(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548550
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】消火方法及びそれに用いる泡消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 3/00 20060101AFI20190711BHJP
A62C 5/02 20060101ALI20190711BHJP
A62D 1/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
A62C3/00 B
A62C3/00 H
A62C5/02 Z
A62D1/00
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-206094(P2015-206094)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-77315(P2017-77315A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村田 眞志
【審査官】
稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−8309(JP,A)
【文献】
特開平06−218075(JP,A)
【文献】
特開2011−92614(JP,A)
【文献】
特開2012−100819(JP,A)
【文献】
特開平06−165837(JP,A)
【文献】
特開2014−14401(JP,A)
【文献】
米国特許第8109341(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0076531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 1/00−37/50
A62D 1/00−1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡器を備えた泡消火設備を用いる消火方法であって、
該発泡器に、泡消火薬剤を供給する工程と、
該発泡器によって、該泡消火薬剤を発泡させて泡を生成する工程と、
該泡を消火対象区画内に堆積させ、該消火対象区画内の火災を消火する工程と、
火災が消火した後に、該消火対象区画内の該泡を、揺変剤を含有する消泡剤により消泡し、該泡消火剤を水溶液に還元させる工程と、を含み、
該水溶液を、該揺変剤の作用により粘性を高めて該消火対象区画内に留めることができることを特徴とする消火方法。
【請求項2】
発泡器を備えた泡消火設備を用いる消火方法であって、
該発泡器に、揺変剤を含有する泡消火薬剤を供給する工程と、
該発泡器によって、該泡消火薬剤を発泡させて泡を生成する工程と、
該泡を消火対象区画内に堆積させ、該消火対象区画内の火災を消火する工程と、
火災が消火した後に、該消火対象区画内の該泡を、消泡剤により消泡し、該泡消火剤を水溶液に還元させる工程と、含み、
該水溶液を、該揺変剤の作用により粘性を高めて該消火対象区画内に留めることができることを特徴とする消火方法。
【請求項3】
前記泡は、前記消火対象区画内の火源周囲に局所的に堆積されることを特徴とする請求項2に記載の消火方法。
【請求項4】
前記発泡器は、前記消火対象区画内に複数設けられ、
前記火源又は前記火源周囲に向けて前記泡を放射可能な該発泡器のみから該泡を放射することを特徴とする請求項3に記載の消火方法。
【請求項5】
前記消泡剤は、揺変剤を含有しているものであることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の消火方法。
【請求項6】
前記消火対象区画には、散布手段が備えられており、
前記消泡剤は、該散布手段より前記泡に向かって散布されることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の消火方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の消火方法に用いる泡消火設備であって、
前記泡消火薬剤の供給源に接続され、該泡消火薬剤を発泡し、前記消火対象区画に放射するための1又は複数の発泡器と、
