特許第6548717号(P6548717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6548717積層体、食品包装材料および積層体の製造方法
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  • 特許6548717-積層体、食品包装材料および積層体の製造方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6548717
(24)【登録日】2019年7月5日
(45)【発行日】2019年7月24日
(54)【発明の名称】積層体、食品包装材料および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/095 20060101AFI20190711BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20190711BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20190711BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20190711BHJP
【FI】
   B32B15/095
   C09D175/04
   C09D5/02
   B65D65/40 D
【請求項の数】9
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-505417(P2017-505417)
(86)(22)【出願日】2016年3月11日
(86)【国際出願番号】JP2016057724
(87)【国際公開番号】WO2016143889
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-48262(P2015-48262)
(32)【優先日】2015年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】内田 隆
(72)【発明者】
【氏名】甲田 千佳子
(72)【発明者】
【氏名】ディン ホアン イエン
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/039259(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/016069(WO,A1)
【文献】 特開2009−154425(JP,A)
【文献】 特開2003−205569(JP,A)
【文献】 特開2011−131391(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/035557(WO,A1)
【文献】 特開2005−139436(JP,A)
【文献】 特開2010−229291(JP,A)
【文献】 特開平11−100659(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/014162(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/110076(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0055197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
C09D 175/00−175/16
B65D 65/40
C08G 18/00− 18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシール性プラスチックフィルムからなる基材と、前記基材に積層されるポリウレタン層と、前記ポリウレタン層に積層される金属蒸着層とを備え、
前記ポリウレタン層は、
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂を含有するポリウレタンディスパージョンと、
水分散性ポリイソシアネートと
を含有するコート液を、前記基材に塗布および乾燥させて得られ
前記基材が、未延伸ポリオレフィンフィルムである
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記ポリウレタンディスパージョン中の樹脂成分と、前記水分散性ポリイソシアネート中の樹脂成分との質量比(ポリウレタンディスパージョン中の樹脂成分/水分散性ポリイソシアネート中の樹脂成分)が、2/1〜99/1の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記金属蒸着層が、アルミニウム層であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1に記載の積層体を備えることを特徴とする、食品包装材料。
【請求項5】
基材/ポリウレタン層/金属蒸着層がこの順に積層されており
前記ポリウレタン層が、下記の基を下記割合で含むことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基:10質量%以上45質量%以下
(B)炭素数2〜6のアルキレン基:0.5質量%以上25質量%以下
(C)ポリアルキレンオキシド基:0.5質量%以上10質量%以下
(但し、ポリウレタン層全体が100質量%である。)
【請求項6】
前記ポリウレタン層が、さらに、下記の基を下記割合で含むことを特徴とする、請求項に記載の積層体。
(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基:1質量%以上25質量%以下
【請求項7】
前記ポリウレタン層が、さらに、下記の基を下記割合で含むことを特徴とする、請求項に記載の積層体。
(E)アミノ基骨格を有するアルキレン基、アミノ基骨格を有するアリーレン基、チオール基骨格を有するアルキレン基、および、チオール基骨格を有するアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1つの基:1質量%以上25質量%以下
【請求項8】
請求項に記載の積層体を備えることを特徴とする、食品包装材料。
【請求項9】
ヒートシール性プラスチックフィルムからなる基材に、ポリウレタン層を積層し、前記ポリウレタン層に金属蒸着層を積層し、積層体を得る積層体の製造方法であって、
前記基材が、未延伸ポリオレフィンフィルムであり、
前記ポリウレタン層の積層において、
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂を含有するポリウレタンディスパージョンと、
水分散性ポリイソシアネートと
を含有するコート液を、前記基材に塗布および乾燥する
ことを特徴とする、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、食品包装材料および積層体の製造方法に関し、詳しくは、積層体、その積層体を備える食品包装材料、および、その積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装材料の分野において、ガスバリア性に優れたフィルムが用いられている。このような包装フィルムとしては、ジイソシアネート成分と、C2〜8のアルキルグリコールを含むジオール成分とを反応させて得られるガスバリア性ポリウレタン樹脂を含む層と、基材フィルム層とを積層して得られるガスバリア性複合フィルム、さらに、基材フィルム層の少なくとも一方面に、蒸着やスパッタリングにより無機質層を形成して得られるガスバリア性複合フィルムが、提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−98047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によると、ポリオレフィンシートやポリオレフィンフィルムなどの炭化水素系の基材に、上記のような無機質層を形成した積層体は、層間密着性やガスバリア性、特に酸素バリア性が十分とは言えない結果を得た。
【0005】
また、ウレタン樹脂などの塗工層を組み合わせた態様では、塗工層の形成に用いる成分や、層構成の順序によって、ガスバリア性や層間接着強度が大きく異なる結果を得た。
【0006】
例えば、ポリオレフィンシート/無機質層(金属蒸着層)/ウレタン樹脂層の構成では、ウレタン樹脂層の種類(すなわち、塗工層の形成に用いる成分)によって、層間接着強度が大きく異なる結果を得た。ポリオレフィンシートと無機質層(金属蒸着層)との層間接着強度が低いことは知られており、この現象は、無機質層(金属蒸着層)にピンホールなどが生じているためと推測される。
【0007】
すなわち、ポリオレフィンシートを基材とする積層体において、ガスバリア性や接着強度は、各層の性能の和で決まるものではなく、各層の順序や、各層の構成も大きく影響すると推測された。
【0008】
また本発明者らの検討によれば、上記したガスバリア性ポリウレタン樹脂を含む層を、ポリオレフィンシートやポリオレフィンフィルムなどの炭化水素系の基材と、無機質層(金属蒸着層)との間に介在させると、それらの界面密着性が十分ではないという結果も得た。
【0009】
従って、本発明の目的は、ガスバリア性および密着性に優れ、好ましくは、ヒートシール性にも優れる積層体、その積層体を備える食品包装材料、および、その積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、好ましくは、ヒートシール性プラスチックフィルムからなる基材と、前記基材に積層されるポリウレタン層と、前記ポリウレタン層に積層される金属蒸着層とを備え、前記ポリウレタン層は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂を含有するポリウレタンディスパージョンと、水分散性ポリイソシアネートとを含有するコート液を、前記基材に塗布および乾燥させて得られる、積層体を含んでいる。
【0011】
本発明[2]は、前記ポリウレタンディスパージョン中の樹脂成分と、前記水分散性ポリイソシアネート中の樹脂成分との質量比(ポリウレタンディスパージョン中の樹脂成分/水分散性ポリイソシアネート中の樹脂成分)が、2/1〜99/1の範囲である、上記[1]に記載の積層体を含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、前記基材が、未延伸ポリオレフィンフィルムである、上記[1]または[2]に記載の積層体を含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、前記金属蒸着層が、アルミニウム層である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の積層体を含んでいる。
【0014】
本発明[5]は、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の積層体を備える、食品包装材料を含んでいる。
【0015】
本発明[6]は、基材/ポリウレタン層/金属蒸着層がこの順に積層されており、前記基材はポリオレフィンフィルムであり、前記ポリウレタン層が、下記の基を下記割合で含む、積層体を含んでいる。
(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基:10質量%以上45質量%以下
(B)炭素数2〜6のアルキレン基:0.5質量%以上25質量%以下
(C)ポリアルキレンオキシド基:0.5質量%以上10質量%以下
(但し、ポリウレタン層全体が100質量%である。)
本発明[7]は、前記ポリウレタン層が、さらに、下記の基を下記割合で含む、上記[6]に記載の積層体を含んでいる。
(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基:1質量%以上25質量%以下
本発明[8]は、前記ポリウレタン層が、さらに、下記の基を下記割合で含む、上記[6]または[7]に記載の積層体を含んでいる。
(E)アミノ基骨格を有するアルキレン基、アミノ基骨格を有するアリーレン基、チオール基骨格を有するアルキレン基、および、チオール基骨格を有するアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1つの基:1質量%以上25質量%以下
