特許第6548188号(P6548188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548188
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】電源切替装置用停電検知回路
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/165 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   G01R19/165 T
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-108976(P2015-108976)
(22)【出願日】2015年5月28日
(65)【公開番号】特開2016-223856(P2016-223856A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2018年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207470
【氏名又は名称】大同信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】田本 成充
(72)【発明者】
【氏名】水谷 康之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 光昭
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3041449(JP,U)
【文献】 特開昭56−140264(JP,A)
【文献】 実開平03−083444(JP,U)
【文献】 実開平04−014445(JP,U)
【文献】 特開昭59−087371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常用系電力入力ラインを半導体部品にて開閉する第1切替回路と、予備系電力入力ラインを半導体部品で開閉する第2切替回路と、前記常用系電力入力ラインへの電力供給の有無を検出する第1電力検出回路と、前記予備系電力入力ラインへの電力供給の有無を検出する第2電力検出回路と、前記第1,第2電力検出回路の検出結果に基づいて前記第1,第2切替回路を制御する切替制御回路とを備えていて、前記常用系電力入力ラインに電力が供給されているときにはそれを出力するが前記常用系電力入力ラインに電力が供給されないときには予備系電力入力ラインに供給された電力を出力する電源切替装置に対し、前記第1電力検出回路として又は前記第1電力検出回路および前記第2電力検出回路の夫々として組み込まれる電源切替装置用停電検知回路であって、
供給有無検出対象の受給電力を第1整流回路にて整流する整流部と、その整流結果の電圧低下に応じて停電の有無を検知する整流電圧検出部と、その停電有無検知結果を前記切替制御回路へ送出するための検知結果出力部と、前記整流電圧検出部から前記検知結果出力部への前記停電有無検知結果の伝達を給電検知時には充放電回路の充電にて遅らせる遅延部と、前記受給電力を第2整流回路にて整流してから定電圧化する安定化電源部とを具備しており、前記整流電圧検出部と前記遅延部と前記検知結果出力部とが動作電力を前記安定化電源部から受けるようになっており、前記遅延部が停電検知時には前記充放電回路に放電を行わせるものであり、その放電時間が、停電時の前記検知結果出力部の応動時間より短くなっていることを特徴とする電源切替装置用停電検知回路。
【請求項2】
前記検知結果出力部が、リレーを具備していて停電有無検知結果の送出をリレー信号にて行うものであり、前記放電時間が、停電時の前記リレーの応動時間より短くなっていることを特徴とする請求項1記載の電源切替装置用停電検知回路。
【請求項3】
前記放電時間が、前記検知結果出力部の応動開始まで途中放電したときから放電完了までの時間であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された電源切替装置用停電検知回路。
【請求項4】
前記放電時間が、放電開始から放電完了までの時間であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された電源切替装置用停電検知回路。
【請求項5】
前記遅延部が給電検知時に前記停電有無検知結果の伝達を遅らせる遅延時間が、前記半導体部品の導通保持時間の最大値より長くなっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載された電源切替装置用停電検知回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多系統の供給電力から少系統だけ選択して負荷機器へ出力する電源切替装置に電力検出回路として組み込まれる電源切替装置用停電検知回路に関する。
鉄道の駅中間の信号設備を負荷とする小容量の電源部の他、駅構内や電車基地などの大規模な信号設備を負荷とする大型の配電盤などにも、電源切替装置が採用されている。
選択中の系統が停電したときには他系統へ速やかに切り替えるが、その停電を検知する電力検出回路として電源切替装置用停電検知回路が電源切替装置に組み込まれる。
この電源切替装置用停電検知回路は、必要な停電検知の機能を具現化するに際し、電圧検出と遅延動作とを行って電圧低下に基づいて停電の有無を判別する電子回路にて具現化される。しかも、その遅延動作は、環境雑音や侵入サージに強いアナログ回路にて具現化され、さらに具体的にはコンデンサの充放電を利用して具現化されている。
【背景技術】
【0002】
[前提技術]
鉄道の信号機器など安全性に関わる電気機器に対して動作に必要な電力を供給する設備にあっては、供給側で一系統の電力供給ラインが事故や作業などによって停電状態になっても負荷側の電気機器は機能を停止することが無いように、電力供給ラインが常用系と予備系とに二系統化(多系統化)されている(例えば非特許文献1参照)。
電源切替装置は、そのような常用系電力供給ライン及び予備系電力供給ラインと、負荷側の電気機器(以下、負荷機器という)との間に設置されて、常用系電力供給ラインと予備系電力供給ラインとのうち何れか一つから負荷機器へ電力が供給されるよう択一的に電源を切り替えるものであり、そのために電力検出回路と切替部とを具備している。
【0003】
そのうち、電力供給系を切り替える切替部には高速性を重視してサイリスタ等の半導体部品が採用され、電力供給の有無を検出する電力検出回路として電源切替装置に組み込まれた停電検知回路(電源切替装置用停電検知回路)による停電検知は、負荷電流の変動が大きくて、電流検出で行うのが困難なため、専ら電圧検出で行っている。
図4を引用して詳述すると、電源切替装置10は、常用系の高圧送電線から常用系電力供給ライン対11を介して供給された高電圧(6600V)の交流電力をトランス12にて低電圧(110V)の交流電力に降圧してから常用系電力入力ライン対13+16にて入力するとともに、予備系の高圧送電線から予備系電力供給ライン対23を介して供給された高電圧(6600V)の交流電力をトランス24にて低電圧(110V)の交流電力に降圧してから予備系電力入力ライン対25+28にて入力するようになっている。
【0004】
なお、ここでは電力供給ライン対11,23やトランス12,24まで電源切替装置10に含めて図示したが、それらは、別体になって電源切替装置10から外れていても良い。また、簡明化のため図示や詳細な説明は割愛するが、上述した電力入力ライン対13+16,25+28及び後述する電力出力ライン対15+29と、負荷機器との間に、高速性を重視した電源切替装置10の故障時にそれを回避・迂回させる信頼性重視のバイパス用の電気機械式切替回路が設けられていても良い(特許文献1参照)。
【0005】
また、電源切替装置10は、常用系電力が供給されているときにはそれを負荷機器へ送出するが、常用系電力が停止したときにはそれに代えて予備系電力を負荷機器へ供給するために、二系統の電力入力ライン対13+16,25+28のうち何れか一方だけを自動的かつ択一的な切り替えにて電力出力ライン対15+29に接続させるようになっており、そのために、電力検出回路18,21と切替制御回路20とゲート制御回路19,22と切替部14,17,26,27と各電力ライン13,15,16,25,28,29とを具備している。
【0006】
電力検出回路18(第1電力検出回路,停電検知回路)は、常用系電力入力ライン対13+16を対象にしてそこへの電力供給の有無(給電/停電,停電の有無)を検出するものであり、電力検出回路21(第2電力検出回路,停電検知回路)は、予備系電力入力ライン対25+28を対象にしてそこへの電力供給の有無(停電の有無,給電/停電)を検出するものである。これらの電力検出回路18,21は、対象ラインが異なるが、同一構造・同一機能のもので良く、何れも、上述したように変動の大きな電流でなく電圧に基づいて電力低下検出(停電検知)を行い、その電力検出結果(検知結果)をリレー信号(リレーRYの接点状態)にて切替制御回路20に送出するようになっている。
