特許第6548227号(P6548227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6548227スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査のシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548227
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   A61B6/03 330A
   A61B6/03 360J
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-551235(P2016-551235)
(86)(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公表番号】特表2017-508512(P2017-508512A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】US2015019669
(87)【国際公開番号】WO2015138428
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2018年3月7日
(31)【優先権主張番号】201410087904.2
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100115462
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 猛
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ドン,ジャチン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジエ
【審査官】 遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−510483(JP,A)
【文献】 特表2010−527647(JP,A)
【文献】 特開2012−130667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
G06T 1/00−1/40,3/00−5/50,9/00−9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被走査物体の形状を描写するための複数の制御点(P)を初期スカウト画像上に配置するための被走査物体描写モジュール(21)と、
前記被走査物体の前記形状を描写するための前記制御点(P)を一次変換することにより、前記被走査物体の前記形状を従前に記憶された平均形状と整合させるための調整モジュール(24)と、
主成分分析アルゴリズムを用いて、前記被走査物体の前記整合された形状の主成分を抽出するための主成分分析モジュール(25)と、
前記被走査物体の前記整合された形状の主成分に基づいて、以下の数式を用いて複数の新たな形状を取得し、
【数1】

ここで、s’が、前記新たな形状を描写するために使用され、
【数2】

が、前記平均形状を描写するために使用され、Psが前記主成分を表し、bnewが、前記主成分の前記重みパラメータを表しており、
前記複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を所望形状として決定するための所望形状取得モジュール(27)と、
前記所望形状に基づいて走査パラメータを設定するための走査パラメータ設定モジュール(29)と、
を備える、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システム。
【請求項2】
グレースケール投影法を用いて前記初期スカウト画像中で対象領域(I)を対象画像として自動的に決定するための対象領域能動取得モジュール(22)をさらに備え、特に、前記調整モジュール(24)が、前記被走査物体の前記形状を描写するための前記制御点(P)を前記対象画像に基づいて一次変換する、請求項1に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システム。
【請求項3】
操作デバイスの操作指示に基づいて開始点(S)および終了点(E)を前記初期スカウト画像中で設定し、前記開始点(S)および前記終了点(E)に基づいて前記初期スカウト画像中で領域(I)を対象画像として定義するための対象領域受動取得モジュール(23)をさらに備え、特に、前記調整モジュール(24)が、前記被走査物体の前記形状を描写するための前記制御点(P)を前記対象画像に基づいて一次変換する、請求項1に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システム。
【請求項4】
前記調整モジュール(24)が、前記被走査物体の前記形状を描写するための前記制御点(P)を以下の数式を用いて一次変換し、
【数3】