本発明[9]は、上記[6]〜[8]のいずれか一項に記載の積層体を備える、食品包装材料を含んでいる。
【0016】
本発明[10]は、ヒートシール性プラスチックフィルムからなる基材に、ポリウレタン層を積層し、前記ポリウレタン層に金属蒸着層を積層し、積層体を得る積層体の製造方法であって、前記ポリウレタン層の積層において、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂を含有するポリウレタンディスパージョンと、水分散性ポリイソシアネートとを含有するコート液を、前記基材に塗布および乾燥する、積層体の製造方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層体は、ヒートシール性プラスチックフィルムからなる基材と金属蒸着層との間にポリウレタン層を備えており、また、ポリウレタン層は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂を含有するポリウレタンディスパージョンと、水分散性ポリイソシアネートとを含有するコート液を、基材に塗布および乾燥させて得られる。
【0018】
そのため、本発明の積層体およびその積層体を備える食品包装材料は、ヒートシール性プラスチックフィルムからなる基材と、金属蒸着層との間の密着性に優れ、さらに、ガスバリア性にも優れる。
【0019】
また、本発明の積層体では、基材/ポリウレタン層/金属蒸着層がこの順に積層されており、基材がポリオレフィンフィルムであり、ポリウレタン層が、特定の基を特定割合で含んでいる。
【0020】
そのため、本発明の積層体およびその積層体を備える食品包装材料は、ポリオレフィンフィルムからなる基材と、金属蒸着層との間の密着性に優れ、さらに、ガスバリア性にも優れる。
【0021】
また、本発明の積層体の製造方法によれば、上記の積層体を、効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1において、本発明の積層体の一実施形態としての積層フィルム1は、基材2と、基材2の表面に配置されるポリウレタン層3と、ポリウレタン層3の表面に配置される金属蒸着層4とを備えている。
【0024】
基材2として、好ましくは、ポリオレフィンフィルム(ヒートシール性を有するポリオレフィンフィルム、ヒートシール性を有さないポリオレフィンフィルムを含む。)が挙げられる。
【0025】
ポリオレフィンフィルムとして、具体的には、低密度ポリエチレンフィルム、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)、単軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)、4メチル−1−ペンテン系重合体フィルムなどが挙げられる。
【0026】
また、基材2は、好ましくは、ヒートシール性プラスチックフィルムからなる。ヒートシール性プラスチックフィルムは、加熱および加圧により熱融着可能であり、かつ、熱融着温度(例えば、90℃以上160℃以下)において、形状を保持できるフィルムである。
【0027】
このようなヒートシール性プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなり、熱融着性を有する未延伸樹脂ポリオレフィンフィルム(ヒートシール性を有するポリオレフィンフィルム)が挙げられ、具体的には、例えば、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)、低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム)などが挙げられる。これら未延伸樹脂ポリオレフィンフィルム(ヒートシール性を有するポリオレフィンフィルム)を基材2として用いた積層体1は、ヒートシール性を有し、さらには、ガスバリア性にも優れる。
【0028】
基材2は、単層、または、同種または2種以上の積層体からなる。
【0029】
また、これら基材2には、表面処理(コロナ放電処理など)、アンカーコート処理、アンダーコート処理などがなされていてもよい。これらの中でもアンカーコート処理された基材、コロナ放電処理された基材が好ましく、コロナ放電処理された基材がより好ましい。
【0030】
基材2として、ガスバリア性および密着性の向上を図る観点から、好ましくは、未延伸ポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0031】
基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0032】
ポリウレタン層3は、後述するポリウレタン樹脂を含む樹脂層である。
【0033】
ポリウレタン層3は、好ましくは、下記(A)〜(C)の基を含んでおり、また、より好ましくは、さらに、下記(D)の基、および/または、下記(E)の基を含んでいる。
(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基
(B)炭素数2〜6のアルキレン基
(C)ポリアルキレンオキシド基
(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基
(E)アミノ基骨格を有するアルキレン基、アミノ基骨格を有するアリーレン基、チオール基骨格を有するアルキレン基、および、チオール基骨格を有するアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1つの基
(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基は、好ましくは、ポリウレタン層3の原料として、キシリレンジイソシアネート(後述)および/または水添キシリレンジイソシアネート(後述)が用いられることにより、ポリウレタン層3に導入される。
【0034】
また、(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基は、例えば、キシリレン基および/または水添キシリレン基を有するポリイソシアネートに由来する水分散性ポリイソシアネート(後述)が用いられることによっても、ポリウレタン層3に導入される。
【0035】
(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基の含有割合(総量)は、ポリウレタン層3全体を100質量%とした場合、例えば、10質量%以上、好ましくは、12質量%以上、より好ましくは、15質量%以上であり、例えば、45質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、35質量%以下である。
【0036】
(B)炭素数2〜6のアルキレン基は、好ましくは、ポリウレタン層3の原料として、炭素数2〜6のジオール(後述)が用いられることにより、ポリウレタン層3に導入される。
【0037】
(B)炭素数2〜6のアルキレン基の含有割合(総量)は、ポリウレタン層3全体を100質量%とした場合、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、1.5質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、22質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下である。
【0038】
上記(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基と、上記(B)炭素数2〜6のアルキレン基とは、ポリウレタン層3のガスバリア性を向上させることができる。また、これらを含むポリウレタン層3では、極性基の密度が高い傾向があるため、ポリウレタン層3と金属蒸着層4との層間接着強度の向上を図ることができる。
【0039】
(C)ポリアルキレンオキシド基は、例えば、ポリウレタン層3の原料として、ポリアルキレンオキシド基を有する水分散性ポリイソシアネート(後述)が用いられることにより、ポリウレタン層3に導入される。
【0040】
また、(C)ポリアルキレンオキシド基は、例えば、ポリウレタン層3の原料として、ポリアルキレンオキシド基(親水性基(ノニオン性基))を含有する活性水素基含有化合物(後述)が用いられることによっても、ポリウレタン層3に導入される。
【0041】
(C)ポリアルキレンオキシド基は、好ましくは、ポリアルキレンオキシド基を有する水分散性ポリイソシアネート(後述)、とりわけ好ましくは、ポリアルキレンオキシド基を有する水分散性ノンブロックポリイソシアネート(後述)が用いられることにより、ポリウレタン層3に導入される。
【0042】
(C)ポリアルキレンオキシド基として、好ましくは、炭素数2〜3のアルキレンオキシド基を繰り返し単位として有するポリアルキレンオキシド基が挙げられ、具体的には、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合(ブロック/ランダム)基などが挙げられる。
【0043】
(C)ポリアルキレンオキシド基の含有割合(総量)は、ポリウレタン層3全体を100質量%とした場合、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、8質量%以下、より好ましくは、7質量%以下である。
【0044】
上記(C)ポリアルキレンオキシド基は、基材2とポリウレタン層3との層間接着強度の向上を図ることができる。換言すれば、ポリウレタン層3が上記(C)ポリアルキレンオキシド基を含まない場合、基材2とポリウレタン層3との層間接着強度の低下を惹起する傾向がある。
【0045】
また、上記(C)ポリアルキレンオキシド基は、ガスバリア性への影響が少ないため、ポリウレタン層3が上記(C)ポリアルキレンオキシド基を含んでいても、ガスバリア性の低下を惹起しない傾向がある。これは、上記(C)ポリアルキレンオキシド基は、ガスバリア性に寄与する上記(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基、上記(B)炭素数2〜6のアルキレン基などとの相溶性が比較的高く、上記(C)ポリアルキレンオキシド基がポリウレタン層3中に偏在し難いためと推察される。
【0046】
(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基は、例えば、ポリウレタン層3の原料として、主に、親水性基としてのイオン性基を含有する活性水素基含有化合物(後述)が用いられることにより、必要に応じて、ポリウレタン層3に導入されることが好ましい。
【0047】
(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基が含まれる場合、その含有割合(総量)は、ポリウレタン層3全体を100質量%とした場合、例えば、1質量%以上、好ましくは、1.5質量%以上、より好ましくは、2質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0048】
上記(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基は、とりわけ、水への溶解性、分散性を向上させるため、水性のポリウレタン樹脂(後述)に好適に含有される。また、上記(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基は、ポリウレタン層3と金属蒸着層4との層間接着強度を向上させる。
【0049】
なお、(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基において、イオン性基は、必要により中和剤により中和され、イオン性基の塩として含有される。
【0050】
(E)アミノ基骨格を有するアルキレン基、アミノ基骨格を有するアリーレン基、チオール基骨格を有するアルキレン基、および、チオール基骨格を有するアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1つの基は、例えば、ポリウレタン層3の原料として、後述する鎖伸長剤(好ましくは、アミノ基含有成分(後述))が用いられることにより、必要に応じて、ポリウレタン層3に導入されることが好ましい。
【0051】
