(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、
図21に示すような従来の接続治具800aにおいて、半導体装置200入れ替えのため、押付手段820aの押付/押付解除の作業(例えば、押付手段がねじの場合にはねじ締結/締結解除の作業)を行うと、作業者の指が無垢の金属材料に接触すること等が原因で金属電極810aの表面が酸化し、こうしてできた酸化膜が抵抗成分となってしまうという問題があった。
また、半導体装置がパワーMOSFET、IGBT等のパワー系の半導体装置(該パワー系の半導体装置を一部に含むモジュールとしての半導体装置も含む)である場合には、例えば耐久性サイクル試験のような大電流を流す試験を行うことがある。酸化した状態の金属電極810aを用いて、かかる耐久性サイクル試験のような大電流を流す試験を行うと、ジュール熱の発生により金属電極810aの温度上昇を惹き起こし、その温度上昇が更に金属電極810aの酸化を加速させ、最終的には金属電極810の表面が変質して適切な試験ができなくなってしまうという問題が生じていた。
【0008】
この酸化問題に対し、別の従来の接続治具900も検討されている。別の従来の接続治具900は、端子210を有する半導体装置200に試験電流を流すための金属電極910と、金属電極910を端子210に押し付ける押付手段920とを備えた接続治具であって、金属電極910は表面にメッキ処理が施されて成るメッキ部914を有している(
図22参照。)。
別の従来の接続治具900によれば、例えば作業者の指が金属電極910に接触したとしても、金属電極910の表面にメッキ処理が施されて成るメッキ部914によって酸化が抑制されるため、上記酸化問題を解決することができる。
【0009】
しかしながら、耐酸化性の他に硬度も高める効果があるメッキ処理を施した場合(硬質クロムメッキ、無電解ニッケルメッキ等の処理)、金属電極910の表面(メッキ部914)の硬度が、メッキ処理前の硬度よりも高くなり、試験の際当該金属電極910を端子210に押し付けたとしても、金属電極910の表面(メッキ部)と端子210との間のギャップ又は空隙Gを吸収できず、十分な接触面積を確保することができずに、却って接触抵抗が増大してしまうという問題が他方で生じていた(
図22で示すG参照。)。特に、半導体装置がパワー系の半導体装置である場合、当該半導体装置の端子は、溶接により外部接続できるよう表面を硬く処理していることもあり、端子210の先端が僅かに曲がっていて平面度が悪かったり、端子210の折り曲げ角度が僅かにばらついただけで、当該端子210と金属電極910との接触を十分に取ることができなくなる(ほとんど点による接触と言ってもよい程度の接触状態)。このように、特に半導体装置がパワー系の半導体装置である場合には、接触抵抗増大の問題は更に生じやすくなっている。
この状態で大電流を流す試験を行うと、金属電極910及び端子210の接触部分を中心に温度が異常に上昇し、接続治具900をケーシングしているケース(図示せず。)の樹脂が溶解する、試験回路を構成しているケーブルの被覆が焼け焦げる、半導体装置内部のワイヤーボンディングが溶解して半導体装置を損傷する等の不具合が生じて、試験の遂行が不能となるばかりか、半導体装置(出荷が予定されている製品でもある)を破壊してしまう可能性もあることが判明した。
【0010】
そこで、本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、通電試験に、メッキ処理を施した結果表面の硬度が高くなった金属電極を用いる場合であっても、金属電極と試験対象となる半導体装置の端子との間の接触抵抗を低減し、試験電流による接続治具の温度上昇を抑制することができる接続治具を提供することを目的とする。また、このような接続治具を用いた半導体装置の通電試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、上記した問題(耐酸化性を高めるために金属電極にメッキ処理を施すことと、それと引き換えに上記接触面積が十分に確保できなくなり却って温度上昇を惹き起こすという背反した問題)を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属板を導入しつつ、メッキ部と金属板との間の適切な関係を見出すことで上記した問題が解決できることに想到し、本発明を完成させるに至った。本発明は、以下の要素からなる。
【0012】
[1]本発明の接続治具は、端子を有する半導体装置に試験電流を流すための金属電極と、前記金属電極を前記端子に向けて押し付ける押付手段とを備えた接続治具であって、前記金属電極は表面にメッキ処理が施されて成るメッキ部を有し、前記端子より硬度が低く、かつ、前記メッキ部より硬度が低い金属材料からなり、前記金属電極を前記端子に向けて押し付ける際、前記金属電極と前記端子との間に配置する金属板をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
[2]本発明の接続治具においては、前記メッキ部を構成する材料は金属板を構成する材料よりも耐酸化性が高いことが好ましい。
【0014】
[3]本発明の接続治具において、前記メッキ部は硬質クロムメッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理、又は硬質金メッキ処理によって形成されて成ることが好ましい。
【0015】
[4]本発明の接続治具において、前記金属板は、無垢の銅からなる板であることが好ましい。
【0016】
[5]本発明の接続治具において、前記半導体装置は、パワー系半導体装置又は該パワー系半導体装置を一部に含むモジュールとしての半導体装置であり、前記端子は、溶接により外部接続される端子であることが好ましい。
【0017】
[6]本発明の接続治具においては、前記金属電極及び前記金属板が接触する面に垂直な方向を厚さ方向とし、前記金属電極の厚さをt1とし、前記金属板の厚さをt2としたときに、t1>t2の関係にあることが好ましい。
【0018】
[7]本発明の接続治具においては、前記金属電極を前記端子に向けて押し付けて前記金属電極、前記金属板及び前記端子を互いに接触させたときの前記金属電極と前記金属板との接触面積をA1とし、前記金属板と前記端子との接触面積をA2としたときに、A1>A2の関係にあることが好ましい。
【0019】
