特許第6548692号(P6548692)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548692
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】紙おむつの濡れ検出システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/44 20060101AFI20190711BHJP
   A61F 13/42 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   A61F5/44 S
   A61F13/42 F
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-99450(P2017-99450)
(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公開番号】特開2018-192080(P2018-192080A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2018年11月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592094519
【氏名又は名称】ダイオーエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 理
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】別府 幸紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康則
(72)【発明者】
【氏名】海上 尚子
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−029993(JP,A)
【文献】 特開2016−049401(JP,A)
【文献】 特開2011−067620(JP,A)
【文献】 特開2006−349418(JP,A)
【文献】 特開2011−235083(JP,A)
【文献】 特開2006−102039(JP,A)
【文献】 特表2013−534839(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0152442(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44,13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の紙おむつと、
固有情報を有し、外部からの電波を受信して該固有情報を電波として発信すると共に、液体の電波を通過させ難い特性によって、周囲の液体の量が多くなると、受信又は発信する少なくとも一方の電波が遮蔽される、前記複数の紙おむつの各々に設けられた複数のICタグと、
前記複数の紙おむつのICタグに対して電波を発信すると共に、前記複数のICタグの各々から発信される電波を受信して、前記複数のICタグの各々の固有情報を転送する第一通信部を有する読取装置と、
前記読取装置の第一通信部から転送される固有情報を受信する第二通信部と、該第二通信部による前記固有情報の受信の可否に基づいて、前記複数の紙おむつの各々が濡れ状態にあるか否かを示す濡れ情報を外部に通知する通知部とを有する外部機器と、
前記複数の紙おむつの各々に、該複数の紙おむつの各々に設けられたICタグの固有情報に対応付けられた、前記外部機器によって読み取り可能なシンボルと、
を備える紙おむつの濡れ検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載の紙おむつの濡れ検出システムであって、さらに、
前記複数のICタグの各々の固有情報と紙おむつ着用者又は紙おむつとの対応付けを行う対応付設定部を備え、
前記外部機器の通知部は、前記対応付設定部によって設定された対応付けと、前記第二通信部にて受信できなかったICタグの固有情報とに基づいて、濡れ状態にある紙おむつ着用者又は紙おむつを特定可能に表示する表示部を有することを特徴とする紙おむつの濡れ検出システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の紙おむつの濡れ検出システムであって、
前記複数のICタグは、前記複数の紙おむつの各々に複数配される紙おむつの濡れ検出システム。
【請求項4】
一の紙おむつと、
固有情報を有し、外部からの電波を受信して該固有情報を電波として発信すると共に、液体の電波を通過させ難い特性によって、周囲の液体の量が多くなると、受信又は発信する少なくとも一方の電波が遮蔽される、前記一の紙おむつに設けられたICタグと、
前記一の紙おむつのICタグに対して電波を発信すると共に、前記ICタグから発信される電波を受信して、前記ICタグの各々の固有情報を転送する第一通信部を有する読取装置と、
前記読取装置の第一通信部から転送される固有情報を受信する第二通信部と、該第二通信部による前記固有情報の受信の可否に基づいて、前記一の紙おむつが濡れ状態にあるか否かを示す濡れ情報を外部に通知する通知部とを有する外部機器と、
前記一の紙おむつに、該一の紙おむつに設けられたICタグの固有情報に対応付けられた、前記外部機器によって読み取り可能なシンボルと、
を備える紙おむつの濡れ検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載の紙おむつの濡れ検出システムであって、
前記ICタグは、前記一の紙おむつに複数配される紙おむつの濡れ検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の液体によって電波が遮蔽されるICタグの性質を利用した紙おむつの濡れ検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や障害者、新生児、乳児等の紙おむつの交換は、排便・排尿のタイミングや回数を予想することができないため、ニオイ、又は、紙おむつ内部の目視によって確認する他なく、その確認作業も頻繁に行う必要があることから、紙おむつの交換を行う管理者にとって、肉体的にも精神的にも負担が大きい。また、高齢者や障害者にとっては、排便・排尿の有無を何度も確認される行為には、羞恥心が伴うため、精神的負担が大きい。
【0003】
このような状況に鑑みて、従来から、紙おむつの適切な取り替えタイミングを管理者に通知する技術が提案されてきた。例えば特許文献1では、紙おむつの裏面シートと吸収体との間に排泄液との接触で変色するインジケータ部を設け、その変色を外側から視認可能とする技術が開示されている。しかしながら、この技術を適用した紙おむつでも下半身の衣類を脱がさないと、変色部を確認できないので、高齢者や障害者等の紙おむつ着用者の精神的負担がすべて解消される訳ではない。
【0004】
