(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548665
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】定位式強度変調回転放射線療法の方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/01 20060101AFI20190711BHJP
A61N 5/10 20060101ALI20190711BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20190711BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20190711BHJP
G21K 5/02 20060101ALI20190711BHJP
G21K 1/04 20060101ALI20190711BHJP
H05H 9/00 20060101ALI20190711BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
A61N5/01 A
A61N5/10 P
A61N5/10 K
A61N5/10 T
A61B6/03 377
A61B6/03 321Z
A61B5/055 390
G21K5/02 R
G21K1/04 R
H05H9/00 A
G01T7/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-562477(P2016-562477)
(86)(22)【出願日】2015年1月5日
(65)【公表番号】特表2017-504449(P2017-504449A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】US2015010197
(87)【国際公開番号】WO2015103564
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年12月15日
(31)【優先権主張番号】14/147,553
(32)【優先日】2014年1月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516200415
【氏名又は名称】ユイ,シンシユヨン・セドリック
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユイ,シンシユヨン・セドリック
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第03/018133(WO,A1)
【文献】
特開平11−076432(JP,A)
【文献】
特公昭34−007095(JP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0163245(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0256551(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0158382(US,A1)
【文献】
特開平08−332235(JP,A)
【文献】
特開2002−210029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/01, 5/10
A61B 5/055, 6/03
G01T 7/00
G21K 1/04, 5/02
H05H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの外部放射線源を、照射されるべき標的内に配置されたアイソセンターの周りで同心円状に縦方向および横方向に回転させる球体ガントリであって、アイソセンターと交差する中心軸を有し、以下の構成要素、
(i)球体ガントリの中心軸上に原点位置がある前方開放環、
(ii)前端と後端を有し、円の一部である少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム、
(iii)少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム上に搭載され、アイソセンターの周りで横方向の回転をなすように円弧状のガントリ支持アームに沿って移動することが可能な外部放射線源、
(iv)任意選択で、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム上に、球体ガントリの外部放射線源とは反対の側に搭載されたビームストッパ、
(v)球体ガントリの中心軸に軸が沿った後方回転心棒
(vi)支持基部、および、
(vii)電源と、球体ガントリの構成要素を移動させる機構と、球体ガントリの構成要素の移動と患者内の標的への照射とを制御する制御器とを備える後方ハウジング、を備え、前方開放環は、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アームの前端に取り付けられ、後方回転心棒は、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アームの後端に取り付けられ、前方開放環および後方回転心棒は支持基部および後方ハウジングによって支持され、前方開放環および後方回転心棒は中心軸の周りで回転して、外部放射線源を縦方向に回転させることが可能である、球体ガントリ。
【請求項2】
外部放射線源が直線加速器または放射線同位体遠隔療法装置である、請求項1に記載の球体ガントリ。
【請求項3】
外部放射線源が、それが搭載される少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アームの長さに沿って可変速度で移動することが可能である、請求項1または2に記載の球体ガントリ。
【請求項4】
外部放射線源が少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム上に固定され、円弧状のガントリ支持アームおよび後方回転心棒が並進されて外部放射線源を横方向に可変速度で回転させる、請求項1または2に記載の球体ガントリ。
【請求項5】
球体ガントリの中心軸の配向が、水平方向から実質的垂直方向もしくは垂直方向に変更されることが可能であり、その場合、後方ハウジングは縦方向に回転し、球体ガントリと共に水平位置と垂直位置の間で旋回することが可能である、請求項1、2、3、または4に記載の球体ガントリ。
【請求項6】
180°の縦方向角度だけ離隔された少なくとも2つの円弧状のガントリ支持アーム、あるいは180°の縦方向角度だけ対同士が離隔された少なくとも2対の隣接し合った円弧状のガントリ支持アームを備える、請求項1、2、3、4、または5に記載の球体ガントリ。
【請求項7】
患者内の標的に照射するシステムであって、以下の構成要素、
(i)請求項1、2、3、4、5、または6に記載の球体ガントリ、
(ii)球体ガントリの中心軸に沿って位置決めされ、第1端と第2端を備える患者プラットフォーム、
(iii)患者プラットフォームを支持する患者プラットフォーム支持体、および任意選択で、
(iv)患者をシステムの残りの部分から離隔する遮蔽体、を備えるシステム。
【請求項8】
患者プラットフォームが、患者プラットフォームの長さまたはZ次元に沿ったいずれの方向にも、患者プラットフォームの幅またはX次元に沿ったいずれの方向にも、かつ/あるいは患者プラットフォームの上もしくは下またはY方向のいずれの方向にも、独立的に移動されることが可能であり、そのような移動は、外部放射線源の縦方向回転および横方向回転と同期している、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
構成要素が、
(v)少なくとも2つの直線支持梁、
(vi)X線管、および
(vii)X線検出器アレイ、をさらに備え、
X線管は、球体ガントリの片側の少なくとも1つの直線支持梁に搭載され、X線検出器アレイは、球体ガントリのX線管とは反対の側の少なくとも1つの直線支持梁に搭載され、それらが搭載された少なくとも2つの直線支持梁の長さに沿って移動することが可能であり、
少なくとも2つの直線支持梁は球体ガントリの中心軸と平行であり、球体ガントリの回転とは無関係に回転するように、球体ガントリの前方環上に搭載された軸受によって前端で、球体ガントリの後方回転心棒と同軸であるがそれとは別個の軸受によって後端で支持される、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
X線検出器アレイが一次元式または多次元式である、請求項9のシステム。
【請求項11】