(E)アミノ基骨格を有するアルキレン基、アミノ基骨格を有するアリーレン基、チオール基骨格を有するアルキレン基、および、チオール基骨格を有するアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1つの基が含まれる場合、その含有割合(総量)は、ポリウレタン層3全体を100質量%とした場合、例えば、1質量%以上、好ましくは、1.5質量%以上、より好ましくは、2質量%以上であり、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。
【0052】
上記(E)アミノ基骨格を有するアルキレン基、アミノ基骨格を有するアリーレン基、チオール基骨格を有するアルキレン基、および、チオール基骨格を有するアリーレン基は、ポリウレタン樹脂の分子量を高くすることができる。
【0053】
なお、ポリウレタン層3中における上記(A)〜(E)の基の含有割合は、各原料成分の構造および仕込み比から算出することができ、また、ポリウレタン層3を加水分解および成分分析することにより、測定することができる。
【0054】
このようなポリウレタン層3は、ポリウレタン樹脂を含む樹脂層であり、好ましくは、ポリウレタン樹脂からなる樹脂層であって、好ましくは、ポリウレタンディスパージョンと、水分散性ポリイソシアネートとを含有するコート液を、基材2に塗布および乾燥させることにより、成膜層として得られる。
【0055】
ポリウレタンディスパージョンは、好ましくは、ポリウレタン樹脂(水性ポリウレタン樹脂)を、水分散させることにより得られる。
【0056】
ポリウレタンディスパージョンに含有されるポリウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分(例えば、後述する炭素数2〜6のジオール(後述)などのポリオール成分、例えば、アミノ基含有成分(後述)など)とを反応させることにより、重付加物として得ることができる。
【0057】
また、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応では重付加物の分子量が高くなり難い場合、ポリウレタン樹脂を得るには、好ましくは、まず、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーを調製し、次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させる。
【0058】
より具体的には、この方法では、まず、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを反応させる。
【0059】
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含んでいる。
【0060】
キシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−XDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0061】
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3−キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0062】
また、水添キシリレンジイソシアネート(別名:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(HXDI)としては、1,2−水添キシリレンジイソシアネート(1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、o−HXDI)、1,3−水添キシリレンジイソシアネート(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m−HXDI)、1,4−水添キシリレンジイソシアネート(1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、p−HXDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0063】
これら水添キシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3−水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0064】
また、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとしては、それらの誘導体が含まれる。
【0065】
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの誘導体としては、例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0066】
これらの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0067】
ポリイソシアネート成分において、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートは単独使用または併用できる。キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートが併用される場合、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートの割合(キシリレンジイソシアネート/水添キシリレンジイソシアネート(質量比))が、例えば、99/1〜1/99、好ましくは、90/10〜10/90、より好ましくは、65/35〜35/65である。
【0068】
また、ポリイソシアネート成分は、必要に応じて、その他のポリイソシアネートを含有することもできる。
【0069】
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く)などのポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0070】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0071】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)としては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0072】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:ヘキサメチレンジイソシアネート)(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0073】
脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く)としては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。好ましくは、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
【0074】
その他のポリイソシアネートには、上記と同種の誘導体が含まれる。
【0075】
これらその他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
【0076】
その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)が配合される場合には、キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネート(併用される場合にはそれらの総量)の含有割合が、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、80質量%以上であり、例えば、99質量%以下である。
【0077】
また、その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除くポリイソシアネート)が配合される場合には、ポリイソシアネート成分として、好ましくは、キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンの併用が挙げられる。
【0078】
キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを併用することにより、ガスバリア性を損なわずに、水分散性に優れた、平均粒子径の小さいポリウレタンディスパージョンが得られる。
【0079】
キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを併用する場合、キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンの総量100質量部に対して、キシリレンジイソシアネートが、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、93質量部以下、より好ましくは、95質量部以下である。また、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが、例えば、10質量部以上、好ましくは、7質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0080】
ポリオール成分は、必須成分として、炭素数2〜6のジオールを含んでいる。
【0081】
炭素数2〜6のジオールは、数平均分子量40以上400未満であり、水酸基を2つ有する炭素数2〜6の有機化合物であって、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールなどの炭素数2〜6のアルカンジオール(炭素数2〜6のアルキレングリコール)、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2〜6のエーテルジオール、例えば、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどの炭素数2〜6のアルケンジオールなどが挙げられる。
【0082】
これら炭素数2〜6のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0083】
炭素数2〜6のジオールとして、好ましくは、炭素数2〜6のアルカンジオール、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0084】
炭素数2〜6のジオールの配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、70質量部以下、好ましくは、65質量部以下である。
【0085】
また、ポリオール成分は、任意成分として、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含んでいることが好ましい。
【0086】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、ノニオン性基またはイオン性基などの親水性基を含有し、アミノ基または水酸基などの活性水素基を含有する化合物であって、具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0087】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、親水性基(ノニオン性基)としてのポリアルキレンオキシド基(ポリオキシアルキレン基)を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。より具体的には、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールなどが挙げられる。
【0088】
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の水酸基を有する有機化合物であって、次のように合成することができる。
【0089】
すなわち、まず、上記したジイソシアネートと、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、炭素数1〜4のアルキル基で片末端封鎖したアルコキシポリオキシエチレンモノオールであって、数平均分子量200〜6000、好ましくは300〜3000)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
