(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548304
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷用記録媒体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/52 20060101AFI20190711BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20190711BHJP
D21H 19/64 20060101ALI20190711BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
B41M5/52 100
D21H19/38
D21H19/64
D21H27/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-505851(P2015-505851)
(86)(22)【出願日】2013年4月9日
(65)【公表番号】特表2015-514031(P2015-514031A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】US2013035759
(87)【国際公開番号】WO2013155062
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2016年3月16日
【審判番号】不服2018-917(P2018-917/J1)
【審判請求日】2018年1月4日
(31)【優先権主張番号】61/623,931
(32)【優先日】2012年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/682,416
(32)【優先日】2012年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505468978
【氏名又は名称】ニューページ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ,チャールズ,イー.,ジュニア.
【合議体】
【審判長】
樋口 信宏
【審判官】
関根 洋之
【審判官】
河原 正
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/019866(WO,A1)
【文献】
特表2013−501659(JP,A)
【文献】
特表2006−518777(JP,A)
【文献】
特開2004−91626(JP,A)
【文献】
特表2005−505667(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2289705(EP,A2)
【文献】
特開2010−221688(JP,A)
【文献】
特開2011−132646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/52
D21H 19/38
D21H 19/64
D21H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、
インク受容コーティングとを備え、
前記インク受容コーティングは、
粉砕炭酸カルシウムからなる主顔料と、
多価塩と、
分散剤と、
バインダとを含み、
前記バインダは、総顔料100重量部に対して2〜15重量部の量で存在し、
前記粉砕炭酸カルシウムは、微粉砕炭酸カルシウムと、中粉砕炭酸カルシウムからなり、
前記粉砕炭酸カルシウムのメジアン粒径(D50)は、0.5〜1.6ミクロンであり、
前記微粉砕炭酸カルシウムは、粒子の85〜95重量%が2ミクロン未満の直径を有し、かつ、前記主顔料中の割合が10〜85重量%であるとともに、粒子の60〜70重量%が1ミクロン未満であり、かつ、そのメジアン粒径(D50)は、0.5〜1ミクロンであり、
前記中粉砕炭酸カルシウムは、粒子の55〜65重量%が2ミクロン未満の直径を有し、かつ、前記主顔料中の割合が15〜90重量%であるとともに、粒子の30〜35重量%が1ミクロン未満であり、かつ、そのメジアン粒径(D50)は、1.0〜1.8ミクロンであり、
前記主顔料は、アニオン粉砕炭酸カルシウム、カチオン粉砕炭酸カルシウム、および粗粉砕炭酸カルシウムを含まないことを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記バインダは、多価塩を含有する処方又はコーティングを安定化するラテックスを含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記バインダは、スチレンブタジエンゴムラテックスを含むことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記前記バインダは、タンパク質バインダ、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、デンプンの一種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記バインダは、デンプンであることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
