特許第6548350号(P6548350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6548350
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20190711BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20190711BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20190711BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20190711BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A61K8/36
   A61K8/898
   A61K8/73
   A61K8/81
   A61K8/34
   A61Q5/00
   A61Q5/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-20724(P2019-20724)
(22)【出願日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年2月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500315884
【氏名又は名称】株式会社ナンバースリー
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】中西 京介
(72)【発明者】
【氏名】松岡 絢香
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−239312(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/021875(WO,A1)
【文献】 特開2018−177719(JP,A)
【文献】 特開平11−079942(JP,A)
【文献】 特開2013−053113(JP,A)
【文献】 特表2016−530305(JP,A)
【文献】 特表2011−522053(JP,A)
【文献】 特表2013−514275(JP,A)
【文献】 特開2014−001184(JP,A)
【文献】 特表2013−520468(JP,A)
【文献】 特開2014−001183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE
/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%〜5重量%の濃度のレブリン酸と、
全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%〜3重量%の濃度の親水性多糖類、水溶性シリコーン、又はビニル系高分子の水溶性高分子増粘剤と、
全毛髪修復用組成物に対して0.1重量%〜3重量%の濃度の水溶性保湿剤と、
を含有する毛髪修復用組成物であって、
本毛髪修復用組成物を損傷後の毛髪に塗布して、水洗し、乾燥させることで、当該毛髪の破断強度を向上させる毛髪修復用組成物。
【請求項2】
全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%〜5重量%の濃度のレブリン酸と、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%〜3重量%の濃度の親水性多糖類、水溶性シリコーン、又はビニル系高分子の水溶性高分子増粘剤と、全毛髪修復用組成物に対して0.1重量%〜3重量%の濃度の水溶性保湿剤と、を含有する毛髪修復用組成物を用いる毛髪修復方法であって、
前記毛髪修復用組成物を損傷後の毛髪に塗布して、水洗し、乾燥させることで、当該毛髪の破断強度を向上させる
毛髪修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、毛髪に化学処理(パーマネント処理、ブリーチ処理、染毛処理等)を行い、毛髪に加工を施し、ファッショナブルに仕上げることが頻繁に行われている。化学処理は、主に、毛髪への酸化処理と還元処理との組み合わせであり、例えば、パーマネント処理では、毛髪を還元させた後に酸化させることで、毛髪にウェーブを付与したり、縮毛やくせ毛等を矯正したりする。
【0003】
このように毛髪に化学処理を施すと、毛髪のキューティクルの剥離が生じ、毛髪を構成する複数のケラチン(ケラチンタンパク質)同士の側鎖結合が切断される。ここで、側鎖結合には、硫黄を媒介としてケラチン同士を強く結合するジスルフィド結合(シスチン結合)と、隣り合ったケラチン同士を静電的に結合する塩結合(イオン結合)と、水を媒介としてケラチン同士を弱く結合する水素結合の3種類が存在する。化学処理により、ジスルフィド結合と塩結合が主に切断される。そして、側鎖結合の切断が生じると、束になっていた複数のケラチンが解け、枝毛、切れ毛、折れ毛、ポーラス毛、炭化毛といった毛髪の損傷が生じ、毛髪の強度が低下するという課題がある。
