特許第6548400号(P6548400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548400
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】フルベン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/32 20060101AFI20190711BHJP
   C07C 2/86 20060101ALI20190711BHJP
   C07C 13/28 20060101ALI20190711BHJP
   C07C 43/215 20060101ALI20190711BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20190711BHJP
   C07C 211/50 20060101ALI20190711BHJP
   C07C 209/68 20060101ALI20190711BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190711BHJP
【FI】
   C07C1/32
   C07C2/86
   C07C13/28
   C07C43/215
   C07C41/30
   C07C211/50
   C07C209/68
   !C07B61/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-25764(P2015-25764)
(22)【出願日】2015年2月12日
(65)【公開番号】特開2016-147832(P2016-147832A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】591045677
【氏名又は名称】関東化學株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 順
(72)【発明者】
【氏名】篠原 淳
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−218445(JP,A)
【文献】 特開2007−302853(JP,A)
【文献】 Chajara, Khalil et al,An improved pathway to 6,6-disubstituted fulvenes,Tetrahedron Letters,2004年,(2004), 45(36), 6741-6744
【文献】 Yang, Xiaoxia et al.,α-Olefin homopolymerization and ethylene/1-hexene copolymerization catalysed by novel ansa-group IV complexes/MAO system,Applied Organometallic Chemistry,2007年,(2007), 21(10), 870-879
【文献】 Yang, Xiaoxia et al.,Ethylene and propylene polymerization by the new substituted bridged (cyclopentadienyl) (fluorenyl) zirconocenes,Applied Organometallic Chemistry,2006年,(2006), 20(2), 130-137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus(STN)
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化亜鉛および三フッ素化ホウ素からなる群から選択されるルイス酸存在下、
下記一般式(1)
【化1】
で表されるケトンと、下記一般式(2)
【化2】
で表されるシクロペンタジエンのアルカリ金属塩とを縮合させる工程を含む、下記一般式(3)
【化3】
で表されるフルベン類を製造する、フルベン類の製造方法
(式中、
、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい以下の基、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のチオアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基を示し、
lおよびmは、置換基RまたはRの数を示し、それぞれ独立して0〜5の整数を示し、lまたはmが2以上の場合、複数あるRまたはRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Xは、存在しないか、あるいは、単結合、CRあり、
、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し
Aは、アルカリ金属原子を示す)。
【請求項2】
およびRの少なくとも一つが、炭素数1〜10のアルコキシ基または炭素数2〜10のジアルキルアミノ基を示す、請求項に記載の方法。
【請求項3】
さらに、環状エーテルを存在させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
環状エーテルがテトラヒドロフランまたはテトラヒドロピランである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルベン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
6,6−ジアリールフルベンは炭素架橋型メタロセンや医薬品及び各種有機化合物の中間体として用いられる。6,6−ジアリールフルベンは、各種の炭素アニオンの6位への求核付加反応により、または各種ジエンとの環化付加反応によって、各種化合物の合成原料となりうる有用な化合物である。
【0003】
例えば、ポリエチレン生産に有効な炭素架橋型ハフノセン錯体の配位子の合成例として、フルオレニルリチウムの6,6−ジフェニルフルベンへの求核付加反応を開示している(特許文献1)。
また、抗不安薬としての薬理効果を示すN置換アリールピペラジン系化合物に置換される骨格の一つとして6,6−ジアリールフルベンが用いられている(非特許文献1)。
【0004】
一般にフルベン類はケトンとシクロペンタジエンの脱水縮合によって合成される。
α−プロトンを有しないケトン類のジフェニルケトン誘導体と、シクロペンタジエンのアルカリ金属塩(以下、CpMと略する場合がある)との縮合により6,6−ジアリールフルベン類を合成できることが報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5132381号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ANNALES UNIVERSITATIS MARIAE CURIE SKLODOWSKA LUBLIN POLONIA,Vol.LVIII,12(2003)147
【非特許文献2】Tetrahedron Letters 2004,45,6741
【非特許文献3】Applied Organometallic Chemistry 2010,24,727
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のジフェニルケトン誘導体とシクロペンタジエンのアルカリ金属塩との縮合によるフルベン類の製造方法では、ジフェニルケトン誘導体のベンゼン環に置換される置換基の種類によってその反応性が大きく異なる。
