(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1では、子ノード間の遅延時間のばらつきがない前提である。また、特許文献1は、時刻同期の精度を数ミリ秒レベルで行う技術である。しかしながら、子ノードである無線端末には、内部の無線モジュールの処理時間にマイクロ秒レベルでのばらつきがある。そのため、特許文献1にかかる技術では、複数の無線端末の間での時刻同期を含む処理タイミングの同期を図るには不十分であるという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、複数の無線端末の間で処理タイミングを一定の精度で同期するための無線装置及びタイミング同期方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様にかかる無線装置は、
親局から所定間隔で無線信号を受信する無線処理部と、
前記無線処理部からの前記無線信号の受信通知を受け付ける度に、当該受信通知の受信間隔を測定し、前記測定された複数の受信間隔のうち所定の条件を満たす受信間隔を特定し、前記特定された受信間隔に基づくタイミングにより特定の信号を出力する間隔測定部と、
を備える。
【0008】
本発明の第2の態様にかかるタイミング同期方法は、
無線処理部において、親局から所定間隔で無線信号を受信し、
間隔測定部において、前記無線処理部からの前記無線信号の受信通知を受け付ける度に、当該受信通知の受信間隔を測定し、
前記測定された複数の受信間隔のうち所定の条件を満たす受信間隔を特定し、
前記特定された受信間隔に基づくタイミングにより特定の信号を出力する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、複数の無線端末の間で処理タイミングを一定の精度で同期するための無線装置及びタイミング同期方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1にかかる無線センサネットワークシステム1000の全体構成を示すブロック図である。無線センサネットワークシステム1000は、橋の劣化を診断するためのシステムである。無線センサネットワークシステム1000は、床版101、橋台102、橋脚103、橋台104、支承105、106及び107、センサ端末111、112、・・・11n(nは2以上の整数。)、ゲートウェイ装置210、並びに、解析サーバ220を備える。
【0013】
橋台102、橋脚103及び橋台104の上には、それぞれ支承105、106及び107が搭載され、支承105〜107の上には、床版101が搭載されている。床版101は、その下面にセンサ端末111、112、・・・11nが取り付けられている。センサ端末111〜11nは、床版101の振動を検知し、振動データとして収集する。センサ端末111〜11nは、収集した振動データを特定小電力無線920MHzの無線通信により、ゲートウェイ装置210へ送信する。尚、無線通信の周波数はこれに限定されない。
【0014】
また、センサ端末111〜11nのそれぞれは、ゲートウェイ装置210からブロードキャストされた時刻同期信号を受信し、時刻同期信号に基づくタイミングにより床版101の振動を測定する。そして、センサ端末111は、測定した振動データを無線信号によりゲートウェイ装置210へ送信する。
【0015】
ゲートウェイ装置210は、センサ端末111〜11nのそれぞれと無線通信を行う。ゲートウェイ装置210は、センサ端末111〜11nに対する親局の一例である。また、ゲートウェイ装置210は、ネットワーク230を介して解析サーバ220と接続されている。ゲートウェイ装置210は、センサ端末111〜11nのそれぞれから収集された振動データを無線信号により受信する。そして、ゲートウェイ装置210は、受信した振動データをネットワーク230を介して解析サーバ220へ送信する。また、ゲートウェイ装置210は、センサ端末111〜11nのそれぞれに対して時刻同期信号をブロードキャストにより送信する。ここで、本実施の形態にかかるゲートウェイ装置210は、所定間隔で時刻同期信号をブロードキャスト送信する。所定間隔は例えば1秒間隔であるが、これ以外でも構わない。また、送信される無線信号は時刻同期信号でなくても構わない。
【0016】
解析サーバ220は、ネットワーク230を介してゲートウェイ装置210から受信した診断データの解析を行い、床版101の劣化診断を行う。
【0017】
ここで、解析サーバ220が床版101全体について振動モード解析するためには、各センサ端末において振動センサのデータ収集タイミングが同時である必要がある。そのため、各センサ端末の間の時刻同期又はセンシング開始時刻を、解析に支障がない範囲で一致させる必要がある。
