(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548402
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】ドラム用減衰調整装置
(51)【国際特許分類】
G10D 13/00 20060101AFI20190711BHJP
G10D 13/02 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
G10D13/00 260
G10D13/02 100
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-29426(P2015-29426)
(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-222413(P2015-222413A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年11月16日
(31)【優先権主張番号】13/999,440
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595028731
【氏名又は名称】リモ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Remo,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・エイチ・メイ
【審査官】
安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−169537(JP,A)
【文献】
特開2004−070034(JP,A)
【文献】
特開2004−184998(JP,A)
【文献】
実開平02−123997(JP,U)
【文献】
米国特許第04567807(US,A)
【文献】
米国特許第05892168(US,A)
【文献】
米国特許第08148619(US,B1)
【文献】
米国特許第06700044(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 13/00 −13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムシェル(14)と、演奏面(30)および周縁(32)を有するドラムヘッド(16)と、底縁を有するドラムヘッド締結手段(18)とを備える演奏用ドラムの音減衰調整手段であって、
環状支持部材(20)と、
前記環状支持部材(20)を前記ドラムヘッド(16)の周縁(32)に取り付けるためのドラムヘッド周縁載置手段(28)であって、前記環状支持部材(20)の一部であるドラムヘッド周縁載置手段(28)と、を備え、
前記ドラムヘッド周縁載置手段(28)は、前記環状支持部材(20)のそれぞれが対応する前記ドラムヘッド(16)の面から離間するように、前記ドラムヘッド(16)の周縁(32)上にそれぞれ位置するように構成され、
前記ドラムヘッド周縁載置手段は、前記ドラムヘッド締結手段の底縁と前記ドラムヘッドの周縁との間の位置で保持されるように構成され、
前記音減衰調整手段は、前記ドラムヘッド周縁載置手段(28)と前記ドラムヘッド(16)との間に位置して消音する、消音手段(22)をさらに備え、前記消音手段(22)がドラムヘッド(16)と前記ドラムヘッド周縁載置手段(28)の周辺部(26)との間において自由に浮動可能な状態で設けられる、音減衰調整手段。
【請求項2】
前記消音手段は、音吸収素材を備える、請求項1に記載の音減衰調整手段。
【請求項3】
前記音吸収素材は、不均一な厚さを有する、請求項2に記載の音減衰調整手段。
【請求項4】
前記音吸収素材は、非円形である、請求項2に記載の音減衰調整手段。
【請求項5】
前記演奏用ドラムの倍音を抑制する、請求項1に記載の音減衰調整手段。
【請求項6】
前記消音手段は、発泡体を備える、請求項2に記載の音減衰調整手段。
【請求項7】
前記ドラムヘッドは、少なくとも1つの開口を有する、請求項1に記載の音減衰調整手段。
【請求項8】
ドラムシェルと、それぞれ面および周縁を有するレゾナントヘッドおよびバターヘッドを含むドラムヘッドと、底縁を有する、前記バターヘッドに対する第1ドラムヘッド締結手段と、底縁を有する、前記レゾナントヘッドに対する第2ドラムヘッド締結手段とを備える演奏用バスドラムの音減衰調整手段であって、
少なくとも2つの環状支持部材と、
前記環状支持部材の一方を前記レゾナントヘッドの周縁上に載置し、前記環状支持部材の他方を前記バターヘッドの周縁上に載置するように、前記環状支持部材のそれぞれと一体化している、ドラムヘッド周縁載置手段と、を備え、
前記ドラムヘッド周縁載置手段は、前記環状支持部材のそれぞれが対応する前記ドラムヘッドの面から離間するように、前記ドラムヘッドの周縁上にそれぞれ位置するように構成され、
前記ドラムヘッド周縁載置手段は、前記第1ドラムヘッド締結手段と前記第2ドラムヘッド締結手段のそれぞれの底縁とそれに対応する前記ドラムヘッドの周縁との間の位置で保持されるように構成されることを特徴とする音減衰調整手段。
【請求項9】
前記レゾナントヘッド上に載置される前記環状支持部材は、1または複数の開口と、取り付けダイヤル部材とを備え、
前記ダイヤル部材は、1または複数の開口を有し、前記バターヘッドが叩かれたときに前記演奏用バスドラムから生じる空気の流れを調節するように、前記環状支持部材の開口の1つ以上を開閉するように回転可能である、請求項8に記載の音減衰調整手段。