【0090】
次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
【0091】
なお、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、ノニオン性基、具体的には、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、600〜6000である。
【0092】
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールを得るためのジイソシアネートとして、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、1,4−または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボナン(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0093】
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基、または、4級アミンなどのカチオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物であって、好ましくは、アニオン性基と2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物、より好ましくは、カルボン酸と2つの水酸基とを併有する有機化合物(カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物(例えば、カルボキシ基含有ポリオールなど))が挙げられる。
【0094】
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられ、好ましくは、2,2−ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0095】
これら親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができ、好ましくは、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物、より好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
【0096】
ポリヒドロキシアルカン酸を配合することにより、水分散性とともに、ガスバリア性、基材との密着性や、透明性のさらなる向上を図ることができる。
【0097】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物を用いる場合、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、15質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0098】
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、その他の低分子量ポリオール(炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)や、高分子量ポリオールを含有することもできる。
【0099】
その他の低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上400未満であり、1分子中に水酸基を2つ以上有する有機化合物(炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く。)であって、例えば、炭素数7以上のジオール(2価アルコール)、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0100】
炭素数7以上のジオール(2価アルコール)は、数平均分子量40以上400未満であり、1分子中に水酸基を2つ有する炭素数7以上の有機化合物であって、例えば、炭素数7〜20のアルカン−1,2−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどのなども挙げられる。
【0101】
また、炭素数7以上のジオール(2価アルコール)としては、例えば、数平均分子量400未満の、2価のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した2価アルコールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレングリコール(ポリオキシエチレンエーテルグリコール)、ポリプロピレングリコール(ポリオキシプロピレンエーテルグリコール)、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られる数平均分子量400未満のポリテトラメチレンエーテルグリコールなども挙げられる。
【0102】
3価以上の低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上400未満であり、1分子中に水酸基を3つ以上有する有機化合物であって、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの3価アルコール(低分子量トリオール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0103】
また、3価以上の低分子量ポリオールとしては、例えば、数平均分子量40以上400未満の、3価以上のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した3価以上の低分子量ポリオール、または、公知のポリアミンを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリエチレンポリプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。
【0104】
これら3価以上の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0105】
3価以上の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価アルコール(低分子量トリオール)、4価アルコールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコール(低分子量トリオール)が挙げられ、さらに好ましくは、トリメチロールプロパン、グリセリンが挙げられる。
【0106】
これらその他の低分子量ポリオール(上記した炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0107】
その他の低分子量ポリオール(上記した炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)が配合される場合には、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0108】
また、その他の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられる。
【0109】
3価以上の低分子量ポリオールが用いられる場合、炭素数2〜6のジオールと3価以上の低分子量ポリオールとの併用割合は、炭素数2〜6のジオールと3価以上の低分子量ポリオールとの総量100質量部に対して、3価以上の低分子量ポリオールが、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、35質量部以下である。
【0110】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、数平均分子量400以上の有機化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
【0111】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0112】
高分子量ポリオールが配合される場合、その配合割合は、ガスバリア性の観点から、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、さらに好ましくは、30質量%以下である。
【0113】
ポリオール成分は、ガスバリア性の観点から、好ましくは、高分子量ポリオールを含有せず、より好ましくは、上記した炭素数2〜6のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物と、3価以上の低分子量ポリオールとからなるか、または、上記した炭素数2〜6のジオールと、親水性基を含有する活性水素基含有化合物とからなる。
【0114】
そして、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応では、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
【0115】
この反応において、ポリオール成分中の水酸基に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)は、例えば、1.2以上、好ましくは、1.3以上、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0116】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75〜85℃で、1〜20時間程度反応させる。
【0117】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応温度20〜80℃で、1〜20時間程度反応させる。
【0118】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
【0119】
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含む)を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0120】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0121】
また、イソシアネート基末端プレポリマーに、イオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して中和し、イオン性基の塩を形成させる。
【0122】
中和剤としては、イオン性基がアニオン性基の場合には、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1〜4のトリアルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))が挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0123】
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上の割合で添加し、また、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下の割合で添加する。
【0124】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、少なくとも1つの遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量)が、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0125】
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは1.9以上、より好ましくは、2.0以上、さらに好ましくは、2.1以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0126】
イソシアネート基の平均官能基数が上記範囲にあれば、安定したポリウレタンディスパージョンを得ることができ、基材密着性、ガスバリア性などを確保することができる。
