特許第6548345号(P6548345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548345
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】ショックアブソーバ
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/516 20060101AFI20190711BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20190711BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20190711BHJP
   F16F 9/48 20060101ALI20190711BHJP
   F16F 9/58 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   F16F9/516
   F16F9/32 P
   F16F9/34
   F16F9/48
   F16F9/32 L
   F16F9/58 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-138073(P2018-138073)
(22)【出願日】2018年7月23日
(62)【分割の表示】特願2014-43167(P2014-43167)の分割
【原出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2018-159474(P2018-159474A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 禎治
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−24818(JP,A)
【文献】 特開2007−303626(JP,A)
【文献】 特開2007−46729(JP,A)
【文献】 米国特許第5190126(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口部を有し、他端側に底部を有した有底円筒状に形成され、粘性流体が封入されるシリンダと、
前記開口部を閉塞し、中心部分に挿通孔が開口されたキャップと、
前記シリンダの内周面で摺動することにより前記シリンダの内部空間を軸方向に二分割するピストンと、
前記シリンダの底部と前記ピストンとの間に介挿され、前記ピストンを前記開口部の側に付勢する第一バネと、
前記キャップの挿通孔に挿通され、一端側が前記シリンダの外部に延出されるとともに、他端側が前記シリンダの内部に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドの他端側に固定されるとともに前記ピストンに連結され、その内部に粘性流体を流通させるオリフィス流路が形成されるオリフィスと、を備え、
前記ピストンロッドと共に前記ピストンが前記シリンダ内を軸方向に移動する際に、前記オリフィスを通過する粘性流体の流動抵抗によって制動力を発生させるショックアブソーバであって、
前記ピストン及び前記オリフィスは、所定間隔よりも小さい範囲内で互いに近接離間可能に構成され、
前記ピストンと前記オリフィスとの間には、前記ピストンと前記オリフィスとを互いに離間する方向に付勢する、第二バネが介挿され、
前記オリフィスにおける前記ピストン側に近接する方向側の端面が前記ピストンにおける前記オリフィス側に近接する方向側の端面に当接している際は、前記オリフィスが前記オリフィス流路以外の流路を閉塞することにより流動抵抗が大きくなるとともに、前記オリフィスにおける前記ピストン側に近接する方向側の端面が前記ピストンにおける前記オリフィス側に近接する方向側の端面から離間している際は、前記オリフィスが前記オリフィス流路以外の流路を開放することにより粘性流体の流動抵抗が小さくなり、
前記ピストン及び前記オリフィスは、一方に係合突起部が形成されるとともに、他方に軸方向の所定幅を有する係合溝部が形成され、前記係合突起部が前記係合溝部と係合することにより、所定間隔よりも小さい範囲内で互いに近接離間可能に構成される、ことを特徴とする、ショックアブソーバ。
【請求項2】
前記オリフィスは、底部に流路孔が開口された筒状部材に柱状部材を嵌入して形成され、
前記筒状部材と前記柱状部材との間には、複数個の流路穴が開口された複数枚の板状部材が介挿され、
前記オリフィス流路は、前記筒状部材の前記流路孔、前記板状部材の流路穴、及び、前記筒状部材の内周面と前記柱状部材の外周面との間隙によって形成される、ことを特徴とする、請求項1に記載のショックアブソーバ。
【請求項3】
前記オリフィスは、底部に流路孔が開口されるともに、先端に向かって縮径する雌ねじ部がその内周面に形成された雌ねじ部材に、先端に向かって縮径する雄ねじ部がその外周面に形成された雄ねじ部材を螺入して形成され、
