(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、ペニシリウム オキサリクム(Penicillium oxalicum)、タラロマイセス エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、タラロマイセス デュポンティ(Talaromyces duponti)、タラロマイセス サーモフィリウス(Talaromyces thermophilius)、クロストリジウム サーモアミロリティクム(Clostridium thermoamylolyticum)およびクロストリジウム サーモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)からなる群から選択される菌株に由来する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
酵母で膨らませたベーカリー製品を形成するのに有用であり、かつデンプンの源、酵母および水を含む生地であって、上記デンプンが糊化する温度で活性を示し、85℃で1分間〜30分間の半減期(T1/2)を有する熱的に安定なアミログルコシダーゼ、および70℃で1分間〜20分間の半減期(T1/2)を有する生デンプン分解アミログルコシダーゼ、任意的に老化防止性アミラーゼを含むことを特徴とする生地。
上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、ペニシリウム オキサリクム(Penicillium oxalicum)、タラロマイセス エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、タラロマイセス デュポンティ(Talaromyces duponti)、タラロマイセス サーモフィリウス(Talaromyces thermophilius)、クロストリジウム サーモアミロリティクム(Clostridium thermoamylolyticum)およびクロストリジウム サーモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)からなる群から選択される菌株に由来する、請求項7または8に記載の生地。
【発明を実施するための形態】
【0013】
より詳細には、本発明は、新規な生地配合物ならびにこれらの配合物を用いて、酵母で膨らませたベーカリー製品および他のベーカリー製品を作製する新規な方法に関する。これらの製品は、パン、プレッツェル、イングリッシュマフィン、バンズ、ロールパン、トルティーヤ(トウモロコシおよび穀粉の両方)、ピザ生地、ベーグルおよびクランペットからなる群から選択されるものを包含する。
【0014】
本発明の方法において、上記特定の製品のための材料が一緒に混捏される。典型的な材料およびそれらの好ましい範囲は、表1に記述されている。
【0016】
特に好ましい実施形態では、該添加糖は約0重量%であり、別の実施形態では、該添加糖は0重量%である。
【0017】
MANUおよびAGUは、それぞれ、アミラーゼおよびアミログルコシダーゼの酵素活性の尺度である。本明細書において使用されるとき、1単位のMANU(Maltogenic Amylase Novo Unit)は、0.1Mクエン酸緩衝液1ml当たり10mgのマルトトリオース(Sigma M8378)基質の濃度で、pH5.0、37℃にて30分間に、毎分1μmolのマルトースを放出するのに必要とされる酵素の量と定義される。1単位のAGU(Amyloglucosidase Unit)は、0.1M酢酸緩衝液中に100ミリモルのマルトースの基質濃度で、pH4.3、37℃にて、毎分1μmolのマルトースを加水分解するのに必要とされる酵素の量と定義される。いずれの場合にも、μmolで表されるマルトースの量は、最終溶液を標準マルトース溶液と比較することによって決定されることができる。
【0018】
表1の材料に加えて、上記生地は、デンプンの源、例えば、小麦粉、ライ麦粉、オート麦粉、大麦粉、ライ小麦粉、米粉、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシ粉およびジャガイモ粉からなる群から選択されるものを含む。上記デンプンの源は、典型的には、100重量%とみなされる該穀粉の総重量に対して、約50%〜約95重量%、好ましくは約65%〜約85重量%のレベルのデンプンをもたらすように含まれる。穀粉が該デンプンの源の場合には、これは、典型的には、100重量%とみなされる該生地の総重量に対して、約40%〜約70重量%、好ましくは約50%〜約60重量%の穀粉レベルを結果する。
【0019】
使用される酵母は、酵母で膨らませたベーカリー製品中に慣用的に使用されている任意の酵母であることができ、クリーム状酵母および圧搾酵母が好ましい。適した生地強化剤は、ステアロイル乳酸ナトリウム、エトキシル化モノグリセリド、モノ−およびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル(DATEM)ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるものを含む。
【0020】
好ましい防かび剤は、プロピオン酸カルシウムおよび/またはナトリウム、ソルビン酸カリウム、酢、レーズン果汁濃縮物ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるものを含む。好ましい油脂は、大豆油、部分的に水素添加された大豆油、ラード、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、菜種油およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
適した穀粉改良剤は、アスコルビン酸、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、アゾジカーボンアミド、過酸化カルシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるものを含む。従来の任意の乳化剤が利用されることができるが、好ましい乳化剤は、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(典型的にはポリソルベート60と称される)ならびにモノグリセリド、例えば粉末および水和モノグリセリド、クエン酸モノグリセリドおよびコハク酸モノグリセリドを含む。
【0022】
熱的に安定なアミログルコシダーゼ
上記生地はまた、熱的に安定なアミログルコシダーゼを含む。本発明に利用される熱的に安定なアミログルコシダーゼは、焼成プロセス中にデンプンが糊化するときに活性であり、かつデンプンに作用するのに利用できるように選択されるべきである。すなわち、焼成前に生地に存在するデンプンの大部分は、酵素によってすぐには作用されないデンプン粒の形態で存在する。生デンプンは、約65℃で糊化し始め、典型的にはおよそ85℃までに完全に糊化される。糊化デンプンは、アミログルコシダーゼによってより容易に加水分解されてグルコースになる。したがって、選択された熱的に安定なアミログルコシダーゼは、生地がパンに移行する際に、生地中のデンプンに作用することができるように十分に熱安定性であるべきである(すなわち、それは、約65℃〜約85℃で活性であるべきであり、または少なくとも部分的に活性であるべきである)。同時に、完全に焼成された製品における残りのアミログルコシダーゼ活性は、その貯蔵期間中に最終製品の品質に負の影響を及ぼし得るので、選択された熱的に安定なアミログルコシダーゼは、焼成終了(すなわち、約95℃〜約100℃)までに不活性化されることが好ましい。