例えば、当該置換基が電子吸引基である場合には、比較的容易に合成可能であり、従来の方法によって室温条件下でも高収率な製造が可能であるが、ジフェニルケトン誘導体のベンゼン環に電子供与基が置換されている場合および無置換の場合には、同様の製造方法を用いても、十分な反応性は得られず、さらに高温で長時間反応させても、低収率である。反応が低収率であると、原材料費だけでなく、未反応原料等との分離、精製にも手間や時間がかかり、製造コストが上昇するなどの問題が生じる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、原料となるケトン類、特にα−プロトンを有しないケトン類が有する置換基の性質を問わず、効率的に反応が進行するフルベン類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
鋭意検討の結果、本発明者らは、α−プロトンを有しないケトン、例えばジフェニルケトン誘導体とシクロペンタジエンのアルカリ金属塩との縮合反応において、ルイス酸存在下で反応を行うことにより、ジフェニルケトン誘導体に置換される官能基の種類を問わず、簡便で効率的にフルベン類を合成することができる方法を見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下に関する。
[1] ルイス酸存在下、α−プロトンを有しないケトン類と、シクロペンタジエンのアルカリ金属塩とを縮合させる工程を含む、フルベン類の製造方法。
[2] ルイス酸存在下、下記一般式(1)
【化1】
で表されるケトンと、下記一般式(2)
【化2】
で表されるシクロペンタジエンのアルカリ金属塩とを縮合させる工程を含む、下記一般式(3)
【化3】
で表されるフルベン類を製造する、[1]に記載の方法
(式中、
、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい以下の基、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜16のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のチオアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トシル基、を示し、
lおよびmは、置換基RまたはRの数を示し、それぞれ独立して0〜5の整数を示し、lまたはmが2以上の場合、複数あるRまたはRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Xは、存在しないか、あるいは、単結合、CR、O、S、NまたはNRであり、
、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい以下の基、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜16のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のチオアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トシル基を示し、
は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜10の炭化水素基を示し、
nはRの数を示し、0〜4の整数を示し、nが2以上の場合、複数あるRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Aは、アルカリ金属原子を示す)。
[3] RおよびRの少なくとも一つが、炭素数1〜10のアルコキシ基または炭素数2〜10のジアルキルアミノ基を示す、[1]または[2]に記載の方法。
【0011】
[4] ルイス酸が、三フッ化ホウ素、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化亜鉛、またはハロゲン化ガリウムである、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5] さらに、環状エーテルを存在させる、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 環状エーテルがテトラヒドロフランまたはテトラヒドロピランである、[5]に記載の方法。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の方法で製造されたフルベン類。
【発明の効果】
【0012】
通常、ルイス酸は、塩基性条件下では、中和反応が優先して進行するなどの理由から、触媒としての機能を発揮しない。本発明の製造方法における反応機構は必ずしも明らかではないが、本発明の製造方法によれば、ジフェニルケトン誘導体とシクロペンタジエンのアルカリ金属塩との縮合反応の反応系が塩基性であるにもかかわらず、ルイス酸が触媒として機能し、電子供与基を置換基として有するジフェニルケトン誘導体または無置換のジフェニルケトン誘導体とアルカリ金属塩との反応を触媒し、温和な反応条件下で、高収率で目的物を得ることができる。
また、環状エーテルを存在させることにより、反応速度および収率を著しく向上することができる。
本発明によれば、高収率で目的物を得ることができるため、目的物の分離・精製が容易になり、ひいては製造コストの大幅な削減につながる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、α−プロトンを有しないケトン類を、ルイス酸存在下、シクロペンタジエンのアルカリ金属塩と縮合させ、フルベン類を製造する方法に関し、さらに環状エーテルを存在せしめることができる。
【0014】
本発明において、α−プロトンを有しないケトンとは、カルボニル基に隣接する第一番目の炭素にプロトンが存在しないものをいう。例えば、α−プロトンを有しないケトンは、下記一般式(1)
【化4】
式中、Rは任意の置換基であり、lおよびmは、置換基RまたはRの数を示し、それぞれ独立して0〜5の整数を示し、
Xは、存在しないか、あるいは、単結合、CR、O、S、NまたはNRであり、
、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい以下の基、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜16のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のチオアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トシル基を示す、
で表される化合物が挙げられる。
【0015】
具体的には下記一般式で表される化合物群が挙げられる。
【化5】
【0016】
本発明において、式(1)の置換基RおよびRは、電子吸引基であっても、電子供与基であっても、温和な条件で、効率よく反応が進行するため、特に限定はされないが、それぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トシル基、であることが好ましい。
【0017】
ここで、RおよびRにおける炭化水素基には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基が含まれる。
アルキル基は、直鎖、分枝鎖または環状であってもよく、直鎖または分枝鎖の場合は、炭素数1〜10が好ましく、環状の場合は、炭素数3〜10が好ましい。
アルケニル基およびアルキニル基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数2〜10が好ましい。
芳香族炭化水素基は、炭素数6〜18の芳香族炭化水素が含まれ、具体的にはフェニル、ビフェニル、ナフチル、テルフェニル、アンスリル、アズレニル、フルオレニル、ピレニル、フェナンスリル、ナフスリル等が挙げられる。
【0018】
炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、複数置換されていてもよい。
【0019】
およびRにおけるケイ素含有炭化水素基は、炭素数1〜16であることが好ましい。ケイ素含有炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、複数置換されていてもよい。
【0020】
およびRにおけるアルコキシ基は、炭素数1〜10が好ましい。アルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、複数置換されていてもよい。
【0021】
およびRにおけるチオアルコキシ基は、炭素数1〜10であることが好ましい。チオアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、複数置換されていてもよい。
【0022】
およびRにおけるジアルキルアミノ基は、アルキル基の部分は同一でも異なっていてもよく、各々独立して炭素数2〜10であることが好ましい。ジアルキルアミノ基のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、複数置換されていてもよい。
【0023】
およびRにおけるハロゲン基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、本発明においては、電子吸引基が存する場合でも問題なく反応が進行するため、いずれのハロゲン基であってもよい。
lおよびmは、置換基RまたはRの数を示し、それぞれ独立して0〜5の整数を示す。lまたはmが2以上の場合、複数あるRまたはRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい以下の基、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜16のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のチオアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トシル基を示す。置換基を有していてもよい、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜16のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のチオアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、ハロゲン基は、RおよびRにおいて上述したものと同様であることができる。
【0025】
本発明において、好ましいα−プロトンを有しないケトンは、
一般式(1)
【化6】
で表される、
式中、RおよびRが、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい以下の基、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜16のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のチオアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トシル基を示し、
lおよびmは、置換基RまたはRの数を示し、それぞれ独立して0〜5の整数を示し、lまたはmが2以上の場合、複数あるRまたはRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
Xは、存在しないか、あるいは、単結合、CR、O、S、NまたはNRであり、
、Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい以下の基、炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜16のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のチオアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、トシル基を示す、化合物である。
【0026】
本発明によれば、RおよびRが存在しない場合、すなわち置換基を有しないベンゾフェノンであっても、またRおよびRの少なくとも1つが電子供与基であっても、反応が高速で進行し、高収率でフルベン類を製造することができる。RおよびRのうち電子供与基としては、例えば炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、ジアルキルアミノ基であり、繁用性の観点から、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基であり、より好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のジアルキルアミノ基である。
【0027】
本発明において、ルイス酸とは、ルイス酸として働く化合物であれば特に限定されないが、好ましくは、三フッ化ホウ素、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化ガリウムが挙げられ、さらに好ましくは、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化亜鉛等が挙げられる。
ルイス酸は、本発明の反応系に含まれるシクロペンタジエニルアニオンとペンタハプト型の安定なメタロセン種を形成し得る金属を含有しないものが好ましい。例えばTiCl中のTiは、シクロペンタジエニルアニオンとチタノセンを形成し、促進効果が失われる場合があるため好ましくない。したがって、好ましくはルイス酸は、Ti、Fe等を含有しない。
【0028】
本発明においては、シクロペンタジエンのアルカリ金属塩として、下記一般式(2)に示される化合物を用いることができる。
【化7】
式中、Rは、置換基を有していてもよい、炭化水素基を示す。また、Aは、アルカリ金属原子を示す。
本発明において、Rが炭化水素基であれば、反応に影響を与えることはないため、本発明の製造方法が実施できる範囲において、特に限定はされない。
【0029】
ここで、Rにおける炭化水素基には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基が含まれる。
アルキル基は、直鎖、分枝鎖または環状であってもよく、直鎖または分枝鎖の場合は、炭素数1〜10が好ましく、環状の場合は、炭素数3〜10が好ましい。
アルケニル基およびアルキニル基は、直鎖または分枝鎖であってもよく、炭素数2〜10が好ましい。
芳香族炭化水素基は、炭素数6〜18の芳香族炭化水素が含まれ、具体的にはフェニル、ビフェニル、ナフチル、テルフェニル、アンスリル、アズレニル、フルオレニル、ピレニル、フェナンスリル、ナフスリル等が挙げられる。
炭化水素基は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜10のアルキル基、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、複数置換されていてもよい。
【0030】
nはRの数を示し、0〜4の整数を示す。nが2以上の場合、複数あるRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
Aにおけるアルカリ金属は、好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0032】
本発明においては、一態様において、環状エーテルを添加する。環状エーテルの添加により、反応が著しく促進される。一方、環状エーテル以外のエーテルでは、添加効果は見られない。