これに対して、非特許文献1では、既存の紙おむつの内面と貼着されるテープ状のセンサと、センサと接続された状態で紙おむつの外面に貼着され、排便又は排尿された状態(以下、濡れ状態と称す。)を検知する無線通信部とからなる紙おむつの濡れ検出システムの技術が開示されている。この無線通信部は、電源やアンテナ、回路等を備え、濡れ状態を検知すると、予め登録されたスマートフォンに通知を行う。この技術によれば、管理者は、紙おむつの内部を確認したり、下半身の衣類を脱がしたりすることなく、紙おむつの取り替えの要否を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−337384号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】三和株式会社、"ブランド紹介"、[online]、[平成29年2月9日検索]、インターネット〈URL:http://sanwajp-group.com/brand.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の無線通信部は、電源等の部品を収容する強固な筐体を備えるため、寝返りを打った紙おむつ着用者に対して異物感や不快感を与える虞があった。
【0008】
これに対して、ICタグと濡れ状態を検知するセンサを紙おむつに備え、ICタグの読取装置を紙おむつと別に設けることで、紙おむつ着用者に異物感や不快感を与えず濡れ状態を検知する態様が考えられるが、日用品であって、使い捨て品である紙おむつにセンサを取り付けることは製造コストや販売価格の観点から好ましいとは言えない。
【0009】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の目的の一は、紙おむつ着用者が、異物感や不快感を受けることなく使用することができ、管理者が、紙おむつ着用者に羞恥心の伴う確認作業を行うことなく、紙おむつの適切な取り替えタイミングを把握することができ、低廉に製造可能な紙おむつの濡れ検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明の第1の側面に係る紙おむつの濡れ検出システムによれば、複数の紙おむつと、固有情報を有し、外部からの電波を受信して該固有情報を電波として発信すると共に、液体の電波を通過させ難い特性によって、周囲の液体の量が多くなると、受信又は発信する少なくとも一方の電波が遮蔽される、前記複数の紙おむつの各々に設けられた複数のICタグと、前記複数の紙おむつのICタグに対して電波を発信すると共に、前記複数のICタグの各々から発信される電波を受信して、前記複数のICタグの各々の固有情報を転送する第一通信部を有する読取装置と、前記読取装置の第一通信部から転送される固有情報を受信する第二通信部と、該第二通信部による前記固有情報の受信の可否に基づいて、前記複数の紙おむつの各々が濡れ状態にあるか否かを示す濡れ情報を外部に通知する通知部とを有する外部機器と、前記複数の紙おむつの各々に、該複数の紙おむつの各々に設けられたICタグの固有情報に対応付けられた、前記外部機器によって読み取り可能なシンボルとを備えることができる。前記構成によれば、シート状のICタグを紙おむつ内に仕込むことで、外観は紙おむつそのものとなり、一般的な紙おむつと同じような感覚で使用できる。また、周囲の液体の量が多くなると、受信又は発信する少なくとも一方の電波が遮蔽されるICタグを採用するので、読取装置及び外部機器に電波が届かなくなることで、紙おむつが濡れ状態にあることを検出することができ、ICタグを、液体を検知するセンサ等の部品を用いることなくパッシブタイプとしたことで、製品単価を抑えることができる。さらにまた、外部機器が、ICタグから発信された固有情報の受信の可否に基づいて、複数の紙おむつの各々と対応付けて濡れ情報を通知するため、管理者は、例えば、多数の紙おむつ着用者がいる介護施設等で、紙おむつ着用者の紙おむつを替えるタイミングを例えばスマートフォン等で一元管理することができる。加えて、紙おむつにICタグの固有情報に対応するQRコード等が印刷されているので、スマートフォン等で、そのQRコードを読み込むことによって、ICタグと紙おむつ着用者又は紙おむつとの対応付けを簡単に行うことができる。
【0011】
また、本発明の第2の側面に係る紙おむつの濡れ検出システムによれば、前記複数のICタグの各々の固有情報と紙おむつ着用者又は紙おむつとの対応付けを行う対応付設定部を備え、前記外部機器の通知部は、前記対応付設定部によって設定された対応付けと、前記第二通信部にて受信できなかったICタグの固有情報とに基づいて、濡れ状態にある紙おむつ着用者又は紙おむつを特定可能に表示する表示部を有することができる。前記構成によれば、複数のICタグの各々の固有情報と紙おむつ着用者又は紙おむつとを対応付け、濡れ状態にある紙おむつ着用者又は紙おむつを表示するようにしたので、管理者は、濡れ状態にある紙おむつ着用者又は紙おむつを容易に特定することができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第3の側面に係る紙おむつの濡れ検出システムによれば、前記複数のICタグは、前記複数の紙おむつの各々に複数配されるよう構成できる。前記構成によれば、紙おむつの濡れ具合の程度や濡れている部位を、濡れ状態を検出したICタグの位置から判断することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る紙おむつの濡れ検出システムによれば、一の紙おむつと、固有情報を有し、外部からの電波を受信して該固有情報を電波として発信すると共に、液体の電波を通過させ難い特性によって、周囲の液体の量が多くなると、受信又は発信する少なくとも一方の電波が遮蔽される、前記一の紙おむつに設けられた複数のICタグと、前記一の紙おむつの複数のICタグに対して電波を発信すると共に、前記複数のICタグの各々から発信される電波を受信して、前記複数のICタグの各々の固有情報を転送する第一通信部を有する読取装置と、前記読取装置の第一通信部から転送される固有情報を受信する第二通信部と、該第二通信部による前記固有情報の受信の可否に基づいて、前記一の紙おむつが濡れ状態にあるか否かを示す濡れ情報を外部に通知する通知部とを有する外部機器と、前記一の紙おむつに、該一の紙おむつに設けられたICタグの固有情報に対応付けられた、前記外部機器によって読み取り可能なシンボルとを備えることができる。前記構成によれば、一つの紙おむつに対して、濡れ状態を検出することができる。すなわち、読取装置とICタグとの通信可能範囲内に紙おむつ着用者が着用する紙おむつ以外の紙おむつがあったとしても、紙おむつ着用者が着用する紙おむつのみを適切に検出することができる。また、紙おむつにICタグの固有情報に対応するQRコード等が印刷されているので、スマートフォン等で、そのQRコードを読み込むことによって、着用中の紙おむつを容易に登録することができる。
【0014】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る紙おむつの濡れ検出システムによれば、前記ICタグは、前記一の紙おむつに複数配されるよう構成できる。前記構成によれば、紙おむつの濡れ具合の程度や濡れている部位を、濡れ状態を検出したICタグの位置から判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システムの構成図である。