【0007】
切替制御回路20は、それら二つの電力検出回路18,21から電力検出結果(停電検知結果)を受け、その二つの検出結果に応じて切替部14,17,26,28の導通遮断状態を切り替える制御を行うものであり、その際、常用系を優先的に採択するようになっている。具体的には、常用系電力入力ライン対13+16が受電しているときには常用系側の切替部14,17が導通状態になるとともに予備系側の切替部26,27が遮断状態になり、常用系電力入力ライン対13+16が受電していないときには常用系側の切替部14,17が遮断状態になるとともに予備系側の切替部26,27が導通状態になり、両系とも停電しているときには両系の切替部14,17,26,27が遮断状態になるように、切替部14,17用のゲート制御回路19と切替部26,27用のゲート制御回路22とに対する制御を行うようになっている。
【0008】
切替部14は、サイリスタスイッチ等の半導体部品が採用された電子式切替回路(常用系側に設けられた一対の第1切替回路の一方)であり、ゲート制御回路19を介する切替制御回路20の制御に応じて導通/遮断の状態切替を行うようになっており、一端が常用系電力入力ライン対13+16の一方の常用系電力入力ライン13にてトランス12の二次側巻線の一端に接続され、他端が電力出力ライン対15+29の一方の電力出力ライン15にて負荷機器の一の受電端に接続されている。
【0009】
切替部17は、やはりサイリスタスイッチ等の半導体部品が採用された電子式切替回路(常用系側に設けられた一対の第1切替回路の他方)であり、ゲート制御回路19を介する切替制御回路20の制御に応じて導通/遮断の状態切替を行うようになっており、一端が常用系電力入力ライン対13+16の他方の常用系電力入力ライン16にてトランス12の二次側巻線の他端に接続され、他端が電力出力ライン対15+29の他方の電力出力ライン29にて負荷機器の他の受電端に接続されている。
【0010】
切替部26は、やはりサイリスタスイッチ等の半導体部品が採用された電子式切替回路(予備系に設けられた一対の第2切替回路の一方)であり、ゲート制御回路22を介する切替制御回路20の制御に応じて導通/遮断の状態切替を行うようになっており、一端が予備系電力入力ライン対25+28の一方の予備系電力入力ライン25にてトランス24の二次側巻線の一端に接続され、他端が電力出力ライン対15+29の一方の電力出力ライン15にて負荷機器の一の受電端に接続されている。
【0011】
切替部27は、やはりサイリスタスイッチ等の半導体部品が採用された電子式切替回路(予備系に設けられた一対の第2切替回路の他方)であり、ゲート制御回路22を介する切替制御回路20の制御に応じて導通/遮断の状態切替を行うようになっており、一端が予備系電力入力ライン対25+28の他方の予備系電力入力ライン28にてトランス24の二次側巻線の他端に接続され、他端が電力出力ライン対15+29の他方の電力出力ライン29にて負荷機器の他の受電端に接続されている。
【0012】
これらの切替部14,17,26,27は、何れも、大きな交流電力の導通遮断を行う回路なので、一対のサイリスタを逆向きで並列接続したものとなっている。
また、何れの切替部14,17,26,27についても、電力出力ライン対15+29と負荷機器との接続は、図示のように直接的になされていても良いが、上述したように図示しないバイパス用の電気機械式切替回路などが電源切替装置10に組み合わされている場合はそれを介して間接的になされていても良い。
【0013】
このような構成の電源切替装置10にあっては、常用系電力が供給されると、そのことが電力検出回路18によって検出されるとともに切替制御回路20に通知されるが、上述したように切替制御回路20が常用系を優先的に採択するようになっているので、そのゲート制御に従って常用系側の切替部14,17の各サイリスタがオンして導通状態になるとともに予備系側の切替部26,27の各サイリスタがオフして遮断状態になる。
この状態では、トランス12の二次巻線と常用系電力入力ライン13と切替部14と電力出力ライン15と負荷機器と電力出力ライン29と切替部17と常用系電力入力ライン16とを辿るループ(常用系電力用一巡電路)を常用系電流i1が流れて(図4の矢付き輪郭線を参照)、負荷機器に常用系電力が供給される。
【0014】
また、予備系電力が供給されると、そのことが電力検出回路21によって検出されるとともに切替制御回路20に通知されるが、上述したように切替制御回路20が常用系を優先的に採択するようになっているため、常用系電力が供給されている間は、予備系電力が供給されても、その予備系電力が負荷機器に供給される採択状態に切り替わる訳でなく、常用系採択状態が維持されるので、上述したループ(常用系電力用一巡電路)を流れる常用系電流i1による常用系電力の供給が継続される。
【0015】
このような常用系採択状態下で、常用系が停電すると、そのことが電力検出回路18によって検出され、その停電有無検知結果が切替制御回路20に通知され、その通知に応じた切替制御回路20の制御に従って常用系側の切替部14,17が導通状態から遮断状態に切り替わるとともに予備系側の切替部26,27が遮断状態から導通状態に切り替わる。
こうして予備系採択状態に切り替わった後は、トランス24の二次巻線と予備系電力入力ライン25と切替部26と電力出力ライン15と負荷機器と電力出力ライン29と切替部27と予備系電力入力ライン28とを辿るループ(予備系電力用一巡電路)を予備系電流i2が流れて(図4の矢付き長破線を参照)、負荷機器に予備系電力が供給される。
【0016】
さらに、そのような予備系採択状態下で、常用系が復電すると、この復電によって再開した常用系電力の供給状態が電力検出回路18によって検出され、その検出結果すなわち停電状態でなく給電状態であることを示す停電有無検知結果が切替制御回路20に通知されることから、その通知に応じて、予備系より常用系を優先する切替制御回路20が予備系採択状態から常用系採択状態へ制御状態を切り替えるため、常用系側の切替部14,17の各サイリスタがオンして導通状態になるとともに、予備系側の切替部26,27の各サイリスタがオフして遮断状態になるので、電源切替装置10から負荷機器に供給される交流電力が予備系電力(i2)から常用系電力(i1)に戻る。
【0017】
[従来技術]
このような電源切替装置10の電力検出回路18や電力検出回路21として採用されて電源切替装置10に組み込まれていた従来の停電検知回路30(電源切替装置用停電検知回路)を、図面を引用して説明する。図5は停電検知回路30の回路図であり、図6(a)は停電検知対象の供給電力に停電が無いときの各部の電圧波形例である。
停電検知回路30は(図5参照)、電力入力ライン対13+16又は25+28を対象にしてそこへの電力供給の有無(停電の有無,給電/停電)を検出するものであるが、停電検知対象の電力だけで動作するよう、停電検知対象電力から自回路の動作電力を作り出すために、以下に詳述する降圧部31と整流電源部32と検知結果出力部33と平滑電圧検出部34と遅延部35と整流電圧検出部36と検知結果出力部37とを具えている。
【0018】
降圧部31は、停電検知回路30が電力検出回路18として採用された場合は常用系電力入力ライン対13+16から常用系電力を入力してそれを停電検知対象とし、停電検知回路30が電力検出回路21として採用された場合は予備系電力入力ライン対25+28から予備系電力を入力してそれを停電検知対象とし、その停電検知対象の電力の電圧(110V,図6(a)の入力波形を参照)をトランスT1で所定の電圧たとえば17Vに下げるとともに、コイルとコンデンサで構成したフィルタF1にて降圧後の停電検知対象電力から雑音を除去することにより、停電検知対象電力の電圧波形を整えるものである。
【0019】
整流電源部32は、その整形後の停電検知対象電力をダイオードブリッジDB1(第1整流回路)で全波整流(両波整流)して整流ライン32aへ送出するとともに(図6(a)の整流波形を参照)、コイルとコンデンサで構成した平滑フィルタF2にて上述した整流後の停電検知対象電力を直流化して平滑電流ライン32bへ送出するものである(図6(a)の直流波形を参照)。この平滑電流ライン32bの電圧は、直流電圧に準じたものとなり、交流の停電検知対象電力に比例し、停電検知対象電力の電圧変化に追随して変化するが、例えば10ms未満の無視可能な瞬停による停電検知対象電力の電圧変化はフィルタ等で除去されるので、過剰な変化追随による過敏な停電検知までは行わない。
【0020】