ここで、x’およびy’が、前記被走査物体の前記形状を前記初期スカウト画像上に描写するための前記一次変換された制御点(P)の横座標値および縦座標値をそれぞれ表し、xおよびyが、前記被走査物体の前記形状を前記初期スカウト画像上に描写するための一次変換される前の前記制御点(P)の横座標値および縦座標値をそれぞれ表し、sおよびsが、前記被走査物体の前記形状のスケーリング係数をそれぞれ表し、θが、前記被走査物体の前記形状の回転角度を表し、tおよびtが、前記被走査物体の前記形状を描写するための前記制御点(P)の横座標方向および縦座標方向の平行移動サイズをそれぞれ表す、請求項1に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システム。
【請求項5】
前記平均形状が、以下の数式を用いて描写され、
【数4】

ここで、Nが、スカウト画像のサンプルの数を表し、sが、前記スカウト画像のi番目の前記サンプルの前記被走査物体の前記形状を描写するために使用され、1≦i≦Nである、請求項1に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システム。
【請求項6】
前記所望形状取得モジュール(27)が、最適化アルゴリズムを用いて前記最大費用関数値を伴う前記新たな形状を決定する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システム。
【請求項7】
前記所望形状取得モジュール(27)が、
事前設定された数値変動範囲内で複数の重みパラメータを前記主成分にまず付与し、現在取得されている前記複数の新たな形状から前記最大費用関数値を伴う前記新たな形状を良好な形状として決定するための荒選択モジュールと、
少なくとも1つの精選択モジュールと、を含み、各精選択モジュールが、前記従前の良好な形状に対応する前記重みパラメータを中心として、前記従前の数値変動範囲よりも小さな数値変動範囲内で複数の重みパラメータを前記主成分に付与し、前記現在取得されている複数の新たな形状から前記最大費用関数値を伴う前記新たな形状を前記良好な形状として決定し、最後に取得された前記良好な形状が、前記所望形状として決定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システム。
【請求項8】
被走査物体の形状を描写するための複数の制御点(P)を初期スカウト画像上に配置するための被走査物体描写ステップ(S81)と、
前記被走査物体の前記形状を描写するための前記制御点(P)を一次変換することにより、前記被走査物体の前記形状を従前に記憶された平均形状と整合させるための調整ステップ(S84)と、
主成分分析アルゴリズムを用いて、前記被走査物体の前記整合された形状の主成分を抽出するための主成分分析ステップ(S85)と、
前記被走査物体の前記整合された形状の主成分に基づいて、以下の数式を用いて複数の新たな形状を取得し、
【数5】

ここで、s’が、前記新たな形状を描写するために使用され、
【数6】

が、前記平均形状を描写するために使用され、Psが前記主成分を表し、bnewが、前記主成分の前記重みパラメータを表しており、
前記複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う前記新たな形状を所望形状として決定するための所望形状取得ステップ(S87)と、
前記所望形状に基づいて走査パラメータを設定するための走査パラメータ設定ステップ(S89)と、
を含む、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査方法。
【請求項9】
前記被走査物体描写ステップ(S81)と前記調整ステップ(S84)の間に、グレースケール投影法を用いて前記初期スカウト画像中で対象領域(I)を対象画像として決定するための対象領域能動取得ステップ(S82)をさらに含む、請求項8に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査方法。
【請求項10】
前記被走査物体描写ステップ(S81)と前記調整ステップ(S84)の間に、操作デバイスの操作指示に基づいて開始点(S)および終了点(E)を前記初期スカウト画像中で設定し、前記開始点(S)および前記終了点(E)に基づいて前記初期スカウト画像中で1つの領域(I)を前記対象画像として定義するための対象領域受動取得ステップ(S83)をさらに含む、請求項8に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査方法.
【請求項11】
前記調整ステップ(S84)が、前記被走査物体の前記形状を描写するための前記制御点(P)を以下の数式を用いて一次変換し、
【数7】

ここで、x’およびy’が、前記被走査物体の前記形状を前記初期スカウト画像上に描写するための前記一次変換された制御点(P)の横座標値および縦座標値をそれぞれ表し、xおよびyが、前記被走査物体の前記形状を前記初期スカウト画像上に描写するための一次変換される前の前記制御点(P)の横座標値および縦座標値をそれぞれ表し、sおよびsが、前記被走査物体の前記形状のスケーリング係数をそれぞれ表し、θが、前記被走査物体の前記形状の回転角度を表し、tおよびtが、前記被走査物体の前記形状を描写するための前記制御点(P)の横座標方向および縦座標方向の平行移動サイズをそれぞれ表す、請求項8に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査方法。