[8]本発明の接続治具において、前記端子は、前記半導体装置の電源の入力端子であり、前記金属電極は、通電試験機の電源の出力端子と電気的に接続するためのものであることが好ましい。
【0020】
[9]本発明の接続治具において、前記半導体装置は、第1端子と第2端子とを備え、前記金属電極は、前記第1端子と前記第2端子との間を電気的に導通させるものであることが好ましい。
【0021】
[10]本発明の半導体装置の通電試験方法は、半導体装置の端子に試験電流を流して前記半導体装置の電気的特性を試験する半導体装置の通電試験方法であって、表面にメッキ処理が施されて成るメッキ部を有する金属電極と、前記端子より硬度が低く、かつ、前記メッキ部より硬度が低い金属材料からなる金属板と、前記金属電極を前記端子に押し付ける押付手段と、を準備する準備ステップと、試験対象となる半導体装置を準備し、該試験対象となる半導体装置の端子と前記金属電極の間に前記金属板を配置する配置ステップと、前記押付手段によって前記金属電極を前記端子に向けて押し付ける押付ステップと、前記金属電極を用い試験電流を流して前記半導体装置の電気的特性を試験する試験ステップとを、この順序で含むことを特徴とする。
【0022】
[11]本発明の半導体装置の通電試験方法において、前記準備ステップでは、前記金属電極及び前記金属板が接触する面に垂直な方向を厚さ方向とし、前記金属電極の厚さをt1とし、前記金属板の厚さをt2としたときに、t1>t2の関係にある前記金属電極及び前記金属板を準備することが好ましい。
【0023】
[12]本発明の半導体装置の通電試験方法において、前記準備ステップでは、前記金属電極として、前記メッキ部が硬質クロムメッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理又は硬質金メッキ処理によって形成された金属電極を準備し、かつ、前記金属板として、無垢の銅からなる板を準備することが好ましい。
【0024】
[13]本発明の半導体装置の通電試験方法において、前記通電試験は、試験対象となる半導体装置を入れ替えながら繰り返し行われる試験であり、前記金属板の交換頻度は、前記金属電極の交換頻度よりも高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の接続治具によれば、端子より硬度が低く、かつ、メッキ部より硬度が低い金属材料からなり、金属電極を端子に押し付ける際、金属電極と端子との間に配置する金属板を備えるため、金属電極が端子に押し付けられた際には、金属板がメッキ部の形状及び端子の形状にそれぞれ従って変形して、金属電極のメッキ部と端子との間のギャップ又は空隙を埋めることができ、金属電極と端子との間の接触面積を十分確保することができる。このようにして、通電試験に、メッキ処理を施した結果表面の硬度が高くなった金属電極を用いる場合であっても、従来よりも、金属電極と半導体装置の端子との間の接触抵抗を低減し、試験電流による接続治具の温度上昇を抑制することができる。
【0026】
本発明の半導体装置の通電試験方法によれば、本発明の接続治具を用いて通電試験を行うため、従来よりも低減された接触抵抗の下で通電試験を実施することができ、接続治具の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態1に係る接続治具100に用いる金属電極110を端子210に向けて押し付ける様子を示す図である。
図1(a)は押付を行う前の様子を示す断面図であり、
図1(b)は押付を行っている様子を示す断面図である。なお、符号300は押付を行う際の力学上の壁を示す。
【
図2】実施形態1の金属電極110、金属板130及び端子210についての厚さ及び面積を説明するために示す図である。
図2(a)は、金属電極110の厚さt1及び金属板130の厚さt2の定義を説明するために示す断面図である。
図2(b)は、金属電極110と金属板130との接触面積A1の定義、及び、金属板130と端子210との接触面積A2の定義を説明するために示す断面図である。また、
図2(b)は金属電極110を端子210に向けて押し付けた際の押付力F1の様子も示す。
【
図3】実施形態1に係る接続治具100を用いた通電試験の構成を説明するために示す図である。
図3(a)は通電試験を行う接続ブロック図の一例である。
図3(b)は、
図3(a)において点線で囲った部分を拡大した断面図であり、
図3(c)は金属電極110を端子210に向けて押し付けている様子を示す断面図である。
【
図4】実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法のフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法を説明するために示す図である。
図5(a)〜
図5(c)は実施形態1に係る接続治具100を用いて各ステップを実施する様子を示す断面図であり、
図5(d)は通電試験の構成の一例を示す接続ブロック図である。
【
図6】実施形態2に係る接続治具100aを説明するために示す図である。
図6(a)は、接続治具100aを用いた通電試験の構成の一例を示す接続ブロック図。
図6(b)は、
図6(a)において点線で囲った部分を拡大した断面図である。
【
図7】実施形態3に係る接続治具100bを説明するために示す図である。
図7(a)は、押付を行う前の状態の接続治具100b及び半導体装置200の斜視図であり、
図7(b)は、押付を行っている状態の接続治具100b及び半導体装置200の斜視図である。
【
図8】実施形態3に係る接続治具100bを説明するために示す図である。
図8(a)は、押付を行っている状態の接続治具100b及び半導体装置200の平面図である。
図8(b)は、
図8(a)におけるB−B’断面を示す断面図である。
【
図9】実施形態4に係る接続治具100cを説明するために示す図である。
図9(a)は、押付を行う前の状態の接続治具100c及び半導体装置200の斜視図であり、
図9(b)は、押付を行っている状態の接続治具100c及び半導体装置200の斜視図である。
【
図10】実施形態4に係る接続治具100cを説明するために示す図である。
図10(a)は、押付を行っている状態の接続治具100c及び半導体装置200の平面図である。
図10(b)は、
図10(c)におけるC−C’断面を示す断面図である。
【
図11】実験例1を実施するための接続ブロック図である。
【
