特許第6548507号(P6548507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548507
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】研磨器
(51)【国際特許分類】
   B24B 3/42 20060101AFI20190711BHJP
【FI】
   B24B3/42
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-157854(P2015-157854)
(22)【出願日】2015年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-35749(P2017-35749A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】592232971
【氏名又は名称】有限会社高芝ギムネ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】高芝 伊知郎
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−080825(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/083188(WO,A1)
【文献】 米国特許第02437443(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/42
3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈払機の回転刃(5)に用いる研磨器(1)であって、
少なくとも一端が固設された第一基板(3a)と、
前記第一基板(3a)に対して所定の角度をなし、少なくとも一端が固設された第二基板(3b)と、
前記第一基板(3a)及び前記第二基板(3b)に設けられ前記回転刃(5)の外周と当接して研磨する研磨部材(4)とを備え、
前記第一基板(3a)及び前記第二基板(3b)は、前記回転刃(5)が押しつけられることにより撓む素材からなる
ことを特徴とする研磨器。
【請求項2】
前記第一基板(3a)及び前記第二基板(3b)における固設箇所が、回転刃(5)の回転方向における回転刃(5)の外周の到来側のみであることを特徴とする請求項1に記載の研磨器。
【請求項3】
前記第一基板(3a)と前記第二基板(3b)のなす角度が、60度〜120度であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨器。
【請求項4】
それぞれ矩形状からなる前記第一基板(3a)及び前記第二基板(3b)には長手方向に沿った長孔(30)を備え、
前記研磨部材(4)が前記長孔(30)を介して前記第一基板(3a)及び前記第二基板(3b)の長手方向に沿ってスライド移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の研磨器。
【請求項5】
前記第一基板(3a)と前記第二基板(3b)のそれぞれに固定される固定部材(2)がL字型形状であると共に前記固定部材(2)に立設された固定片(20)を備えており、前記固定片(20)は、前記固定片(20)を貫通した固定孔(21)を備えており、
前記第一基板(3a)及び前記第二基板(3b)は、回転刃(5)の回転方向における回転刃(5)の外周の到来側に、貫通した固設孔(31)を備えており、
前記固定孔(21)と前記固設孔(31)を挿通するボルト(10)と前記ボルト(10)と螺合するナット(11)によって、前記第一基板(3a)及び前記第二基板(3b)がそれぞれに固定部材(2)に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の研磨器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機の回転刃の切れ味を回復または増加させるのに用いる研磨器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雑草の除去作業において、化石燃料または電気を利用する原動機を備えた刈払機(草刈機)が用いられている。一般的に刈払機は、メインパイプの中心付近に使用者が掴む為のハンドルを備え、メインパイプの後端に原動機が取り付けられ、先端に回転刃が取り付けられている。この回転刃の切れ味が悪くなると、取り外して研磨を行っていた。
【0003】
回転刃の取り外しと取り付け作業が面倒であるという事情を鑑みて、回転刃を取り外す必要がなく、刈払機の原動機による回転を利用した回転カッタ研削装置が発明された。(例えば特許文献1)
しかしながら、従来の回転カッタ研削装置は、回転刃の外径と研削面の曲率が不一致であったり回転刃の中心点を出すガイド部品が必要であったりすることから、使用する回転刃が限られると共に部品点数が多く高価なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−80825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでこの発明は、回転刃の外径の変化にも対応可能であると共に回転刃の中心点を出すガイド部品を必要としない研磨器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本件発明は以下の手段を用いた。
(請求項1記載の発明)
請求項1記載の発明は、刈払機の回転刃に用いる研磨器であって、少なくとも一端が固設された第一基板と、前記第一基板に対して所定の角度をなし、少なくとも一端が固設された第二基板と、前記第一基板及び前記第二基板に設けられ前記回転刃の外周と当接して研磨する研磨部材とを備え、前記第一基板及び前記第二基板は、前記回転刃が押しつけられることにより撓む素材からなることを特徴とする。
(請求項2記載の発明)
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記第一基板及び前記第二基板における固設箇所が、回転刃の回転方向における回転刃の外周の到来側のみであることを特徴とする。