【0127】
また、その数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下である。
【0128】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの親水性基濃度は、例えば、0.1mmol/g以上、好ましくは、0.2mmol/g以上であり、また、例えば、1.2mmol/g以下、好ましくは、1.0mmol/g以下、より好ましくは、0.8mmol/g以下である。
【0129】
イソシアネート基末端プレポリマーの親水性基濃度が上記範囲にあれば、安定した上記ポリウレタンディスパージョンを得ることができる。
【0130】
その後、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、例えば、水中で反応させ、ポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンを得る。
【0131】
すなわち、本発明においては、上記の通り、鎖伸長剤を用いることが好ましい。
【0132】
鎖伸長剤としては、例えば、上記した低分子量ポリオール(2価の低分子量ポリオール、3価の低分子量ポリオールなど)、アミノ基含有成分、チオール基含有成分が挙げられる。
【0133】
アミノ基含有成分としては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、ヒドラジンまたはその誘導体などのアミノ基含有化合物が挙げられる。
【0134】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
【0135】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0136】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0137】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0138】
アミノアルコールとしては、例えば、2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン)、2−((2−アミノエチル)アミノ)−1−メチルプロパノール(別名:N−(2−アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
【0139】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR−148、XTJ−512などが挙げられる。
【0140】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
【0141】
ヒドラジンまたはその誘導体としては、例えば、ヒドラジン(水和物を含む)、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0142】
これらアミノ基含有成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0143】
チオール基含有成分としては、例えば、脂肪族または脂環族ポリチオール、芳香属ポリチオールなどが挙げられる。
【0144】
脂肪族または脂環族ポリチオールとしては、例えば、1,2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,2,3−プロパントリチオールなどが挙げられる。
【0145】
芳香族ポリチオールとしては、例えば、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0146】
これらチオール基含有成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0147】
鎖伸長剤として、好ましくは、アミノ基含有成分が挙げられ、より好ましくは、アミノアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン)が挙げられる。
【0148】
そして、上記のイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
【0149】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100〜1000質量部の割合において、水を攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
【0150】
その後、鎖伸長剤を用いる場合は、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6〜1.2の割合となるように、滴下する。
【0151】
鎖伸長剤は、例えば、滴下することで反応させ、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上であり、また、例えば、10時間以下である。
【0152】
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
【0153】
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
【0154】
得られるポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
【0155】
ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、5以上、好ましくは、6以上、また、例えば、11以下、好ましくは、10以下である。
【0156】
ポリウレタンディスパージョンの25℃における粘度は、例えば、3mPa・s以上、好ましくは、5mPa・s以上であり、また、例えば、2000mPa・s以下、好ましくは、1000mPa・s以下である。
【0157】
ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下である。
【0158】
また、ポリウレタンディスパージョンにおけるポリウレタン樹脂のウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、例えば、25質量%以上、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、33質量%以上であり、例えば、50質量%以下、好ましくは、47質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
【0159】
なお、ウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は、原料成分の仕込み比から算出することができる。
【0160】
また、ポリウレタンディスパージョンにおけるポリウレタン樹脂の酸価は、例えば、12mgKOH/g以上、好ましくは、15mgKOH/g以上であり、例えば、40mgKOH/g以下、好ましくは、35mgKOH/g以下である。
【0161】
また、ポリウレタンディスパージョンにおけるポリウレタン樹脂の数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)は、例えば、1000以上、好ましくは3000以上、また、例えば、1000000以下、好ましくは100000以下、である。
【0162】
また、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
【0163】
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。
【0164】
また、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0165】
また、必要に応じて、ポリウレタンディスパージョンには、ガスバリア性が損なわれない範囲で、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0166】
ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類などが挙げられる。
【0167】
本発明において好ましく用いられる水分散性ポリイソシアネートとしては、例えば、繰り返し単位として炭素数2〜3のアルキレンオキシド基を有する上記したポリアルキレンオキシド基を有するポリイソシアネートが挙げられる。具体的には、水分散性ポリイソシアネートとしては、例えば、水分散性ブロックポリイソシアネート、水分散性ノンブロックポリイソシアネートなどが挙げられ、好ましくは、水分散性ノンブロックポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、ポリアルキレンオキシド基を有する水分散性ノンブロックポリイソシアネートが挙げられる。
【0168】
水分散性ノンブロックポリイソシアネートは、例えば、ポリエチレンオキシド基などの親水性基を含有するポリイソシアネートを、公知の分散剤(イオン性分散剤、ノニオン性分散剤など)によって、水に分散させることにより得ることができる。
【0169】
水分散性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートとしては、例えば、上記したポリイソシアネート成分として例示されたポリイソシアネートなどが挙げられ、具体的には、上記した芳香族ポリイソシアネート、上記した芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを含む)、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを含む)、および、これらの誘導体が挙げられる。
【0170】
なお、水分散性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートとして、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが採用される場合、水分散性ポリイソシアネートが、(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基を含む場合がある。このような場合、ポリウレタン層3中の(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基は、水分散性ポリイソシアネート由来の(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基を含む。
【0171】
また、水分散性ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートとして、脂肪族ポリイソシアネートが採用される場合、水分散性ポリイソシアネートが、(B)炭素数2〜6のアルキレン基を含む場合がある。このような場合、ポリウレタン層3中の(B)炭素数2〜6のアルキレン基は、水分散性ポリイソシアネート由来の(B)炭素数2〜6のアルキレン基を含む。
【0172】
水分散性ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0173】
水分散性ポリイソシアネートは、市販品としても入手可能であり、具体的には、例えば、タケネートWD−720、タケネートWD−725、タケネートWD−220、タケネートXWD−HS7、タケネートXWD−HS30など(以上、三井化学社製)、例えば、アクアネート100、アクアネート110、アクアネート200、アクアネート210など(日本ポリウレタン工業社製)、デュラネートWB40−100、デュラネートWT20−100(以上、旭化成ケミカルズ社製)、Bayhydur3100、BayhydurXP2487/1(以上、バイエルマテリアルサイエンス社製)、BasonatHW100、BasonatHA100(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0174】
そして、上記のポリウレタンディスパージョンと、上記の水分散性ポリイソシアネートを混合することにより、コート液が得られる。
【0175】