【0033】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジオキソラン等が挙げられ、好ましくはテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0034】
本発明によれば、例えば、ルイス酸存在下、下記一般式(1)
【化8】
で表されるケトンと、下記一般式(2)
【化9】
で表されるシクロペンタジエンのアルカリ金属塩とを縮合させる工程を含む製造方法により、下記一般式(3)
【化10】
で表される6,6−ジアリールフルベン類を合成することができる。
【0035】
本発明によれば、塩基性の反応系においてルイス酸が触媒として機能する。本発明において、塩基性の反応系とは、反応開始時、反応の進行中および反応の終了時のいずれかにおいて反応液が塩基性を示すこと、すなわち反応液を蒸留水で加水分解した水溶液のpHが7より大きな値を呈することをいう。
【0036】
本発明の反応温度は基質の反応性によって適宜決定することができる。
典型的には、反応温度は−20〜40℃、好ましくは−10〜5℃であり、加熱還流を必要とせずに反応を進行させることができる。
反応時間も基質の反応性によって適宜決定することができるが、典型的には0.5〜5時間、好ましくは0.5〜1時間であり、短時間で反応を終了することができる。
【実施例】
【0037】
実施例1
下記反応により、化学式(4)に示される化合物を合成することができる。
【化11】
100ml3つ口フラスコをアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:1.31g(0.6eq.)を徐々に加え攪拌した(黄色溶液)。その後、ベンゾフェノン:3gを加えて溶解させ、室温で一時間攪拌した。また100mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.4g(1.3eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:30ml加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を13.1ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。100mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100ml3つ口フラスコの溶液を滴下した(黄色溶液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率97%であった。
【0038】
実施例2
下記反応により、化学式(5)に示される化合物を合成することができる。
【化12】
100ml3つ口フラスコをアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:1.15g(0.6eq)を徐々に加え、攪拌した。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3gを加えて室温で一時間攪拌した。また100mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.22g(1.3eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加えて攪拌した。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.3ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。100mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100ml3つ口フラスコの溶液を滴下した(黄色懸濁液)。5℃で30分反応させ、GCで反応終了(GC反応率97%)を確認後、氷冷下、19wt%HCl水溶液を20ml加えて攪拌した。ヘキサンを加えて抽出し、有機層を飽和NaHCO水溶液、飽和食塩水で分液し、NaSOで乾燥させた。NaSOをろ別後、濃縮して粗生成物:3.50g(粗収率95%)を得た。粗生成物に対して、メタノール20mlを用いて懸濁洗浄後ろ集し、フィルター上をメタノールで洗浄し、橙色固体を3.31g(収率90%)を得た。
【0039】
実施例3
下記反応により、化学式(6)に示される化合物を合成することができる。
【化13】
1L4つ口フラスコをアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:900mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:36.3g(0.6eq)を徐々に加え、攪拌した(黄色溶液)。その後、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン:110gを加えて室温で一時間攪拌した。また3L4つ口フラスコをアルゴン置換し、シクロペンタジエン:39.0g(1.3eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:900mlを加えて攪拌した。氷水浴で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を360.8ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。その後、3L4つ口フラスコを5℃に冷却し、1L4つ口フラスコの溶液を滴下した(その際、内温は最大12℃まで上昇)。5℃で30分反応させ、GCで反応終了を確認後(GC反応率98%)、氷冷下、19wt%HCl水溶液を200ml加えて攪拌した(その際の内温は19℃まで上昇)。ヘキサンを加えて抽出し、有機層を飽和NaHCO水溶液、飽和食塩水で分液し、NaSOで乾燥させた。NaSOをろ別後、濃縮して粗生成物:131.06g(粗収率99%)を得た。粗生成物に対して、メタノール500mlで懸濁洗浄後ろ集し、フィルター上をメタノールで洗浄して橙色固体を123.1g(収率93%)を得た。
【0040】
実施例4
下記反応により、化学式(7)に示される化合物を合成することができる。
【化14】
1L4つ口フラスコをアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:700mlを加えて、容器を氷水浴で冷却しながら塩化アルミニウム:21.8g(0.6eq.)を加えて溶解させ、氷水浴で冷却し、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン:73.3gを加えた(濃橙色懸濁液)。2L4つ口フラスコをアルゴン置換し、シクロペンタジエン:21.6g(1.2eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:700mlを加えた。容器を氷水浴で冷却しながら1.57M n−BuLiヘキサン溶液:200ml(1.15eq.)を滴下して加え、室温で2時間攪拌した。容器を氷メタノール浴で冷却し、1L4つ口フラスコの溶液を滴下した。5℃以下で30分攪拌し、GCで反応確認後、反応液を冷水へ投入して反応を停止した。有機層を分液し、塩化アンモニウム水溶液、食塩水で順次洗浄してNaSOで乾燥した。NaSOをろ過後、濃縮して析出物にメタノールを300ml加え懸濁洗浄して橙色析出物をろ過した。目的のフルベンを77.8g収率90%で得た。
【0041】
比較例1
比較例として、化学式(7)に示される化合物の合成について、ルイス酸を用いない反応例を示す。
【化15】
300mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエンリチウム塩:2.50g(3.1eq.)、脱水シクロペンチルメチルエーテル:70ml、脱水テトラヒドロフラン:1.5mlを加えて攪拌した。氷水浴で容器を冷却後、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン:3.0gを加えた。室温で攪拌後、徐々に昇温しながら還流させ、6日間反応させた。反応液を氷水浴で冷却後、塩化アンモニウム飽和水溶液でクエンチした。酢酸エチルで抽出後、有機層を水洗し、NaSOで乾燥した。NaSOをろ別後、濃縮して得られた茶褐色固体をヘキサン/酢酸エチルを展開溶媒とし、シリカゲルろ過で原点物を除去した後、橙色固体:1.12g、収率32%で得た。
【0042】
比較例2
比較例として、化学式(4)に示される化合物の合成について、ルイス酸を用いない反応例を示す。
50mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加え、氷水浴で冷却した。その後、ベンゾフェノン:3.00gを加えて攪拌した。また100mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.4g(1.3eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:30ml加えた。5℃で冷却後、1.6M n−BuLiヘキサン溶液を12.9ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。100mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、50mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色溶液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率7%であった。
【0043】
置換基Rに水素および電子供与基を有する基質を用いた反応系における、ルイス酸添加効果を確認した。
【表1】
【0044】
ルイス酸を添加しない比較例1および2においては、十分な収率が得られていないのに対し、ルイス酸を添加した場合には、低温、短時間で、いずれも90%以上の収率で目的物が得られることが分かった。なお、Rが水素またはメトキシであるベンゾフェノンについて、ルイス酸を添加しない反応例が非特許文献2に、Rがメチルであるベンゾフェノンについて、ルイス酸を添加しない反応例が非特許文献1に記載されているが、いずれも十分な反応性が得られていない。このことからも、ルイス酸を添加することによる有効性を確認することができる。
【0045】
実施例5
化学式(5)に示される化合物の合成において、環状エーテルとしてTHPを添加し、溶媒にトルエンを用いた合成例を示す。
【化16】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水トルエン:20mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:0.66g(0.6eq.)、脱水テトラヒドロピラン:2.84g(4eq.)を加えて攪拌した(黄色溶液)。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:1.74gを加えて溶解させ、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:0.71g(1.3eq.)をはかり取り、脱水トルエン:20mlを加えた。5℃で冷却後、1.6M n−BuLiヘキサン溶液を6.45ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率95%であった。
【0046】
実施例6
化学式(5)に示される化合物の合成において、環状エーテルとしてTHFを添加し、溶媒にEtOを用いた合成例を示す。
【化17】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水ジエチルエーテル:30mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:1.15g(0.6eq.)、脱水テトラヒドロフラン:4.11g(4eq.)を加えて、攪拌した(黄色溶液)。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて溶解させ、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水ジエチルエーテル:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.34ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率95%であった。
【0047】
実施例7
化学式(5)に示される化合物の合成において、環状エーテルとしてTHFを添加し、溶媒にトルエンを用いた合成例を示す。
【化18】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水トルエン:30mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:1.15g(0.6eq.)、脱水テトラヒドロフラン:4.11g(4eq.)を加えて、攪拌した(黄色溶液)。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて溶解させ、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水トルエン:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.34ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率96%であった。
【0048】
環状エーテルは、いずれの溶媒と組み合わせても高い反応率を示した。
【表2】
【0049】
実施例8
化学式(5)に示される化合物の合成において、ルイス酸と環状エーテル以外のエーテルを添加した合成例を示す。
【化19】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水t−ブチルメチルエーテル:30mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:1.15g(0.6eq.)を徐々に加えて、攪拌した(溶解)。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水t−ブチルメチルエーテル:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.34ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率3%であった。
【0050】
実施例9
化学式(5)に示される化合物の合成において、ルイス酸と環状エーテル以外のエーテルを添加した合成例を示す。
【化20】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水シクロペンチルメチルエーテル:30mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:1.15g(0.6eq.)を徐々に加えて、攪拌した(褐色溶液)。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水シクロペンチルメチルエーテル:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.34ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率4%であった。
