特許第6548251号(P6548251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548251
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】車体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/00 20060101AFI20190711BHJP
   B62D 29/04 20060101ALI20190711BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20190711BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20190711BHJP
【FI】
   B62D65/00 Z
   B62D29/04 A
   B29C67/20 P
   B29K105:04
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-51789(P2015-51789)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-168988(P2016-168988A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】313011076
【氏名又は名称】VANTECH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 徹
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−518427(JP,A)
【文献】 米国特許第04454618(US,A)
【文献】 実開昭58−188147(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/00
B29C 67/20
B62D 29/04
B29K 105/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板と裏面側の表面形状が曲面とされた内板との間に発泡材を介在させて車体を形成する車体の形成方法であり、
前記外板の裏面側に現場発泡型の2液型ウレタンフォームを吹き付けて発泡させ、次いで、前記内板裏面側の曲面形状を反転させた表面形状の型を形成すると共に、該型の表面形状をトレースし、該トレースした表面形状と同等の表面形状に前記吹き付けて発泡させた発泡材の表面側を切削し、
その後、前記内板の裏面側を前記切削した発泡材の表面形状にあわせて重ね合わせ、発泡材入り車体を形成した、
ことを特徴とする車体の形成方法。
【請求項2】
裏面側の表面形状が曲面とされた外板及び内板との間に発泡材を介在させて車体を形成する車体の形成方法であり、
前記外板あるいは内板の裏面側に現場発泡型の2液型ウレタンフォームを吹き付けて発泡させ、次いで、前記発泡材が吹き付けられていない外板あるいは内板裏面側の曲面形状を反転させた表面形状の型を形成すると共に、該型の表面形状をトレースし、該トレースした表面形状と同等の表面形状に前記吹き付けて発泡させた発泡材の表面側を切削し、
その後、前記外板あるいは内板の裏面側を前記切削した発泡材の表面形状にあわせて重ね合わせ、発泡材入り車体を形成した、
ことを特徴とする車体の形成方法。
【請求項3】
前記吹き付けて発泡させた発泡材の表面に、発泡後、切り込みを設ける、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の車体の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を形成する外板と内板との間に発泡材を内在させた車体の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用車などの車体形成に際しては、乗り心地の改善、騒音対策あるいは振動低減対策等の観点から車体の剛性を向上させることが要望されている。
そして、車体の剛性を向上させつつ軽量化を維持して補強する手段として、外板と内板の間を発泡材で内在させる補強方法が提案されていた。
例えば、車体を構成する外板と内板との間に硬質ウレタン発泡材を充填することにより車体骨格を補強する自動車の車体構造が提案されているがごときである。
【0003】
このような発泡材の充填は、壁面座屈の抑制効果も高く、いわゆる箱型構造部材の強度や剛性を著しく向上させるため、金属製補強材による車体の補強構造と比較して、車体重量を増大させることなく、剛性の向上が図れる。
そして、この場合の発泡材の発泡、充填作業は、いずれも車体塗装工程において発泡及び充填しているケースが見受けられる。
【0004】
しかしながら、上述のような従来からの発泡、充填作業では、相当な熟練作業が必要となり、そのため、場合によっては従来の発泡、充填作業で車体内部に発泡材が充填しきれない空隙が発生してしまい、発泡材による補強効果が充分でないとの課題があった。
また、前記発泡材充填作業に際し、発泡材が膨張して外板や内板が歪んでしまうことなどがあるため、前記外板や内板を型で押さえつけなければならないとの課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−362411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かくして、本発明は、上記の課題に対処すべく創案されたものであって、発泡、充填作業において、熟練作業を必要とせず、発泡、充填作業で車体内部に発泡材が充填しきれない空隙が発生することもなく、また、発泡材充填作業に際し、発泡材が膨張して外板や内板が歪んでしまうことなどがないため、外板や内板を押さえつける型を必要とせず、もって作業コストも安価になしえる車体の形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車体の形成方法は、
外板と裏面側の表面形状が曲面とされた内板との間に発泡材を介在させて車体を形成する車体の形成方法であり、
前記外板の裏面側に現場発泡型の2液型ウレタンフォームを吹き付けて発泡させ、次いで、前記内板裏面側の曲面形状を反転させた表面形状の型を形成すると共に、該型の表面形状をトレースし、該トレースした表面形状と同等の表面形状に前記吹き付けて発泡させた発泡材の表面側を切削し、