【請求項12】
前記平均形状が、以下の数式を用いて描写され、
【数8】

ここで、Nが、スカウト画像のサンプルの数を表し、sが、前記スカウト画像のi番目の前記サンプルの前記被走査物体の前記形状を描写するために使用され、1≦i≦Nである、請求項8に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査方法。
【請求項13】
前記所望形状取得ステップ(S87)が、最適化アルゴリズムを用いて前記最大費用関数値を伴う前記新たな形状を決定する、請求項8〜12のいずれか一項に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査方法。
【請求項14】
前記所望形状取得ステップ(S87)が、
事前設定された数値変動範囲内で複数の重みパラメータを前記主成分にまず付与し、現在取得されている前記複数の新たな形状から前記最大費用関数値を伴う前記新たな形状を良好な形状として決定するための荒選択ステップと、
少なくとも1つの精選択ステップと、を含み、各精選択ステップが、前記従前の良好な形状に対応する前記重みパラメータを中心として、前記従前の数値変動範囲よりも小さな数値変動範囲内で複数の重みパラメータを前記主成分に付与し、前記現在取得されている複数の新たな形状から前記最大費用関数値を伴う前記新たな形状を前記良好な形状として決定し、最後に取得された前記良好な形状が、前記所望形状として決定される、請求項8〜12のいずれか一項に記載のスカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療診断の分野に関し、特に、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査のシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種の身体部位の疾患診断がコンピュータ断層撮影(CT)技術により行われている。腰部椎間板を例に挙げると、個々の腰部椎間板の診断画像は、一般に、1つの腰部椎間板を軸方向に走査する前に腰部全体をまず走査して、図1に示されるようなスカウト画像を取得し、スカウト画像に基づいて、走査位置、走査角度、走査範囲、および観測表示視野などの走査パラメータを横方向走査中に決定し調整し、調整された走査パラメータに基づいて軸方向に走査することによって、取得され得る。例えば、図1に示される5つの矩形部分のそれぞれの位置、幅および角度などをそれぞれ調整することによって、それら5つの腰部椎間板のための異なる走査位置、走査角度および走査範囲がそれぞれ決定され得る。
【0003】
しかし、最新技術では、走査パラメータを手動で調整する必要があり、以下の問題がある。
【0004】
第1に、上記の走査パラメータの手動調整に際して、異なるオペレータにより達成される精度が異なる場合があり、不慣れな操作により走査パラメータの精度が相対的に低下することによって、診断結果の正確さに影響が及ぶ。
【0005】
第2に、一部の慣れたオペレータは、走査パラメータを精度良く調整し得るが、臨床実験から知られているように、各腰部椎間板の調整に要する時間が長くなり、パラメータ調整を完了するために、オペレータがマウスを少なくとも5〜6回操作(例えば、クリック、ドラッグその他)し、よって、5つの腰部椎間板について最大で25〜30回操作することになり、煩雑な操作および長い操作時間につながり、不慣れなオペレータの場合、操作に要する時間が非常に長くなり、よって操作の効率が低下する。
【0006】
したがって、スカウト画像に基づいて走査パラメータを自動的に決定でき、それにより走査パラメータの調整に要する時間を減らし正確さを高める、新たな医療用走査のシステムおよび方法が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−045192号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明の例示的な実施形態は、被走査物体描写モジュール、調整モジュール、主成分分析モジュール、所望形状取得モジュール、および走査パラメータ設定モジュールを備える、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システムを提供する。被走査物体描写モジュールは、被走査物体の形状を描写するための複数の制御点を初期スカウト画像上に配置するためのものであり、調整モジュールは、被走査物体の形状の制御点を一次変換することにより、被走査物体の形状を従前に記憶された平均形状と整合させるためのものであり、主成分分析モジュールは、主成分分析アルゴリズムを用いて、被走査物体の整合された形状の主成分を抽出するためのものであり、所望形状取得モジュールは、複数の重みパラメータを主成分に付与し、以下の数式を用いて複数の新たな形状を取得し、