前記消泡剤の供給源に接続され、前記泡に向けて該消泡剤を撒くための散布手段と、を備えることを特徴とする泡消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火方法及びそれに用いる泡消火設備に関し、より詳細には、泡消火薬剤を用いる消火方法及びそれに用いる泡消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数10倍乃至1000倍程度の高い発泡倍率で泡消火薬剤を発泡させ、当該泡を、火災が起こっている消火対象区画内に堆積させることで消火を行う、所謂、高膨張泡消火設備がある(例えば、特許文献1を参照)。当該泡消火薬剤は、通常、界面活性剤等を含有する泡原液を含む水溶液からなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−165837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような高膨張泡消火設備においては、消火の際に、泡を消火対象区画の略一杯に堆積させて消火を行うものであるため、当該区画内に人が残っていた場合は、当該泡が、視界等を妨げて避難に支障が生じる可能性があり、又、人が泡を吸い込むと粘膜等を傷つける可能性もあった。
【0005】
又、消火対象区画内に堆積した泡は、時間経過と共に元の水溶液の状態へと還元されるが、当該区画が階下等の他の区画と繋がっている場合、当該他の区画に水溶液に還元した泡消火薬剤が流れ込み、水損が対象区画のみならず他の区画へと拡大する可能性があった。
【0006】
前者については、消火完了後は、速やかに積み上がっている泡を、消泡させれば解決できるかのように思われるが、この場合、それと同時に消泡によって、泡消火薬剤が直ちに水溶液に還元することとなるため、後者を助長してしまうこととなる。
【0007】
そこで、本発明は、消火対象区画外の他の区画に水損が拡大することを防止しつつ人の避難に支障が生じることを防止できる消火方法及びそれを用いる泡消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発泡器を備えた泡消火設備を用いる消火方法であって、該発泡器に、泡消火薬剤を供給する工程と、該発泡器によって、該泡消火薬剤を発泡させて泡を生成する工程と、該泡を消火対象区画内に堆積させ、該消火対象区画内の火災を消火する工程と、
火災が消火した後に、該消火対象区画内の該泡を、揺変剤を含有する消泡剤により消泡
し、該泡消火剤を水溶液に還元させる工程と、を含
み、該水溶液を、該揺変剤の作用により粘性を高めて該消火対象区画内に留めることができることを特徴とする消火方法である。
【0009】
又、本発明は、発泡器を備えた泡消火設備を用いる消火方法であって、該発泡器に、揺変剤を含有する泡消火薬剤を供給する工程と、該発泡器によって、該泡消火薬剤を発泡させて泡を生成する工程と、該泡を消火対象区画内に堆積させ、該消火対象区画内の火災を消火する工程と、
火災が消火した後に、該消火対象区画内の該泡を、消泡剤により消泡
し、該泡消火剤を水溶液に還元させる工程と、含
み、該水溶液を、該揺変剤の作用により粘性を高めて該消火対象区画内に留めることができることを特徴とする消火方法である。
【0010】
尚、本発明は、前記泡が、前記消火対象区画内の火源周囲に局所的に堆積されるようにすることが可能である。又、本発明は、前記発泡器を、前記消火対象区画内に複数設け、前記火源又は前記火源周囲に向けて前記泡を放射可能な該発泡器のみから該泡を放射するようにすることも可能である。又、本発明は、前記消泡剤と前記泡消火薬剤の両方に揺変剤を含有させることも可能である。又、本発明は、前記消火対象区画に、散布手段を設け、前記消泡剤を、該散布手段より前記泡に向かって散布するようにすることも可能である。
【0011】
更に、本発明の消火方法に用いる泡消火設備は、前記泡消火薬剤の供給源に接続され、該泡消火薬剤を発泡し、前記消火対象区画に放射するための1又は複数の発泡器と、前記消泡剤の供給源に接続され、前記泡に向けて該消泡剤を撒くための散布手段と、を備えるものとすることが可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、火災を消火した際に、消火対象区画内の泡に向けて、消泡剤を撒く工程を含んでいるので、消火後に人が避難する際には、消火対象区画内の泡によって、避難が妨げられたり、避難する人が、泡を吸い込む量を可能な限り少なくしたりすることができる。