図12】実験例1の試料1〜試料4に係る実験結果を示すグラフである。グラフの横軸は経過時間を、縦軸は温度をそれぞれ表している。以下、
図13、
図16及び
図17も同様である。
【
図13】実験例1の試料5〜試料8に係る実験結果を示すグラフである。
【
図14】実験例1の実験結果を説明するために示す表である。
【
図15】実験例2及び実験例3を実施するための接続ブロック図である。
【
図16】実験例2の試料9〜試料12に係る実験結果を示すグラフである。
【
図17】実験例2の試料13〜試料16に係る実験結果を示すグラフである。
【
図18】実験例2の実験結果を説明するために示す表である。
【
図19】実験例3の実験結果を説明するために示す表である。
【
図20】従来の接続治具800を用いた通電試験の構成を説明するために示す図である。
図20(a)は通電試験を行う接続ブロック図の一例である。
図20(b)は、
図20(a)において点線で囲った部分を拡大した断面図であり、
図20(c)は金属電極810を端子210に向けて押し付けている様子を示す断面図である。
【
図21】従来の接続治具800aを用いて、半導体装置200の入れ替えのために、押付手段820aの押付/押付解除(押付手段820aがねじの場合にはねじ締結/締結解除)の作業を行う様子を示す斜視図である。
【
図22】別の従来の接続治具900を説明するために示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の接続治具及び接続治具を用いた半導体装置の通電試験方法について、図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、構成等を示す図は全て模式図であり、実際の大きさ、厚さ等を必ずしも反映しているものではない。
【0029】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る接続治具100の構成
実施形態1に係る接続治具100は、
図1に示すように、端子210を有する半導体装置200に試験電流を流すための金属電極110と、金属電極110を端子210に向けて押し付ける押付手段120とを備え、さらに金属板130を備える。なお、符号300は力学上の壁を示している。接続治具100は、ケース140(図示せず。)によってケーシングされた状態で用いてもよいし、ケーシングをしない状態で用いてもよい。
【0030】
(1)金属電極110
金属電極110は、例えば試験機400(図示せず。)に接続されるなどして、半導体装置200の電気的特性を試験する際には試験回路の一部を構成する。金属電極110には大電流が流されることがあるため、金属電極110は、抵抗率が小さい金属材料からなることが好ましい。金属電極110の材料として、例えば銅、銀等を採用することができる。
また、金属電極110は、後述するように、押付手段120によって押付力F1が加えられ(
図2(b)参照。))、かつ、金属板130を介してかかる押付力F1を端子210に伝えるものであるため、ある程度の剛性を有していることが好ましい。
【0031】
金属電極110には、表面にメッキ処理が施されて成るメッキ部114を有する。
実施形態1におけるメッキ部114は、金属電極110のうち、少なくとも金属板130に対向する面にメッキ処理が施され形成された部分をいい、メッキ部114は金属電極110の一部を構成している。
【0032】
メッキ部114は、金属板130を構成する金属材料よりも耐酸化性が高い材料から構成されているものであれば、いかなるメッキ処理によるものでもよい。
メッキ部114は、硬質クロムメッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理、金メッキ処理等によって形成することができる。硬質クロムメッキ処理は、例えば、銅を素地として電気メッキ法で硬質クロムメッキを施すことによって行う。
【0033】
なお、メッキ処理は、半導体装置の入れ替えに伴う作業に対して、より耐酸化性を高めるため、金属電極110の表面全体に渡って施されることが好ましい。
参考までに、メッキ部114の硬度は、素地や処理の仕方によるが、硬質クロムメッキによるものの場合にはおおよそ400Hv〜2000Hvの範囲内にあり、無電解ニッケルメッキによるものの場合にはおおよそ160Hv〜600Hvの範囲内にあり、硬質金メッキによるものの場合にはおおよそ200Hv〜300Hvの範囲内にある。
【0034】
なお、本明細書において、「硬度」はビッカース硬度であることを前提として説明する。参考までに、材料の「硬度」の値は、当該材料の純度、メッキ処理や熱処理の仕方等によっても依存するため、一義的に固定的には表せない。
【0035】
(2)金属板130
金属板130は、金属電極110を端子210に向けて押し付ける際、金属電極110と端子210との間に配置されるものであり、端子210より硬度が低く、かつ、メッキ部114より硬度が低い金属材料からなる。
【0036】
金属板130の材料は、金属板130が金属電極110と十分な接触面積をもって密着でき、かつ、金属板130が端子210と十分な接触面積をもって密着できる程度の塑性があり、並びに、抵抗率が相当程度に低い金属材料を採用することができる。
金属板130は、無垢の銅からなる板であることが好ましい。この他に金属板130として、例えば、無垢の金等を採用することができる。
【0037】
金属板130の厚さt2は、金属電極110におけるメッキ部114の硬度や押付手段120による押付力に依り、また、試験電流の大小にも依るが例えば試験電流が120A〜130Aの場合には、おおよそ0.20mm〜0.40mmの範囲内にあり、さらには0.25mm〜0.35mmの範囲内にあることが好ましい。
なお、金属板130の硬度は、おおよそ10Hv〜150Hvの範囲内にあり、さらには、20Hv〜70Hvの範囲内にあることが好ましい。
【0038】
(3)押付手段120
押付手段120としては、金属電極110を半導体装置200の端子210に向けて押し付ける機能があればどのような手段でも採用することができる。例えば、ねじ、板バネ、ロボットハンドなど進退機構を有するヘッド等、金属電極110に対し押付力F1を加えることができるものであればいずれの手段でもよい。
【0039】
(4)半導体装置200