検知結果出力部33は、検知結果をリレー信号にするためのリレーRYの本体部(リレーRYが電磁リレーなら電磁コイル部)に、抵抗とコンデンサとの直列回路からなる保護回路を並列接続にて付加したものであり、一端側のリレー駆動ライン34aが平滑電圧検出部34に接続され、他端側が整流電圧検出部36に接続されている。そして、停電検知対象電力が正常に供給されているときに平滑電流ライン32bに発生する電圧に近い十分な電圧たとえば24VがリレーRYの本体部の両端間に印加されるとリレーRYが励磁状態(動作状態,扛上状態)になり、上記の両端間に電圧が印加されないか印加電圧が上記電圧から10%程下がって90%以下になるとリレーRYが非励磁状態(無励磁状態,復旧状態,落下状態)になるので、リレーRYの非励磁が停電の検知結果を示し、リレーRYの励磁が停電無(給電)の検知結果を示すものとなっている。
【0021】
平滑電圧検出部34は、平滑電流ライン32bの電流で駆動されるトランジスタQ2,Q3を具備した回路であり、平滑電流ライン32bに上述の十分な電圧が印加されると、そこから直列二段のツェナーダイオードZD3,ZD4と抵抗R7とを介してトランジスタQ3のベースに電流が流れてトランジスタQ3がオンする。そして、トランジスタQ3がオンすると、トランジスタQ2のベースから抵抗R6とトランジスタQ3のコレクタ−エミッタを介して接地GNDへ電流が流れてトランジスタQ2もオンする。さらに、トランジスタQ2がオンすると、平滑電流ライン32bからトランジスタQ2のエミッタ−コレクタと抵抗R3と単段のツェナーダイオードZD1と抵抗R7とを介してトランジスタQ3のベースに電流が流れる。
【0022】
ここで、ツェナーダイオードのツェナー電圧すなわちツェナーダイオードで降下する電圧は二段のツェナーダイオードZD3,ZD4より単段のツェナーダイオードZD1の方が低いことから、一旦そのループ即ち一巡経路Q3,R6,Q2,R3,ZD1,R7,Q3に電流が流れると平滑電流ライン32bの電圧が少々下がっても電流が流れ続けるので、平滑電圧検出部34が全体動作としてヒステリシス特性を示すものとなっている。また、トランジスタQ2がオンしている間は、その僅かな電圧降下を無視すると平滑電流ライン32bの電圧をそのままリレー駆動ライン34aに印加させるものとなっている。
【0023】
遅延部35は、充電用の抵抗R9とリレーRYの常閉接点と蓄電用のコンデンサC9との直列回路が平滑電流ライン32bと接地GNDとの間に設けられたものであり、停電検知対象電力の供給が開始されて平滑電流ライン32bに電圧が掛かったときにその昇圧を充電にて緩やかにすることで検知結果出力部33のリレーRYが非励磁状態から励磁状態への遷移するタイミングを遅延させるようになっている。その遅延時間に関しては、上述した切替部14,17,26,27に採用されているサイリスタスイッチのような半導体部品ではスイッチングが通電電流ゼロのタイミングでなされるため商用電力の交流波形がゼロになるタイミングを複数回含む時間より長くされるという一般技術に基づいて、遅延時間が50ms弱になるように、コンデンサC9と抵抗R9が選定されている。また、コンデンサC9には放電用の抵抗R8が並列接続されており、リレーRYが励磁状態になった後はリレーRYの接点が開いてコンデンサC9の電荷を抵抗R8を介して放電することにより、停電後の復電などによる次回の遅延動作に備えるようにもなっている。
【0024】
整流電圧検出部36は、コレクタが上述した検知結果出力部33の他端に接続されエミッタが接地GNDに接続されたトランジスタQ1を具備した回路であり、そのトランジスタQ1のベースは、全波整流後の停電検知対象電力が送出される整流ライン32aに、ツェナーダイオードZD5を介して、接続されている。ツェナーダイオードZD5は電圧レベルの低い雑音をカットして検知結果出力部33のリレーRYの落下動作(励磁状態から非励磁状態へ遷移)にめりはりをつけるためのものなので、ツェナーダイオードZD5にはツェナー電圧の極めて低いものが採用されている。そのため、電力入力ラインの停電検知対象電力が停電すると、整流電圧検出部36では、全波整流後の停電検知対象電力の電圧が速やかに低下し、それに応じてトランジスタQ1が速やかにオフするので、整流電圧検出部36は停電検知を迅速に行うものとなっている。
【0025】
検知結果出力部37は、検知結果出力部33の停電有無検知結果をリレー信号(リレーRYの接点の開閉状態)で切替制御回路20に送出するものである。
このような構成の停電検知回路30の動作を、図面を引用して説明する。図6は、(a)が停電が無いときの波形例、(b)が停電が発生したときの波形例である。また、図7は、常用系が停電した時に予備系への切替がスムーズに行われたときの波形例である。
【0026】
停電検知対象の供給電力に停電が無いときは、降圧部31に入力される電力の電圧波形が概ね正弦波状を維持するので(図6(a)の入力波形を参照)、整流ライン32aの電圧が一方向に半分の周期で脈打ち続けるとともに(図6(a)の整流波形を参照)、平滑電流ライン32bの電圧が小さな変動はあるが概ね一定になる(図6(a)の直流波形を参照)。そして、その平滑電流ライン32bの電圧に応じて平滑電圧検出部34のトランジスタQ3,Q2がオンし続けるとともに、整流ライン32aの電圧に応じて整流電圧検出部36のトランジスタQ1もオンし続けることから、検知結果出力部33のリレーRYが励磁状態を維持するので、停電していないという検知結果が検知結果出力部37から出力される。
【0027】
これに対し、停電検知対象の供給電力が停電すると(図6(b)参照)、入力波形が0Vに張り付いて変化しなくなるとともに、整流ライン32aの整流波形も0Vに張り付くので、整流電圧検出部36のトランジスタQ1がオフする。
この動作は短時間で完遂されるため、検知結果出力部33のリレーRYが励磁状態から非励磁状態へ速やかに遷移するので、選択中の系統の停電時に他系統へ切り替える動作が速やかに遂行される。
【0028】
また、停電検知対象の供給電力の停電により入力波形が0Vになるのに伴って、平滑電流ライン32bの直流波形も低下するが、その低下状況には、整流電源部32のコンデンサからの放電に加えて、遅延部35のコンデンサC9の蓄電状態も、関与する。
詳述すると、遅延部35では、停電検知対象電力の供給時・非停電時にリレーRYの励磁状態(扛上状態)に対応してリレーRYの接点が開状態(遮断状態,オープン状態)になっているが、停電検知対象の供給電力が停電すると、上述のようにトランジスタQ1がオフして、リレーRYが非励磁状態(落下状態)になるので、リレーRYの接点が閉状態(導通状態,メーク状態)になる。そして、遅延部35のコンデンサC9と整流電源部32のコンデンサとが抵抗R9と平滑電流ライン32bとを介して繋がる。
【0029】
整流電源部32では、そのコンデンサに蓄えられていた電荷が、供給電力の停電によりトランジスタQ3とトランジスタQ2との導通ループへ流れることで、その導通ループが解けるまで放電が行われるが、上述したように抵抗R9と平滑電流ライン32bとを介して整流電源部32のコンデンサと遅延部35のコンデンサC9とが繋がるため、整流電源部32の放電電流の一部が遅延部35へ流れてコンデンサC9を充電する。
そのため、停電時における平滑電流ライン32bの電圧変化(低下)は、整流電源部32と遅延部35のコンデンサの充放電状態に応じて速やかなものになることから、それに対応して低下するリレー駆動ライン34aのリレー駆動波形も速やかに低下するので、停電から平滑電圧検出部34のトランジスタQ2がオフするまでの時間は、トランジスタQ2オン時の遅延時間すなわちリレーRYの扛上(非励磁状態から励磁状態への遷移)時の遅延時間として上述した50ms弱よりは短いが、リレーRYの落下時間(励磁状態から非励磁状態への遷移時間)より長い。
【0030】
このような停電検知回路30を電力検出回路18と電力検出回路21とに採用した電源切替装置10の切替動作について、図4のブロック図と図7の波形図を引用して、説明を追加する。
【0031】
常用系電力も予備系電力も正常に供給されているときには(図7の時刻t1より左側を参照)、常用系電力入力ライン対13+16の常用系入力電圧V[13−16]も、予備系電力入力ライン対25+28の予備系入力電圧V[25−28]も、概ね正弦波状になる。そのため、電力検出回路18によって常用系電力の給電(停電無し)の検知結果を受けた切替制御回路20の切替制御に従って常用系側の切替部14,17が導通状態を維持するとともに予備系側の切替部26,27が遮断状態を維持するので、常用系電力用一巡電路内の電力出力ライン対15+29と負荷機器に常用系電流i1が流れて、そこの出力電圧V[15−29]が常用系入力電圧V[13−16]に倣ったものとなる。
【0032】
その状態で常用系が停電すると(図7の時刻t1を参照)、常用系入力電圧V[13−16]が低下して0Vになるので、予備系入力電圧V[25−28]が正弦波状を維持していても、出力電圧V[15−29]は常用系入力電圧V[13−16]に倣って低下するが、常用系電力の停電が電力検出回路18によって速やかに検知され、その検知結果を受けた切替制御回路20の切替制御に従って常用系側の切替部14,17が遮断状態になるとともに予備系側の切替部26,27が導通状態になる。
【0033】