コート液において、ポリウレタンディスパージョンと、水分散性ポリイソシアネートとの配合割合は、ポリウレタンディスパージョン中の樹脂成分(固形分)と、水分散性ポリイソシアネート中の樹脂成分(固形分)との質量比(ポリウレタンディスパージョン中の樹脂成分/水分散性ポリイソシアネート中の樹脂成分)が、例えば、0.5/1以上、好ましくは、1/1以上、より好ましくは、2/1以上であり、例えば、99/1以下、好ましくは、50/1以下、より好ましくは、20/1以下である。
【0176】
ポリウレタンディスパージョンと、水分散性ポリイソシアネートとの配合割合が上記範囲であれば、密着性およびガスバリア性の向上を図ることができる。
【0177】
また、必要に応じて、コート液から水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
【0178】
また、コート液には、基材に対する濡れ性を付与するためや、希釈するために、例えば、水溶性有機溶剤を添加することができる。
【0179】
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類などが挙げられる。
【0180】
アルコール類としては、例えば、モノオール、グリコールが挙げられる。
【0181】
モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、その他のアルカノール(C5〜38)および脂肪族不飽和アルコール(C9〜24)、アルケニルアルコール、2−プロペン−1−オール、アルカジエノール(C6〜8)、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン−3−オールなどが挙げられる。
【0182】
これらモノオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0183】
グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0184】
これらグリコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0185】
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトンが挙げられる。
【0186】
これらケトン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0187】
水溶性有機溶剤として、好ましくは、モノオールが挙げられ、より好ましくは、2−プロパノールが挙げられる。
【0188】
水溶性有機溶剤の配合割合は、コート液100質量部中に、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、35質量部以下である。
【0189】
また、コート液には、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
【0190】
なお、添加剤の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0191】
また、コート液の固形分濃度は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0192】
また、コート液の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
【0193】
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、35℃以上、好ましくは、40℃以上であり、例えば、180℃以下、好ましくは、160℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0194】
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン層3を積層することができる。
【0195】
また、ポリウレタン層3を、必要に応じて、例えば、20〜60℃で、2〜5日間程度養生させてもよい。
【0196】
また、ガスバリア性の向上を図るため、コート液に層状無機化合物を配合し、ポリウレタン層3に層状無機化合物を分散させることもできる。
【0197】
具体的には、例えば、上記のポリウレタンディスパージョンと、層状無機化合物との混合物を、基材2に塗布および乾燥させることにより、層状無機化合物が分散されたポリウレタン層3を形成することができる。
【0198】
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、非膨潤性の層状無機化合物などが挙げられる。ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0199】
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。
【0200】
膨潤性の層状無機化合物として、具体的には、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物など)、例えば、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなど)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイルなど)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライトなど)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、合成マイカなどが挙げられる。
【0201】
これら膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。また、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、マイカ族粘土鉱物(水膨潤性雲母など)、合成マイカなどが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
【0202】
層状無機化合物の平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上であり、また、通常、100μm以下であり、例えば、75μm以下、好ましくは、50μm以下である。また、層状無機化合物のアスペクト比は、例えば、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは、100以上であり、また、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下である。
【0203】
そして、層状無機化合物が分散されたポリウレタン層3を形成するには、例えば、まず、上記のポリウレタンディスパージョンと、上記の水分散性ポリイソシアネートと、上記の層状無機化合物とを混合し、混合物として、ハイブリッドコート液を調製する。そして、得られたハイブリッドコート液を基材2の上に塗布し、乾燥させる。
【0204】
混合物(ハイブリッドコート液)を調製するには、まず、水に層状無機化合物を分散させ、次いで、その分散液に、ポリウレタンディスパージョンと、水分散性ポリイソシアネートとを添加する。
【0205】
層状無機化合物の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0206】
なお、混合物(ハイブリッドコート液)において、層状無機化合物は、2次凝集するおそれがあるため、好ましくは、層状無機化合物を溶媒に分散または混合した後、せん断力が作用する機械的な強制分散処理、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ジェットミル、ニーダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロール、超音波分散装置などによる分散処理を利用して、分散させる。
【0207】
また、ハイブリッドコート液の塗布方法としては、特に制限されず、上記した公知のコーティング方法が挙げられる。
【0208】
乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、35℃以上、好ましくは、40℃以上であり、例えば、180℃以下、好ましくは、160℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0209】
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物からなるポリウレタン層3を形成することができる。
【0210】
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂(乾燥後)の積層量として、例えば、0.05g/m以上、好ましくは、0.1g/m以上、より好ましくは、0.2g/m以上であり、また、例えば、10g/m以下、好ましくは、7g/m以下、より好ましくは、5g/m以下、さらに好ましくは、3g/m以下である。
【0211】
金属蒸着層4は、ポリウレタン層3に、金属を蒸着させることにより積層される。
【0212】
金属としては、例えば、例えば、周期表2族であるマグネシウム、カルシウム、バリウム、4族であるチタン、ジルコニウム、13族であるアルミニウム、インジウム、14族のケイ素、ゲルマニウム、スズなどが挙げられ、さらには、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化スズ、ダイアモンド状炭素膜、あるいはそれらの混合物などが挙げられる。
【0213】
これら金属は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0214】
金属として、ガスバリア性および製造容易性の観点から、好ましくは、アルミニウム、ケイ素およびそれらの酸化物が挙げられ、より好ましくは、アルミニウムおよびその酸化物が挙げられ、さらに好ましくは、アルミニウムが挙げられる。換言すれば、金属蒸着層4として、好ましくは、アルミニウム層が挙げられる。なお、金属蒸着層4は、条件により、経時的に酸化物に変化する場合がある。
【0215】
金属蒸着層4の形成方法としては、例えば、真空プロセスが挙げられる。
【0216】
真空プロセスとしては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD法)などが挙げられ、好ましくは、真空蒸着法では、真空蒸着装置の加熱方式として、好ましくは、電子ビーム加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式などが挙げられる。
【0217】
金属蒸着層4の厚みは、金属の種類などに応じて適宜設定されるが、例えば、1〜500nm、好ましくは、5〜200nm、より好ましくは、10〜100nmである。
【0218】
また、このようにして得られる積層フィルム1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0219】
そして、上記の積層フィルム1では、基材2/ポリウレタン層3/金属蒸着層4がこの順に積層されており、基材2がポリオレフィンフィルムであり、ポリウレタン層3が、上記した特定の基を特定割合で含んでいる。
【0220】
また、ポリウレタン層3は、上記したように、極性基の密度が高い傾向がある。そのため、積層フィルム1は、基材2、ポリウレタン層3および金属蒸着層4の各層間における接着強度に優れる。
【0221】
また、上記の積層フィルム1では、ポリウレタン層3が積層されているため、金属蒸着層4におけるピンホールの発生を抑制できると期待され、その結果、金属蒸着層4によるガスバリア性を効果的に発現させることができると考えられる。また、ポリウレタン層3自体が、優れたガスバリア性を有する。
【0222】
また、このような積層フィルム1は、好ましくは、ヒートシール性プラスチックフィルムからなる基材2と金属蒸着層4との間にポリウレタン層3を備えている。
【0223】
このような積層フィルム1において、ポリウレタン層3は、とりわけ好ましくは、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2〜6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分との反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂を含有するポリウレタンディスパージョンと、水分散性ポリイソシアネートとを含有するコート液を、基材2に塗布および乾燥させて得られる。