【0013】
又、本発明は、泡消火薬剤又は消泡剤が揺変剤を含有しているので、消泡され、水溶液に還元された泡消火薬剤を粘度の高い状態で消火対象区画内に留めておくことが可能であるため、泡消火薬剤が他の区画に流れていくことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態を示す概略図であり、消火開始直後の様子を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態及び第2実施形態を示す概略図であり、消火作業時の様子を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態及び第2実施形態を示す概略図であり、消泡完了時の様子を示す図である。
【
図4】本発明の第3実施形態及び参考例を示す概略図であり、消火開始直後の様子を示す図である。
【
図5】本発明の第3実施形態及び参考例を示す概略図であり、消火作業時の様子を示す図である。
【
図6】本発明の第3実施形態を示す概略図であり、消火完了時の様子を示す図である。
【
図7】本発明の第3実施形態を示す概略図であり、消泡完了時の様子を示す図である。
【
図8】従来例を示す概略図であり、消火作業時の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態を
図1乃至
図3に基づき説明する。消火対象区画1には、1又は複数の発泡器2が設置されている。発泡器2は、泡消火設備3を構成するものであり、泡消火設備3は、所謂、高膨張泡消火設備と呼称される設備である。例えば、泡消火設備3は、発泡器2の他、図示されない泡原液を貯蔵するタンクや、消火水と泡原液を混合し、泡消火薬剤を生成する混合器等を有する泡消火薬剤の供給源を有しており、発泡器2は、当該泡消火薬剤供給源に接続されている。尚、泡消火設備3は、公知の構造を適宜採用することができる。
【0016】
又、発泡器2は、泡消火薬剤を発泡させるための発泡網2a及び発泡網2aに泡消火薬剤を供給するためのノズルを有する筐体2bを備えている。発泡網2aは、泡消火薬剤を数10倍乃至1000倍程度の倍率で発泡可能なものとなっており、例えば、断面略三角形状をしている。本実施形態においては、発泡器2は、発泡に必要な空気を、消火対象区画1内(屋内)から取り込む、所謂、インサイドエア方式のものであるが、消火対象区画1外(屋外)の空気を取り込む、所謂、アウトサイドエア方式のものでもよい。
【0017】
消火対象区画1内で火災(火源を符号Fで表記する)が発生すると、例えば、図示されない火災感知器等の火災感知手段からの信号に基づいて、発泡器2に泡消火薬剤が供給され、当該泡消火薬剤は、発泡網2aによって発泡し、泡4が生成されると共に泡4は、消火対象区画1の床面1aに向かって放射される。
【0018】
そして、泡4は、消火対象区画1内に堆積していく(以下、消火対象区画1内に堆積した泡4を泡4Aと表記する)。その後は、発泡器2より泡4が消火対象区画1内に連続的に放射(供給)され、この泡4Aは、消火対象区画1の天井1b付近の高さ位まで堆積する。そして、この泡4Aの堆積によって、消火対象区画1内の火災を消火する。
【0019】
火災が消火した後に、消火対象区画1内に残留・堆積している泡4Aに向かって消泡剤5 を撒くことで、泡4Aを消泡する。この消泡剤5は、泡4Aを消泡するための成分の他、揺変剤を含有している。
【0020】
本発明において、揺変剤とは、対象(ここでは、消泡剤5)に、チキソトロピー性(「単にかきまぜたり振りまぜたりすることによってゲルが流動性のゾルに変わり,これを放置しておくとふたたびゲルにもどる性質」(岩波理化学辞典第4版、岩波書店、より引用))を付与することが可能な物質や混合物を意味し、好ましくは、コロイド性含水ケイ酸塩を含む、ベントナイト、モンモリロナイト、スメクタイト等の鉱物やそれらに類する無機高分子化合物が選択される。
【0021】
本実施形態において、消火対象区画1の天井1bには、図示されない消泡剤5の供給源に接続されたスプリンクラ手段6等の散布手段が設けられており、スプリンクラ手段6を用いて、消泡剤5は、泡4Aに向かって散布される。当該散布手段は、泡消火設備3の一部として設けることもできるが、泡消火設備3と別系統として設けることも可能である。
【0022】
この際、消泡剤5によって消泡し、水溶液に還元された泡消火薬剤7は、消泡剤5に含有されていた揺変剤の静止時にゲルへと戻る作用によって、消火対象区画1の床面1aに粘性が高い状態で残留する。