この切替動作によって(図7の時刻t2を参照)、常用系電流i1が止まり、その代わりに予備系電流i2が予備系電力入力ライン対25+28と予備系側の切替部26,27と電力出力ライン対15+29と負荷機器と(予備系電力用一巡電路)を流れるので、常用系が停電しても負荷機器は予備系電力によって動作を継続することができる。
そして、波形図は割愛したが、その後、常用系が復電すると、逆向きの切替動作が行われて、元の状態に戻るので、負荷機器は常用系電力によって動作を継続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特願2015−068414号[本願出願時未公開]
【非特許文献】
【0035】
【非特許文献1】電気技術者のための信号概論「鉄道信号一般」改訂版、社団法人 日本鉄道電気技術協会、平成17年3月18日発行、P127、10.1.1 信号電源の供給
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
このような従来の停電検知回路30を電力検出回路18,21として組み込んだ電源切替装置10は、鉄道の信号設備等の電源部に多数採用されている。
ところが、長年使用されるうちに停電時の切替が想定ほどにはスムーズに行われなかったらしいと見受けられる事態(以下、切替時間伸長事象と呼ぶ)が起こったため、対処をとるに先だって、その切替時間伸長事象を具体的に把握することが必要になったが、実機では滅多に発現しないことから、実機に記録装置を付設して実態調査を行うことに加え、試験専用の電源切替装置10と信号機器の模擬負荷と記録装置とを別に設けたうえでそれへの電力供給に人為的な停電を発生させるという試験調査も行った。
【0037】
しかしながら、それまでに想定されていた形の停電ではいろいろ変形しながら調査を繰り返しても切替時間伸長事象が再現されなかった。具体的には、停電の時間幅を無視されるほど短いところから数時間を超えるほど長いところまで変化させ、停電発生時の常用系電力の位相を0゜から360゜まで変化させ、常用系電力と予備系電力の位相差をやはり0゜から360゜まで変化させながら、それらの各種組み合わせについて試験を行ったが、上記のような切替時間伸長事象を捉えることは出来なかった。
そこで、従来の電源切替装置に対する要求仕様を超える状況にまで停電態様を広げて、具体的には短時間の間に停電を繰り返す態様まで加味して、追加の調査を試みた。
【0038】
[第1推定要因]
瞬停には、停電検知回路30で検知されるものもあれば、電源切替装置10のトランス12や停電検知回路30の降圧部31等で除去されるものもあり、後者の瞬停は電源系統の切替を引き起こさないので、切替時間伸長事象には無関係と思われたが、念のため試験調査してみると、後者瞬停だけでも発生頻度が高いと整流ライン32aや平滑電流ライン32bの電圧が少し不安定になることが分かった。これは、直ちに切替時間伸長事象を引き起こすほどのものではないが、平滑電圧検出部34と整流電圧検出部36での検出基準値や遅延部35の充放電状態を変動させることから、前者の瞬停の検知状況や切替時間伸長事象の発生要因に対して潜在的な望ましくない影響を及ぼす可能性があると推定される(第1推定要因)。
【0039】
[第2推定要因]
それから、停電検知回路30で検知される瞬停を含めて更に調査を繰り返したところ、切替時間伸長事象を或る程度の頻度で発現させることができる状況に至った。
具体的には、短時間のうちに瞬停が繰り返された直後に長い停電が起こる態様で切替時間伸長事象が発現しやすいというところまで、状況把握を進めることができた。
そこで、瞬停を繰り返してから停電させる謂わば「瞬停先行停電」での試験調査を重点的に繰り返し、その記録データに基づいて切替時間伸長事象の原因推定を試みた。
【0040】
図8は、そのように瞬停先行停電を常用系で試したときに常用系から予備系へスムーズには切り替わらなかった状況下で記録できた波形例である。
なお、図7は、それと対比される状況下の波形例であり、従来想定されていた謂わば「単発停電」すなわち直前に繰り返し瞬停の無いタイプの常用系停電によって常用系から予備系へスムーズに切り替わっていたときのものである。
【0041】
常用系電力も予備系電力も正常に供給されている状態から常用系が停電すると(図7図8の時刻t1を参照)、常用系入力電圧V[13−16]が低下し、それに倣って出力電圧V[15−29]も低下するが、常用系電力の停電が電力検出回路18によって速やかに検知され、それに応じた切替制御回路20の制御に従って切替部14,17,26,27の状態が常用系から予備系へ切り替わる(図7図8の時刻t2を参照)。
この切替動作によって常用系電流i1が止まるとともに予備系電流i2が流れることまでは、単発停電でも瞬停先行停電でも同様に期待通りに進行したが、その少し後(図7図8の時刻t3)からは違ってきた。
【0042】
すなわち、単発停電では(図7参照)、常用系から予備系に切り替わると、直後の短時間は波形が乱れるが(時刻t2〜t3参照)、その後は(時刻t3〜参照)、波形が安定し、予備系電力の供給が継続されるのに対し、瞬停先行停電では(図8参照)、常用系から予備系に切り替わった直後の短時間に波形が乱れるのにとどまらず(時刻t2〜t3参照)、予備系から常用系へ戻す切替と再び常用系から予備系へ移す切替とが交互に行われる謂わば両系交互切替が暫し続行され(時刻t3〜t4参照)、その後(時刻t5〜参照)ようやく予備系への切替状態と各電圧の波形が安定するが、その間の両系交互切替の時間(時刻t3〜t5)が瞬停開始から停電開始までの時間より予想外に長いのである。
【0043】
そして、このような瞬停先行停電によって、上述したように予想外の不所望な両系交互切替(ハンチング)が発生し長引くことと、常用系の停電に応じて予備系に切り替わったにもかかわらず常用系入力電圧V[13−16]に予期せぬ振れ波形が見られることとから(図8において*印を付したところ等を参照)、常用系から予備系への切り替わり後、常用系側の切替部14,17が遮断状態になりきらずに導通状態を保持し続けているうちに、予備系電流i2の一部が逆流i21となって常用系電力入力ライン対13+16に流れ込み、その電圧まで電力検出回路18(停電検知回路30)が検出することで常用系の復電の誤検知と過剰な常用系切替が引き起こされると推測される(第2推定要因)。
【0044】
そこで(図9参照)、切替部14,17,26,27の導通保持時間Tonを確認することとしたが、それらの切替部に採用されている半導体部品(サイリスタ)の導通保持電流が約60mA程度なのに対し、上記切替部を流れる電流i1,i2はピークが140A近くに達して、両者の比が大きいことから、オシロスコープ等で実測するのが難しいので、トランス12や標準的な負荷機器の物性データに基づいて導通保持時間Tonを試算した。具体的には、トランス12の一次側に供給されていた常用系電力の電圧を突然0Vにすることで停電を模擬するとともに、トランス12の二次巻線と負荷機器と間に残る放電の電流値を公知のステップ応答の過渡現象と見做して算出し、その算出電流値が導通保持電流になるまで停電時から経過した時間を算出して、導通保持時間Tonを求めた。しかも、その演算を繰り返して行い、具体的には常用系電力の電圧位相を0゜から360゜まで変化させて繰り返して多数の導通保持時間Tonを算出し、それから最大値を選出した。
【0045】
[第3推定要因]
しかしながら、上述した瞬停先行停電時のような過剰切替が観測されない単発停電時にも(図7参照)、常用系から予備系へ切り替わった直後には逆流i21による同様の振れ波形が見られるが(図7において*印を付したところを参照)、この場合は上述した不所望な両系交互切替(ハンチング)の発生には至らないので、常用系側の切替部14,17に係る最長の導通保持時間Tonが電力検出回路18及び切替制御回路20の制御による予備系側の切替部26,27の導通開始時間より長いこと(第2推定要因)、延いてはそのようなことを引き起こす回路定数等の条件(以下、遮断導通先後逆転条件と呼ぶ)は、不所望な両系交互切替(ハンチング)の要因の一つではあっても総てでは無いと言える。
【0046】
そのため、不所望な両系交互切替(ハンチング)の発生には、遮断導通先後逆転条件だけでなく他の要因も関わっていると考えられることから、それを探し当てるために、電源切替装置10及び停電検知回路30の各部の電圧波形を単発停電時と瞬停先行停電時とで比較しながら虱潰しに調べたところ、常用系電力の供給開始を停電検知回路30が検知してからその検知結果を出力するまでの時間Tdが瞬停先行停電時に瞬停の発生態様によっては短縮されることがあるという状況を見いだすことができた(第3推定要因)。
この時間は、停電検知回路30の遅延部35が行う充電に係る仕様・定数設定によって決まるものであり、遅延部35の説明時に既述した50ms弱の遅延時間なので、以下、遅延時間Tdと呼ぶ。
【0047】
この遅延時間Tdの短縮変動が発生しない単発停電と発生しうる瞬停先行停電とについて要部の動作状況を図10の波形図を引用しながら説明する。
