(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スパークプラグはサイズがM14からM24のスパークプラグであり、前記通路が前記スパークギャップの端部を越えて前記エンクロージャの前記燃焼室側の端部に向かって1.0mm以上延在する、
請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載のスパークプラグ。
【発明の概要】
【0009】
態様によっては、スパークプラグはCOVが低く、寿命が長く、高速の火炎噴流を生じることができる。これにより、メインチャンバでの燃焼がより速やかに行われるようになり、NOxと燃費(又は燃料効率)のトレードオフの関係が改善する。
【0010】
態様によっては、プレチャンバ(予燃焼室)スパークプラグは、金属シェルと、シェルに取り付けられた端部キャップと、中心電極と、接地電極とを含む。また、プレチャンバスパークプラグは、シェル内に配置された絶縁体を含む。実施によっては、中心電極は、絶縁体に囲まれる第1の部分と、絶縁体からプレチャンバ内に延在する第2の部分とを有する。プレチャンバの容積は、シェルと端部キャップとにより画成(定め形成)される。実施によっては、接地電極は、シェルに取り付けられる。実施によっては、接地電極は、中心電極を囲むように間を隔てて配置されたインナーリングと、シェルに取り付けられたアウターリングと、インナーリングとアウターリングとを接続する複数のスポークとを含む。実施によっては、接地電極は、筒形状に形成され、この筒形状により、中央孔に流入して中心電極と接地電極との間のギャップ(隙間)を通過する流れ(一次)が、横断方向の孔を介して流入する流れ(二次)に妨害されないようにする。また、この筒形状により、周縁部において接地電極の後側を通る横断方向の孔の流れは、ギャップから出る際に火炎核に合流するように方向付けられる。さらに、中心電極は、中央孔からギャップを通過する流れの流線を改善する空気力学的形状を持っている。
【0011】
別の態様において、内燃機関内での燃焼が促進される。燃料混合気は、プレチャンバスパークプラグのプレチャンバ内で点火される。実施によっては、プレチャンバ内で燃料混合気を点火することは、第1のポートを提供して、中心電極と接地電極との間のギャップ内への第1の量の燃料混合気の流れ、ここで、その流れの方向はプレチャンバの前チャンバからの主に逆方向である(流れの大部分はこの方向であり、場合によっては、すべての流れがこの方向である)流れ、を許容すること、及び、ギャップ内の燃料混合気に点火することを含み、この点火により火炎核が発生する。この火炎核は、プレチャンバの後チャンバへ移動させられ、第2の量の燃料混合気が後チャンバへ流れて火炎核により点火されるように、第2のポートが前チャンバ内への第2の量の燃料混合気の(横方向の)流れを許容する。また、第2の流れは、方位角における均一性が向上しかつプレチャンバ内に乱流が発生するように、後チャンバ内に拡大する火炎を方位角方向に拡げるように作用するスワール(渦巻き/旋回)を有してもよく、これにより燃焼はさらに加速される。第1及び第2の量の燃料混合気を点火することにより、プレチャンバ内の圧力が上昇し、第1及び第2のポートから火炎噴流を流出させる。ポートの孔の大きさと角度とは、火炎噴流の速度とメインチャンバへの貫通性を最大化するように制御することができ(例えば、場合によって改善又は最適化される等)、メインチャンバ内における燃焼を強化することができる。孔の大きさにより流入量及び流出量の両方が制御される。孔の大きさは、エンジン固有の所望の点火遅れ時間、噴流速度、及び火炎噴流の貫通性、ひいてはメインチャンバにおける燃焼率を実現するように制御することができる(例えば、場合によって改善又は最適化される等)。
【0012】
さらに別の態様において、プレチャンバスパークプラグは、シェルと、シェルに取り付けられた端部キャップとを含む。さらに、プレチャンバスパークプラグは、シェル内に配設された絶縁体を含む。実施によっては、中心電極は、絶縁体に囲まれた第1の部分と、絶縁体からプレチャンバ内に延在する第2の部分とを有する。プレチャンバは、シェルと端部キャップとにより画成される。実施によっては、接地電極は、シェルに取り付けられる。実施によっては、接地電極は、中心電極を囲むように間隔を置いて配置されるインナーリングと、このインナーリングから半径方向の外側へ突出してインナーリングを定位置に保持する複数のスポークとを含む。実施によっては、各スポークの端部がシェルに取り付けられる。
【0013】
別の態様において、プレチャンバスパークプラグが製造される。接地電極がシェルに取り付けられる。実施によっては、接地電極が筒状の電極を含む。実施によっては、筒状の電極は、中心電極を囲むように配置されたインナーリングを有する。
【0014】
実施によっては、貴金属が、スパーク面である中心電極及び接地電極に取り付けられる。中心電極と接地電極との間のギャップは、製造及び組立の間に正確に形成されるように、製造及び組み立ての間にギャップ形成工具で形成され、それにより、製造後に再度ギャップを形成する必要性が減少する。実施によっては、このギャップ形成工具を中心電極と接地電極との間に挿入してから、接地電極をシェルへ最終的に取り付ける。実例によっては、これが、かかる工程の最終加熱ステップであれば、上記ギャップは最良の状態に維持される。実施によっては、正確で高い公差のギャップを形成するように、電子ビーム(EB)、ウォータージェット、及び他の適切な材料除去法によって、接地電極が取り付けられた後にスパークギャップが形成される。理想的な新たなスパークギャップの範囲は、0.15mmから0.35mmである。
【0015】
実施によっては、筒状の接地電極と中心電極とを同軸にした配置では、流れがギャップを通過して接地電極の後側へ向かう条件を創り出すことができるが、このような配置は、プレチャンバにおいて、シリンダヘッドのプレチャンバがスパークプラグのシェルの壁の代わりとなるような、スパークプラグのシェルを必要としないヘッド設計で実現できる。さらに、シリンダのヘッド装置内のプレチャンバスパークプラグ又はプレチャンバのいずれかに燃料を加えることにより、希薄作動限界をさらに拡張するようにしてもよい。このような装置は「燃料供給機能付き」装置と呼ぶことができる。
【0016】
別の態様において、プレチャンバスパークプラグは、シェルと、絶縁体と、中心電極と、接地電極とを含む。シェルは複数の通気孔を含む。絶縁体はシェル内に配置される。中心電極は、絶縁体に囲まれて、シェルによって画成されたプレチャンバ内に延在する。絶縁体は、中心電極周りに同軸上に配置される。接地電極は、絶縁体に取り付けられ、中心電極の遠位端を取り囲む。接地電極は、中心電極を囲むように間隔を置いて配置された筒状のリングを含み、空気力学的ラム領域として作用する形状を形成する中心電極の遠位端を軸線方向に越えて半径方向にオフセットされた周方向の延長部を有する。
【0017】
別の態様において、内燃機関内における燃焼を促進する。燃料混合気は、プレチャンバスパークプラグのプレチャンバ内で点火される。燃料混合気を点火することは、複数の通気孔を提供してプレチャンバのスパークギャップ内への燃料混合気の一次の流れを許容すること、及び、燃料混合気に点火することを含み、その点火により火炎核が発生する。次に、この火炎核は、プレチャンバの第1のステージへ移動させられ、プレチャンバの第1のステージは、中心電極と同軸上の絶縁体に取り付けられた接地電極の間に配置されたキャビティによって画成され、再循環ゾーンを形成することにより「火炎保持部」として機能する。火炎核が第1のステージに移動せられた後、絶縁体に取り付けられた接地電極の外側に配置されたキャビティによって画成されたプレチャンバの第2のステージ全体に燃料混合気の二次の流れが拡散するように、燃料混合気の二次の流れが複数の通気孔を通ってプレチャンバに提供される。最終的に、火炎核は、第1のステージから第2のステージへ移動して燃料混合気の二次の流れを点火して、プレチャンバ全体に火炎が広がるようにし、プレチャンバ内にて大部分の燃料を燃焼させる。これにより、圧力が大幅に上昇して火炎噴流が通気孔から放射される。
【0018】
別の態様において、プレチャンバスパークプラグは、シェルと、絶縁体と、中心電極と、接地電極とを含む。絶縁体はシェル内に配置される。中心電極は、絶縁体に囲まれた第1の部分と、絶縁体からプレチャンバ内に延在する、シェルによって画成された第2の部分とを有する。接地電極は、絶縁体に取り付けられており、スパークギャップを形成する中心電極を囲むように間隔を置いて配置されたインナーリングを含む。
【0019】
態様によっては、電気スパークの代わりに、ギャップ表面の間の位置にレーザ光線の焦点を当て、AFRを点火温度まで加熱し、電子ではなく光子によって火炎核を形成する。実施によっては、ギャップ領域に光線をもたらし、焦点を当てる手段を含む。電気スパークでは、圧力が上昇するにつれて絶縁破壊及び火花を達成するために高圧が必要となるが、レーザ光線による点火の利点は、シリンダの圧力条件による影響を受けにくいことである。レーザによる点火によれば、従来の電気点火システムの絶縁破壊限界を超えた圧力での点火を行える可能性がある。
【0020】
第1の態様では、エンジンの作動における燃焼を促進する方法であって:エンジンの燃焼室からの燃料混合気をスパークプラグのエンクロージャ内に受け取るステップと;エンクロージャ内のスパークギャップ内で、受け取った燃料混合気を点火するステップと;点火された燃料混合気がスパークギャップを通ってその大部分がピーク流速でエンクロージャの燃焼室側端部から離れるように、スパークギャップを通るピーク流速をエンクロージャへのピーク流速の10%以上の流速で方向付けるステップとを備える。点火された燃料混合気の大部分は、エンクロージャ(筐体や容器等の囲い)の燃焼チャンバ側端部から遠ざけるように方向付けられるが、場合によっては、流れのすべてがこの方向に方向付けられる。
【0021】
第2の態様は、第1の態様において、スパークギャップを通るピーク流速が5m/秒以上であり、スパークギャップから残留ガスをパージする。
