特許第6548218号(P6548218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東京工業大学の特許一覧 ▶ 白山工業株式会社の特許一覧

特許6548218多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法
<>
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000019
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000020
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000021
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000022
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000023
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000024
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000025
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000026
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000027
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000028
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000029
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000030
  • 特許6548218-多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法 図000031
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548218
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/56 20120101AFI20190711BHJP
【FI】
   G01C19/56
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-125617(P2015-125617)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-9456(P2017-9456A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390000804
【氏名又は名称】白山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁
(72)【発明者】
【氏名】伊能 教夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 稔
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−079856(JP,A)
【文献】 特開昭51−075491(JP,A)
【文献】 特許第5697149(JP,B2)
【文献】 米国特許第4188816(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/56 − 19/5783
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力角速度が与えられ、第1の回転軸を有する第1のターンテーブルと、
前記第1のターンテーブルとシリアルリンク接合され、前記第1の回転軸に平行でない第2の回転軸を有し、多軸ジャイロセンサパッケージを固定するための第2のターンテーブルと、
前記第1、第2のターンテーブルを同期回転駆動させるモータと、
前記モータを駆動して前記多軸ジャイロセンサパッケージの出力電圧を入力する制御ユニットと
を具備し、
前記制御ユニットは、
前記多軸ジャイロセンサパッケージが前記第2のターンテーブルに対して第1の姿勢状態のときに前記多軸ジャイロセンサパッケージの最小または最大の出力電圧に応じて前記多軸ジャイロセンサのセンサ軸と前記第2のターンテーブルの第2の回転軸とを含む第1の平面を同定して該第1の平面の第1の法線単位ベクトルを同定し、
前記多軸ジャイロセンサパッケージが前記第2のターンテーブルに対して第2の姿勢状態のときに前記多軸ジャイロセンサパッケージの最大または最小の出力電圧に応じて前記多軸ジャイロセンサのセンサ軸と前記第2のターンテーブルの第2の回転軸とを含む第2の平面を同定して該第2の平面の第2の法線単位ベクトルを同定し、
前記各第1、第2の姿勢状態を表す第1、第2の回転行列及び前記第1、第2の法線単位ベクトルから前記多軸ジャイロセンサのセンサ実軸の方向単位ベクトルを同定する多軸ジャイロセンサ特性評価装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、さらに、
前記センサ実軸が最大角速度のときの該センサ実軸の方向の最大出力電圧vmax及び最小角速度のときの該センサ実軸の方向の最小出力電圧vminに応じて各センサ実軸の個別センサ感度を演算する請求項1に記載の多軸ジャイロセンサ特性評価装置。
【請求項3】
さらに、前記第2のターンテーブルと前記多軸ジャイロセンサパッケージとの間に、
前記第2のターンテーブル上の固定されたパッケージ姿勢変更ユニットと、
前記多軸ジャイロセンサパッケージを固定し、回転可能に前記パッケージ姿勢変更ユニットに固定されたセンサパッケージ台と
を具備し、