先ず、従来想定されていた単発停電の場合(図10(a)参照)、瞬停時の波形を図示したが長い停電のときであっても同様であり、停電の発生を検出してトランジスタQ1がオフし、それからリレー応動時間Tf(停電検知回路30の構成ではリレーRYの落下時間)の経過後に検知結果出力部33のリレーRYが励磁状態から非励磁状態へ遷移するが、直後の復電を検出してトランジスタQ1がオンし、それから遅延時間Tdの経過後にリレーRYが非励磁状態から励磁状態(動作状態,扛上状態)になる。
【0048】
これに対し、従来想定されていなかった瞬停先行停電の場合(図10(b)参照)、長い停電に先行して短時間に瞬停が繰り返されるが、その瞬停の繰り返し間隔が、非常に短いと、後続の瞬停時の遅延時間Tdが最初の瞬停時の遅延時間Tdの50ms弱より明らかに短縮される(図10(b)の実線波形部分を参照)。そして、それには、停電検知回路30の動作説明において、停電から復電するときの動作について既述した平滑電流ライン32bの直流波形の低下状況も影響を及ぼすことがあると思われる。
【0049】
具体的には、停電から復電したとき、既述したように整流電源部32のコンデンサから遅延部35のコンデンサC9へ電流が流れる形で平滑電流ライン32bの直流波形の低下状況に整流電源部32のコンデンサからの放電だけでなく遅延部35のコンデンサC9の蓄電状態も関与していることから、そのときコンデンサC9に電荷が残っていると、整流電源部32のコンデンサから遅延部35のコンデンサC9への電流移行が少なくなるので、停電から復電するとき、平滑電流ライン32bの電圧が整流電源部32のコンデンサの電荷量と遅延部35のコンデンサC9と電荷量とに影響され、リレーRYの扛上時間(非励磁状態から励磁状態への遷移時間が変わってくる(コンデンサC9の残留電荷が多いと早く立ち上がる)。
【0050】
このような整流電源部32と遅延部35のコンデンサの蓄電量に起因する変動も一因と考えられるが、瞬停先行停電の瞬停の繰り返し間隔が、遅延部35の説明時に既述したコンデンサC9の抵抗R8を介する放電の開始から完了までの時間より短いと、後続の瞬停時の遅延時間Tdが最初のものより短縮されると推定される。
そうすると、その遅延時間短縮変動(第3推定要因)によって、常用系の復電に応じて常用系へ戻す切替が逆流i21によっても惹起されうるほどにまで過敏な動作状態になるため、その後の停電において不所望な両系交互切替(ハンチング)が発生するものと思われる(図10(b)の破線波形部分を参照)。
【0051】
そして、このような遅延時間短縮変動(第3推定要因)と上述した遮断導通先後逆転(第2推定要因)とやはり上述した電圧不安定化(第1推定要因)との思わぬ相互作用が複雑な瞬停先行停電によって惹起され、上述した不所望な両系交互切替(ハンチング)が発現するのであろうと結論づけられるに至った。
そこで、常用系の停電時に素早く予備系へ切り替えるという要請に応えつつ単発停電時ばかりか瞬停先行停電時にも不所望な両系交互切替が発生し難い電源切替装置用停電検知回路を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0052】
本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段1)、上述した第1推定要因に起因する上記課題を解決するために創案されたものであり、常用系電力入力ラインを半導体部品にて開閉する第1切替回路と、予備系電力入力ラインを半導体部品で開閉する第2切替回路と、前記常用系電力入力ラインへの電力供給の有無を検出する第1電力検出回路と、前記予備系電力入力ラインへの電力供給の有無を検出する第2電力検出回路と、前記第1,第2電力検出回路の検出結果に基づいて前記第1,第2切替回路を制御する切替制御回路とを備えていて、前記常用系電力入力ラインに電力が供給されているときにはそれを出力するが前記常用系電力入力ラインに電力が供給されないときには予備系電力入力ラインに供給された電力を出力する電源切替装置に対し、前記第1電力検出回路として又は前記第1電力検出回路および前記第2電力検出回路の夫々として組み込まれる電源切替装置用停電検知回路であって、
供給有無検出対象の受給電力を第1整流回路にて整流する整流部と、その整流結果の電圧低下に応じて停電の有無を検知する整流電圧検出部と、その停電有無検知結果を前記切替制御回路へ送出するための検知結果出力部と、前記整流電圧検出部から前記検知結果出力部への前記停電有無検知結果の伝達を給電検知時には充放電回路の充電にて遅らせる遅延部と、前記受給電力を第2整流回路にて整流してから定電圧化する安定化電源部とを具備しており、前記整流電圧検出部と前記遅延部と前記検知結果出力部とが動作電力を前記安定化電源部から受けるようになっていることを特徴とする。
【0053】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段2)、上述した第1推定要因および第2推定要因に起因する上記課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記解決手段1の電源切替装置用停電検知回路であって、前記遅延部が給電検知時に前記停電有無検知結果の伝達を遅らせる遅延時間が、前記半導体部品の導通保持時間の最大値より長くなっていることを特徴とする。
【0054】
さらに、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段3)、上述した第1推定要因および第3推定要因に起因する上記課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記解決手段1の電源切替装置用停電検知回路であって、前記遅延部が停電検知時には前記充放電回路に放電を行わせるものであり、その放電時間が、停電時の前記検知結果出力部の応動時間と前記切替制御回路の応動時間と前記切替部の応動時間との合計時間より短くなっていることを特徴とする。
【0055】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段4)、上述した第1推定要因,第2推定要因,及び第3推定要因に起因する上記課題を解決するために創案されたものであり、具体的には、上記解決手段1の電源切替装置用停電検知回路であって、前記遅延部が給電検知時に前記停電有無検知結果の伝達を遅らせる遅延時間が、前記半導体部品の導通保持時間の最大値より長くなっており、且つ、前記遅延部が停電検知時には前記充放電回路に放電を行わせるものであり、その放電時間が、停電時の前記検知結果出力部の応動時間と前記切替制御回路の応動時間と前記切替部の応動時間との合計時間より短くなっていることを特徴とする。
【0056】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段5)、上記解決手段3,4の電源切替装置用停電検知回路であって、前記放電時間が、停電時の前記検知結果出力部の応動時間と前記切替制御回路の応動時間との合計時間より短くなっていることを特徴とする。
【0057】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段6)、上記解決手段3,4の電源切替装置用停電検知回路であって、前記放電時間が、停電時の前記検知結果出力部の応動時間より短くなっていることを特徴とする。
【0058】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段7)、上記解決手段3,4の電源切替装置用停電検知回路であって、前記検知結果出力部が、リレーを具備していて停電有無検知結果の送出をリレー信号にて行うものであり、前記放電時間が、停電時の前記リレーの応動時間より短くなっていることを特徴とする。
【0059】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段8)、上記解決手段3〜7の電源切替装置用停電検知回路であって、前記放電時間が、前記検知結果出力部の応動開始まで途中放電したときから放電完了までの時間であることを特徴とする。
【0060】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段9)、上記解決手段3〜7の電源切替装置用停電検知回路であって、前記放電時間が、放電開始から放電完了までの時間であることを特徴とする。
【0061】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路は(解決手段10)、上記解決手段1〜9の電源切替装置用停電検知回路であって、前記整流電圧検出部がヒステリシスコンパレータを具備したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0062】