【0022】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、スパークギャップの高さHが2.5mm以上かつスパークギャップ内のピーク流速がVで、H/V*360*RPMがエンジンのクランク角3度以下である。
【0023】
第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つにおいて、スワール流に含まれる燃料混合気を、エンクロージャの内部の周辺と、燃焼室側端部とは反対側のエンクロージャの端部とへ方向付けるステップと;スパークギャップ内で点火する燃料混合気をスワール流から保護するステップとを備える。
【0024】
第5の態様は、第4の態様において、スパークギャップから出る点火された燃料混合気を、スワール流から保護するステップを備える。
【0025】
第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つにおいて、スパークプラグのサイズはM14からM24であり、燃料混合気の燃焼によるエンクロージャ内の最大圧力を、スパークギャップでの燃料混合気の点火から、エンジンのクランク角7度以上遅延させるステップを備える。
【0026】
第7の態様は、第1の態様乃至第6の態様のいずれか1つにおいて、エンクロージャの燃焼室側端部とは反対側の半分に存在する燃料混合気が概ねすべて点火された場合にのみ、点火された燃料混合気をエンクロージャ内からエンジンの燃焼室に噴射するステップを備える。燃料混合気の大部分は点火されるが、場合によっては、すべての燃料混合気が点火される。
【0027】
第8の態様では、エンジン用スパークプラグは、スパークプラグのエンクロージャ内のスパークギャップと;エンクロージャの内側の通路であって、エンジンの作動中にエンクロージャの外側から流れを受け取り、流れがスパークギャップを通ってその大部分がエンクロージャの燃焼室側端部から離れるように方向付ける通路とを備え;スパークプラグが、エンクロージャへのピーク流速の10%以上となるピーク流速をスパークギャップ内に作り出す手段を含む。エンクロージャの内側の通路は、エンクロージャの燃焼チャンバ側端部から流れを遠ざけるように方向付ける。場合によっては、流れの大部分はこの方向に方向付けられるが、場合によっては、すべての流れがこの方向に方向付けられる。
【0028】
第9の態様は、第8の態様において、スパークプラグはスパークギャップ内に5m/秒以上のピーク流速を作り出すように構成されている。
【0029】
第10の態様は、第8の態様又は第9の態様において、スパークギャップの高さがHかつスパークギャップ内のピーク流速がVで、エンジンのクランク角3度以下のH/V*360*RPMを作り出す。
【0030】
第11の態様は、第10の態様において、スパークプラグはM14からM24で、Hが2.5mm以上である。
【0031】
第12の態様は、第8の態様乃至第11の態様のいずれか1つにおいて、スパークプラグはサイズがM14からM24のスパークプラグであり、通路がスパークギャップの端部を越えてエンクロージャの燃焼室側の端部に向かって1.0mm以上延在する。
【0032】
第13の態様は、第12の態様において、通路は、スパークギャップを含み、スパークギャップの対向する端部からエンクロージャの燃焼室側端部から離れるように、0.1mm以上延在する。
【0033】
第14の態様は、第12の態様又は第13の態様において、通路内へ流れを方向付けるように配向された、エンクロージャの燃焼室側端部内の孔と;流れを、通路の外側の周辺と、燃焼室側端部とは反対側のエンクロージャの端部とへ方向付けるように配向された、エンクロージャの燃焼室側端部内の孔とを備える。
【0034】
第15の態様は、第8の態様乃至第14の態様のいずれか1つにおいて、スパークプラグのサイズはM14からM24であり、スパークプラグは、スパークギャップでの点火からエンジンのクランク角7度以上で、燃料混合気の燃焼によりエンクロージャ内の圧力が最大圧力に到達するように構成されている。
【0035】
第16の態様は、第8の態様乃至第15の態様のいずれか1つにおいて、金属シェルと;シェル内の電気絶縁体と;絶縁体から延在する中心電極と;中心電極とによりスパークギャップを画成する1以上の接地電極及び通路を画成する1以上の接地電極とを備える。
【0036】
第17の態様は、第16の態様において、1を超える接地電極が通路を画成し、接地電極は交わらない。
【0037】
第18の態様は、第16の態様又は第17の態様において、1以上の接地電極は管を備え、管は通路を画成すると共に管からシェルに向かってエンクロージャの燃焼室側端部から離れるように延在するアームを備える。
【0038】
第19の態様は、第16の態様乃至第18の態様のいずれか1つにおいて、中心電極は軸方向断面が多角形である。
【0039】
第20の態様は、第19の態様において、1以上の接地電極は、中心電極の軸方向断面と同じ形状に通路を画成する。
【0040】
他の態様、目的及び利点は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0073】
ここでの概念は、プレチャンバスパークプラグに関する。実例によっては、プラグの態様は、燃焼プロセス中の再現及び制御が可能な点火遅れ時間の提供に関係する課題を扱う。実施例によっては、スパークプラグは、より高効率な燃焼プロセスと、より長い寿命とを達成する。プレチャンバスパークプラグは、例えば、火炎核の発達、点火遅れ時間、火炎噴流の放射、及び主燃焼室の燃焼率を制御する筒状の速度制御管を含むことができ、その結果エンジン性能が向上するかもしれない。例によっては、点火遅れ時間とは、スパークから、燃焼によりプレチャンバ内、ひいては主燃焼室内の容積部の圧力が増大するのに十分になるまでの期間のことをいう。
【0074】
図1は、例示のプレチャンバスパークプラグ100の一部の断面図である。プレチャンバスパークプラグ100は、長手方向軸線101と、この長手方向軸線101に沿って延在し、さらに絶縁体104から、後チャンバ106及び前チャンバ108に分割された予燃焼チャンバ内に延在する中心電極102とを有する。接地電極として機能する筒状電極110は、シェル112の内側に配設されている。
図1において、筒状電極110は、一続きの(切れ目の無い)シリンダ(円筒)として示されているが、この筒状電極110は、他の筒形状(例えば、方形、三角形、その他)とすることができ、場合によっては、中心電極102の軸方向断面に合わせてもよい。実施によっては、シェル112は、高温曝露に耐え得る高い強度の金属からできている。シェル112は、スパークプラグのプレチャンバ容積部の一部を形成する。シェル112は、絶縁体104に取り付けられると共に、端部キャップ116を保持する。端部キャップ116は、スパークプラグ100のプレチャンバ容積部の一端と、前チャンバ108の境界とを画成(定め形成)する。端部キャップ116は平坦とすることができ、ドーム形、V字円錐形、又は他の形状とすることができる。場合によっては、端部キャップ116は、図示のようにシェル112に取り付けられる別体品としてではなく、シェル112に一体化することができる。筒状電極110のディスク部114は、後チャンバ106と前チャンバ108とを分離するように設けられている。
図1に示すように、実施によっては、シェル112の内側の表面118は、プレチャンバスパークプラグ100の組み立てにおいて、筒状電極110を段状部分120上に着座させることができるように、段状部分120を有してもよい。
【0075】
図2は、例示の筒状電極110の斜視図である。筒状電極110は、この筒状接地電極110内に組み込まれるインナーリング130とアウターリング132とを有する。
図2の例において、インナーリング130とアウターリング132とは3つのスポーク134により接続される。筒状電極110の中央部分におけるインナーリング130から延在しているのは、筒状のインナーリング又は速度制御管136である。
図1に示すように、この速度制御管136は、ディスク部114から前チャンバ108内まで一方向に延在するように設けられる。中央開口138は、インナーリング130と速度制御管136とを貫通して延在して設けられる。他の例では、接地電極110は、中心電極102の端部又は側壁によりスパークギャップを形成するJ形状のような他の設計であり、中心電極102は、前側及び/又は後側に溶接されて、又は取り付けられて、速度制御管を形成する。
【0076】
図2をさらに参照して説明すると、例示の筒状電極110は、銅合金、ニッケル合金、又は他の比較的高い導電性を有する金属で作られることができる。実施によっては、インナーリング130の内面140には貴金属が固着又は堆積される。貴金属は、典型的には、スパークプラグの寿命の延長及び性能の向上を図るように、スパークプラグの電極上に用いられる。この場合に選択される貴金属は、高い融点、高い導電性、そして高い耐酸化性を有する。実施によっては、例えば、白金(プラチナ)又はその合金、ロジウム又はその合金、タングステン又はその合金、ニッケル又はその合金、イリジウム又はその合金で設けられた第1の電極の表面リング142により、インナーリング130の内面140はライニングされる。実施によっては、インナーリング130の内面140は、イリジウム−ロジウム合金又はニッケル合金によりライニングされて設けられる。再び
図1を参照すると、第2の電極の表面リング144は、第1の電極の表面リング142と同様又は類似の材料で設けられ、中心電極102の外面146に固着又は堆積される。表面材は、中心電極102及び/又は筒状電極110の構造体全体を構成する、又は、溶接、ろう付けあるいは他の適切な取り付け方法により構造材に取り付けられる。接地電極の場合、代わりのスパーク表面材は、接地電極の構造体に圧入、ろう付け、又は溶接される筒の形状に合わせて作成することができる。筒状電極110は、筒状電極110の基部構造の内径に挿入された異なる材料のリングを有していてもよい。異なる材料は、例えば、高い耐食性又は耐酸化性を持ち、筒状電極110の基部の材料とは異なる材料とすることができる。リングを挿入する目的は、高価な耐食性材料及び耐酸化性材料をスパーク面にのみ追加することで、電極の耐食性及び耐酸化性を高めることである。
【0077】
再び