前記制御ユニットは前記パッケージ姿勢変更ユニットを無線で制御して前記センサパッケージ台を回転させて前記多軸ジャイロセンサパッケージを前記第1、第2の姿勢状態とする請求項1に記載の多軸ジャイロセンサ特性評価装置。
【請求項4】
前記多軸ジャイロセンサパッケージは、3軸加速度センサパッケージ及び3軸ジャイロセンサパッケージよりなる6軸センサの該3軸ジャイロセンサパッケージである請求項1に記載の多軸ジャイロセンサ特性評価装置。
【請求項5】
入力角速度が与えられ、第1の回転軸を有する第1のターンテーブルと、
前記第1のターンテーブルとシリアルリンク接合され、前記第1の回転軸に平行でない第2の回転軸を有し、多軸ジャイロセンサパッケージを固定するための第2のターンテーブルと、前記第1、第2のターンテーブルを同期回転駆動させるモータとを具備する多軸ジャイロセンサ特性評価装置において、
前記モータを駆動して前記第1、第2のターンテーブルを同期回転駆動させつつ前記多軸ジャイロセンサパッケージが前記第2のターンテーブルに対して第1の姿勢状態のときに前記多軸ジャイロセンサパッケージの最小または最大の出力電圧に応じて前記多軸ジャイロセンサのセンサ軸と前記第2のターンテーブルの第2の回転軸とを含む第1の平面を同定して該第1の平面の第1の法線単位ベクトルを同定する第1の法線単位ベクトル同定段階と、
前記モータを駆動して前記第1、第2のターンテーブルを同期回転駆動させつつ前記多軸ジャイロセンサパッケージが前記第2のターンテーブルに対して第2の姿勢状態のときに前記多軸ジャイロセンサパッケージの最大または最小の出力電圧に応じて前記多軸ジャイロセンサのセンサ軸と前記第2のターンテーブルの第2の回転軸とを含む第2の平面を同定して該第2の平面の第2の法線単位ベクトルを同定する第2の法線単位ベクトル同定段階と、
前記各第1、第2の姿勢状態を表す第1、第2の回転行列及び前記第1、第2の法線単位ベクトルから前記多軸ジャイロセンサのセンサ実軸の方向単位ベクトルを同定するセンサ実軸方向単位ベクトル同定段階と
を具備する多軸ジャイロセンサ特性評価方法。
【請求項6】
さらに、
前記センサ実軸が最大角速度のときの該センサ実軸の方向の最大出力電圧vmax及び最小角速度のときの該センサ実軸の方向の最小出力電圧vminに応じて各センサ実軸の個別センサ感度を演算する個別センサ感度演算段階を具備する請求項に記載の多軸ジャイロセンサ特性評価方法。
【請求項7】
前記多軸ジャイロセンサパッケージの前記第2のターンテーブルに対する第1、第2の姿勢状態の固定は手動にて行われる請求項に記載の多軸ジャイロセンサ特性評価方法。
【請求項8】
前記多軸ジャイロセンサ特性評価装置は、
さらに、前記第2のターンテーブルと前記多軸ジャイロセンサパッケージとの間に、
前記第2のターンテーブル上の固定されたパッケージ姿勢変更ユニットと、
前記多軸ジャイロセンサパッケージを固定し、回転可能に前記パッケージ姿勢変更ユニットに固定されたセンサパッケージ台と
を具備し、
さらに、前記パッケージ姿勢変更ユニットを無線で制御して前記センサパッケージ台を回転させて前記多軸ジャイロセンサパッケージを前記第1、第2の姿勢状態とする多軸ジャイロセンサパッケージ姿勢状態変更段階を具備する請求項に記載の多軸ジャイロセンサ特性評価方法。
【請求項9】
前記多軸ジャイロセンサパッケージは、3軸加速度センサパッケージ及び3軸ジャイロセンサパッケージよりなる6軸センサの該3軸ジャイロセンサパッケージである請求項に記載の多軸ジャイロセンサ特性評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多軸ジャイロセンサ特性評価装置及び方法、たとえば、センサパッケージにおいて多軸ジャイロセンサの各センサ実軸の方向及び個別センサ感度を同定する特性評価装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の多軸ジャイロセンサパッケージでは、製造時及びパッケージ取付け時に生じる誤差によりセンサ実軸はセンサパッケージ方向に完全には一致せず、しかもセンサ実軸同士間でも直交していない。この結果、センサパッケージのx軸方向の角速度を検出すべきx軸センサがy軸方向またはz軸方向の角速度を検出してしまうという現象を引き起こす。また、各センサ実軸の個別センサ感度についてもセンサ実軸毎に差があり、1つの多軸ジャイロセンサ内でも各センサ実軸間で個別センサ感度がばらつく。現在広く普及しているマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)デバイスの多軸ジャイロセンサにおいても、センサパッケージ方向にセンサ実軸を完全に一致させ、また、各センサ実軸での個別センサ感度のばらつきを完全に取除くことはできない。
【0003】
また、3軸加速度センサパッケージ及び3軸ジャイロセンサパッケージを組合わせた6軸センサにおいて、6軸センサの値を積分して測定対象の位置及び姿勢を推定するデッドレコニングの精度向上のためにも、センサパッケージにおける3軸ジャイロセンサの各センサ実軸の方向及び個別センサ感度を同定することは重要である。
【0004】
他方、センサパッケージにおいて多軸加速度センサの各センサ実軸の方向及び個別センサ感度を同定する多軸加速度センサ特性評価装置として平行リンクを利用した加振によるものは公知である(参照:特許文献1、2、非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5652760号公報(特開2012−93271号公報)
【特許文献2】特許第5697149号公報(特開2012−233842号公報)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】木村仁、中村成志、伊能教夫、松平昌之、吉田稔、“多軸加速度センサの主軸方向と感度の同定手法(主軸方向テンソルと感度テンソルの実測)”、日本機械学会論文集C編、Vol. 78 (2012), No. 786, (2012), pp.499-507.