このような本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段1)、従来から設けられていた第1整流回路に加えて新たに第2整流回路も設け、第1整流回路は整流電圧検出部に前置された整流部に占用させる一方、第2整流回路は安定化電源部に占用させることで、瞬停があってもあまり変動しないうえ停電後も暫く持続する動作電力が得られる。そのうえで、その動作電力を受けて整流電圧検出部と遅延部と検知結果出力部とが動作するようにもしたことにより、それら各部の動作が、瞬停の影響をほとんど受けないで安定するとともに、瞬停より長い停電が開始した後も暫くは継続できることとなる。
【0063】
このように整流回路を増やして電源部を整流部や整流電圧検出部などから独立させたことにより、停電検知対象の電力だけで動作するという条件を満たしながら、動作電力を安定させ、ひいては停電検知動作を安定させることができるため、電圧不安定化という上記第1推定要因の影響が低減されるので、不所望な両系交互切替(ハンチング)が従来より発現し難くなる。しかも、停電開始後も暫くは停電検知機能が維持されるうえ、その維持時間を安定化電源部の設計で決めることが可能なため、従来よりも長く遅延部等を動作させることすら容易にできるので、遅延部等の設計条件が緩和されることにもなる。
【0064】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段2)、遅延部が給電検知時に停電有無検知結果の伝達を遅らせる遅延時間を切替部の半導体部品の導通保持時間の最大値より長く設定したことにより、常用系停電によって給電が予備系に切り替わってからは、切替部の半導体部品の保持導通保持時間の最大値の時間が経過するまで、その経過前に常用系が復電しても、給電を常用系へ戻す切替が待たされることから、遮断導通先後逆転という上述の第2推定要因の影響が低減されるので、不所望な両系交互切替(ハンチング)が従来より発現し難くなる。
【0065】
さらに、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段3)、整流電圧検出部の停電検知時に遅延部が充放電回路に行わせる放電の放電時間を停電時の検知結果出力部の応動時間と切替制御回路の応動時間と切替部の応動時間との合計時間より短く設定したことにより、停電後の復電などによる次回の遅延動作が開始される前にその遅延動作の準備のための放電が完了することから、瞬停の繰り返しによる遅延時間短縮変動という上述の第3推定要因の影響が低減されるので、不所望な両系交互切替(ハンチング)が従来より発現し難くなる。
【0066】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段4)、遅延部が給電検知時に停電有無検知結果の伝達を遅らせる遅延時間を切替部の半導体部品の導通保持時間の最大値より長く設定するとともに、遅延部が停電検知時に充放電回路に行わせる放電の放電時間を停電時の検知結果出力部の応動時間と切替制御回路の応動時間と切替部の応動時間との合計時間より短く設定したことにより、上述した第2推定要因と第3推定要因との双方の影響が低減されて不所望な両系交互切替(ハンチング)が従来より発現し難くなる。しかも、それにとどまらず、両対策の協動により、瞬停先行停電時に先行の繰り返し瞬停の影響を排して遅延時間が確保されるので、想定される総ての瞬停先行停電について不所望な両系交互切替(ハンチング)の発現が抑止されることとなる。
【0067】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段5)、放電時間を停電時の検知結果出力部の応動時間と切替制御回路の応動時間との合計時間より短く設定したことにより、設定可能な範囲は短時間側に限定されるが、トランスや負荷機器の影響を受けることもある切替部の応動時間を考慮しなくても放電時間を設定できるので、回路設計ばかりか停電検知回路の電源切替装置への組み込み可否の判定も容易になる。
【0068】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段6)、放電時間を停電時の検知結果出力部の応動時間より短く設定したことにより、設定可能な範囲はより短時間側に限定されるが、組み込み先の電源切替装置の特性を考慮することなく、自回路の設計条件の考慮だけで放電時間を的確に設定できるので、回路設計が容易になるばかりか、放電時間に関しては停電検知回路の電源切替装置への組み込み可否の判定が不要になる。
【0069】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段7)、放電時間を停電時の検知結果出力部のリレーの応動時間より短く設定したことにより、設定可能な範囲はより一層短時間側に限定されるが、リレーの仕様を確認する程度のことで容易かつ的確に放電時間を設定することができる。
【0070】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段8)、停電検知時の検知結果出力部側の応動時間と長短比較される放電時間が、その応動開始まで途中放電したときから放電完了までの時間になっていることから、切替回路が停電対応状態に切り替わる前に延いてはその後の復電検知による充電の開始前に放電が完了するので、次回の充電のときに遅延時間が短縮されるという不所望な事態が生じない。
【0071】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段9)、停電検知時の検知結果出力部側の応動時間と長短比較される放電時間が、放電開始から放電完了までの時間になっていることから、放電時間の決定要件が少ないにもかかわず、やはり切替回路が停電対応状態に切り替わる前に延いてはその後の復電検知による充電の開始前に放電が完了して次回の充電のときに遅延時間が短縮されるという不所望な事態が生じない。
【0072】
また、本発明の電源切替装置用停電検知回路にあっては(解決手段10)、安定化電源の採用により所望の基準電圧が抵抗分圧等で簡便に実現できるようになったことに加え、ヒステリシス特性をヒステリシスコンパレータの採用にて具現化したことにより、停電検知に際してヒステリシス特性を利用する整流電圧検出部の回路構成がツェナーダイオード無しでも実現できるものとなっている。
ツェナーダイオードは設定電圧が固定されているうえ長期に及ぶ供給に不安があるところ、ヒステリシス特性の具現化についてはツェナーダイオードが不要になったため、部品調達の負担が軽減されるとともに、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】本発明の実施例1について、電源切替装置用停電検知回路の構造を示す回路図である。
図2】入力の電圧波形とそれを整流した後の電圧波形の一例である。
図3】(a)が電圧検出状態と検知結果出力状態との一例を示すタイムチャート、(b)が入力状態と電圧検出状態と検知結果出力状態とに係る他の例を示すタイムチャートである。
図4】本発明の停電検知回路か従来の停電検知回路を電力検出回路として組み込んだ電源切替装置の構造を示すブロック図である。
図5】従来の電源切替装置用停電検知回路の構造を示す回路図である。
図6】(a)が停電が無いときの波形例、(b)が停電が発生したときの波形例である。
図7】常用系停電時に予備系へスムーズに切り替わったときの波形例である。
図8】常用系停電時に予備系へスムーズには切り替わらなかったときの波形例である。
図9】(a)が停電時にトランスから切替部へ放たれる電流波形の全体図、(b)が電流0A近傍の拡大図である。
図10】(a)が入力状態と電圧検出状態と検知結果出力状態との一例を示すタイムチャート、(b)が入力状態と電圧検出状態と検知結果出力状態とに係る他の例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
このような本発明の電源切替装置用停電検知回路について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜3に示した実施例1は、上述した解決手段1〜10(出願当初の請求項1〜10)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の実施例についても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0075】
本発明の電源切替装置用停電検知回路の実施例1である停電検知回路50について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、停電検知回路50の回路図であり、図2は、電力入力ライン対13+16又は25+28を介して停電検知回路50が降圧部31に入力した停電検知対象電力の電圧波形とそれを整流したときの電圧波形の一例である。なお、図4は、停電検知回路50が組み込まれる電源切替装置10のブロック図であり、それについては背景技術の欄において既に説明済みであるが、従来の停電検知回路30に代えて新たな停電検知回路50が、電力検出回路18として一つ組み込まれるとともに、電力検出回路21としてもう一つが組み込まれるので、それも参照しながら停電検知回路50を説明する。