【0018】
そこで、各センサ端末の時刻同期をゲートウェイ装置210による時刻同期信号のブロードキャスト送信により行った場合、各センサ端末は、概ね同時に時刻同期信号が受信できる。しかしながら、各センサ端末が備える無線モジュールは、無線信号の処理時間にゆらぎがある。そのため、無線モジュールからCPUへ時刻同期信号を出力するタイミングにゆらぎが発生する。そして、各センサ端末における時刻設定に差が生じ、結果として振動センサのセンシングタイミングにずれが生じる。
【0019】
本発明の実施の形態では、この課題を解決すべく、定期的に発信される無線信号に応じて各センサ端末の間で処理タイミングの同期を行うものである。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1にかかるセンサ端末111の構成を示すブロック図である。尚、センサ端末112〜11nの構成は、
図2と同等であるため、図示及び説明を省略する。
【0021】
センサ端末111は、無線モジュール31と、CPU(Central Processing Unit)32と、ディレイ検出回路33と、AD(Analog-to-Digital)コンバータ34と、振動センサ35とを備える。無線モジュール31は、無線処理部の一例であり、無線信号を受信し、受信した無線信号に所定の処理を行い、CPU32及びディレイ検出回路33へ出力する。また、無線モジュール31は、CPU32から出力された診断データを無線信号に変換し、外部へ発信する。CPU32は、センサ端末111の全体の処理を制御する制御装置である。
【0022】
ディレイ検出回路33は、間隔測定部の一例であり、無線モジュール31からの出力を受信通知として受け付け、受信通知の受信間隔の測定し、複数回測定された受信間隔のうち最小値を特定し、特定した受信間隔に基づくタイミングによりセンシング開始信号をADコンバータ34へ出力する。ここで、受信間隔は、無線モジュール31による無線信号の処理時間(遅延時間)を含むものである。尚、ディレイ検出回路33は、複数の受信間隔のうち最小値を特定しているが、少なくとも所定の条件を満たす受信間隔を特定すればよい。所定の条件とは、例えば、複数の受信間隔の平均値や最大値であってもよい。言い換えると、ディレイ検出回路33は、無線処理部からの無線信号の受信通知を受け付ける度に、当該受信通知の受信間隔を測定し、前記測定された複数の受信間隔のうち所定の条件を満たす受信間隔を特定し、前記特定された受信間隔に基づくタイミングにより特定の信号を出力する。尚、センシング開始信号は、特定の信号の一例である。
【0023】
ディレイ検出回路33は、Tcカウンタ331と、1secカウンタ332とを備える。Tcカウンタ331は、マイクロ秒単位でカウントを行うカウンタ回路である。Tcカウンタ331は、任意のタイミングでディレイ検出回路33によりクリア及びカウントの開始を行うことができる。1secカウンタ332は、1秒単位でカウントをクリア及び開始を行うカウンタ回路である。また、1secカウンタ332は、任意のタイミングでディレイ検出回路33によりクリア及びカウントの開始を行うこともできる。尚、Tcカウンタ331及び1secカウンタ332は、高精度であり、センサ端末間でのずれは無視できるものとする。
【0024】
ADコンバータ34は、ディレイ検出回路33からのセンシング開始信号を受け付けたタイミングで振動センサ35のセンシングを開始させる。ADコンバータ34は、振動センサ35により計測された振動データをAD変換し、CPU32へ出力する。
【0025】
図3は、本発明の実施の形態1にかかる処理タイミング同期処理の流れを説明するためのフローチャートである。前提として、ゲートウェイ装置210は、所定間隔で無線信号をブロードキャスト送信しているものとする。
【0026】
まず、無線モジュール31は、無線信号を受信する(S11)。次に、無線モジュール31は、ディレイ検出回路33へ受信通知を出力する(S12)。ここで、受信通知とは、例えば、時刻同期信号等、受信データを出力することであってもよい。
【0027】
そして、ディレイ検出回路33は、受信通知の受信間隔の測定を行う(S13)。尚、初回の受信通知を受け付けた際には、ディレイ検出回路33は、受信間隔の測定の開始を行う。2回目以降の受信通知を受け付けた際には、ディレイ検出回路33は、測定中の受信間隔の測定を終了し、次の受信間隔の測定を開始する。
【0028】
ディレイ検出回路33は、受信通知を所定回数受け付けたか否かを判定する(S14)。所定回数に満たない場合、ステップS11へ戻る。所定回数受け付けた場合、ディレイ検出回路33は、測定した複数の受信間隔のうち最小の受信間隔を特定する(S15)。そして、ディレイ検出回路33は、特定された受信間隔に基づくタイミングにより特定の信号を出力する(S16)。
