(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ステータコアを倒立させて見たとき、前記配線パターンがその最上面となる表面において前記下側インシュレータにおける渡り線及び引出し線が這う最下面より下方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
前記係止ピンがホームベース形の五角形に形成された断面形状を有し、その突角の頂点が外側を向いて配置され、各角部はR面となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド型ステッピングモータは、例えば、プリンター、コピー機、複合機などのOA機器、FA機器、ロボット等の産業機器、医療用機器、等々に広く用いられている。
【0003】
このハイブリッド型ステッピングモータにおいて、出力電極を出力電極固定用フレームの電極固定部に集中して配置した上で、固定子巻線のリードタップ線案内溝部が対応する出力電極に向かって伸びるように形成しているので、固定子巻線のリードタップ線の出力電極上への位置決めを簡単に行うことができ、その結果、固定子巻線のリードタップ線の出力電極への半田付け作業の自動化も容易に行える固定子巻線のリードタップ線接続部を備えたハイブリッド型ステッピングモータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のハイブリッド型ステッピングモータは、出力電極26を出力電極固定用フレーム23の電極固定部25に集中して配置した上で、固定子巻線のリードタップ線案内溝部27が対応する出力電極26に向かって伸びるように形成しているので、固定子巻線のリードタップ線の出力電極26上への位置決めを簡単に行うことができる構成となっている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の第6図(A)に記載されているように出力電極26上にリード線31の心線31aに半田にて固定されている。このため、固定子巻線のリードタップ線を出力電極26上に半田にて固定する際、加熱によってリード線31の心線31aの接合が緩み、導通不良となる虞がある。
【0006】
また、特許文献1の第10図には、出力電極26’を端子構造とし、リード線が固定された雌電極を内部に有するコネクタ43を用いてリード線と出力電極26’との電気的な接続を行ってもよいことが記載されている。しかしながら、この構造はコネクタピン接合のコネクタには対応できないという問題がある。なお、以上で述べた各事項に付されている符号は、特許文献1に記載されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド型ステッピングモータの斜視図である。
【
図2】
図1に示すハイブリッド型ステッピングモータの断面図である。
【
図3】
図2に示す下側インシュレータの部分の分解斜視図である。
【
図4】
図1に示すハイブリッド型ステッピングモータのステータの斜視図である。
【
図5】
図4に示すハイブリッド型ステッピングモータのステータの断面図である。
【
図6】
図5に示すステータを倒立させて見たときの部分拡大図である。
【
図8】本発明のハイブリッド型ステッピングモータの1相目の巻線パターンの説明図である。
【
図9】本発明のハイブリッド型ステッピングモータの2相目の巻線パターンの説明図である。
【
図10】本発明のハイブリッド型ステッピングモータにおけるインシュレータの係止ピンについての変形例1を説明する図である。
【
図11】本発明のハイブリッド型ステッピングモータにおけるPCB基板についての変形例2を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
(実施形態の構成)
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド型ステッピングモータ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すハイブリッド型ステッピングモータ1の断面図である。
【0016】
本実施形態のハイブリッド型ステッピングモータ1は、
図1及び
図2に示すように、2相のハイブリッド型ステッピングモータであって、上側インシュレータ18、下側インシュレータ19にコネクタハウジング20が一体成形で形成された構成で、出力端子をステータコア12の外側に集中配置している。ハイブリッド型ステッピングモータ1は、ステータ2と、ステータ2の内側に回転可能に配置されたロータ3と、ステータ2の軸方向両端にそれぞれ配設されたフロントフランジ4と、リアフランジ5、とから構成されている。フロントフランジ4とリアフランジ5には、それぞれ軸受6,7が装着され、ロータ3を回転可能に支持する。