【非特許文献2】Hitoshi Kimura, Masashi Nakamura, Kodai Katou, Norio Inou, Minoru Yoshida, “Identification Method of Sensor Directions and Sensitivities in Multi-Axis Accelerometer -Actual Measurement of Direction Tensor and Sensitivity Tensor-”, Proceeding of 38th Annual Conference on IEEE Industrial Electronics Society (IECON) 2012, (2012), MF-026085
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来の多軸ジャイロセンサにおいては、センサパッケージにおいて多軸ジャイロセンサの各センサ実軸の方向及び個別センサ感度を同定することができないので、多軸ジャイロセンサ入力の角速度を正確な3次元ベクトルとして算出できないという課題がある。また、3軸加速度センサパッケージ及び3軸ジャイロセンサパッケージを組合わせた6軸センサにおけるデッドレコニングの精度向上が不可能であるいう課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る多軸ジャイロセンサ特性評価装置は、入力角速度が与えられ、第1の回転軸を有する第1のターンテーブルと、第1のターンテーブルとシリアルリンク接合され、第1の回転軸に平行でない第2の回転軸を有し、多軸ジャイロセンサパッケージを固定するための第2のターンテーブルと、第1、第2のターンテーブルを同期回転駆動させるモータと、モータを駆動して多軸ジャイロセンサパッケージの出力電圧を入力する制御ユニットとを具備し、制御ユニットは、多軸ジャイロセンサパッケージが第2のターンテーブルに対して第1の姿勢状態のときに多軸ジャイロセンサパッケージの最小または最大の出力電圧に応じて多軸ジャイロセンサのセンサ軸と第2のターンテーブルの第2の回転軸とを含む第1の平面を同定して第1の平面の第1の法線単位ベクトルを同定し、多軸ジャイロセンサパッケージが第2のターンテーブルに対して第2の姿勢状態のときに多軸ジャイロセンサパッケージの最大または最小の出力電圧に応じて多軸ジャイロセンサのセンサ軸と第2のターンテーブルの第2の回転軸とを含む第2の平面を同定して第2の平面の第2の法線単位ベクトルを同定し、各第1、第2の姿勢状態を表す第1、第2の回転行列及び第1、第2の法線単位ベクトルから多軸ジャイロセンサのセンサ実軸の方向単位ベクトルを同定するものである。
【0009】
また、本発明に係る多軸ジャイロセンサ特性評価方法は、入力角速度が与えられ、第1の回転軸を有する第1のターンテーブルと、第1のターンテーブルとシリアルリンク接合され、第1の回転軸に平行でない第2の回転軸を有し、多軸ジャイロセンサパッケージを固定するための第2のターンテーブルと、第1、第2のターンテーブルを同期回転駆動させるモータとを具備する多軸ジャイロセンサ特性評価装置において、モータを駆動して第1、第2のターンテーブルを同期回転駆動させつつ多軸ジャイロセンサパッケージが第2のターンテーブルに対して第1の姿勢状態のときに多軸ジャイロセンサパッケージの最小または最大の出力電圧に応じて多軸ジャイロセンサのセンサ軸と第2のターンテーブルの第2の回転軸とを含む第1の平面を同定して第1の平面の第1の法線単位ベクトルを同定する第1の法線単位ベクトル同定段階と、モータを駆動して第1、第2のターンテーブルを同期回転駆動させつつ多軸ジャイロセンサパッケージが第2のターンテーブルに対して第2の姿勢状態のときに多軸ジャイロセンサパッケージの最大または最小の出力電圧に応じて多軸ジャイロセンサのセンサ軸と第2のターンテーブルの第2の回転軸とを含む第2の平面を同定して第2の平面の第2の法線単位ベクトルを同定する第2の法線単位ベクトル同定段階と、各第1、第2の姿勢状態を表す第1、第2の回転行列及び第1、第2の法線単位ベクトルから多軸ジャイロセンサのセンサ実軸の方向単位ベクトルを同定するセンサ実軸方向単位ベクトル同定段階とを具備するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センサパッケージにおいて多軸ジャイロセンサの各センサ実軸の方向を同定することができ、この結果、多軸ジャイロセンサの角速度を正確な3次元ベクトルとして算出できる。