【0224】
このような積層フィルム1の製造方法によれば、上記の積層フィルム1を、効率よく製造することができる。
【0225】
そして、上記の積層フィルム1は、ガスバリア性に優れる。
【0226】
積層フィルム1の酸素透過度は、例えば、4cc/m/day/atm以下、好ましくは、3cc/m/day/atm以下、より好ましくは、2.5cc/m/day/atm以下、さらに好ましくは、2.0cc/m/day/atm以下である。
【0227】
また、積層フィルム1は、ガスバリア性のみならず、基材2、ポリウレタン層3および金属蒸着層4の各層における層間密着性に優れており、すなわち、基材2から金属蒸着層4までの各層の密着性(接着強度)に優れ、安定した積層体となる傾向がある。
【0228】
そのため、積層フィルム1は、ガスバリア性が要求される包装材料、具体的には、医薬品などの包装材料、食品包装材料、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用され、とりわけ、食品包装材料として、好適に使用される。
【0229】
このような食品包装材料は、上記の積層フィルムを備えるため、基材2、ポリウレタン層3および金属蒸着層4の各層における層間密着性に優れ、安定した積層体を形成する傾向があり、また、基材2から金属蒸着層4までの密着性(接着強度)に優れ、さらに、ガスバリア性にも優れる。
【0230】
そのため、上記の積層フィルム1および食品包装材料は、本願の課題を解決できる好適な材料である。したがって、本発明の工業的意義は大きい。
【実施例】
【0231】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0232】
合成例1(ポリウレタンディスパージョン1(PUD1)の合成)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)143.2g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI、エボニック社製)25.0g、エチレングリコール29.2g、トリメチロールプロパン2.7g、ジメチロールプロピオン酸14.8gおよび溶剤としてメチルエチルケトン121.6gを混合し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が6.11%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0233】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン11.0gにて中和させた。
【0234】
次いで、反応液を838.0gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、48.4gのイオン交換水に24.2gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
【0235】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン1(PUD1)を得た。
【0236】
得られたPUD1は、pH8.6、粘度15mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は60nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は39.6質量%であった。
【0237】
合成例2(ポリウレタンディスパージョン2(PUD2)の合成)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)54.2g、タケネート600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、HXDI、三井化学社製)111.9g、エチレングリコール28.7g、グリセリン1.9g、ジメチロールプロピオン酸16.6gおよび溶剤としてメチルエチルケトン96.7gを混合し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が6.70%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0238】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン12.4gにて中和させた。
【0239】
次いで、反応液を837.5gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、48.9gのイオン交換水に24.4gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
【0240】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン2(PUD2)を得た。
【0241】
得られたPUD2は、pH8.8、粘度15mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は42nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は40.0質量%であった。
【0242】
合成例3(ポリウレタンディスパージョン3(PUD3)の合成)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)112.1g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI、エボニック社製)19.5g、エチレングリコール11.9g、トリメチロールプロパン2.1g、DIOL400(ポリプロピレングリコール、数平均分子量400、三井化学社製)57.4g、ジメチロールプロピオン酸16.1gおよび溶剤としてメチルエチルケトン113.8gを混合し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が4.83%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0243】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン12.0gにて中和させた。
【0244】
次いで、反応液を848.5gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、37.9gのイオン交換水に18.9gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
【0245】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン3(PUD3)を得た。
【0246】
得られたPUD3は、pH8.7、粘度11mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は65nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は31.0質量%であった。
【0247】
合成例4(ポリウレタンディスパージョン4(PUD4)の合成)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)143.9g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI、エボニック社製)25.1g、エチレングリコール28.6g、トリメチロールプロパン5.5g、ジメチロールプロピオン酸12.4gおよび溶剤としてメチルエチルケトン120.9gを混合し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が6.14%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0248】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン9.2gにて中和させた。
【0249】
次いで、反応液を839.7gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、46.7gのイオン交換水に23.3gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0250】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM−603、信越化学社製)2.1gを添加し、鎖伸長反応させた。
【0251】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン4(PUD4)を得た。
【0252】
得られたPUD4は、pH8.6、粘度14mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は55nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は39.8質量%であった。
【0253】
合成例5(ポリウレタンディスパージョン5(PUD5)の合成)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)98.1g、タケネート600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、HXDI、三井化学社製)67.5g、エチレングリコール30.8g、ジメチロールプロピオン酸16.7gおよび溶剤としてメチルエチルケトン121.4gを混合し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が6.24%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0254】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン12.4gにて中和させた。
【0255】
次いで、反応液を837.2gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、49.1gのイオン交換水に24.6gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
【0256】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン5(PUD5)を得た。
【0257】
得られたPUD5は、pH8.6、粘度15mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は62nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は40.2質量%であった。
【0258】
合成例6(ポリウレタンディスパージョン6(PUD6)の合成
VestanatIPDI(3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、IPDI、エボニック社製)67.7g、タケラックU−5620(数平均分子量2000のポリエステルポリオール、三井化学社製)146.6g、トリエチレングリコール5.5g、ジメチロールプロピオン酸10.8gおよび溶剤としてアセトニトリル79.6gを混合し、触媒としてオクチル酸錫(スタノクト、エーピーアイコーポレーション社製)0.03g添加し、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が3.10%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0259】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン8.1gにて中和させた。
【0260】
次いで、反応液を863.7gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、22.6gのイオン交換水に11.3gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