【0017】
ロータ3は、軟磁性材(例えば、ケイ素鋼板など)のコアを所定枚数積層して構成された2つのロータコア8,9と、2つのロータコア8,9の間に配設された円板状のロータマグネット10と、非磁性材からなるシャフト11から構成され、ロータコア8,9の外周面には複数の小歯が等ピッチで形成されている。ロータマグネット10は、軸方向に2極着磁されている。
【0018】
ステータ2は、軟磁性材(例えば、ケイ素鋼板など)のコアを所定枚数積層して構成されたステータコア12と、ステータコア12に装着された絶縁材料からなるインシュレータ13と、インシュレータ13を介してステータコア12に巻回された固定子巻線14から構成されている。ステータコア12には、後述するように、環状ヨーク部から径内方に突出した8個の磁極15(第1磁極151〜第8磁極158。
図7参照)が45°ピッチで等配され、それぞれの磁極15の先端部は周方向に広がる極歯16(
図10参照)を備え、ロータコア8,9と対向する極歯16の面には複数の小歯17(
図10参照)が等ピッチで形成されている。
【0019】
インシュレータ13は、上側インシュレータ18と下側インシュレータ19から構成され、ステータコア12の軸方向両側から、それぞれ装着する。下側インシュレータ19には径外方に突出したコネクタハウジング20が一体成形されている。
【0020】
図3は、
図2に示す下側インシュレータ19の部分の分解斜視図である。
図3に示すように、下側インシュレータ19のコネクタハウジング20の一方側には配線パターン22を形成したPCB基板21を装着し、コネクタハウジング20の他方側の内側にはコネクタピン24をインサートモールドした内側コネクタ23を装着する。そして、コネクタピン24をコネクタハウジング20の貫通孔25と、PCB基板21のスルーホール26に挿通させ、半田で配線パターン22と電気的に接続する。
【0021】
なお、内側コネクタ23は、例えば、市販品の4ピンコネクターを使用したものであるが、コネクタハウジング20の箇所にコネクタピン24をインサートモールドした構成のものであっても勿論よい。
【0022】
コアを所定枚数積層して構成されたステータコア12にインシュレータ13を装着した後、被巻線部となる箇所に、後述するように、係止ピン31を介しつつ、インシュレータ13の上から所定ターン数で固定子巻線14(
図8及び
図9参照)が巻回される。
【0023】
図4は、
図1に示すステータ2の斜視図である。
図5は、
図4に示すステータ2の断面図である。
図6は、
図5のステータ2を倒立させて見たときの部分拡大図である。
図6は、便宜上、固定子巻線14の引出し線14aをPCB基板21に引き出す状態を説明するために下側インシュレータ19を図の上側に配置した状態となっている。
図6のように、下側インシュレータ19における渡り線(及び引出し線)が這う最下面Bと、PCB基板21に形成した配線パターン22の表面(最上面)Aとは同一面の位置関係にはなっていない。ステータ2は下側インシュレータ19を上側にして巻線機にセットしたとき、
図6のように、配線パターン22の表面(最上面)Aが下側インシュレータ19における渡り線(及び引出し線)が這う最下面Bより下方に位置している。このため、固定子巻線14の引出し線14aをPCB基板21に引き出す際、巻線機のノズルの動きが制約を受けることなく、作業性が容易となる。
【0024】
図7は、
図4に示すステータ2の底面図である。出力端子となる配線パターン22は、一方端側(外方側)に固定子巻線14(
図8及び
図9参照)の巻線端末である引出し線14aを半田で接合するためのランド部27と、他方側(ステータ側)にコネクタピン24を挿通するためのスルーホール26(端子ピン)が形成されている。配線パターン22は
図7のように、ランド部27の中心C1とスルーホール26の中心C2は一致しておらず、ずれている。また、配線パターン22の配置は、PCB基板21の中心C0を対称軸とした線対称に配置されている。ここでは、
図7のようにPCB基板21には4パターン形成されている。
【0025】
なお、本実施形態では、コネクタピン24として
図3のように4ピンコネクターを用い、4パターンを形成した構成であるが、この構成に限定されるものではなく、必要となるピン数に合わせて形成される。
【0026】
また、本実施形態では、コネクタピン24は
図3のように直棒であるが、外部コネクタの挿入方向を径方向にする場合には、L形ピンをインサートモールドにて構成してもよい。
【0027】