前記主顔料は、総顔料100重量部に対して50〜100重量部の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項7】
前記コーティングは、片面1ream(3300ft2)に対して乾燥重量5〜10ポンド(2.27〜4.54kg/306.58m2)の塗工量で存在することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項8】
前記多価塩は、多価金属塩であり、前記多価金属塩は、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化アルミニウム、ヒドロキシ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム及びこれらの混合物からなる一群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項9】
前記多価金属塩は、塩化カルシウムを含むことを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項10】
前記分散剤は、ポリエーテルポリカルボキシレートナトリウム塩、アクリルコポリマー、ポリエーテルポリカルボキシレートナトリウム塩、ポリオキシアルキレンナトリウム塩、顔料親和基を有する高分子量ブロックコポリマー、顔料親和基を有するアクリレートコポリマー、トリデシルアルコールエトキシレート及びこれらの混合物からなる一群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項11】
前記分散剤は、ポリエーテルポリカルボキシレート塩を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項12】
光沢用のプラスチック顔料を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年4月13日提出の米国暫定特許出願第61/623,931号及び2012年8月13日提出の米国暫定特許出願第61/682,416号の優先権を請求する。
【0002】
本願は、インクジェット記録媒体及びインクジェット記録媒体形成用のコーティング組成に関するものである。特に、ここに開示されたインクジェットコーティング組成は多価塩を含有し、得られる記録媒体は高速インクジェット印刷のような高速多色印刷に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
商業印刷は、慣例上オフセット印刷を用いたプリントカタログ、パンフレット、ダイレクトメールを印刷する。しかしながら、インクジェット技術の進歩は商業印刷店に浸透してきている。インクジェット技術は、オフセット印刷に代えて、回収率の改善、コスト低下、及び製品需要の増加を高品質に提供する。高品質な可変画像及びテキストの印刷に加えて、これらのプリンターには、高速大量印刷が可能なロールフィード用紙搬送システムが組み込まれている。インクジェット技術は、現在、地方紙、新聞、少量印刷、教科書及び会報の印刷において世界的に用いられている。
【0004】
ウェブ搬送インクジェットシステムは、大量の商業用途のデジタル印刷の利点を十分に備えつつ、オフセット級品質、生産性、信頼性及びコストに優れるよう開発されている。これらのシステムは、業務用プリンター及び裏面印刷のコアベースを超えて、並びに、大量商業用途において、連続インクジェット印刷を拡張する。
【0005】
本発明のある態様によれば、記録媒体は、商業印刷用途に用いられる高速インクジェット装置を用いて印刷された際に迅速な乾燥時間、優れた画像品質を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願第2010/065750号
【特許文献2】米国特許第6,677,386号
【特許文献3】米国特許第6,825,252号
【特許文献4】米国特許第6,921,430号
【特許文献5】米国特許第7,285,586号
【特許文献6】米国特許第7,452,592号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、インクジェット記録媒体及びインクジェット記録媒体形成用コーティング組成を記載する。本発明の一態様によれば、インクジェット記録媒体は、紙基材上にインク受容コーティングを備える。このインク受容コーティングは、顔料、バインダ及び多価塩の相乗的組み合わせを含み、これにより、インクジェット記録媒体は、特に顔料系又は染料系インクを用いた高速インクジェットプリンタにより印刷した際に、向上したインクジェット印刷特性を発揮する。
【0008】
ある実施形態によれば、紙のコーティングは、微粉砕及び/又は中粉砕炭酸カルシウム、バインダ及び任意に共同バインダを含む。通常は、多価塩はコーティング組成中に含有されてもよい。より具体的には、コーティングは、メジアン粒径(D50)約0.5〜1.6ミクロンの粉砕炭酸カルシウム、多価塩、分散剤及びバインダからなる主顔料を含む。バインダは、通常総顔料100重量部に対して約2〜15重量部の量で存在する。