構成要素が、(viii)コンピュータ断層撮影(CT)画像システム、磁気共鳴画像(MRI)システム、または同軸にまたは非同軸に、球体ガントリの前方開放環に取り付けられた、もしくは隣接して位置決めされた陽電子放出型断層撮影(PET)/コンピュータ断層撮影(CT)画像システム、をさらに備えることが可能であり、CT画像システム、MRIシステム、またはPET/CT画像システムは搭載式の画像案内を提供することが可能である、請求項9または10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年1月5日に出願された、参照により全体が本明細書に組み込まれる同時係属中の米国特許出願第14/147,553号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、放射線治療、特に、焦点が合わせられた放射線を患者の体の外側から患者の内側の標的に送達する方法およびシステムに関する。本方法およびシステムは、病巣線量の放射線を標的に送達するための、広い立体角からの強度変調外部放射線ビームを目指す。
【背景技術】
【0003】
放射線療法は、患者の癌および他の症状を治療するために使用される。全癌患者の約半分が治療の過程のどこかでなんらかの種類の放射線療法を受ける。放射線療法でよく使用される形態は外部ビーム放射線療法である。外部ビーム放射線療法では、通常は直線加速器(リナック)である機械によって生成された高エネルギーのX線ビーム、アイソトープから放出されるガンマ線ビーム、または粒子加速器から生成された荷電粒子が、患者の体の内側の腫瘍または癌細胞(即ち「標的」)に向けて送られる。放射線は癌細胞を死滅させるものの、患者の腫瘍/癌細胞の近傍の正常な組織および臓器をも損ねてしまう。このように、放射線療法の目標は、必要量の放射線を標的体積に送達すると同時に、患者に対して合併症や害を生じさせる場合のある周囲の正常組織への放射線量を最低限に抑えることである。
【0004】
患者が放射線で治療される前に、シミュレーションで始まる「治療計画」と呼ばれるプロセスを経て放射線治療計画が立てられなければならない。シミュレーション中、詳細な画像スキャンが患者の腫瘍の位置とその周囲の正常域とを示す。これらのスキャンは通常、コンピュータ断層撮影(CT)を使用して実施されるが、磁気共鳴撮影(MRI)、X線、または超音波を使用して実施されることも可能である。
【0005】
腫瘍を根絶して正常組織を助命するという目標を達成する放射線療法の能力は、放射線送達機械によって実現される自由度と線量蓄積量の物理とに依存する。これらの自由度および物理的原理は治療計画のプロセスに組み込まれる。
【0006】
ほとんどの既存の直線加速器または遠隔放射線治療機械は、放射線源が搭載されたガントリの回転によって軸の周りで回転することが可能である。例えば
図1を参照されたい。これは、放射線放出ヘッドが回転可能なCアームガントリ上に搭載された典型的な放射線治療システムの基本構造の図である。放射線源の軌跡は円を形成する。ガントリの回転中、放射線ビームは、一般に「アイソセンター」と呼ばれる回転中心に向けられる。この設計は、ビームの方向をほぼ同一平面内の角度に限定し、したがって光子ビームで達成可能な治療計画の質を制限してしまう。
【0007】
一般的なタイプの外部ビーム放射線療法は、三次元原体放射線療法(3D‐CRT)と呼ばれる。3D‐CRTは、放射線ビームが、限定された数の線場から、標的領域に対するビームズアイビューと一致するように形成されることを可能にする。放射線療法のより進んだ方法として、強度変調放射線療法(IMRT)がある。これは、放射線場の形状化に加えて線場内で放射線ビームの強度が変化するのを可能にすることによって3D‐CRTよりも大きな自由度を実現する。IMRTの目標は、必要とする領域への放射線量を増大させ、周囲の正常組織の特定の高感受性領域への放射線暴露を縮小することである。治療計画システムは、この目標を最大限に達成するようにビームの強度分布を最適化する。3D‐CRTと比較して、IMRTは、頭部および頸部が放射線療法で治療されるときの唾液腺への損傷(口内乾燥または口腔乾燥症を引き起こす可能性がある)などの、一部の副作用のリスクを軽減することが可能である(Veldeman氏他による「Evidence behind use of intensity−modulated radiotherapy:A systematic review of comparative clinical studies」、Lancet Oncology誌9(4)367〜375頁(2008)、およびLancet Oncology誌9(6)513頁(2008)内の正誤表)。3D‐CRTおよびIMRTは典型的には、単一平面の回転のみが可能な、Cアームガントリ(
図1に示されている)または環様ガントリ上に搭載された直線加速器を使用して送達される。
【0008】
トモセラピー(Detorie氏の 「Helical Tomotherapy:A new tool for radiation therapy」J.Amer.Coll.Radiol.誌5(1):63〜66頁(2008))、および強度変調回転放射線療法(IMAT)(Yu氏の「Intensity modulated arc therapy using dynamic multi−leaf collimation:An alternative to Tomotherapy」Phys.Med.Biol.誌40(9):1435〜1449頁(1995))は、回転形態でのIMRTの送達である。トモセラピーでは、放射線源が円形移動をなすにつれて患者が直線的に並進され、それによって放射線ビームと患者との相対的な移動が螺旋構造となる。直線加速器が搭載されたガントリは単一の横断面でしか回転することが可能でないことから、このような「同一平面」回転式IMRT法は、最適な計画を作り出すために利用可能なビーム方向の範囲を制限してしまう。その結果、これらの技法は、固定ビームを備えたIMRTよりも著しく良好な線量分布を作り出しているようには示されていない。
【0009】
定位式放射線手術(SRS)および体幹部定位式放射線療法(SBRT)は、1つまたは複数の高線量の放射線を小さな腫瘍に送達する(R.Timmerman氏およびB.Kavanagh氏の「Stereotactic body radiation therapy」Curr.Probl.Cancer誌29:120〜157頁(2005))。SRSは一般的に頭蓋内病変を治療するのに使用され、高線量の放射線が精確に送達されることを保証するために治療中に患者を不動化させる頭部フレームまたは他の装置の使用を必要とする。ガンマナイフ(Bhatnagar氏他の「First year experience with newly developed Leksell Gamma Knife Perfexion」J.Med.Phys.誌34(3)141〜148頁(2009))は頭蓋内病変の治療専用のSRSシステムである。ガントリに基づいた直線加速器システムはSRSにも使用される。両方とも、放射線ビームが横断面の外側の方向から標的に入射するのを可能にする。SBRTは脳の外側に存在する腫瘍を治療するのに使用される。SBRTは、通常2回以上の治療セッションで与えられる。ガンマナイフの概念を体の残りの部分に広げる方法も提案されており、これには乳癌治療用のガンマポッドシステム(Yu氏他の「GammaPod―A new device dedicated for stereotactic radiotherapy of breast cancer」Med.Phys.誌40(5):1703頁(2013)と、脳内以外の腫瘍部位を治療する、回転する円弧要素上に搭載された多線源の使用(Pastyr他の米国特許第6,259,762号明細書)となどがある。SRSおよびSBRTの原理は、ビームを幾何学的に焦点化して、標的体積内には高線量を作り出し、この体積の外側では線量が急速に離れ落ちるようにする、というものである。焦点化は、何百または何千もの方向から標的に放射線ビームを狙い撃ちすることによって達成される。しかし、これらのビームの形状および強度を変調させる能力は限られている。そのようなことから、SRSおよびSBRTでは、周囲の組織を助命すると同時に標的体積内で高く均一な線量を維持するという能力は限られている。
【0010】
多数のビーム角度から強度変調放射線を送達する技法が提案されている。サイバーナイフシステム(J.Adler氏の「CyberKnife radiosurgery for brain and spinal tumors」International Congress Series 1247:545〜552頁(2002))は、ロボットアーム上に搭載された直線加速器を使用する。それは多数の非同一平面角度から放射線を送達することが可能であるが、ビーム角度の実際の数は、多数の独立したビームに関連付けられる長い治療時間によって制限される。さらに、患者の後側半球からのビーム方向の範囲が、幾何学的な制約によって限定される。さらに、ビーム変調の程度もそのコリメータの設計によって制限される。
【0011】