【0023】
したがって、本発明に使用するための熱的に安定なアミログルコシダーゼは、約85℃で約1分間〜約30分間、好ましくは約85℃で約3分間〜約20分間、より好ましくは約85℃で約5分間〜約15分間の半減期(T
1/2)を有する。これらの値は、pH4.5で、0.12mM CaCl
2中で得られる。
【0024】
一実施形態では、好ましい熱的に安定なアミログルコシダーゼは、pH約4.5でアッセイされるとき、少なくとも約60℃、好ましくは約60℃〜約85℃、より好ましくは約70℃〜約85℃、さらに好ましくは約75℃〜約80℃の最適温度を有する。本明細書において使用されるとき、酵素の「最適温度」は、指定されたアッセイ条件で酵素活性が最も高い温度を指す。
【0025】
一実施形態では、利用される熱的に安定なアミログルコシダーゼは、85℃にて約15分のインキュベーション後に、約25%〜約90%、好ましくは約35%〜約70%、より好ましくは約35%〜約60%の残存酵素活性を有する。調理されたパンへの負の影響を避けるために、選択された熱的に安定なアミログルコシダーゼは、0.12mM CaCl
2を含むpH5.0の緩衝液中、100℃にて約3分後に、約15%未満、好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満の残存酵素活性を有する。本明細書において使用されるとき、「残存酵素活性」は、特定の酵素がこの段落に記述されている条件に供された後に残存している酵素活性(すなわち「最終活性」(上記で定義されているMANUまたはAGUで表される))である。「%残存酵素活性」は、特定の酵素がこの段落に記述されている条件に供された後に残存している酵素活性(すなわち「最終酵素活性」(上記で定義されているMANUまたはAGUで表される))を、これらの条件に供される前の同酵素の酵素活性(すなわち「初期酵素活性」(先と同様に、MANUまたはAGUで表される))と比較することによって算出される。すなわち、
【0027】
一実施形態では、利用される熱的に安定なアミログルコシダーゼは、1mM CaCl
2でアッセイされるとき、約3.0〜約7.0、好ましくは約4.0〜約6.0、より好ましくは約4.5〜約5.5の最適pH(すなわち、指定されたアッセイ条件で酵素活性が最も高いpH)を有する。
【0028】
一実施形態では、好ましい熱的に安定なアミログルコシダーゼは、約3.0〜約7.0、好ましくは約4.0〜約6.0、より好ましくは約4.5〜約5.5のpH安定性範囲を有する。pH安定性は、特定の酵素を、指定されたpHで37℃にて20時間、最初にインキュベートすることによって測定される。次いで、保持された酵素活性がアッセイされ、そして最初の酵素活性と比較される。好ましい熱的に安定なアミログルコシダーゼは、上記で言及されたpH安定性範囲において、その最初の活性の少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは約95%〜100%を保持する。
【0029】
本発明に使用するのに適した熱的に安定なアミログルコシダーゼの特定の例は、下記:
(a)ペニシリウム オキサリクム(Penicillium oxalicum)(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、Novozymesによる国際公開第2011/127802号に記載されているPo−AMG);
(b)タラロマイセス エメルソニイ(Talaromyces emersonii)(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、国際公開第2009/028448号に記載されているもの);
(c)タラロマイセス デュポンティ(Talaromyces duponti)(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第4,247,637号に記載されているもの);
(d)タラロマイセス サーモフィリウス(Talaromyces thermophilius)(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第4,587,215号明細書に記載されているもの);
(e)クロストリジウム サーモアミロリティクム(Clostridium thermoamylolyticum)(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、欧州特許第135,138号に記載されているもの);および
(f)クロストリジウム サーモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる、国際公開第1986/001,831号に記載されているもの)
からなる群から選択される菌株から得られる(すなわち、上記菌株の1種に見出されるDNA配列によってコードされる)アミログルコシダーゼを含む。
【0030】
上記は、いくつかの好ましい熱的に安定なアミログルコシダーゼを記述しているが、上記の特性を満たす任意の熱的に安定なアミログルコシダーゼが、本発明で働き得る。これは、任意の天然源由来のアミログルコシダーゼおよび遺伝子改変を通じて作られる変形を含む。
【0031】
生デンプン分解アミログルコシダーゼ
好ましい実施形態では、生デンプン分解アミログルコシダーゼが、生地中に存在する。生デンプン分解アミログルコシダーゼは、生デンプン分子に作用する。一実施形態では、この生デンプン分解アミログルコシダーゼは、好ましくは、上述した最初のアミログルコシダーゼよりも低い最適温度を有する。また、この生デンプン分解アミログルコシダーゼは、適度に熱的に安定であることのみを必要とする。すなわち、それは、生地温度がデンプンの糊化温度より高いときに、その活性の多くを失いうる。好ましい実施形態では、糖が、生デンプン分解アミログルコシダーゼによって、生地中においてのみ生成され、焼成中には生成されない。すなわち、生デンプン分解酵素(例えばAMG 300およびAMG 1100の名称で販売されているもの)は、デンプンが糊化する温度で、それらの活性の多くを失う。
【0032】
好ましい生デンプン分解アミログルコシダーゼは、約70℃まで熱安定性を有するが、好ましくは70℃を超えるとかなり急速に活性を失う。したがって、本発明に使用するための好ましい生デンプン分解アミログルコシダーゼは、約70℃で約1分間〜約20分間、好ましくは約70℃で約3分間〜約15分間、より好ましくは約70℃で約3分間〜約10分間の半減期(T
1/2)を有する。好ましくは、利用される生デンプン分解アミログルコシダーゼは、70℃にて約15分後に、少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは約10%〜約20%の残存活性を有する。別の実施形態では、該生デンプン分解アミログルコシダーゼは、pH約4.5で、約70℃未満、好ましくは約65℃未満、より好ましくは約40℃〜約65℃、より好ましくは約40℃〜約60℃、さらに好ましくは約45℃〜約55℃の最適温度を有する。
【0033】