【0007】
(請求項3記載の発明)
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の研磨器おいて、前記第一基板と前記第二基板のなす角度が、60度〜120度であることを特徴とする。
(請求項4記載の発明)
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の研磨器において、それぞれ矩形状からなる前記第一基板及び前記第二基板には長手方向に沿った長孔を備え、前記研磨部材が前記長孔を介して前記第一基板及び前記第二基板の長手方向に沿ってスライド移動可能であることを特徴とする。
(請求項5記載の発明)
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の研磨器において、前記第一基板と前記第二基板のそれぞれに固定される固定部材がL字型形状であると共に前記固定部材に立設された固定片を備えており、前記固定片は、前記固定片を貫通した固定孔を備えており、前記第一基板及び前記第二基板は、回転刃の回転方向における回転刃の外周の到来側に、貫通した固設孔を備えており、前記固定孔と前記固設孔を挿通するボルトと前記ボルトと螺合するナットによって、前記第一基板及び前記第二基板がそれぞれに固定部材に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
(請求項1記載の発明の効果)
請求項1記載の発明を用いると所定の角度に角度付けされた空間の間に回転刃外周の円弧が入っていくので、回転刃の外径の変化にも対応可能であると共に回転刃の中心点を出すガイド部品を必要としない研磨器を提供することができる。さらに、第一基板及び第二基板の弾性変形によって撓み角が生じるものとなる。これにより、研磨部材の研磨部とチップ部との当接に逃げ角を生じる。逃げ角の角度変化により、押し付けの力加減に対応した研磨が可能となる。これにより、使用者は、回転刃を傷めることに対して神経質になることなく、研磨作業を行うことができる。
請求項2記載の発明の効果)
請求項2記載の発明であると、第一基板及び第二基板と回転刃外周の当接位置よりも回転刃外周の到来側(使用者から見て反時計回りの回転刃の場合、当接位置よりも時計回り側)の位置関係となり、第一基板及び第二基板の弾性変形と相乗的に作用し、より好適な研磨作業を行うことができる。
【0009】
請求項3記載の発明の効果)
60度〜120度の角度で第一基板と前記第二基板を設置するのが好ましい。
請求項4記載の発明の効果)
請求項4記載の発明のようにすると、研磨部材の研磨部が部分的にすり減ったとしても、研磨部材の位置を長孔の長さ分スライドさせることにより、すり減っていない箇所を使用することができる。これにより、研磨部材の使用期間を長くすることができる。
請求項5記載の発明の効果)
請求項5記載の発明のようにすると、L字型形状板と基板2枚(第一基板と第二基板)という極めて少ないメイン部品数の研磨器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、研磨器の全体斜視図である。
図2図2は、研磨器の分解斜視図である。
図3図3は、固定部材と第一基板と前記第二基板の全体斜視図である。
図4図4は、固定部材と第一基板と前記第二基板全体斜視図である。
図5図5は、固定部材と第一基板と前記第二基板全体上面図である。
図6図6は、研磨作業の開始を示す上面図である。
図7図7は、研磨作業を示す上面図である。
図8図8は、研磨作業を示す部分拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下にこの発明の研磨器1を実施例として示す各図と共に説明する。
【実施例1】
【0012】
〔1.研磨器1について〕
図1は、研磨器1の全体斜視図である。図2は、研磨器1の分解斜視図である。
研磨器1は、図1に示すように、固定部材2と第一基板3aと第二基板3bと研磨部材4を備えるものである。図2に示すように、固定部材2と第一基板3aと第二基板3bの端部は、ボルト10とナット11の螺合によって固定され、研磨器1全体は、釘12によってベース(地面や床面)に取り付けられる。
第一基板3aと第二基板3bの所定の角度を60°〜120°(好ましくは80°〜100°)として配置し固定することによって、研磨部材4それぞれは、刈払機回転刃5の外周に接触するものとなる。各図面では最も好ましい所定の角度90°を採用し描画した。
【0013】
〔2.固定部材2について〕
図3は固定部材2と第一基板3aと第二基板3bの全体斜視図であり、図4は固定部材2と第一基板3aと第二基板3bの全体斜視図であり、図5は固定部材2と第一基板3aと第二基板3bの全体上面図である。
図1図5に示すように固定部材2は、ベース(地面や床面)に設置する、L字型形状の金具である。固定部材2のL字型形状は、内側長辺と内側短辺、外側長辺と外側短辺に分けることができる。
図3図5に示すように、内側短辺の内側長辺側に固定片20が立設されており、内側長辺の内側短辺側ではないもう一端側に固定片20が形成されている。言い換えると、内側短辺と内側長辺両方について、上から見て時計回り進行方向側の端部それぞれに固定片20が形成されている。これにより、上から見て反時計回りの回転刃5の回転方向における回転刃5の外周の到来側に設定されたものとなる。
そして固定片20それぞれは、固定部材2の平面に対して垂直上方に延びるものであり、固定片20を貫通する固定孔21が設けられている。固定孔21それぞれは、ボルト10の軸を通すものである。
図3図5に示すように、固定部材2のL字型形状における外側短辺と外側長辺が交わる点付近と、外側長辺の外側短辺側ではないもう一端付近と、外側短辺の外側長辺側ではないもう一端付近には、ベース固定孔22が設けられる。ベース固定孔22は釘12の軸を通すものである。
固定部材2にはステンレス等の金属板を例示することができ、固定片20は折り曲げ加工によって設けることができる。
【0014】
〔3.第一基板3aと第二基板3bについて〕
図1図4に示すように、第一基板3aと第二基板3bそれぞれは、長孔30と、固設孔31を備えるものである。