半導体装置200としては、後工程の電気的特性試験の際に試験電流が流されるものであればいずれの半導体装置も実施形態1に適用できるが、主に大電流を流す試験を行う可能性が高いパワーMOSFET、IGBT等のパワー系の半導体装置は特に好適である。また、実施形態1における半導体装置200の中には、パワー系の半導体装置を一部に含むモジュール(電源モジュール等)としての半導体装置もこれに含まれる。
【0040】
半導体装置200の端子210は、後工程の電気的特性試験の際に試験電流が流される端子である。
端子210は、電気的特性試験の際だけでなく、半導体装置200が電子機器のシステムに組み込まれて通常に動作する際にも電流が流される端子そのものであってもよい(例えば、半導体装置200の電源入力用の端子、各種出力用の端子等)。
半導体装置200の端子210の仕様は、基本的に個々の半導体装置の仕様に依る。例えば、実施形態1においては、半導体装置のリード端子は、厚さがおおよそ0.25mm〜0.7mmの範囲内にあり、表面の硬度はおおよそ1000Hv以上の範囲内にあるものを用いている。
【0041】
また、端子210は、溶接により外部接続される端子であってもよい。
【0042】
(5)構成要素の相対的な関係
実施形態1に係る接続治具100においては、
図2(a)に示すように、金属電極110及び金属板130が接触する面に垂直な方向を厚さ方向とし、金属電極110の厚さをt1とし、金属板130の厚さをt2としたときに、t1>t2の関係にある。
【0043】
また、実施形態1に係る接続治具100については、
図2(b)に示すように、金属電極110を端子210に向けて押し付け金属電極110、金属板130及び端子210を互いに接触させたときの金属電極110と金属板130との接触面積をA1とし、金属板130と端子210との接触面積をA2としたときに、A1>A2の関係にある。
【0044】
2.実施形態1に係る接続治具100を用いた半導体装置の通電試験の構成
実施形態1に係る接続治具100を用いた半導体装置の通電試験のハードウェア構成は、少なくとも接続治具100、試験機400及び試験対象となる半導体装置200から構成される(
図3参照。)。
【0045】
実施形態1の端子210は、半導体装置200の電源の入力端子であり、金属電極110は、試験機400の電源の出力端子と電気的に接続するためのものであってもよい。
一例として、
図3に示すいわゆるバイアスバーによる通電試験の構成を以下に説明する。
【0046】
試験機400は電源の出力端子412,414を有し、それらの電源の出力端子に対応するように半導体装置200にも電源が入力される端子210r,210sを有している。
試験機の電源の出力端子412は、リード線等の配線手段によって、金属電極110と電気的に接続されている。金属電極110は、金属板130を挟んで壁300に対向するように配置されている。
そして、半導体装置200の端子210rが金属電極110と壁300との間に配置され、押付手段120が金属電極110を端子210に向けて所定の力で押し付けることができる(
図3(c)参照。)。かかる構成により、試験機400の電源の出力端子412と半導体装置200の電源が入力される端子210rとが電気的に接続される。
同様な構成で、試験機400の電源の出力端子414についても半導体装置200の別の電源(−側)が入力される端子210sとの間で電気的に接続することができる。
【0047】
上記した接続が構成された下で、試験機400から、電源の出力端子412、金属電極110(+側)、金属板130(+側),端子210r、半導体装置200の本体、端子210s、金属板130(−側)、金属電極110(−側)、電源の出力端子414の経路で試験電流が流され、半導体装置200の通電試験を行うことができる。
【0048】
3.実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法
次に、実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法を、
図4及び
図5を用いながら説明する。
【0049】
実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法は、半導体装置200の端子210に試験電流を流して半導体装置200の電気的特性を試験する半導体装置の通電試験方法であって、準備ステップS10と、配置ステップS20と、押付ステップS30と、試験ステップS40とを、この順序で含む(
図4参照。)。
【0050】
(1)準備ステップS10では、表面にメッキ処理が施されて成るメッキ部114を有する金属電極110と、端子210より硬度が低く、かつ、メッキ部114より硬度が低い金属材料からなる金属板130と、金属電極110を端子210に押し付ける押付手段120と、を準備する(
図5(a)参照。)。
金属電極110、メッキ部114、金属板130及び押付手段120の詳細は、上記「1.実施形態1に係る接続治具100の構成」に譲る。
【0051】
(2)配置ステップS20では、試験対象となる半導体装置200を準備し、該試験対象となる半導体装置200の端子210と金属電極110の間に金属板130を配置する(
図5(b)参照。)。
なお、後述する実施形態3(
図7及び
図8参照。)又は実施形態4(
図9及び
図10参照。)で示すとおり、端子210を挟み込むように、端子の両側に複数の金属板130及び複数の金属電極110を配置することもできる。
【0052】
(3)押付ステップS30では、金属板130を介して、押付手段120によって金属電極110を端子210に向けて押し付ける(
図5(c)参照。)。
【0053】
(4)試験ステップS40では、金属電極110を用い、試験電流を流して半導体装置200の電気的特性を試験する(
図5(d)参照。)。
【0054】
半導体装置200の電気的特性の試験は、大電流を流す通電試験であれば、いずれの試験でも適用できるが、例えば、耐久性サイクル試験を実施することができる。
耐久性サイクル試験は、主にパワーMOSFET、IGBT等のパワー系の半導体装置の電気的特性を評価・試験するものであり、半導体装置の温度をモニタしながら、出力端子のデータをロギングしつつ、半導体装置の入力端子に所定の制御を行い、特定のモニタ因子(定電流、定温度等)に対する信頼性についての評価・試験を行うものである。
