(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の範囲は以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0011】
(第1実施形態)
<デジタルサイネージ装置100の構成>
図1(a)は、デジタルサイネージ装置100の斜視図である。デジタルサイネージ装置100は、外形が直方体に形成され、前面に文字又は画像をカラー表示する表示画面111が配置される本体部110と、本体部110を載置する台座部120と、により構成されている。表示画面111には、工事情報、作業情報、広告等の様々な情報が表示される。台座部120は、上部に本体部110を載置するための天板121が配置され、下部にデジタルサイネージ装置100を移動させるための車輪122が配置されている。本体部110は天板121に固定されている。
【0012】
図1(b)は、作業者130の正面図である。作業者130は、工場、工事現場、建設現場等の作業現場で作業を行う者である。
図1(b)に示される作業者130の手首には装着装置141が装着され、足首には装着装置142が装着されている。
図1(b)ではカラダの両手首に装着装置141が装着され、カラダの両足首に装着装置142が装着されている状態が示されているが、カラダの一方の手首又は一方の足首のみに装着されていても良い。また、作業者130は、ベルトのバックルに取り付けられる装着装置143、作業服のポケットに取り付けられる装着装置144、又はヘルメットに取り付けられる装着装置145を有していても良い。さらに、作業者130は、これら装着装置の取り付け位置以外にも様々なカラダの位置に取り付けられる装着装置を有していても良い。
【0013】
<装着装置141から145の構成>
図2(a)及び(b)は、装着装置141から145の概略構成である。
図2(a)に開示される装着装置141から装着装置145は、それぞれ作業者130の生体データを測定する生体センサー152を含んでいる。生体センサー152は、例えば体温、脈拍、血圧等の作業者130の生体データを収集するセンサーである。また、装着装置141から装着装置145は、生体センサー152と共に、作業現場の気温、湿度、粉塵等の環境データを計測する環境センサー153、作業者130の加速度データを計測する加速度センサー154を含んでいる。さらに、装着装置141から装着装置145は、作業者130が堆積物中に埋もれた際に堆積物の圧力を計測する圧力センサー155を含んでいても良い。
【0014】
さらに、装着装置141から装着装置145は、乾電池などの一次電池又はバッテリー等の二次電池を有しており、知らせを受けるためのバイブレータ、アラーム等を設けておいてもよい。装着装置141から装着装置145は、近距離無線通信(例えば、Bluetooth(登録商標)又はWi−Fi(登録商標) )でデジタルサイネージ装置100と通信する第1通信部157を有し、生体センサー152、環境センサー153、加速度センサー154から収集したデータ(以下、被災者データ)をデジタルサイネージ装置100に送信する。第1通信部157は、装着装置141から装着装置145の少なくともいずれか1つに含まれ、他のセンサーが収集した被災者データをまとめてデジタルサイネージ装置100に送信するようにしても良い。
【0015】
装着装置141から装着装置145は、例えば1kHz〜15kHzの超長波長から長波長の電磁波を送信する長波送信部158を有す。長波送信部158は、圧力センサー155が所定以上の圧力を受けると、1kHz〜15kHzの長波長で救助信号を送信する。長波送信部158は、例えば、3kHz、6kHz、9kHz及び12kHzと4つの異なる波長の周波数を送信することが好ましい。後述するように、堆積物で埋もれた深度を想定するためである。また、各長波送信部158は1秒間のパルス数を異ならせて、どこに取り付けられた長波送信部158からの救助信号かを区別できるようにすることが好ましい。例えば、足首に取り付けられた装着装置142の長波送信部158は、10パルス/秒の救助信号、ヘルメットに取り付けた装着装置145は、5パルス/秒の救助信号を送信する。後述するように、堆積物で埋もれた作業者の姿勢を想定するためである。
【0016】
処理部159は、生体センサー152、環境センサー153、加速度センサー154又は圧力センサー155の出力タイミングを処理したり、電源の消費電力を処理したりする。また処理部159は、圧力センサー155が所定以上の圧力を計測すると、第1通信部157からの通信は停止するように処理してもよい。近距離無線通信(例えば、Bluetooth(登録商標)又はWi−Fi(登録商標))は、例えば2.4GHz帯の極超短波長の電磁波を使用しているため、土砂などの堆積物中では地表まで電波が届かない。このため、処理部159は、第1通信部157からの通信を停止して、一次電池又は二次電池の消耗を抑える。
【0017】