適した生デンプン分解アミログルコシダーゼは、国際公開第2012/088303号およびPurification and Properties of a Thermophilic Amyloglucosidase from Aspergillus niger, W. Fogarty et.al., Eur J Appl Microbiol Biotechnol (1983) 18:271-278に開示されており、これらは参照によって本明細書に組み込まれる。アスペルギルス(Aspergillus)から産生されるものが好ましく、特に好ましいものは、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)からなる群から選択される菌株から得られるもの(例えば、Novozymes、Denmarkによって、AMG(登録商標)1100の名称で販売されているもの)を含む。
【0034】
老化防止性アミラーゼ
別の実施形態では、細菌アミラーゼまたは老化防止性アミラーゼが含まれる。焼成中にデンプン粒が糊化されるとき、老化防止性アミラーゼによるデンプンの加水分解がさらに一層効果的に起こるため、上記アミラーゼは、約80℃〜約90℃で不活化されるものであることが好ましい。最も好ましい老化防止性アミラーゼは、マルトース生成(maltogenic)アミラーゼであり、より好ましくはマルトース生成α−アミラーゼであり、さらにより好ましくはマルトース生成α−エキソアミラーゼである。そのようなアミラーゼの最も好ましいものは、Novozymes A/SによってNOVAMYLの名称で販売されており、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第RE38,507号に記載されている。このマルトース生成アミラーゼは、バチルス(Bacillus)菌株NCIB 11837によって産生可能であり、またはバチルス菌株NCIB 11837から得られるDNA配列によってコードされるものである(上記マルトース生成アミラーゼは、米国特許第4,598,048号および米国特許第4,604,355号に開示されており、これらの内容は参照によって本明細書に組み込まれる)。本方法で使用されうる別のマルトース生成アミラーゼは、バチルス菌株NCIB 11608によって産生可能なマルトース生成β−アミラーゼである(欧州特許第234858号明細書に開示されており、この内容は参照によって本明細書に組み込まれる)。本発明に使用するための、適した別の老化防止性酵素は、DuPont Daniscoから、POWERFresh(登録商標)G4およびPOWERFresh(登録商標)G+の名称で入手可能である。加えて、米国特許出願公開第2009/0297659号明細書(参照によって本明細書に組み込まれる)が、適したアミラーゼを開示している。
【0035】
マルトース生成アミラーゼに加えて、本発明に含まれることができる他の酵素のいくつかは、真菌アミラーゼ、枯草菌(Bacillus subtilis)由来の細菌α−アミラーゼ、ヘミ−セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、アスパラギナーゼおよびセルラーゼからなる群から選択されるものを含む。
【0036】
以上に言及されているように、いくつかの実施形態では、本発明は、熱的に安定なアミログルコシダーゼのみを利用する。好ましい実施形態では、本発明は、熱的に安定なアミログルコシダーゼに加えて、生デンプン分解アミログルコシダーゼまたは老化防止性アミラーゼを利用する。特に好ましい実施形態では、本発明は、熱的に安定なアミログルコシダーゼ、生デンプン分解アミログルコシダーゼおよび老化防止性アミラーゼを利用する。言うまでもなく、上記実施形態は、使用者の好みおよび調製される特定の製品に応じて選択されることができる。
【0037】
焼成された製品を作製する方法
本発明による生地を形成する際に、上記の材料は、「ノータイム生地方法(no−time dough process)」を使用して1段階で一緒に簡単に混捏されることができ、または上記材料は「中種生地方法(sponge and dough process)」に供されることができる。「ノータイム生地方法」では、すべての材料が同時にミキシングボウルに加えられ、約5〜約15分間混捏されて、混捏された生地を形成する。
【0038】
「中種生地」方法では、穀粉の一部(例えば、全穀粉の55〜75質量%)が、水、酵母および好ましくは(利用される場合には)生地強化剤と混捏され、そして約3時間〜約4時間の期間発酵される。こうして「中種」を形成する。この期間の後に、残りの材料が、上記中種と約2分〜約10分間混捏されて、混捏された生地を形成する。該混捏された生地は、好ましくは、約5分〜約15分間休まされた後、所望のサイズの片に切り分けて成形され、そして焼成皿に置かれる。次いで、該生地は、好ましくは、約40℃〜約50℃の温度で、約65%〜約95%の相対湿度で、約50分〜約70分の期間、最終発酵される。
【0039】
最終発酵(proofing)中、存在する酵素が、デンプンに作用し始める。熱的に安定なアミログルコシダーゼと同様に、存在する任意の生デンプン分解アミログルコシダーゼが、生デンプンに作用し始め、いくらかのデンプンをグルコースに転化する。
【0040】
上記実施形態にかかわらず、糖(特にフルクトースでない糖)は、焼成プロセス中に(および好ましくは最終発酵中にも)、利用される酵素ブレンドによって生成される。すなわち、出発材料または生地は、何らかの「初期量」の糖を含有する。その初期量は、例えば、添加糖なしの配合物の場合のように、ゼロであることができる。または、その初期量は、以上に記載されているように、いくらか低い糖量(例えば、1〜3%)もしくは10%という高い量であることができる。特に、糖の初期量は、約10重量%以下、好ましくは約3重量%未満、より好ましくは約1重量%未満である。特に好ましい実施形態では、糖の初期量は、約0重量%、より特には0重量%である。該初期量にかかわらず、焼成後に最終製品は、上記初期量を超える最終量の糖の合計を有する。本発明の目的のために、糖は、スクロース、グルコース、フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、ハチミツ、ブラウンシュガー、ラクトース、ガラクトース、メープルシロップおよび米飴を含むが、糖アルコールまたは人工甘味材料を含まないことが理解される。
【0041】
より詳細には、いくつかの実施形態では、本発明の初期生地(すなわち最終発酵の前)は、(任意の穀粉もしくはデンプンに生来見出される少量の糖、または使用される任意の穀粉もしくはデンプンのタイプ故にもともと存在している少量の糖を超える量の)糖をほとんどまたは全く含有せず、特に、フルクトースをほとんどまたは全く含有しない(すなわち、100重量%とみなされる上記初期生地の総重量に対して各々、約0.2重量%未満、好ましくは約0.1重量%未満、好ましくは約0重量%、好ましくは0重量%である)。一実施形態では、上記初期生地はまた、グルコースをほとんどまたは全く含有しない(初期生地中のフルクトースについて上記したのと同一の低い量である)。最終発酵中、生デンプン分解アミログルコシダーゼおよび熱的に安定なアミログルコシダーゼの両方は、ある特定の量のデンプンをグルコースに転化する。生地が最終発酵された後、典型的には、100重量%とみなされる最終発酵された生地の総重量に対して、少なくとも約1重量%、好ましくは約1〜約2重量%、より好ましくは約2〜約3重量%の糖の合計レベル(すなわち、グルコース、フルクトースおよびマルトースの合計)が存在する。該最終発酵された生地中のグルコースレベルは、典型的には、100重量%とみなされる該最終発酵された生地の総重量に対して、少なくとも約1重量%、好ましくは約1〜約2重量%、より好ましくは約2〜約3重量%である。すなわち、最終発酵後に生地中に存在するグルコースは、一般に、100重量%とみなされる該最終発酵された生地の総重量に対して、0%(もしくは0%に近い)から少なくとも約1%、好ましくは約1〜約2%、より好ましくは約2〜約3重量%に増加する。少なくともいくらかの量のグルコースが、初期材料混合物中に存在する(すなわち、初期材料中に存在するグルコースが0%を超えるが、それでもなお、上記した範囲内である)場合には、最終発酵された生地中に存在するグルコースの合計は、最終発酵前の生地中に存在するグルコース量の少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは約10〜約15倍の量である。有利には、上述したフルクトースレベルは、実質的に変化しないままである。すなわち、最終発酵された生地は依然として、100重量%とみなされる該最終発酵された生地の総重量に対して、約0.2重量%未満のフルクトース、好ましくは約0.1重量%未満のフルクトース、より好ましくは約0重量%のフルクトースを有する。