【0076】
停電検知回路50は(図1参照)、停電検知回路30から引き継いだ降圧部31,検知結果出力部33,及び検知結果出力部37と、停電検知回路30の整流電源部32からダイオードブリッジDB1(第1整流回路)を引き継ぐとともに停電検知回路30の整流電圧検出部36の機能を引き継ぎながら安定性を向上させた整流部51と、停電検知回路30の平滑電圧検出部34からヒステリシス機能を引き継いだうえで安定性を向上させた整流電圧検出部52と、停電検知回路30の遅延部35から充放電機能を引き継いだうえでその性能を向上させた遅延部53と、停電検知回路30の平滑電圧検出部34と整流電圧検出部36のリレー駆動部分とを一纏めにした検知結果出力部54と、新たなダイオードブリッジDB2(第2整流回路)を具備したうえで停電検知回路30の整流電源部32から分離独立して動作電力の安定性を向上させつつ長時間供給を可能にした安定化電源部55とを具えたものである。以下、各部を詳述する。
【0077】
整流部51は、降圧部31を介して供給有無検出対象(停電検知対象)の受給電力を入力し(図2の入力波形を参照)、それをダイオードブリッジDB1(第1整流回路)にて全波整流(両波整流)し(図2の整流波形を参照)、さらに雑音フィルタで不所望な高周波成分の除去やピークカットを行って波形を整形してから(図1参照)、それを電圧バッファ51aにて整流電圧検出部52へ送出するようになっている。上記の雑音フィルタが過敏な停電検知を抑えつつも迅速な停電検知のために平滑能力を抑えているので、整流部51の出力信号には入力波形由来のリップル等が残っているが、その影響の除去は後続の整流電圧検出部52のヒステリシス特性に委ねられる。電圧バッファ51aは、オペレーショナルアンプ等を用いた公知の回路であり、安定化電源部55から供給される動作電力(0V〜+B)によって動作するようになっている。
【0078】
整流電圧検出部52は(図1参照)、公知のヒステリシスコンパレータ52aを主体としたものであり、上述したリップルの影響を排することにより過敏な停電検知をさけて的確に停電検知を行えるようにヒステリシスの上側閾値や下側閾値が規定されていて、整流部51から受けた信号の電圧が上側閾値を超えると停電検知対象の給電がなされたこと即ち供給が開始されたか復電したことを検知し、その電圧が下側閾値より低下すると停電したことを検知するようになっている。しかも、その上側閾値や下側閾値を具体的に設定する基準電圧52bが、動作電力(0V〜+B)の抵抗分圧で簡便に得られ然も安定するものとなっている。また、ヒステリシスコンパレータ52aも、安定化電源部55から供給される動作電力(0V〜+B)によって安定動作するようになっている。
【0079】
遅延部53は(図1参照)、安定化電源部55から供給される動作電力(0V〜+B)の電源ライン(+B)と接地ライン(0V[図5の停電検知回路30ではGND])との間に設けられた充放電回路と、この充放電回路に充電状態と放電状態とのうち何れか一方の状態をとらせるトランジスタQ5とを具備している。具体的には、充放電回路は、一端が電源ライン(+B)に接続された抵抗R5aと、一端が抵抗R5aの他端に接続された抵抗R5bと、一端が抵抗R5bの他端に接続され他端が接地ライン(0V)に接続されたコンデンサC5とを具備したものであり、両抵抗R5a,R5bの接続部に信号出力ラインが接続されている。また、トランジスタQ5は、バイポーラトランジスタが採用されて、コレクタが抵抗R5a,R5bの接続部に接続され、エミッタが接地ライン(0V)に接続され、ベースが整流電圧検出部52の出力ラインに接続されている。
【0080】
そして、整流電圧検出部52が給電(最初の電力供給であれ復電であれ電力供給の開始)を検知すると、その検知結果を受けてトランジスタQ5がオフして遮断状態になるので、電源ライン(+B)から抵抗R5aと抵抗R5bとを介してコンデンサC5が充電される。また、整流電圧検出部52が停電(瞬停であれ長い停電であれ電力供給の停止)を検知すると、その検知結果を受けてトランジスタQ5がオンして導通状態になるので、コンデンサC5から抵抗R5bとトランジスタQ5とを介して接地ライン(0V)へ放電が行われる。このような充放電は、遅延部53がその動作電力を安定化電源部55から受けるようになったことにより、電源電圧+Bの下で安定して行われるうえ、充電時間も放電時間も各素子R5a,R5b,C5の選定により広範囲に設定しうるものとなっている。
【0081】
検知結果出力部54は(図1参照)、停電検知回路30から引き継いだ検知結果出力部33を安定な動作電力(0V〜+B)の下で適切に動作させるために導入されたものであり、遅延部53と検知結果出力部33との間に介挿接続されて、遅延部53の出力に応じてオン/オフ(導通/遮断)するトランジスタQ6を具備している。
これらの検知結果出力部54及び検知結果出力部33と検知結果出力部37とを合わせた検知結果出力部54+33+37は、安定化電源部55から供給された動作電力(0V〜+B)によって動作し、整流電圧検出部52の停電有無検知結果をリレーRYでリレー信号にして切替制御回路20へ送出するものとなっている。
【0082】
また、このような検知結果出力部54と整流電圧検出部52との間に介在する遅延部53は、整流電圧検出部52が給電を検知した時には上述のような充電を行うことにより、トランジスタQ6のオン動作(導通)を遅らせ、ひいては整流電圧検出部52から検知結果出力部54+33+37への停電有無検知結果の伝達を遅らせるものとなっている。
その遅延時間は、上述したように各素子R5a,R5b,C5の選定により設定されて、切替部14,17,26,27のサイリスタ(半導体部品)の導通保持時間Tonの最大値120msより長く、それに十分な安全率“2”を掛けた安全値240msを超える250msになっている。
【0083】
さらに、遅延部53は、整流電圧検出部52が停電を検知した時には上述のような放電を行うことにより、停電後の復電などによる次回の遅延動作のための充電に備えるが、次回の遅延動作が不所望に短縮されることがないよう、その放電を次回の遅延動作が開始される前に確実に完了させるために、放電時間がリレーRYの応動時間より短くなるよう、充放電を担う各素子R5a,R5b,C5の値が選定されている。具体的には、リレーのメーカー等から容易に取得できるリレーRYの仕様値の一つであるリレー単独の落下時間(励磁状態から非励磁状態への遷移時間)より短い時間に放電時間が設定されている。
【0084】
また、そのような選定および設定に際してリレーRYの応動時間と長短比較される放電時間の具体的な値としては、検知結果出力部37が停電の検知結果を出し始めるまでに放電を完了させることが重要なので、検知結果出力部54+33+37のトランジスタQ6をオフさせるところまで途中放電したときから放電完了までの時間が最も的確に該当するが、それより長い放電開始から放電完了までの時間でも安全側なので良い。前者の途中放電から放電完了までの時間の決定には遅延部53と検知結果出力部54との双方の特性が影響するのに対し後者の放電開始から放電完了までの時間は遅延部53の特性で決定できる一方、前者の途中放電から放電完了までの時間は無駄なく短いので応動時間より短いとう制約下で選択範囲が広いのに対し後者の放電開始から放電完了までの時間は前者より長い分だけ応動時間より短いとう制約下では選択範囲が狭いものとなる。
【0085】
安定化電源部55は、降圧部31を介して供給有無検出対象(停電検知対象)の受給電力を入力して全波整流するダイオードブリッジDB2(第2整流回路)と、全波整流後の電流を蓄えるコンデンサと、そのコンデンサに入力端子が接続され出力端子が他のコンデンサに接続されたDC/DCコンバータを主体とする定電圧化回路55aとを具備していて、停電検知対象の電力を整流してから定電圧化することにより、電源電圧+Bの安定した動作電力(0V〜+B)を受給電力の供給継続時や瞬停時はもちろん停電後も暫くは出力するものとなっている。
【0086】
この実施例1の停電検知回路50(電源切替装置用停電検知回路)について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図3(a)は、整流電圧検出部52による電圧検出状態とリレーRYによる検知結果出力状態との一例を示すタイムチャートであり、図3(b)は、降圧部31の入力状態と整流電圧検出部52の電圧検出状態とリレーRYの検知結果出力状態とに係る他の例を示すタイムチャートである。
【0087】
停電検知回路50は、電源切替装置10に組み込んで使用されるので、ここでは、一つの停電検知回路50が電力検出回路18のところに組み込まれ、別のもう一つの停電検知回路50が電力検出回路21のところに組み込まれているものとする。