図2】本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システムの機能ブロック図である。
図3】本発明を適用した紙おむつの概略図である。
図4】本発明を適用した紙おむつの展開状態を示す構成図である。
図5】本発明を適用した紙おむつの図4におけるA−A'断面図である。
図6】本発明を適用した紙おむつにおけるICタグの配置についての説明図である。
図7】本発明を適用した紙おむつの濡れ検出システムにおける第一電波及び第二電波の通信可能範囲についての説明図である。
図8】本発明を適用した紙おむつの濡れ検出システムにおける第一電波及び第二電波の通信可能範囲についての説明図である。
図9】本発明を適用した紙おむつの濡れ検出システムにおける第一電波及び第二電波の通信可能範囲についての説明図である。
図10】アプリケーションの動作の流れを示すフローチャートである。
図11】初期画面を示すアプリケーションのイメージ図である。
図12】登録者の紙おむつの状態を示すユーザインタフェースのイメージ図である。
図13】プッシュ通知による通知状態を示すユーザインタフェースのイメージ図である。
図14】紙おむつの濡れ検出システムの動作の流れを示すフローチャートである。
図15】本発明を適用した第二実施例に係る紙おむつの濡れ検出システムの構成図である。
図16】本発明を適用した第三実施例に係る紙おむつの濡れ検出システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための紙おむつの濡れ検出システムを例示するものであって、本発明は紙おむつの濡れ検出システムを以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
(第一実施例)
【0017】
以下では、本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1を用いて、同一病室内の3人の紙おむつ着用者の紙おむつを替えるタイミングを一元管理する場合を例に挙げて説明する。なお、紙おむつの濡れ検出システム1を用いて一元管理できる紙おむつ着用者の人数は3人に限られず、3人以上であっても、3人以下であってもよい。また、1人の紙おむつ着用者を管理する場合については、第三実施例で詳述する。
(紙おむつの濡れ検出システム1の構成)
【0018】
本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1の構成図を図1、機能ブロック図を図2に示す。
【0019】
図1及び図2に示すように、本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1は、ICタグ12a〜12cをそれぞれ備える、テープ止めタイプの紙おむつ11a〜11cと、読取装置14と、スマートフォン15(特許請求の範囲における「外部機器」の一例に対応する。詳細は後述する。)とからなる。
【0020】
紙おむつ11a〜11cは、ICタグ12a〜12cの固有番号13a〜13c(特許請求の範囲における「固有情報」の一例に対応する。詳細は後述する。)に対応するQRコード(登録商標)111a〜111c(特許請求の範囲における「対応付設定部」及び「シンボル」の一例に対応する。詳細は後述する。)がそれぞれに印刷されており、専用のアプリケーション16(特許請求の範囲における「対応付設定部」及び「通知部」の一例に対応する。詳細は後述する。)を介して、QRコード111a〜111cをスマートフォン15のカメラ151で読み取ることで、固有番号13a〜13cと紙おむつを対応付けることができる。
【0021】
読取装置14は、第一電波RW1(詳細は後述する。)の発信と、ICタグ12a〜12cが発信する第二電波RW2(詳細は後述する)の受信とを行うアンテナ部141(特許請求の範囲における「第一通信部」の一例に対応する。詳細は後述する。)と、第三電波RW3(詳細は後述する。)の送信を行う通信部142(特許請求の範囲における「第一通信部」の一例に対応する。詳細は後述する。)を有し、スマートフォン15は、通信部142からの電波を受信できる通信部152(特許請求の範囲における「第二通信部」の一例に対応する。詳細は後述する。)を有しており、読取装置14とICタグ12a〜12cとの通信可能範囲は病室内全域をカバーできる程度であり、半径約2〜6m、読取装置14とスマートフォン15との通信可能範囲は半径約15mの球状の範囲内である。
【0022】
図1中に記載されている矢印は電波を概略的に表したものであり、実線の矢印は、読取装置14から発信され、ICタグ12a〜12cに受信され、ICタグ12a〜12cの電源として用いられる第一電波RW1を示しており、白抜きの矢印は、ICタグ12a〜12cから発信され、読取装置14に受信され、ICタグ12a〜12cの固有番号13a〜13cの情報を含む第二電波RW2を示しており、破線の矢印は、読取装置14から発信され、スマートフォン15に受信され、ICタグ12a〜12cの固有番号13a〜13cのうち読取装置14が受信した固有番号の情報を含む第三電波RW3を示している。本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1では、第三電波RW3に含まれていない固有番号の紙おむつを濡れ状態にある紙おむつとして判断する。
【0023】
スマートフォン15は、専用のアプリケーション16がインストールされており、アプリケーション16が、濡れ状態の紙おむつを検出すると、スマートフォン15のスピーカー153(特許請求の範囲における「通知部」の一例に対応する。詳細は後述する。)にて通知音を鳴らし、タッチパネル式液晶画面154(特許請求の範囲における「通知部」及び「表示部」の一例に対応する。詳細は後述する。)に取り替えが必要な紙おむつを表示する。
【0024】
なお、紙おむつの濡れ検出システム1は前記構成に限られない。例えば、紙おむつはテープ止めタイプに限定されず、パンツタイプ、フラットタイプ、パッドタイプであってもよい。また、特許請求の範囲における対応付設定部に対応するものはQRコード111a〜111cだけではなく、バーコードや、パスワード、また、固有番号そのものであってもよい。さらに、QRコード111a〜111cは、スマートフォン15自体で手入力によって対応付ける等のその他の手段によって代替できる場合にはなくても構わない。
(紙おむつ11a〜11c)
【0025】
本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1における紙おむつ11aの概略図を図3に、紙おむつ展開状態を示す図を図4に、図4におけるA−A'断面図を図5に示す。なお、紙おむつ11b及び紙おむつ11cの構成は、紙おむつ11aと同じ構成であるので説明を省略する。
【0026】
