特許第6548204号(P6548204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548204
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】磁気共鳴装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   A61B5/055 311
   A61B5/055 370
   A61B5/055 382
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-89148(P2014-89148)
(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公開番号】特開2015-205132(P2015-205132A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】荒井 謙
(72)【発明者】
【氏名】三好 邦博
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 正則
【審査官】 伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−516179(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/098955(WO,A1)
【文献】 特開2009−018079(JP,A)
【文献】 特開平08−206097(JP,A)
【文献】 米国特許第06583624(US,B1)
【文献】 特開2003−135426(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数fの振動で加振される撮影部位から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴装置であって、
前記撮影部位を励起するための励起パルスを印加した後、振動する前記撮影部位内を伝わる弾性波の情報を取得するための勾配磁場を印加するスキャン手段と、
前記スキャン手段により取得された前記弾性波の情報に基づいて、前記撮影部位の硬さを表す画像を作成する手段と、
を有し、
前記スキャン手段は、
前記撮影部位の中を加速度を持って移動するスピンの位相分散を低減するための複数の勾配パルスを有する前記勾配磁場を印加し、
前記複数の勾配パルスの時間長は1/fに設定され、
前記複数の勾配パルスは、
第1の極性を有する第1の勾配パルスと、
前記第1の勾配パルスの次に印加される第2の勾配パルスであって、第2の極性を有する第2の勾配パルスと、
前記第2の勾配パルスの次に印加される第3の勾配パルスであって、前記第1の極性を有する第3の勾配パルスと、
前記第3の勾配パルスの次に印加される第4の勾配パルスであって、前記第2の極性を有する第4の勾配パルスと、
を含み、
前記第1の勾配パルス、前記第2の勾配パルス、前記第3の勾配パルス、および前記第4の勾配パルスは、同じ磁場強度を有しており、
前記第1の勾配パルスおよび前記第4の勾配パルスは第1のパルス幅を有しており、
前記第2の勾配パルスおよび前記第3の勾配パルスは第2のパルス幅を有しており、
前記第2のパルス幅は、前記第1のパルス幅の(1+√2)倍に設定されている、磁気共鳴装置。
【請求項2】
前記スキャン手段は、
前記撮影部位を励起するための複数の励起パルスを含む2DエコープラナーRFパルスを印加した後、前記勾配磁場を印加する、請求項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項3】
前記スキャン手段は、
前記弾性波の第1の軸方向の変位を検出するための前記勾配磁場を印加する、請求項1又は2に記載の磁気共鳴装置。
【請求項4】
前記スキャン手段は、
スライスを選択するためのスライス選択勾配磁場を印加した後に、流速補正を行うための勾配パルスを印加する、請求項3に記載の磁気共鳴装置。
【請求項5】
前記画像を作成する手段は、
前記弾性波の情報に基づいて弾性率を求め、前記弾性率に基づいて前記撮影部位の硬さを表す画像を作成する、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
【請求項6】