長孔30は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの長手方向に沿う態様で、矩形状である第一基板3aと第二基板3bの略中央の上端部近傍と下端部近傍に設けられる。このようにすると、研磨部材4の取り付け位置を第一基板3aと第二基板3bの長手方向に対してスライド可能とすることができる。
固設孔31は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれにおいて、回転刃5の回転方向における回転刃5の外周の到来側(上から見て時計回り進行側の)端部近傍にのみ設けられる。一般的に刈払機の回転刃5は上から見て反時計回りであるから、このようにすると、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの固定位置は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの長手方向において、研磨部材4と回転刃5の接触位置よりも回転刃5の到来側となる。
ここにおいて端部近傍の距離は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれにおいて長手距離の3%〜9%の範囲内である。図1図7においては、回転刃5の到来側端部から、回
転刃5の進行方向へ長手距離の6%進めた位置に、固設孔31は設けられている。固設孔31を第一基板3aと第二基板3bそれぞれの長手方向に延びる長孔とすると、研磨部材4をスライドさせることができるため好ましい。
【0015】
〔4.研磨部材4について〕
研磨部材4は、図1図2に示すように、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの略中央部に取り付けられるものであって、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの短手方向の略中央に研磨部40を備え両端近傍に長孔41を備える。ここにおいて両端近傍の距離は、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの短手距離の7%〜13%の範囲内である。図1図2においては端部から10%の距離を長孔41の中央とした。
研磨部40は、砥石やセラミックスなどであり、回転刃5の外周を研ぐ部材である。
長穴41は、長穴30により研磨部材4のスライド量をさらに増加させるものである。このようにすると研磨部40が部分的にすり減ったとしても、研磨部材4の位置を長孔30と長穴41の長さを合わせてスライドさせ、研磨部40のすり減っていない箇所を位置決めし、ボルト42とナット43の螺合で固定することができる。これにより、研磨部材4の使用期間を長くする(交換期間を短くする)ことができる。またボルト42とナット43の螺合を用いず、研磨部材4と第一基板3aと第二基板3bそれぞれとを接合し一体化させる場合は、固設孔31を長孔とすることで、前述のスライド及び位置決めを行うことができる。
【0016】
〔5.刈払機と研磨器1を用いた研磨作業について〕
図6は研磨作業の開始を示す上面図であり、図7は研磨作業を示す上面図であり、図8は研磨作業を示す部分拡大上面図である。
刈払機(苅払機、ブラッシュカッター)は、草や小径木を刈払うための機械のことであ
る。刈払機の構造は原動機(モーター、エンジン)、メインパイプ(シャフト、ロッド)、回転刃(チップソー)からなり、操作者は、メインパイプに固定されたハンドルを操作して刈払いを行う。一般的には右手部分にエンジンスロットルが設けられており、これを調節することでエンジンの回転数(回転刃の回転数)を調節する。エンジン式では、ドライブシャフトとの間に遠心式のクラッチがあり、始動・アイドル時などの歯の無用な回転を防ぎ、草噛みなどによる歯の停止にも備えている。
研磨作業は、図6に示すように使用者がアイドル状態で回転していない回転刃5を以下に述べる研磨器1に押し当てた後、図7に示す状態で使用者はエンジンスロットルを開き、刈払機の回転力を用いて、回転刃5の研磨を行う。
また、この発明において発明に用いられる刈払機の回転刃5は、図8に示すように外周にバナジウム鋼などの合金チップをチップ部50として多数備えたチップソーを想定している。
【0017】
〔6.研磨作業における第一基板3aと第二基板3bの動きについて〕
前述のように、チップ部50を備えた回転刃5の研磨において、回転刃5に図6の矢印方向に力が加えられると、第一基板3aと第二基板3bは回転刃5に研磨部40が押さえつけられて元の位置から変位し、撓み角32が生まれる。この撓み角32が生まれると、回転刃5のチップ部50と研磨部材4の研磨部40との接触には、図8に示すように逃げ角51が生まれる。
平面幾何学的には、円弧と接線において、円に接線を引くと、接点で半径と垂直に交わる。このことから、回転刃5のチップ部50が円弧位置に近似し、第一基板3aと第二基板3bそれぞれの研磨部40が接線に近似する。このことから、図6に示す態様において使用者が大きな力で回転刃5を第一基板3aと第二基板3bそれぞれに押しつけた場合であっても、撓み角32の角度が大きくなると共に、逃げ角51の角度も大きくなる。
研磨作業時に逃げ角51があると、チップ部50の刃が研磨部40に食い込む可能性が無くなると共に、その際にはじかれる(いわゆるキックバック)の可能性も無くなる。こ
のとから、使用者は、回転刃5を傷めることやキックバックに対して神経質になることなく、研磨作業を行うことができる。さらに、使用者は、回転刃5を押し付ける力加減で逃げ角51を調整し、研ぎ具合を調節することもできる。
【符号の説明】
【0018】
1・・・研磨器
10・・・ボルト
11・・・ナット
12・・・釘
2・・・固定部材
20・・・固定片
21・・・固定孔
22・・・ベース固定孔
3a・・・第一基板
3b・・・第二基板
30・・・長孔
31・・・固設孔
32・・・撓み角
4・・・研磨部材
40・・・研磨部
41・・・長孔
42・・・ボルト
43・・・ナット
5・・・回転刃
50・・・チップ部
51・・・逃げ角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8