(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548256
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】検証用画像の生成方法、それを実行するためのプログラム及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/40 20060101AFI20190711BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
H04N1/40
G06T1/00 310A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-172422(P2015-172422)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-50696(P2017-50696A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年電子情報通信学会総合大会 平成27年3月10日〜3月13日開催
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】金松 憲
(72)【発明者】
【氏名】片岡 由貴
【審査官】
野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−64687(JP,A)
【文献】
特開2005−86229(JP,A)
【文献】
特開2002−247356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/40−1/409
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒画素及び白画素からなり、網点を有する二値画像に基づく検証用画像の生成方法であって、
前記二値画像内に存在する所定の画素と該画素の周囲の画素との間で所定の関係を有するエッジ画素に対してノイズを付加して画質を劣化させるノイズ付加処理ステップを備えることを特徴とする検証用画像生成方法。
【請求項2】
前記ノイズ付加処理ステップは、
前記エッジ画素が検出された場合に一様乱数を発生させ、
前記発生された一様乱数の値が0.5未満である場合に、前記検出されたエッジ画素を異なる色の画素に変換することを特徴とする請求項1に記載の検証用画像生成方法。
【請求項3】
前記エッジ画素は、周囲に隣接する8つの画素のうち少なくとも1つの画素が黒画素である白画素を示す白境界点画素と、周囲に隣接する8つの画素のうち少なくとも1つの画素が白画素である黒画素を示す黒輪郭点画素とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の検証用画像生成方法。
【請求項4】
前記二値画像に対してラスタスキャンを行い、前記エッジ画素を検出するエッジ画素検出ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の検証用画像生成方法。
【請求項5】
黒画素及び白画素からなり、網点を有する二値画像に基づく検証用画像の生成方法をコンピュータ装置に実行させるためのプログラムであって、
前記二値画像内に存在する所定の画素と該画素の周囲の画素との間で所定の関係を有するエッジ画素に対してノイズを付加して画質を劣化させるノイズ付加処理ステップを備える検証用画像生成方法をコンピュータ装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
黒画素及び白画素からなり、網点を有する二値画像に基づき検証用画像の生成する画像処理装置であって、
前記二値画像内に存在する所定の画素と該画素の周囲の画素との間で所定の関係を有するエッジ画素に対してノイズを付加して画質を劣化させるノイズ付加処理部を備えることを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検証用画像の生成方法、それを実行するためのプログラム及び画像処理装置に関し、特に、CTP(Computer To Plate)装置を用いて画像を生成する際のバンディング現象を容易に確認可能な方法、プログラム及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、平版印刷の分野においては、印刷製版プロセスにおいてコンピュータを用いて作成されたデジタル二値画像データから印刷版を直接作成することが可能なCTP装置が広く用いられている。このようなCTP装置を用いて製版プレートを作成する技術は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
