vshl=Vth−(Vdd−Vth)*(Rh1/Rh2)で表わされる。
【0019】
以上、実施例1において、参照電圧(Vref)とクロック信号(CLK)を同一信号から得ることにより、両者の端子を一つにすることが出来るので、クロック信号(CLK)を供給する専用端子を用いていた場合には専用端子を削減することができる。また、前記同一信号である参照電圧クロック端子から入力される信号(VREF)は、緩やかな電圧変化の繰り返しのクロック信号であり、その信号(VREF)から矩形状のクロック信号を生成する際のスレッシュホールドレベルを、ヒステリシス幅の広いシュミット入力にすることによって、遅い電圧変化による誤動作を避けると共に、参照電圧(Vref)の期間を幅広くとれるようにすることができる。