アキュレイ社のムーラ氏のチーム(Maurer and colleagues at Accuray,Inc.,)は、ロボットアームよりはむしろ固定環ガントリを使用したいくつかの代替的解決法を提案している(米国特許出願公開第2011/0210261号明細書、米国特許出願公開第2011/0301449号明細書、および米国特許出願公開第2012/0189102号明細書)。環ガントリは、単一横断面または制限付き非同一平面の角度が画像ビームに使用される画像診断には望ましいが、それらは、広い範囲の非同一平面角度が望ましい治療では理想的ではない。ほとんどの解剖学的部位の放射線治療では、放射線ビームは、好ましくは患者の横断軸の片側から、多くの場合この軸に対して広い角度から標的に向けて送られる。例えば、頭蓋内病変の治療では、ほとんどのビームは、下半球よりもむしろ上半球(患者の頭の頂部の上)から向けられるべきである。前立腺癌の治療では、一般的に上半身からよりもむしろ下半身からビームを向けることが好ましい。これは、ビームが腹領域内の組織と重要な構造体とをより少なく通過することが良いことによる。ムーラ氏のチームによって提案された環ガントリシステムは、このような解剖学的な優先事項をうまく利用する能力、あるいは高度に非同一平面のビーム方向を達成する能力が限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,259,762号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0210261号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0301449号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0189102号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Veldeman氏他による「Evidence behind use of intensity−modulated radiotherapy:A systematic review of comparative clinical studies」、Lancet Oncology誌9(4)367〜375頁(2008)、およびLancet Oncology誌9(6)513頁(2008)内の正誤表
【非特許文献2】Detorie氏の「Helical Tomotherapy:A new tool for radiation therapy」J.Amer.Coll.Radiol.誌5(1):63〜66頁(2008)
【非特許文献3】Yu氏の「Intensity modulated arc therapy using dynamic multi−leaf collimation:An alternative to Tomotherapy」Phys.Med.Biol.誌40(9):1435〜1449頁(1995)
【非特許文献4】R.Timmerman氏およびB.Kavanagh氏の「Stereotactic body radiation therapy」Curr.Probl.Cancer誌29:120〜157頁(2005)
【非特許文献5】Bhatnagar氏他の「First year experience with newly developed Leksell Gamma Knife Perfexion」J.Med.Phys.誌34(3)141〜148頁(2009)
【非特許文献6】Yu氏他の「GammaPod―A new device dedicated for stereotactic radiotherapy of breast cancer」Med.Phys.誌40(5):1703頁(2013)
【非特許文献7】J.Adler氏の「CyberKnife radiosurgery for brain and spinal tumors」International Congress Series 1247:545〜552頁(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示は、とりわけ、放射線源の縦方向および横方向の回転を組み合わせることによって、様々な強度と線場形状の放射線ビームが、広範な立体角から焦点化されることを可能にする方法を提供することによって、この技術で現在利用可能な付随システムおよび方法の限界を克服することを模索する。上述のことを考慮して、本開示は、光子に基づいた治療システムの有用性および臨床効果を、既存のIMRTおよびSRS/SBRTシステムで達成可能な度合いを超えてビーム送達の自由度を拡大することによってさらに高める方法および放射線送達システムについて説明する。殊に、これは、高度に非同一平面のものを含む極めて多数のビーム方向から強度変調光子ビームが照射されることを可能にすることによって達成される。この立体角は、全ての縦方向角度(患者の縦方向軸の周りの)と広範囲の横方向角度とを含む。この方法およびシステムは、実際上の設計において、SRS/SBRTの幾何学的な焦点化とIMRTの強度変調とを組み合わせ、それによってIMRTまたはSRS/SBRTのいずれかのみによってでは達成可能とならない能力を提供する。本明細書で提供される詳細な説明から、このおよび他の目的および利点、ならびに発明的な特色が明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
患者内の標的に照射する方法がここに提供される。本方法は、少なくとも1つの外部放射線源などの外部放射線源から放射線ビームを、外部放射線源を共通のアイソセンターの周りで同心円状に縦方向に回転させ、同時もしくは逐次的に、いずれの順序にも、外部放射線源を横方向に回転させることによって、広範な立体角度内の多数の方向から患者内の標的に向けて送ることを備える。放射線ビームの強度、または放射線ビームのアパーチャの形状、あるいは放射線ビームの強度とアパーチャの形状との両方が、縦方向および/もしくは横方向の回転の様々な点のあらゆる所での照射中に、あるいは外部放射線源を単一の静止位置に維持する間に、変化されることが可能である。外部放射線源の縦方向回転の速度、または外部放射線源の横方向回転の速度、あるいは外部放射線源の縦方向回転の速度と横方向回転の速度との両方が変化されることが可能である。本方法は、照射中に患者を連続的または不連続的に移動させることをさらに含むことが可能である。
【0016】
少なくとも1つの外部放射線源などの外部放射線源を、照射されるべき標的内に配置されたアイソセンターの周りで同心円状に縦方向および横方向に回転させる球体ガントリがさらに提供される。球体ガントリはアイソセンターと交差する中心軸を有し、構成要素として、(i)球体ガントリの中心軸上に原点位置がある前方開放環、(ii)前端と後端を有し、円の一部である少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム、(iii)少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム上に搭載され、アイソセンターの周りで横方向に回転するように円弧状のガントリ支持アームに沿って移動することが可能な少なくとも1つの外部放射線源などの外部放射線源と、任意選択で、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム上に搭載されたビームストッパにおいて、球体ガントリの外部放射線源とは反対の側にあるビームストッパ、(iv)球体ガントリの中心軸に軸が沿った後方回転心棒、(v)支持基部、および(vi)電源と、球体ガントリの移動構成要素を移動させる機構と、球体ガントリの構成要素の移動と患者内の標的への照射とを制御する制御器とを備える後方ハウジング、を備える。前方開放環は、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アームの前端に取り付けられる。後方回転心棒は少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アームの後端に取り付けられる。前方開放環および後方回転心棒は、支持基部および後方ハウジングによって支持される。前方開放環および後方回転心棒は中心軸の周りで回転して、外部放射線源を縦方向に回転させることが可能である。外部放射線源は直線加速器または放射性同位体遠隔療法装置である。外部放射線源は、それが搭載された少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アームの長さに沿って可変速度で移動することが可能である。代替方法として、外部放射線源は少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム上に固定され、円弧状のガントリ支持アームおよび後方回転心棒が並進されて外部放射線源を横方向に可変速度で回転させる。球体ガントリは約40cmから約100cmの半径を有することが可能である。球体ガントリの中心軸の配向は、水平方向から実質的垂直方向もしくは垂直方向に変更されることが可能であり、その場合、後方ハウジングは縦方向に回転し、球体ガントリと共に水平位置と垂直位置の間で旋回することが可能である。