図2を参照すると、例示のスポーク134は、製造を容易にするために縁部(エッジ)を直角として設けてもよく、又はスポーク134の間の空間を流れる気体の抵抗が減少するように曲面状の表面として設けてもよい。筒状電極110の支持構造は、中実の「車輪」型であって、中心電極102と同心の筒状電極110を支持するスポーク又は他のいずれかの機構を備えるものであってもよい。例示の支持機構は、シェル112の側壁、後壁、又は他の部分に取り付けられたタブ(つまみ)又は脚等を含む。場合によっては、インナーリング130とアウターリング132とを接続するスポークの数を増減して設けてもよい。場合によっては、筒状電極110は、貴金属製の電極の表面リングを有して設けられない。ある例では、筒状電極110の全体は、ニッケル合金等の単一材料で設けられる。
【0078】
例示の筒状電極110は、実質的な単体(例えば、単体又は3もしくは4個のような小さな数の個数)として鋳造又は機械加工して設けられてもよいが、第1の電極の表面リングは、ある種の貴金属又は類似の適切な金属製の別体のリングで設けられてもよい。筒状電極110を、粉末金属を焼結、あるいは射出成形して製造することも考えられる。粉末金属を焼結するのではなく溶融する他の製造技術も考えられる。実施によっては、第1及び第2の電極の表面リング142、144を、例えば、任意の長さに切断してリングを形成できる円筒状又は矩形の棒材から製造する。実施によっては、第1及び第2の電極の表面リング142、144を平板材から製造し、パンチプレスを用いて単体の平板材から多数の電極の表面リング142、144を打ち抜いて設ける。
図3は、第1及び第2の電極の表面リング142、144の例を示す。ここで、2つの電極の表面リングは単一工程(1ショット)で打ち抜かれ、第1及び第2の電極の表面リング142、144は3つのタブ148を介して取り付けられて設けられる。実施によっては、第1及び第2の電極の表面リング142、144は、電極の表面リング142、144の間の正しい間隔が維持される位置で、タブ148により筒状電極110に組み付けられる。第1の電極の表面リング142が筒状電極110に取り付けられ、第2の電極の表面リング144が中心電極102に取り付けられた後、タブ148は取り除かれる。第1の電極の表面リング142は、製造、組み立て、取り付け、及び/又は熱膨張に適合するように1つ以上の半円状の部分に切り分けてもよい。
【0079】
図4に筒状電極の他の例を示す。この例では、インナーリング130、アウターリング132、スポーク134、及び速度制御管136は、筒状電極110と実質的に同一(記載したような作動に影響を与える変化なしに)に設けられる。しかし、筒状電極111では、第2の電極の表面リング144が3つのタブ156により第1の電極の表面リング142に取り付けられて設けられる。このように、第1及び第2の電極の表面リング142、144の間の正しい間隔は、組み立てが完了するまで維持される。組み立て後、タブ156を、機械的に、又は電子ビームにより、又はウォータージェットにより、又は類似の方法で取り除くことができる。しかし、実施によっては、タブ156を、例えば、筒状電極111や第2の電極の表面リング144で用いる材料よりも実質的に融点が低い材料で製造してもよい。このように設けると、筒状電極111又はプレチャンバスパークプラグ100の他のコンポーネントが損傷しないで、筒状電極111のプレチャンバスパークプラグ100への組み付けの後で、タブ156を燃焼又は溶融により取り除くことができる。
【0080】
第1の電極の表面リング142を例示の筒状電極110に取り付ける方法はいくつかある。実施によっては、筒状電極110を第1の電極表面リング142の周りに鋳造する。実施によっては、内面に貴金属層又は同様に適切な金属の層を固着した別体の金属リングを、筒状電極110のインナーリング130に組み付ける。
【0081】
例えば、物理蒸着(PVD)又は化学的気相成長(CVD)を利用して、電極の表面リングの材料を、粉末金属基材上へ堆積させることができる。粉末金属基材は、中空円筒に設けられてもよく、電極の表面リングの材料をこの中空円筒の内面に堆積させてもよい。この円筒を輪切りにして、多数の第1の電極の表面リング142を得ることができる。小さい中空円筒の外側に同じ材料を堆積する場合、これを輪切りにして多数の第2の電極の表面リング144を得ることができる。このような方法で製造することにより、第1の電極の表面リング142は、筒状電極110の中央開口に挿入でき、定位置に溶接又はろう付けすることができる。
図5は、例えば、ニッケル合金又は高導電性合金からなる基材143に、第1の電極の表面リング142を固着又は堆積させた筒状電極110の断面図である。実施によっては、溶接は1ヶ所又は数ヶ所でのタック溶接により行われ、材料毎に異なる熱膨張率に起因する相対的な移動を許容する。筒状電極110に貴金属を付加する上記方法を用いることにより、従来のプレチャンバスパークプラグで用いられた典型的な量よりも少ない貴金属でプレチャンバスパークプラグ100を製造することができ、このため、多くの従来のプレチャンバスパークプラグよりも安価にプレチャンバスパークプラグ100を製造できる。
【0082】
実施によっては、筒状電極110を別々の構成部品から組み立ててもよい。
図5はまた、別体に設けられたディスク部114と速度制御管136とを有する筒状電極110の断面図を示す。実施によっては、速度制御管136は、一端にノッチ部152を有し、このノッチ部はディスク部114の環状受容部154に圧入(プレス嵌め)される。実施によっては、環状受容部154は、これを定位置に保持する速度制御管136のノッチ部152内に向けて内方にプレスされてもよい。実施によっては、ノッチ部152は、環状突出部を含み、この環状突出部の外周周りに筒状電極110の環状受容部154の窪みが嵌合して、ディスク部114と速度制御管136との間の取り付けをより良好にする。実施によっては、ノッチ部152は、環状受容部154の内側の表面に対応する形でねじ切り(加工)され、速度制御管136をディスク部114に螺合できるように設けられている。
【0083】
再び
図1を参照すると、エンジンの作動中の例示の態様において、燃料混合気は、エンジン(不図示)のメインシリンダから、端部キャップ116(
図7及び
図8参照)の中央孔162と、複数の外縁孔164(
図7及び
図8参照)とを通って、プレチャンバスパークプラグ100の前チャンバ108に吸入される。中央孔162は、それの流れを速度制御管136のところで速度制御管136の中へ向けるように、配向される。したがって、中央孔162を通って吸入される燃料混合気は、速度制御管136を通り、中心電極102と筒状電極110との間の、電気火花による点火が行われるスパークギャップへと流れる。速度制御管136は、中央孔162からの流れを集め、管136の内側の流れを停滞させて、管136の外側周辺の圧力及び筒状電極110の出口の圧力よりも高い圧力を生成する。中央孔162からの流れの速度と圧力差とにより高速の流れが生じ、この流れは速度制御管136に案内されて、スパークギャップを通り抜けて後チャンバ106へ向かう。同様に、燃料混合気の速度により、最初の火炎核が後チャンバ106に移動される。
【0084】
例示の実施によっては、一次の中央孔を通る流れには、低いレベルの残留物を伴う新気(新鮮な気体)の燃料混合気が含まれる。この一次の流れは、スパークギャップ域へ押し入り、前回の燃焼イベント(燃焼事象)で生じた残留物を均一に後方へ押して、スパークギャップ領域から排出する。この作用により、スパークギャップの残留物が効率的にパージ(浄化)される、すなわち、プレチャンバ内の残留物を「制御」する。従来のプレチャンバスパークプラグでは、残留ガスをうまく「制御」できない、又はまったく「制御」できず、新気とスパーク時の残留物との、制御されない不明の混合物が生じる。これが、従来のプレチャンバスパークプラグにおける、ショット間の燃焼の変動の主な原因である。したがって、このような設計により、残留物を効率的に後方に(端部キャップから離れる方向に)パージする残留ガスの制御が行われ、この制御により、場合によっては極めて低い変動(COV)を達成できる。
【0085】
実施例によっては、周縁孔164は、周縁孔164を通って吸入された燃料混合気にスワール運動(渦運動)を発生させるように配向されている。スワール運動を行う燃料混合気は、速度制御管136の外側を通過し、後チャンバ106に向かって流れる。後チャンバ106において、燃料混合気は、中央孔からの流れに乗る火炎核により点火される。燃料混合気のスワール運動に起因して発生する乱流により、後チャンバ106内の燃料を主に消費すると共に後チャンバ106周りに拡がる火炎核が分配(分散)される。例えば、火炎核は、後チャンバ106内のわずかな燃料を除くすべての燃料を消費することができる。場合によっては、火炎核は、後チャンバ106内のすべての燃料を消費する。これにより、後チャンバ106から前チャンバ108へと燃料混合気の燃焼が進行する際に、より速く燃焼し、プレチャンバ内の圧力が急速に増加する。その結果、燃料混合気はより完全に燃焼するので、プレチャンバ内の圧力は増加する。これにより、高速の火炎噴流(ジェット)が、中央孔162及び複数の外縁孔164を通過して、主燃焼室(不図示)へ流入する。
【0086】
このように、火炎核が後チャンバ106に流れることにより点火を遅らせることができる。実施によっては、燃焼工程は後チャンバ106において開始され、発生した火炎が主燃焼室内に放射される前に燃焼工程は前チャンバ108を通過する。点火遅れ時間を延長することで、より完全に燃焼が行われるので、この工程は再現性が高く、変動が少ないため、典型的な従来のプレチャンバスパークプラグよりもCOV(変動係数)が低くなる。点火遅れによるさらなる利点は、点火遅れのない場合よりもシリンダの圧力が低いときに、燃焼サイクルの早い時点でスパークを開始できることである。シリンダの圧力が低いときにスパークを開始することにより、プレチャンバスパークプラグ100の寿命が延びる。プレチャンバスパークプラグ100は、スパークギャップ内でのスパークイベント後、7度以上のエンジンクランク角で、燃料混合気の燃焼による最大エンクロージャ圧力(包囲圧力、容器圧力)に達するように構成されている。