次に、磁極15と、固定子巻線14の渡り線係止用の係止ピン31の配置について、説明する。本実施形態では、
図7に示すように、8つの磁極15に対し、6つの係止ピン31を配置する構成としている。すなわち、磁極15は、コネクタハウジング20に設けられているスルーホール26(端子ピン)に近傍している磁極15を第1磁極151として、時計回りに前述のとおり45°ピッチで、第2磁極152、第3磁極153、第4磁極154、第5磁極155、第6磁極156、第7磁極157、第8磁極158が等配されている。
【0028】
これに対し、係止ピン31は、8つの磁極15の間の領域の一部に設けられており、設置領域と非設置領域とが形成されている。すなわち、第3磁極153の両側の領域、第5磁極155の両側の領域、及び第7磁極157の両側の領域には、設置領域として、第1係止ピン311及び第2係止ピン312、第3係止ピン313及び第4係止ピン314、並びに第5係止ピン315及び第6係止ピン316が、それぞれ配置されている。第1磁極151の両側の領域には、非設置領域として、破線で示した第1仮想係止ピン311v及び第2仮想係止ピン312vの位置に、係止ピン31は、設けられていない。
【0029】
第1磁極151は、コネクタハウジング20に設けられているスルーホール26(端子ピン)の近傍に設けられているわけであるが、この位置における第1磁極151の両側の領域に係止ピン31を設けないことにより、固定子巻線14の端末を引き出す際のノズル動作の自由度が高くなり、作業性が向上する。なお、本実施形態では、8つの磁極15に対し6つの係止ピン31としているが、これらの数について限定されるものではなく、スルーホール26(端子ピン)の近傍に設けられている磁極15の両側に係止ピン31が設けられていなければよい。
【0030】
固定子巻線14は、このような磁極15と係止ピン31の配置において、後述するように、1相が巻回された後、2相が巻回される。それぞれの相において、各巻線部には下側から上側に向けて巻回し、最後は、下側から引出し線14aを引き出し、案内溝30を通ってランド部27上にまっすぐに位置決めされて引き出される。そして、図示しない自動半田付け機にて引出し線14aがランド部27に電気的に接続される。接続された後、引出し線14aの余分な箇所はカットされる。
【0031】
案内溝30は、溝幅が次第に漸減する断面がV字形状となっているため、固定子巻線14の引出し線14aがスムーズに案内溝30内に案内される。
【0032】
次に、固定子巻線14の巻線パターンについて、
図8及び
図9を用いて説明する。
【0033】
1相目の巻線パターンを
図8に示す。
図8に示すように、ステータコア12には8個の磁極15が周方向に45°ピッチで等配されており、1相目の固定子巻線14は、時計周りに第1磁極151、第3磁極153、第5磁極155、第7磁極157に所定のターン数で巻回される。図中、S1は1相目の巻き始めを示し、E1は1相目の巻き終わりを示す。またマル×印は手前側から奥側に向かっている状態を示し、マル・印は奥側から手前側に向かっている状態を示している。
【0034】
第1に、固定子巻線14(マグネットワイヤー)の巻き始めS1は、ランド部27上から案内溝30を通って第1磁極151に手前側から奥側に向かって巻回された後、奥側から手前側に向かって引き出され、第2磁極152の背後の壁を通る。第2に、固定子巻線14は、第1係止ピン311に沿って渡り線を引き回され、第3磁極153に手前側から奥側に向かって巻回された後、奥側から手前側に向かって引き出され、第2係止ピン312、第3係止ピン313に沿って第4磁極154の背後の壁を通る。
【0035】
第3に、固定子巻線14は、第3係止ピン313に沿って渡り線を引き回され、第5磁極155に手前側から奥側に向かって巻回された後、奥側から手前側に向かって引き出され、第4係止ピン314、第5係止ピン315に沿って第6磁極156の背後の壁を通る。第4に、固定子巻線14は、第5係止ピン315に沿って渡り線を引き回され、第7磁極157に手前側から奥側に向かって巻回された後、奥側から手前側に向かって引き出され、第6係止ピン316に沿って第8磁極158の背後の壁を通る。第5に、固定子巻線14は、第1磁極151の下側を通って奥側から手前側に向かって引き出された後、案内溝30を通ってランド部27上に引出し線14aが位置決めされる(E1)。
【0036】
2相目の巻線パターンを
図9に示す。
図9に示すように、2相目の固定子巻線14は、反時計周りに第8磁極158、第6磁極156、第4磁極154、第2磁極152に所定のターン数で巻回される。図中、S2は2相目の巻き始めを示し、E2は2相目の巻き終わりを示す。