しかし、CTP装置を用いて二値画像データから製版プレートを作成した場合には、バンディング現象と称する問題が発生することがある。バンディング現象とは、二値画像データから印刷版へ直接描画する際に、製版プレート上にモアレと称する特有な干渉縞が発生する現象である。
【0004】
このようなバンディング現象は、輪転機を用いてインクにより二値画像データが紙面に転写された際に、製版プレート上での目視による確認が困難であるが、紙面に転写された画像においてモアレが観察できるという特性を有する。バンディング現象は、画像の平目網点領域において特に発生しやすく、通常は、帯状の濃度ムラを有するモアレとして観察されることが多い。
【0005】
一般に、バンディング現象は、スポット露光走査方式で、機械系の速度変動や電気系の制御変動によって網点のドット間隔が変化する場合等に発生することが多いと考えられる。より具体的には、例えば、画像データをエンコードする際の主/副走査の同期誤差や、印刷時のドラム駆動モータ及びヘッド駆動モータの回転誤差、製版プレート作成時のドラムの偏心誤差やプレート表面の凹凸による機械加工誤差、レーザービームバランスの誤差等が、バンディング現象が発生する主な原因と考えられる。
【0006】
このようにして発生したバンディング現象を抑制するためには、二値画像データの画質の調整を行う必要がある。そこで、従来は、入力された二値画像データを用いてCTP装置によって製版プレートを作成し、CTP装置の設置場所において、熟練した作業者が目視によってバンディング現象の有無を確認していた。そして、確認結果に基づきCTP装置の各種パラメータを調整し、画像データの画質を改善していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−10232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したバンディング現象の確認作業は、長期的な経験や検査能力、バンディング現象の有無を見極める判断力等の高度なスキルが作業者にとって必要となる。そのため、作業者としての経験が少ない者にとっては、バンディング現象を確認することが非常に困難であるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、経験の少ない作業者であってもバンディング現象を容易に確認することが可能な検証用画像の生成方法、それを実行するためのプログラム及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、黒画素及び白画素からなり、網点を有する二値画像に基づく検証用画像の生成方法であって、前記二値画像内に存在する所定の画素と該画素の周囲の画素との間で所定の関係を有するエッジ画素に対してノイズを付加して画質を劣化させるノイズ付加処理ステップを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、黒画素及び白画素からなり、網点を有する二値画像に基づく検証用画像の生成方法をコンピュータ装置に実行させるためのプログラムであって、前記二値画像内に存在する所定の画素と該画素の周囲の画素との間で所定の関係を有するエッジ画素に対してノイズを付加して画質を劣化させるノイズ付加処理ステップを備える検証用画像生成方法をコンピュータ装置に実行させることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明は、黒画素及び白画素からなり、網点を有する二値画像に基づき検証用画像の生成する画像処理装置であって、前記二値画像内に存在する所定の画素と該画素の周囲の画素との間で所定の関係を有するエッジ画素に対してノイズを付加して画質を劣化させるノイズ付加処理部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、経験の少ない作業者であってもバンディング現象を容易に確認することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る画像処理装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【
図2】白境界点画素について説明するための概略図である。
【
図3】黒輪郭点画素について説明するための概略図である。
【
図4】エッジ画素検出処理及びノイズ付加処理の流れについて説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る画像処理装置の一実施の形態を示し、この画像処理装置1は、大別して、メモリ2、エッジ画素検出部3及びノイズ付加処理部4を備える。
【0017】