【0004】
そこで、毛髪の損傷を修復するための毛髪修復方法や毛髪修復剤が各種開発されている。例えば、特表2017−515882号公報(特許文献1)には、チオール等の求核剤との共有結合を形成することが可能な官能基とイオン化性官能基との組み合わせの活性剤を含む調合剤を毛髪に塗布する毛髪処理方法が開示されている。これにより、毛髪等に見られるケラチン中のジスルフィド結合を再構築し、毛髪の損傷の修復を図ることが出来るとしている。
【0005】
又、特表2016−523844号公報(特許文献2)には、遊離チオール基と反応し、1つ以上の電荷を有する4つの反応性部分と、2つ以上の電荷で、且つ、反応性部分上の電荷と逆の電荷を有するリンカーとを備え、電荷の合計はゼロであり、反応性部分は、リンカーにイオン結合する結合剤を含む製剤を毛髪に付与する、毛髪を処置するための方法が開示されている。これにより、毛髪の乾燥に改善されたコンディショニングの利点を提供し、ベタベタした感じのない持続的な潤った感触及び滑らかな感触を毛髪に提供することが出来るとしている。
【0006】
又、特開2003−267844号公報(特許文献3)には、加水分解ケラチン15〜30質量%とイノシットヘキサリン酸0.01〜1質量%を含有する毛髪修復剤が開示されている。これにより、損傷を受けた毛髪に対する修復作用が優れ、しかも高温下での加水分解ケラチンの析出を抑制することが出来るとしている。
【0007】
又、特開2014−218440号公報(特許文献4)には、毛髪の化学的処理による損傷を修復するための毛髪修復剤であって、プロポリスを含有する毛髪修復剤が開示されている。これにより、損傷度合いの大きな毛髪に対しても、1回使用するだけで、高い修復効果を発現させ得るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2017−515882号公報
【特許文献2】特表2016−523844号公報
【特許文献3】特開2003−267844号公報
【特許文献4】特開2014−218440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、毛髪の強度の向上に着目した毛髪修復用組成物が市場に出回っており、その毛髪修復用組成物には、毛髪の修復に寄与するジカルボン酸(例えば、マレイン酸)又はその誘導体が含有されている。
【0010】
しかしながら、ジカルボン酸を含有する毛髪修復用組成物では、毛髪の強度が不十分という課題があり、毛髪の強度をより向上させるための新規成分が求められていた。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、少なくとも一回の使用で、毛髪の強度を向上させることが可能な毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る毛髪修復用組成物は、1分子中にカルボキシル基とケトン基又はカルボニル基を有するケト酸と、水溶性高分子増粘剤と、水溶性保湿剤と、を含有する毛髪修復用組成物であって、本毛髪修復用組成物を損傷後の毛髪に塗布して、水洗し、乾燥させることで、当該毛髪の破断強度を向上させる毛髪修復用組成物である。
【0013】
本発明に係る毛髪修復方法は、1分子中にカルボキシル基とケトン基又はカルボニル基を有するケト酸と、水溶性高分子増粘剤と、水溶性保湿剤と、を含有する毛髪修復用組成物を用いる毛髪修復方法であって、前記毛髪修復用組成物を損傷後の毛髪に塗布して、水洗し、乾燥させることで、当該毛髪の破断強度を向上させる毛髪修復方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少なくとも一回の使用で、毛髪の強度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0016】
本発明者は、長年、毛髪修復用組成物について鋭意研究しており、毛髪の強度の向上させるために、公知のジカルボン酸及びヒドロキシ酸に変わる有効成分を探し求め、ケト酸に着目し、後述する実施例に基づいて、本発明を完成させたのである。
【0017】
即ち、本発明に係る毛髪修復用組成物は、1分子中にカルボキシル基とケトン基又はカルボニル基を有するケト酸と、水溶性高分子増粘剤と、水溶性保湿剤と、を含有する毛髪修復用組成物であって、本毛髪修復用組成物を損傷後の毛髪に塗布して、水洗し、乾燥させることで、当該毛髪の破断強度を向上させる毛髪修復用組成物である。これにより、少なくとも一回の使用で、毛髪の強度を向上させることが可能となる。