前記オリフィス流路は、前記雌ねじ部材の前記流路孔、及び、前記雌ねじ部材の雌ねじ部と前記雄ねじ部材の雄ねじ部との間隙によって形成される、ことを特徴とする、請求項1に記載のショックアブソーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショックアブソーバの製造コストを増大させずに制動精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有底円筒状のシリンダの内部に、粘性流体とともにピストン及びオリフィスを収納し、ピストンがシリンダ内を軸方向に移動する際に、オリフィスを通過する粘性流体の流動抵抗によって制動力を発生させるショックアブソーバが知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の如くである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−132790号公報
【特許文献2】特開2005−188693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の如く構成されたショックアブソーバにおいては、ピストンとオリフィスとの間にバネを介挿し、ピストンロッドがシリンダに押し込まれる際と戻る際とで流動抵抗の大きさを変える技術が知られている。しかし、ピストンロッドが戻った際のバネの自由長が一定ではないため、ショックアブソーバにおける制動力の立ち上がりにばらつきが生じるという問題があった。一方、制動力の立ち上がりの精度を向上させるためにバネの自由長の精度を高くしようとすると、部品点数の増加等によりコストが増大するという問題があった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、制動力の立ち上がりのばらつきを抑制することが可能となるショックアブソーバを簡易かつ安価な構成で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、一端側に開口部を有し、他端側に底部を有した有底円筒状に形成され、粘性流体が封入されるシリンダと、前記開口部を閉塞し、中心部分に挿通孔が開口されたキャップと、前記シリンダの内周面で摺動することにより前記シリンダの内部空間を軸方向に二分割するピストンと、前記シリンダの底部と前記ピストンとの間に介挿され、前記ピストンを前記開口部の側に付勢する第一バネと、前記キャップの挿通孔に挿通され、一端側が前記シリンダの外部に延出されるとともに、他端側が前記シリンダの内部に挿入されるピストンロッドと、前記ピストンロッドの他端側に固定されるとともに前記ピストンに連結され、その内部に粘性流体を流通させるオリフィス流路が形成されるオリフィスと、を備え、前記ピストンロッドと共に前記ピストンが前記シリンダ内を軸方向に移動する際に、前記オリフィスを通過する粘性流体の流動抵抗によって制動力を発生させるショックアブソーバであって、前記ピストン及び前記オリフィスは、所定間隔よりも小さい範囲内で互いに近接離間可能に構成され、前記ピストンと前記オリフィスとの間には、前記ピストンと前記オリフィスとを互いに離間する方向に付勢する、第二バネが介挿され、前記オリフィスにおける前記ピストン側に近接する方向側の端面が前記ピストンにおける前記オリフィス側に近接する方向側の端面に当接している際は、前記オリフィスが前記オリフィス流路以外の流路を閉塞することにより流動抵抗が大きくなるとともに、前記オリフィスにおける前記ピストン側に近接する方向側の端面が前記ピストンにおける前記オリフィス側に近接する方向側の端面から離間している際は、前記オリフィスが前記オリフィス流路以外の流路を開放することにより粘性流体の流動抵抗が小さくなり、前記ピストン及び前記オリフィスは、一方に係合突起部が形成されるとともに、他方に軸方向の所定幅を有する係合溝部が形成され、前記係合突起部が前記係合溝部と係合することにより、所定間隔よりも小さい範囲内で互いに近接離間可能に構成されるものである。
【0008】
請求項2においては、前記オリフィスは、底部に流路孔が開口された筒状部材に柱状部材を嵌入して形成され、前記筒状部材と前記柱状部材との間には、複数個の流路穴が開口された複数枚の板状部材が介挿され、前記オリフィス流路は、前記筒状部材の前記流路孔、前記板状部材の流路穴、及び、前記筒状部材の内周面と前記柱状部材の外周面との間隙によって形成されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記オリフィスは、底部に流路孔が開口されるともに、先端に向かって縮径する雌ねじ部がその内周面に形成された雌ねじ部材に、先端に向かって縮径する雄ねじ部がその外周面に形成された雄ねじ部材を螺入して形成され、前記オリフィス流路は、前記雌ねじ部材の前記流路孔、及び、前記雌ねじ部材の雌ねじ部と前記雄ねじ部材の雄ねじ部との間隙によって形成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、制動力の立ち上がりのばらつきを抑制することが可能となるショックアブソーバを簡易かつ安価な構成で提供する、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一実施形態に係るショックアブソーバの通常状態を示す断面図。