【0017】
患者内の標的に照射するシステムが尚さらに提供される。このシステムは、(i)球体ガントリ、(ii)患者プラットフォーム、(iii)患者プラットフォームの支持体、および任選択で(iv)遮蔽体、を備える。患者プラットフォームは、患者プラットフォームの長さまたはZ次元に沿ったいずれの方向にも、患者プラットフォームの幅またはX次元に沿ったいずれの方向にも、かつ/あるいは患者プラットフォームの上もしくは下またはY方向のいずれの方向にも、独立的に移動されることが可能である。患者プラットフォームの移動は、放射線源の縦方向および横方向の回転と同期し、患者への照射中の全ての移動を連係させる制御ユニットによって一元制御される。患者プラットフォーム支持体は患者プラットフォームを支持する。遮蔽体は患者をシステムの残りの部分から離隔する。
【0018】
このシステムは、(v)少なくとも2つの直線支持梁、(vi)X線管、および(vii)X線検出器アレイ、をさらに備えることが可能である。X線管は、球体ガントリの片側の少なくとも1つの直線支持梁に搭載される。X線検出器アレイは、球体ガントリのX線管とは反対の側の少なくとも1つの直線支持梁に搭載され、それらが搭載された少なくとも2つの直線支持梁の長さに沿って移動することが可能である。少なくとも2つの直線支持梁は球体ガントリの中心軸と平行である。X線管とX線検出器アレイは別個の回転心棒上に搭載され、それらが搭載された少なくとも2つの直線支持梁の長さに沿って移動することが可能である。X線検出器アレイは一次元式、または二次元式などの多次元式であることが可能である。2つの直線支持梁は、球体ガントリの前方環上に搭載された軸受によって前端で、球体ガントリの後方回転心棒と同軸であるがそれとは別個の軸受によって後端で支持される。2つの直線支持梁は、球体ガントリの回転、即ち縦方向の回転とは無関係に、即ち独立的に縦方向に回転することが可能である。X線管と検出器の複合体を直線支持アームに沿って並進させ、球体ガントリの回転とは無関係に患者の周りで回転させることによって、放射線治療の前、間、後にCT画像が獲得されることが可能である。
【0019】
代替方法として、このシステムは、(viii)コンピュータ断層撮影(CT)画像システム、磁気共鳴撮影(MRI)システム、または球体ガントリの前方開放環に隣接して位置決めされた陽電子放出型断層撮影(PET)/コンピュータ断層撮影(CT)画像システム、をさらに備えることが可能であり、CT画像システム、MRIシステム、またはPET/CT画像システムは搭載式の画像案内を提供することが可能である。
【0020】
システムを使用して画像案内の下で患者内の標的に照射する方法が尚さらに提供される。この方法は、a)X線管とX線検出器の複合体を使用して、または取り付けられたもしくは隣接した体積画像システム(CT、MRI、またはPET/CT)を使用して治療位置内の患者を撮像すること、b)患者を連続的または不連続的に移動させながら、外部放射線源から強度変調放射線ビームを、外部放射線源を中心軸の周りで縦方向に回転させ、同時もしくは逐次的に、いずれの順序にも、外部放射線源を横方向に回転させることによって、広範な立体角度内の多数の方向から治療位置内の患者内の標的に向けて送ることによって病巣放射線量を送達するための治療計画を立てること、c)a)の撮像と同じセットアップの患者プラットフォーム上に残っている患者への治療計画に従って治療を実施すること、d)放射線治療中、患者の両側にある直線支持梁上に搭載されたX線管およびX線検出器アレイを使用して患者を撮像すること、を備え、患者の解剖学的構造内に1つまたは複数の変化が検出される場合、治療実施の1つまたは複数のパラメータ(患者用支持プラットフォームの位置、マルチリーフコリメータの形状、ビームの縦方向および/または横方向角度、ビームの強度など)が、患者内の標的が治療計画に従って照射されるように調整される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】放射線放出ヘッドが回転可能なCアームガントリ上に搭載された、典型的な放射線治療システムの基本構造を示す図である。
【
図2】前方開放環22、ガントリ支持アーム23、外部放射線源24(少なくとも1つの放射線源など)、後方回転心棒25、後方ハウジング26、および支持基部27を備える球体ガントリ21を備えるシステム20を示す図である。患者プラットフォーム28および患者プラットフォーム支持体29も示されている。
【
図3a】球体ガントリの正面図に関連付けられた座標系および名称を示す図である。半径(R)は固定されている。放射線源24の位置(P)はその横方向角度(φ)およびその縦方向角度(θ)、即ちP(φ、θ)によって一意的に識別される。
【
図3b】後方回転心棒25を含む球体ガントリの側面図に関連付けられた座標系および名称を示す図である。半径(R)は固定されている。放射線源24の位置(P)はその横方向角度(φ)およびその縦方向角度(θ)、即ちP(φ、θ)によって一意的に識別される。
【
図4a】円弧状のガントリ支持アーム23上に搭載された外部放射線源24が、後方回転心棒25が位置付けられた球体ガントリ21の後方(閉鎖)端付近へ、横方向に回転されたときの放射線治療システム20の部分側面図である。患者プラットフォーム28および患者プラットフォーム支持体29も示されている。
【
図4b】円弧状のガントリ支持アーム23上に搭載された外部放射線源24が、球体ガントリ21の前方(開放)端付近へ、横方向に回転されたときの放射線治療システムの部分側面図である。患者プラットフォーム28および患者プラットフォーム支持体29も示されている。
【
図5】前方開放環22から見た放射線治療システム20の部分図である。隣接する円弧状のガントリ支持アーム23上に搭載された放射線源24と、患者プラットフォーム28と、ローラ30付き支持基部27とが示されている。
【
図6a】外部放射線源からのビームの軌跡が球面状螺旋を形成する、一定速度の縦方向および横方向の回転による外部放射線源からのビームの軌跡を示す図である。後方回転心棒25が示されている。
【
図6b】外部放射線源からのビームの軌跡が球表面上にジグザクのパタンを形成する、低速の縦方向回転と前後への横方向回転とによる外部放射線源からのビームの軌跡を示す図である。後方回転心棒25が示されている。
【
図7】球体ガントリ21の前端と後端の横方向角度の範囲が、球体の原点位置を横切る横断面の周りで極めて非対称である、脳および頭部および頸部の腫瘍を治療する専用装置として構成されたシステム20の部分図である。開放環22、円弧状のガントリ支持アーム23、外部放射線源24、後方ハウジング26、トルクモータなどの回転を可能にする装置34に連結された後方回転心棒25、および患者プラットフォーム28が示されている。球体ガントリ21の全体が支持柱36によって支持される。
【
図8】回転の縦軸が垂直方向である球体ガントリの開口の上に位置決めされた患者プラットフォーム28内の開口部から垂れ下がる人の胸部内の癌を治療する専用装置として構成されたシステム20の部分図である。円弧状のガントリ支持アーム23、外部放射線源24、および後方回転心棒25が示されている。
【
図9】縦方向の回転軸が水平位置と垂直位置の間で旋回されることが可能な球体ガントリ21の実施形態を示す図である。後方ハウジング26は電源と、球体ガントリの構成要素を移動させる機構と、球体ガントリの構成要素の移動と患者内の標的への照射とを制御する制御器とを備える。この実施形態では、球体ガントリ21と後方ハウジング26とはトルクモータ34によって一緒に縦方向に回転し、2つの支持柱36によって支持された旋回心棒30の回転によって水平位置と垂直位置の間で旋回する。前方開放環22、円弧状のガントリ支持アーム23、外部放射線源24、後方回転心棒25、後方ハウジング26、トルクモータ34、および2つの支持柱36が示されている。
【
図10】前立腺癌治療などのための「脚が中にある」配向で治療されるときに患者の脚用の空間を、球体ガントリ21の後端の凹所が提供するシステム20の実施形態を示す図である。後方心棒25用の連結点は凹所の後端にある。前方開放環22、円弧状のガントリ支持アーム23、外部放射線源24、支持基部27、患者プラットフォーム28、患者プラットフォーム支持体29が示されている。
【
図11a】二次元X線または三次元CTの撮像などの搭載式撮像をし易くするように、直線支持梁31が別個の心棒軸受36によって球体ガントリ21に取り付けられたシステム20の側面図である。前方開放環22と、円弧状のガントリ支持アーム23と、外部放射線源24と、球体ガントリ25の後方回転心棒と、後方ハウジング26と、支持基部27と、患者プラットフォーム28と、患者プラットフォーム支持体29と、X線管32およびX線検出器アレイ33を備えた搭載式撮像法とが示されている。
【
図11b】二次元X線または三次元CTの撮像などの搭載式撮像をし易くするように直線支持梁31が球体ガントリ21に取り付けられたシステム20の球体ガントリ21の前方環から見た図である。前方開放環22と、外部放射線源24と、X線管32およびX線検出器アレイ33による搭載式撮像とが示されている。