これにより、3軸加速度センサパッケージ及び3軸ジャイロセンサパッケージとを組合わせた6軸センサの値を積分して測定対象の位置及び姿勢を推定するデッドレクニングの精度向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る多軸ジャイロセンサ特性評価装置の第1の実施の形態を示す斜視図である。
図2】本発明に係る多軸ジャイロセンサ特性評価装置の第1の実施の形態を示す斜視図である。
図3図1図2の多軸ジャイロセンサ特性評価装置の座標系を示す図である。
図4図1図2のシリアルリンク機構を説明するための図であり、(A)は斜視図、(B)は座標系を示す図である。
図5図1図2の多軸ジャイロセンサ特性評価装置のリンクのDHパラメータを示す表である。
図6】本発明に係る多軸ジャイロセンサ特性評価装置の第2の実施の形態を示す斜視図である。
図7】本発明に係る多軸ジャイロセンサ特性評価装置の第2の実施の形態を示す斜視図である。
図8図6図7の多軸ジャイロセンサ特性評価装置のリンクのDHパラメータを示す表である。
図9図6図7の第1の姿勢状態(q=1)の3軸ジャイロセンサパッケージを示し、(A)は斜視図、(B)は右側面図である。
図10図6図7の第2の姿勢状態(q=2)の3軸ジャイロセンサパッケージを示す斜視図である。
図11図1図2図6図7の制御ユニットの動作を説明するためのフローチャートである。
図12図11のフローチャートを補足説明する図である。
図13図11のフローチャートを補足説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2は本発明に係る多軸ジャイロセンサ特性評価装置の第1の実施の形態を示す斜視図であり、図1は3軸ジャイロセンサパッケージが第1の姿勢状態(q=1)にある場合、図2は3軸ジャイロセンサパッケージが第2の姿勢状態(q=2)にある場合を示し、第1、第2の姿勢状態の切替は手動にて行われる。
【0013】
図1図2においては、入力角速度ωを与えるための回転軸A1を有するターンテーブル1(リンクL1とする)に、回転軸A1と平行でない回転軸A2を有するターンテーブル2(リンクL2とする)が接合され、ターンテーブル1とターンテーブル2とはシリアルリンク機構を構成している。図1においては、ターンテーブル2は3軸ジャイロセンサパッケージ5を第1の姿勢状態(q=1)で固定して回転し、他方、図2においては、ターンテーブル2は3軸ジャイロセンサパッケージ5を第2の姿勢状態(q=2)で固定して回転する。この場合、3軸ジャイロセンサパッケージ5の第1、第2の姿勢状態の固定は三角柱状治具をねじを用いて固定することにより行われ、3軸ジャイロセンサパッケージ5の回転位置はたとえば後述の式(9)の回転行列Rm1、Rm2で表される。また、3軸ジャイロセンサパッケージ5は機構的にはターンテーブル2と同一のリンクL2である。さらに、ターンテーブル2はターンテーブル1上の取付部材1aに固定されているが、この取付部材1aは機構的にはターンテーブル1と同一のリンクL1である。さらにまた、回転軸A1と回転軸A2との角度は直角とする。但し、既知であれば直角でなくともよい。
【0014】
制御ユニットCONTはターンテーブル1、2をモータ6によって同期回転駆動する。この場合、モータ6によるターンテーブル1の回転駆動は非接触型マグネットギア(図示せず)を介して行われ、また、ターンテーブル1とターンテーブル2との間も別の非接触型マグネットギア(図示せず)によって接合され、従って、ω=rω(但し、rは定数)なる関係が成立する。つまり、ターンテーブル1は一定角速度ω=dθ/dtで回転し、ターンテーブル2も一定角速度ω=dθ/dt=rωで回転する。このように、ターンテーブル1、2は1つのモータ6によって同期回転駆動されるので、製造コストの点で有利である。しかも、非接触型マグネットギアによりモータ6の振動のノイズはターンテーブル1、2に伝達しにくくなり、ターンテーブル1、1の回転は安定する。