図2】同じくピストンロッドの押し込み開始時におけるショックアブソーバを示す断面図。
図3】同じくピストンロッドの押し込み途中におけるショックアブソーバを示す断面図。
図4】同じくピストンロッドが押し込まれた状態におけるショックアブソーバを示す断面図。
図5】同じくピストンロッドの戻り開始時におけるショックアブソーバを示す断面図。
図6】同じくピストンロッドの戻り途中におけるショックアブソーバを示す断面図。
図7】同じくピストンロッドの押し込み途中における粘性流体の流路を示す拡大断面図。
図8】同じくピストンロッドの戻り途中における粘性流体の流路を示す拡大断面図。
図9】第二実施形態に係るショックアブソーバにおけるオリフィス流路を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、図1から図8を用いて、本発明の第一実施形態に係るショックアブソーバ10について説明する。以下においては、各図における上側をショックアブソーバ10の上方として説明する。
【0013】
ショックアブソーバ10は図1に示す如く、シリンダ11と、キャップ12と、オイルシール13と、体積吸収体14と、オイル封止ビス15と、Oリング16と、ピストンロッド17と、ロッドカバー18と、ピストン21と、第一バネ22と、第二バネ23と、オリフィス20(筒状部材24、板状部材25・25・・、柱状部材26)と、を備える。以下、各部材について具体的に説明する。
【0014】
シリンダ11は、一端側(図1における上側)に開口部11aを有し、他端側に底部11bを有した有底円筒状に形成されている。底部11bには底部11bを貫通する封止孔11cが開口されている。シリンダ11の内部に粘性流体であるオイルが充填された状態で、封止孔11cにオイル封止ビス15が挿入され、シリンダ11の下側面とオイル封止ビス15との間にOリング16が介挿される。これにより、シリンダ11内部にオイルが封入される。
【0015】
キャップ12はシリンダ11の開口部11aを閉塞する円柱状の部材である。キャップ12の中心部分にはキャップ12の両平面を貫通する挿通孔12aが開口されている。挿通孔12aには、図1に示す如くピストンロッド17が挿通される。
【0016】
オイルシール13は、キャップ12の下方に隣接してシリンダ11に嵌入される円柱状の部材である。オイルシール13はシリンダ11の開口部11aをシールすることにより、シリンダ11の内部に封入されたオイルの漏出を防止している。なお、キャップ12にシール機能を持たせる構成とすることも可能である。
【0017】
オイルシール13の下方に隣接して、体積吸収体14がシリンダ11に嵌入される。体積吸収体14は独立気泡性のゴム及びスポンジが組み合わせて構成された円柱状の部材である。そして、後述する如くピストンロッド17がシリンダの内部に押し込まれた際に気泡が圧縮されることにより、挿入されたピストンロッド17の体積分の体積増加量を吸収する構成としている。
【0018】
ピストンロッド17は前記の如く、キャップ12に開口された挿通孔12aに挿通される棒状部材である。ピストンロッド17の一端側(図1における上側)はシリンダ11の外部に延出され、他端側はシリンダ11の内部に挿入される。即ち、ピストンロッド17はキャップ12、オイルシール13、及び、体積吸収体14を貫通して、上下方向に摺動可能に配設されている。ピストンロッド17の上端部にはロッドカバー18が配設されている。
【0019】
ピストン21はシリンダ11に収容された略筒状部材であり、その外周面21cがシリンダ11の内周面で摺動することにより、シリンダ11の内部空間を軸方向に二分割する。ピストン21の底面には連通孔21aが開口されており、オイルが連通孔21aを介してピストン21の内側を上下に流通する。ピストン21の内部には収容室21bが形成されており、この収容室21bには後述する如く第二バネ23が収容される。ピストン21の上部には円筒部21dが突出して配設され、円筒部21dには軸方向(上下方向)の所定幅D(図7及び図8を参照)を有する係合溝部21eが周方向に形成されている。シリンダ11の底部上面とピストン21との間には、ピストン21を開口部11aの側(上側)に付勢する第一バネ22が介挿されている。
【0020】
