【実施例1】
【0012】
〔1.研磨器1について〕
図1は、研磨器1の全体斜視図である。
図2は、研磨器1の分解斜視図である。
研磨器1は、
図1に示すように、固定部材2と第一基板3aと第二基板3bと研磨部材4を備えるものである。
図2に示すように、固定部材2と第一
基板3aと第二
基板3bの端部は、ボルト10とナット11の螺合によって固定され、研磨器1全体は、釘12によってベース(地面や床面)に取り付けられる。
第一
基板3aと第二
基板3bの所定の角度を60°〜120°(好ましくは80°〜100°)として配置し固定することによって、研磨部材4それぞれは、刈払機回転刃5の外周に接触するものとなる。各図面では最も好ましい所定の角度90°を採用し描画した。
【0013】
〔2.固定部材2について〕
図3は固定部材2と第一基板3aと第二基板3bの全体斜視図であり、
図4は固定部材2と第一基板3aと第二基板3bの全体斜視図であり、
図5は固定部材2と第一基板3aと第二基板3bの全体上面図である。
図1〜
図5に示すように固定部材2は、ベース(地面や床面)に設置する、L字型形状の金具である。固定部材2のL字型形状は、内側長辺と内側短辺、外側長辺と外側短辺に分けることができる。
図3〜
図5に示すように、内側短辺の内側長辺側に固定片20が立設されており、内側長辺の内側短辺側ではないもう一端側に固定片20が形成されている。言い換えると、内側短辺と内側長辺両方について、上から見て時計回り進行方向側の端部それぞれに固定片20が形成されている。これにより、上から見て反時計回りの回転刃5の回転方向における回転刃5の外周の到来側に設定されたものとなる。
そして固定片20それぞれは、固定部材2の平面に対して垂直上方に延びるものであり、固定片20を貫通する固定孔21が設けられている。固定孔21それぞれは、ボルト10の軸を通すものである。
図3〜
図5に示すように、固定部材2のL字型形状における外側短辺と外側長辺が交わる点付近と、外側長辺の外側短辺側ではないもう一端付近と、外側短辺の外側長辺側ではないもう一端付近には、ベース固定孔22が設けられる。ベース固定孔22は釘12の軸を通すものである。
固定部材2にはステンレス等の金属板を例示することができ、固定片20は折り曲げ加工によって設けることができる。
【0014】
〔3.第一基板3aと第二基板3bについて〕
図1〜
図4に示すように、第一基板3aと第二基板3bそれぞれは、長孔30と、固設孔31を備えるものである。
長孔30は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの長手方向に沿う態様で、矩形状である第一基板3aと第二基板3bの略中央の上端部近傍と下端部近傍に設けられる。このようにすると、研磨部材4の取り付け位置を第一基板3aと第二基板3bの長手方向に対してスライド可能とすることができる。
固設孔31は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれにおいて、回転刃5の回転方向における回転刃5の外周の到来側(上から見て時計回り進行側の)端部近傍にのみ設けられる。一般的に刈払機の回転刃5は上から見て反時計回りであるから、このようにすると、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの固定位置は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの長手方向において、研磨部材4と回転刃5の接触位置よりも回転刃5の到来側となる。
ここにおいて端部近傍の距離は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれにおいて長手距離の3%〜9%の範囲内である。
図1〜
図7においては、回転刃5の到来側端部から、回
転刃5の進行方向へ長手距離の6%進めた位置に、固設孔31は設けられている。固設孔31を第一基板3aと第二基板3bそれぞれの長手方向に延びる長孔とすると、研磨部材4をスライドさせることができるため好ましい。
【0015】
〔4.研磨部材4について〕
研磨部材4は、
図1図2に示すように、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの略中央部に取り付けられるものであって、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの短手方向の略中央に研磨部40を備え両端近傍に長孔41を備える。ここにおいて両端近傍の距離は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの短手距離の7%〜13%の範囲内である。
図1と
図2においては端部から10%の距離を長孔41の中央とした。
研磨部40は、砥石やセラミックスなどであり、回転刃5の外周を研ぐ部材である。
長穴41は、長穴30により研磨部材4のスライド量をさらに増加させるものである。このようにすると研磨部40が部分的にすり減ったとしても、研磨部材4の位置を長孔30と長穴41の長さを合わせてスライドさせ、研磨部40のすり減っていない箇所を位置決めし、ボルト42とナット43の螺合で固定することができる。これにより、研磨部材4の使用期間を長くする(交換期間を短くする)ことができる。またボルト42とナット43の螺合を用いず、研磨部材4と第一基板3aと第二基板3bそれぞれとを接合し一体化させる場合は、固設孔31を長孔とすることで、前述のスライド及び位置決めを行うことができる。
【0016】
〔5.刈払機と研磨器1を用いた研磨作業について〕
図6は研磨作業の開始を示す上面図であり、
図7は研磨作業を示す上面図であり、
図8は研磨作業を示す部分拡大上面図である。
刈払機(苅払機、ブラッシュカッター)は、草や小径木を刈払うための機械のことであ
る。刈払機の構造は原動機(モーター、エンジン)、メインパイプ(シャフト、ロッド)、回転刃(チップソー)からなり、操作者は、メインパイプに固定されたハンドルを操作して刈払いを行う。一般的には右手部分にエンジンスロットルが設けられており、これを調節することでエンジンの回転数(回転刃の回転数)を調節する。エンジン式では、ドライブシャフトとの間に遠心式のクラッチがあり、始動・アイドル時などの歯の無用な回転を防ぎ、草噛みなどによる歯の停止にも備えている。
研磨作業は、
図6に示すように使用者がアイドル状態で回転していない回転刃5を以下に述べる研磨器1に押し当てた後、
図7に示す状態で使用者はエンジンスロットルを開き、刈払機の回転力を用いて、回転刃5の研磨を行う。
また、この発明において発明に用いられる刈払機の回転刃5は、
図8に示すように外周にバナジウム鋼などの合金チップをチップ部50として多数備えたチップソーを想定している。
【0017】
〔6.研磨作業における第一基板3aと第二基板3bの動きについて〕
前述のように、チップ部50を備えた回転刃5の研磨において、回転刃5に
図6の矢印方向に力が加えられると、第一基板3aと第二基板3bは回転刃5に研磨部40が押さえつけられて元の位置から変位し、撓み角32が生まれる。この撓み角32が生まれると、回転刃5のチップ部50と研磨部材4の研磨部40との接触には、
図8に示すように逃げ角51が生まれる。
平面幾何学的には、円弧と接線において、円に接線を引くと、接点で半径と垂直に交わる。このことから、回転刃5のチップ部50が円弧位置に近似し、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの研磨部40が接線に近似する。このことから、
図6に示す態様において使用者が大きな力で回転刃5を第一基板3aと第二基板3bそれぞれに押しつけた場合であっても、撓み角32の角度が大きくなると共に、逃げ角51の角度も大きくなる。
研磨作業時に逃げ角51があると、チップ部50の刃が研磨部40に食い込む可能性が無くなると共に、その際にはじかれる(いわゆるキックバック)の可能性も無くなる。こ
のとから、使用者は、回転刃5を傷めることやキックバックに対して神経質になることなく、研磨作業を行うことができる。さらに、使用者は、回転刃5を押し付ける力加減で逃げ角51を調整し、研ぎ具合を調節することもできる。