【0009】
【数1】
ここで、s’が、上の新たな形状を描写するために使用され、
【0010】
【数2】
が、平均形状を描写するために使用され、Pが主成分を表し、bnewが、主成分の重みパラメータを表しており、
取得された複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を所望形状として決定するためのものであり、走査パラメータ設定モジュールは、所望形状に基づいて走査パラメータを設定するためのものである。
【0011】
本発明の例示的な実施形態は、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査方法を提供するためのものでもある。方法は、被走査物体の形状を描写するための複数の制御点を初期スカウト画像上に配置するステップと、被走査物体の形状を描写するための制御点を一次変換することにより、被走査物体の形状を従前に記憶された平均形状と整合させるステップと、主成分分析アルゴリズムを用いて、被走査物体の整合された形状の主成分を抽出するステップと、複数の重みパラメータを主成分に付与し、以下の数式を用いて複数の新たな形状を取得し、
【0012】
【数3】
ここで、s’が、上の新たな形状を描写するために使用され、
【0013】
【数4】
が、平均形状を描写するために使用され、Pが主成分を表し、bnewが、主成分の重みパラメータを表しており、取得された複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を所望形状として決定するステップと、所望形状に基づいて走査パラメータを設定するステップと、を含む。
【0014】
以下の詳細な説明、添付図面および請求項を読むと、他の特徴および態様が明らかとなるであろう。
【0015】
本発明は、添付図面と併せて、後述されるような本発明の例示的な実施形態から、より理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術における、スカウト画像に基づく走査パラメータの手動調整の概略図である。
図2】本発明の一実施形態により提供される、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システムの構成ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態により提供される初期スカウト画像である。
図4図3に示される初期スカウト画像中の被走査物体の形状を描写するための複数の制御点の利用の概略図である。
図5図4の複数の制御点で形成される被走査物体の形状の概略図である。
図6】本発明の一実施形態による、グレースケール投影法を利用することによる初期スカウト画像中の対象領域の取得の概略図である。
図7】本発明の一実施形態による、開始点および終了点を設定することによる初期スカウト画像中の対象領域の取得の概略図である。
図8】本発明の一実施形態により提供される、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定する医療用走査方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の具体的な実施形態を後述する。これらの実施形態の具体的な説明において、簡潔な説明を目的として、本明細書が実際の実施形態の全ての特徴を網羅的に記述することは不可能であることが指摘されるべきである。いずれか1つの実施形態の実際の実施において、いずれか1つの工学プロジェクトまたは設計プロジェクトの過程におけるように、開発者の具体的な目的を実現し、システム関連または商業関連の制約を満たすために、通常、各種の具体的な決定が行われてもよく、一実施形態と別の実施形態との間で変更されてもよいことが理解されるべきである。さらに、この種の開発において行われる努力は、本発明により開示される内容に関連する分野の当業者にとって複雑であり退屈であるかもしれないが、本開示により明らかにされる技術内容に基づく設計、製造または生産その他の変更は、通常の技術的手段にすぎず、本開示の内容が不十分であるとみなされるべきではないことも理解されるべきである。
【0018】
特に定義されない限り、請求項および本明細書に使用される技術用語または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有するべきである。本発明特許出願の明細書および請求項で使用される第1、第2、第3のような語は、いかなる順序、数量または重要度も表しておらず、異なる構成部品を区別するためにのみ使用することができる。「1つの(a)」および「1つの(an)」その他の不定冠詞は、数量の限定を示しておらず、むしろ少なくとも1つが存在することのみを示している。「含む(include)」または「備える(comprise)」のような語は、「含む」または「備える」に先行する要素または物が、そのような語の後に列挙される要素または物およびそれらの等価要素をカバーし、他の要素または物を除外しないことを意味する。