画像処理装置1には、PC(Personal Computer)等の装置から出力された、各画素の階調値が「1」である黒画素と、階調値が「0」である白画素との二値で表現された二値画像をデータ化した入力二値画像データ10が入力される。そして、画像処理装置1は、この入力二値画像データ10に対してエッジ画素検出部3及びノイズ付加処理部4で各種処理を施した後、バンディング現象を検証するための検証用画像としての出力二値画像データ20を出力する。
【0018】
メモリ2は、外部から入力された入力二値画像データ10を記憶すると共に、エッジ画素検出部3及びノイズ付加処理部4で各種処理が施された画像データや、各処理において必要な情報等を記憶するための記憶媒体である。
【0019】
エッジ画素検出部3は、メモリ2に記憶された入力二値画像データ10を読み出し、入力二値画像データ10からエッジ画素を検出する。ここで、エッジ画素とは、入力二値画像データ10を構成する各画素のうち、注目する所定の画素とその周囲の画素との間で所定の関係を有する画素を示す。
【0020】
本実施の形態におけるエッジ画素は、具体的には、黒色の画素(以下「黒画素」という。)との境界点に存在する白色の画素(以下「白画素」という。)である「白境界点画素」と、白色の画素(以下「白画素」という。)との境界点に存在する黒画素である「黒輪郭点画素」であるとする。
【0021】
白境界点画素は、
図2に示すように、周囲に隣接する8つの画素のうち、少なくとも1つの画素が黒画素である白画素である。また、黒輪郭点画素は、
図3に示すように、周囲に隣接する8つの画素のうち、少なくとも1つの画素が白画素である黒画素である。
【0022】
説明は
図1に戻り、ノイズ付加処理部4は、エッジ画素検出部3で検出されたエッジ画素に対して所定の要領でノイズを付加する。そして、このようにしてノイズが付加された、あるいはノイズが付加されなかった各々の画素を用いて出力二値画像データ20を作成する。作成された出力二値画像は、メモリ2に記憶される。尚、入力二値画像データ10に対するノイズの付加方法の詳細については、後述する。
【0023】
尚、上述したエッジ画素検出部3及びノイズ付加処理部4は、必ずしもハードウェアによって構成する必要はなく、その一部又は全部をソフトウェア(プログラム)によって構成してもよい。
【0024】
次に、上記構成を有する画像処理装置1の動作について説明する。本実施の形態による画像処理装置1では、入力された入力二値画像データ10内に存在するエッジ画素を検出するエッジ画素検出処理を画素毎に順次行う。そして、エッジ画素が検出される毎に、当該エッジ画素に対して所定の要領でノイズを付加するノイズ付加処理を行い、入力二値画像データ10と比較して画質を劣化させた(バンディング現象が強調された)出力二値画像データ20を生成する。
【0025】
まず、エッジ画素検出部3によるエッジ画素検出処理について説明する。エッジ画素検出処理では、入力された入力二値画像データ10に対してラスタスキャンを行い、スキャンした画素(注目画素)がエッジ画素、すなわち白境界点画素又は黒輪郭点画素であるか否かを判断する。そして、注目画素が白境界点画素又は黒輪郭点画素である場合、エッジ画素検出部3は、当該画素がエッジ画素であると判断する。
【0026】
次に、ノイズ付加処理部4によるノイズ付加処理について説明する。ノイズ付加処理では、一様乱数を発生させることにより得られる値に基づく変換確率により、エッジ画素検出処理で検出されたエッジ画素を変換する画素変換処理を行う。
【0027】
具体的には、エッジ画素検出処理によってエッジ画素が検出されると、ノイズ付加処理部4は、一様乱数を発生させ、一様乱数の値が0.5未満である場合に、検出されたエッジ画素を異なる色の画素に変換する。より具体的には、エッジ画素が白境界点画素である場合には、エッジ画素である白画素を黒画素に変換する。また、エッジ画素が黒輪郭点画素である場合には、エッジ画素である黒画素を白画素に変換する。
【0028】
そして、以上のエッジ画素検出処理及びノイズ付加処理を、入力二値画像データ10内の全ての画素に対して行い、出力二値画像データ20を生成する。
【0029】
ここで、本実施の形態によるノイズ付加処理では、全てのエッジ画素に対して0.5の変換確率で変換する処理を行う。これにより、入力二値画像データ10内の網点の濃度を平均化するという効果を有する。そのため、目視では確認が困難なバンディング現象をより強調させることができる。
【0030】
具体的には、各ドット情報である網点の形状は、網点の濃度値に依存し、例えば、網点の濃度値が50%以下である場合には、エッジ画素である白境界点画素が黒輪郭点画素よりも多いので、上述したノイズ付加処理により、より多くの白画素が黒画素に変換されることになる。そのため、ノイズ付加処理を行った画像は、ノイズ付加処理前の画像と比較して濃度が上昇する。