前記加速度を持って移動するスピンには、血液のスピンが含まれる、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動する撮影部位から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体の臓器の弾性率(硬さ)を測定する手法として、MRエラストグラフィ(MR Elastography)が普及してきている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−012139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
MRエラストグラフィでは、加振装置を用いて被検体の撮影部位に振動を与えながら、MEG(Motion Encoding Gradient)と呼ばれる勾配磁場を印加することによって、撮影部位を伝わる弾性波の情報を取得する。そして、取得された弾性波の情報に基づいて弾性率μを求める。弾性率μを求める式は、例えば、式(1)で表すことができる。
μ=ρ(fλ) ・・・(1)
ここで、ρ:密度[kg/m
f:弾性周波数[Hz]
λ:弾性波波長[m]
【0005】
弾性率μを用いることにより撮影部位の硬さを表す画像を得ることができる。
また、MRエラストグラフィは、生体の表面領域だけでなく深部領域の診断に有効であるので、様々な臓器に対してMREを用いた診断手法が研究されている。特に、肝臓の診断手法は盛んに研究されており、例えば肝繊維症のステージ診断は注目を集めている。これまでの肝繊維症診断は細胞診のような侵襲的な診断が中心であったが、MRエラストグラフィにより、肝臓を非侵襲的且つ定量的に診断することができるようになった。
【0006】
一方で、近年、MRエラストグラフィを、肝臓よりも小さいサイズの臓器(例えば、腎臓、脾臓)に適用するニーズも高くなっている。しかし、MRエラストグラフィを腎臓や脾臓に適用した場合、画質が劣化してしまうという問題がある。
したがって、肝臓以外の臓器を撮影する場合であっても、高品質の画像を取得することができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点は、振動する撮影部位から磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴装置であって、
前記撮影部位を励起するための励起パルスを印加した後、振動する前記撮影部位内を伝わる弾性波の情報を取得するための勾配磁場を印加するスキャン手段と、
前記スキャン手段により取得された前記弾性波の情報に基づいて、前記撮影部位の硬さを表す画像を作成する手段と、
を有し、
前記スキャン手段は、
前記撮影部位の中を加速度を持って移動するスピンの位相分散を低減するための複数の勾配パルスを有する前記勾配磁場を印加する、磁気共鳴装置である。
【発明の効果】
【0008】
加速度を持つスピンによる位相分散を低減することができるので、高品質な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
図2】プロセッサ10が実行する処理を示す図である。
図3】本形態のMREシーケンスとは別のMREシーケンスAを示す図である。
図4】血液のスピンの位相分散をゼロにするためのMREシーケンスBを示す図である。
図5】4つの勾配パルスgx1、gx2、gx3、およびgx4を有する勾配磁場MEGを示す図である。
図6】式(7)を満たすG〜Gを示す図である。
図7図6の勾配磁場MEGを有するMREシーケンスCを示す図である。
図8図7に示すMREシーケンスCを実行し、MREシーケンスCにより得られたデータに基づいて腎臓の硬さを表す画像を作成するフローを示す図である。
図9】勾配パルスgx1〜gx4の磁場強度を同じ値に設定した場合のMEGを示す図である。
図10図8(b)の勾配磁場MEGを有するMREシーケンスDを示す図である。
図11】複数の励起パルスを用いて腎臓を励起するMREシーケンスEの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ)100は、マグネット2、テーブル3、加振装置4,および受信RFコイル5などを有している。
【0012】
マグネット2は、被検体14が収容されるボア21を有している。またマグネット2には、超伝導コイル、勾配コイル、RFコイルなど(図示せず)が内蔵されている。超伝導コイルは静磁場を印加し、勾配コイルは勾配磁場を印加し、RFコイルはRFパルスを印加する。
【0013】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体14はボア21に搬送される。
【0014】
加振装置4は被検体の胸に取り付けられている。加振装置4は、被検体がスキャンされている間、被検体の撮影部位を振動させる。
【0015】