図3図5に示すように、紙おむつ11aは、テープ止めタイプの紙おむつであって、主に、表面材112aと、中間材113aと、吸収材114aと、防水材115aと、外装材116aと、立体ギャザー117aと、弾性体1181a、1182aと、テープ119aとからなる。これらの部材は、互いに、紙おむつ着用者の動きによって剥がれない程度に、かつ、液体を透過する程度に接合される。具体的には、ホットメルト接着剤等の接着剤によって、接合され、接着剤の塗布方法には、ベタ、ビード、カーテン、サミット、もしくは、スパイラル塗布等が用いられる。特に、弾性体1181a、1182aにおいては、これらの塗布方法に代えて、又は、これらと共に、コームガンやシュアラップ塗布等も用いられる。これによって、例えば、部材同士が剥がれることで発生するシワが、排泄後の湿潤状態の皮膚とこすれることで起こる、カブレや赤み等のスキントラブルを防ぐことができる。また、液体を透過するよう接合されるため、接着剤が、液体の吸収を阻害する虞はない。なお、部材の接合は、接着剤による接合に限定されず、例えば、ヒートシールや超音波シール等の素材溶着による接合であってもよい。
【0027】
表面材112aは、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシート等からなり、液体を透過させる特性を有する。なお、不織布の原料繊維は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維等であってもよい。また、不織布の加工方法は、公知の方法として、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等があるが、どのような加工によって製造されたものであってもよい。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法を、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法を用いる等、適宜好ましい加工方法を用いればよい。
【0028】
中間材113aは、例えば、表面材112aと同様の素材で形成することができ、表面材112aの液体を引き込み、液体を素早く吸収材に送り込むと共に、排泄物の逆戻りを防止する特性を有する。なお、中間材は、必ずしも表面材と同様の素材で形成する必要はないが、同様の素材を用いた場合、表面材112aと中間材113aの融点が同じであるため、表面材112aと中間材113aとの接合に、ヒートシールや超音波シールを好適に用いることができる。
【0029】
吸収材114aは、例えば、綿状パルプ1142aと高吸水性ポリマー1143aが混合積層され、吸収紙1141aに被覆されてなる。高吸水性ポリマー1143aは、自重のおよそ50〜100倍の液体を素早く吸収できる。吸収紙1141aは、紙おむつ着用者の動作によって生じる負荷により、積層した綿状パルプ1142aと高吸水性ポリマー1143aの形が崩れることを防ぐ。また、吸収材114aは、2本のスリット1144aを備え、この2本のスリット1144aに沿って液体が拡散されることから、2本のスリット1144aによって、液体が効率的に分散され、すばやく液体を吸収することができる。
【0030】
防水材115aは、防水シートであって、液体が紙おむつ11aの外部にしみ出るのを防ぐ。また、防水材115aは、吸収材114a側の面にICタグ12aを備える(詳細は後述する。)。
【0031】
外装材116aは、紙おむつ11aの外側を覆うシートであって、腹部側外表面に、QRコード111aが印刷される。
【0032】
立体ギャザー117aは、ギャザーシート1171aと、弾性体1181aとからなる。例えば、ギャザーシート1171aは、不織布からなり、弾性体1181aは、ポリウレタン弾性繊維等の伸縮素材からなる。立体ギャザー117aは、尿や便が太もも周りから漏れる(一般的に、横漏れと呼ばれる。)ことを防ぐ。また、弾性体1182aが、防水材115aの両縁部に設けられる。これにより、紙おむつ11aは、紙おむつ着用者の太もも周りにフィットするので、履き心地が向上すると共に、立体ギャザー117aと同様、横漏れを防ぐことができる。
【0033】
テープ119aは、防水材115aの背中側外表面に左右2個ずつ設けられ、紙おむつが紙おむつ着用者の下腹部にフィットするよう貼着することで、尿や便が背中側腰周りから漏れる(一般的に、背中漏れと呼ばれる。)ことを防ぐ。また、テープ119aは、使用済の紙おむつを破棄する際に、紙おむつを丸め、固定する用途としても使用でき、尿や便が外部に漏れるのを防ぐ。
【0034】
なお、紙おむつ11aは前記構成に限定されない。例えば、表面材112aの素材はポリプロピレンであってもよいし、テープ119aは左右1個ずつであってもよい。また、ICタグ12aの配置は、防水材115aの吸収材114a側の面に限定されない。
(ICタグ12a〜12c)
【0035】
本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1におけるICタグ12aについて説明する。なお、ICタグ12b及びICタグ12cの構成は、ICタグ12aと同じ構成であるので説明を省略する。
【0036】
ICタグ12aは、電池を内蔵しないパッシブ型のICタグであって、図2に示すように、読取装置14のアンテナ部141から発信される第一電波RW1を受信するアンテナ部121aを有しており、このアンテナ部121aが受信した第一電波RW1を電力に変換し、ICチップ122aに電力供給する。ICタグ12aのICチップ122aは、固有番号13aを記憶する内部メモリを有しており、第一電波RW1を受信すると、ICチップ122aが、アンテナ部121aを制御して、固有番号13aの情報を含む第二電波RW2を放射状に発信する。この第二電波RW2を読取装置14が受信し、読取装置14は受信した固有番号の情報を第三電波RW3として発信する。
【0037】
また、ICタグ12aは、防水材115aの吸収材114a側の面に配され、尿や便による液体は、表面材112a、中間材113a、吸収材114aの順に浸透する。液体は、電波である第一電波RW1と第二電波RW2を通過させ難い特性を有するので、吸収材114aが液体を吸収し、濡れ状態になると、ICタグ12aは、アンテナ部121aが第一電波RW1を受信することができず、ICチップ122aに対して電力を供給できなくなるため、第二電波RW2を発信することができなくなる、あるいは、アンテナ部121aが第一電波RW1を受信することができても、アンテナ部121aから発信した第二電波RW2が液体によって遮蔽されるため、第二電波RW2が読取装置14に届かない状態(以下、遮蔽状態と称す。)となる。本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1では、この遮蔽状態を利用して濡れ状態にある紙おむつとして判断する。
【0038】
具体的には、紙おむつの濡れ検出システム1は、第三電波RW3をスマートフォン15にて受信した後、後述するアプリケーション16が第三電波RW3に含まれていない固有番号に対応した紙おむつ着用者を濡れ状態にある紙おむつとして判断し、管理者に通知を行う。なお、濡れ状態の判断機能をアプリケーション16に持たせるのではなく、例えば、紙おむつの状態を定期的にアップデートするようにして管理者側で濡れ状態にあるかを判断するようにしてもよい。