【0087】
さらに、例示のプレチャンバスパークプラグを構成する際に、筒状電極110の後方の後チャンバ106と筒状電極110の前方の前チャンバ108との容積を特定(場合によっては改良又は最適化)して火炎核の拡大を制御することにより、点火遅れ時間を制御できる。後チャンバ106の容積に対する前チャンバ108の容積の比が、中央孔162から流出する火炎噴流(ジェット)の大きさと貫通性とを制御する。
【0088】
図6は、例示の筒状電極180の斜視図である。筒状電極180は、接地電極として機能し、この筒状電極180は、アウターリングを持たないことを除き、筒状電極110と同一である。筒状電極180は、中央開口138を有するインナーリング130を含む。このインナーリング130は、軸線方向に延在して速度制御管136を形成する。
図6に示す実施の形態では、3つのスポーク134は、インナーリング130の外面から半径方向の外側に延在する。実施によっては、筒状電極180は、各スポーク134の端部182をシェル112に直接に取り付けることによりプレチャンバスパークプラグ100に組み付けられる。取り付けは溶接又はろう付け等で行うことができる。
【0089】
図7及び
図8は、それぞれ、プレチャンバスパークプラグ100の例示の端部キャップ116を端面より見る図及び断面図である。実施によっては、端部キャップ116は、カップ状に設けられ、シェル112の端部から僅かに突出して設けられる。端部キャップ116は、実施によっては、プレチャンバスパークプラグ100の長手方向軸線101上に中心を置く中央孔162を有する。中央孔162は、前チャンバ108内への燃料混合気の流量(フローレート)及びスパークギャップ内の速度を制御するように構成される。端部キャップ116は、複数の外縁孔164をさらに含む。これらの外縁孔164は、端部キャップ116の側壁166又はシェル112自身に穿孔するか、成形してもよい。外縁孔164は、予燃焼チャンバ内で燃料混合気のスワール(渦巻き/旋回)運動を発生させるように構成される。実施によっては、端部キャップ116は、溶接、ろう付け等によりシェル112に取り付けられる。端部キャップ116は、平坦(シェルに対して垂直)な形状であってもよく、「V字」形状であってもよい。シェル112及び端部キャップ116の形状は、端部キャップ116が平坦で、挿入深さの大半はシェル112の長さによるものであるように形成してもよい。シェル112及び端部キャップ116の形状は、端部キャップ116の形状が突出していて(ドーム形又は「V字」形)、挿入深さの一部はこの端部キャップの形状の長さによるものであるように形成してもよい。
【0090】
図7及び
図8は、側壁166に7つの外縁孔164と7つの外縁孔軸線168とを有する端部キャップ116の例を示す。
図7では説明を容易にするために、1つの外縁孔軸線168のみを示す。
図7は、外縁孔164用の例示のスワール角度(旋回角度)と、プレチャンバスパークプラグ100の長手方向軸線101とをさらに含む端部キャップ116を端面より見る図である。この図では、端部キャップ116がシェル112に組み付けられる際に存在するであろう位置に配置されている。
図8は、端部キャップ116の断面図であり、外縁孔164用の例示の貫通角度を示す図である。中心孔の大きさは、直径0.1mm〜2.0mmの範囲になりやすく、しかし、より大きな大きさであってもよい。
【0091】
例示の端部キャップ116の他の実施では、7つではない数の外縁孔164を有してもよい。外縁孔164は、どの外縁孔軸線168も長手方向軸線101と交わらないように向けられている。上記のように、
図7に外縁孔164のスワール角度を示す。
図7に示すように、スワール角度は、外縁孔軸線168と放射状線169との間の角度として画成され、放射状線169は、端部キャップ116の中心から突出して、外縁孔164により画成されるシリンダの両端間の中間の外縁孔軸線168上の点を通過する。
【0092】
図7及び
図8に示す例では、スワール角は45度に設けられているが、他の例では、その角度は45度以外の角度で設けられてもよい。
図8は、外縁孔164の貫通角度を示す図である。
図8に示すように、貫通角度は、外縁孔軸線168と長手方向軸線101又は長手方向軸線101に平行な線171との間の角度により画成される。エンジンの作動中、燃料混合気がプレチャンバの前チャンバ108内に導入されると、外縁孔164の成す角度により、プレチャンバ内の燃料混合気にスワール(渦巻き/旋回)効果が発生する。外縁孔164の厳密な位置(すなわち、側壁166上の位置)及び構成(例えば、直径、角度)は、予燃焼チャンバ内の所望の流れ場及び燃料混合気の分配(分布)を実現するように定められる。
【0093】
図9は、例示のプレチャンバスパークプラグ200の断面図である。プレチャンバスパークプラグ200は、長手方向軸線201を有する。中心電極102は、長手方向軸線201に沿って延在し、さらに絶縁体104から後チャンバ106及び前チャンバ108に分割されたプレチャンバ内までに延在するように設けられる。筒状電極210は、シェル112の内側に配設され、接地電極として機能する。筒状電極210のディスク部214は、前チャンバ108から後チャンバ106を分離するように設けられる。端部キャップ116は、プレチャンバスパークプラグ200の端部を画成すると共に前チャンバ108の境界を画成する。実施によっては、シェル112の内側の表面118は、プレチャンバスパークプラグ200の組み立てにおいて、筒状電極210を段状部分120上に着座させることができるように、段状部分120を有してもよい。接地電極は薄いリングとしても構成してもよく、薄いリングは、シェル(112)からコアが延在する基部付近や、シェルの先端(108)付近を含むシェルのいずれかの場所に取り付けられた、又は端部キャップそのもの(116)から取り付けられた脚部によって浮かせられている。溶接、ろう付け、レーザ溶接等の任意の取り付け方法を用いて管を取付けることもできる。
【0094】
作動において、例示のプレチャンバスパークプラグ200は、前述した例示のプレチャンバスパークプラグ100の作動と同様に作動する。しかし、
図9から分かるように、筒状のインナーリング又は速度制御管236は、前チャンバ108内と後チャンバ106内との両方に向かって軸方向に延在して設けられる。速度制御管236の長さを増加すること、すなわち、後チャンバ106内に延在する部分を追加することにより、点火遅れ時間をさらに延ばすことができる。この場合、点火遅れ時間は、速度制御管236の後方への延長部分の長さと、速度制御管236の後方への延長部分における流速により制御される。速度制御管236における流速は、中央ポート(中央孔)162を通る質量流量の関数である。速度制御管236を延ばすことによる点火遅れ時間の延長により、プレチャンバスパークプラグ100の場合よりもさらに早期のスパーク開始が可能となる。シリンダ圧力が低い時点でのより早期のスパーク開始は、スパークプラグの寿命を延長する。このような設計により、貴金属をまったく用いない中心電極及び接地電極を有するプレチャンバスパークプラグの製造が可能となる。これにより、材料コストを削減することができると共に、スパークプラグの実質的な製造及び組み立てを簡易化することができる。しかし、貴金属又は非貴金属のリングを接地電極内に挿入できるような設計とすることもでき、貴金属又は非貴金属のリングは接地電極の本体と電気的に接続されているため、シェルとも接触する。このリングインサートは、圧入、締り嵌め、レーザ仮溶接、レーザ溶接、ろう付けによって取り付けてもよい。この設計により、単に、スポークで拘束された部位と接地電極管の非拘束部位との熱膨張の差に起因して溶接部が軟化したり破断したりしても、リングインサートは定位置に保持される。
【0095】
図10は、
図9のプレチャンバスパークプラグ・アセンブリ(組立体)に類似する例示のプレチャンバスパークプラグ・アセンブリの断面図である。
図10における特定の関連する寸法がA〜Kとして示されている。寸法は、M14からM24のサイズのプレチャンバスパークプラグに関連する(すなわち、シェルのねじ部分がM14からM24のメートルねじであるスパークプラグ)。したがって、例えば、シェルの外径はねじの谷径よりもわずかに小さい。よって、後チャンバ106及び前チャンバ108の全容積は、1000mm
3と3000mm
3との間の範囲にある。
【0096】
例示において、寸法Aは、中心電極102のスパーク面を越えて接地電極210が延在する長さであり、通路の一部を形成する。場合によっては、寸法Aの最小長さは1.0mmである。延在する接地電極は、速度制御管236を形成する。したがって、寸法Aは、速度制御管236の寸法を特徴づけることができる。速度制御管236は、停滞圧力ゾーンを形成し、これにより燃料混合気の流れが火炎核を後チャンバ106内に一掃する。場合によっては、中心電極102の端部と端部キャップ116との間の隙間は、1mmと12mmとの間を変動することができる。寸法Bは、接地電極210がスパークプラグエンクロージャの燃焼室側端から離れる方向の延長部の寸法である。この延長部とスパークギャップとで、通路の一部を形成する。場合によっては、寸法Bの長さは少なくとも0.1mmである。
【0097】
図示の実施例において、寸法C及びDは、速度制御管236の入口管ノッチ(切欠き)の断面積を画成する。場合によっては、寸法C、すなわちノッチの深さは、0.10から0.70mmの間の範囲である。場合によっては、寸法D、すなわちノッチの長さは、0.1から4.0mmの間の範囲である。入口管ノッチは、低速度運転及びコールドスタート(冷間始動)時の火炎核消失効果を最小にする。寸法Eは、中心電極102の火炎保持ノッチの深さを画成する。場合によっては、寸法Eの範囲は0.10から0.70mmである。火炎保持ノッチは、より優れた再循環を可能にするとともに、火炎核が後プレチャンバ106へ移動する際の消失効果を減らすことができる。
【0098】