図2(b)に開示される装着装置142又は装着装置145は、圧力センサー155及び長波送信部158を有している。特に、堆積物に埋まってしまった作業者の頭部と脚部との位置を把握するためである。長波送信部158は、圧力センサー155が堆積物の圧力を計測すると、長波長で救助信号を送信する。すべての装着装置が、生体センサー152、環境センサー153及び加速度データ154を有していてもよいが、製品コストが高くなるため、必要最小限のセンサーを備えるようにしてもよい。ヘルメットに取り付けられる装着装置145に生体センサー152があっても、正確な生体データを得ることが困難であるからである。すなわち、装着装置141から装着装置145は、
図2(a)に描かれたセンサー又は送信部等から一部を取り除いてもよい。
【0018】
<被災者感知システム10の概要>
図3は、被災者感知システム10が配置された建設現場の一部が示されている。被災者感知システム10は、デジタルサイネージ装置100、装着装置141等の長波送信部158、及び受信機170からなる。
【0019】
図3では、デジタルサイネージ装置が、デジタルサイネージ装置100a及びデジタルサイネージ装置100bの2つが配置される。デジタルサイネージ装置100aは、例えば建設現場に隣接する歩道に面するように配置されており、歩行者等に工事の概要等の表示を行っている。また、デジタルサイネージ装置100bは、例えば作業現場内に配置され、作業者130等に作業工程、安全確認表示等がなされている。また、デジタルサイネージ装置100a及びデジタルサイネージ装置100bから離れた位置に中継器101が配置されている。中継器101は作業現場全体が近距離無線通信の通信可能範囲となるように、デジタルサイネージ装置100a及びデジタルサイネージ装置100bに対して適切な距離だけ離れるように配置されている。
【0020】
またデジタルサイネージ装置100aは他のデジタルサイネージ装置100bに接続されインターネットに接続されている。デジタルサイネージ装置100bはデジタルサイネージ装置100aに接続されると共にインターネットに接続されていない。もちろんデジタルサイネージ装置100bがインターネットに接続されていてもよい。近距離無線通信を中継する中継器101は、作業者130が身に着ける第1通信部157とデジタルサイネージ装置100の第2通信部112(
図4を参照)との通信可能距離が延ばされている。
【0021】
建設現場には、作業機械の一例として油圧ショベル機械160が配置されている。油圧ショベル機械160は、アーム161の先端に取り付けられたバケット162で、地面を掘ったりする。油圧ショベル機械160は種々の制御を司る機械制御部168を備えている。
さらに、油圧ショベル機械160のアーム161には、作業者130が身に着ける長波送信部158からの超長波長又は長波を受信する受信機170を有している。受信機170は、検知コイルを有し所定の周波数の長波又は超長波を受信する。なお本実施形態では、受信機170は油圧ショベル機械160のアーム161に取り付けられているが、油圧ショベル機械160の胴体に取り付けられていてもよい。また、別の車両に受信機170が取り付けられてもよい。受信機170が油圧ショベル機械160のアーム161に取り付けられていると、地表面より高いところや低いところに受信機170を移動させやすく便利である。
【0022】
<被災者感知システム10の構成>
図4は、被災者感知システム10の概略構成を示している。作業者130が装着する装着装置141〜145は、生体センサー152、環境センサー153、加速度センサー154及び圧力センサー155を有する。また、装着装置141等は、近距離無線通信する第1通信部157及び長波送信部158を有する。
【0023】
管理者135の管理サーバ200は、複数のデジタルサイネージ装置100を管理する。稼働状況や、作業者130の体調などを一括管理する。特に通信部が描かれていないが、3G、4Gの通信又は専用回線で、デジタルサイネージ装置100と接続する。
また、
図3に描かれた建設現場の工事監督者133は、作業者130の急な体調変化や事故などの情報を受け取る通信端末190、例えばスマートフォン又はタブレット端末を保有する。通信端末190には、特に通信部が描かれていないが、3G、4Gの通信又は近距離無線通信(例えば、Bluetooth(登録商標)又はWi−Fi(登録商標))で、デジタルサイネージ装置100と接続する。
【0024】
油圧ショベル機械160は、近距離無線通信する第3通信部166及び油圧ショベル機械160を制御する機械制御部168と、を有する。デジタルサイネージ装置100から例えば油圧ショベル機械160の強制停止信号を、第3通信部166を介して受け取ると、機械制御部168は油圧ショベル機械160のアーム161又はバケット162を強制停止させる。アーム161に取り付けられた受信機170は、近距離無線通信する第4通信部171を有し、超長波長又は長波を受信したことを、第4通信部171を介してするデジタルサイネージ装置100に通信する。
【0025】