【0029】
図4は、本発明の実施の形態1にかかるディレイ検出回路33の処理の流れを説明するためのフローチャートである。前提として、ゲートウェイ装置210は、1秒間隔で無線信号をブロードキャスト送信しているものとする。
【0030】
まず、ディレイ検出回路33は、Tcカウンタ331及び1secカウンタ332を開始し、ループカウンタi=0、n=0に初期化する(S101)。尚、1secカウンタ332は、ディレイ検出回路33からの指示がなくても自動的に1秒ごとにカウンタをクリア及び開始する。
【0031】
次に、ディレイ検出回路33は、無線モジュール31からデータを受信する(S102)。例えば、ディレイ検出回路33は、無線モジュール31から時刻同期信号を受信する。尚、ディレイ検出回路33が無線モジュール31からデータを受信するタイミングは、無線モジュール31における当該データの処理時間によりばらつきがある。
【0032】
その後、ディレイ検出回路33は、Tcカウンタ331が1+n秒未満か否かを判定する(S103)。Tcカウンタ331が1+n秒未満と判定された場合、ディレイ検出回路33は、Tcカウンタ331及び1secカウンタ332をクリア及び開始し、n=0に設定する(S104)。また、Tcカウンタ331が1+n秒以上と判定された場合、ディレイ検出回路33は、nに1加算する(S105)。
【0033】
そして、ディレイ検出回路33は、iが繰り返し上限Nであるか否かを判定する(S106)。iがN未満の場合、ディレイ検出回路33は、iに1加算し(S107)、ステップS102へ戻る。iがNである場合、ディレイ検出回路33はnが0であるか否かを判定する(S108)。
【0034】
nが0である場合、ディレイ検出回路33は、この時点からTcカウンタ331が1秒経過した後に、ADコンバータ34へセンシング開始信号を出力する(S109)。また、nが0以外の場合、ディレイ検出回路33は、既に開始している1secカウンタ332が1秒経過した後に、ADコンバータ34へセンシング開始信号を出力する(S110)。
【0035】
つまり、ディレイ検出回路33は、ステップS108において、測定された複数の受信間隔のうち最小値が直前のものか(n=0)か、それ以前のもの(n=0以外)かを判定している。直前の受信間隔が最小の場合、i=Nの際のステップS102により測定された受信間隔を最小値として特定していることになる。このとき、特定した受信間隔を測定していたカウンタは、Tcカウンタ331であるため、ディレイ検出回路33は、クリア後のTcカウンタ331を基準として1秒後にセンシング開始信号を出力している。
【0036】
また、直前以外の受信間隔が最小の場合、i<Nの際のステップS102により測定された受信間隔を最小値として特定していることになる。このとき、特定した受信間隔から1秒単位で正確にカウントしていたカウンタは、1secカウンタ332であるため、ディレイ検出回路33は、既にカウントを開始している1secカウンタ332を基準として次にクリアされるタイミング(1秒後)にセンシング開始信号を出力している。
【0037】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる処理タイミング同期処理の流れを説明するためのタイミングチャートである。前提として、ゲートウェイ装置210は、RFデータを1秒間隔でセンサ端末111〜113に対して3回、ブロードキャスト送信するものとする。また、ここでは、ゲートウェイ装置210からセンサ端末111〜113への無線送信時間については考慮しなくてよいものとする。つまり、センサ端末111〜113の各無線モジュールは、同時にRFデータを受信するものとする。また、各無線モジュールの処理時間はばらつきがあるものとする。以下の例では、相対的に処理時間が短いものとして処理時間Td10、Td22、Td31、処理時間が中程度のものとして処理時間Td11、Td21、Td30、処理時間が長いものとして処理時間Td12、Td20、Td32であるものとする。但し、処理時間のばらつきはこれに限定されない。また、繰り返し上限N=2とする。
【0038】
i=0の際、まず、センサ端末111の無線モジュール31は、RFデータを受信し、所定の処理を行い、処理時間Td10経過後にUARTデータとしてCPU32及びディレイ検出回路33へ出力する。そこで、センサ端末111のディレイ検出回路33は、Tcカウンタ331及び1secカウンタ332を開始する。同様に、センサ端末112は、処理時間Td20経過後に、また、センサ端末113は、処理時間Td30経過後に、それぞれTcカウンタ331及び1secカウンタ332を開始する。