耐久性サイクル試験の仕様は、電子機器のシステムの要求される仕様によって変わるものであり一定のものはないが、例えば、試験対象となる半導体装置に対し、おおよそ100A〜140Aの範囲内にある所定の電流を10秒〜40秒の範囲内にある所定の時間だけ通電し、その後同様の所定の時間だけ電流を遮断するという動作を繰り返し行いながら、半導体装置の温度が管理範囲(例えば70〜90℃)内にあることをモニタリングしつつ、短い場合は1日程度、長い場合は1週間〜数週間程度の期間に渡って実行するといった仕様などがある。
【0055】
かかる半導体装置の通電試験方法において、準備ステップS10では、金属電極110及び金属板130が接触する面に垂直な方向を厚さ方向とし、金属電極110の厚さをt1とし、金属板130の厚さをt2としたときに、t1>t2の関係にある金属電極110及び金属板130を準備することが好ましい(
図2(a)参照。)。
【0056】
また、実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法において、準備ステップS10では、金属電極110として、メッキ部114が硬質クロムメッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理又は硬質金メッキ処理によって形成された金属電極110を準備し、かつ、金属板130として、無垢の銅からなる板を準備することが好ましい。
【0057】
さらに、実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法において、通電試験は、試験対象となる半導体装置200を入れ替えながら繰り返し行われる試験であり、金属板130の交換頻度は、金属電極110の交換頻度よりも高いことが好適である。
【0058】
また、金属板130の厚さは、累積通電時間が長くなることが予想される場合ほど、厚くすることが好ましい。
耐久性サイクル試験における例を挙げると、例えば1日程度の連続試験を行う場合には所定の厚さの金属板を用い、1週間程度の連続試験を行う場合には、前記1日程度の連続試験に用いる金属板の所定の厚さよりも厚い別の金属板を用いる、という使い分けを行うことが好ましい。
金属板130として比較的薄いものを用いた場合には、使用開始当初は温度上昇の抑制をある程度期待することができるものの、熱容量が比較的小さいこともあり、累積通電時間が長くなると金属板130自体の発熱等による酸化が加速してしまい、結果的に接触抵抗が大きくなってしまい、温度上昇の抑制に寄与できなくなってしまうからである。
【0059】
4.実施形態1に係る接続治具及び半導体装置の通電試験方法の効果
実施形態1に係る接続治具100によれば、端子210より硬度が低く、かつ、メッキ部114より硬度が低い金属材料からなり、金属電極110を端子210に押し付ける際、金属電極110と端子210との間に配置する金属板130を備えるため、金属電極110が端子210に押し付けられた際には、金属板130がメッキ部114の形状及び端子210の形状にそれぞれ従って変形して、金属電極110のメッキ部114と端子210との間のギャップ又は空隙G(
図22参照。)を埋めることができ(
図1(b)、
図2(b)、
図3(c)等参照。)、金属電極110と端子210との間の接触面積を十分確保することができる。このようにして、通電試験に、メッキ処理を施した結果表面の硬度が高くなった金属電極を用いる場合であっても、従来よりも、金属電極と半導体装置の端子との間の接触抵抗を低減し、試験電流による接続治具の温度上昇を抑制することができる。
【0060】
また、実施形態1に係る接続治具100によれば、メッキ部114を構成する材料は金属板130を構成する材料よりも耐酸化性が高いことから、半導体装置200の入れ替えを頻繁に行い作業者の指の接触等が頻繁にあったとしても、金属板130より金属電極110の方が酸化しづらいため、比較的高価で構造が複雑な金属電極110を長期に渡って交換することなく、そのまま通電試験に用い続けることができる。
【0061】
また、実施形態1に係る接続治具100によれば、メッキ部114が硬質クロムメッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理、又は硬質金メッキ処理によって形成されることから、より耐酸化性の高い金属電極110を提供することができ、酸化問題の解決に対し厳重かつ高度な要求がある場合には、これに応えることができる。
【0062】
また、実施形態1に係る接続治具100によれば、金属板130は、無垢の銅からなる板であることから、無垢の銅が有する適度な塑性により、メッキ部114の形状及び端子210の形状にそれぞれ従って変形することができ、ギャップ又は空隙Gを埋めることができ、金属電極110と金属板130との間の密着度、及び、金属板130と端子210との間の密着度を高めることができ、ひいては、金属電極110と端子210との間の接触面積をより一層確保することができる。一方、無垢の銅は比較的高い導電性(比較的低い抵抗率)を有するため、大電流を流す試験に使用する導電物としても好適である。このように無垢の銅は、上記の接触面積についての効果とともに、導電性が奏する効果をバランスよく得ることができる。
【0063】
また、半導体装置200は、パワー系半導体装置又は該パワー系半導体装置を一部に含むモジュールとしての半導体装置であり、端子210が、溶接により外部接続される端子である場合には、端子210の表面の硬度を比較的高く処理していることが多いため、実施形態1に係る接続治具100によれば、従来において問題となっていた接触面積が小さくなり接触抵抗が増大する問題、それに伴う温度上昇の問題を、より好適に解決することができる。
【0064】
また、実施形態1に係る接続治具100によれば、金属電極110及び金属板130が接触する面に垂直な方向を厚さ方向とし、金属電極110の厚さをt1とし、金属板130の厚さをt2としたときに、t1>t2の関係にあるため、金属電極110は、t1≦t2の場合よりも高い剛性を維持しやすい。このため、金属電極110は、押付手段120から押付力F1を加えられたとき、その力による自らの変形は少ない状態で、少ないロスで金属電極に当該力を伝えることができる(
図2(b)参照。)。
【0065】
また、実施形態1に係る接続治具100によれば、金属電極110を端子210に向けて押し付け金属電極110、金属板130及び端子210を互いに接触させたときの金属電極110と金属板130との接触面積をA1とし、金属板130と端子210との接触面積をA2としたときに、A1>A2の関係にあるため、押付手段120によって金属電極110に加えられた押付力F1は、金属板130の端子側の面(面積はA2)において、金属電極110の金属側の面(面積はA1)における圧力よりも高い圧力に変換され、端子210に力を伝えることができる。このため、金属電極110と金属板130との間の密着度、及び、金属板130と端子210との間の密着度を高めることができ、ひいては、金属電極110と端子210との間の接触面積をより一層確保することができる(