デジタルサイネージ装置100は、表示画面111の他に、第2通信部112、表示画面111に表示される内容等を処理する判断制御部113、生体データ等を記憶する記憶部114、及び音もしくは音声を発生する音発生部115を有している。第2通信部112は、第1通信部157、第3通信部166及び第4通信部171と近距離無線通信を介して通信する。第2通信部112は、第1通信部157を介して生体センサー152、環境センサー153及び加速度センサー154を記憶部114に記憶するとともに、必要に応じて判断制御部113は生体データ等を処理する。さらに、これらの作業者データは必要に応じて管理者135の管理サーバ200及び監督者133の通信端末190に送られても良い。
【0026】
また、判断制御部113は表示画面111にそれら作業者データを表示させることもできる。また判断制御部113は、第4通信部171から受信した長波に基づいて、堆積物に埋まった長波送信部158の深度又はどの装着装置141〜145の長波であるかを判断する。また判断制御部113は、油圧ショベル機械160の油圧ショベル機械160に対して、油圧ショベル機械160のアーム等の動作停止を指示することもできる。
【0027】
<被災者感知システム10の動作>
図5は、被災者感知システム10の動作のフローチャートである。
図6は、事故で坑内にいる作業者が堆積物で埋まってしまった状態を示した図である。以下の説明では、
図6に示されるように、足首に装着装置142をヘルメットに装着装置145を装着している例を説明する。
【0028】
図5のステップS101において、
図6に描かれるように、坑内にいる作業者130が堆積物で覆われてしまったとする。すると、作業者130が装着している装着装置142の圧力センサ155及び装着装置145の圧力センサ155が堆積物の圧力によって作動する。圧力センサ155が作動することで装着装置142の長波送信部158及び装着装置145の長波送信部158が起動する。装着装置142の長波送信部158から、3kHz、6kHz、9kHz及び12kHzの周波数で、10パルス/秒の救助信号が送信される。また、装着装置145の長波送信部158から、3kHz、6kHz、9kHz及び12kHzの周波数で、5パルス/秒の救助信号が送信される。
【0029】
ステップS102において、救助者は油圧ショベル機械160のアーム161を動かし、バケット162を採掘位置(手前)に移動する。そして、救助者はアーム161に取り付けられた受信機170を堆積物の地面に対向する位置へ移動する。バケット162を手前に移動させる理由は、受信機170からできるだけ遠ざけて、送信された長波を受信しやすくするためである。
【0030】
ステップS103において、救助者は堆積物中に基準の長波送信部158を入れて、堆積物中の深度を変えながら受信機170で長波を受信させる。
図6に示されるように、例えば測定柱177の先端に基準となる長波送信部158が取り付けられている。測定柱177の長波送信部158も、装着装置145等の長波送信部158と同様に、3kHz、6kHz、9kHz及び12kHzの周波数が送信される。測定柱177を1.0mの深度に打ち込んで、長波送信部158から長波を送信させ、そして受信機170で長波を受信する。引き続き、測定柱177を1.5mの深度に打ち込んで、長波送信部158から長波を送信させる。このように、2.0mから3.0m程度まで測定柱177を打ち込んで、それぞれ長波送信部158から長波を送信させる。これら送信された長波は、受信機170で受信され、受信機170で受信した結果は、第4通信部171と第2通信部112とを介して、デジタルサイネージ装置100の記憶部114に記憶される。例えば、
図7に示すような結果が記憶される。ステップS103の処理が終わったら測定柱177を抜き出し、長波送信部158の送信を止める。
【0031】
図5のステップS104において、判断制御部113は、受信した長波ごとに、深度の基準を設定する。例えば、
図7に示された受信した波長と深度との結果では、0.5m及び1.0mの深度では、すべての波長の検出が可能である。深度1.5mになると、12kHz波長が受信できなくなり、深度2.0mになると、9kHz波長も受信できなくなり、深度2.5mになると、6kHz波長が受信できなくなり、深度3.0mより深くなると、3kHz波長も受信できなくなることを示している。このため、判断制御部113は、12kHz波長が受信できる場合は最大深度1.0m、9kHz波長が受信できる場合は最大深度1.5m、6kHz波長が受信できる場合は最大深度2.0m、12kHz波長が受信できる場合は最大深度2.5mと設定する。そして設定された値が記憶部114に記憶される。
【0032】
ステップS103及びステップS104の処理は、救助者が作業者が堆積物で埋まってしまった後に処理するよりも、工事現場が決まった際に、ステップS103及びステップS104を処理して、長波ごとの深度の基準を設定することが好ましい。また、天気が良く堆積物が乾いている日、雨が降った日でそれぞれステップS103及びステップS104を処理して、長波ごとの深度の基準を設定することが好ましい。
【0033】
また、すでに近所の土砂等の堆積物で作成した基準を記憶部が有していれば、ステップS103及びステップS104の処理をすることなく、それらの基準を使ってもよい。なお、砂を多く含む土砂、岩石を多く含む土砂、土のみの土壌等及び堆積物の水分量でも、長波と深度との関係が異なる。それら複合的な要因を考慮した複数の基準を予め用意しておき、それらの基準のうち、適切な基準を選ぶことができるようにしてもよい。このように、基準が用意されている場合にはステップS103及びステップS104の処理をスキップしてもよい。