【0015】
3軸ジャイロセンサパッケージ5の第1軸角速度電圧vout_1、第2軸角速度電圧vout_2及び第3軸角速度電圧vout_3はターンテーブル2の回転軸A2の回転角θを検出するロータリエンコーダ7の角度信号に同期して制御ユニットCONTに供給され、この結果、制御ユニットCONTは第1軸角速度電圧vout_1、第2軸角速度電圧vout_2及び第3軸角速度電圧vout_3から3軸ジャイロセンサパッケージ5の各センサ実軸jの方向単位ベクトルs及び個別センサ感度kを演算する。
【0016】
図3図1図2の多軸ジャイロセンサ特性評価装置の座標系を説明する図である。
【0017】
図3に示すように、ターンテーブル1(リンクL1)には、原点Oを有するx座標系を定義する。このx座標系のz軸(回転軸A1)は原点Oを有する静止x座標系のz軸と一致し、x座標系のx軸はx座標系のx軸と角度θをなす。また、ターンテーブル2(リンクL2)には、原点Oを有するx座標系を定義する。このx座標系のx軸はx座標系のx軸と角度θをなす。尚、x座標系のz軸は回転軸A2である。
【0018】
図4図1図2のシリアルリンク機構を説明するための図であって、(A)は斜視図、(B)は座標系を示す図である。
【0019】
図4に示すように、原点Oを有するx座標系リンクL1にz軸=dの距離で原点Oを有するx座標系リンクL2が距離dで回転可能に接合されている。すなわち、リンクL1とリンクL2とは接合されてシリアルリンク機構をなしている。但し、本発明においては、各座標系の原点O、O、Oは同一点として扱ってもよい。従って、
=d=0
とすることができる。この場合、DH(Denavit−Hartenberg)パラメータは図5に示すごとくなる。但し、DHパラメータd、a、θ、αは次のごとく定義される。
:リンクLi−1のxi−1軸とリンクLiのx軸との距離
:リンクLi−1のzi−1軸とリンクLiのz軸との距離
θ:リンクLi−1のxi−1軸に対するリンクLiのx軸の角度
α:リンクLi−1のzi−1軸に対するリンクLiのz軸の角度


【0020】
一般に、隣接するリンクLi−1、Li同士の同次変換行列T(i−1)iはDHパラメータを利用すると式(1)で表される。
【数1】
具体的には、図1図2図3における原点O(i=0、1、2)のx座標系(リンクLi)間の同次変換行列T01、T12は式(2)で表される。尚、表示ベクトルは、本明細書中の式及び図面においては太字とする。
【数2】
但し、行列内のc、sはcosθ、sinθを表すものとする。
【0021】
一般に、剛体上のxyz座標系から見た位置ベクトルxの点を基準座標系から見た場合、その位置ベクトルxは両者の座標変換を表す同次変換行列をGとした場合、式(3)となる。
【数3】
このときの基準座標系から見た剛体上の位置ベクトルxの速度行列Vは式(4)で示される。
【数4】
つまり、剛体上の位置ベクトルxの点は基準座標系からその点を示す位置ベクトルxに速度行列Vを乗算したもので表される。これを図1図2図3に適用すると、図1図2図3における原点Oの静止x座標系に対するターンテーブル2(リンクL2)上の点の速度行列V02は式(5)で表される。
【数5】
反対に、ターンテーブル2(リンクL2)上から見た原点Oの静止x座標系に対する速度行列V20は式(6)となる。
【数6】
【0022】
式(6)における角速度ベクトルωはターンテーブル2(リンクL2)から見た原点Oの静止x座標系の角速度であるので、静止x座標系から3軸ジャイロセンサパッケージ5に入力される角速度ベクトルωは符号を入れ替えて式(7)で表される。
【数7】
式(7)から3軸ジャイロセンサパッケージ5が受ける角速度成分ω、ωはθに応じて正弦波状に変化する。従って、3軸ジャイロセンサパッケージ5の各センサ実軸jと入力角速度ベクトルωの方向とが重なったときに出力電圧vout_1、vout_2は最大または最小となり、この結果、センサ実軸jの方向単位ベクトルsを検出できる。他方、ω=dθ/dtは一定であり、出力電圧vout_3は一定のオフセット値となる。さらに、式(7)において、時間と共に変化するパラメータはθ、θだけであり、ギア比rの非接触型マグネットギアによってω=rωとなる拘束を加えることにより図1図2図3の多軸ジャイロセンサ特性評価装置は1自由度で、つまりモータ6だけで動作できる。このとき、モータ6の振動のノイズも非接触型マグネットギアによって大幅に低減できる。