【0009】
特定の実施形態によれば、主顔料は、メジアン粒径又は粒径分布の異なる2種類以上の炭酸カルシウムの混合物であってもよい。主顔料は、第1メジアン粒径を有する第1炭酸カルシウム及び第1メジアン粒径とは異なる第2メジアン粒径を有する第2炭酸カルシウムからなるものでもよい。
【0010】
本発明のコーティング及び塗工紙は、染料系及び顔料系インクジェットインクの両方に対して特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
インクジェット記録媒体を製造するコーティングは、通常1種類以上の微粉砕、中粉砕又は粗粉砕炭酸カルシウムを含む。さらに、コーティングは、通常バインダ及び任意に共同バインダを含む。顔料は、通常コーティング組成の乾燥重量の大部分からなる。他に断らない限り、構成材料の量は、総顔料100重量部に対する構成要素の重量部で表現される。
【0012】
コーティング組成は、主顔料、通常炭酸カルシウムを含む。炭酸カルシウムは、アラゴナイト、カルサイト又はこれらの混合物を含むいずれの形状であっても、主顔料として有用である。微粉砕及び/又は中粉砕炭酸塩は、主顔料として特に有用である。微粉砕及び/又は中粉砕炭酸カルシウムは、主顔料として存在する場合、通常コーティング顔料の50〜100乾燥重量部に調合される。ある実施形態においては、炭酸カルシウムは、顔料の約70〜100重量部であってもよい。特に有用な顔料は、OMYA Hydrocarb(登録商標)60粉砕炭酸カルシウム(スイス連邦OftringenのOMYA AG社製)のような中粉砕炭酸塩である。これは、紙の光沢を示すことなく、インク吸収性に優れる多孔性構造を提供する。この顔料は、中粉砕炭酸カルシウムとみなしてもよく、ある実施形態においては、粒子の約55〜65重量%、特に約58〜62重量%、ある場合には約60重量%が約2ミクロン未満の直径を有し、粒子の約30〜35重量%、特に約31〜33重量%、ある場合には約32重量%が約1ミクロン未満の直径を有し、粒子の約5〜10重量%、特に約6〜8重量%、ある場合には約7重量%が約0.2ミクロン未満の直径を有する粒径分布を有する。メジアン粒径(D50)は、約1.0〜1.8ミクロン、特に約1.2〜1.6ミクロン、ある場合には約1.4ミクロンであってもよい。
【0013】
主顔料は、異なる粒径の炭酸カルシウム粒子の混合物からなるものであってもよい。例えば、微粉砕炭酸カルシウムとみなされる他の顔料は、コーティング中に用いることもできる。一実施形態によれば、コーティングに用いられる微粉砕炭酸カルシウムは、粒子の約85〜95重量%、特に約90重量%が約2ミクロン未満の直径を有し、粒子の少なくとも約60〜70重量%、特に約65重量%が約1ミクロン未満の直径を有する狭い粒径分布を有し、顔料は、約0.5〜1ミクロン、特に約0.6〜0.8ミクロン、さらには約0.7ミクロンの平均粒径を有する。ある実施形態によれば、微粉砕炭酸カルシウムは、総顔料の約0〜50重量部、特に約10〜40重量部であってもよい。特に有用な顔料は、OMYA Hydrocarb(登録商標)90粉砕炭酸カルシウム(スイス連邦OftringenのOMYA AG社製)のような微粉砕炭酸塩である。
【0014】
粗粉砕炭酸カルシウムは、コーティング中に用いることもできる。ある実施形態によれば、これらの顔料は、粒子の約38重量%が約2ミクロン未満の直径を有する狭い粒径分布を有する。好ましくは、粒子の少なくとも約15〜25重量%、特に約12〜22重量%、さらには約20重量%が約1ミクロン未満の直径を有する狭い粒径分布を有し、約3.0〜3.5ミクロン、特に約3.1〜3.3ミクロン、さらには約3.20ミクロンの平均粒径を有する。他の実施形態においては、分布は、粒子の少なくとも85重量%が約1ミクロン未満のを有し、0.1〜1ミクロンの範囲内に落ち込む。ある実施形態によれば、粗粉砕炭酸カルシウムは、総顔料の約0〜20重量部、特に約10〜15重量部であってもよい。特に有用な顔料は、OMYA Hydrocarb(登録商標)PG-3粉砕炭酸カルシウム(スイス連邦OftringenのOMYA AG社製)のような粗粉砕炭酸塩である。
【0015】
1種類以上の第2顔料を添加してもよい。第2顔料の例としては、アニオン顔料、カチオン顔料、プラスチック顔料、炭酸塩、クレイ、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化アルミニウム及びアルミニウム三水和物が含まれる。第2顔料が存在する場合、約1〜50部、特に約8〜16部の量で存在させてもよい。
【0016】