【
図12】環ガントリを備えた三次元撮像装置32がどのようにシステム20の球体ガントリ21の前方環で当接されることが可能となって、患者プラットフォーム上で同じ位置を維持しながら患者が撮像および治療されるようにするか、を示す図である。円弧状のガントリ支持アーム23と、外部放射線源24と、後方回転心棒25と、患者プラットフォーム28と、患者プラットフォーム支持体29と、搭載式三次元撮像装置35とが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
患者内の標的に照射する方法がここに提供される。本方法は、少なくとも1つの外部放射線源などの外部放射線源から放射線ビームを、広範な立体角度内の多数の方向(それらの方向は、広大とみなされるほどに多数であることが可能である)から患者内の標的に向けて送ることを備える。外部放射線源は軸の周りで患者の周囲を縦方向に回転される。縦方向の回転と同時に、または縦方向の回転に対して逐次的にいずれの順序にも(即ち前もしくは後のいずれにも)、外部放射線源は円形状の軌跡に沿った並進によって横方向に回転されることが可能である。外部放射線源の縦方向および横方向の回転は一緒に、実際上、放射線源を球表面上にある軌跡内で移動させる。横方向の回転範囲は、回転範囲の片端または両端で広い非同一平面のビーム角度を可能にするのに充分である。好ましくは、さらには望ましくは、外部放射線源の全ての回転の全体にわたって、放射線ビームの中心軸は空間内の固定点上に焦点を合わせられる。この点は、「アイソセンター」または縦方向の回転軸と横方向の回転軸との交点である。このように、外部放射線源は、好ましくは、さらには望ましくは、共通のアイソセンターの周りで同心円状に縦方向に回転され、横方向に回転される。放射線ビームの強度、または放射線ビームのアパーチャの形状、あるいは放射線ビームの強度とアパーチャの形状との両方が、外部放射線源の移動中、即ち縦方向および/もしくは横方向の回転の様々な点のあらゆる所での照射中に、あるいは外部放射線源を単一の/静止位置に維持する間などに変化されることが可能である。外部放射線源の縦方向回転の速度、または外部放射線源の横方向回転の速度、あるいは外部放射線源の横方向の回転速度と縦方向の回転速度との両方が、変化されることが可能である。放射線ビームが中から向けられてくる立体角度の広がりは、照射されている患者内の標的の位置に依存して変化することが可能である。これらの回転によって広げられる立体角度の幅は、照射されている患者内の標的の位置に依存して変化することが可能であって、様々な位置への送達をカスタマイズすることを可能にする。外部放射線源が一定速度で縦方向に回転され、横方向に回転されると、外部放射線源の経路は
図6aで示されるような球面形螺旋となる。
図6aは、一定速度の縦方向および横方向の回転による外部放射線源の軌跡を示し、ビーム源の軌跡は球面形螺旋を形成している。縦方向の回転と横方向の回転とは両方向に実施されることが可能である。外部放射線源が縦方向に低速で回転され、横方向に一定して前後へ回転されると、外部放射線源の経路は
図6bに示されるようにジグザグとなる。
図6bは、低速の縦方向回転と前後への横方向回転とによる外部放射線源の軌跡を示し、ビーム源の軌跡は球表面上にジグザグのパタンを形成している。外部放射線源が縦方向に前後へ回転され、横方向に低速で回転されると、外部放射線源の経路は、両方向の螺旋同士を連結させたセグメントとなる。方法は、照射中に患者を連続的または不連続的に移動させ、それによって放射線の焦点が標的内で動的に移動するのを、あるいは標的内および標的周囲の1つまたは複数の位置に静的に配置されるのを可能にすることをさらに備えることが可能である。この方法は、定位式強度変調回転放射線療法(SIMAT)と呼ばれる。
【0023】
外部放射線源を、照射されるべき標的内に配置されたアイソセンターの周りで同心円状に縦方向および横方向に回転させる球体ガントリ21も提供される。球体ガントリ21は、アイソセンターと交差する中心軸を有し、外部放射線源24を中心軸の周りで360°の範囲全体に回転させることが可能である。この移動は本明細書では「縦方向回転」と呼ばれ、外部放射線源は、それが中心軸の周りを回転するとき、「縦方向に回転する」または「縦方向回転をする」、あるいは「縦方向に回転される」と表現される。好ましくは、さらには望ましくは、球体ガントリ21はいずれの方向にも、即ち時計回りと反時計回りに回転することが可能である。これも好ましくは、さらには望ましくは、球体ガントリ21は可変速度で回転することが可能である。球体ガントリ21は以下の構成要素、(i)球体ガントリ21の中心軸上に原点位置がある前方開放環22、(ii)前端と後端を有し、球体ガントリの中心軸上に原点位置がある円の一部である、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム23、(iii)少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム23上に搭載された外部放射線源(24;「放射線生成装置」、「放射線放出装置」、および「放射線ヘッド」とも呼ばれる)と、任意選択で、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム23上に搭載されたビームストッパにおいて、球体ガントリ21の外部放射線源24とは反対の側にあるビームストッパ、(iv)球体ガントリ21の中心軸に軸が沿った後方回転心棒25、(v)支持基部27、および(vi)電源と、球体ガントリ21の構成要素を移動させる機構と、球体ガントリ21の構成要素の移動と患者内の標的への照射とを制御する制御器とを備える後方ハウジング26、を備える。前方開放環22は、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム23の前端に取り付けられる。好ましくは、前方開放環22は、180°の縦方向角度だけ離隔された少なくとも2つの円弧状のガントリ支持アーム23の前端、あるいは180°の縦方向角度だけ対同士が離隔された少なくとも2対の隣接し合った円弧状のガントリ支持アーム23の前端に取り付けられる。円弧状のガントリ支持アーム23の曲率は、球体ガントリ21と、存在するときはビームストッパとの回転軸上に存在する、固定原点位置、即ちアイソセンターを備えた円形状の経路に沿った外部放射線源24の移動を可能にする。前方開放環22は望ましくは支持および剛性をもたらす。前方開放環22は、基部27上に設定されたローラ30、軸受、または類似物によって支持されて、前方開放環22が支持基部27上で自由に回転することが可能になる。後方の回転心棒25は、少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム23の後端に取り付けられ、球体ガントリ21の縦方向の回転をし易くする。縦方向の回転は前方開放環22を駆動することによっても達成されることが可能である。少なくとも2つの円弧状のガントリ支持アーム23が存在するとき、好ましくは、回転心棒は少なくとも2つの円弧状のガントリ支持アーム23の後端に取り付けられ、2つの円弧状のガントリ支持アーム23は円の一部を形成する。このような構成では、2つの円弧状のガントリ支持アーム23は後方回転心棒25に付けられ、それから外方および前方に延びる。前方開放環22および後方回転心棒25は支持基部27および後方ハウジング26によって支持される。前方開放環22および後方回転心棒25は中心軸の周りで回転することが可能である。このような構成は、中心軸の周りで回転されるとき、球面または球体の一部または全てに類似した空間を示す。この点で、球体ガントリは僅かに大なり小なり半球体状であることが可能である。
【0024】
球体ガントリ上のいかなる適切な場所にも駆動機構が取り付けられることが可能である。例えば、駆動機構は後方の回転心棒25および/または前方の開放環22に取り付けられることが可能である。
【0025】
後方ハウジング26から、球体ガントリ上に搭載された外部放射線源24の電源に電気を供給し、球体ガントリおよび静止した後方ハウジングに搭載されたセンサー、制御器などの構成要素同士間に通信を構築するために、好ましくはスリップリングが使用される。スリップリングは、回転する球体ガントリ21へ冷水を移送し、そこから冷水を移送するのにも使用されることができる。スリップリング技術は、球体ガントリ21が、10周(即ち3600°)を著しく超えない単一方向の最大回転範囲内で前後へ回転されるとき、必要ない。
【0026】
球体ガントリ21の駆動機構は、電源喪失が生じ、球体ガントリ21上の重力が球の周りでバランスされない事態での不慮の回転を防止するように設計される。好ましいものであることが可能な一実施形態では、不可逆式の駆動可能なギア機構が使用される。このような機構は、患者および球体ガントリ21、ならびに球体ガントリを備えるシステム20を保護する働きをする。