【0031】
一方、網点の濃度値が50%以上である場合には、白境界点画素が黒輪郭点画素よりも少ないので、ノイズ付加処理により、より多くの黒画素が白画素に変換されることになる。そのため、ノイズ付加処理を行った画像は、ノイズ付加処理前の画像と比較して濃度が低下する。
【0032】
このようにして、ノイズ付加処理を行った画像は、網点の濃度値が50%近傍に平均化されるので、ノイズ付加処理前の画像と比較して画像が劣化することに伴い、背景領域がより繊細な均等的にランダマイズを分散させた分布特性になり、原画像以外から混入された異物がより目立つようになる。そのため、ノイズ付加の効果によるバンディング現象をより強調させることができる。
【0033】
図4は、画像処理装置におけるエッジ画素検出処理及びノイズ付加処理の流れについて説明するためのフローチャートである。
【0034】
まず、ステップS1において、画像処理装置1は、メモリ2に記憶された入力二値画像データ10に対するラスタスキャンを行い、エッジ画素検出部3は、エッジ画素である白境界点画素又は黒輪郭点画素を検出する。
【0035】
次に、ステップS2において、画像処理装置1は、エッジ画素を検出できたか否かを判断する。エッジ画素が検出できたと判断した場合(ステップS2;Yes)、ノイズ付加処理部4は、一様乱数を発生させる(ステップS3)。一方、エッジ画素が検出できなかったと判断した場合(ステップS2;No)には、処理がステップS8に移行する。
【0036】
次に、ステップS4において、ノイズ付加処理部4は、発生させた一様乱数の値が0.5未満であるか否かを判断する。一様乱数の値が0.5未満であると判断した場合(ステップS4;Yes)には、処理がステップS5に移行する。一方、一様乱数の値が0.5以上であると判断した場合(ステップS4;No)には、処理がステップS8に移行する。
【0037】
ステップS5において、ノイズ付加処理部4は、ステップS2で検出されたエッジ画素が黒輪郭点画素及び白境界点画素のいずれかであるかを判断する。検出されたエッジ画素が黒輪郭点画素であると判断した場合(ステップS5;Yes)、ノイズ付加処理部4は、当該エッジ画素を白画素に変換する(ステップS6)。一方、検出されたエッジ画素が白境界点画素であると判断した場合(ステップS5;No)、ノイズ付加処理部4は、当該エッジ画素を黒画素に変換する(ステップS7)。
【0038】
このようにして、検出されたエッジ画素を変換し、エッジ画素に対するノイズ付加処理を終了する。
【0039】
次に、ステップS8において、画像処理装置1は、入力二値画像データ10に対するラスタスキャンが終了したか否かを判断する。ラスタスキャンが終了したと判断した場合(ステップS8;Yes)には、一連の処理が終了する。
【0040】
一方、ラスタスキャンが終了していないと判断した場合(ステップS8;No)には、処理がステップS1に戻り、次の画素に対するスキャンを行い、全ての画素に対するスキャンが終了するまで、ステップS1〜ステップS7までの処理を繰り返す。
【0041】
以上のように、本実施の形態によれば、入力二値画像データからエッジ画素を検出し、検出されたエッジ画素を変換してノイズを付加し、入力二値画像データよりも画質が劣化した検証用画像としての出力二値画像データを生成する。そして、生成された出力二値画像データを用いて製版プレートを作成することにより、バンディング現象がより強調されるため、バンディング現象を容易に確認することができる。
【0042】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上述した本発明の一実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述した本実施の形態では、白境界点画素及び黒輪郭点画素をエッジ画素として検出し、エッジ画素に対してノイズを付加(画素を変換)するようにしたが、これに限られず、他の方法を用いてエッジ画素を検出してノイズを付加してもよく、これによって本発明と同様の効果や傾向を確認することができる。
【0043】
具体的には、例えば、入力二値画像データを所定のブロックに分割し、ブロック内に存在する網点との境界点となる白画素(白境界点画素)や、網点の輪郭を形成する黒画素(黒輪郭点画素)をエッジ画素とし、このエッジ画素によって形成される線をエッジ線として検出する。そして、周辺のブロックとの相関性を考慮しながら、画像全体としての濃度を維持してざらつき感を抑制するように、検出されたエッジ線に対してノイズを付加(画素を変換)してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 画像処理装置
2 メモリ
3 エッジ画素検出部
4 ノイズ付加処理部
10 入力二値画像データ
20 出力二値画像データ