受信RFコイル(以下、単に「コイル」と呼ぶ)5は、被検体14の撮影部位からMR信号を受信する。
【0016】
MR装置100は、更に、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8、コンピュータ9、操作部12、および表示部13などを有している。
【0017】
送信器6はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源7は勾配コイルに電流を供給する。受信器8は、コイル4が受信した信号に対して、検波などの信号処理を行う。尚、マグネット2、送信器6、勾配磁場電源7、受信器8を合わせたものがスキャン手段に相当する。
【0018】
コンピュータ9は、表示部13に必要な情報を伝送したり、画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。コンピュータ9は、プロセッサ10およびメモリ11などを有している。
【0019】
メモリ11には、プロセッサ10により実行されるプログラムなどが記憶されている。プロセッサ10は、メモリ11に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行する。図2に、プロセッサ10が実行する処理を示す。プロセッサ10は、メモリ11に記憶されているプログラムを読み出すことにより、画像作成手段101などを構成する。
【0020】
画像作成手段101は、スキャンにより取得されたデータに基づいて、撮影部位の硬さを表す画像を作成する。
【0021】
操作部12は、オペレータにより操作され、種々の情報をコンピュータ7に入力する。表示部13は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0022】
本形態では、腎臓の硬さを計測するためのMRE(Magnetic Resonance Elastography)シーケンスを実行する。以下に、本形態で使用されるMREシーケンスについて説明する。尚、以下の説明では、本形態で使用されるMREシーケンスの特徴部分を明確にするために、先に、本形態のMREシーケンスとは別のMREシーケンスのついて先に説明し、その後で、本形態のMREシーケンスについて説明する。
【0023】
図3は、本形態のMREシーケンスとは別のMREシーケンスAを示す図である。
MREシーケンスAは、スライスを励起するための励起パルスαを有している。また、MREシーケンスAは、x軸、y軸、およびz軸に印加される勾配磁場を有している。x軸、y軸、およびz軸は、図1に示されている。x軸は左右方向(RL方向)に設定されており、y軸は前後方向(AP方向)に設定されており、z軸は頭尾方向(SI方向)に設定されている。
以下、MREシーケンスAの各軸に印加される勾配磁場について説明する。
【0024】
MREシーケンスAは、z軸に印加されるスライス選択勾配磁場Gzを有している。励起パルスαおよびスライス選択勾配磁場Gzにより、スライスが励起される。
【0025】
また、MREシーケンスAは、y軸に印加される位相エンコード勾配磁場Gyと、x軸に印加される周波数エンコード勾配磁場Gxとを有している。位相エンコード勾配磁場Gyにより位相ずれを与えた後に、周波数エンコード勾配磁場Gxが印加される。周波数エンコード勾配磁場GxによりMR信号を読み出すことができる。
【0026】
更に、MREシーケンスAは、位相エンコード勾配磁場Gyと、周波数エンコード勾配磁場Gxとの間に、勾配磁場MEGが印加される。勾配磁場MEGは被検体の体内を伝わる弾性波の情報を検出するための勾配磁場である。MREシーケンスAでは、弾性波のx軸方向の変位を検出することができるように、勾配磁場MEGはx軸に印加される。勾配磁場MEGの時間長TLは、加振装置4(図1参照)の外部振動の周波数fの逆数、つまり、TL=1/fに設定されている。また、勾配磁場MEGは、2つの勾配パルスgx11およびgx12を有している。2つの勾配パルスgx11およびgx12により、静止組織のスピンの位相分散をゼロにすることができる。
【0027】
しかし、腎臓には血液が流れているので、図3に示す勾配磁場MEGでは、血液のスピンの位相分散をゼロにすることができない。そこで、血液のスピンの位相分散をゼロにするために、図4に示すようなMREシーケンスBを用いることが考えられる。
【0028】
図4は、本形態のMREシーケンスとは別のMREシーケンスBを示す図である。