【0027】
球体ガントリは任意の適切な半径を有することが可能である。望ましくは、球体ガントリ21は対象とする用途に対して充分に大きな半径を有する。患者の胴体部内の腫瘍を治療するためには、前方開放環の直径は60cmから100cmであるべきである。この直径は、患者、特にヒトの患者が球体ガントリ21の内部空間内に配置され、任意選択で球体ガントリ21の内部空間内で三次元に移動されるのを可能にするのに充分である。胸部、脳、および頭部/頸部の用途では、開口部は小さくなることが可能である。
【0028】
球体ガントリ21の中心軸の配向は変更されることが可能である。例えば、中心軸の配向は、水平方向から実質的垂直方向もしくは垂直方向に変更されることが可能であり、その場合には後方ハウジングは縦方向に回転し、球体ガントリと共に水平位置と垂直位置の間を旋回することが可能である。実質的水平方向もしくは水平方向の配向は、例えば、患者プラットフォーム28によって支持された患者の頭部と患者の体とが球体ガントリの内側に配置されることを可能にする。前方環22が上方に向いた状態で中心軸が実質的垂直方向もしくは垂直方向に配向されるとき、患者は球体ガントリ内で患者プラットフォーム28上にうつ伏せになることが可能である。一実施形態では、患者プラットフォーム28は、女性患者の胸部が球体ガントリ21の内側に配置されるための開口部を備え、その場合には、胸部は患者プラットフォーム28内の開口部内で垂れ下がる。
【0029】
一実施形態では、外部放射線源24が円弧状のガントリ支持アーム23の長さに沿って移動する際のより大きな安定性とより充分な制御とを得るように、外部放射線源24は、一対の隣接し合った円弧状のガントリ支持アーム23上に搭載される。好ましくは、さらには望ましくは、外部放射線源24はそれが取り付けられた円弧状のガントリ支持アーム23の長さに沿って一定速度または可変速度で移動し、または並進することが可能である。円弧状のガントリ支持アーム23は球体表面上の円の一部であることから、それがガントリ支持アーム23の長さに沿って移動/並進するとき、この移動は本明細書で「横方向の回転」と呼ばれ、外部放射線源は「横方向に回転する」または「横方向回転をする」、あるいは「横方向に回転される」と表現される。外部放射線源24の位置はその縦方向および横方向の角度によって一意的に識別される。SIMAT治療を計画するためのシステム20内で使用される球体ガントリ21に関連付けられた座標系および名称が
図3aおよび
図3bに示されている。
図3aは球体ガントリ21の正面図に関連図けられた座標系および名称を示す。半径(R)は固定される。放射線源24の位置(P)はその横方向角度(φ)とその縦方向角度(θ)、即ちP(φ、θ)によって一意的に識別される。
図3bは、球体ガントリ21の側面図に関連付けられた座標系および名称を示す。放射線源24は様々な横方向および縦方向の角度にあることが可能であって、常にアイソセンターを指す。球体ガントリ21の回転は放射線ビームの縦方向角度を変更する。外部放射線源24の横方向の回転は、放射線ビームの横方向角度を変化させる。
【0030】
外部放射線源24の縦方向の回転の速度と横方向の回転の速度とは、一定であることが可能であるが、そうである必要はなく、好ましくは一定ではない。そのような条件下の放射線源24の軌跡は完全な球面状螺旋ではない。さらに、外部放射線源24の縦方向および横方向の回転は一般的に1つの方向ではなく、即ちそれは必要に応じて両方向に前後へ回転されることが可能であり、一方向における一つ一つの移動は完全であり、または不完全であることが可能である。即ち、縦方向の回転は必ずしも360度全てではなく、横方向の回転は必ずしも、円弧状のガントリ支持アーム23の長さ全体に沿った放射線源の並進を含まない。この点で、円弧状のガントリ支持アーム23に沿った開始位置と停止位置は、外部放射線源24の位置の縦方向角度と共に変化することが可能である。照射ビームの軸は常に球面の原点位置を指す。
【0031】
横方向角度の範囲は、アイソセンターを通る平面の周りで対称ではなく、球体ガントリ21の縦方向軸に対して垂直である。縦方向軸が患者および患者プラットフォーム28の長さに沿って配向される状況では、この横方向回転の非対称は、アイソセンターを通る、患者プラットフォーム28に対して横断方向である垂直平面の周りにある。放射線腫瘍学の分野では、患者プラットフォーム(または患者)28の横断面と軸が同一平面上にある放射線ビームが「同一平面上ビーム」と呼ばれ、患者プラットフォーム(または患者)28の横断面よりも上また下から斜めに角度付けされた放射線ビームが「非同一平面上ビーム」と呼ばれる。縦軸が患者および患者プラットフォーム(28;
図8のように)に対して直角に配向される状況では、横方向回転の非対称は、アイソセンターを通る水平面の周りにある。放射線ビームは、後方の回転心棒25による後方閉鎖端と比較して、前方開放環22の端における方が、より小さな最大傾斜角を有する。この構成は、治療空間の開口部を妨げずに可能な限り大きな立体角をもたらす。この配置構成は、様々な大きさの患者を収容するのに治療空間の大きさが充分であることを可能にし、患者内の広い範囲の標的サイトへの照射を可能にすることから、望ましい。
【0032】
少なくとも1つの放射線源を球面内で移動させると同時に、ビームを空間内の固定位置上で焦点化された状態に保つ代替的な機械システムも提供される。この代替的な機構では、放射線ヘッド24は円弧状のガントリ支持アーム23上に固定され、円弧状のガントリ支持アーム23と後方の回転心棒25とは並進されて、外部放射線源24を横方向に回転させる。
【0033】
球体ガントリ21は、当技術分野で知られている方法に従って任意の適切な材料から製作されることが可能である。球体ガントリ21は望ましくは、耐久性があり、軽量である高強度の材料から製作される。望ましくは、球体ガントリ21は容易に回転されることが可能であり、支持梁は、外部放射線源24、ビームストッパなどの付属装置を支持することが可能であり、外部放射線源24と、存在する場合はビームストッパとのそれらの長さに沿った両方向(即ち、横方向回転の両方向)の繰り返し移動に耐えることが可能である。材料の一例として金属がある。
【0034】
患者内の標的に照射するシステム20も提供される。システム20は以下の構成要素、(i)本明細書で説明される球体ガントリ21、(ii)球体ガントリ21の中心軸に沿って位置決めされ、第1端と第2端を備える患者プラットフォーム28、(iii)患者プラットフォーム28を支持する患者プラットフォーム支持体29、任意選択で(iv)患者をシステムの残りの部分から離隔する遮蔽体、を備える。
【0035】
図2は、球体ガントリ21を備えるシステム20を示す図面である。C型アームガントリ上に固定された放射線源を有するよりもむしろ、球体ガントリのアームは円の一部を形成し、外部放射線源24はガントリのアームに沿って横方向に回転することが可能である。ガントリが縦方向に回転し、外部放射線源24が円弧状の支持アーム23に沿って横方向に回転されると、放射線源の移動の軌跡は、一般的に円よりはむしろ球表面の一部となる。このような移動の間、外部放射線源24から放出される放射線ビームは球面の原点位置を指し、放射線の強度は変化されることが可能であり、放射線場のアパーチャは変更されることが可能である。それによって、患者内の標的の形状に合致するように放射線量を送達する2つの広く採用されている技法―強度変調および幾何学的焦点化―が組み合わされることが可能である。放射線ビームの移動中、患者も移動されることが可能であって、放射線ビームの回転するアイソセンターが患者内の標的を通して三次元印刷または三次元ペインティングに類似してスキャンすることを可能にし、それによって不規則な形状の標的(腫瘍など)を所望の線量パタンで覆う。
【0036】
図4aは、円弧状のガントリ支持アーム23上に搭載された少なくとも1つの放射線源24が球体ガントリ21の後方(閉鎖)端付近に、横方向に回転されるときの放射線治療システム20の側面図である。放射線ビームを患者の頭の頂点または患者の脚の下部に向けて送ることが望ましいことは滅多にないことから、横方向角度(φ)は実際には約30°未満である必要はない。
【0037】
図4bは、円弧状のガントリ支持アーム23上に搭載された少なくとも1つの放射線源24が球体ガントリ21の前方(開放)端付近に、横方向に回転されるときの放射線治療システム20の側面図である。アイソセンターを横切る横断面の前側よりも後側の方に、より大きな横方向角の範囲があり、それによってガントリの閉鎖端からの非同一面上のビーム角度を可能にする。ほとんどの場合、放射線ビームを、アイソセンターを通る横断面について対称に配置されるようにする必要はない。したがって、横方向角度(φ)は実際には約120°を超える必要はない。
【0038】
図5は、前方開放環22から見た放射線治療システム20を示す図である。球体ガントリ21は、例えば支持基部27内の玉軸受上で滑らかに回転することが可能である。放射線ヘッド24は縦方向角度(θ)に回転する。
【0039】