ピストンロッド17の他端側(図1における下側)には、その内部に粘性流体を流通させるオリフィス流路が形成されるオリフィス20が固定される。また、オリフィス20の下部はピストン21に連結される。オリフィス20は、筒状部材24、板状部材25・25・・、及び、柱状部材26で構成される。オリフィス20は、三枚の板状部材25・25・・を筒状部材24に収容した状態で、柱状部材26を筒状部材24に嵌入して形成される。即ち、オリフィス20において、筒状部材24と柱状部材26との間には、板状部材25・25・・が介挿されている。なお、本実施形態において板状部材25は三枚配設されているが、その枚数は限定されるものではない。また、板状部材25を配設しない構成とすることも可能である。
【0021】
筒状部材24は底部に流路孔24aが開口された円筒状に形成される。筒状部材24の底部における外周面には、外側に突出する係合突起部24bが形成されている。板状部材25・25・・・にはその厚さ方向に、複数個の流路穴25a(図7及び図8を参照)が開口されている。筒状部材24の内周面と柱状部材26の外周面との間には、オイルが流通できる程度に、間隙が形成されている。そして、オリフィス20において、筒状部材24の流路孔24a、板状部材25・25・・・の流路穴25a、及び、筒状部材24の内周面と柱状部材26の外周面との間隙が、オリフィス流路として形成される。
【0022】
筒状部材24の係合突起部24bは、図1に示す如く、ピストン21の係合溝部21eと係合する。これにより、オリフィス20とピストン21とは、所定間隔(係合溝部21eの所定幅D)よりも小さい範囲内で互いに近接離間可能に構成される。また、ピストン21とオリフィス20との間には、ピストン21とオリフィスとを互いに離間する方向に付勢する、第二バネ23が介挿されている。具体的には図1に示す如く、ピストン21の収容室21bに第二バネ23が収容され、第二バネ23がオリフィス20における筒状部材24の底面に当接することにより、第二バネ23はピストン21とオリフィスとを互いに離間する方向に付勢している。なお、本実施形態においては、オリフィス20に係合突起部24bが形成され、ピストン21に係合溝部21eが形成される構成としているが、オリフィス20に係合溝部を形成し、ピストン21に係合突起部を形成する構成とすることも可能である。
【0023】
本実施形態に係るショックアブソーバ10は上記の如く構成することにより、ピストンロッド17と共にピストン21がシリンダ11の内部を軸方向に移動する際に、オリフィス20を通過するオイルの流動抵抗によって制動力を発生させる構成としている。
【0024】
具体的には図2に示す如く、ピストンロッド17の押し込み開始時は、ピストン21は第一バネ22の弾性力及び外周面21cにおける摩擦抵抗によって変位せず、オリフィス20のみが降下する。これにより、第二バネ23が圧縮され、オリフィス20の下面はピストン21の上面に当接する。この際、収容室21bは筒状部材24の流路孔24aのみと連通する状態となる。即ち、オリフィス20がピストン21に当接している際は、オリフィス20がオリフィス流路以外の流路を閉塞する。
【0025】
次に、ピストンロッド17の押し込み途中では図3に示す如く、ピストン21はオリフィス20が当接した状態で降下し、第一バネ22は徐々に圧縮される。この際、収容室21bは筒状部材24の流路孔24aのみと連通する状態(オリフィス流路以外の流路が閉塞された状態)であるため、オイルの流動抵抗は大きくなる。詳細には図7中の矢印a、矢印b、及び、矢印cに示す如く、オイルは収容室21bからオリフィス流路(流路孔24a、流路穴25a、及び、筒状部材24の内周面と柱状部材26の外周面との間隙)のみを流通する。このため、オリフィス20を通過するオイルの流動抵抗が大きくなって大きな制動力が発生するのである。図4に示す如くピストン21がオイル封止ビス15に当接すると、第一バネ22の圧縮が終了し、ピストンロッド17の押し込みが完了する。
【0026】
次に、ピストンロッド17の戻り開始時は図5に示す如く、ピストン21は第二バネ23の弾性力及び外周面21cにおける摩擦抵抗によって変位せず、オリフィス20のみが上昇する。これにより、第二バネ23が伸長し、オリフィス20の下面はピストン21の上面から離間する。この際、収容室21bは筒状部材24の流路孔24a以外の部分である、筒状部材24の外周部分と連通する状態となる。即ち、オリフィス20がピストン21から離間している際は、オリフィス20はオリフィス流路以外の流路を開放する。
【0027】
次に、ピストンロッド17の戻り途中では図6に示す如く、ピストン21はオリフィス20が離間した状態で上昇し、第一バネ22は徐々に伸長する。この際、収容室21bは筒状部材24の流路孔24a以外の部分と連通する状態(オリフィス流路以外の流路が開放された状態)であるため、オイルの流動抵抗は小さくなる。詳細には図8中の矢印d、矢印eに示す如く、オイルはオリフィス流路だけでなく、オリフィス流路以外の、筒状部材24の外周部分から収容室21bへと流入する。このため、オリフィス20を通過するオイルの流動抵抗を小さくしてピストンロッド17が戻りやすくなるのである。図1に示す如く第一バネ22の伸長が終了すると、ピストンロッド17の戻りが完了する。この際、オリフィス20は第二バネ23の弾性力によって、係合突起部24bが係合溝部21eに係合した状態を維持する。