例示の中心電極102は、寸法F及びGにより画成される丸め前部を有することができる。例示において、寸法Fは中心電極102の丸めた先端部の曲率半径である。丸めた先端部によって、より対称的な流れがスパークギャップへ導かれ、流れ抵抗も減少する。湾曲の無い平坦な先端部は、製造が容易で、ここに記載する実施において用いることもできるものの、乱流がより多く発生し、流速も低下する。したがって、場合によっては、丸めた先端部を用いるかもしれない。中心電極102の半径は、寸法Gによって画成される。場合によっては、寸法Gの長さは3mmである。場合によっては、寸法Fは、G/F≦1を満たすように選択することができる。
【0099】
例示において、スパークギャップ面の長さは、寸法Hによって画成される。場合によっては、寸法Hの範囲は、2.50から6.00mmの間である。例示において、スパークギャップは、中心電極102と接地電極236との間の距離であり、これを寸法Jと指定する。場合によっては、スパークギャップ距離は、スパークギャップ面に沿う単一の値ではない。接地電極236は、テーパ角Kにより画成される円錐形状を有することができる。場合によっては、テーパ角Kの範囲は、0.10度と2.5度との間とすることができる。例示においては、スパークギャップ距離は、接地電極236の前部で最小となり、接地電極236の後部で最大になる。
【0100】
例によっては、コールドスタート中、スパーク面の前部にある最小ギャップ付近の領域でスパークが発生する。場合によっては、コールド時、寸法Jは、0.10から0.20mmの間の範囲で最小の寸法とすることができる。スパークプラグが公称暖機運転になると、スパークギャップ面の前方の方がスパークギャップ面の後方よりも温かくなる。スパークギャップ面の前部の熱膨張が大きくなると、スパークギャップ距離はより均一になり、スパーク面の長さ方向に沿って平行となる。公称暖機運転中のスパークギャップの寸法Jは、0.42mmの長さとすることができる。両表面が平行なスパークギャップは、その全長に渡ってスパークを生じることができ、火炎核の発生を増やすことができる。
【0101】
接地電極及び中心電極は、それぞれ、円筒形(筒形)、多角形、不規則形、又は他の形にすることができる。例えば、
図10は、円筒形の中心電極102及び円筒形の接地電極236の断面を示す。中心電極及び接地電極は、
図11A及び
図11Bに示す例示の方形や三角形などの多角形としてもよい。両電極の前部の速度制御管は、両電極と同様の形状(すなわち、
図11Bの場合は三角形)、又は、両電極の形状とは異なる形状とすることができる。両電極は、不規則形としてもよく、電極の一部の形状を異なる形状としてもよい。例えば、電極の内周の形状をその電極の外周の形状と異なるようにしてもよい。また、電極を、軸方向に沿って変化する形状とすることもできる。電極に、テーパを付けても、段状の変化を付けても、その他の寸法変化を付けてもよい。中心電極及び接地電極を同一形状とする必要はない。例えば、中心電極のスパーク面と、接地電極の対応する表面とは、一致させてもよく、中心電極の前方の部分(すなわち、速度制御管)を異なる形状としてもよい。
【0102】
両電極は、異なる形状とすることができ、又は、異なる若しくは複数の、部分、配置、位置、又はスパーク面を含むことができる。例えば、
図12は、単一の中心電極702を囲む複数の接地電極704a、704bを有する例示のスパークプラグ・アセンブリを示す。例示の接地電極704a、704bは、隣接しているが、交わらない。複数の接地電極704a、704bは、スパークギャップを通過する流路を画成する。接地電極704a、704bは、前方に延在する壁部を有することができ、この壁部と共に速度制御管をスパークギャップの先に形成する。また、両電極704a、704bは、後方へ延在する延長部を有することができる。他の実例によっては、速度制御管を、両接地電極704a、704bの前向き又は後ろ向きの表面に取り付けることができる。
【0103】
図13は、例示のスパークプラグ・アセンブリの前断面を示す。この例において、速度制御管806は、中心電極802とJ字形の接地電極804との間のスパークギャップ上に中心がある円筒である。例示の速度制御管806は、接地電極804又は中心電極802に取り付けることができる。場合によっては、管806は、ギャップの側面の上方を下向きに延在する部分を有することができる。速度制御管は、円筒形、多角形、その他の形状とすることができる。速度制御管を中心電極に中心合わせする必要はない。
【0104】
図14は、例示のプレチャンバスパークプラグ・アセンブリ300の断面図である。プレチャンバスパークアセンブリ300は、大口径のピストンシリンダチャンバ302のヘッド内にプレチャンバ304を含む。プレチャンバ304内にはスパークプラグ306があり、スパークプラグ306は、大口径のピストンシリンダ302のヘッド内にプレチャンバ304を有するように構成されている。
【0105】
図15は、
図14の例示のプレチャンバスパークプラグ・アセンブリ300のプレチャンバ304の拡大断面図である。プレチャンバ304は、エンジン燃焼室302に、一連の通気孔324を介して接続されており、シェル334により境界が付けられている。通気孔324は、燃料混合気のプレチャンバ304への進入を許容し、火炎がプレチャンバ304を出て、シリンダアセンブリ302へ進入することを許容する。
図15では、通気孔が3つあるものとして図示したが、これ以上でもこれ以下でもよい。さらに、通気孔324(又はここに記載するいずれかの孔)は、スロットや他の形状の有形孔として形成することができる。
【0106】
例示のプレチャンバ304は、長手方向軸線301と、長手方向軸線301に沿って軸方向に延在して予燃焼室(プレチャンバ)304へ入る中心電極310とを有する。中心電極310の遠位端における中心電極のまわりには、接地電極308がある。接地電極308は絶縁体312に取り付けられており、絶縁体312は中心電極310を接地電極308から絶縁している。場合によっては、中心電極310が絶縁体312の内部を通って電圧源(不図示)に接続され、電気的に接地されたシェル334に至る。
【0107】
接地電極308は、中心電極310の遠位端の周辺に円形の領域を形成し、中心電極310の遠位端の周辺にスパークギャップ314を形成する。また、スパークギャップ314は、中心電極310の外周面と、中心電極310を囲むように間を隔てて配置される接地電極308の筒状のインナーリングとの間にある。絶縁体312は、中心電極310の周りに、スパークギャップ314の上から、プレチャンバ304の頂部まで、軸方向に延在している。絶縁体312は、速度制御管として機能する。さらに、スパークギャップ314の上方には、絶縁体312に穿設された横断方向の2つのスロット又は孔318がある。横断方向孔318は、点火イベント(点火事象)後に火炎核を換気するように働く。
【0108】
実例によっては、中心電極310の周りで絶縁体312の内側の領域は、プレチャンバ304の第1のステージ320と呼ばれる。第1のステージ320は、点火イベントにて発生した火炎核が、接地電極308と中心電極310とに過度の損傷を与えないように保護及び制御されるように、燃料を小さなスペースに制限することができる。絶縁体312には、2つの横断方向の孔318を設けたが、これより多くても少なくてもよい。
【0109】
実例によっては、絶縁体312の外側でシェル334により境界を成す領域は、プレチャンバ304の第2のステージ322と呼ばれる。図示の例において、第2のステージ322は、通気孔324を通ってエンジン燃焼室302(すなわちシリンダ)内へ出ていく前に火炎核が膨張し始める場所である。
【0110】
さらに、例示の接地電極308は、中心電極310以上にプレチャンバ304の奥へさらに延在する。
図15に示すように、例示の接地電極308は、空気力学的なノーズコーンを形成している中心電極310の遠位端を軸方向に越えて、半径方向にオフセットした周方向延長部を有する。空気力学的なノーズコーンの形状は、接地電極308と中心電極310との間の空間を通過する燃料混合気の流れを促進するように構成されている。ノーズコーンは、接地電極308の前縁周りの流れを円滑に案内するように(流れの分離を最小限にするように)設計されている点で、空気力学的であると言える。他の例では、接地電極308のノーズを丸めることもできよう。延長部は、空気力学的ラム領域316(すなわち、速度制御管)を形成する。空気力学的ラム領域316は、主シリンダチャンバ302からプレチャンバ304へ流れ込む気相(混合気)を捕捉するように機能する。捕捉された気相は、スパークギャップ314で点火される燃料混合気である。スパークギャップ314を通る気相は、スパークギャップ314に平行に流れ、流速範囲は5m/秒以上であり、場合によっては50m/秒とすることもできる。高さH、ギャップを通る流速Vを有する、したがってH/V*360*RPM((H/V)×360×RPM)(RPMは1分間あたりの回転数)の関係のスパークギャップは、エンジンのクランクを角3度以下とすることができる。
【0111】
余談ではあるが、スパークギャップ314の幅を変更することにより、実例によっては、スパークプラグの耐用寿命に影響がある。例えば、スパークギャップの軸線方向長さを増加させることにより、スパークが発生するところの表面積が増加する。したがって、中心電極310及び接地電極310を構成する材料が、プラグ自体の修理又は交換が必要になるまで腐食するには、より長い時間がかかる。しかし、幅を増加させることの欠点は、それにより第1のステージが縮小されてしまうので、燃料の初期点火が、より難しくなってしまうことである。
【0112】