【0037】
第1に、固定子巻線14(マグネットワイヤー)の巻き始めS2は、ランド部27上から案内溝30を通って第8磁極158に手前側から奥側に向かって巻回された後、奥側から手前側に向かって引き出され、第6係止ピン316、第5係止ピン315に沿って第7磁極157の背後の壁を通る。第2に、固定子巻線14は、第5係止ピン315に沿って渡り線を引き回され、第6磁極156に手前側から奥側に向かって巻回された後、奥側から手前側に向かって引き出され、第4係止ピン314、第3係止ピン313に沿って第5磁極155の背後の壁を通る。
【0038】
第3に、固定子巻線14は、第3係止ピン313に沿って渡り線を引き回され、第4磁極154に手前側から奥側に向かって巻回された後、奥側から手前側に向かって引き出され、第2係止ピン312、第1係止ピン311に沿って第3磁極153の背後の壁を通る。第4に、固定子巻線14は、第1係止ピン311に沿って渡り線を引き回され、第2磁極152に手前側から奥側に向かって巻回された後、奥側から手前側に向かって引き出された後、案内溝30を通ってランド部27上に引出し線14aが位置決めされる(E2)。
【0039】
このように1相目及び2相目ともに、巻き終わり側の固定子巻線14の引出し線14aは、下側から案内溝30に案内される構成のため、無理なく案内溝30に案内できる。
【0040】
(変形例1)
上記した実施形態では、
図7で係止ピン31を丸ピン形状で示したが、
図10のように、係止ピン31の断面形状がホームベース形の五角形に形成され、突角の頂点が外側を向いて配置され、各角部はR面となっている構成であってもよい。このような形状にすることによって、丸ピン形状に比べて強度を向上することできる結果、係止ピン31に固定子巻線14の渡り線が掛った際のテンションによっても係止ピン31の変形が防止できる。
【0041】
(変形例2)
上記した実施形態では、
図7でPCB基板21には4つのパターンの配線パターン22が形成され、バイポーラ駆動の構成を示したが、これに限定されるものではない。固定子巻線14の巻線方向を改善した結果、スルーホール26(端子ピン)近傍の第1磁極151の両側に配置されるべき渡り線の第1仮想係止ピン311v及び第2仮想係止ピン312vの2箇所の係止ピンを廃止でき、その結果、固定子巻線14の端末を引き出す際のノズル動作の自由度を高くでき、PCB基板21の配線パターン22を
図11のように、ユニポーラ駆動としても設計できる。
【0042】
(実施形態の効果)
以上、本発明の実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0043】
下側から引出し線14aを引き出し、案内溝30に引き出しているため、無理なく案内溝30に案内できる結果、引出し線14aが断線する虞がない。また、出力端子となる配線パターン22はコネクタピン24とランド部27の中心がずれているため、固定子巻線14の引出し線14aをランド部27上に位置決めして接合する際も、コネクタピン24の位置に影響を受けることなく作業することができる。
【0044】
さらに、出力端子となる配線パターン22の両端にコネクタピン24とランド部27が離れて形成されているため、引出し線14aをランド部27に接続する際、コネクタピン24の半田の溶融を防止できる。また、特許文献1のように外部接続をリード線で形成していないため、接合が緩んで導通不良となる虞がない。また、ランド部27が配線パターン22の外縁側に形成されているため、自動半田付け機にて作業する際の自由度が高い。また、配線パターン22の表面(最上面)Aが下側インシュレータ19における渡り線(及び引出し線)が這う最下面Bより下方に位置しているため、固定子巻線14の引出し線14aをPCB基板21に引き出す際、巻線機のノズルの動きが制約を受けることなく、作業性が容易となる。
【0045】
さらに、固定子巻線14の巻線方向を改善した結果、スルーホール26(端子ピン)近傍の第1磁極151の両側に配置されるべき渡り線の第1仮想係止ピン311v及び第2仮想係止ピン312vの2箇所の係止ピンを廃止でき、固定子巻線14の端末を引き出す際のノズル動作の自由度が高くなり、作業性が向上する。また、スルーホール26(端子ピン)近傍の第1磁極151の両側に配置されるべき渡り線の第1仮想係止ピン311v及び第2仮想係止ピン312vの2箇所の係止ピンを廃止できる結果、固定子巻線14の端末を引き出す際のノズル動作の自由度を高くでき、PCB基板21の配線パターン22をユニポーラ駆動としても設計できる。
【0046】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。