【0042】
最終発酵後、次いで、作製される製品のタイプに必要な時間および温度(例えば、約190℃〜約220℃で約20分〜約30分)を使用して焼成され得る。最初の材料中に含まれた任意の生デンプン分解アミログルコシダーゼを含む、任意の熱的に安定でない酵素は、最終発酵中にそれらの活性形態でまだ存在するが、それらは焼成中に不活性化され始めて、酵素骨格を残す。しかし、初期材料中に含まれる(1種または複数の)熱的に安定なアミログルコシダーゼおよび老化防止性アミラーゼは、焼成が開始されるときに、その活性形態でなおも存在する。したがって、焼成中にデンプン粒が糊化するときに、熱的に安定なアミログルコシダーゼは、糊化デンプンを加水分解し続けて、グルコースをより高量でさらに生成することができ、一方、老化防止性アミラーゼは、糊化デンプンを加水分解し続けて、老化防止効果を完成製品に残し、また、マルトース、他のオリゴ糖およびデキストリンを生成する。しかし、焼成サイクルの終了までに、熱的に安定なアミログルコシダーゼおよび老化防止性アミラーゼの両方共が不活性化される。
【0043】
本発明は、これまで論じてきたものに加えて、いくつかの利点をもたらす。本発明は、先行技術の製品におけるよりも有意に少ない酵母を使用することを結果する。すなわち、先に言及された本発明の酵素配合物を使用することは、糖が初期材料に加えられかつ本発明の酵素配合物を含まない材料から形成された同様の製品と比較されるとき、少なくとも約15%、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは約20%〜約35%の酵母低減をもたらす。例えば、初期材料中に添加糖が0%である生地が、本発明の酵素配合物と組み合わせて利用されると、8%の添加糖が初期材料中に含まれかつ本発明の酵素配合物を含まない材料から形成された同様の製品と比較されるとき、上記の酵母低減が達成される。
【0044】
本発明の追加の利点は、老化防止性マルトース生成アミラーゼの機能性の増加である(クラム硬さとして測定される)。すなわち、添加糖の多くは、老化防止性マルトース生成アミラーゼを阻害するところ、熱的に安定なアミログルコシダーゼの使用によって、より低い量の糖、例えばスクロースが出発生地に加えられることが可能になり、そのことが老化防止性アミラーゼの性能を改善する。初期材料中に本発明の酵素配合物を含みかつ添加糖が0%である生地が、8%の添加糖が初期材料中に含まれ、かつ本発明の酵素配合物を含まないまたは現在の市場で標準的な老化防止性酵素製品、例えばCorbionからのUltra Fresh Premium 250を含む材料から形成された同様の製品と比較されるとき、クラム硬さを少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは約90%〜約100%減少させることが観察されており、その両方が
図7および
図11に説明されている。
【0045】
加えて、初期生地を形成する際に、添加糖がほとんどまたは全く含まれなかった(それ故に、フルクトースがほとんどまたは全く含まれなかった)にもかかわらず、本発明の酵素配合物を利用して形成された最終の焼成された製品は、官能試験において8%添加糖(例えばスクロース)対照製品と比較して、同様の甘味があるまたはより甘味がある。すなわち、上記焼成された製品は、典型的には、100重量%とみなされる最終の焼成されたベーカリー製品の総重量に対して、少なくとも約5重量%、好ましくは約6〜約12重量%、より好ましくは約8〜約10重量%の糖の合計レベル(主に、フルクトースを含有しないグルコースおよびマルトース)を有する。初期材料中に少なくともいくらかの糖が存在する(すなわち、初期材料中に糖の量が0%を超える)場合には、最終の焼成された製品中に存在する糖の合計は、一般に、初期材料混合物中に存在する糖の合計の少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、より好ましくは約16〜約20倍の量である。
【0046】
最終の焼成された製品中のグルコースレベルは、典型的には、100重量%とみなされるベーカリー製品の総重量に対して、少なくとも約3重量%、好ましくは約3〜約10重量%、より好ましくは約4〜約6重量%である。すなわち、初期材料中に少なくともいくらかの量のグルコースが存在する場合には、最終の焼成された製品における生地中に存在するグルコースは、一般に、初期材料配合物中に存在するグルコース量の少なくとも約15倍、好ましくは少なくとも約20倍、より好ましくは約20〜約30倍の量である。
【0047】
この場合も同様に、および有利には、上述したフルクトースレベルは、実質的に変化しないままである。すなわち、最終の焼成された製品は、100重量%とみなされるベーカリー製品の総重量に対して、約1重量%未満のフルクトース、好ましくは約0.5重量%未満のフルクトース、より好ましくは約0重量%未満のフルクトースを有する。このことは、フルクトース消費に関連する健康上のリスクが回避されるので、先行技術に対して有意な利点を提示することが理解されるだろう。
【0048】
以上に論じられているように、一実施形態では、本発明は、熱的に安定なアミログルコシダーゼを老化防止性(マルトース生成)アミラーゼと一緒に使用することを伴う。熱的に安定なアミログルコシダーゼおよび老化防止性アミラーゼは共に、同様の熱的安定性を有し、また、デンプン粒が糊化した後に活性なままであるため、それらは焼成中に相乗的に働く。有利には、熱的に安定なアミログルコシダーゼの存在は、焼成された製品の甘味を増加するのみならず、クラム粘着性を減少させ、クラムレジリエンスを増加する。本発明はさらに、高価な老化防止性アミラーゼのレベルが低減されることを可能にすると共に、テクスチャーを改善し、さらに、甘味があるパンを達成することができる。すなわち、本発明に従って形成されたベーカリー製品は、低減された硬さ、低減された粘着性および増加されたクラムレジリエンス故に、改善されたクラムテクスチャーを有するのみならず、これらの製品は、熱的に安定なアミログルコシダーゼおよび老化防止性アミラーゼによって生成された少量の糖、例えばグルコースおよびマルトース故に、改善された味および香りをも有する。
【0049】