図2(b)参照。)。
【0066】
また、実施形態1に係る接続治具100によれば、端子210は、半導体装置200の電源の入力端子であり、金属電極110は、通電試験機(試験機400)の電源の出力端子と電気的に接続するためのものであるため、接続治具100を用いてバイアスバーによる通電試験を実施することができる。
【0067】
また、実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法によれば、実施形態1に係る接続治具100を用いて通電試験を行うため、従来よりも低減された接触抵抗の下で通電試験を実施することができ、接続治具の温度上昇を抑制することができる。
【0068】
また、実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法によれば、t1>t2の関係にある金属電極110及び金属板130を準備することにより、上記したように、金属電極はt1≦t2の場合よりも高い剛性を維持しやすく、押付手段120から押付力F1を加えられたとき、その力による自らの変形は少ない状態で、少ないロスで金属電極110に当該力を伝えることができ、金属電極110と端子210との間の接触面積をより一層確保することができる。
【0069】
また、実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法によれば、準備ステップS10で、金属電極110として、メッキ部114が硬質クロムメッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理又は硬質金メッキ処理によって形成された金属電極110を準備し、かつ、金属板130として、無垢の銅からなる板を準備することから次の効果を得ることができる。すなわち、上記したように、(イ)硬質クロムメッキ、無電解ニッケル又は硬質金によるメッキ処理されたメッキ部を有することにより、半導体装置の交換による酸化問題を高度に解決することができる。(ロ)メッキ処理を施した結果硬度が高くなった金属電極110を用いる場合であっても、無垢の銅からなる金属板130によって、金属電極110と金属板130との間の密着度、及び、金属板130と端子210との間の密着度を高めることができ、ひいては、金属電極110と端子210との間の接触面積をより一層確保することができる。(ハ)そしてまた、上記したように無垢の銅により導電性を得ることができる。(ニ)上記した(イ)〜(ハ)をバランスよく得ることができ、大電流を流す試験を適切に実施することができる。
【0070】
さらに、実施形態1に係る半導体装置の通電試験方法の適用対象としては、通電試験が、試験対象となる半導体装置200を入れ替えながら繰り返し行われる試験であり、金属板130の交換頻度が、金属電極110の交換頻度よりも高い試験である場合は、特に好適である。実施形態1に係る接続治具100及び半導体装置の通電試験方法によれば、半導体装置200の入れ替えのために作業者の指の接触が頻繁にあったとしても、金属電極110は耐酸化性が高いため何度も通電試験に用い続けることができ、長期に渡って高価で構造が複雑な金属電極110を用い続けることができて経済的にも有利である。一方、比較的安価で構造が単純な金属板130については、その交換頻度を金属電極110の交換頻度よりも高い条件(場合によっては、半導体装置200の入れ替えの度に交換し、使い捨てとしてもよい)で試験を進めるとすることで、全体として経済的にも合理的な試験を行うことができる。
【0071】
[実施形態2]
実施形態2に係る接続治具100aは、基本的には実施形態1に係る接続治具100と同様の構成を有するが、金属電極の構成、及び、接続の対象となる半導体装置の端子の構成が実施形態1に係る接続治具100とは異なる。すなわち、実施形態2に係る接続治具100aは、
図6の100aで示すように、半導体装置200は、第1端子と第2端子とを備え、金属電極110aは、第1端子と第2端子との間を電気的に導通させる構成とするものである。なお、実施形態2における「第1端子」及び「第2端子」には、半導体装置200のいずれの端子にも適用することができ、例えば、
図6における端子210t又は端子210uのうち、一方を第1端子、他方を第2端子として適用することができる。
【0072】
実施形態2に係る接続治具100aを用いることにより、金属電極110aを使って、半導体装置200の第1端子と第2端子との間を電気的にショートすることができ、いわゆるショートバーによる通電試験を実施することができる(
図6参照。)。
なお、実施形態2においては2つの端子間をショートするための構成について説明をしているが、3つ以上の端子間をショートする構成のものであってもよい。
また、
図6においては、金属板130aは端子210tと端子210uとの間を一体的な板によって導通する構成になっているが、端子210t用の金属板130aと端子210u用の金属板130aをそれぞれ独立して準備してもよい。
【0073】
なお、実施形態2に係る接続治具100aによれば、金属電極110aを使って、端子210tと端子210uとの間を電気的にショートすることができる金属電極110aの構成以外は実施形態1に係る接続治具100の構成と基本的に同様の構成を有するため、実施形態1に係る接続治具100が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0074】
[実施形態3]
実施形態3に係る接続治具100bは、基本的には実施形態1に係る接続治具100と同様の構成を有するが、端子210を両側から挟み込むようにして金属板130b及び金属電極110bを配置するものである点が、実施形態1に係る接続治具100とは異なる。すなわち、実施形態3に係る接続治具100bは、端子210を両側から挟み込むようにして、外側から、金属電極110b及び金属板130bがそれぞれ配置されており、端子210r(又は端子210s)は半導体装置200の電源の入力端子であり、複数の金属電極110bは、それぞれ、通電試験を行う試験機400(図示せず。)の同一の電源の出力端子412(又は414)と電気的に接続されている構成となっている(