【0023】
シリアルリンク接合されたターンテーブル1(リンクL1)及びターンテーブル2(リンクL2)が等速円運動を行うとすれば、つまり、ω=dθ/dt及びω=dθ/dtが一定であるとすれば、式(7)はターンテーブル2(リンクL2)に対し、スカラーが一定でz軸上を回転する角速度ベクトルωが与えられることを示している。3軸ジャイロセンサパッケージ5の各センサ実軸jがz軸と平行に配置されていない場合、各センサ実軸jはθの正弦波状電圧vout_1、vout_2を出力し、これらの電圧は特定の角度(位相)θで最大となる。この位相はセンサ実軸jの方向単位ベクトルs(j=1、2、3)とz軸とを含む平面Ψjq(j=1、2、3;q=1、2)と等価である。たとえば、1回目測定(q=1)で方向単位ベクトルsとz軸とを含む3つの平面Ψj1を得、2回目測定(q=2)で方向単位ベクトルsとz軸とを含むさらに3つの平面Ψj2を得、平面Ψj1、Ψj2(j=1、2、3)の各交線がセンサ実軸jの方向単位ベクトルsを示すことになる。各センサ実軸jを同定できると、各センサ実軸jの正弦波出力電圧vout_1、vout_2から各センサ実軸jの個別センサ感度kを同定できる。その詳細は後述する。
【0024】
図6図7は本発明に係る多軸ジャイロセンサ特性評価装置の第2の実施の形態を示す斜視図であり、図6は多軸ジャイロセンサパッケージが第1の姿勢状態(q=1)にある場合、図7は多軸ジャイロセンサパッケージが第2の姿勢状態(q=2)にある場合を示し、第1、第2の姿勢状態の切替は制御ユニットCONTによって自動的に行われる。
【0025】
図6図7においては、図1図2のターンテーブル2(リンクL2)と3軸ジャイロセンサパッケージ5との間に、自動姿勢機能として、パッケージ姿勢変更ユニット3(リンクL3とする)及びセンサパッケージ台4(リンクL4とする)を付加してある。これに伴い、3軸ジャイロセンサパッケージ5をリンクL5とする。パッケージ姿勢変更ユニット3にはセンサパッケージ台4のシャフト4aが嵌込まれており、このシャフト4aを回転させることによってセンサパッケージ台4を図6に示す縦状態または図7に示す横状態とする。センサパッケージ台4の縦状態と横状態との角度変化は90°である。
【0026】
また、パッケージ姿勢変更ユニット3の姿勢制御はセンサパッケージ台4のシャフト4aを回転させるサーボモータ(図示せず)に対する姿勢制御信号Sによって行われる。この姿勢制御信号Sは制御ユニットCONTによって無線によって送信される。この無線はたとえば近距離無線通信規格ZigBeeを用いる。この場合、無線通信規格ZigBeeの送信ユニット(図示せず)を制御ユニットCONTに設け、無線通信規格ZigBeeの受信ユニット(図示せず)をターンテーブル2上に設ける。
【0027】
図6図7においては、3軸ジャイロセンサの各センサ実軸jの方向単位ベクトルsを同定すると共に個別センサ感度kを同定するためには、3軸ジャイロセンサが感知しない3軸ジャイロセンサパッケージ5の並進運動成分及び並進速度成分には意味がない。パッケージ姿勢変更ユニット3(リンクL3)を原点Oを有するx座標系とし、センサパッケージ台4(リンクL4)を原点Oを有するx座標系とし、3軸ジャイロセンサパッケージ5(リンクL5)を原点Oを有するx座標系としたとき、x座標系からx座標系、x座標系、x座標系までの同次変換行列は、3軸ジャイロセンサパッケージ5が姿勢変更を受ける回転行列をRmq(q=1、2)とすれば、式(8)で表される。
【数8】
【0028】
回転行列Rm1、Rm2の組合せは無限であるが、その例を式(9)で表す。
【数9】
測定精度を考慮した場合、上述の1回目の測定(q=1)、2回目の測定(q=2)の平面Ψj1、Ψj2の各法線ベクトルni1、ni2は直交するのが好ましい。従って、2回目の測定(q=2)では、1回目の測定姿勢の回転行列Rm1から90°回転させる行列であるRをRm1に乗算して2回目の測定姿勢の回転行列Rm2を得ている。これらを含めたリンクL1からリンクL2、L3、L4、L5までのDHパラメータを図8に示す。図8のDHパラメータのd、d、d、a、a、aは定数である任意のオフセット値であり、式(6)及び後述の式(10)に示されるように、3軸ジャイロセンサパッケージ5への入力角速度ωには寄与しない。