【0039】
以上のように、液体が電波を通過させ難い性質を利用して濡れ状態にある紙おむつとして判断することで、別途、湿度センサ等の液体の量を検知するセンサを紙おむつに設ける必要が無く、紙おむつの製造コストを抑えることができる。また、紙おむつに設けられるのは薄いICタグのみであるので、紙おむつ着用者に対して異物感や不快感を与える虞がない。
(固有番号13a〜13c)
【0040】
固有番号13a〜13cは、それぞれ異なる固有番号であって、ICチップ122a〜122cの内部メモリにそれぞれ記憶されている。本発明を実施するために用いられる紙おむつは、製造される紙おむつすべてが、互いに異なる固有番号を有するICタグを備えていることが望ましいが、前述のように、製造される紙おむつすべての固有番号が異なる態様に限られず、少なくとも、紙おむつの濡れ検出システムで同時に管理する紙おむつ着用者の人数分、異なる固有番号を有した紙おむつがあればよい。言い換えると、ロット管理によって、同じ固有番号が同時に使用されることがなければ、製造されるすべての紙おむつに異なる固有番号が付される必要はない。例えば、12bitの内部メモリを採用する場合、4096通りの異なる固有番号を付すことができるが、このように限られた個数であっても、販売形態(場所、地域、時期等)を異にすることで、同じ固有番号の紙おむつが同時に使用される事態を回避できる。
(QRコード111a〜111c)
【0041】
QRコード111a〜111cは、それぞれ、紙おむつ11a〜11cの外装材116a〜116cの腹部側外表面に印刷され、印刷された紙おむつが備えるICタグの固有番号の情報を有する。管理者は、QRコード111a〜111cを、スマートフォン15に導入されたアプリケーション16の紙おむつ着用者登録モード(詳細は後述する。)にて、カメラ151を用いて読み取り、紙おむつ着用者の名前を登録しておくことで、ICタグ12a〜12cの固有番号13a〜13cと紙おむつ着用者とを容易に対応付けることができる。なお、QRコード111a〜111cの印刷箇所は、外装材116a〜116cの腹部側外表面に限定されない。
(紙おむつ11a〜11cにおけるICタグ12a〜12cの配置)
【0042】
紙おむつ11aにおけるICタグ12aの配置について、図5、及び、図6に基づいて説明する。なお、紙おむつ11b及び紙おむつ11cにおける、ICタグ12b及びICタグ12cの配置は、紙おむつ11aにおけるICタグ12aの配置と同じであるので説明を省略する。
【0043】
ICタグ12aは、図5に示すように、防水材115aの吸収材114a側の面に配され、吸収材114aが液体を吸収した状態になると遮蔽状態、すなわち、紙おむつの濡れ検出システム1が紙おむつ11aを濡れ状態と判断する状態となる。なお、ICタグ12aの配置は前述の態様に限定されない。
【0044】
また別実施形態として、1つの紙おむつに異なる固有番号を有する複数のICタグを設けてもよい。例えば、図6に示すように、5つのICタグ12a−1〜12a−5を紙おむつに配置することもできる。これによれば、紙おむつの濡れ検出システム1は、濡れ状態にあるか否かの判断に加え、濡れ加減の判断が可能となる。具体的には、尿の量が多ければ多いほど、紙おむつの濡れる範囲が広くなるため、遮蔽状態のICタグの数が増える。この特性を利用し、アプリケーション16は、例えば、遮蔽状態のICタグの数が2個以下の時は、尿の量が少ないと判断し、遮蔽状態のICタグの数が3個以下の時は、尿の量が多いと判断する等、濡れ加減の判断を行うことができる。加えて、ICタグ12a−1が遮蔽状態であれば背側が濡れており、ICタグ12a−5が遮蔽状態であれば腹側が濡れていると判断できる。すなわち、複数のICタグを一つの紙おむつに配置することで、紙おむつ内の濡れ位置を判断することができる。
【0045】
以上のように、本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1は、ICタグの配置又は個数或いはその両方を変更することで、紙おむつの濡れ検出システム1の検出内容を変更することができる。
(読取装置14)
【0046】
本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1における読取装置14について、図2及び図7図9に基づいて説明する。
【0047】
図2及び図7図9に示すように、読取装置14は、アンテナ部141と、通信部142と、それらを制御する制御部143とを備え、ICタグ12a〜12cへの電力供給と、ICタグ12a〜12cから発信される固有番号13a〜13cの情報をスマートフォン15が受信できるよう中継する役割を担い、第一電波RW1及び第三電波RW3の発信と、第二電波RW2の受信を行う。
【0048】
読取装置14は、図7に示すように、例えば病室の略中央に設置される。読取装置14と、ICタグ12a〜12cとは、半径約2〜6mの球状の範囲内が通信可能範囲であり、病室内全域が通信可能範囲となる。また、読取装置14とスマートフォン15との通信可能範囲は半径約15mの球状の範囲内であり、同様に、病室内全域が通信可能範囲となる。つまり、スマートフォン15を所持した管理者が病室内に入ると、濡れ状態の有無を検出することができ、濡れ状態であればアプリケーション16によって通知されるので、管理者は、紙おむつの内部を確認したり、下半身の衣類を脱がしたりすることなく、紙おむつの取り替えの要否を知ることができる。
【0049】
なお、読取装置14とICタグ12a〜12cとスマートフォン15との通信可能範囲は、前述のものに限定されず、読取装置14、ICタグ12a〜12c、スマートフォン15のそれぞれの性能や、紙おむつの濡れ検出システム1を使用する環境によって変動するものである。また、読取装置14の設置箇所も、前述の態様に限定されない。
【0050】
例えば、読取装置とICタグとの通信可能範囲が狭く、半径約2〜3mの球状の範囲内である場合は、一つの紙おむつに対して一つの読取装置を用いることで対応することができる。具体的には、図8に示すように、対応する紙おむつ11a〜11cに設けられるICタグ12a〜12cが通信可能範囲に入るよう、読取装置14a〜14cを、対応する紙おむつ11a〜11cの紙おむつ着用者が使用するベッドの周辺に設置する。
【0051】
また、読取装置とICタグとの通信可能範囲がさらに狭い場合には、図9に示すように、読取装置14a〜14cのアンテナ部141a〜141cをシート状に構成し、ベッドのマットレスの下に敷くように配置することで通信可能範囲の狭さをカバーすることができる。
【0052】
前述のとおり、読取装置の配置や構成を適宜変更することで、本発明に通信可能範囲の狭い低廉なICタグを用いることができるので、製造コストや、販売価格をさらに抑えることができる。
【0053】