上記実施形態にかかわらず、本発明によるベーカリー製品は、下記の試験方法の項に記載された硬さ(すなわち、クラム圧縮性)試験に供されるとき、7日目に約250g未満の力、好ましくは約200g未満の力、さらに好ましくは約160g未満の力の結果を与える。さらに、同じ項に記載された粘着性試験に供されるとき、本発明によるベーカリー製品は、貯蔵期間7日目に測定されると、約5g・mm〜約25g・mm、好ましくは約5g・mm〜約20g・mm、より好ましくは約10g・mm〜約20g・mmの値を与える。達成されるレジリエンスパーセントは、貯蔵期間7日目に測定されるとき、少なくとも約28%、好ましくは約30%〜約40%、より好ましくは約32%〜約37%である。最後に、最終の焼成された製品がパンである場合には、比容は、454gの1塊のパンにおいて、少なくとも約5.5g/cc
3、好ましくは少なくとも約6.0g/cc
3、より好ましくは少なくとも約6.5g/cc
3である。体積は、Stable Micro Systemsによって製造されたVolScanレーザー体積計によって決定される。
【0050】
本発明は、特に、以下の条項における主題に関するものであり、それにまたはそれによって限定されない。以下の条項に提示されている実施形態は、指示通りに組み合わされ得、また、本明細書における他の事項とおよび特許請求の範囲と組み合わされ得る。
【0051】
1.ベーカリー製品を形成する方法であって、
酵母、
初期量の糖、
デンプンの源、
上記デンプンが糊化する温度で活性を示す熱的に安定なアミログルコシダーゼ;ならびに
生デンプン分解アミログルコシダーゼ、
老化防止性アミラーゼ、および
それらの混合物
からなる群から選択される酵素
を含む生地を用意すること、そして
上記生地を、上記ベーカリー製品を得るのに十分な時間および温度で焼成すること、ここで、上記ベーカリー製品の糖の最終量は、糖の上記初期量より多い
を含む方法。
【0052】
2.糖の上記初期量が、100重量%とみなされる上記生地の総重量に対して約1.0重量%未満であり、
糖の上記最終量が、100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の総重量に対して少なくとも約5.0重量%であり、かつ
上記ベーカリー製品が、100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の総重量に対して、約0.5重量%未満のフルクトースを含む、
条項1に記載の方法。
【0053】
3.上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、約65℃〜約85℃の温度で活性である、条項1または2に記載の方法。
【0054】
4.上記酵素がマルトース生成アミラーゼであり、上記ベーカリー製品が、貯蔵期間7日目に測定されるとき、約5g・mm〜約25g・mmの粘着性を有する、条項1〜3のいずれか1に記載の方法。
【0055】
5.上記デンプンの源が穀粉である、条項1〜4のいずれか1に記載の方法。
【0056】
6.上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、少なくとも約60℃の最適温度を有する、条項1〜5のいずれか1に記載の方法。
【0057】
7.上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、約85℃で約1分間〜約30分間の半減期(T
1/2)を有する、条項1〜6のいずれか1に記載の方法。
【0058】
8.上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、ペニシリウム オキサリクム(Penicillium oxalicum)、タラロマイセス エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、タラロマイセス デュポンティ(Talaromyces duponti)、タラロマイセス サーモフィリウス(Talaromyces thermophilius)、クロストリジウム サーモアミロリティクム(Clostridium thermoamylolyticum)およびクロストリジウム サーモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)からなる群から選択される菌株に由来する、条項1〜7のいずれか1に記載の方法。
【0059】
9.上記酵素が、約70℃で約1分間〜約20分間の半減期(T
1/2)を有する生デンプン分解アミログルコシダーゼである、条項1〜8のいずれか1に記載の方法。
【0060】
10.上記生デンプン分解アミログルコシダーゼが、アスペルギルス(Aspergillus)から産生される、条項1〜9のいずれか1に記載の方法。
【0061】
11.糖の上記初期量が、100重量%とみなされる上記生地の総重量に対して約3重量%未満である、条項1〜10のいずれか1に記載の方法。
【0062】
12.上記初期量が0%超である、条項10に記載の方法。
【0063】
13.糖の上記最終量が、上記初期量の糖の少なくとも約10倍である、条項1〜12のいずれか1に記載の方法。
【0064】
14.糖の上記最終量が、100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の重量に対して少なくとも約5重量%である、条項1〜13のいずれか1に記載の方法。
【0065】
15.上記ベーカリー製品が、100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の重量に対して、約1重量%未満のフルクトースを含む、条項1〜14のいずれか1に記載の方法。
【0066】
16.上記ベーカリー製品が、100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の重量に対して、約0重量%のフルクトースを含む、条項1〜15のいずれか1に記載の方法。
【0067】
17.上記焼成前に、上記生地を最終発酵させることをさらに含む、条項1〜16のいずれか1に記載の方法。
【0068】
18.上記生地が、上記最終発酵前に初期量のグルコースを有し、上記最終発酵後に最終量のグルコースを有し、上記最終量が上記初期量の少なくとも約5倍である、条項17に記載の方法。
【0069】
19.上記生地が、上記最終発酵前に、100重量%とみなされる上記最終発酵前の生地の総重量に対して、0重量%超のグルコースを有する、条項17または18に記載の方法。
【0070】
20.上記生地が、上記最終発酵後に最終量のグルコースを有し、上記最終量が、100重量%とみなされる上記最終発酵後の生地の総重量に対して、少なくとも約1.0重量%である、条項17〜19のいずれか1に記載の方法。
【0071】
21.上記ベーカリー製品が、パン、イングリッシュマフィン、プレッツェル、バンズ、ロールパン、トルティーヤ、ピザ生地、ベーグルおよびクランペットからなる群から選択される、条項1〜20のいずれか1に記載の方法。
【0072】
22.上記ベーカリー製品が、貯蔵期間7日目に、約250g未満の力の硬さを有する、条項1〜21のいずれか1に記載の方法。
【0073】
23.上記ベーカリー製品が、貯蔵期間7日目に測定されるとき、少なくとも約28%のレジリエンスパーセントを有する、請求項1から22に記載の方法。
【0074】
24.酵母で膨らませたベーカリー製品を形成するのに有用であり、かつデンプンの源、酵母および水を含む生地であって、
上記デンプンが糊化する温度で活性を示す熱的に安定なアミログルコシダーゼ、ならびに
生デンプン分解アミログルコシダーゼ、
老化防止性アミラーゼ、および
それらの混合物
からなる群から選択される酵素
を含むことを特徴とする生地。
【0075】
25.上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、約65℃〜約85℃の温度で活性である、条項24に記載の生地。