【0039】
i=1の際、センサ端末111は、2回目の受信通知を受け付けた際、つまり処理時間Td11経過後に、Tcカウンタ331が1秒経過しているか否かを判定する。ここでは、i=0の際にTcカウンタ331と同時に開始した1secカウンタ332が既に1秒経過し、一旦クリア後に開始されているため、ステップS103でNOと判定される。そのため、i=1の際にはセンサ端末111のTcカウンタ331はクリアされず、維持される。
【0040】
一方、センサ端末112は、処理時間Td21経過時点では、1secカウンタ332が1秒経過前である。また、センサ端末113も、処理時間Td31経過時点では、1secカウンタ332が1秒経過前である。よって、i=1の際、センサ端末112及び113のそれぞれは、Tcカウンタ331をクリア及び開始し、併せて、1secカウンタ332も強制的にクリア及び開始する。
【0041】
i=2の際、センサ端末111は、3回目の受信通知を受け付けた際、つまり処理時間Td12経過後に、Tcカウンタ331が2秒経過しているか否かを判定する。ここでは、1secカウンタ332が既に1秒経過してクリア後に開始されており、つまり、i=0でTcカウンタ331が開始されてから2秒が経過している。よって、ステップS103でNOと判定される。そして、i=N=2であり、nは0でないため、センサ端末111のディレイ検出回路33は、1secカウンタ332が次にクリアされるタイミングで、センシング開始信号をADコンバータ34へ出力する。
【0042】
一方、センサ端末112は、処理時間Td22経過時点で1secカウンタ332が1秒経過前である。よって、i=2の際、センサ端末112は、Tcカウンタ331をクリア及び開始し、併せて、1secカウンタ332も強制的にクリア及び開始する。つまり、センサ端末112は、Tcカウンタ331により測定されていた第1の受信間隔を第2の受信間隔により上書き保存したということもできる。そして、i=N=2であり、n=0であるため、センサ端末112のディレイ検出回路33は、Tcカウンタ331が1秒経過したタイミングで、センシング開始信号をADコンバータ34へ出力する。
【0043】
また、センサ端末113は、処理時間Td32経過時点で1secカウンタ332が1秒経過している。よって、ステップS103でNOと判定される。そして、i=N=2であり、nは0でないため、センサ端末113のディレイ検出回路33は、1secカウンタ332が次にクリアされるタイミングで、センシング開始信号をADコンバータ34へ出力する。
【0044】
仮に、1回目の時刻同期信号(RFデータ)の受信通知の1秒後(1secカウンタ332のクリア時)に各センサ端末がセンシングを開始してしまうと、各センサ端末の間で処理時間Td10、Td20、Td30に応じた時間のずれが生じてしまう。そこで、本実施の形態では、所定間隔で3回以上の時刻同期信号の受信を通じて、最小となる受信間隔に基づくタイミングによりセンシングを行うものである。これにより、複数の無線端末の間で処理タイミングを一定の精度で同期することができる。
【0045】
尚、本発明の実施の形態には、次のような側面もある。すなわち、間隔測定部は、前記測定された第1の受信間隔が前記所定間隔未満である場合に、当該第1の受信間隔を前記最小値として保存し、その後測定された第2の受信間隔が前記所定間隔未満である場合には、前記第1の受信間隔を当該第2の受信間隔により上書き保存し、前記受信通知を所定回数受け付けた後に保存されていた受信間隔を前記最小値として特定する。
【0046】
また、前記間隔測定部は、第1のカウンタと、前記所定間隔でクリア及び開始される第2のカウンタとを有する。そして、前記間隔測定部は、第1の受信通知を受け付けた際に前記第1及び第2のカウンタを開始し、前記第1の受信通知の次の第2の受信通知を受け付けた際に、前記第1のカウンタのカウント値が前記所定間隔未満の場合、前記第1及び第2のカウンタをクリアして開始し、前記第2の受信通知を受け付けた際に、前記第1のカウンタのカウント値が前記所定間隔以上の場合、前記第1のカウンタのカウントを維持する。
【0047】
さらに、前記間隔測定部は、前記受信通知を所定回数受け付けた際に、前記第1のカウンタのカウント値が前記所定間隔未満の場合、前記所定間隔経過後に、前記特定の信号を出力し、前記第1のカウンタのカウント値が前記所定間隔以上の場合、前記第2のカウンタがクリアされるタイミングで前記特定の信号を出力する。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。