【請求項10】
前記レゾナントヘッドは、開口している、請求項9に記載の音減衰調整手段。
【請求項11】
前記レゾナントヘッドは、少なくとも1つの開口を有し、前記レゾナントヘッド上に載置される前記環状支持部材は、少なくとも1つの開口を有し、
前記レゾナントヘッドおよび前記環状支持部材の開口は、マイク、もしくは、他の音強調装置または音増幅装置を収容するように保持された状態で、実質的に互いに位置決めされる、請求項8に記載の音減衰調整手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、楽器の分野に関し、特に、ドラムヘッドの上方またはそれに連結して着脱可能に載置されるドラム用減衰調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
打楽器、特に演奏用ドラムから生成される音の減衰に使用される装置は、当技術分野において周知である。例えば、ほんの一例であるが、ドラムヘッド上またはその下にプラスチックまたはゴム製リング(例えばマイラー(登録商標)ディスク)を配置するか、バスドラムのシェル内に配置されるピローまたはある種の布製素材を使用する場合のいずれか、もしくは、その両方の場合がある。これら全ての場合についての目的は3つある。第1に、ドラム音を抑制、もしくは、高周波を減衰することであり、すなわち、ある種の音吸収素材を採用することで、より雑音を少なくし雑音を目立たなくする。第2に、ドラム倍音を抑制する。そして、第3に、ドラム倍数を修正しつつ、ドラム本来の音、もしくは、「豊かな」ドラム音を保つ。
【0003】
異なる手段によるものであるが、上記3つの目的を全て達成する従来の装置の一例について、米国特許第4,589,323号に記載されている。米国特許第4,589,323号では、例えば発泡体またはその他の好適な種類の音吸収素材など、ある種の音修正素材または消音素材に対する支持体の役割を果たす装置の使用について教示しており、当該音修正素材または消音素材は、下側支持装置と当該素材に接触するバターヘッドとの間に配置される。ドラムヘッドがドラムスティックなどの硬質物で叩かれたときに、音吸収素材は、ほとんどではないが多くの倍音を消しつつ、同時に、ドラムの音全般を抑制するように働く。しかしながら、当該装置の深刻な欠点として、定位置にある支持装置、音吸収素材、およびドラムヘッドを保持する役割を果たすドラムのカウンターフープを取り外す必要があり、そして、ドラムヘッドも、その下の音吸収素材がその交換のために取り外し可能となるように構成される必要がある。音吸収素材を別の素材に置き換えて、音に関する異なる目的を達成するためには、ドラムヘッドの取り外しが常に必要である。これは、過度な負担となり、非常に膨大な時間を要する。
【0004】
これまでの従来技術において、初めにドラムヘッドを取り外す必要なく、演奏用ドラムの音の減衰調整および/または倍音の制御を行う音吸収素材または音減衰素材を、容易かつ迅速に交換または置き換えるための、簡易な装置または方法の提供がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,589,323号
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ドラムシェル、演奏面および周縁を有するドラムヘッド、ならびに、底縁を有するドラムヘッド締結手段と共に、環状支持部材と、環状支持部材をドラムヘッドの周縁上に載置するように、環状支持部材と一体的に連結している手段とを備える、演奏用ドラムの音減衰調整手段を提供する。環状支持部材をドラムヘッドの周縁上に載置する手段は、環状支持部材が演奏面の上方においてぶら下がるように位置し、ドラムヘッド締結手段の底縁とドラムヘッドの周縁との間の位置で保持される。また、ドラムヘッドの音を消音し、ドラムヘッド締結手段とドラムヘッドの周縁との間に位置する音吸収素材から成る手段を提供する。
【0007】
したがって、本発明は、ドラム音を減衰する装置を提供することを目的とする。
本発明は、ドラム音の減衰を調整可能な装置を提供することを別の目的とする。
本発明は、ドラム倍音も制御する装置を提供することをさらに別の目的とする。
【0008】
本発明は、構造および配置が複雑でなく、初めにドラムヘッドを取り外す必要なく、音減衰素材が容易かつ迅速に交換または置き換え可能とする装置を提供することをさらに別の目的とする。
【0009】
本発明は、使用に際し、ドラム音を生成するために使用されるドラムスティックまたはその他の種類の硬質物によって叩かれたときに、ドラムヘッドの本来の感触が変わらない装置を提供することをさらに別の目的とする。
【0010】
本発明は、使用および製造について費用効率が高い装置を提供することをさらに別の目的とする。
本発明の他の目的および効果は、本発明の好適な実施形態を示す添付の図面を参照して、以下の明細書の記載において明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】演奏用ドラムに採用される本発明の装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の装置を示す、
図1の2−2線の断面図である。
【
図3】支持部材とドラムヘッドとの間の音吸収素材の例を合わせて、本発明の装置を示す分解組立図である。
【
図4】バスドラムのレゾナントヘッドと合わせて、本発明の装置を示す斜視図である。
【
図5】バスドラムのバターヘッドと合わせて、本発明の装置を示す斜視図である。
【