「接続する(connect)」または「接続される(connected)」のような語は、物理的または機械的な接続にも、直接または間接的な接続にも限定されない。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態により提供される、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査システムの構成ブロック図であり、図3は、本発明の一実施形態により提供される初期スカウト画像であり、初期スカウト画像中には、腰部などの被走査物体がある。図4は、図3に示されるようなスカウト画像中の被走査物体の形状を描写するための複数の制御点の利用の概略図であり、図5は、図4の複数の制御点で形成される被走査物体の形状の概略図である。
【0020】
図2に示されるように、医療用走査システムは、被走査物体描写モジュール21、調整モジュール24、主成分分析モジュール25、所望形状取得モジュール27、および走査パラメータ設定モジュール29を含む。
【0021】
図4に示されるように、被走査物体描写モジュール21は、複数の制御点Pを初期スカウト画像上に配置するために使用され、それらの制御点Pは、被走査物体の形状を描写するために使用される。この実施形態では、被走査物体は腰部であり、被走査物体描写モジュール21は、特に、61個の制御点Pにより腰部の形状を描写して、図5に示されるような形状を形成するためのものである。
【0022】
この実施形態では、被走査物体の平均形状が事前に記憶され得、平均形状は、スカウト画像の大量のサンプルを分析することにより得られ、特に、制御点は、サンプル中の被走査物体の形状を描写するために各サンプル中に配置され、平均形状は、全てのサンプル中の形状の平均値計算を実施することにより取得される。各サンプル中の制御点の数は、初期スカウト画像上の制御点の数に対応し、制御点の間には、1対1の関係がある。
【0023】
上の平均形状は、特に下の数式(1)により描写される。
【0024】
【数5】
上の数式(1)では、Nはスカウト画像のサンプルの数であり、sは、i番目のサンプル中の被走査物体の形状を描写するために使用され、1≦i≦Nである。
【0025】
調整モジュール24は、上記の被走査物体の形状の制御点を一次変換することにより、被走査物体の形状を従前に記憶された平均形状と整合させるためのものである。特に、制御点Pは、初期スカウト画像中の固定座標値を有し、従前に記憶された平均形状も、制御点Pに1つずつ対応する制御点Pを用いて描写され、平均形状の制御点も固定座標値を有し、調整モジュール24は、被走査物体の形状を描写するための制御点Pを一次変換することにより、制御点Pを平均形状の制御点と整合させることによって、被走査物体の形状と平均形状の整合を実現するためのものである。
【0026】
この実施形態では、調整モジュール24は、特に、下の数式(2)を用いて被走査物体の形状の制御点を一次変換する。
【0027】
【数6】
上の数式(2)では、x’およびy’は、被走査物体の形状を初期スカウト画像上に描写するための一次変換された制御点Pの横座標値および縦座標値をそれぞれ表し、xおよびyは、初期スカウト画像上の被走査物体の形状を描写するための一次変換される前の制御点Pの横座標値および縦座標値をそれぞれ表し、sxおよびsyは、被走査物体の形状のスケーリング係数をそれぞれ表し、θは、被走査物体の形状の回転角度を表し、txおよびtyは、被走査物体の形状を描写するための制御点Pの横座標方向および縦座標方向の平行移動サイズをそれぞれ表す。
【0028】
上の説明に基づいて、調整モジュール24は、初期スカウト画像に直接基づいて、被走査物体の形状を描写するための制御点Pを一次変換し得る。さらに、初期スカウト画像中では、対象領域が対象画像として決定され得、それにより、調整モジュール24は、対象画像に基づいて制御点Pを一次変換する。対象領域は、被走査物体が分布する領域であり得る。
【0029】
図6は、本発明の一実施形態によるグレースケール投影法を利用することによる初期スカウト画像中の対象領域の取得の概略図である。例えば、この実施形態の医療用走査システムでは、対象領域能動取得モジュール22がさらに提供され、それは、グレースケール投影法を用いて初期スカウト画像中で対象領域Iを対象画像として自動的に決定し、それにより、調整モジュール24は、対象画像に基づいて制御点を一次変換する。グレースケール投影法の利用によって、さらに、対象領域として被走査物体が分布する初期スカウト画像中の領域を使用することによって、被走査物体の位置が特定され得、グレースケール投影法は、既知の画像処理方法であり、その説明は本明細書で繰り返されない。
【0030】