さらにまた、読取装置14からスマートフォン15に、第三電波RW3が有する情報、すなわち、ICタグ12a〜12cの固有番号13a〜13cのうち読取装置14が受信した固有番号の情報を、インターネットを利用して、送信することもできる。これによれば、読取装置14とスマートフォン15とがどんなに離れた位置にあっても、スマートフォン15を所持する、管理者は通知を受けることができる。あるいは、インターネットのクラウドストレージ上に、紙おむつ11a〜11cの濡れ状態に関する情報が例えば読取装置14から定期的にアップロードされ、当該情報がアップデートされるようにしておき、スマートフォン15やパソコン等からクラウドストレージにアクセスすることで、紙おむつ11a〜11cの濡れ状態に関する情報を何処からでも読み出せるようにしてもよい。
(スマートフォン15)
【0054】
スマートフォン15は、管理者に濡れ状態を通知する役割を担い、図2に示すように、カメラ151、通信部152、スピーカー153、タッチパネル式液晶画面154、及び、アプリケーション16からの指示を受けてそれらの部材を制御する制御部155を備え、撮影機能、無線通信機能、音声再生機能、動画像再生機能を有する。
【0055】
紙おむつの濡れ検出システム1の使用時において、スマートフォン15のカメラ151、通信部152、スピーカー153、タッチパネル式液晶画面154は、アプリケーション16によって操作され、濡れ状態を検知すると、スマートフォン15は管理者に濡れ状態を通知する。
【0056】
なお、スマートフォン15の代わりに、同様の機能を有するタブレット端末を用いてもよい。また、スマートフォンやタブレットの代わりに、読取装置14に有線接続されるパソコンを用いて、濡れ状態を一元管理してもよいし、ナースコールと連動させ、ナースコールによって濡れ状態の通知を行うようにしてもよい。この場合、前述のICタグ12a〜12cの固有番号13a〜13cのうち読取装置14が受信した固有番号の情報は、電波による無線通信ではなく、電気信号による有線通信にて送信される。さらにまた、無線通信は、Bluetooth(登録商標)やWi−Fi(登録商標)に限定されない。
(アプリケーション16)
【0057】
本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1におけるアプリケーション16について、図10に示す動作フローチャートと、図11図13に示すユーザインタフェース画面のイメージ図に基づいて説明する。
【0058】
アプリケーション16は、スマートフォン15にインストールされ、主に、固有番号と紙おむつ着用者との対応付けと、濡れ状態の判断と、濡れ状態の通知を行う。
【0059】
まず、ステップST101にて、アプリケーション16が起動されると、アプリケーション16は、ステップST102において、図11に示すような初期画面161をタッチパネル式液晶画面154に表示する。
【0060】
初期画面161には、紙おむつ着用者登録ボタン1611と、登録者管理ボタン1612と、設定変更ボタン1613と、検出開始/終了ボタン1614とが設けられ、紙おむつ着用者登録ボタン1611がタップされると紙おむつ着用者登録モードに、登録者管理ボタン1612がタップされると登録者管理モードに、設定変更ボタン1613がタップされると設定変更モードに移行する。また、検出開始/終了ボタン1614は、タップされる度に、濡れ状態の検出の開始/終了を交互に切り換える。
【0061】
アプリケーション16は、ステップST103では、タップされたボタンを確認し、それに応じた動作をステップST103−1〜ステップST103−4にて実行する。また、ボタンがタップされなかった場合には、ステップST103−5(何もしない)に進む。言い換えると、ステップST103及びステップST103−5にて入力の待機状態となる。
【0062】
アプリケーション16は、ステップST102、ステップST103のステップを終了するまで繰り返す。以下では、ステップST103−1〜ステップST103−4での動作について詳述する。
(ステップST103−1:紙おむつ着用者登録モード)
【0063】
ステップST103−1では、アプリケーション16は、紙おむつ着用者登録モードを実行する。紙おむつ着用者登録モードは、ICタグの固有番号と紙おむつ着用者とを対応付けるためのモードであって、初期画面161の紙おむつ着用者登録ボタン1611がタップされることで開始する。
【0064】
紙おむつ着用者登録モードにおいて、アプリケーション16は、まず、QRコードの読取りを行い、次に、読み取ったQRコードが印刷された紙おむつの着用者名を入力するよう、管理者を誘導する。アプリケーション16は、QRコードを読み取って入手した固有番号と、入力された紙おむつ着用者の名前とを一組にして保存し、ICタグの固有番号と紙おむつ着用者とを対応付ける。したがって、管理者は、簡単な作業で、ICタグの固有番号と紙おむつ着用者とを対応付けることができる。
【0065】
なお、紙おむつ着用者登録モードは前記態様に限定されない。例えば、固有番号の取得方法は、QRコードの読み取りに限られず、特許請求の範囲における「シンボル」に対応するものとして、バーコードや、パスワード、また、固有番号そのものを紙おむつに表示した場合には、これらの読み取りや入力によって、固有番号が取得できるよう構成してもよい。また、固有番号と紙おむつ着用者との対応付けは、紙おむつ着用者の名前による対応付けに限定されず、病室やベッドの番号、紙おむつ着用者の顔写真等によって対応付けてもよい。
(ステップST103−2:登録者管理モード)
【0066】
ステップST103−2では、アプリケーション16は、登録者管理モードを実行する。登録者管理モードは、紙おむつ着用者登録モードで固有番号と対応付けた紙おむつ着用者(以下、登録者と称す。)の登録内容の確認や修正、削除を行うためのモードであって、初期画面161の登録者管理ボタン1612がタップされることで開始する。
(ステップST103−3:設定変更モード)
【0067】
ステップST103−3では、アプリケーション16は、設定変更モードを実行する。設定変更モードは、管理者への通知方法や、アプリケーション内の文字サイズ、画面の明るさ、通知音の音量の設定を行うモードであって、初期画面161の設定変更ボタン1613がタップされることで開始する。なお、設定内容は前記内容に限定されず、例えば、紙おむつの態様として、前述の一紙おむつに複数のICタグを設ける態様(図6を参照。)を採択した際には、紙おむつの濡れ検出システム1の検出内容の設定を本モードにて行えるようにしてもよい。
(ステップST103−4:濡れ状態の検出開始/終了の切り換え)
【0068】
ステップST103−4では、アプリケーション16は、紙おむつの濡れ状態の検出の開始/終了を交互に切り換える。アプリケーション16は、紙おむつの濡れ状態を検出すると、図12に示すユーザインタフェース画面のように、登録者の一欄と、濡れ状態の有無とをそれぞれを対応付けてタッチパネル式液晶画面154に表示する。例えば、紙おむつが濡れ状態となった際には、濡れ状態の有無の表示を「無」から「有」に切り替えると共に、通知音をスピーカー153から再生し、管理者へ通知を行う。また、例えば、スマートフォン15のタッチパネル式液晶画面154の電源が切られた待機状態において濡れ状態を検出した際は、図13に示すようなプッシュ通知と、通知音とによって、管理者への通知を行う。
【0069】