【0076】
26.上記デンプンの源が穀粉である、条項24〜25のいずれか1に記載の生地。
【0077】
27.上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、少なくとも約60℃の最適温度を有する、条項24〜26のいずれか1に記載の生地。
【0078】
28.上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、約85℃で約1分間〜約30分間の半減期(T
1/2)を有する、条項24〜27のいずれか1に記載の生地。
【0079】
29.上記熱的に安定なアミログルコシダーゼが、ペニシリウム オキサリクム(Penicillium oxalicum)、タラロマイセス エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、タラロマイセス デュポンティ(Talaromyces duponti)、タラロマイセス サーモフィリウス(Talaromyces thermophilius)、クロストリジウム サーモアミロリティクム(Clostridium thermoamylolyticum)およびクロストリジウム サーモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)からなる群から選択される菌株に由来する、条項24から28のいずれかに記載の生地。
【0080】
30.上記酵素が、約70℃で約1分間〜約20分間の半減期(T
1/2)を有する生デンプン分解アミログルコシダーゼである、条項24〜29のいずれか1に記載の生地。
【0081】
31.上記生デンプン分解アミログルコシダーゼが、アスペルギルス(Aspergillus)から産生されたものである、条項24〜30のいずれか1に記載の生地。
【0082】
32.最終発酵されていない生地である、条項24〜31のいずれか1に記載の生地。
【0083】
33.上記最終発酵されていない生地が、100重量%とみなされる上記最終発酵されていない生地の総重量に対して、約3重量%未満の糖を含む、条項32に記載の生地。
【0084】
34.上記最終発酵されていない生地が、100重量%とみなされる上記最終発酵されていない生地の総重量に対して、約0.5重量%未満の糖を含む、条項32または33に記載の生地。
【0085】
35.最終発酵された生地である、条項24〜31のいずれか1に記載の生地。
【0086】
36.上記最終発酵された生地が、100重量%とみなされる上記最終発酵された生地の総重量に対して、少なくとも約1.0重量%の糖を含む、条項35に記載の生地。
【0087】
37.上記最終発酵された生地が、100重量%とみなされる上記最終発酵された生地の総重量に対して、約0.2重量%未満のフルクトースを含む、条項35または36に記載の生地。
【0088】
38.上記最終発酵された生地が、100重量%とみなされる上記最終発酵された生地の総重量に対して、約0重量%のフルクトースを含む、条項35〜37のいずれか1に記載の生地。
【0089】
39.穀粉、酵母および水から形成された、酵母で膨らませたベーカリー製品であって、
デンプンが糊化する温度で活性を示す熱的に安定なアミログルコシダーゼに由来する不活性化された熱的に安定なアミログルコシダーゼ、
100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の総重量に対して少なくとも約5重量%の糖、および
100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の総重量に対して約0.5重量%未満のフルクトース
を含むことを特徴とするベーカリー製品。
【0090】
40.上記不活性化された熱的に安定なアミログルコシダーゼが、約65℃〜約85℃の温度で活性である熱的に安定なアミログルコシダーゼに由来する、条項39に記載のベーカリー製品。
【0091】
41.上記不活性化された熱的に安定なアミログルコシダーゼが、約60℃〜約85℃の最適温度を有する熱的に安定なアミログルコシダーゼに由来する、条項39または40に記載のベーカリー製品。
【0092】
42.上記不活性化された熱的に安定なアミログルコシダーゼが、約85℃で約1分間〜約30分間の半減期(T
1/2)を有する熱的に安定なアミログルコシダーゼに由来する、条項39〜41のいずれか1に記載のベーカリー製品。
【0093】
43.上記不活性化された熱的に安定なアミログルコシダーゼが、ペニシリウム オキサリクム(Penicillium oxalicum)、タラロマイセス エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、タラロマイセス デュポンティ(Talaromyces duponti)、タラロマイセス サーモフィリウス(Talaromyces thermophilius)、クロストリジウム サーモアミロリティクム(Clostridium thermoamylolyticum)およびクロストリジウム サーモヒドロスルフリクム(Clostridium thermohydrosulfuricum)からなる群から選択される菌株に由来する熱的に安定なアミログルコシダーゼに由来する、条項39〜42のいずれか1に記載のベーカリー製品。
【0094】
44.上記糖が、100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の総重量に対して、約6〜約12重量%のレベルで存在する、条項39〜43のいずれか1に記載のベーカリー製品。
【0095】
45.上記ベーカリー製品が、100重量%とみなされる上記ベーカリー製品の総重量に対して、約0重量%のフルクトースを含む、条項39〜44のいずれか1記載のベーカリー製品。
【0096】
46.貯蔵期間7日目に測定されるとき、少なくとも約28%のレジリエンスパーセントを有する、条項39〜45のいずれか1に記載のベーカリー製品。
【0097】
47.貯蔵期間7日目に、約250g未満の力の硬さを有する、条項39〜46のいずれか1に記載のベーカリー製品。
【0098】
48.貯蔵期間7日目に測定されるとき、約5g・mm〜約25g・mmの粘着性を有する、条項39〜47のいずれか1に記載のベーカリー製品。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は、本発明による好ましい方法を記述している。しかし、これらの実施例は、例証として提供されるものであり、その中のいかなる内容も、本発明の全範囲を限定するものとみなされるべきではないことが理解されるべきである。
【0100】
試験方法
テクスチャー分析
パンのテクスチャーは、7日目および14日目に測定された。焼成後、パンは、内部温度が華氏100°になるまで冷まされ(50分)、次いで計量され、体積を測定され、そして温度が華氏72°±華氏2°に制御された部屋に貯蔵された。その時点で、複数ローフのパンが、一度に1ローフずつ、Oliver16ブレードスライサーを用いて25mm±2mmの厚さに薄く切られ、1ポンドの1ローフ当たり10枚を得た。テクスチャープロファイル分析(TPA)手順を使用して、中央の4枚が試験された。測定機器はStable Micro Systemsからのテクスチャーアナライザー(TA−XT2 Texture Analyzer−分解能1gを有するロードセル25kg)であった。この機器を実行するソフトウェアは、Texture Expert Exceed 2.64版であった。テクスチャーアナライザー上でパンのTPAを実行する設定は、下記表の通りである。