図7は、本発明の一実施形態による、開始点および終了点を設定することによる初期スカウト画像中の対象領域の取得の概略図である。例えば、この実施形態の医療用走査システムでは、対象領域受動取得モジュール23がさらに提供され、それは、操作デバイスからの操作指示に基づいて開始点Sおよび終了点Eを初期スカウト画像中に設定し、前記開始点Sおよび前記終了点Eに基づいて領域Iを初期スカウト画像中の対象画像として定義し、それにより、調整モジュール24は、対象画像に基づいて制御点Pを一次変換し、例えば、開始点Sおよび終了点Eの近くに対象領域の境界を決定し得る。上記の操作デバイスは、特に、オペレータにより手動で操作される必要があるマウス、キーボードその他などの入力デバイスであり得る。
【0031】
対象領域能動取得モジュール22を用いて、オペレータによる手動操作を伴わずに対象領域を自動的に決定することができる。また対象領域受動取得モジュール23を用いて、操作指示に基づいて開始点および終了点を設定することにより操作の複雑さを減らし得る。実際の適用では、対象領域能動取得モジュール22または対象領域受動取得モジュール23は、対象画像を得るために、必要に応じて選択的に実行され得る。
【0032】
主成分分析モジュール25は、主成分分析(PCA)アルゴリズムを用いて、被走査物体の整合された形状の主成分を抽出するためのものである。主成分分析アルゴリズムは、主成分分析とも称され、多数の変数を一次変換することにより少数の有意変数を選択するための多変量統計分析法であり、既知のアルゴリズムであり、その説明は本明細書で繰り返されない。この実施形態では、主成分分析アルゴリズムを用いて主成分分析モジュール25により得られた主成分は、P=(P...P)であり、m(0よりも大きな整数である)個の変数を有し、それらのm個の変数は、被走査物体の整合された形状に最大の影響を及ぼし得る変数とみなされる。
【0033】
被走査物体の形状の主成分を分析することによって、過剰な数の形状成分変数による過度に多い演算の問題を回避し、走査パラメータを決定するための期間を短くすることが可能となる。
【0034】
所望形状取得モジュール27は、複数の重みパラメータbnewを上記の主成分に付与し、下の数式(3)により複数の新たな形状を取得するためのものである。
【0035】
【数7】
上の数式(3)では、s’は、新たな形状を描写するために使用され、
【0036】
【数8】
は、平均形状を描写するために使用され、Pは主成分を表し、bnewは主成分の重みパラメータを表す。
【0037】
所望形状取得モジュール27は、取得された複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を所望形状としてさらに決定する。
【0038】
代替的に、所望形状取得モジュール27は、最適化アルゴリズムを用いて最大費用関数値を伴う新たな形状を決定し得、それも既知のアルゴリズムであり、その説明は本明細書で繰り返されない。
【0039】
操作の複雑さを減らすために、代替的に、所望形状取得モジュール27は、多次的な選択方法を用いて最大費用関数値を伴う新たな形状を決定するために、荒選択モジュールおよび少なくとも1つの精選択モジュールをさらに含み得る。荒選択モジュールは、事前設定された数値変動範囲(例えば−10〜10)内で複数の重みパラメータを主成分Pにまず付与し、現在取得されている複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を良好な形状として決定する。
【0040】
各精選択モジュールは、従前の良好な形状に対応する重みパラメータ(例えば5)を中心として、従前の数値変動範囲よりも小さな数値変動範囲内で複数の重みパラメータbnewを主成分Pに付与し、現在取得されている複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を良好な形状として決定し、最後に取得された良好な形状が所望形状として決定される。
【0041】
例えば、精選択モジュールの数が2つであるとき、第1の精選択モジュールは、重みパラメータ5を中心として、数値変動範囲2〜8内で複数の重みパラメータbnewを主成分Pに付与し、現在取得されている複数の新たな形状から費用関数値に関して所望される新たな形状を第2の良好な形状として決定し、それは、第2の精選択モジュールにより決定される数値変動範囲の中央値として使用される。
【0042】
第2の精選択モジュールは、第2の良好な形状に対応する重みパラメータ(例えば6)を中心として、より小さな数値変動範囲(例えば5〜7)内で複数の重みパラメータbnewを主成分Pに付与し、現在取得されている複数の新たな形状から費用関数値に関して所望される新たな形状を第3の良好な形状、すなわち所望形状として決定する。
【0043】
走査パラメータ設定モジュール29は、所望形状取得モジュール27により取得された所望形状に基づいて、例えば、走査位置、走査範囲、走査角度および表示観測視野など、各軸方向走査に際しての調整パラメータである走査パラメータを設定するために使用される。走査パラメータが設定された後、良好な軸方向走査画像を得るために軸方向走査が行われ得る。
【0044】
図8は、本発明の一実施形態により提供される、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定する医療用走査方法のフローチャートである。方法は、図2に示される医療用走査システムに適用され得る。図8に示されるように、方法は、被走査物体描写ステップS81、調整ステップS84、主成分分析ステップS85、所望形状取得ステップS87、および走査パラメータ設定ステップS89を含む。