【0034】
図5のステップS105において、判断制御部113は、受信部170が装着装置142又は装着装置145の長波送信部158からの救助信号を受信できたか否かを判断する。仮に受信部170が受信できないとすると、
図7で表した受信した波長と深度との結果に基づいた基準では、2.5m以上の深度で作業者130が堆積物で覆われてしまっていると推測できる。
【0035】
NOの場合には、ステップS106に進み、受信機170が移動されるとともに、油圧ショベル機械160のアーム161及びバケット162が動かされ、2.5mの堆積物が採掘される。そしてステップS102及びステップS105が引き続き繰り返される。
【0036】
ステップS105においてYESの場合には、ステップS107に進む。ステップS107において、判断制御部113は、長波送信部158の深度と装着装置142又は145の取り付け位置とを判断する。第1例として、3kHz、6kHz及び9kHzの周波数で10パルス/秒の救助信号を受信機170が受信したとする。判断制御部113は、周波数に基づいて1.0mから1.5mぐらいに、足首に取り付けた長波送信部158があると判断する。そして5パルス/秒の救助信号を受信機170が受信していないとしたら、判断制御部113は、ヘルメットを被った頭部は3.0m以上深い位置にあると判断でき、作業者130は逆立ち状態で堆積物に埋まっていると推測できる。
【0037】
また第2例として、3kHz、6kHz、9kHz及び12kHzの周波数で10パルス/秒の救助信号及び3kHz、6kHz、9kHz及び12kHzの周波数で5パルス/秒の救助信号を受信機170が受信したとする。判断制御部113は、1.0m以内に、作業者130が横になった状態で堆積物に埋まっていると推測できる。
【0038】
また第3例として、3kHzの周波数で10パルス/秒の救助信号及び3kHz及び6kHzの周波数で5パルス/秒の救助信号を受信機170が受信したとする。判断制御部113は、2.0mから2.5mぐらいの深さに足首に取り付けた長波送信部158があり、1.5mから2.0mぐらいにヘルメットに取り付けた長波送信部158があると判断する。判断制御部113は、作業者130が座わった状態で堆積物に埋まっていると推測できる。
【0039】
ステップS108において、ステップS107で判断した長波送信部の深度と位置とを表示画面111に表示し、又は音発生部115から音声を通知する。音発生部115は、例えば、「被災者の頭部の深度は、1.5mから2.0mぐらい、被災者の足首の深度は、2.0mから2.5mぐらい」と発声する。
図8は、デジタルサイネージ装置100の表示画面111に表示される例であり、(a)は通常の建設現場の工事時、(b)は作業者が堆積物で埋まった被災時である。
【0040】
図8(a)に示されるように、通常時は、作業者130に工事概要や工事予定を知らせる情報A11が表示されたり、作業日の天候などが表示されたりする。
図8(b)に示されるように、被災時には、救急車等に連絡する旨の情報B11が表示されるとともに、被災者が埋まっている深度情報B12及び堆積物に対する指示情報B13が表示される。
図8(b)の震度情報B12は、ステップS107で説明した第3例である。第3例の場合には、深度1.5m以内であれば、作業者130の肢体が存在しない。このため、油圧ショベル機械160のバケット162で、1.0mぐらいまでを採掘するような指示情報が表示される。人力で採掘するよりも時間短縮でき、被災した作業者130を救うことができる可能性が上がる。
【0041】
次に
図5のステップS109において、救助者は堆積物で埋もれた作業者130を傷付けない範囲まで油圧ショベル機械160で採掘する。この油圧ショベル機械160による採掘の後、再度、ステップS102及びステップS108を処理して、受信部170で装着装置142又は装着装置145の長波送信部158からの救助信号を受信し、被災した作業者130の深度及び姿勢を確認するようにしてもよい。
ステップS110において、埋もれた作業者130に1.0mぐらい近づいた時点で、油圧ショベル機械160での採掘を停止して、救助者は手作業で採掘して作業者130を探す。
【0042】
以上、本発明の最適な実施形態について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施形態に様々な変更・変形を加えて実施することができる。また、各実施形態の特徴を様々に組み合わせて実施することができる。
【0043】
例えば、デジタルサイネージ装置100の判断制御部113及び記憶部114に代えて、油圧ショベル機械160の機械制御部168及び不図示の記憶部が、受信機170からの救助信号を処理するようにしてもよい。また、デジタルサイネージ装置100の代わりにノートパソコンを使用してもよい。また、油圧ショベル機械160の代わりにブルドーザーであってもよい。