【0101】
【表2】
【0102】
理解されるように、当業者は、試験される製品のタイプに基づいて、これらの設定を調整することができる。例えば、距離(mmで表される、試験の深さ)は、試験される製品のタイプに応じて調整されることができる。
【0103】
TA−4プローブ(直径1と1/2インチ(38mm)のアクリル製シリンダー)が使用され、グラフの選択は、X軸上に時間および自動範囲、Y軸上に力および自動範囲となるように設定された。
【0104】
パンの測定手順は、テクスチャーアナライザーの台上に一枚を置き、プローブが上記一枚のほぼ中央で表面から約10mm上に来るように、上記一枚の位置を定め、そして試験プログラムを開始することであった。上記試験によって、粘着性、硬さおよびレジリエンスを定量化するために使用されるグラフを作成した。特に、粘着性または粘着性の値は、第2の曲線の終端に続く負の領域であり、上記一枚からプローブを引き出すのに必要なエネルギーを表している。硬さは、上記一枚の厚さの25%穿孔深さに相当する第1の曲線上の力点である。レジリエンスは、プローブが上記一枚から持ち上げられるときに上記一枚から放出されるエネルギーと、プローブが上記一枚を圧縮するときに上記一枚にかけられるエネルギーとの比である(AACC方法74−09)。
【0105】
糖の抽出および分析
生地およびパンの両方の糖含量は、生地またはパンクラムの20gのサンプルをブレンディングカップ中に計量することによって試験された。次に、蒸留水80gが加えられ、手持ち式ブレンダーが使用されて、上記生地またはクラムを完全に分散させた。上記混合物の約12mlが15ml管に注がれ、そして氷浴上に置かれた。次いで、上記管が4,000rpmで10分間、遠心分離された。次いで、上清が除去され(上記管の中央に透明な溶液が得られることを確実にする)、次いで、2本の微量遠心管(microfuge)に移された。生地の抽出のために、上記上清は、上記微量遠心管中で1分間煮沸され、次いで氷上で冷却された。上記微量遠心管が12,000rpmで10分間、遠心分離された。次いで、得られた上清は、ラベル付きの新しい2本の微量遠心管に移され、それらは糖の分析まで冷凍庫で貯蔵された。
【0106】
サンプル中の糖含量は、Dionex Ultimate 3000 RS HPLCシステム上で、PA10ガードカラム(4×50mm)が付けられたDionex CarboPac PA1カラム(4×250mm)を用いて分析された。使用された電気化学的検出器は、Thermo Scientificの使い捨て電極を備えたDionex ED40であった。HPLCの移動相Aは50mM NaOHであり、移動相Bは200mM NaOHであった。すべての糖サンプルは、0.4μmのフィルターによりろ過された後、HPLCカラムに充填された。
【0107】
実施例1
アミログルコシダーゼの糖生成およびテクスチャー改変
従来の生デンプン分解(「RSD」)アミログルコシダーゼ(AMG 1100(Novozymes(North Carolina)から))が、熱的に安定なアミログルコシダーゼ(Po−AMG(Novozymesから))と、パン焼成におけるそれらの糖生成能およびクラムテクスチャー改変能に関して比較された。標準的な白パン配合物が、以下の方法に従って調製された。
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
アミログルコシダーゼの量は、下記表に示されているように変化させた。
【0111】
【表5】
【0112】
上記材料がHobartミキサーに加えられ、そして低速で1分間、次いで高速で13分間混捏された。ミキサーボウルは、20℃の冷水をミキシングボウルの冷却ジャケットに循環させることによって冷却された。混捏後、該生地は、下記表の加工処理パラメータに従って、木製ベンチ上で10分間休まされ、次いで、分割され、伸ばされ、そして成形された。
【0113】
【表6】
【0114】
次いで、成形された生地片は、ローフパンの中に置かれ、そして目標とされる高さまで、およそ55〜60分間最終発酵された。焼成前に、糖の抽出および分析用に、最終発酵された各生地のサンプルが採取された。焼成後、複数のローフを金属棚の上に置いて60分間冷却し、次いで、貯蔵寿命分析のためにプラスチック製の袋に個々に包装した。上記貯蔵寿命分析は、上述したテクスチャーアナライザーを用いたテクスチャー分析および糖含量分析を含む。
【0115】
図1は、従来のRSDアミログルコシダーゼ(AMG 1100)の糖生成能を、熱的に安定なアミログルコシダーゼ(Po−AMG)と比較している。結果は、熱的に安定なアミログルコシダーゼ(Po−AMG)が、主に、生デンプンが65℃を超える温度で糊化された後にデンプンをグルコースに変換し続ける能力故に、パンにおいてグルコースを生成することにおいてより効果的であることを示した。
図2および
図3は、従来のRSDアミログルコシダーゼ(AMG 1100)のパンテクスチャー改変能を、熱的に安定なアミログルコシダーゼ(Po−AMG)と比較している。結果は、熱的に安定なアミログルコシダーゼ(Po−AMG)は、クラムレジリエンスの増加およびクラム粘着性の低減という点から見て、非常に大きなテクスチャー改変能を有することを明らかに示している。
【0116】
図2に説明されているデータに基づくと、生地中に種々のレベルのPo−AMGを含むことによって、従来の酵素、例えばNovozymesからのAMG 1100が生地中に含まれた材料から形成された同様の製品と比較して、クラムレジリエンスの少なくとも10%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは約20%〜約28%の改善が達成され得る。また、
図3に説明されているように、生地中に種々のレベルのPo−AMGを含めることによって、従来の酵素、例えばNovozymesからのAMG 1100が生地中に含まれた材料から形成された同様の製品と比較して、クラム粘着性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも約25%、より好ましくは約25%〜約79%の低減が達成され得る。
【0117】
実施例2
糖生成能の分析
標準的な白パン配合物が、以下の配合および実施例1に記載されている同一の加工処理パラメータに従って調製された。パン生地のすべてが、1%の添加糖および明記された量のアミログルコシダーゼを用いて作製された。
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
再び、最終発酵された生地のサンプルが収集され、そして糖分析用に急速冷凍された。10gの生地が90gの水に分散されたことを除いては、上述したように、生地の糖が抽出された。結果は、
図4〜
図6に示されている。最終発酵された生地中のおよび焼成されたパン中の糖含量が分析および比較されて、パン作製プロセス中に糖がいつ生成されたかを決定した。
【0121】
【表9】
【0122】
図4〜
図6は、アミログルコシダーゼが使用されて、パン作製プロセス中の種々の段階でグルコースを生成したことを示している。
図4は、RSDアミログルコシダーゼ、例えばAMG 1100が使用されて、生地の混捏段階中および生地の最終発酵段階中に糖を生成することができるのに対して、より熱的に安定なアミログルコシダーゼ、例えばPo−AMGは、実際の焼成段階中に糖を生成することにおいてさらに一層効果的である(
図5および
図6を参照のこと)ことを示している。