外部放射線源24は、任意の適切な放射線源であることが可能である。外部放射線源24は内蔵型放射線機械であることが可能である。外部放射線源24の例には、以下に限定されないが、直線加速器と、コバルト60遠隔療法ヘッドのような放射線同位体遠隔療法装置とが含まれる。外部放射線源24が直線加速器であるとき、マイクロ波電力生成装置および/または電子加速用増幅器、加速器導波路、ならびに放射線場を形状化するのに必要な他の構成要素は、好ましくは全て単一の担持体に搭載されて、放射線源が横方向に回転されるにつれて一緒に移動する。高圧パルス生成変調器および他の制御回路は球体ガントリ上に固定されることも、後方の静止したハウジングの内側に配置されることも可能である。後者の配置構成では、放射線生成ヘッドに通電するのに必要とされる電力は、スリップリング機構によって接続されることが可能である。外部放射線源24は、放射線源周囲に必要な遮蔽と、一次コリメータと、マルチリーフコリメータなどの放射線アパーチャ形状化装置とを備える。放射線ビームは一次コリメータで平行にされる。好ましいものであることが可能な一実施形態では、マルチリーフコリメータが、照射および移動中に放射線場を動的に形状化する。
【0040】
任意選択で、外部放射線源24は、球体ガントリ21の、外部放射線源24とは反対の側の少なくとも1つの円弧状のガントリ支持アーム23に搭載されたビームストッパと結合される。ビームストッパは、患者からの射出ビームを減衰させる放射線遮蔽板である。適切なビームストッパの例が当技術分野で知られおり、それらには、例えば鉄鋼に閉じ込められた鉛またはタングステン合金などの高密度材料が含まれる。外部放射線源24からの放射線を遮蔽することに加えて、ビームストッパは外部放射線源24に対して釣合い錘として作用することが可能である。好ましくは、さらには望ましくは、ビームストッパは、それが搭載された円弧状のガントリ支持アーム23の長さに沿って移動することが可能であり、外部放射線源24の反対方向に移動する。外部放射線源24が一定速度または可変速度で移動することから、ビームストッパもそれに応じて一定速度または可変速度で移動する。ビームストッパの移動する能力は、患者からの放射線ビームの射出を遮断するのに必要なビームストッパの大きさを最小限にする助けとなる。放射線ヘッドが正の横方向角度から負の横方向角度に移動するにつれて、ビームストッパは負の横方向角度から正の横方向角度に(かつその逆に)移動して、患者からの射出ビームを遮断する機能を維持する。代替方法として、ビームストッパは、前方開放環22を後方の回転心棒25に連結する固定された円弧状の板であることが可能であって、患者から射出する放射線に対する遮蔽体と球体ガントリ21に剛性をもたらす構造支持体との両方の働きをする。この代替的実施形態の遮蔽板の幅および円弧長さは、放射線ヘッドが球体ガントリ上のどのようなあり得る位置にあるときも射出ビームを遮蔽するのに充分である。
【0041】
患者プラットフォーム28の一例としてテーブルまたは治療台がある。一実施形態では、患者プラットフォーム28は様々な方向に独立的に移動されることが可能である。例えば、患者プラットフォーム28は、患者プラットフォーム28の長さまたはZ次元に沿ったいずれの方向にも、患者プラットフォーム28の幅またはX次元に沿ったいずれの方向にも、かつ/あるいは患者プラットフォーム28の上もしくは下またはY方向のいずれの方向にも移動されることが可能である。このような移動は外部放射線源の縦方向および横方向の回転と同調している。患者プラットフォーム28の三方向での独立的な移動は、例えば少なくとも3つのモータによって駆動されることが可能である。照射されるべき患者内の標的の位置に依存して、患者を患者プラットフォーム28上に、彼/彼女の頭を第1端または第2端にして横になってもらうことが望ましい可能性がある。
【0042】
患者プラットフォームを支持するのに任意の適切な患者プラットフォーム支持体29が使用されることが可能である。適切な患者プラットフォーム支持体29の一例として、患者プラットフォームの移動用駆動機構が内側に配置された脚台がある。患者プラットフォーム支持体29は、患者プラットフォーム28が球体ガントリ21の内側に吊り下げられることを可能にする。患者プラットフォーム支持体29は多軸式ロボットアームであることも可能である。
【0043】
支持基部27は、より充分な幾何学的安定性を得るように前方開放環22と、後方の回転心棒25と、望まれる場合には患者プラットフォーム28とを安定させる頑丈なプラットフォームなどの任意の適切な支持構造体であることが可能である。
【0044】
患者をシステム20の残りの部分から離隔する遮蔽体は、当技術分野で知られている任意の適切な遮蔽体であることが可能である。好ましくは、遮蔽体は薄く、保護的であり、患者を球体ガントリ21と、外部放射線源24と、球体ガントリ21上に、もしくはそれに隣接して搭載された他の可動部とから離隔する。遮蔽体は半球形状などの任意の適切な形状を有することが可能であり、治療前に患者の周囲に構築されることが可能である。遮蔽対は透明、半透明、または不透明であることが可能である。患者は、胴体領域内の標的に照射される際に閉じ込められたように感じないよう、透明の遮蔽体を選好することができる。それとは対照的に、患者は、頭/頸部領域内の標的が照射される際、患者の顔の付近の放射線源24の移動を隠すように半透明の遮蔽体を選好することもできる。遮蔽体は任意の適切な材料から製作されることが可能である。好ましくは、遮蔽体は飛散防止型であり、対放射線耐性である。この点で、ポリカーボネートなどのプラスチックが使用され、さらには好まれることが可能である。遮蔽体は、皮膚への放射線量を増大する可能性のある放射線の飛散を最小限にするように可能な限り薄くあるべきである。好ましくは、遮蔽体の厚みは約1mm以下である。
【0045】
システム20は以下の構成要素、(v)少なくとも2つの直線支持梁31、(vi)X線管32、(vii)
図11aおよび
図11bに示されたX線検出器アレイ33をさらに備えることが可能である。
図11aは、直線支持梁31が、球体ガントリ25の心棒と同軸である、それから独立した別個の心棒36によって球体ガントリ21に取り付けられて、二次元X線または三次元CTの撮像などの搭載式撮像をし易くするシステム20の側面図であり、X線管32およびX線検出器アレイ33による搭載式撮像法が示されている。
図11bは、二次元X線または三次元CTの撮像などの搭載式撮像装置32による搭載式撮像をし易くするように、直線支持梁31が球体ガントリ21に取り付けられた、システム20の球体ガントリ21の前方環22から見た図であり、X線管32およびX線検出器アレイ33による搭載式撮像法が示されている。アレイは一次元式または多次元式であることが可能である。X線管32は、球体ガントリの片側の少なくとも1つの直線支持梁上に搭載される。X線検出器アレイ33は、球体ガントリのX線管とは反対の側の少なくとも1つの直線支持梁上に搭載される。2つの直線支持梁は、球体ガントリの前方環上に搭載された軸受によって前端で、球体ガントリの後方回転心棒と同軸であるがそれとは別個の軸受36によって後端で支持される。2つの直線支持梁は、球体ガントリの回転、即ち縦方向回転とは無関係に、即ち縦方向に独立的に回転することが可能である。X線管およびX線検出器は、それらが同期して搭載された少なくとも2つの支持梁31の長さに沿って移動することが可能である。X線管と検出器の複合体を直線型支持アームに沿って並進させ、患者の周りで球体ガントリの回転とは無関係に回転させることによって、放射線治療前、中、後にCT画像が得られることが可能である。
【0046】
システム20は以下の構成要素、(viii)コンピュータ断層撮影(CT)画像システム、磁気共鳴撮影(MRI)システム、あるいは
図12に示された球体ガントリ21の前方開放環22に隣接して位置決めされた陽電子放射断層撮影(PET)/コンピュータ断層撮影(CT)画像システム、をさらに備えることが可能である。
図12は、環ガントリ上の三次元撮像装置がどのようにシステム20の球体ガントリ21の前方環22に当接されることが可能となって、患者プラットフォーム上の同じ位置を維持しながら患者が撮像および治療されるようにするか、を示す。CT画像システム、MRIシステム、またはPET/CT画像システムは、搭載式撮像の案内を提供することが可能である。
【0047】
望ましくは、幾何学的な不確かさを最小限にするために、撮像および照射に同じ患者プラットフォーム(28あるいは28および29)が使用される。したがって、患者プラットフォーム(28あるいは28および29)上の固定位置から患者を移動させずに、患者は撮影および治療されることが可能である。
【0048】