図7及び
図8、特に
図8(b)参照。)。
金属板130bの形状としては、平板状のものの他、コの字型等折り返された板も採用することができる(
図7(a)参照。)。この場合、コの字型に折り返された板の複数の面のうち、金属電極110bと端子210rの間に配置される面を実施形態1におけるそれぞれ別個の金属板130bとして用いる。このような、コの字型の金属板130bは対向する2つの金属電極110bによって形成されたソケット状の空間に落とし込まれて使用されてもよい(
図7(a)及び
図8(b)参照。)。
【0075】
実施形態3に係る接続治具100bによれば、端子210r(又は端子210s)を両側から挟み込むようにして、外側から金属電極110b及び金属板130bがそれぞれ配置され、押付力を両側の金属電極110bに加えるため、金属電極110bと金属板130bとの間の密着度、及び、金属板130bと端子210r(又は端子210s)との間の密着度を高めることができ、ひいては、金属電極110bと端子210r(又は端子210s)との間の接触面積を、実施形態1の場合に比べ、より一層確保することができる。
また、実施形態3に係る接続治具100bによれば、
図8(b)に示すように、試験機と端子210s(又は端子210r)との間には、R1及びR2の2つの電流経路を確保することができ、実施形態1に比べて電流経路のインピーダンスを全体として低減することができる。したがって、実施形態3に係る接続治具100bは、大電流を流す試験により好適な接続治具として提供することができる。
【0076】
なお、実施形態2に係る接続治具100aによれば、端子210r(又は端子210s)を両側から挟み込む構成以外の構成は実施形態1に係る接続治具100の構成と基本的に同様の構成を有するため、実施形態1に係る接続治具100が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0077】
[実施形態4]
実施形態4に係る接続治具100cは、基本的には実施形態2に係る接続治具100aと同様の構成を有するが、端子210t(,210u又は210v)を両側から挟み込むようにして金属板130c及び金属電極110cを配置するものである点が、実施形態2に係る接続治具100aとは異なる。
すなわち、実施形態4に係る接続治具100cは、第1端子及び第2端子を両側から挟み込むようにして、外側から、金属電極110c及び金属板130cがそれぞれ配置されており、半導体装置200は第1端子と第2端子とを備え、複数の金属電極110cは、第1端子と第2端子との間を電気的に導通させる構成となっている(
図9及び、
図10参照。)。
なお、実施形態4における「第1端子」及び「第2端子」には、半導体装置200のいずれの端子にも適用することができ、例えば、
図9及び
図10における端子210t、端子210u及び端子210vの3つの端子のうち、選択したいずれか1つの端子を第1端子、残った2つの端子のうち1つの端子を第2端子として適用することができる。
なお、
図9及び
図10において、金属電極110cは3つの端子間をショートする構成の例を示しているが、2つの端子間をショートする構成のものであっても、4つ以上の端子間をショートする構成のものであってもよい。
【0078】
実施形態4に係る接続治具100cによれば、実施形態3と同様に、端子210t(,210u又は210v)を両側から挟み込むようにして押付を行っているため、金属電極110cと金属板130cとの間の密着度、及び、金属板130cと端子210t(,210u又は210v)との間の密着度を高めることができ、ひいては、金属電極110cと端子210t(,210u又は210v)との接触面積を、実施形態2の場合に比べ、より一層確保することができる。
また、実施形態4に係る接続治具100bによれば、実施形態3と同様に2つの電流経路を確保することができ、実施形態2に比べて電流経路のインピーダンスを全体として低減することができる。したがって、実施形態4に係る接続治具100cは、大電流を流す試験により好適な接続治具として提供することができる。
【0079】
なお、実施形態4に係る接続治具100cによれば、端子を両側から挟み込む構成以外の構成は実施形態2に係る接続治具100aの構成と基本的に同様の構成を有するため、実施形態2に係る接続治具100aが有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0080】
[実験例1]
実験例1は、本発明に係る接続治具(バイアスバー用)及び半導体装置の通電試験方法を半導体装置のサイクル試験に適用したときに、従来よりも接続治具の温度上昇を抑制することができること示す実験例である。
【0081】
1.試料の準備
実施形態3に係る接続治具100bと同様の両側から挟み込むタイプのバイアスバー用の接続治具を作製し、メッキ部114が硬質クロムメッキ処理によって形成されたものを試料1(実施例)とし、無電解ニッケルメッキ処理によって形成されたものを試料3(実施例)とし、硬質金メッキ処理によって形成されたものを試料5(実施例)とした。また、金属電極110bにメッキ部を有しないものを試料7(比較例)とし、さらに、金属板130bを配置しないものを試料2(比較例)、試料4(比較例)、試料6(比較例)及び試料8(比較例)とした(
図14参照。)。
【0082】
金属板130bとして、無垢の銅からなるコの字型の板(厚さt2=0.3mm)を用いた(
図11参照。)。
半導体装置200として、パワーMOSFET(新電元工業製 SB30)を用いた。半導体装置200の端子210は、半導体装置本体からいわゆるDIP型の形状で折り曲げられたものであり、メッキ部114が、タフピッチ鋼を素地として、ニッケルによる下地メッキ、更にニッケルによる仕上げメッキの処理を施したものを用いた。
【0083】
2.実験方法
(1)構成
図11に示すように、試験機400の試験制御信号端子420と半導体装置200の制御用端子220との間を接続し、試験機400の電源の出力端子412(+側)と金属電極110b(+側)との間をリード線によって接続し、電源の出力端子414(−側)と金属電極110b(−側)との間も同様に接続した。また、ショートが必要な端子は溶接にて直接接続した。さらに、熱電対TC1を、接続治具100bの金属電極110b(メッキ部114)の表面であって金属板130bと接触する面の近傍の位置に、メッキ部114に接触するように配置した。熱電対TC1から引き出された2本のリード線を、温度モニタ500のセンサ入力端子510,512にそれぞれ接続した。