【0023】
従って、消火対象区画1内において、消火後に人Hが避難する際には、泡4Aは、消泡剤5によって消泡されているため、泡4Aによって、視界等が遮られることが防止され、泡4Aによって避難が妨げられることを防止することができると共に避難する人Hが、泡4を吸い込む量を可能な限り少なくすることができる。
【0024】
又、消泡剤5の作用によって、水溶液へと還元された泡消火薬剤7は、消泡剤5に含有される揺変剤の作用によって、粘性の高い状態で消火対象区画1内に留まるので、他の区画に水溶液に還元した泡消火薬剤7が流れていくことを防ぐことができ、水損が他の区画に拡がることを防止することができる。
【0025】
次に、本発明の第2実施形態について
図1乃至
図3に基づき説明する。本実施形態と第1実施形態との相違は、揺変剤を消泡剤5に含有させる代わりに泡消火薬剤に含有させたことである。第1実施形態と同じ符号の構成については、同実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0026】
本実施形態において、火災が発生した際に、発泡器2には、揺変剤を含有する泡消火薬剤が供給され、当該泡消火薬剤は、発泡網2aによって泡4となり消火対象区画1内に放射され、そして堆積することで火災を消火する。その後、第1実施形態と同様に、泡4Aに向かって、スプリンクラ手段6から消泡剤5を散布し、泡4Aを消泡する。
【0027】
従って、消泡剤5により消泡され、水溶液に還元された泡消火薬剤7には、第1実施形態と同様に揺変剤が含まれていることとなる。そのため、第1実施形態と同様に、泡4Aが避難の妨げになることを防止しつつ、水溶液に還元した泡消火薬剤7を粘度が高い状態で消火対象区画1内に留めておくことができ、水損が他の区画に拡大することを防止することができる。尚、必要に応じて、消泡剤5にも、揺変剤を含有させることも可能である。
【0028】
次に、本発明の第3実施形態について
図4乃至
図7に基づき説明する。第2実施形態との相違は、発泡器2が消火対象区画1内に複数設けられることを前提とし、消火対象区画1内の火源F周囲に局所的に泡4Aを堆積させたことにある。第1実施形態又は第2実施形態と同じ符号の構成については、同実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0029】
本実施形態において、泡消火設備3Aは、消火対象区画1内に複数の発泡器2を備えており、泡消火薬剤は、揺変剤を含有している。火災が発生した際に、発泡器2には揺変剤を含有する泡消火薬剤が供給され、発泡網2aによって泡4が生成されると共に泡4が消火対象区画1内へと放射される。
【0030】
消火対象区画1内に放射され、堆積した泡4Aは、静止状態にあるため、泡消火薬剤に含有されている揺変剤の作用により、ゾル様の状態からゲル様の状態へと変化する。このため、泡4Aは、揺変剤が含まれていない泡消火薬剤の場合と比較して流動性が低下する。
【0031】
揺変剤が含まれていない一般的な泡消火薬剤から生成した泡4は、その流動性のため消火対象区画1に局所的に堆積させようとしても角度θ
1=約10°で周囲に拡散してしまうため、高く堆積させることが困難である(
図8を参照)。そのため、このような泡消火薬剤を用いた消火においては、泡4を必然的に消火対象区画1の略全域に亘って放射することとなる。
【0032】
一方、本実施形態おいては、泡消火薬剤に揺変剤が含有されているため、揺変剤の作用によって、泡4Aの流動性が低下し、泡4Aが周囲に拡散しにくくなる(つまり、角度θ
2>θ
1)。従って、泡4Aを消火対象区画1に局所的に堆積させることが可能となる。
【0033】
このため、本実施形態においては、発泡器2から泡4を消火対象区画1内に向けて放射する際に、消火対象区画1内の火源F周囲に設置され、火源F又は火源F周囲に向けて泡4を放射可能な発泡器2(通常、火源Fの周囲にある発泡器2A )のみに泡消火薬剤を供給し、当該発泡器2Aのみから、泡4を消火対象区画1内に放射し、火源F周囲に局所的に泡4Aを堆積させるようになっている。
【0034】
従って、火災の規模等によるが、消火対象区画1内に泡4Aが堆積していない避難路Eを確保することが可能である。つまり、本実施形態においては、泡4Aによって、避難に支障が生じることがより低減されていることとなる。
【0035】