【0051】
実施例10
化学式(5)に示される化合物の合成において、ルイス酸と環状エーテル以外のエーテルを添加した合成例を示す。
【化21】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水ジエチルエーテル:30mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:1.15g(0.6eq.)を徐々に加えて、攪拌した(黄色溶液)。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水ジエチルエーテル:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.34ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率3%であった。
【0052】
実施例11
化学式(5)に示される化合物の合成において、ルイス酸を添加し、エーテル類を用いない合成例を示す。
【化22】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水トルエン:30mlを加え、氷水浴で冷却した。AlCl:1.15g(0.6eq.)を徐々に加えて、攪拌した(溶解しない)。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水トルエン:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.34ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率2%であった。
【0053】
比較例3
50mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水ジエチルエーテル:30mlを加え、氷水浴で冷却した。4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて、攪拌した。また100mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水ジエチルエーテル:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.6M n−BuLiヘキサン溶液を11.12ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。100mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、50mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率1%であった。
【0054】
比較例4
50mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加え、氷水浴で冷却した。4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて、攪拌した。また100mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.6M n−BuLiヘキサン溶液を11.12ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(淡黄色懸濁液)。100mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、50mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。30分後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率1%であった。
【0055】
環状エーテルを用いる実施例5〜7の場合と比較し、環状エーテルではないエーテルを用いた場合、またはエーテルを用いない場合には、低温、短時間での反応率(GC反応率)は低かった。しかしながら、低温、短時間での反応においても、ルイス酸を用いない場合(比較例3および4)と比較して、ルイス酸による加速効果が認められた。
【表3】
【0056】
実施例12
化学式(5)に示される化合物の合成において、ルイス酸に塩化亜鉛を用いた合成例を示す。
【化23】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加え、氷水浴で冷却した。ZnCl:1.17g(0.6eq.)を徐々に加えて、攪拌した(黄色溶液)。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.34ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。室温で14時間攪拌した後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率94%であった。
【0057】
実施例13
化学式(5)に示される化合物の合成において、ルイス酸にBF・OEtを用いた合成例を示す。
【化24】
100mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加え、氷水浴で冷却した。BF・OEt:4.05g(2eq.)を徐々に加えて攪拌した。その後、4,4’−ジメチルベンゾフェノン:3.00gを加えて、室温で一時間攪拌した。また200mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:1.23g(1.3eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:30mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を11.34ml(1.25eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した(黄色懸濁液)。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した(黄色懸濁液)。室温で24時間攪拌した後、少量の溶液をサンプリングし、19wt%HClaqに加えて、トルエンで抽出した。GCを測定すると反応率74%であった。
【0058】
実施例14
化学式(7)に示される化合物の合成において、ルイス酸にBF・OEtを用いた合成例を示す。
【化25】
20mlシュレンク管をアルゴン置換し、脱水テトラヒドロフラン:10mlを加え、氷水浴で冷却した。BF・OEt:1.06g(2eq.)を加えて攪拌した。氷水浴で冷却後、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン:1.00gを加えて、室温で一時間攪拌した。また50mlシュレンク管をアルゴン置換し、シクロペンタジエン:0.27g(1.1eq.)をはかり取り、脱水テトラヒドロフラン:10mlを加えた。5℃で冷却後、1.57M n−BuLiヘキサン溶液を2.61ml(1.1eq.)を滴下して、室温で一時間攪拌した。200mlシュレンク管を再び5℃に冷却し、100mlシュレンク管の溶液を滴下した。室温で24時間攪拌した後、少量の溶液をサンプリングし、飽和塩化アンモニウム水溶液に加えて、ジエチルエーテルで抽出した。GCを測定すると反応率76%であった。
【0059】
AlCl以外のルイス酸について、添加効果を確認した。AlCl以外にも、ZnClおよびBFにおいても、添加効果が確認された。
【表4】