そうすると、先ず常用系も予備系も停電しないで給電が正常になされているときには、何れの停電検知回路50(18),50(21)でも、停電検知対象の電力が供給されていることに対応して、整流電圧検出部52の出力がローになり、それに応じて遅延部53のコンデンサC5が充電され、さらに検知結果出力部54+33+37のリレーRYが励磁されてその接点出力がハイ(扛上接点がメーク又は落下接点がブレーク)になり、その状態が給電継続中は維持される。
【0088】
そして、電源切替装置10では、上述のような停電検知回路50,50の検知結果を受けた切替制御回路20の常用系優先採択によって、常用系側の切替部14,17が導通状態になるとともに予備系側の切替部26,27が遮断状態になるので、従来と同じく既述のループ(常用系電力用一巡電路)12,13,14,15,29,17,16を常用系電流i1が流れて(図4の矢付き輪郭線を参照)、負荷機器に常用系電力が供給される。常用系が供給されている間はその状態が維持される。
【0089】
その状態で常用系に停電が発現すると、それが瞬停であれ(図3(a)参照)、それより長い停電であれ、常用系側の停電検知回路50(18)では、その停電を整流電圧検出部52が検知して整流電圧検出部52の出力がハイになり、それに応じてコンデンサC5から放電が行われて、その途中で検知結果出力部54のトランジスタQ6がオフし、それからリレー応動時間Tf(停電検知回路50の構成でもリレーRYが励磁状態から非励磁状態へ遷移する時間である落下時間)の経過後に検知結果出力部33のリレーRYが非励磁状態になるが、停電検知回路50では遅延部53の放電時間がリレー応動時間Tfより短くなるように設定されているので、検知結果出力部33のリレーRYが非励磁状態になってその接点出力がロー(扛上接点がブレーク又は落下接点がメーク)になったときには、遅延部53ではコンデンサC5からの放電が完了している。すなわち、充放電回路に対して次回の充電が行われたときにその充電による遅延時間Tdの変動が無視できるレベル(例えば上例の250msから安全値240msを引いた10ms以内に遅延時間Tdの短縮が収まるところまで残留電荷が減った蓄電状態)までコンデンサC5から電荷が放出されている。
【0090】
それから常用系が復電すると、常用系側の停電検知回路50(18)では、その復電を整流電圧検出部52が検知して整流電圧検出部52の出力がローに戻り、それに応じてコンデンサC5に充電が行われ、その充電特性に対応した遅延時間Tdの経過後に検知結果出力部54のトランジスタQ6がオンし、それからリレーRYが励磁状態(動作状態,扛上状態)に戻るが、停電検知回路50では遅延時間Tdが導通保持時間Tonの最大値の120msよりも長い250msに設定されているので、電源切替装置10では、逆流i21による導通保持時間Tonの延長や遅延時間短縮変動まで考慮したとしても、切替制御回路20が停電検知回路50(18)から常用系の復電を通知されるより前に切替部14,17が遮断状態になっているため、不所望な両系交互切替(ハンチング)を引き起こすことなく、予備系から常用系へ戻す切り替えが行われる。
【0091】
また、常用系に瞬停先行停電が発現した場合は(図3(b)参照)、繰り返しとなる各部の詳細な説明は簡明化のため割愛するが、瞬停やそれより長い停電でも、それらからほんの少しだけ遅れる形で整流電圧検出部52の出力がハイ/ロー変化する。これに対し、リレーRYは、上述のようにして、最初の瞬停の開始からリレー応動時間Tf経過後にオンからオフになり、その瞬停の終了から250msの遅延時間Td経過時までオフ状態を維持するが(図の破線部分を参照)、その経過前に次の瞬停が発現するとこの瞬停の終了から改めて250msの遅延時間Tdが経過する時までオフ状態を維持する(図の矢付き実線部分を参照)。その後の停電でも、直前の瞬停や停電の終了から250msの遅延時間Tdが経過しない限りリレーRYがオンにはならない(図の点線部分を参照)。
【0092】
そのため、瞬停先行停電時でも、切替部14,17が遮断状態になっているときしか、予備系から常用系へ戻す切り替えが行われないので、不所望な両系交互切替(ハンチング)の発現が的確に抑制されることとなる。
こうして、停電検知回路50を電力検出回路として採用した電源切替装置10にあっては、常用系の停電時には素早く予備系へ切り替える一方、常用系優先採択の方針の下で復電時に常用系に戻すときには切替部等の状態安定の確保に十分な時間を待ってから切り替えるようにしたことにより、瞬停先行停電時でも不所望な両系交互切替(ハンチング)が発現しない。
【0093】
[その他]
上記実施例では、停電検知回路50を電源切替装置10に組み込むに際して、電力検出回路18,21の双方に停電検知回路50を組み込んだが、常用系優先採択条件の下で常用系の復電時の不所望な両系交互切替(ハンチング)を防止するという観点だけからなら、電力検出回路18だけに停電検知回路50を組み込み電力検出回路21は停電検知回路30のままにしておいても良いと言える。もっとも、常用系の停電と予備系の停電とが輻輳して予備系の復電時にも不所望な両系交互切替(ハンチング)が発現するかも知れないことまで危惧したり、ツェナーダイオードの供給停止等による部品調達の負担をも軽減しようとするのであれば、電力検出回路21にも停電検知回路50を採用するのが良い。
【0094】
上記実施例では、遅延部53の充放電回路の放電時間がリレーRYの応動時間より短く設定されていたが、その放電時間の設定条件は、停電検知回路50の仕様だけでも決まる復電時の検知結果出力部54+33+37の応動時間より短くなっていることでも良く、復電時の検知結果出力部54+33+37の応動時間と切替制御回路20の応動時間との合計時間より短くなっていることでも良く、復電時の検知結果出力部54+33+37の応動時間と切替制御回路20の応動時間と切替部14,17又は26,27の応動時間との合計時間より短くなっていることでも良い。
【0095】
また、降圧部31を例えばトランスの二次側巻線の端子の選択等によって50Hzや60Hzあるいは他の周波数にも対応できるようにしても良い。
さらに、整流電圧検出部52は、ヒステリシスコンパレータ52aと基準電圧52bとの組を複数化して選択使用できるようにしても良く、基準電圧52bに可変抵抗を採用する等のことにより停電有無検知の判定レベルを可変設定できるようにしても良い。
また、整流部51の出力段に限らず、その他たとえば整流電圧検出部52の出力段など適宜な箇所にバッファやノイズフィルタが設けられていても良い。
また、検知結果出力部33ではリレーRYが一つであり、検知結果出力部37ではリレー接点が二つであったが、リレーRYやリレー接点は必要に応じて多数設けても良い。
また、リレーRYは、電磁リレーでも半導体リレーでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の電源切替装置用停電検知回路は、常用系と予備系との二系統の供給電力から一系統を選択して負荷機器へ出力する電源切替装置への組み込みに限られる訳でなく、三系統以上の供給電力から一系統を選択して負荷機器へ出力する電源切替装置や、多系統の供給電力から少数の系統を選択して負荷機器へ出力する電源切替装置への組み込みにも適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
10…電源切替装置、
11…常用系電力供給ライン対、12…トランス、
13…常用系電力入力ライン(対線の一方)、
13+16…常用系電力入力ライン対、
14…切替部(第1切替回路の一方,半導体部品,サイリスタスイッチ)、
15…電力出力ライン(対線の一方)、15+29…電力出力ライン対、
16…常用系電力入力ライン(対線の他方)、
17…切替部(第1切替回路の他方,半導体部品,サイリスタスイッチ)、
18…第1電力検出回路、19…ゲート制御回路、
20…切替制御回路、21…第2電力検出回路、22…ゲート制御回路、
23…予備系電力供給ライン対、24…トランス、
25…予備系電力入力ライン(対線の一方)、25+28…予備系電力入力ライン対、
26,27…切替部(第2切替回路,半導体部品,サイリスタスイッチ)、
28…予備系電力入力ライン(対線の他方)、29…電力出力ライン(対線の他方)、
30…停電検知回路(電力検出回路)、
31…降圧部、32…整流電源部、32a…整流ライン、32b…平滑電流ライン、
33…検知結果出力部(リレーRYの本体部)、34…平滑電圧検出部、
34a…リレー駆動ライン、35…遅延部(充放電方式)、
36…整流電圧検出部、37…検知結果出力部(リレーRYの接点部)、
50…停電検知回路(電力検出回路)、
51…整流部、51a…電圧バッファ、
52…整流電圧検出部、52a…ヒステリシスコンパレータ、
52b…基準電圧、53…遅延部(充放電方式)、
54…検知結果出力部(リレーRYを駆動する回路)、
55…安定化電源部、55a…定電圧化回路(DC/DCコンバータ)、
DB1…ダイオードブリッジ(第1整流回路)、
DB2…ダイオードブリッジ(第2整流回路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10