【0018】
つまり、ケト酸のカルボキシル基とケトン基又はカルボニル基が、損傷後の毛髪内のケラチンのうち、側鎖結合が切断されたケラチンの塩基性アミノ酸のアミノ基と反応し、切断されたケラチン同士の塩結合を再生させる。これにより、側鎖結合の塩結合が主に再生させ、毛髪の損傷が強度的に修復される。特に、水溶性高分子増粘剤が、切断されたケラチンに対してケト酸の浸潤を促し、ケト酸の反応を増大させる。
【0019】
ここで、毛髪修復用組成物の塗布後の毛髪が乾燥すると、切断されたケラチン中におけるケト酸の反応が低下し易くなる。そこで、本発明では、更に、水溶性保湿剤を添加することで、塗布後のケラチン中の水を確保し、毛髪の乾燥を防止し、ケト酸の反応低下を確実に防止することが出来る。従って、少なくとも一回の使用で、毛髪の強度を向上させることが可能となる。
【0020】
尚、損傷後の毛髪とは、化学処理により毛髪内のケラチン同士の側鎖結合(ジスルフィド結合、塩結合、水素結合)が切断されて、枝毛、切れ毛、折れ毛、ポーラス毛、炭化毛等の毛髪が生じていることを意味する。又、毛髪の破断強度(毛髪の引張強度ともいう)とは、毛髪を長手方向に延伸し、破断した時の毛髪に印加された破断重量(g)を意味し、具体的には、毛髪修復用組成物を塗布し、水洗し、乾燥させた後の毛髪を所定の荷重測定器により所定の荷重で延伸し、破断した時の毛髪に印加された荷重の重量(g)となる。
【0021】
ケト酸の種類に特に限定は無いが、例えば、グリオキシル酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、αケトグルタル酸、アセト酢酸、オキサロ酢酸、アセトンジカルボン酸、レブリン酸、αケトグルタル酸、又はこれらの組み合わせを挙げることが出来る。又、毛髪修復用組成物は、ケト酸の誘導体を含んでも良い。ケト酸は、毛髪の破断強度の向上の観点から、グリオキシル酸、レブリン酸、又はこれらの組み合わせを含むと好ましい。
【0022】
ケト酸の濃度に特に限定は無いが、例えば、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%〜20重量%であると好ましく、修復後の毛髪の手櫛の通し易さの観点から、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%〜5重量%であると更に好ましい。
【0023】
水溶性高分子増粘剤の種類に特に限定は無く、例えば、天然高分子、半合成高分子、合成高分子を挙げることが可能であり、イオン性高分子増粘剤でも、ノニオン性高分子増粘剤でも構わない。水溶性高分子増粘剤は、例えば、親水性多糖類、シリコーン、ビニル系高分子、又はこれらの組み合わせを挙げることが出来る。水溶性高分子増粘剤は、耐塩性を有すると好ましい。
【0024】
親水性多糖類は、例えば、天然高分子と半合成高分子とに分類される。天然高分子は、例えば、キサンタンガム、アラビアゴム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、フコイダン、クインシードガム、トラントガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナン、カードラン、ジェランガム、フコゲル、カゼイン、ゼラチン、デンプン、コラーゲン、シロキクラゲ多糖類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、タマリンドウガム、サクシノグルカン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム、マルメロ種子エキス等を挙げることが出来る。
【0025】
半合成高分子は、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、セルロース結晶体、デンプン・アクリル酸ナトリウムグラフト重合体、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を挙げることが出来る。
【0026】
シリコーンは、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ヒドロキシ末端基を有するジメチルポリシロキサン(ジメチコノール)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等を挙げることが出来る。ここで、アミノ変性シリコーンは、例えば、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)等を挙げることが出来る。
【0027】