カチオン顔料は、コーティングに添加し得る第2顔料の例示としてもよい。完全に混合された際には、コーティングは一般的に全体がアニオン性となってもよい。アニオン性コーティングとカチオン顔料との間の引力は、コーティング中に表面細孔を形成してもよく、これにより、多孔度及びインク吸収速度が向上される。インク乾燥時間は短縮されてもよい。また、イオン性相互作用は非常に小さいものであるため、向上された多孔度はコーティング表面上で均一である。カチオン顔料の粒径分布は、通常3.0ミクロン未満の平均粒径を有し、通常粗粒子を含まない。「粗粒子を含まない」とは、カチオン顔料を325メッシュスクリーンに通した後に、325メッシュスクリーン上に実質的に存在しないことを意味する。いくつかの実施形態においては、第2顔料中の粒子の実質的な全ては1ミクロン未満のサイズとしてもよい。カチオン顔料の量は、通常総顔料100重量部に対して20重量部未満であってもよい。極度のカチオン性な構成要素の使用は,コーティングの性質を変え得る望まないイオン性相互作用及び化学反応を引き起こす。カチオン顔料は、総顔料100重量部に対して5重量部超の量で存在してもよい。特に有用なカチオン顔料は、カチオン性OMYAJET B 6606、OMYAJET C 3301及び5010顔料(スイス連邦OftringenのOMYA AG社製)を含む。OMYAJET顔料は高表面積改変炭酸カルシウムのカチオン水性スラリーである。平均粒径(D50)は約1.3〜2ミクロンの範囲である。表面積BETは約40〜56mg/m
2の範囲である。粒子の約50〜80重量%は2ミクロン未満であってもよい。
【0017】
アニオン顔料のような第2顔料は、光沢度、白色度及び他のコーティング特性を向上させために、必要に応じて処方に用いられてもよい。乾燥コーティング顔料の30重量部まではアニオン顔料であってもよい。顔料の25重量部まで、特に20重量部未満は、粗粉砕炭酸カルシウム、他の炭酸塩、プラスチック顔料、TiO
2又はそれらの混合物であってもよい。粗粉砕炭酸カルシウムの例としては、Carbital 35炭酸カルシウム(ジョージア州RoswellのImerys社製)がある。(平均粒径(D50)=約2.7〜3.2ミクロン、特に約2.9ミクロン、2ミクロン未満の粒子が約35〜40重量%、特に約37重量%、1ミクロン未満の粒子が約15〜20重量%、特に約18重量%、0.5ミクロン未満の粒子が約5〜10重量%、特に約8重量%、0.25ミクロン未満の粒子が約2〜5重量%、特に約3重量%であり、粗粉砕炭酸塩の一般的な表面積は約3.4〜3.8mg/m2、特に約3.6mg/m
2である。)使用可能な他の顔料としては、(ニューヨーク州White Plains)Itochu Chemicals America社製のようなカチオン性二酸化チタンがある。中空球体は、紙の光沢のために特に有用なプラスチック顔料である。中空球体顔料の例としては、(ペンシルバニア州PhiladelphiaのRohm & Haas社製)ROPAQUE AF-1353及びROPAQUE AF-1055が含まれる。高光沢紙は、粒径が小さい微細顔料が用いられる場合に得られる。これらの顔料の相対量は、白色度及び所望の光沢度レベルに応じて変化させてもよい。
【0018】
主バインダは接着性のためにコーティングに添加してもよい。ある実施形態によれば、バインダは多価塩の取り込みに適合し得る。ある態様によれば、バインダは多価塩含有処方又はコーティングを安定化し得るものであってもよい。バインダは、多価塩含有処方又はコーティングを安定化し得るスチレン−ブタジエンのような非イオン性合成ラテックス又はアニオン性合成ラテックスであってもよい。多価塩の存在に適合しないこれらのバインダは、特定の界面活性剤の使用のような様々な修飾に適合し得るよう修飾してもよい。特に有用なバインダは、カルシウム安定スチレンブタジエンゴム(SBR)格子を含む。アクリルポリマー、ポリウレタン又はエチレンビニルアセテートポリマーを用いてもよい。バインダは、デンプン又はタンパク質のようなバイオポリマーであってもよい。
【0019】
特に有用な実施形態によれば、ポリマーは、バイオポリマー粒子、特にバイオポリマー微粒子、ある実施形態においてはバイオポリマーナノ粒子からなるものであってもよい。特に有用な態様によれば、バイオポリマー粒子は、デンプン粒子、特に平均粒径400nm未満のデンプンナノ粒子からなるものであってもよい。特許文献1に記載されているように架橋剤と反応したバイオポリマー−添加剤複合体を含むバイオポリマーラテックス複合体含有組成は特に有用である。バイオポリマー系バインダ及び特にバイオポリマー粒子を含有するこれらのバインダーは、コーティング処方への多価塩の含有に適合し、コーティング製造及び工程を促進するように見られる。例えば、いくつかの場合には、コーティング組成は、コーティング組成に受け入れられる粘度を維持しつつ高固体に調製される。本願で用いられるバインダは、特許文献1〜6に開示されており、これらの文献のそれぞれにおける適切な開示は参照に含まれる。適切なバイオポリマーナノ粒子含有バインダの一例としては、Ecosyntheix Inc社製のEcosphere(登録商標)2240がある。
【0020】
バインダは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン酸化物等のような液体合成ポリマーであってもよい。
【0021】
主バインダの総量は、通常総顔料100重量部に対して約2〜15重量部、特に約5〜12重量部であってもよい。