なお、前述のアプリケーション16のユーザインタフェース画面の例において、各ボタンの配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更でき、また、通知の方法も前記方法に限定されない。また、スマートフォン15の代わりに読取装置14に有線接続されるパソコンを用いる場合には、前述のアプリケーション16と同様の機能を有するソフトウェアをパソコンにインストールする。
(紙おむつの濡れ検出システム1の動作の流れ)
【0070】
本発明を適用した第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1の動作の流れについて図14に示す動作フローチャートに基づいて説明する。ここでは、管理者によって、ICタグが組み込まれた紙おむつが紙おむつ着用者に装着された後のシステム全体としての動作の流れに重きをおいており、スマートフォン15のアプリケーション16にて実行する動作の流れの詳細についてはアプリケーション16の項目を参照されたい。
【0071】
まず、ステップST201にて、管理者が、紙おむつの濡れ検出システム1を起動させ、第一電波RW1〜第三電波RW3の発信/受信を行う。各電波の発信/受信については、前述のとおりである(図1を参照。)。なお、ここでの紙おむつの濡れ検出システム1の起動とは、Bluetooth、Wi−Fi等の通信機器の設定や、スマートフォン15におけるアプリケーション16の起動をも含む、紙おむつの濡れ検出を開始できる状態にすることを意味する。
【0072】
次に、ステップST202において、管理者が、スマートフォン15のアプリケーション16の紙おむつ着用者登録モードにて、紙おむつ11a〜11cのQRコード111a〜111cを読み取り、ICタグ12a〜12cの固有番号13a〜13cと、紙おむつ着用者との対応付けと登録を行い、検出開始/終了ボタン1614をタップして濡れ状態の検出を開始する。
【0073】
次いで、ステップST203にて、スマートフォン15のアプリケーション16が、ステップST202において登録されたすべての固有番号13a〜13cが第三電波RW3に含まれているかを照合し、照合の結果に応じて、ステップST203−1〜ステップST203−3のいずれかを実行する。アプリケーション16は、ステップST203からステップST203−3までのステップを濡れ状態が検出されるまで繰り返す。
【0074】
読取装置14は、ICタグ12a〜12cから発信される第二電波RW2を受信し、受信できたすべての第二電波RW2に含まれる固有番号を第三電波RW3として送信するから、例えばスマートフォン15が第三電波RW3を受信して、第三電波RW3に含まれる固有番号と、スマートフォン15側で登録された固有番号13a〜13cとを照合し、第三電波RW3に含まれていない固有番号があれば、その固有番号に対応するICタグからは第二電波RW2を受信できず、そのICタグが配置された紙おむつが濡れ状態にあると判断できる。本実施形態においては、紙おむつの使用態様や、読取装置の設置の仕方によっては、ICタグ12a〜12cから第二電波RW2が発信されているのにも拘わらず、読取装置14が受信できないこともあり得るため、ICタグ毎に例えば4回受信できなかった場合に紙おむつが濡れ状態にあると判断する。
【0075】
ステップST203での照合の結果、両者が一致していた場合、ステップST203−1に進む。なお、ステップST203−1に進んだ場合、アプリケーション16は何もしない。言い換えると、ステップST203及びステップST203−1にて濡れ状態を検出するための待機状態となる。
【0076】
また、照合の結果、第三電波RW3に含まれていない固有番号があった場合、ステップST203−2に進む。ステップST203−2に進んだ場合、アプリケーション16は、第三電波RW3に含まれていない固有番号に割り振ったカウンターのカウントを1つ増やす。このカウンターは、初期状態では0であり、4になった場合には、ステップST203−3に進む。ステップST203−3に進んだ場合、管理者へ通知を行う。すなわち、誤動作を防止するために、カウンターが3になるまでは、濡れ状態とはみなさない。
【0077】
管理者は、通知によって、紙おむつが濡れ状態の紙おむつ着用者を特定することができるので、ステップST204において、紙おむつの交換を行う。その後、再度ステップST202で、新しい紙おむつの固有番号と紙おむつ着用者との対応付けと登録を行えば、再度、このシステムによって、紙おむつの濡れ状態を検出することができる。
(第二実施例)
(紙おむつの濡れ検出システム2の構成)
【0078】
本発明を適用した、第二実施例は、第一実施例と略同様の構成であるが、特許請求の範囲における「読取装置」及び「外部機器」に対応する構成要素が異なっている。具体的には、第一実施例では、「読取装置」に対応する構成要素として読取装置14を、「外部機器」に対応する構成要素としてスマートフォン15を有しているが、これに対して、第二実施例では、「読取装置」と「外部機器」との両方に対応する構成要素として通知機能付読取装置24a〜24cを有している。以下では、図15に基づいて、第二実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム2の構成について説明する。
【0079】
図15に示すように、本発明を適用した第二実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム2は、ICタグ22a〜22cがそれぞれに設けられたテープ止めタイプの紙おむつ21a〜21cと、通知機能付読取装置24a〜24cとを備える。
【0080】
また、通知機能付読取装置24a〜24cは、一種類の電波の発信と、ICタグ22a〜22cが発信する電波の受信とを行うアンテナ部241a〜241cを有しており、ICタグ22a〜22cとの通信可能範囲は半径約2〜3mの球状の範囲内である。
【0081】
図15中に記載されている矢印は電波を概略的に表したものであり、実線の矢印は通知機能付読取装置24a〜24cから発信され、それぞれ対応するICタグ22a〜22cに受信され、ICタグ22a〜22cの電源として用いられる第一電波RW1を、白抜きの矢印はICタグ22a〜22cから発信され、それぞれ対応する通知機能付読取装置24a〜24cに受信される第二電波RW2を示している。通知機能付読取装置24a〜24cは、対応するICタグ22a〜22cからの第二電波RW2を受信できなかった場合、対応する紙おむつが濡れ状態にあるとして、管理者に通知を行う。以下では、第二実施例が、第一実施例と相違する点である、通知機能付読取装置24a〜24cについて説明する。
(通知機能付読取装置24a〜24c)
【0082】
本発明を適用した第二実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム2における通知機能付読取装置24aについて説明する。なお、通知機能付読取装置24b及び通知機能付読取装置24cの構成は、通知機能付読取装置24aと同じ構成であるので説明を省略する。
【0083】
通知機能付読取装置24aは、アンテナ部241aと、スピーカー242aと、LED点灯部243aとを備え、紙おむつ21aが濡れ状態となった際に、管理者に対して通知する役割を担う。