ビニル系高分子は、例えば、ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等を挙げることが出来る。ここで、ビニル系高分子の他に、ポリオキシエチレン系高分子、アクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等を含んでも良い。ポリオキシエチレン系高分子は、例えば、ポリエチレングリコール20,000、ポリエチレングリコール40,000、ポリエチレングリコール60,000等を挙げることが出来る。又、アクリル系高分子は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等を挙げることが出来る。
【0028】
水溶性高分子増粘剤の濃度に特に限定は無いが、例えば、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%〜5重量%であると好ましく、修復後の毛髪の手櫛の通し易さの観点から、全毛髪修復用組成物に対して0.001重量%〜3重量%であると更に好ましい。
【0029】
水溶性保湿剤の種類に特に限定は無いが、例えば、ポリオール、ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等を挙げることが出来る。
【0030】
ポリオールは、例えば、2価アルコール、3価アルコール、4価のアルコール、5価アルコール、6価アルコール、8価アルコール、9価アルコール等を挙げることが出来る。2価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等を挙げることが出来る。3価アルコールは、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタトリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を挙げることが出来る。4価のアルコールは、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール等を挙げることが出来る。5価アルコールは、アドニトール、アラビトール、キシリトール等を挙げることが出来る。6価アルコールは、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール等を挙げることが出来る。8価アルコールは、スクロース等を挙げることが出来る。9価アルコールは、マルチトール等を挙げることが出来る。
【0031】
水溶性保湿剤の濃度に特に限定は無いが、例えば、全毛髪修復用組成物に対して0.1重量%〜5重量%であると好ましく、修復後の毛髪の手櫛の通し易さの観点から、全毛髪修復用組成物に対して0.1重量%〜3重量%であると更に好ましい。
【0032】
毛髪修復用組成物のpHに特に限定は無いが、例えば、pH2〜pH10であると好ましい。
【0033】
毛髪修復用組成物は、上述した成分以外にも、上述した効果を妨げない範囲で、例えば、溶媒、染料、安定化剤、pH調整剤、動植物エキス、水溶性高分子、アミノ酸及びその誘導体、タンパク質及びその誘導体、ビタミン剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料等の他の成分を含むことが出来る。
【0034】
毛髪修復用組成物の形態に特に限定は無いが、例えば、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤(整髪料、ヘアースタイリング剤)、パーマ液、ヘアカラーリング剤、クリーム、ローション、ゲル、光沢剤、スプレー等を挙げることが出来る。シャンプーとは、毛髪を洗浄するための洗剤又は石鹸を含有する毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。コンディショナーとは、毛髪を柔軟にし、毛髪をなめらかにし、及び/又は毛髪の光沢を変えるために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。トリートメントとは、頭髪に水分、油分を補ったり、頭髪に栄養を与えたり、毛髪の損傷又はフケを防止するために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。スタイリング剤とは、髪型を整えたり固定したりするために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。パーマ液とは、縮毛するために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。ヘアカラーリング剤とは、毛髪を特定の色に染めるために毛髪に塗布する液体又は半固体を意味する。
【0035】