【0022】
コーティングには、主バインダとともに用いられる共同バインダを含んでもよい。有用な共同バインダの例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート及びタンパク質バインダが含まれる。いくつかの実施形態において有用である他の共同バインダとしてはデンプン転換酵素を含有するデンプンがある。カチオン性デンプン及びアニオン性デンプンの両者は共同バインダとして用いてもよい。ADM Clineo 716デンプンは使用可能なエチレン化トウモロコシデンプン(アイオワ州ClintonのArcher Daniels Midland社製)である。Penford(登録商標)PG 260及びPG 290は、使用可能な他のエチレン化デンプン共同バインダの例示であってもよい。バインダのレベルは注意深く制御されるべきである。バインダの使用量が少なく過ぎると、コーティング構造は物理的完全性に欠け、一方、バインダの使用量が多すぎると、コーティングは多孔性が低減し、インク乾燥時間が長くなる。共同バインダが存在する場合、通常乾燥重量で顔料100部に対して共同バインダ約1〜8部、特に乾燥顔料100部に対して約2〜6部、又は、乾燥顔料100部に対して約2〜5部の量で使用してもよい。
【0023】
コーティング組成には多価塩も含まれる。本発明のある実施形態においては、多価金属は二価又は三価カチオンであってもよい。特に多価金属塩は、MS
+2、Ca
+2、Ba
+2、Zn
+2、Al
+2、好適なカウンターイオンとの組み合わせから選択されるカチオンであってもよい。Ca
+2及びMg
+2のような二価カチオンは特に有用である。カチオンの組み合わせも使用可能である。
【0024】
コーティングに使用される塩の具体例は、これらに限定されないが、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、塩化アルミニウム、ヒドロキシ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを含む。類似の塩は当業者に認識されるであろう。特に有用な塩には、CaCl
2、MgCl
2、MgSO
4、Ca(NO
3)
2及びMg(NO
3)
2が含まれ、これらの塩の水和物も含まれる。これらの塩の組み合わせも用いられる。塩は、総含量100重量部に対して約2.5〜25重量部、特に約4〜12.5重量部の量でコーティング中に存在してもよい。
【0025】
分散剤は、高固体コーティングを含むコーティング組成の加工を容易にするために用いられる。特に有用な分散剤には、Coatex社製のTopsperse JXA(ポリエーテルポリカルボキシレート、水溶液中のナトリウム塩)、Rheocarb 100(水溶液中のアクリルコポリマー)、ポリオキシアルキレンナトリウム塩(Carbosperse(登録商標)K-XP228ポリマー)及びXP-1722(ポリエーテルポリカルボキレート、水溶液中のナトリウム塩)、BYK Chemie社製のBYK-190(顔料親和基を有する高分子量ブロックコポリマーの溶液)及びBYK-2010(顔料親和基を有するアクリレートコポリマー)、並びに、Stepan Chemicals社製のPolystep TD-507(トリデシルアルコールエトキシレート)が含まれる。ある実施形態によれば、分散剤は、総顔料100重量部に対して約0.5〜2.5重量部、特に約0.75〜2重量部の量で存在させてもよい。
【0026】
保水性を向上するために保水助剤をコーティングに含んでもよい。多価イオンを含有するコーティングは商業用途の特性を保持する十分な水を有していない。このような保水助剤の1つとしては、Natral GR(Aqualon社製)がある。保水性の向上に加えて、副次的な利点は、バイオポリマーの結合強度を促進することである。これは以前では観察されない。テープ引きはより高い強度を示す。ここで用いられる保水助剤の例としては、これらに限定されないが、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプン及びこのような用途のための他の市販固体品がある。ある実施形態によれば、保水助剤は、総顔料100重量部に対して約0.1〜1重量部、特に約0.2〜0.5重量部の量で存在してもよい。
【0027】
コーティングの特性を変化するために他の任意の添加剤を用いてもよい。Clariant T26蛍光増白剤(イリノイ州McHenryのClariant Corporation社製)のような増白剤は使用可能である。不溶化剤又は架橋剤も有用である。特に有用な架橋剤の例示としては、Sequarez 755(オハイオ州AkronのRohmNova社製)及びglyoxal(BASF社製)が含まれる。コーティングがブレードコータにより塗工される場合、抗力を低減するために潤滑剤を任意に添加してもよい。これらの任意の添加剤は、存在する場合、通常総顔料100重量部に対して約0.1〜5重量部、特に約0.2〜2重量部の量で存在してもよい。
【0028】