図6A】ドラムから生じる空気の流れを管理する回転可能ダイヤルと合わせて、本発明の代替実施形態を示す斜視図である。
【
図6B】開口ヘッドを介してシェル内部から生じる空気の流れを調節する回転可能ダイヤルと組み合わされた通気式支持部材と合わせて、本発明の装置を示す分解組立図である。
【
図7】
図7Aは回転可能ダイヤルおよび例示的な通気構造を有する本発明の装置と組み合わせて利用される環状支持部材の実施形態を示す。
図7Bは回転可能ダイヤルおよび例示的な通気構造を有する本発明の装置と組み合わせて利用される環状支持部材の別の実施形態を示す。
図7Cは回転可能ダイヤルおよび例示的な通気構造を有する本発明の装置と組み合わせて利用される環状支持部材のさらに別の実施形態を示す。
【
図8】本発明の装置の代替実施形態を示す分解組立図である。
【
図9】本発明の装置の代替実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図3に示す好適な実施形態を参照して、本発明を以下により詳細に説明する。
図1は、本発明のドラム用減衰調整装置12を備える演奏用ドラム10の斜視図である。減衰調整装置12は、一般的に、ドラムシェル14と、ドラムヘッド16と、複数の締結部材18とを備える演奏用ドラム10において使用される。
図3、ならびに、
図2の断面図に示すように、減衰調整装置12は、環状支持部材20と、音吸収リング22とを備え、環状支持部材20および音吸収リング22は、音吸収リング22が定位置において自由に浮動可能に保持されるように、ドラムヘッド16上に取り付けられる。
音吸収リング22は、不均一な厚さを有していてもよい。また音吸収リング22は、非円形であってもよい。プラスチックまたはその他の好適な材料で構成可能な環状支持部材20は、全体的に均等な開口24と、それと同心の周辺部26とを備え、周辺部26は、通常、リング22の形状および寸法と全体的に一致する。また、環状支持部材20は、周縁28も備える。ドラムヘッド16は、周縁32と一体的に連結する演奏面30と、ドラムヘッド16をシェル14の周縁34上に設置することによってシェル14上に載置されるフレッシュフープ33とを有する。本発明の目的を達成するために、音吸収リング22は、
図3に示すように、演奏面30上に設置される。そして、環状支持部材20は、周縁28が周縁32上に位置し、リング22がドラムヘッド16と周辺部26との間において自由に浮動可能な状態で、リング22上に設置される。そして、カウンターフープ36が、周縁28の上部に設置され、演奏用ドラム10の周辺部において等間隔で位置する締結部材18によってドラムシェル14に固定される。音吸収リング22は、良好な音吸収性を有するいかなる種類の材料から構成可能であり、例えば、発泡体、ゴム、特定の繊維、およびその他の好適な材料を含むがこれに限定されるものではない。減衰の程度は、材料の種類、幅または厚さ、もしくは、密度によって変更可能である。
【0013】
何らかの事情によりリング22の交換が必要となった場合には、単に、カウンターフープ36および環状支持部材20を順に取り外すことにより、リング22の取り外しおよび/または置き換えが容易に可能となる。そして、別のリング22が設けられ、環状支持部材20およびカウンターフープ36がこれまでと逆の順番で取り付けられ、固定される。環状支持部材20は、その上面に38において、他の種類の音吸収素材を収容するために使用されてもよく、当該上面38においては、
図9に示すように、付加的な音吸収素材21がカウンターフープ36によって拘束されていてもよい。さらに、これらの付加的な音吸収素材により、リング22と組み合わせた場合に、ドラム音の特徴を変更可能である。
【0014】
本発明の代替実施形態においては、
図4および
図5に示すように、リング22がこれまで述べられたように位置した状態で、(脚部45を備える)バスドラム44のバターヘッド40およびレゾナントヘッド42と組み合わせて環状支持部材20を使用することが含まれる。
【0015】
本発明の別の代替実施形態においては、非開口レゾナントヘッド42、1または複数の開口46を有する環状支持部材20、従来のいずれの方法でも環状支持部材20に取り付け可能なダイヤル部材48が利用される。したがって、開口47を有し、開口46と47の間の位置を調節することにより開口46を開閉するダイヤル部材48の可変回転により、バターヘッド40が叩かれたときに、演奏用ドラム10内部からの空気の流れが管理可能となる。このような空気の流れの調節で、倍音を調整することによりドラム音を修正する。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態においては、適切とされる任意の大きさで形成された開口50を有する開口レゾナントヘッド42、ならびに、マイク54またはその他の適切とされる任意の種類の音強調装置または音増幅装置を収容可能なように全体的に適合する大きさで形成された開口52を有する環状支持部材20が利用される。マイク54は、適切とされる任意の調節可能な取付フランジ、もしくは、その他の手段を使用して、開口52内に載置されてもよい。この実施形態は、いくつかの点において修正可能であり、開口なしのレゾナントヘッドを使用することも含まれる。
【0017】
本発明は、特定の好適な実施形態について説明されているが、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。むしろ、全ての代替案、変形例、および等価物が、添付の請求項で規定されるような発明の精神および範囲に含まれるものとする。