毛髪修復用組成物をシャンプーにする場合は、シャンプーの成分に毛髪修復用組成物の成分(ケト酸、水溶性高分子増粘剤、水溶性保湿剤)を添加することで、シャンプーを構成することが出来る。毛髪修復用組成物をコンディショナーにする場合は、同様に、コンディショナーの成分に毛髪修復用組成物の成分を添加することで、コンディショナーを構成することが出来る。トリートメント、スタイリング剤、パーマ液、ヘアカラーリング剤、クリーム、ローション、ゲル、光沢剤、スプレー等も同様である。
【0036】
毛髪修復用組成物の製造方法に特に限定は無く、毛髪修復用組成物の成分を含む混合液を30℃〜100℃で加熱したり、自然冷却したりする製造方法を挙げることが出来る。
【0037】
毛髪修復用組成物を用いる毛髪修復方法は、毛髪修復用組成物を損傷後の毛髪に塗布して、水洗し、乾燥させることで、当該毛髪の破断強度を向上させる毛髪修復方法である。
【0038】
毛髪修復用組成物の塗布方法に特に限定は無く、例えば、毛髪を損傷させる化学処理を行った日と同日中に塗布したり、化学処理を行った後、数日〜2週間以内に塗布したりする方法を挙げることが出来る。又、毛髪修復用組成物の塗布量に特に限定は無く、例えば、損傷後の毛髪を飽和するために十分な量であると好ましい。毛髪修復用組成物の塗布回数に特に限定は無く、例えば、1回でも良いし、2回以上繰り返しても良い。
【0039】
毛髪修復用組成物の水洗方法に特に限定は無く、例えば、損傷後の毛髪に対して毛髪修復用組成物の最終塗布の直後、最終塗布後から60秒以内、最終塗布後から、5分、10分、20分等の所定の時間が経過した後に、塗布後の毛髪を水洗する方法を挙げることが出来る。
【0040】
毛髪修復用組成物の乾燥方法に特に限定は無く、例えば、水洗後の毛髪をドライヤーで乾燥させる方法を挙げることが出来る。水洗後の毛髪に対する乾燥温度は、例えば、15℃〜45℃であり、乾燥時間は、1分〜60分である。
【0041】
損傷後の毛髪に対する毛髪修復方法の回数に特に限定は無く、例えば、1回でも良いし、2回以上繰り返しても良い。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明における実施例、比較例等を具体的に説明するが、本発明の適用が本実施例などに限定されるものではない。
【0043】
(1)シャンプー組成物の調製
先ず、精製水にポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル硫酸ナトリウム(3E.O.)(東邦化学株式会社製 アルスコープDA−330S)を30質量%、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(エボニックジャパン株式会社製 TEGOBETAIN CKKB5 S)を10重量%、コカミドメチルMEA(花王株式会社製 アミノーン C−11S)を3重量%添加し、撹拌しながら加温溶解し、80℃に保持した。その後、撹拌しながら自然冷却し、40℃まで冷却された時点で、クエン酸(扶桑化学工業株式会社製 精製クエン酸 結晶M)を0.1重量%、メチルイソチアゾリノン(株式会社ケミクレア製 ZONEN MT−10)0.01重量%加えた。その際に、後述の表1〜4に示す配合に従って毛髪修復用組成物の成分を添加した。更に、撹拌しながら自然冷却し、室温まで冷却された時点で撹拌を止め、得られたシャンプー組成物を毛髪修復用組成物の一態様とした。
【0044】
尚、表1〜4中、成分に関する数値は、シャンプー組成物100重量%に対する、その成分の重量%を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
表1〜4中、グリオキシル酸は、東京化成株式会社製のGlyoxylic Acidを使用し、レブリン酸は、大塚化学株式会社製のレブリン酸を使用し、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、大同化成株式会社製を使用し、1,3−ブチレングリコールは、高級アルコール工業株式会社製のハイシュガーケインBGを使用し、アモジメチコンは、東レ・ダウコーニング株式会社製のSM 8904 Cosmetic Emulsionを使用し、ポリビニルピロリドンは、BASF製のルビスコールK90を使用し、マレイン酸は、ナカライテスク株式会社製を使用し、コハク酸は、扶桑化学株式会社製を使用した。
【0050】
(2)毛髪の処理
脱色剤(株式会社ナンバースリー製 NUMBER THREE BP)を5gと、酸化剤(株式会社ナンバースリー製 HUE第2剤)を15gとを、均一になるまで混ぜ合わせて混合物を作成した。得られた混合物を刷毛に1g付着させ、その刷毛を、1gの黒髪を扇状に広げた毛束の表と裏に塗布し、25℃で15分〜30分間放置することにより脱染を行った。これにより、毛髪が損傷状態となる。その後、毛束を水洗し、水洗後の毛束を、「(1)シャンプー組成物の調製」で調製したシャンプー組成物を用いて、一回洗浄し、ドライヤーで乾燥させた。
【0051】
(3)毛束の破断強度