図16に、例示のプレチャンバ304内の燃焼の発生及びその管理の仕方の一例を流体力学的に図解する。先ず、燃料と空気の混合気が、シリンダアセンブリ302から通気孔324を通ってプレチャンバに流入する。関連するエンジンシステム(不図示)の圧縮行程で、エンジンの燃焼室302とプレチャンバ304との間に生じた差圧によって流れが発生する。流れはそれぞれ、一次及び二次の流れ328及び330から構成される。一次及び二次の流れ328、300がプレチャンバ304に流入すると、一次及び二次の流れ328、300は、燃料を均一に分散した新気で、先行する点火工程に由来する残留燃料を、スパークギャップ314及び第2のステージからパージする。二次の流れは、プレチャンバ304の第2のステージ322周りに均一に分散される。一次の流れ328は、空気力学的ラム領域に316に捕捉される。空気力学的ラム領域316は、一次の流れをスパークギャップ314の周辺に集める。スパークギャップ314への一次の流れ328の速度は、毎秒1メートルと100メートルとの間である。一次の流れ328の一部の燃料は、スパークギャップ314の周辺に集まり、空気力学的ラム領域316内の場所と第1のステージ320との間に差圧を生じる。これによって、プレチャンバ304の第1のステージ320に燃料が流入する。スパークギャップ314に流入する流れは、スパークギャップ314の残留物をパージし、残留物の大部分が新気に代わる。例えば、残留物を、新気が大半を占める混合気で置き換えることができる。場合によっては、混合気が新気と残留物とを含むが、場合によっては、混合気のすべてが新気である。特定の実施の形態では、中心電極310の遠位端は、スパークギャップ314内への一次の流れ328を促進するように平坦である。
【0113】
また、実例によっては、燃料が横断方向の孔318を通って流れる。この流れは、大部分が端部キャップから離れる後ろ向きである。したがって、流れの大部分はこの方向に向き、場合によってはすべての流れがこの方向に向く。横断方向の孔318は、中心軸線301に対して垂直にならないように、角度がオフセットされている。これにより、二次の流れ330からの燃料混合気が第1のステージ320を満たしてしまうことを防ぐことができる。したがって、空気力学的ラム領域316によって生じた差圧は、横断方向の孔318によっては阻害されない。横断方向の孔318を流れが通り抜けても、その入口における速度は維持される。これにより、空気力学的ラム領域316内の流体の停滞圧力よりも低い圧力が維持される。よって、スパークギャップ全域にわたり差圧が生じる。
【0114】
一旦、例示のスパークギャップ314で火花が生じると、スパークギャップ314内の燃料が着火して、火炎核332が発生する。差圧により、火炎核332はプレチャンバ304の第1のステージ320に移動するが、第1のステージ320が比較的小さく構成されているため、火炎核332は外側環境から保護される。第1のステージ320は、火炎の保持部として機能する。火炎核は上へと移動して、中心電極310内に位置するノッチ332に進入する。今度はノッチ332が、接地電極308の逆向きの段付構造334へと火炎核を導入する。一次の流れが第1のステージ320に入るとともに、逆向きの段付構造が再循環ゾーンを形成する。そして、スパークギャップ314に流入する一次の流れによって火炎核を消失しないように保護しつつ、その場に存在する燃料をいくらか捕捉して火炎核をわずかばかり成長させる。したがって、ノッチ332及び逆向きの段付構造334は、より高速の一次の流れ328から火炎核を保護する火炎保持部を形成する。
【0115】
また、横断方向の孔318からは最低限の燃料しか第1のステージ320に進入できないので、火炎核332は小さいままである。これにより、第1のステージ320内の温度は低く保たれ、スパークギャップ314、接地電極308、及び中心電極310への損傷も最低限に抑えられる。
【0116】
図示の実施例において、火炎核332は第1のステージ内の燃料を消費しつつ、横断方向の孔318を抜けてプレチャンバ304の第2のステージ322へ移動する。火炎核332は、二次の流れ330に運ばれて
接地電極308の周りを取り巻く。ここで、火炎核332が広がり始め、第2のステージ322内の燃料を消費する。そして、火炎は拡大し、プレチャンバ304内の圧力が大幅に増加する。そして、通気孔324からエンジン燃焼室302に対して火炎を噴射して、エンジン燃焼室302内の燃料を点火する。
【0117】
中心電極310の周辺における火炎核332の流れを制御することにより、プレチャンバスパークプラグ・アセンブリ300の耐用寿命を延ばすことができる。これは、第1のステージが中心電極310を囲むため、小さい火炎核332しかその周辺で燃焼することができないからである。スパークギャップが何ら保護されずに露出していた従来のシステムとは対照的である。
【0118】
図17に、プレチャンバ304内の例示の二次の燃料インジェクタ(燃料噴射装置)326を示す。例示の二次の燃料インジェクタ326は、プレチャンバ304内へ燃料を噴射する。別の一次の燃料インジェクタ(不図示)は、メインシリンダチャンバ302内へ燃料を噴射し、この燃料が通気孔324を通してプレチャンバ304内へ移動する。二次の燃料インジェクタ326により、プレチャンバの混合気を通常の一次の噴射よりもリッチな(濃縮された)混合気とすることができる。
【0119】
典型的には、例示のシリンダチャンバ302の空燃比は、理論空燃比(ストイキ比)である。すなわち、燃焼の前は、同量の燃料と空気とがシリンダ302内に存在する。したがって、プレチャンバ304内の空燃比は、通気孔324を通った流れと比べると、理論空燃比以下(リーン)である。二次の燃料インジェクタ326を有するプレチャンバ304において、適正に燃料リッチ化された環境を提供するために、二次の燃料インジェクタ326は、空気に対する燃料の割合を増加させる。一般に、この増加により、主燃焼室から進入してくるリーン(空気量過剰)な混合気が理論空燃比にされる、言い換えれば、燃焼前にプレチャンバ304内には空気が存在するので、プレチャンバの燃料をメインチャンバの空燃比の2倍を超えるまでリッチ化(濃縮)することは、特別なことではない。プレチャンバ304をリッチ化することにより、点火工程はより高温になる。しかし、点火工程をより高温にすると、中心電極及び接地電極310、308の耐用寿命が損なわれる。この例では、燃料供給(燃料リッチ化)プレチャンバにおいて、最低限のリッチ化のみ施すか又はまったくリッチ化をしないので、プレチャンバ内の空燃比はメインチャンバにみられるリーンな混合気に近い空燃比となり、理論空燃比のリッチ化からは極力離れたものとなる。プレチャンバにおけるリッチ化を減らすことにより、スパーク面及び周辺の燃焼温度は低くなり、スパークプラグの寿命が延びる。
【0120】
図18は、プレチャンバ404のシェル416と一体に形成され、スパークプラグ400と組み合わされたガス進入弁402を示す。
図18に示す特定の実施の形態には、3つの異なるガス進入弁402a、402b、402cがある。ガス進入弁402a、402b、402cは、貯蔵チャンバ430の燃料をプレチャンバ404に供給する。
図17に関して説明したように、ガス進入弁402により、ユーザはプレチャンバ404内の空燃比の濃度を調整することができる。さらに、特定の実施の形態において、絶縁体414、中心電極406、及び接地電極408を含むスパークプラグ400は、ガス進入弁402の部分から取り外すことが可能であるので、スパークプラグ400の迅速な交換が促進される。
【0121】
図19は、
図18のプレチャンバ404の拡大図である。プレチャンバ404は、通気孔412を有する端部キャップ440により、エンジン(不図示)システムのシリンダに接続されている。先に検討した実施と同様に、プレチャンバ404は、中心電極406と、接地電極408と、通気孔412と、絶縁体414と、シェル416とを含む。この実施の形態にも、空気力学的ラム428がある。さらに、絶縁体は、横断方向の孔又はスロット418を含む。横断方向の孔318(
図15)と同様、スロット418を設けることにより、絶縁体414に接続された接地電極408と、中心電極406と、の間に形成されたキャビティによって画成された第1のステージ420から、及びシェル416と、絶縁体414に取り付けられた接地電極408と、の間に形成されたキャビティによって画成された第2のステージ422からのアクセスが可能になる。
【0122】
例によっては、第1の差圧は、エンジンシステムの圧縮行程で生じ、圧縮行程は、燃料混合気を、通気孔412を通してプレチャンバ404内に、毎秒1メートルと百メートルとの間の速度で、逆向きに且つ端部キャップから離れる方向に押し込む。この混合気がプレチャンバ404に流入するとともに、この混合気は、中心電極406と接地電極408との間に形成されたスパークギャップ424の周囲に集まる。このスパークギャップ424の幅は比較的に小さいので、プレチャンバ404の第1のステージ420と第2のステージとの間の第2の差圧が得られる。したがって、スパークギャップ424でスパーク(火花)が発生すると、燃料混合気を火花点火することによって生じた火炎核が第2の差圧によって第1のステージ420に引き込まれる。第1のステージは拡大面積部を有するため、流れが減速されて再循環ゾーンが形成される。拡大面積部は、中心電極のスパーク面領域の出口のところにノッチを刻むことにより形成されている。再循環ゾーンは、反応性粒子を再循環ループに保持することができ、火炎保持部として効率的に作動するため、スパークガス領域から押し流される火炎核が立ち消えになることを防ぐことができる。この火炎核は、スロット418から第2のステージ422へ出ていくまで、第1のステージの燃料を燃焼し続ける。第2のステージにおいて、火炎核は、プレチャンバ404内の燃料を消費して火炎へと成長する。これにより、プレチャンバ404の圧力が大幅に増加し、通気孔412から火炎を噴出させる。
【0123】
火炎核をスパークギャップ領域から取り出して火炎保持部に投入することにより、スパーク面の温度を下げことができる。スパーク面の温度を下げることにより、スパークプラグの寿命切れの主因である、高温酸化環境下におけるスパーク面の高温酸化を減らすことができる。したがって、スパークの発生後、スパークギャップから高温の火炎核を取り出すことによりスパーク面ひいてはスパークプラグの寿命を延ばすことができ、火炎核の消失の可能性を減らす(又は防ぐ)ことができる。
【0124】
実例によっては、中央孔の流れ、すなわち一次の孔の流れの別の役割は、スパーク発生前の導入時中に、筒状接地電極及びスパーク領域を冷却することである。なぜなら、導入される新気の方がプレチャンバ内の残留ガスよりも低温であるからである。これにより、スパークプラグの表面の寿命がさらに延びることに加えて、プレチャンバの表面温度も下がり、温度が新気の自己点火温度未満に維持される。
【0125】