【0028】
本実施形態に係るショックアブソーバ10によれば、上記の如く構成することにより、制動力の立ち上がりのばらつきを抑制することができる。具体的には図1及び図8に示す如く、ピストンロッド17が戻った際に係合突起部24bが係合溝部21eに係合した状態を維持するため、第二バネ23の長さを一定にすることができる。つまり、係合溝部21eは軸方向に所定幅Dで形成されているため、係合突起部24bをピストン21におけるオリフィス20との当接面から所定幅Dの位置に留めることができる。即ち、第二バネ23が伸長した長さを一定にすることが可能となるため、ショックアブソーバ10においてピストンロッド17の押し込み開始時の制動力の立ち上がり精度を向上させることが可能となるのである。
【0029】
また、本実施形態に係るショックアブソーバ10によれば、オリフィス20に係合突起部24bを形成し、ピストン21に係合溝部21eを形成し、係合突起部24bが係合溝部21eと係合することにより、オリフィス20とピストン21とが所定幅Dよりも小さい範囲内で互いに近接離間可能に構成している。これにより、簡易な構成で第二バネ23が伸長した長さを一定にすることが可能となる。つまり、部品点数を増加させることなく、簡易な構成で、ショックアブソーバ10においてピストンロッド17の押し込み開始時の制動力の立ち上がり精度を向上させることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態に係るショックアブソーバ10において、オリフィス20は、底部に流路孔24aが開口された筒状部材24に柱状部材26を嵌入して形成され、筒状部材24と柱状部材26との間には、複数個の流路穴25a・25a・・・が開口された複数枚の板状部材25が介挿される。また、オリフィス流路は、筒状部材24の流路孔24a、板状部材25の流路穴25a・25a・・・、及び、筒状部材24の内周面と柱状部材26の外周面との間隙によって形成される。これにより、それぞれの部材におけるショックアブソーバ10の制動力への影響を低減させている。つまり、各部品における減衰力のばらつきを互いに補うことにより、一定的な制動力を得られる構成としている。
【0031】
次に、図9を用いて、本発明の第二実施形態に係るショックアブソーバについて説明する。本実施形態に係るショックアブソーバについては、前記第一実施形態に係るショックアブソーバ10とほぼ同一の構成を備えるため、構成の異なる部分を中心に説明を行うものとする。
【0032】
本実施形態においては、オリフィスの構成が第一実施形態と異なる。具体的には図9に示す如く、本実施形態におけるオリフィスは、雌ねじ部材124及び雄ねじ部材126で構成される。雌ねじ部材124は底部に流路孔124aが開口された筒状に形成され、その内周面には、先端に向かって縮径するテーパ形状の雌ねじ部124cが形成されている。雌ねじ部材124の底部における外周面には、外側に突出する係合突起部124bが形成されている。一方、雄ねじ部材126はその外周面に、先端に向かって縮径するテーパ形状の雄ねじ部126aが形成されている。雌ねじ部材124と雄ねじ部材126とは、雄ねじ部126aが雌ねじ部124cに螺入されることにより結合され、本実施形態におけるオリフィスが構成される。
【0033】
図9に示す如く、雄ねじ部126aと雌ねじ部124cとの間には、オイルが流通できる程度に、間隙が形成されている。そして、本実施形態に係るオリフィスにおいて、雌ねじ部材124の流路孔124a、及び、雄ねじ部126aと雌ねじ部124cとの間隙が、オリフィス流路として螺旋状に形成される。
【0034】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、ショッククアブソーバにおける制動力を調整可能としている。具体的には、雄ねじ部材126の雄ねじ部126aを、雌ねじ部材124の雌ねじ部124cに螺入させる際に、締め込み量を調節することにより、オリフィス流路の幅を調節することが可能となる。つまり、オリフィス流路を狭くした場合、オリフィスを通過するオイルの流動抵抗が大きくなるため、ショックアブソーバにおいて生じる制動力を大きくすることができる。逆に、オリフィス流路を広くした場合、オリフィスを通過するオイルの流動抵抗が小さくなるため、ショックアブソーバにおいて生じる制動力を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 ショックアブソーバ
20 オリフィス(筒状部材24・柱状部材26)
21 ピストン
23 第二バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9