「(2)毛髪の処理」で処理した毛束の破断強度(g)を荷重測定器(引張圧縮試験機)(株式会社TOTO製 DIANOS−A2)で測定した。測定方法は、毛束をクランパーに固定し、毛束が引っ張られて破断される時の毛髪に印加される破断重量(g)を毛髪の破断強度とした。破断強度の値が高い程、毛髪の強度が向上している(すなわち、毛髪が修復されている)ことを示す。
【0052】
(4)毛束の色差
「(2)毛髪の処理」で処理した毛束の色差、つまり、L値(−)を分光式色彩計(日本電色工業株式会社製 SE−2000)で測定した。L値の値が高い程、毛髪が暗くなっている(すなわち、毛髪の損傷が少ない)ことを示す。
【0053】
(5)官能評価
「(2)毛髪の処理」で処理した毛束に手櫛を通した際の感触について、専門のパネラー5名により官能評価を行った。評価は、5段階(5点:まったく引っかかりを確認できない、4点:ひっかかりを確認できない、3点:ひっかかりを確認できるかどちらともいえない、2点:ひっかかりが確認できる、1点:はっきりとひっかかりが確認できる)で行い、各パネラーの点数を合計して、以下の基準によってランク付けをした。「◎」及び「○」の評価のものが製品として合格である。
【0054】
<基準>
◎:点数の合計が20点以上
○:点数の合計が15点以上20点未満、
△:点数の合計が10点以上15点未満
×:点数の合計が10点未満。
【0055】
「(3)毛束の破断強度」と「(4)毛束の色差」と「(5)官能評価」の結果を表1〜4に示す。表1に示すように、実施例1〜5では、ケト酸のグリオキシル酸と、水溶性高分子増粘剤の疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、水溶性保湿剤の1,3−ブチレングリコールとが添加されることで、毛髪の破断強度が高い値を示した。又、毛髪のL値も高く、官能試験も「◎」及び「○」の評価であった。
【0056】
又、表2に示すように、実施例6〜10では、ケト酸をグリオキシル酸からレブリン酸に変更しても、同様に、毛髪の破断強度が高い値を示した。又、毛髪のL値も高く、官能試験も「◎」及び「○」の評価であった。更に、ケト酸の添加濃度を変更しても、毛髪の破断強度は高い値を示していた。
【0057】
更に、表3に示すように、実施例11〜17では、ケト酸をレブリン酸とし、水溶性高分子増粘剤の濃度を変更したり、水溶性高分子増粘剤の種類をマルメロ種子エキス、アモジメチコン、ポリビニルピロリドンに変更したり、水溶性保湿剤の種類をプロピレングリコール、グリセリンに変更したりしても、毛髪の破断強度は高い値を示していた。
【0058】
一方、表4に示すように、比較例1〜3では、ケト酸をジカルボン酸のマレイン酸又はコハク酸に変更したり、ヒドロキシ酸のサリチル酸に変更したりすると、毛髪のL値は高く、官能試験も「◎」の評価であったが、毛髪の破断強度は低い値となった。尚、驚くべきことに、実施例1〜17の全ての毛髪の破断強度は、比較例1〜3の毛髪の破断強度よりも高い値を示した。
【0059】
従って、ケト酸と水溶性高分子増粘剤と水溶性保湿剤とを組み合わせた毛髪修復用組成物(シャンプー組成物)は、従来のジカルボン酸やヒドロキシ酸を含む毛髪修復用組成物と比較して、少なくとも一回の使用により、毛髪の強度を向上させることが分かった。
【0060】
又、ケト酸の濃度と高分子増粘剤の濃度とをそれぞれ所定の範囲とすることで、毛髪の破断強度を向上させるとともに、修復後の毛髪の手櫛の通し易さも良好にすることが分かった。
【0061】
尚、本発明における実施例、比較例等では、毛髪修復用組成物をシャンプー組成物に構成して評価を行ったが、シャンプー組成物に限らず、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤、パーマ液、ヘアカラーリング剤、クリーム、ローション、ゲル、光沢剤、スプレー等に構成しても、同様の作用効果を奏すると推測する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係る毛髪修復用組成物は、単体はもちろん、毛髪修復用組成物の成分を含有するシャンプー、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤、パーマ液、ヘアカラーリング剤、クリーム、ローション、ゲル、光沢剤、スプレー等に有用であり、少なくとも一回の使用で、毛髪の強度を向上させることが可能な毛髪修復用組成物及び毛髪修復方法として有効である。
【要約】      (修正有)
【課題】少なくとも一回の使用で、毛髪の破断強度を向上させる毛髪修復用組成物の提供。
【解決手段】1分子中にカルボキシル基とケトン基又はカルボニル基を有するケト酸と、水溶性高分子増粘剤と、水溶性保湿剤と、を含有する毛髪修復用組成物であり、損傷後の毛髪に塗布し、水洗し、乾燥させることで、当該毛髪の破断強度を向上させる毛髪修復用組成物。
【選択図】なし