前述の例と同様に、中心電極406の周辺の火炎核の流れを制御することにより、例示のスパークプラグ400の耐用寿命を大幅に延ばすことができる。なぜなら、スパークギャップが保護されずに露出していた一部の従来のシステムとは異なり、第1のステージが中心電極406を囲んでおり、小さな火炎核はその周辺でしか燃焼できないようになっているからである。
【0126】
別の例において、
図20に示すとおり、シェル934及び絶縁体912の基部、すなわち根本部に近接した位置で、セラミック製の絶縁体912の外表面と、シェル934の内表面との間にクレビス(間隙)936が形成される。クレビス936は、熱い残留燃料/ガスから、より冷温のシェル領域への熱伝達を増進するよう設計されている。なお、シェル領域は、シリンダ(不図示)ヘッドのねじで係止されることにより、背面から冷却される(水冷又は油冷が想定される)。クレビス936の表面積対容積比は大きく、これにより残留ガスの冷却が促進される、したがって残留ガスの反応性が「急冷」される。
【0127】
一の実施の形態において、クレビス936の容積は、プレチャンバ904の容積の約1/5から1/10になるよう設計されており、プレチャンバ904が残留ガスで満たされると、エンジンの圧縮比で許容される容積以下(すなわち、圧縮比10:1のCRエンジンの場合、プレチャンバのガス容積は圧縮により1/10となる)のスペースのみを占めるクレビス936に残留ガスを圧縮して入れる。
【0128】
さらなる実施の形態では、残留ガスを冷却するためのクレビス936の熱除去能力をさらに向上するため、シェル934をクレビス936に「ねじ止め」する場合と同様の手段によって、クレビス領域の表面積を増やすことを含むことができる。
【0129】
製造方法に関しては、ろう付けリングを接地電極の上又は下に用いてろう付けオーブンで融解すると、良好な熱伝達が得られるだろう。同様に、レーザ溶接機や摩擦溶接機等で接地電極をシェルに溶接することができる。
【0130】
図21は、ろう付けのリングを有する例示のプレチャンバスパークプラグの一部を示す断面図である。
図22は、
図21のプレチャンバスパークプラグ内に配置されたろう付けのリングの拡大図である。接地電極1010のアウターリング1032は、角度のある切り欠き1006を有し、ろう付けのリング1002は、レーザ溶接の前にこの切り欠き1006によってできた環状ギャップ(環状隙間)1004上に載せられる。
図21に示す例において、組み立て時に、接地電極1010はシェル112に圧入され、これにより、接地電極1010は段部120に載せられる。接地電極1010が段部120に載せられた後、ろう付けのリング1002が環状のギャップ1004に入れられる。ろう付けのリング1002が環状ギャップ1004に入れられた後、レーザ溶接機を用いてろう付けのリング1002を融かして環状ギャップ1004に流し込み、接地電極1010をシェル112にろう付け溶接により接着することができる。これにより、接地電極1010とシェル112とは強固に結合されるため、接地電極1010とシェル112の結合後には両者の間に熱変形は起きない。また、ろう付けのリング1002のみが融けて、接地電極1010とシェル112とは、ろう付け溶接後も変形しない。さらに、角度のある切り欠き1006は、角度が付けられていなくてもよく、接地電極1010の切り欠き部は、ろう付けのリング1002を保持するための適切な形状であればどのような形状であってもよい。例えば、切り欠きは、円錐形や長方形でもよい。さらに、溶融した状態のろう付けのリング1002を環状ギャップ1004に流し込む工程は、フラックスを用いて支援してもよい。フラックスを角度のある切り欠き1006又はシェル112に塗布して、ろう付けのリング1002が融ける際に角度のある切り欠き1006及びシェル112に向かって引き込まれて環状ギャップ1004を埋めるようにしてもよい。ろう付けに用いる典型的なフラックスは、ホウ砂、ホウ酸塩、フルオロホウ酸塩、フッ化物、及び塩化物等である。余談だが、この工程にろう付け溶接の工程を用いる必要はない。接地電極1010は、ろう付けの工程によりシェル112に取り付けることができる。ろう付けの工程、ろう付け溶接の工程に関わらず、ろう付けのリングはアルミシリコン合金、銅合金、銅亜鉛合金、金銀合金、ニッケル合金、銀合金等の合金からなる。
【0131】
さらに、中心電極は、中実の金属合金でできていてもよく、又は、一方のシリンダが基材と呼ばれ、他方のシリンダが貴金属材と呼ばれる2つのシリンダを溶接してできたものであってもよい。製造工程で適切なアライメント(整列、芯出し)を得た後、貴金属と基材とは、抵抗溶接、慣性溶接、及びレーザ溶接等の様々な方法により接合することができる。
【0132】
同様に、貴金属製の中空シリンダを作成して、直径が縮小された中心電極の上から被せることによって、「ピン」の外側にシリンダが存在する構造を得ることができる。貴金属製中空のシリンダは、溶接又は機械的手段(ねじ等)により固定される保持キャップによって定位置に保持される。
【0133】
ここでの概念は、プレチャンバスパークプラグの他の構造にも適用できるが、既存の構造に速度制御管を含むように構成することもできる。例えば、
図23A及び
図23Bに、端部キャップ512を有するが、速度制御管は有さないスパークプラグ500を示す。
図23Aは、スパークプラグ500の端部キャップを上から見た図である。
図23Bは、スパークプラグ500の断面図である。筒状の接地電極505が、アーム506a、506bによってシェル503から支持されている。アーム506a、506bは、シェル503の側壁に取り付けられるのではなく、逆向きに延びてシェル503の後方の表面に取り付けられる。接地電極506は、中心電極502を囲むが、スパークギャップ504によって中心電極502から離間している。端部キャップ512は、電極502及び506を囲む。端部キャップ512は、その上部に複数の中央孔510a〜510fと複数の横断方向の孔508a、508bを有する。
【0134】
図24は、スパークプラグ520を作製するために、ここでの概念に則ってどのようにスパークプラグ500を適用するかについての例を示す。例示のスパークプラグ520は、
図23に示すスパークプラグ500と概ね同じであるが(説明した作用に影響を及ぼすような変更はない)、前方の速度制御管514を含む。速度制御管514は、接地電極506の前方に、アーム506a、506b、及びリング等のその他のいずれかの支持部材にも取り付けることができる。
【0135】
図25は、スパークプラグ530を作製するために、ここでの概念に則ってどのようにスパークプラグ500を適用するかについての例を示す。例示のスパークプラグ530は、
図23に示すスパークプラグ500と概ね同じであるが(説明した作用に影響を及ぼすような変更はない)、後方の速度制御管515を含む。速度制御管515は、接地電極506の後方に、アーム506a、506b、及びリング等のその他のいずれかの支持部材にも取り付けることができる。
【0136】
図26は、スパークプラグ540を作製するために、ここでの概念に則ってどのようにスパークプラグ500を適用するかについての例を示す。例示のスパークプラグ540は、
図23に示すスパークプラグ500と概ね同じであるが(説明した作用に影響を及ぼすような変更はない)、前方及び後方の両速度制御管514及び515を含む。速度制御管514、515は、接地電極506に、アーム506a、506b、及びリング等のその他のいずれかの支持部材にも取り付けることができる。
【0137】
図10に示すように構成したプレチャンバスパークプラグと、寸法と構造は同一だが速度制御管を含まないプレチャンバスパークプラグとを用いて、計算による流体力学(CFD)解析を行った。
図27Aは、速度制御管を有さないスパークプラグの速度をプロットしたものである。
図28Aは、
図10に示すように構成されたスパークプラグの速度をプロットしたものである。両図において、スパークプラグの端部は、エンジン燃焼室に突出している。流れの方向を示すために、プロットの上に矢印が重ねてある。
図27Bは、速度制御管を有さないスパークプラグの速度ベクトルをプロットしたものである。
図28Bは、
図10に示すように構成されたスパークプラグの速度ベクトルをプロットしたものである。
図27Cは、速度制御管を有さないスパークプラグの燃料混合気の分布をプロットしたものである。
図28Cは
図10に示すように構成されたスパークプラグの燃料混合気の分布をプロットしたものである。
【0138】
いずれの構成も、3.0mm直径のスパーク面(すなわち、スパークギャップを形成する隣接した表面)と、0.42mmの最大スパークギャップを有し、シェル112及び端部キャップの構造が同一なM18プラグである。ボア口径155mm、750rpmで回転する180mmストロークを有するエンジンの、上死点前のクランク角20度における状態を示すためにシェル112の外側の状況をモデル化した。
図27A乃至
図27Cは速度制御管を有さず、スパーク面や中心電極502の端部を越えて延在したり、スパーク面から後方へ延在したりしない典型的なリング状の接地電極505を有する。接地電極505の軸線方向長さは1.25mmであり、長さ1.25mmのスパーク面を形成する。
図28A乃至
図28Cは、中心電極102の端部を越えて燃焼室側のプラグの端部に向けて延在する速度制御管236を有する接地電極を有する。管236は、中心電極102を取り囲んでスパーク面から後方へ延在する。中心電極102の端部を越えて速度制御管236をどこまで延ばすかについては、下記に説明する速度を得るために、従来の流体解析を用いて選定した。スパーク面の後方へ速度制御管236をどこまで延ばすかについては、従来の流体解析を用いて、スパークギャップから出る流れをプレチャンバの乱流から遮断するように選定した。
図28A乃至
図28Cのスパーク面は、中心電極102の丸めた先端の基部から始まり、直径のステップまで後方に向かって延在し、その長さは3.5mmである。
【0139】
図27A及び
図28Aは、速度のプロットからも分かるように、中心孔162を通って燃焼室から流入する新気の燃料混合気のピーク速度は、
図27Aの64m/秒、
図28Aの54m/秒のいずれの場合においても概ね同一であった。しかし、