【0261】
その後、1時間熟成反応させ、アセトニトリルとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン6(PUD6)を得た。
【0262】
得られたPUD6は、pH7.8、粘度18mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は50nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は14.0質量%であった。
【0263】
各合成例における配合処方を、表1に示す。
【0264】
【表1】
【0265】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
m−XDI:タケネート500、1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製
H6XDI:タケネート600、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−HXDI、三井化学社製
H12MDI:VestanatH12MDI、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、エボニック社製
IPDI:VestanatIPDI、イソホロンジイソシアネート、IPDI、エボニック社製
PP440:DIOL400、ポリオキシプロピレンエーテルグリコール、数平均分子量400、三井化学社製
U−5620:タケラックU−5620、数平均分子量2000のポリエステルポリオール、三井化学社製
MEK:メチルエチルケトン
TEA:トリエチルアミン
KBM−603:商品名、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製
配合例1(コート液Aの調製)
56.43gのイオン交換水に、15gの2−プロパノールを添加し、マグネチックスターラーにて10分間混合後、合成例1で得られた27.43gのPUD1を徐々に添加し、10分混合した。次いで、1.14gのタケネートWD−725(水分散性ポリイソシアネート、三井化学社製)を添加し、さらに20分混合してコート液Aを調製した。このコート液(コート液)中のウレタン樹脂と水分散性ポリイソシアネートの重量比は6/1である。
【0266】
配合例2〜5、8、10〜13(コート液B〜E、H、J〜Mの調製)
表2に示す配合処方とした以外は、配合例1と同様の手順にて、コート液B〜E、H、J〜Mを調製した。
【0267】
配合例6(コート液Fの調製)
54.5gのイオン交換水に、15gの2−プロパノールを添加し、マグネチックスターラーにて10分間混合後、合成例1で調製した30.0gのPUD1を徐々に添加し、10分混合した。次いで、0.5gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学社製)を添加し、さらに20分混合してコート液Fを調製した。
【0268】
配合例7(コート液Gの調製)
53.0gのイオン交換水に、15gの2−プロパノールを添加し、マグネチックスターラーにて10分間混合後、合成例1で調製した32.0gのPUD1を徐々に添加し、10分混合してコート液Gを調製した。
【0269】
配合例9(コート液Iの調製)
55.30のイオン交換水に、15gの2−プロパノールを添加し、マグネチックスターラーにて10分間混合後、合成例1で調製した25.8gのPUD1を徐々に添加し、10分混合した。次いで、3.90gのカルボジライトV−02(水分散性カルボジイミド、日清紡ケミカル社製)を添加し、さらに20分混合し、コート液Iを調製した。
【0270】
各配合例における配合処方を、表2に示す。
【0271】
【表2】
【0272】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0273】
タケネートWD−725:水分散性ポリイソシアネート、ポリアルキレンオキサイド変性ポリイソシアネート、三井化学社製
カルボジライトV−02:水分散性カルボジイミド(カルボジイミド系硬化剤)、日清紡ケミカル社製
KBM−403:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシシラン系硬化剤)、信越化学社製
成分分析
コート液の固形分100質量%(すなわち、ポリウレタン層)中における以下の基の含有割合を、使用した原料成分の構造および仕込み比から算出した。
(A)キシリレン基および/または水添キシリレン基
(B)炭素数2〜6のアルキレン基
(C)ポリアルキレンオキシド基
(D)イオン性基を含有するアルキレン基、および/または、イオン性基を含有するアリーレン基
(E)アミノ基骨格を有するアルキレン基、アミノ基骨格を有するアリーレン基、チオール基骨格を有するアルキレン基、および、チオール基骨格を有するアリーレン基からなる群から選択される少なくとも1つの基
コート液の固形分中における各基の含有割合を、表3に示す。
【0274】
なお、コート液の固形分中における各基の含有割合は、コート液を塗布および乾燥させた成膜層中においても同一である。
【0275】
【表3】
【0276】
実施例1
コート液Aを、基材(シーラント層)としての未延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロCP RXC−22(CPPフィルム)、#60、三井化学東セロ社製)のコロナ放電処理面に、乾燥厚み0.5g/mとなるようにバーコーターを用いてコーティングし、80℃に設定した乾燥オーブンに投入して1分間乾燥した。
【0277】
コーティングしたフィルムを40℃で2日間養生後、真空アルミ蒸着機(昭和真空、SIP600)に装着後、蒸着源としてアルミニウムを設置し、次いで蒸着チャンバー内の真空度を2×10−3mbarに設定した。その後、電流値を徐々に上昇させ700mAにてアルミニウムを溶解し、蒸着時間合計3秒にてアルミニウムを蒸着させ、積層体を形成した。
【0278】
実施例2
未延伸ポリプロピレンフィルムに代えて、低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム、三井化学東セロ社製、商品名TUXHC、厚み60μm)を用い、さらに100gのコート液Aに対し、0.2gのBYK−348(レベリング剤、BYK社製)を添加した以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0279】
実施例3〜10、および比較例2、5、6
コート液Aに代えて、実施例3はコート液B、実施例4はコート液C、実施例5はコート液D、実施例6はコート液E、実施例7はコート液J、実施例8はコート液K、実施例9はコート液L、実施例10はコート液M、比較例2はコート液G、比較例5はコート液F、比較例6はコート液Hを、それぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0280】
比較例1
実施例1のコート液Aを使用しなかった(すなわし、ポリウレタン層を形成しなかった)以外は、実施例1と同様にして、積層体を形成した。
【0281】
比較例3
未延伸ポリプロピレンフィルムのコロナ放電処理面に、実施例1と同様にしてアルミニウムを蒸着させ、次いで、コート液Aを乾燥厚み0.5g/mとなるようにバーコーターを用いてアルミニウム蒸着面にオーバーコーティングした。
【0282】
その後、80℃に設定した乾燥オーブンに投入して1分間乾燥、40℃、2日間養生後し、積層体を得た。
【0283】
比較例4
コート液Gを用いた以外は、比較例3と同様にして、積層体を得た。
【0284】
比較例7
未延伸ポリプロピレンフィルムに代えて、低密度ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム、三井化学東セロ社製、商品名TUXHC、厚み60μm)を用いた以外は、比較例1と同様にして、積層体を得た。
【0285】
比較例8
コート液Aに代えて、コート液Iを用いた以外は、実施例2と同様にして、積層体を得た。
【0286】
実施例11
未延伸ポリプロピレンフィルムに代えて、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(パイレンP−2161、厚み20μm、東洋紡社製)を用いた以外は、実施例1同様にして、積層体を得た。
【0287】
比較例9
コート液Aに代えて、コート液Gを用いた以外は、実施例11と同様にして、積層体を得た。
【0288】
評価
各実施例および各比較例において得られた積層体を、以下の手順にて評価した。その結果を、表4に示す。
【0289】
<酸素透過度>
積層体の酸素透過度を、酸素透過度測定装置(MOCON社、OX−TRAN 2/20)にて、20℃、相対湿度80%(80%RH)の条件下で測定した。
【0290】
なお、酸素透過量は、1m、1日および1気圧当たりの透過量として測定した。
【0291】
その結果を表4に示す。
【0292】
<密着性(ラミネート強度)>
積層体のアルミニウム蒸着面に、ドライラミネート用接着剤としてタケラックA−310(三井化学社製)とタケネートA−3(三井化学社製)との混合物(タケラックA−310/タケネートA−3=10/1(質量比))を、乾燥厚み3.0g/mとなるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥させた。
【0293】
次いで、接着剤の塗布面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東洋紡社製、商品名E5102、厚み12μm)をラミネートし、40℃、2日間養生した。
【0294】
そして、JIS K 6854(1999年)に準拠したT字剥離試験(15mm幅)にて、ラミネート強度を測定した。
【0295】
<ヒートシール性>
積層体の基材(シーラント層)面同士を、ヒートシーラー(テスター産業株式会社、TP−701−B HEAT SEAL TESTER)に装着し、圧力1.5kg/cm2、時間1秒、幅1cmの条件で、表4に示す温度条件にてヒートシールした。
【0296】
その後、JIS K 6854(1999年)に準拠したT字剥離試験(15mm幅)にて、ヒートシール強度を測定した。
【0297】
なお、ヒートシール部において剥離することなく、積層体が破壊された場合には「材料破壊」とした。
【0298】
【表4】
【0299】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム、トーセロCP RXC−22、CPPフィルム、#60、三井化学東セロ社製
LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、LLDPEフィルム、三井化学東セロ社製、商品名TUXHC、厚み60μm
OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム、パイレンP−2161、厚み20μm、東洋紡社製
<考察>
本発明の構成に該当する各実施例の積層体によれば、本発明の構成に該当しない各比較例の積層体よりも、ガスバリア性およびラミネート強度に優れることが確認される。
【0300】
とりわけ、コート液の種類を統一し、基材の種類を種々変更した実施例1、2および11を参照すると、各積層体は、基材の種類によらず、ガスバリア性およびラミネート強度に優れることが確認できた。
【0301】
一方、例えば、比較例6の積層体などは、基材の種類が実施例1と同一であっても、コート液が異なるため、ラミネート強度などに劣っていた。
【0302】
また、比較例4において得られた積層体は、ラミネート強度が低い結果であった。これは、金属蒸着層に生じたピンホールやクラックと、コート液Gとの影響であると推察される。
【0303】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0304】
本発明の積層体、その積層体を備える食品包装材料、および、その積層体の製造方法は、医薬品などの包装材料、食品包装材料、光学フィルム、工業用フィルムなどのガスバリア性が要求される包装材料分野において好適に使用され、とりわけ、食品包装材料分野において、好適に使用される。
【符号の説明】
【0305】
1 積層フィルム
2 基材
3 ポリウレタン層
4 金属蒸着層
図1