図4のMREシーケンスBのx軸に印加される勾配磁場MEGは、3つの勾配パルスgx11、gx12、およびgx13を有している。勾配パルスgx11、gx12、およびgx13は、それぞれ正の勾配パルス、負の勾配パルス、および正の勾配パルスである。勾配パルスgx11、gx12、およびgx13の面積比は、1:2:1に設定されている。このような勾配パルスgx11、gx12、およびgx13を有する勾配磁場MEGを印加することにより、等速度で動く血液のスピンの位相分散を低減することができる。
【0029】
しかし、腎臓のように血流量が多い臓器は、等速度で動く血液のスピンだけでなく加速度を持つ血液のスピンも多いので、MREシーケンスBを用いて腎臓をスキャンしても、加速度を持つ血液のスピンの位相分散をゼロにすることができず、やはり信号低下の問題がある。そこで、本形態では、加速度を持つ血液のスピンの位相分散もゼロ(又はゼロに近い値)にすることができるようにMEGを構成している。以下に、勾配磁場MEGが具体的にどのように構成されているかについて説明する。
【0030】
加速度を持つスピンを考慮した場合、MEGを時間tの間印加したときに生じるスピンの位相分散Δφは、以下の式で表すことができる。
【数1】

ここで、γ:磁気回転比
G(u):時点uにおける勾配磁場強度
x0:静止組織のスピンの位置
v0:血液のスピンの速度(等速度)
a0:血液のスピンの加速度
【0031】
式(2)は、以下の式(3)で表すことができる。
【数2】
【0032】
式(3)の右辺第1項は静止組織のスピンの位相分散を表す静止項であり、右辺第2項は等速度で動く血液のスピンの位相分散を表す速度項であり、右辺第3項は加速度を持つ血液のスピンの位相分散を表す加速度項である。
【0033】
ここで、加速度項について考える。加速度項により生じる血液のスピンの位相分散をΔφ2ndで表すと、Δφ2ndは、以下の式で表すことができる。
【数3】
【0034】
式(4)の(γ・a)/2は定数である。したがって、(γ・a)/2=kとすると、式(4)は以下の式(5)で表すことができる。
【数4】
【0035】
ここで、加速度を持つ血液のスピンの位相分散をゼロにするために必要な勾配パルスの個数について考える。等速度で動く血液のスピンの位相分散をゼロにする場合には、図4に示すように、3つの勾配パルスgx11、gx12、およびgx13を使用すればよい。しかし、加速度を持つ血液のスピンの位相分散をゼロする場合、勾配パルスの個数を3つよりも多くする必要がある。そこで、本形態では、4つの勾配パルスを用いて位相分散をゼロにするMEGを考える。図5に、4つの勾配パルスgx1、gx2、gx3、およびgx4を有する勾配磁場MEGを示す。4つの勾配パルスgx1、gx2、gx3、およびgx4は、それぞれ、磁場強度G、G、G、およびGであり、同じ時間長Tを有しているとする。この場合、式(5)は、以下の式(6)で表すことができる。
【数5】

ここで、G:時点0〜Tの間に印加される勾配パルス
:時点T〜2Tの間に印加される勾配パルス
:時点2T〜3Tの間に印加される勾配パルス
:時点3T〜4Tの間に印加される勾配パルス
【0036】
したがって、Δφ2nd=0になるときのG〜Gを算出することにより、加速度を持つ血液のスピンの位相分散をゼロにすることができる。Δφ2nd=0が成り立つときのG〜Gは、以下の関係式で表すことができる。
:G:G:G=1:3:3:1 ・・・(7)
【0037】
図6に式(7)を満たすG〜Gを示す。G=Gとすると、G=3G、G=3G、およびG=Gで表すことができる。式(7)を満たすように4つの勾配パルスgx1、gx2、gx3、およびgx4を設定することにより、加速度を持つ血液のスピンの位相分散をゼロにすることができる。尚、加速度を持つ血液のスピンの位相分散をゼロにすることができれば、静止組織のスピンの位相分散および等速度で動く血液のスピンの位相分散もゼロにすることができる。したがって、図6に示す勾配磁場MEGを用いることより、静止組織のスピンの位相分散だけでなく、動きのあるスピンの位相分散を十分にゼロにすることができる。
【0038】
そこで、本形態では、勾配磁場MEGは、図6に示す4つの勾配パルスgx1〜gx4を有するように構成されている。図7に、図6の勾配磁場MEGを有するMREシーケンスCを示す。図7のMREシーケンスCを実行することにより、等速度で動く血液のスピンだけでなく、加速度を持つ血液のスピンの位相分散もゼロにすることができるので、腎臓の血液のスピンの位相分散を十分に小さくすることができる。
【0039】
尚、必要に応じて、MREシーケンスCのスライス選択勾配磁場Gzの直後に、流速補正(Flow Compensation)を行うための勾配パルスを追加してもよい。この勾配パルスにより、z軸におけるスピンの位相分散をゼロに近づけることができるので、より高品質な画像を得ることができる。