その後、前記内板の裏面側を前記切削した発泡材の表面形状にあわせて重ね合わせ、発泡材入り車体を形成した、
ことを特徴とし、
または、
裏面側の表面形状が曲面とされた外板及び内板との間に発泡材を介在させて車体を形成する車体の形成方法であり、
前記外板あるいは内板の裏面側に現場発泡型の2液型ウレタンフォームを吹き付けて発泡させ、次いで、前記発泡材が吹き付けられていない外板あるいは内板裏面側の曲面形状を反転させた表面形状の型を形成すると共に、該型の表面形状をトレースし、該トレースした表面形状と同等の表面形状に前記吹き付けて発泡させた発泡材の表面側を切削し、
その後、前記外板あるいは内板の裏面側を前記切削した発泡材の表面形状にあわせて重ね合わせ、発泡材入り車体を形成した、
ことを特徴とし、
または、
前記吹き付けて発泡させた発泡材の表面に、発泡後、切り込みを設ける、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明による車体の形成方法であれば、発泡材の発泡、充填作業において、熟練作業を必要とせず、発泡、充填作業で車体内部に発泡材が充填しきれない空隙が発生することもなく、また、発泡材充填作業に際し、発泡材が膨張して外板や内板が歪んでしまうことなどがないため、外板や内板を押さえつける型を必要とせず、もって作業コストも安価になしえるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明による車体の製造方法の実施例につき図に基づいて説明する。
【0010】
自動車などの車体は一般的に鋼板など金属部材で構成されているが、近年、車体の軽量化を企図してFRPなどの繊維強化プラスチックで形成されることがある。そして、FRPで車体を形成する場合には、車体の外板5と内板との間に発泡材7を内在させて剛性強化などを図ることが行われている。
ここで車体の形成は、例えば、屋根部、側面部、フロント部、リア部などパーツ毎に形成され、これらを接続して完成させる。
【0011】
屋根部、側面部、フロント部、リア部などパーツ毎に車両が形成される一例につきその要約を図1のフロー図を参照して説明すると、まず、例えば、FRPなど繊維強化プラスチックによって外板5あるいは内板を形成すべく、所定の型にFRPを貼り込み、例えば、約5時間ほどそのままの状態で経過させFRPを硬化させ、車体の外板5あるいは内板を形成する(ステップ100)。
【0012】
その後、例えば発泡材7として、現場発泡型の2液型ウレタンフォームを前記FRPで形成した外板5あるいは内板のいずれかの表面に吹き付け発泡させる(ステップ102)。発泡材7の発泡率は一例として30倍から100倍とする。
【0013】
発泡後、カッターなどの切削具で発泡材7の表面を井桁状に切り込みをいれる(ステップ104)。
発泡材7は膨張した後、温度の下降と共に縮む。そして、縮む際にFRPで形成した外板5などを引っ張り込んで変形させる恐れがある。そのため、前記の切れ込みを入れておけば、その切れ込みが縮み分を吸収するものとなるからである。
【0014】
その後、1時間以上経過させて完全に発泡材7を硬化させる。そして、完全に硬化したことを確認した後、発泡材7の表面切削作業に入るのである。
【0015】
図2に倣い削り装置1を示す。該倣い削り装置1は、例えば、装置の左側に倣い型設置部2が設けられ、右側に切削物設置部3が設けられている。
右側の切削物設置部3には、発泡材7が吹き付けられた外板5が、前記発泡材7を上にして設置される。
【0016】
左側の倣い型設置部2には、例えば、前記外板5に接合される内板の裏面側にワックスなどの剥離剤を塗り、その上に倣い型用の溶剤を貼り込み、硬化させて形成した倣い型14を設置する。
前記倣い型用の溶剤としてはFRPなど繊維強化プラスチックを使用することが考えられる。また、この倣い型14は何回も繰り返し使用するものであり、強度の向上のため内板の厚みより厚く形成され、さらに補強板によって補強されている。
【0017】
符号4は倣いローラであり、倣い型設置部2に設置された倣い型14の表面に接するようセットされる。
前記倣いローラ4には、長尺の連結杆8の一方側と接続されており、この連結杆8の他方側は切削物設置部3側にセットされた切削ビット9と連結されている。
よって、倣いローラ4が倣い型14の表面をなぞったとおり、すなわち表面をトレースしたとおりに切削ビット9が発泡材7の表面を切削するものとなる。
【0018】
ここで、符号10は、ガイド装置であり、倣いローラ4と切削ビット9を、ガイド部11に沿って移動できるように構成された装置である。
【0019】
そして、ガイド装置10のガイド部11に沿っての切削作業が終了したときには、連結杆8に取り付けられた締結部材13を操作し、切削すべき箇所を、前記連結杆8の長手方向へ移動して次の切削箇所での切削作業を行うことになる(ステップ106)。
【0020】
尚、倣いローラ4が倣い型14表面の凹凸部をトレースすると倣いローラ4は上下方向に揺動するが、その揺動は締結部材13を介して連結する連結杆8の軸方向を回転軸にして回転力として伝えられる。よって、前記倣いローラ4の上下方向揺動幅は連結杆8の回転力を介して切削ビット9の上下方向揺動幅として伝達することになる。
【0021】
以上のようにして発泡材7の切削が完了したときには、削り終えた発泡材7つきの外板5を装置1から外すと共に、この発泡材7の表面に接着材を塗布する。そして、あらかじめ形成してある内板を用意し、該内板を接着材が塗布された発泡材7上に重ねて接合させるのである(ステップ108)。
【0022】
この作業を、前述したパーツ毎、すなわち、屋根部、側面部、フロント部、リア部などで行った後、これらを接合して車体を完成させることになる。図3には本発明により車体を完成させた斜視図を記載してある。車体の後部に本発明の車体形成方法によって形成した車体が搭載されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による車体の形成方法を示すフロー図である。
図2】本発明による倣い削り装置の使用状態を示す斜視図である。
図3】本発明による車体が搭載された車両の斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 倣い削り装置
2 倣い型設置部
3 切削物設置部
4 倣いローラ
5 外板
7 発泡材
8 連結杆
9 切削ビット
10 ガイド装置
11 ガイド部
13 締結部材
14 倣い型
図1
図2
図3