【0045】
被走査物体描写ステップS81:被走査物体を描写するための複数の制御点を初期スカウト画像上に配置する。例えば、画像中の腰部の形状を描写するために、図3に示される初期スカウト画像上に複数の制御点Pを配置し、図4に示されるような形状を形成する。
【0046】
調整ステップS84:上記の被走査物体の形状を描写するための制御点を一次変換することにより、被走査物体の形状を従前に記憶された平均形状
【0047】
【数9】
と整合させる。上記の形状
【0048】
【数10】
は、スカウト画像の大量のサンプルを分析することにより得られ得、制御点は、サンプル中の被走査物体の形状を描写するために各種のサンプル中に配置され、平均形状は、全てのサンプル中の形状の平均計算を実施することにより取得され、平均形状は、特に数式(1)により描写され、このステップは、特に被走査物体の形状の制御点を上の数式(2)により一次変換する。
【0049】
主成分分析ステップS85:主成分分析アルゴリズムを用いて被走査物体の整合された形状の主成分Pを抽出する。
【0050】
所望形状取得ステップS87:複数の重みパラメータbnewを主成分Pに付与し、数式(3)により複数の新たな形状s’を取得し、取得された複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を所望形状として決定する。
【0051】
走査パラメータ設定ステップS89:所望形状に基づいて走査パラメータを設定する。
【0052】
任意選択的に、被走査物体描写ステップS81と調整ステップS84の間には、対象領域能動取得ステップS82または対象領域受動取得ステップS83も提供される。
【0053】
対象領域能動取得ステップS82:グレースケール投影法を用いて初期スカウト画像中で対象領域を対象画像として自動的に決定する。
【0054】
対象領域受動取得ステップS83:操作デバイスの操作指示に基づいて初期スカウト画像中で開始点および終了点を設定し、開始点および終了点に基づいて1つの領域を対象画像として定義する。
【0055】
対象領域能動取得ステップS82または対象領域受動取得ステップS83を用いることによって、調整ステップS84は、被走査物体の形状を描写するための制御点Pを対象画像に基づいて一次変換することが可能となる。
【0056】
所望形状取得ステップS87は、最適化アルゴリズムを用いて最大費用関数値を伴う新たな形状を所望形状として決定し得る。所望形状取得ステップS87は、最大費用関数値を伴う新たな形状を決定するために荒選択ステップおよび少なくとも1つの精選択ステップも含み得る。
【0057】
荒選択ステップ:事前設定された数値変動範囲内で複数の重みパラメータを主成分にまず付与し、現在取得されている複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を良好な形状として決定する。
【0058】
少なくとも1つの精選択ステップ:各精選択ステップは、従前の良好な形状に対応する重みパラメータを中心として、従前の数値変動範囲よりも小さな数値変動範囲内で複数の重みパラメータを前記主成分に付与し、現在取得されている複数の新たな形状から最大費用関数値を伴う新たな形状を良好な形状として決定し、最後に取得された良好な形状が所望形状として決定される。
【0059】
本発明の実施形態により提供される、スカウト画像に基づいて走査パラメータを決定するための医療用走査のシステムおよび方法は、スカウト画像上に制御点を配置することにより被走査物体の形状を描写し、被走査物体の形状の主成分を分析するために、その形状を事前に記憶された形状と整合させ、所望形状に基づいて被走査物体の各種の部分の分布範囲、角度その他を決定できるように、重み値を主成分に付与し平均形状を加味することにより被走査物体の所望される形状を得、それにより、対応する走査パラメータを素早く高精度に設定し、手動操作により生じる低い精度、長い操作期間その他の問題を回避する。
【0060】
一部の例示的な実施形態が上述されてきた。しかし、各種の修正を行い得ることが理解されるべきである。例えば、記述される技術が異なる順序で実施される場合、および/または、記述されるシステム、アーキテクチャ、装置もしくは回路が異なるように組み合わされる場合、および/または他の構成要素もしくはそれらの等価物により置換もしくは補足される場合、妥当な結果を達成することができる。したがって、他の実施形態も請求の範囲内に属する。
【符号の説明】
【0061】
21 被走査物体描写モジュール
22 対象領域能動取得モジュール
23 対象領域受動取得モジュール
24 調整モジュール
25 主成分分析モジュール
27 所望形状取得モジュール
29 走査パラメータ設定モジュール
E 終了点
S 開始点
I 対象領域
P 制御点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8