【0040】
また、上記の説明では、血液のスピンの位相分散をゼロにできることについて示したが、本発明は、血液のスピンの位相分散をゼロにする例に限定されることはない。例えば、臓器や器官も体動などが原因で動くので、臓器や器官自体の動きにより加速度を持つ組織のスピンの位相分散をゼロにすることもできる。したがって、本発明は、加速度を持つスピンを含む部位の硬さを計測するMR装置に適用することができる。
【0041】
図8に、図7に示すMREシーケンスCを実行し、MREシーケンスCにより得られたデータに基づいて腎臓の硬さを表す画像を作成するフローを示す。
ステップST1では、MREシーケンスCを実行する。
ステップST2では、画像作成手段101(図2参照)が、MREシーケンスCにより得られたデータに基づいて、腎臓の硬さを表す画像を作成する。具体的には、画像作成手段101は、先ず、MREシーケンスCにより得られたデータに基づいて弾性率を算出する。弾性率は、例えば式(1)を用いて算出することができる。弾性率を算出したら、弾性率に基づいて肝臓の硬さを表す画像を作成し、フローを終了する。
【0042】
本形態では、MREシーケンスCを用いてスキャンを実行する。したがって、腎臓のように加速度を持つスピンが含まれていても、位相分散による信号低下を効果的に抑制することができる。したがって、肝臓の硬さを表す高品質な画像を得ることができる。
【0043】
尚、図7では、勾配パルスgx1およびgx4の磁場強度と、勾配パルスgx2およびgx3の磁場強度は異なっている。しかし、これら4つの勾配パルスgx1〜gx4の磁場強度を同じ値に設定してもよい(図9参照)。
【0044】
図9は、勾配パルスgx1〜gx4の磁場強度を同じ値に設定した場合のMEGを示す図である。図9(a)は図6に示す勾配磁場MEGを再度示す図であり、図9(b)は勾配パルスgx1〜gx4の磁場強度を同じ値に設定した場合の勾配磁場MEGを示す図である。
【0045】
図9(b)では、勾配パルスgx1〜gx4の磁場強度は同じ値G´に設定されている。また、勾配パルスgx1およびgx4のパルス幅はT´に設定されているが、勾配パルスgx2およびgx3のパルス幅はbT´に設定されている。したがって、図9(b)では、位相分散Δφ2ndは、以下の式(8)で表すことができる。
【数6】
【0046】
式(8)のΔφ2ndがゼロになるためには、bの値をb=1+√2に設定すればよい。図10に、図9(b)の勾配磁場MEGを有するMREシーケンスDを示す。MREシーケンスDを実行することにより、位相分散をゼロにすることができるので、良好な画像を取得することができる。また、図10に示す勾配磁場MEGの磁場強度G´は、図7に示す勾配磁場MEGの磁場強度3Gよりも小さくすることができるので、勾配電源に掛かる負荷を低減することができるという効果がある。
【0047】
尚、MREシーケンスCおよびDは、単一の励起パルスαを用いて腎臓を含む部位を励起している(図7および図10参照)。しかし、本発明は、単一の励起パルスを用いたMREシーケンスに限定されることはない。複数の励起パルスを用いて腎臓を励起するMREシーケンスについて説明する。
【0048】
図11は、複数の励起パルスを用いて腎臓を励起するMREシーケンスEの一例を示す図である。
MREシーケンスEは、2DエコープラナーRFパルスを用いて腎臓を励起するシーケンスである。2DエコープラナーRFパルスの例は、例えば、Magnetic Resonance in Medicine 60:468−473 (2008)に記載されている。このように、本発明は、複数の励起パルスを用いたMREシーケンスにも適用することができる。
【0049】
尚、本形態では、勾配磁場MEGはx軸に印加されている。しかし、勾配磁場MEGの印加軸はx軸に限定されることはなく、勾配磁場MEGをz軸又はy軸に印加してもよい。更に、勾配磁場MEGを複数の軸に印加してもよい。
【0050】
また、本形態では、腎臓の硬さを計測するためのMREシーケンスについて説明されている。しかし、本発明は、腎臓以外の部位(例えば、脾臓)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
2 マグネット
3 テーブル
3a クレードル
4 加振装置
5 コイル
6 送信器
7 勾配磁場電源
8 受信器
9 コンピュータ
10 プロセッサ
11 メモリ
12 操作部
13 表示部
14 被検体
21 ボア
100 MR装置
101 画像作成手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11