図6は、本発明において使用される熱的に安定なアミログルコシダーゼ、例えばPo−AMGのみが、焼成中に有意な量のグルコースを生成したのに対して、従来のアミログルコシダーゼ、例えばアスペルギルスニガー由来のAMG 1100は、デンプン粒が糊化される前に不活性化されたため、焼成中に有意な量のグルコースを生成することができなかったことを示した。しかし、2種の異なるタイプのアミログルコシダーゼの組合せを使用することによって、パン作製プロセスの全体を通じて、糖、最も有意にはグルコースが生成され得、それは、焼成された完成製品中の糖(特にグルコース)含量を最大にし、生地の最終発酵中に酵母が発酵するのに十分なグルコースをもたらし、かつ焼成された完成製品の望ましい甘味を与えることができる。さらに、上記表に示されているように、熱的に安定な老化防止性マルトース生成アミラーゼによって、焼成全体の間に有意な量のマルトースが生成された。また、焼成された製品中の高量のマルトースは、焼成された製品の香りおよび味に貢献した。
【0123】
実施例3
糖含量およびその老化防止性酵素に及ぼす影響
標準的な白パン配合物が、以下の配合に従って調製された。5種の異なる配合物が、配合物に加えられる糖の量、老化防止性酵素(NOVAMYL(登録商標))のレベルおよびアミログルコシダーゼ(Po−AMG)の量を変化させることによって調製され、他の材料は、下記表に示されているように、それに応じて変化させた。
【0124】
【表10】
【0125】
【表11】
【0126】
本発明の酵素組成物を使用することによって、添加糖は、著しく低減され得、またはパンの配合から完全に除去され得、このことが、老化防止性酵素、例えばNOVAMYL(登録商標)の機能性を大いに高める。
【0127】
図7は、生地配合中の添加糖の量を低減することによって、NOVAMYL(登録商標)の老化防止機能が大いに高められることを示している。この焼成試験において、本発明者らは、4%添加糖および穀粉1kg当たり1000AGUのPo−AMGでの、穀粉1kg当たり1000MANUのNOVAMYL(登録商標)は、8%添加糖および穀粉1kg当たり0AGUのPo−AMGを含む、穀粉1kg当たり2000MANUのNOVAMYL(登録商標)と類似のクラム軟化効果を有するのに対して、0%添加糖および穀粉1kg当たり1000AGUのPo−AMGを含む、穀粉1kg当たり1000MANUのNOVAMYL(登録商標)は、8%添加糖および穀粉1kg当たり0AGUのPo−AMGを含む、穀粉1kg当たり2000MANUのNOVAMYL(登録商標)に比べて著しく良好に機能することを示した。
【0128】
図8は、この焼成試験において、老化防止性酵素(NOVAMYL(登録商標))によって生成されたマルトースの量を示す。マルトースは、NOVAMYL(登録商標)作用の最終生成物であり、パン中に生成されるマルトースの量は、酵素の機能性に直接関係している。
図8における試験結果は、生地中の添加糖(すなわち、酵素阻害剤)を低減するまたは除去することによって、より多くのマルトースがNOVAMYL(登録商標)によって生成されることを示しており、これは酵素の活性および機能性の増加と一致する。NOVAMYL(登録商標)の増加された活性は、酵素の老化防止効果を改善するのみならず、パン中の高いマルトースレベルをもたらし、これは、完成されたパンの味および香りに正の貢献をした。
【0129】
この実施例では、本発明の酵素組成物を含み、かつ添加糖を含まないことにより、酵母の添加量が3.0%から2.0%に低減されることができ、これは33%の酵母低減を表している。
【0130】
実施例4
AMGの組合せ
この実施例は、0%添加糖で焼成する際の、通例のRSDアミログルコシダーゼ(AMG 1100)および熱的に安定なアミログルコシダーゼ(Po−AMG)の組合せを検討する。白パン生地が、ノータイム系(no−time system)を使用して調製された。この焼成において、穀粉1kg当たり2000MANUのNOVAMYL(登録商標)3D(これは、NOVAMYL(登録商標)の変種である)が、老化防止性酵素として使用された。熱的に安定なアミログルコシダーゼPo−AMGとともに、AMG 1100がRSDアミログルコシダーゼとして使用された。RSDアミログルコシダーゼ(AMG 1100)のレベルは、穀粉1kg当たり500および1000AGUであったのに対して、熱的に安定なアミログルコシダーゼ(Po−AMG)のレベルは、穀粉1kg当たり545AGUおよび1089AGUで試験された。
【0131】
【表12】
【0132】
【表13】
【0133】
焼成後、貯蔵期間試験用に、パンの複数のローフがプラスチック製の袋の中で貯蔵された。糖分析について、パンクラムが蒸留水で抽出され、糖含量がDionex HPLCシステムで分析された。
図9は、パン中の糖のタイプおよび含量を示す。結果は、老化防止性酵素および両方のタイプのアミログルコシダーゼ(AMG 1100およびPo−AMG)を加えることで、有意な量のグルコースおよびマルトースがパン中に生成されたことを示す。しかし、0%添加糖および本発明の酵素組成物を用いて作製されたそのパン中に、検出できる量のフルクトースは存在しなかった。
図10は、それらのパンサンプルについての、測定された糖含量に基づいて算出された甘さを示した。結果は、酵素(NOVAMYL(登録商標)3Dと2種のAMGとの両方)を加えることで、0%添加糖のパンは、8%の添加糖を用いて作製された対照パンよりも実際に甘味があることを示した。
図11〜
図12は、酵素を加えることで、パンの老化が有意に遅くされたことを示した。これは、クラム硬さの減少およびクラムレジリエンスの増加によって測定され得る。この実施例ではまた、本発明の酵素配合物および0%添加糖を用いて作製された生地は、8%添加糖を含み、本発明の酵素配合物を含まない生地と比較して、30%の酵母低減を可能にした。
【0134】
クラムレジリエンスおよび粘着性に関する改善のいくつか(
図2、3、11および12から算出される)を下記表にまとめる。
【0135】
【表14】
【0136】
実施例5
官能評価
この実施例では、官能知覚のためにパンが調製され、そして評価された。8%の添加糖(この場合にはスクロース)および6.65Promu/kgのNovamyl Pro(これは、NOVAMYL(登録商標)(Novozymesから入手可能)の変種である)を用いて作製された対照パンが、0%の添加糖、33.25PROMU/kgのNovamyl Pro、および生デンプン分解AMG(NovozymesからのGold Crust 3300)とPo−AMGとの組合せを用いて作製された試験パンと比較された。
【0137】
【表15】
【0138】
【表16】
【0139】
図13〜
図16は、46名のパネリストを対象とした、8%の粒状スクロースおよび6.65PROMU/kgのNOVAMYL(登録商標)Proを用いて作製された対照パンと、0%の添加糖、33.25PROMU/kgのNOVAMYL(登録商標)Pro、825AGU/kgのGold Crust 3300および756AGU/kgのPo−AMGを用いて作製された試験パンとの官能比較を示した。結果は、0%添加糖での試験パンは、新鮮さ、軟らかいテクスチャーおよび良好な味において、有意に高いスコアを獲得したことを示した。甘さの評価はまた、試験パンが、対照パンに比べてわずかに甘味があったこと、およびそれが「ちょうど良い」甘さにより近いことを示した。全般的に、パネリストの約90%(46名中41名)が、0パーセントの添加糖で作製した試験パンを選好した(
図15)。また、糖含量分析(
図16)は、添加糖を含まないが、本発明の酵素組成物を含む試験パンがフルクトースを含まなかったことを示した。