【0029】
図6に示す3軸ジャイロセンサ3の原点Oを有するx座標系が回転行列Rm1(q=1)によって回転された3軸ジャイロセンサパッケージ5の上面図、右側面図を図9に示し、回転行列Rm2(q=2)によって回転された3軸ジャイロセンサパッケージ5の上面図を図10に示す。この場合、図8のリンクL4のDHパラメータθはその分90°回転したものとなり、qを用いて表現すれば、(q−1)π/2となる。他方、図6に示す姿勢(q=1)を図7に示す姿勢(q=2)にするために、制御ユニットCONTが姿勢制御信号Sを姿勢変更ユニット3のサーボモータ(図示せず)に送出し、この結果、センサパッケージ台4を縦状態から90°回転し横状態にする。このように、3軸ジャイロセンサパッケージ5の姿勢制御は自動的に行われる。尚、式(9)、図9の(B)中の角度βは複数考えられる。たとえば、cosβ=√(1/3)の場合には、1回目の測定(q=1)のとき3軸ジャイロセンサパッケージ5の軸方向の回転面への投影長さが大きくなる。また、cosβ=√(3/5)の場合には、2回目の測定のときの3軸ジャイロセンサパッケージ5の回転面への投影長さが最大となる。さらに、cosβ=√(7/3)の場合には、法線ベクトル同士の外積が等しくなる。
【0030】
図8におけるリンクL3、L4、L5における各DHパラメータは時間に依存せず一定であるので、3軸ジャイロセンサパッケージ5のx座標系(リンクL5)から見た静止x座標系(リンクL0)に対する速度行列V50は式(10)となる。
【数10】
つまり、式(6)のV20と等しくなる。これは3軸ジャイロセンサパッケージ5は実質的に剛体であるターンテーブル2のリンクL2上の点と見ることができるからである。つまり、パッケージ姿勢変更ユニット3(リンクL3)、センサパッケージ台4(リンクL4)及び3軸ジャイロセンサパッケージ5(リンクL5)は機構的にはターンテーブル2(リンクL2)と同一のリンクである。
【0031】
次に、図1図2図6図7の制御ユニットCONTの動作を図11を参照して説明する。尚、制御ユニットCONTはマイクロコンピュータ等によって構成される。
【0032】
始めに、ステップ1101にて、
q←1
とする。
【0033】
次に、ステップ1102にて、3軸ジャイロセンサパッケージ5をターンテーブル2上にq回目の姿勢状態とする。たとえば、図1図2の3軸ジャイロセンサパッケージ5であれば、3軸ジャイロセンサパッケージ5を式(9)の回転行列をRm1(q=1)またはRm2(q=2)に対応する位置に治具、ねじ等を用いて手動で固定する。他方、図6図7の3軸ジャイロセンサパッケージ5であれば、制御ユニットCONTにより無線で姿勢変更信号Sを送出することによりターンテーブル2上のサーボモータ(図示せず)を駆動してセンサパッケージ台4を式(9)の回転行列をRm1(q=1)に対応する縦状態とし、またはRm2(q=2)に対応する横状態とする。
【0034】
次に、ステップ1103にて、制御ユニットCONTはモータ6を駆動してターンテーブル1、2を同期回転駆動させる。
【0035】
次に、ステップ1104にて、ロータリエンコーダ7の角度θと共に、第1軸角速度電圧vout_1、第2軸角速度電圧vout_2及び第3軸角速度電圧vout_3を取込み、角速度電圧vout_1またはvout_2が最大または最小となったときのターンテーブル2の角度θをθ21、θ22、θ23とする。図12の(A)に示すごとく、この角度θ21、θ22、θ23上にセンサ実軸jの方向単位ベクトルs、s、sが存在すると推定できる。従って、図12の(B)に示すごとく、センサ実軸jの方向単位ベクトルs(j=1、2、3)とz軸とを含む3つの平面Ψjq(j=1、2、3)を同定し、各平面Ψjq(j=1、2、3)の3つの法線単位ベクトルnjq(j=1、2、3)を同定する。
【0036】
尚、平面Ψjq(j=1、2、3)の法線ベクトルnjqは、式(11)に示すごとく、センサ実軸jの方向単位ベクトルsが回転行列Rmqによって回転したベクトルとターンテーブル2のx座標系のz軸の単位ベクトルez2との外積で表される。