従来の混合技術はこのコーティングの形成に用いてもよい。デンプンが使用される場合、通常コーティングを調製する前にスターチクッカーを用いて加熱される。ある実施形態によれば、デンプンはおおよそ35%の固体にされる。主顔料、副顔料及び追加顔料を含む全ての顔料は沈殿を生じさせないように個々に数分かけて混合される。実験室においては、顔料は、パドルミキサーを用いたドリルプレスミキサー上で混合されてもよい。主バインダは、共同バインダの1〜2分後にミキサーに添加してもよい。デンプンが使用される場合、通常おおよそ華氏190度のクッカーから温めつつミキサーに添加される。最終的なコーティングは混合構成要素の水中分散体により作製される。分散体の固体分は通常約20〜60重量%である。特に固体分は分散体の約45〜55重量%である。
【0029】
さらなる他の実施形態は、コーティングが少なくとも片面に塗工された紙基材を備えた改良印刷紙に関するものである。これらに限定されないが、ロールコータ、ジェットコータ、ブレードコータ又はロッドコータを含むいずれのコーティング方法又は装置も使用できる。コーティング重量は、サイズプレス、プレコート又は規格外原紙の片面3300ft
2に対して通常(乾燥重量)約2〜10ポンド、特に約5〜8ポンドである。塗工紙は通常紙表面の3300ft
2に対して約30〜250ポンドの範囲であろう。塗工紙は従来の方法を用いて任意に所望の厚さ又は光沢度に仕上げられてもよい。
【0030】
基材又はベースシートは従来のベースシートであってもよい。有用なベースシートの例示としては、ミシガン州EscanabaのNewPage Corporationの子会社であるEscanaba Paper Company社製の45ポンドPub Matte及びNewPage45ポンドNew Eraが含まれる。
【0031】
完成塗工紙は印刷に有用であってもよい。画像作製のためにコーティングにインクを塗工してもよい。塗工後、インク媒質はコーティングを浸透し、そこに吸収される。コーティング孔の数及び均一性により、インクを複数層に塗工した場合でさえ、均一に及び迅速なインク吸収が得られる。この塗工紙は多機能印刷に好適であってもよく、これにより、塗工紙媒体上の画像は、インクジェットプリンタの染料又は顔料インク、レーザプリンタのトナー及びグラビア又はフレキソ印刷のインクの組み合わせから作製されてもよい。
【0032】
一実施形態においては、下記の組成は、ブレードコータにより(3300ft
2に対して)片面5〜10ポンドでミシガン州EscanabaのNewPage社製のNewEra原紙上に塗工される。原紙は通常針葉樹及び広葉樹ファイバの混合物を含む。針葉樹ファイバは通常約45〜55%の量で存在し、広葉樹ファイバは約4〜10%の量で存在し、RMPファイバは約20〜30%の量で存在し、損紙は約20%の量で存在する。特に有用な原紙によれば、針葉樹及び広葉樹ファイバはそれぞれ8:1の比率で存在する。
【実施例】
【0033】
以下の非限定例は本発明の特異的な態様を示している。
【0034】
インクジェット受容コーティングは3nips/sideを用いて1200PLI/華氏100度でカレンダー処理された。標準Kodak Prosper顔料インクを含むKodakパッチプリンタにより得られた用紙上にテストターゲットを印刷した。QEA社製のパーソナル画像分析システム(PIAS)を用いて、シアンステップウエッジのグレイン及びモトルを測定した。モトルは低空間周波数で生じる密度の不均一性(すなわち、粗大スケールでのノイズ)である。グレインは高空間周波数で生じる密度の不均一性(すなわち、微細スケールでのノイズ)である。より低い数値はグレイン及びモトルが少ないことを示す。黒密度及び湿式摩耗の測定にはブラックDmaxパッチを用いた。湿式摩耗のためには、追加の圧力を負荷することなく、丸い100gのおもりを用いた。ブラックパッチ上の3領域で光学密度を測定し、平均を記録した。3滴の水をパッチ上に滴下し、約20秒間放置した。2切れのScotto C折りタオルをパッチの上部に載せ、その上部におもりを5回こすりつけた。しずくの内側及び外側について光学密度を再測定し、3つの測定値の平均をとり、密度のパーセント変化を記録した。
【0035】
Kodak Prosper顔料系インクを用いて比較用試料も印刷し、上記試験試料と同様に評価した。比較例1及び比較例2はそれぞれNewPage45ポンドNew Era及びNewPage 45# Publication Matteである。両者とも、クレイ、炭酸カルシウム及びラテックスバインダを含むコーティングを両面に塗工した市販の塗工紙である。塗工重量は、塗工シートの公称重量が45ポンドとなる30ポンドのベースシート上で通常約7〜8ポンド/reamであった。表1〜4の結果は、比較例に比べて本発明の実施例が改良されたモトルを発揮することを示している。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
ここに開示された組成及び方法は本発明の好適な実施形態を構成するが、本発明がこれらの組成及び方法に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱することなく変更され得ることは理解されるであろう。