半導体装置200の端子210r,210sを接続治具100bに配置し、押付手段120bであるねじ(六角穴付きボルト M2.5)を締結することによって金属電極110bを端子210に向けて押し付けた。
なお、試験機400及び温度モニタ500は少なくとも実験例1〜実験例3に必要な所定の制御、ロギング及びモニタを行うことができるものであり、内作のものを用いた。
【0084】
(2)通電試験
上記のように実験環境を構成した上で、試験機400を用いて、半導体装置200の電源の入力端子210r(+側)及び210s(−側)に対し、It=126Aの電流を30秒間通電し、その後30秒間遮断するという動作を繰り返し実行させた。その間、熱電対TC1及び温度モニタ500を用いて、金属電極110bの温度を観測し、グラフにプロットした。
3.実験結果
図12及び
図13からも明らかなように、金属板130bを配置した場合(試料1、試料3及び試料5)では、金属板を配置しない場合(試料2、試料4及び試料6)よりも金属電極の温度が低くなっている。全体を俯瞰すると、
図14の表で示すように、3種のメッキ種類のいずれの場合においても、本発明の接続治具100bによれば、従来よりも接続治具の温度上昇を抑制することができることが確認された。
【0085】
[実験例2]
実験例2は、基本的には実験例1と同様の実験内容であるが、接続治具の態様がショートバー型である点が異なる。
【0086】
1.試料の準備
実施形態4に係る接続治具100cと同様の両側から挟み込むタイプのショートバー用の接続治具を作製し、実験例1と同様に、メッキ部114が硬質クロムメッキ処理によって形成されたものを試料9(実施例)とし、無電解ニッケルメッキ処理によって形成されたものを試料11(実施例)とし、硬質金メッキ処理によって形成されたものを試料13(実施例)とした。また、金属電極110cにメッキ部を有しないものを試料15(比較例)とし、さらに、金属板130cを配置しないものを試料10(比較例)、試料12(比較例)、試料14(比較例)及び試料16(比較例)とした(
図18参照。)。
ショートバー用の金属板130bとしては、無垢の銅からなる平板の板(厚さt2=0.3mm)を用いた(
図15参照。)。
【0087】
2.実験方法
(1)構成
半導体装置の端子210tと端子210u(及び210v)とをショートするように、金属電極110cを押し当てる点、当該金属電極110c(メッキ部114)にも熱電対TC2を配置する点が異なるが、その他は、基本的には実験例1と同様の構成とした(
図15参照)。
(2)通電試験
実験例1と同様に通電を行い、熱電対TC2及び温度モニタ500を用いて、金属電極110cの温度を観測し、グラフにプロットした。
3.実験結果
図16及び
図17からも明らかなように、金属板130cを配置した場合(試料9、試料11及び試料13)では、金属板を配置しない場合(試料10、試料12及び試料14)よりも金属電極の温度が低くなっている。全体を俯瞰すると、
図18の表で示すように、3種のメッキ種類のいずれの場合においても、本発明の接続治具100cによれば、従来よりも接続治具の温度上昇を抑制することができることが確認された。
【0088】
[実験例1及び実験例2の総括]
半導体装置(特に端子)の仕様、通電試験に用いられる接続治具(特に金属電極、及び、その一部を構成するメッキ部)の仕様は、電子機器のシステムの仕様によっても変わり得るものである。実験例1及び実験例2の結果から、本発明の接続治具を用いることで、たとえメッキ部の仕様(メッキ処理の種類)等が中途で変わったとしても、安定して、接触面積を確保して通電試験を遂行することができ温度上昇を抑制することができることが判明した。
【0089】
[実験例3]
実験例3は、金属板130の厚さの最適化について示す実験例である。
1.試料の準備
(1)バイアスバー用の金属板の厚さの実験向けとしては、実験例1と同様の両側から挟み込むタイプのバイアスバー用の接続治具を作製し、メッキ部114が硬質クロムメッキ処理によって形成されたものであって、金属板130bの厚さt2を変化させたものをそれぞれ試料17〜試料20とした(
図19の表の上半分を参照)。
(2)ショートバー用の金属板の厚さの実験向けとしては、実験例2と同様の両側から挟み込むタイプのショートバー用の接続治具を作製し、メッキ部114が硬質クロムメッキ処理によって形成されたものであって、金属板130cの厚さt2を変化させたものをそれぞれ試料21〜試料24とした(
図19表の下半分を参照)。
2.実験方法
基本的に実験例1及び実験例2の同様の実験構成、通電と温度モニタの方法で行った。また温度は、通電/遮断の動作を30サイクル行ったときの金属電極の到達温度を測定するものとした。
3.実験結果
図19の表からも分るように、金属板130の厚さt2は、実験例3の条件下では、所定の厚さ(0.3mm)に設定することが好ましいことが確認された。
参考までに、金属板130の厚さが大きい場合(実験例3の条件下では0.4mm以上の場合)には、端子210に力を伝えづらいことが考えられ、その結果、金属板130と端子210とのギャップを埋めきれず、温度上昇を然程抑制できない。
【0090】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0091】
(1)上記各実施形態において、押付手段は金属電極の側から端子210に押し付ける例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。端子210の側から金属端子に押し付けることによっても接触抵抗を低減し、試験電流による接続治具の温度上昇を抑制することができる。
【0092】
(2)上記各実施形態において、金属電極を端子210に向けて押し付け金属電極、金属板及び端子210を互いに接触させたときの金属電極と金属板との接触面積をA1とし、金属板と端子210との接触面積をA2としたときに、A1>A2の関係にあるとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。A1≦A2の関係(図示せず。)であっても、金属電極はより広い面積で端子210と接触することができ、この場合においても接触抵抗を低減し、試験電流による接続治具の温度上昇を抑制することができる。