泡4Aの堆積によって火災が消火された後、他の実施形態と同様に泡4Aを消泡するために消泡剤5を撒くが、本実施形態においては、図示されない消泡剤供給源にホース等によって接続されたノズル8等の散布手段から泡4Aに向かって消泡剤5を散布することでこれを行う。このノズル8としては、例えば、公知の消火栓用ノズルのような消火用ノズルが用いられる。
【0036】
本実施形態において、泡消火薬剤に揺変剤が含有されているため、消泡剤5の作用によって水溶液へと還元された泡消火薬剤7にも揺変剤が含有されていることとなる。従って、第2実施形態と同様に泡4Aが避難の支障となることを防止しつつ他の区画の水損を防止することができる。
【0037】
又、火源周囲に局所的に泡4Aを堆積させることが可能になっていることで、火災の規模等によっては、消火対象区画1内に放射される泡4の量、即ち、泡消火薬剤の量そのものを低減することが可能になるので、消泡剤5の作用によって水溶液へと還元された泡消火薬剤7の量も低減することができ、より他の区画の水損を防止することができる。
【0038】
おわりに、参考例を
図4及び
図5に基づき説明する。この参考例は、第3実施形態に用いた泡消火設備3Aを、消泡剤5を泡4Aに向かって撒く工程のない消火方法に適用した例である。上記実施形態と同様の符号の構成は、同実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0039】
本参考例は、消火対象区画1内に複数設置された発泡器2を備えた泡消火設備3Aを用いる消火方法であって、揺変剤を含有する泡消火薬剤を泡消火設備3Aの発泡器2のうち、火源F又は火源F周囲に泡4を放射可能な発泡器2Aのみに泡消火薬剤を供給する工程と、発泡器2A(発泡網2a)によって泡消火薬剤を発泡させ泡4を生成する工程と、泡4を消火対象区画1内の火源F周囲に局所的に堆積し、火災を消火する工程を含むという点で、第3実施形態と共通している。
【0040】
具体的に述べれば、消火対象区画1内に火災が発生すると、例えば、図示されない火災感知器等火災感知手段からの信号に基づいて、火源F又は火源F周囲に泡4を放射可能な発泡器2(通常、火源Fの周囲にある発泡器2A)のみに揺変剤を含有する泡消火薬剤が供給され、当該泡消火薬剤は、発泡網2aによって発泡し、泡4が生成されると共に泡4は、消火対象区画1の火源F又は火源F周囲に向かって放射される。
【0041】
そして、泡4は、火源F周囲に局所的に消火対象区画1内に堆積していく。その後は、発泡器2より泡4が消火対象区画1内に連続的に放射(供給)され、この泡4Aは、消火対象区画1の天井1bに近い高さまで局所的に堆積する。そして、この泡4Aの堆積によって、消火対象区画1内の火災を消火する。
【0042】
この際、泡4Aは、静止した状態であるため、泡消火薬剤に含有された揺変剤の作用によって、泡4Aは、ゾル様の状態からゲル様の状態へと変化するため流動性が低下する。このため泡4Aは、従来の消火方法(
図8を参照)と比較して、θ
2>θ
1で泡4Aを堆積させることが可能である、つまり、拡散しにくくなるため、局所的に泡4Aを堆積させることが可能となる。
【0043】
本参考例は、例えば、特開平6−165837号公報に記載の発明が、泡4が拡散し易いため、火災の規模によらず、消火対象区画1内、略一杯に泡4Aを堆積する必要があるというのに対して、泡消火薬剤に揺変剤を含有させることで、火災の規模によっては、局所的に泡4Aを堆積させ、消火対象区画1内全域に泡4を放射しなくとも火源を抑制及び/又は消火できることが可能であるという点で、同発明に対して優位である。
【0044】
本発明を上記実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態に各構成を適宜組み合わせても良く、第1実施形態及び第2実施形態において、消泡剤5を、スプリンクラ手段6から散布するのではなく、第3実施形態のようにノズル8等を用いて撒いてもよく、又、第3実施形態において、第1実施形態及び第2実施形態と同様にスプリンクラ手段6等の散水手段によって消泡剤5を散布するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 消火対象区画 1a 床面 1b 天井面
2 発泡器 2a 発泡網 2b 筐体
3 泡消火設備 4 泡 5 消泡剤
6 スプリンクラ手段 7 泡消火薬剤 8 ノズル
E 避難路 F 火源 H 人