【0084】
通知機能付読取装置24aは、対応する紙おむつ21aに設けられるICタグ22aのみが通信可能範囲(半径約2〜3mの球状の範囲内)に入るよう、紙おむつ21aの紙おむつ着用者が使用するベッドの周辺に設置され、ICタグ22aからの第二電波RW2を受信できなかった場合、スピーカー242aにて通知音を鳴らし、LED点灯部243a(特許請求の範囲における「通知部」の一例に対応する。)にてLEDを点灯させることで、管理者に紙おむつ21aが濡れ状態であることを通知する。これによれば、紙おむつの濡れ検出システム2は、対応するICタグが発信する第二電波RW2を通知機能付読取装置24a〜24cが受信できるか否かによって、濡れ状態を判断しているため、紙おむつの濡れ検出システム1における第三電波RW3を必要としない。言い換えると、特許請求の範囲における「固有情報」や「対応付設定部」に対応する構成要素を必要としないので、紙おむつの濡れ検出システム2は、ICタグの各々の固有情報と紙おむつ着用者又は紙おむつとを対応付ける作業を行うことなく使用できる。
(第三実施例)
【0085】
本発明を適用した、第三実施例は、第一実施例を1人の紙おむつ着用者の管理に適用した場合、例えば、自宅介護に用いた場合である。以下では、図16に基づいて、第三実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム3を説明する。
【0086】
図16に示すように、本発明を適用した第三実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム3は、ICタグ32をそれぞれ備える、テープ止めタイプの紙おむつ31a〜31t(紙おむつ着用者は紙おむつ31aを着用する。)と、読取装置34と、スマートフォン35とからなる。例えば、20着の紙おむつ31a〜31tは1セットで販売され、各々が備えるICタグ32a〜32tの固有番号33a〜33tに対応するQRコード311a〜311tを備える。
【0087】
スマートフォン35には、アプリケーション36がインストールされ、着用中の紙おむつ31aの固有番号33aの登録と、濡れ状態の判断と、濡れ状態の通知を行う。なお、第一実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム1は、アプリケーション16において、固有番号と、入力された紙おむつ着用者の名前とを一組にして保存するが、第三実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム3は、1人の紙おむつ着用者の管理に適用するため、紙おむつ着用者の名前を必ずしも保存する必要はない。その他のアプリケーション36の態様や、固有番号と紙おむつ着用者との対応付けの方法、通信可能範囲、通知方法等については第一実施例と同じであるので説明を省略する。
【0088】
図16中に記載されている矢印は電波を概略的に表したものであり、実線の矢印は読取装置34から発信され、ICタグ32aに受信され、ICタグ32aの電源として用いられる第一電波RW1を、白抜きの矢印はICタグ32aから発信され、読取装置34に受信され、ICタグ32aの固有番号33aの情報を含む第二電波RW2を、破線の矢印は読取装置34が第二電波RW2を受信した場合に読取装置34から発信され、スマートフォン35に受信され、ICタグ32aの固有番号33aの情報を含む第三電波RW3を示している。本発明を適用した第三実施例に係る紙おむつの濡れ検出システム3は、第三電波RW3をスマートフォン15で受信できなかった際に、紙おむつ着用者が着用する紙おむつを濡れ状態にある紙おむつとして判断する。
【0089】
これによれば、紙おむつの濡れ検出システム3は、対応付けされた固有番号33aの情報を含む第三電波RW3をスマートフォン35が受信できるか否かで濡れ状態を判断しているから、例えば、紙おむつ着用者が横になるベッドの側に他の紙おむつ31b〜31tが置かれている場合等、他の紙おむつ31b〜31tが通信可能範囲内にあったとしても、紙おむつ着用者が着用する紙おむつ31aの濡れ状態のみを適切に検出することができる。なお、スマートフォン35の代わりに、読取装置14に有線接続されるパソコンを用いてもよい。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る紙おむつの濡れ検出システムは、低廉に製造可能でありながら、紙おむつ着用者が、異物感や不快感を受けることなく使用することができ、管理者が、紙おむつ着用者に羞恥心の伴う確認作業を行うことなく、紙おむつの適切な取り替えタイミングを把握することができる。また、本実施形態に係る紙おむつの濡れ検出システムは、一元管理する人数や使用する場所・環境等に適するよう、その感度や、検出内容、各構成要素の配置・性能、ユーザインタフェース等を柔軟に変更することができる。
【0091】
なお、前述の実施形態では、紙おむつを着用する紙おむつ着用者と、紙おむつを交換する管理者とを別人として説明しているが、同一人であってもよい。例えば、下半身麻痺の障害を有する人が、自己の紙おむつの濡れ状態を知るために本実施形態に係る紙おむつの濡れ検出システムを利用してもよい。また、本発明の一構成要素である紙おむつは、広く紙おむつ全般を含むものであって、例えば素材や高吸水性ポリマーの有無に拘わらない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、単数又は複数の紙おむつ着用者の紙おむつの濡れ状態を確認する用途に使用できる。
【符号の説明】
【0093】
1、2、3…紙おむつの濡れ検出システム
11a〜11c、21a〜21c、31a〜31t…紙おむつ
111a〜111c、311a〜311t…QRコード;112a…表面材;113a…中間材;114a…吸収材;1141a…吸収紙;1142…綿状パルプ;1143a…高吸水性ポリマー;1144a…スリット;115a…防水材;116a…外装材;117a…立体ギャザー;1171a…ギャザーシート;1181a、1182a…弾性体;119a…テープ
12a〜12c、12a−1〜12a−5、22a〜22c、32a〜32t…ICタグ
121a〜121c…アンテナ部;122a〜122c…ICチップ
13a〜13c、33a〜33t…固有番号
14、14a〜14c、34…読取装置
141、141a〜141c…アンテナ部;142…通信部;143…制御部
15、35…スマートフォン
151…カメラ;152…通信部;153…スピーカー;154…タッチパネル式液晶画面;155…制御部
16、36…アプリケーション
161…初期画面;1611…紙おむつ着用者登録ボタン;1612…登録者管理ボタン;1613…設定変更ボタン;1614…検出開始/終了ボタン
24a〜24c…通知機能付読取装置
241a〜241c…アンテナ部;242a〜242c…スピーカー;243a〜243c…LED点灯部
RW1…第一電波;RW2…第二電波;RW3…第三電波
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