【数11】
従って、上述のステップ1104にて、式(11)の左辺が求まる。
【0037】
次に、ステップ1105を参照すると、q=1か否かを判別し、この結果、q=1のときには、ステップ1106にてq=2とし、ステップ1107にて制御ユニットCONTはモータ6をオフにしてターンテーブル1、2を停止し、ステップ1102〜ステップ1105を繰返す。これにより、センサ実軸jの方向単位ベクトルsとz軸とを含む他の3つの平面Ψjq(j=1、2、3)を同定し、この結果、各平面Ψjq(j=1、2、3)の他の3つの法線単位ベクトルnjq(j=1、2、3)を同定する。他方、q=2のときには、ステップ1108に進む。
【0038】
ステップ1108においては、図12の(C)に示す平面Ψj1、Ψj2(j=1、2、3)の交点から3軸ジャイロセンサパッケージ5のx座標系から見たセンサ実軸jの方向単位ベクトルs(j=1、2、3)を式(12)に基づいて算出する。
【数12】
【0039】
尚、式(12)の右辺の符号は法線単位ベクトルnj1、nj2の位置関係からセンサ実軸jの方向単位ベクトルs(j=1、2、3)の符号が変化する場合を示している。図13に示すごとく、φをセンサ実軸jの方向単位ベクトルsとz軸単位ベクトルez2との角度とすれば、q=1、2の何れの場合にも式(13)が成立する。
【数13】
【0040】
最後に、ステップ1109にて、各センサ実軸jの個別センサ感度kを演算する。
【0041】
センサ実軸jのセンサが検出する最大角速度ωmax及び最小角速度ωminは、センサ実軸jの方向単位ベクトルsのx平面への射影がz軸方向に最大または最小となるときに観測され、その値は、式(14)で表される。
【数14】
このときのセンサ実軸jの個別センサ感度kは式(15)で表される。
【数15】
但し、vmaxは最大角速度ωmaxのときのセンサ実軸jの方向の出力電圧、vminは最小角速度ωminのときのセンサ実軸jの方向の出力電圧である。センサ実軸方向テンソルS及び個別センサ感度テンソルKを式(16)で定義したとき、
【数16】
理想的な3軸ジャイロセンサパッケージであれば、センサ実軸方向テンソルSは単位行列Eに等しく、個別センサ感度テンソルKは共通センサ感度をkとしたときkEとなるが、実際の3軸ジャイロセンサパッケージでは、センサ実軸方向テンソルSも個別センサ感度テンソルKも理想の値より多少ずれる。上述のごとく同定された図1図2図6図7の3軸ジャイロセンサパッケージ5に入力された3次元角速度ベクトルωinに対して3軸ジャイロセンサパッケージ5が出力電圧ベクトルvout=[v、v、vを出力した場合、式(17)の関係が成立する。
【数17】
但し、ベクトルvoffは3軸ジャイロセンサのオフセット電圧ベクトルであり、上記の3軸ジャイロセンサのセンサ実軸jの方向の同定における正弦波出力電圧vout_1、vout_2の基線から求めることができる。
【0042】
以上に述べたように、本発明によれば、3軸ジャイロセンサパッケージ5における3軸ジャイロセンサの各センサ実軸jの方向単位ベクトルs及び個別センサ感度kを同定でき、3軸ジャイロセンサの各センサ実軸jが3軸ジャイロセンサパッケージ5に完全に平行になっていなくとも、また、各センサ実軸j間で個別センサ感度kが多少ずれていても、式(17)によりこれらの値を補正して正確な入力3次元角速度ベクトルωinを得ることができる。
【0043】
尚、本発明は3軸ジャイロセンサ以外の多軸ジャイロセンサにも適用し得る。
【0044】
また、本発明は上述の実施の形態の自明な範囲のいかなる変更にも適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1:ターンテーブル(リンクL1)
1a:取付部材
2:ターンテーブル(リンクL2)
3:パッケージ姿勢変更ユニット(リンクL3)
4:センサパッケージ台(リンクL4)
5:3軸ジャイロセンサパッケージ(リンクL5)
6:モータ
7:ロータリエンコーダ
8:姿勢変更信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13