図27A、27Bでは、流入した流れが中心電極502の端部に衝突して、流れの大部分が横方向外向きに方向付けられて、次第に接地電極505の周囲を回ってプレチャンバの後部までくる。したがって、流れの大部分はこの方向であり、場合によっては、すべての流れがこの方向である。中心電極502の端部の停滞ゾーンは、流入する流れをさらに横方向外向きに方向付ける高い圧力を発生する。反対に、接地電極505の前方の高速は、プレチャンバの後部からの流れを、スパークギャップを通して引き込む低圧力ゾーンを作り出す。スパーク面の中点におけるピーク速度は8m/秒であるが、この流れは後方から前方に向かう。エンジン作動中、プレチャンバの後部に残留ガス(燃焼した燃料混合気)が溜まりやすい。したがって、このサイクルにより、残留ガスは後方から前方への流れでスパークギャップに提供される。
図27Cを参照すると、最も高いラムダ値(すなわち、最もリーンな燃料混合気)は、プレチャンバ内の後方と、スパークギャップ内及びその背後とで見られることが確認できる。
【0140】
対照的に、
図28A、
図28Bにおいては、流入する流れが中心電極102の端部に衝突して、最初は横向きに方向付けられているものの、流れは速度制御管236の壁に捕捉されて、スパークギャップ内に向けて後方へと方向付けられる。中心電極102の端部の停滞ゾーンは、流れをさらに速度制御管及び後方へと方向付ける高圧を発生する。速度制御管236の長さは、この流れパターンを達成するように選定される。スパーク面の中点におけるピーク速度は44m/秒である。さらに、この流れは、中央孔162を介して燃焼室から直接受け取った新気の燃料混合気である。
図28Cを参照して、最も低いラムダ値(すなわち、最もリッチな空燃比)は、中央孔162から速度制御管236の内側を経てスパークギャップ内へ向かう間に見られることが確認できる。したがって、このサイクルにより、新気の燃料混合気が前方から後方への流れでスパークギャップに提供される。新気の燃料混合気は、スパーク面の全体、そしてプレチャンバの後方へと、スパークギャップ(前回の燃焼サイクルによる)内に存在する残留物をすべて一掃しながらプレチャンバの後方領域に燃料を供給するために十分な速度を維持する。スパークプラグが点火されると、電気スパークによって発生した火炎核が、スパークギャップを素早く通ってプレチャンバの後方部に達し、スパーク面で核が消失される可能性を低減する。場合によっては、この火炎核がスパークギャップを通り抜ける速度は、核を消失することなく大きなスパーク面を得ることを可能にするが、これはギャップを通り抜ける速度がゼロ又は低速である場合に得られるスパーク面よりも大きい。一般に、スパーク面が大きいほど、電気スパークを発生する表面積が大きくなり、火花を発生する材料の摩耗が減少するため、スパークプラグの寿命が延びる。
【0141】
図28A乃至
図28Cの例では、スパーク面の中点におけるピーク速度は、流入する流れの中央孔162におけるピーク速度の81%だが、ここでの概念は、わずか10%から100%までもの間で機能する。
図29は、
図28A乃至
図28Cのプレチャンバプラグを
図28A乃至
図28Cと同じ条件で、回転数を1500rpmに変更して作動した、別の例を示す。この例において、中央孔162を通って燃焼室から流入する新気の燃料混合気のピーク速度は55m/秒である。スパーク面の中点におけるピーク速度は27m/秒である。よって、スパーク面の中点におけるピーク速度は、流入する流れの中央孔162におけるピーク速度の49%である。とりわけ、上述のとおり、スパークギャップには、燃焼のために前方から後方への新気の混合気の流れが供給されるが、この速度はスパーク面全体及びプレチャンバの後方に至るまで維持される。ここに記載されたすべての実施(
図23を除く)により、同様の流れパターン及び性能が得られる。
【0142】
本明細書は多くの詳細を含むが、それらは請求され得る事項の範囲を制限するものではなく、むしろ特定の例における特有な特徴の記載であると理解すべきである。別々の実施の文脈において本明細書に記載される特定の特徴を組み合わせることもできる。それとは逆に、単一の実施の文脈において記載された様々な特徴は、複数の実施を別々で、又は任意で適切なサブコンビネーション(副結合)で、実施することもできる。
【0143】
多くの例を記載した。それでもなお、当然のことながら、様々な改変を行うことができる。したがって、他の実施は、以下の請求項の範囲に含まれる。
1. 第1の態様の方法は;
エンジンの作動における燃焼を促進する方法であって:
前記エンジンの燃焼室からの燃料混合気をスパークプラグのエンクロージャ内に受け取るステップと;
前記エンクロージャ内のスパークギャップ内で、前記受け取った燃料混合気を点火するステップと;
前記点火された燃料混合気が前記スパークギャップを通ってその大部分がピーク流速で前記エンクロージャの燃焼室側端部から離れるように、前記スパークギャップを通るピーク流速を前記エンクロージャへのピーク流速の10%以上の流速で方向付けるステップとを備える。
2. 第2の態様の方法は、上記第1の態様において、前記スパークギャップを通るピーク流速が5m/秒以上であり、前記スパークギャップから残留ガスをパージする。
3. 第3の態様の方法は、上記第1の態様又は第2の態様において、前記スパークギャップの高さHが2.5mm以上かつ前記スパークギャップ内の前記ピーク流速がVで、H/V*360*RPMがエンジンのクランク角3度以下である。
4. 第4の態様の方法は、上記第1の態様乃至第3の態様のいずれかにおいて、
スワール流に含まれる前記燃料混合気を、前記エンクロージャの内部の周辺と、前記燃焼室側端部とは反対側の前記エンクロージャの端部とへ方向付けるステップと;
前記スパークギャップ内で点火する前記燃料混合気を前記スワール流から保護するステップとを備える。
5. 第5の態様の方法は、上記第4の態様において、前記スパークギャップから出る前記点火された燃料混合気を、前記スワール流から保護するステップを備える。
6. 第6の態様の方法は、上記第1の態様乃至第5の態様のいずれかにおいて、前記スパークプラグのサイズはM14からM24であり、前記燃料混合気の燃焼による前記エンクロージャ内の最大圧力を、前記スパークギャップでの前記燃料混合気の点火から、前記エンジンのクランク角7度以上遅延させるステップを備える。
7. 第7の態様の方法は、上記第1の態様乃至第6の態様のいずれかにおいて、前記エンクロージャの前記燃焼室側端部とは反対側の半分に存在する前記燃料混合気が概ねすべて点火された場合にのみ、前記点火された燃料混合気を前記エンクロージャ内から前記エンジンの燃焼室に噴射するステップを備える。
8. 第8の態様のエンジン用のスパークプラグは;
スパークプラグのエンクロージャ内のスパークギャップと;
前記エンクロージャの内側の通路であって、エンジンの作動中に前記エンクロージャの外側から流れを受け取り、前記流れが前記スパークギャップを通ってその大部分が前記エンクロージャの燃焼室側端部から離れるように方向付ける通路とを備え;
前記スパークプラグが、前記エンクロージャへのピーク流速の10%以上となるピーク流速を前記スパークギャップ内に作り出す手段を含む。
9. 第9の態様のスパークプラグは、上記第8の態様において、前記スパークプラグは前記スパークギャップ内に5m/秒以上の前記ピーク流速を作り出すように構成されている。
10. 第10の態様のスパークプラグは、上記第8の態様又は第9の態様において、前記スパークギャップの高さがHかつ前記スパークギャップ内の前記ピーク流速がVで、エンジンのクランク角3度以下のH/V*360*RPMを作り出す。
11. 第11の態様のスパークプラグは、上記第10の態様において、前記スパークプラグはM14からM24で、Hが2.5mm以上である。
12. 第12の態様のスパークプラグは、上記第8の態様乃至第11の態様のいずれかにおいて、前記スパークプラグはサイズがM14からM24のスパークプラグであり、前記通路が前記スパークギャップの端部を越えて前記エンクロージャの前記燃焼室側の端部に向かって1.0mm以上延在する。
13. 第13の態様のスパークプラグは、上記第12の態様において、前記通路は、前記スパークギャップを含み、前記スパークギャップの対向する端部から前記エンクロージャの前記燃焼室側端部から離れるように、0.1mm以上延在する。
14. 第14の態様のスパークプラグは、上記第12の態様又は第13の態様において、前記通路内へ流れを方向付けるように配向された、前記エンクロージャの前記燃焼室側端部内の孔と;
流れを、前記通路の外側の周辺と、前記燃焼室側端部とは反対側の前記エンクロージャの端部とへ方向付けるように配向された、前記エンクロージャの前記燃焼室側端部内の孔とを備える。
15. 第15の態様のスパークプラグは、上記第8の態様乃至第14の態様のいずれかにおいて、前記スパークプラグのサイズはM14からM24であり、前記スパークプラグは、前記スパークギャップでの点火から前記エンジンのクランク角7度以上で、燃料混合気の燃焼により前記エンクロージャ内の圧力が最大圧力に到達するように構成されている。
16. 第16の態様のスパークプラグは、上記第8の態様乃至第15の態様のいずれかにおいて、
金属シェルと;
前記シェル内の電気絶縁体と;
前記絶縁体から延在する中心電極と;
前記中心電極とにより前記スパークギャップを画成する1以上の接地電極及び前記通路を画成する1以上の接地電極とを備える。
17. 第17の態様のスパークプラグは、上記第16の態様において、1を超える接地電極が前記通路を画成し、前記接地電極は交わらない。
18. 第18の態様のスパークプラグは、上記第16の態様又は第17の態様において、前記1以上の接地電極は管を備え、前記管は前記通路を画成すると共に前記管から前記シェルに向かって前記エンクロージャの前記燃焼室側端部から離れるように延在するアームを備える。
19. 第19の態様のスパークプラグは、上記第16の態様乃至第18の態様のいずれかにおいて、前記中心電極は軸方向断面が多角形である。
20. 第20の態様のスパークプラグは、上記第19の態様において、前記1以上の接地電極は、前記中心電極の軸方向断面と同じ形状に前記通路を画成する。