本明細書で説明されたシステム20を使用して、画像案内の下で患者内の標的に照射する方法も提供される。本方法は、a)X管とX線検出器の複合体を使用して、または付属のもしくは隣接した体積測定撮像システム(CT、MRI、またはPET/CT)を使用して患者を治療位置内で撮像すること、b)患者を連続的または不連続的に移動させながら、外部放射線源から強度変調放射線ビームを、外部放射線源を中心軸の周りで縦方向に回転させ、同時もしくは逐次的に、いずれの順序にも、外部放射線源を横方向に回転させることによって、広範な立体角度内の多数の方向から治療位置内の患者内の標的に向けて送ることによって病巣放射線量を送達するための治療計画を立てること、c)a)の撮像と同じ設定の患者プラットフォーム上に残っている患者についての治療計画に従って治療を実施すること、d)放射線治療中、患者の両側にある直線支持梁上に搭載されたX線管およびX線検出器アレイとを使用して患者を撮像することにおいて、患者の解剖学的構造内に1つまたは複数の変化が検出される場合、外部放射線源が治療計画に従って患者内標的に向けて送られるように、1つまたは複数の治療実施のパラメータ、即ち患者支持プラットフォームの位置、マルチリーフコリメータの形状、ビームの縦方向および/または横方向角度、ビーム強度などが調整される、撮像すること、を備える。
【0049】
球体ガントリ21、放射線源24、および患者プラットフォーム28の移動を統括するために、治療計画が使用されることが可能であり、望ましい。全ての移動と照射のコーデシネーションは治療計画に反映され、中央制御ユニットによって実行される。中央制御ユニットは、コンピュータシステム、インタフェースパルス周波数制御器、および移動制御器を備える。このような制御ユニットは、当分野の熟練者によって製作された医療用直線加速器で一般的に使用される。一実施形態では、治療計画は、可能な限り最善の線量分配を決定するために、本明細書で説明されたシステムよって提供される患者の三次元画像と全ての自由度とを使用する治療計画システムによって設計される。計画の手順には、通常「逆計算計画」と呼ばれるコンピュータの最適化が含まれることが可能であり、典型的には含まれる。次いで治療計画はデジタルでシステム20に移送され、放射線の送達と、システムの様々な構成要素と患者支持プラットフォームとの移動とを駆動する機械制御コードに変換される。
【0050】
システム20および方法は、特定の疾病サイト専用の定位式放射線照射装置を作り出すように構成されることが可能である。例えば、球体ガントリ21の前方開放環22の半径Rを縮小することによって、その結果できたシステム20が、
図7で示された頭部(脳など)および頸部の腫瘍の治療専用の照射装置として使用されることが可能である。
図7は、脳および頭部および頸部の腫瘍の治療専用の装置として構成されたシステム20を示す。システム20では、球体ガントリ21の前後端の横方向角度の範囲が、球体の原点位置を横切る横断面の周りで極めて非対称である。この医療用途では、ほとんどもしくは全てのビームが球体ガントリの後半球から向けられることになる。小さな半径Rは、線量率が拡大されるのを可能にする。球体ガントリ21の横方向角度の範囲は、汎用システムよりも小さく、例えば約40°から約110°であることが可能であって、ほとんどのビームが患者の上方側から狙うようにさせる。半径が小さいことから、球体ガントリ21の重量は小さくなり、その支持構造は、単一の中央支持柱36を使用することによって簡略化されることが可能である。例えば、支持柱36にステータが固定され、後方の回転心棒にロータが固定されたトルクモータ34が、縦方向回転を駆動するために使用されることが可能である。通常の当業者であれば、縦方向回転を実行するためにトルクモータ34とは異なった機構を使用することが可能である。前方開放環22の下の支持基部27は排除されることが可能である。電源と照射ヘッド用の制御器とを含む後方の静止したハウジング26は球体ガントリ21と共に回転することが可能であり、それによって、静止した電源と照射ヘッドの制御器とを電気接続するスリップリングの必要性を解消する。患者は自然に前方開放部の外を見る。横方向範囲は、ほとんどもしくは全てのビームが頭の上半球から進入して、球体ガントリ21の後端と一致するように、人の頭の幾何学形状をさらにうまく利用することが可能である。
【0051】
球体ガントリ21の前方開放環22が再配向され、半径Rが任意選択でさらに縮小される場合、システム20は、
図8に示された患者プラットフォーム28内の開口部から垂れ下がる人の胸部内の腫瘍を治療するのに使用されることが可能である。
図8は、回転の縦軸が実質的に垂直または垂直である球体ガントリ21の開放部の上に位置決めされた患者プラットフォーム28内の開口部から垂れ下がる人の胸部内の腫瘍の治療専用の装置として構成されたシステムを示す。患者プラットフォーム28は前方開放環22の上に位置し、三方向(即ちX、Y、Z軸)全ての移動をなすように支持および駆動される。
【0052】
図7および
図8の球体ガントリ21は2つの別個のユニットである必要はない。
図9は、2つの支持柱36によって支持された旋回心棒30の回転によって水平位置と垂直位置の間で縦方向回転軸が旋回されることが可能な球体ガントリ21の実施形態を示す。電源と、球体ガントリ21の構成要素を移動させる機構と、球体ガントリ21の構成要素の移動と患者内の標的への照射とを制御する制御器とを備える後方ハウジング26が、トルクモータ34によって球体ガントリ21と共に縦方向に回転し、水平位置と垂直位置の間で球体ガントリ21と共に旋回する。縦方向回転の軸を旋回させる能力は、頭部/頸部領域と胸部が、例えば単一の機械で治療されるのを可能にする。縦方向の回転心棒と電源および制御器を含む後方ハウジング26とを支持する構造体は、例えば2つの支持柱36によって支持された回転可能な心棒に取り付けられる。2つの支持柱36は、後方ハウジング26が支持柱36同士間で揺動するのに充分に離隔され、それによって球体ガントリ21の縦軸が、例えば頭部/頸部と胸部を治療するためにそれぞれ水平方向または垂直方向のいずれにもなることを可能にする。
【0053】
患者は「頭部が中に入った」または「脚が中に入った」配向のいずれでも治療されることが可能である。したがって、球の原点位置(アイソセンター)から正に後端までの距離が、体中の標的への照射を可能にするために、実質的に約1メートルを超える必要はない。患者の軸と実質的に平行なビームの方向を使用することは望まれないことから、最小の横方向角度、φは約40°(球体ガントリの中心横断面を超えたところでは50°)である。これは、
図10に示される球体ガントリ21の閉鎖された後端内で追加の空間が作られるのを可能にする。
図10は、球体ガントリ21の後端の凹所が、前立腺癌などの治療で「脚が中に入った」配向で治療される際に患者の脚用の空間を提供する、球体ガントリ21の一実施形態を示す。
【0054】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態について説明する目的でのみ使用されており、別の意味で制限することは意図されていない。例えば、用語「前方」と「後方」は、相対的な位置を説明する目的で使用されており、球体ガントリの配向を制限することは意図されていない。
【0055】
本明細書内で言及される全ての特許、特許出願刊行物、雑誌記事、教本、および他の刊行物は、本発明が関係する技術分野の技術者のレベルを示すものである。全てのこのような刊行物は、あたかも個別の刊行物のそれぞれが参照によりここに組み込まれるように特異的かつ個別的に示されているかのように、同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
本明細書で事例的に説明された本発明は、本明細書で具体的に開示されていない要素または限定事項がない状態で適切に実施されることができる。このように、例えば、用語「を備える」、「から基本的に構成される」、および「から構成される」のうちのいずれかが本明細書で記載されたる度に、それは他の2つの用語のうちのいずれとも置き換えられることができる。同様に、単数を表す冠詞形態「a」、「an」、「the」は、明らかに文脈にそうではない意味が示される以外は、複数のものも含む。このように、例えばここで言う「本方法」には、本明細書で説明されたタイプ、かつ/または本開示を読むと当業者に明らかであるタイプの1つもしくは複数の方法および/またはステップが含まれる。
【0057】
ここで使用された用語および表現は、説明のための用語として使用されるのであって、限定するための用語として使用されるのではない。この点で、特定の用語が本明細書で定義され、本明細書の別のところで違うように説明もしくは考察されるとことでは、全てのそのような定義、既述、および考察は、そのような用語に帰するものである旨意図されている。またそのような用語および表現の使用には、ここに示され、説明された特色のいかなる均等物、またはその部分も除外する意図はない。
【0058】
言うまでもなく、ここに請求される発明の範囲内で様々な修正形態が可能である。このように、理解されるべきは、好ましい実施形態および任意選択の特色の文脈で本発明がここで具体的に開示されていても、当業者は、本明細書で開示される概念の修正形態および変化形態を用いることができる。そのような修正形態および変化形態も、添付の請求項によって規定される本発明の範囲に入るものと考えられる。