(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車体のシートに着座する使用者が前記シートの左右方向にそれぞれ設けられる右側ハンドリムおよび左側ハンドリムを操作するのに対応してアシスト値を計算し、前記アシスト値に応じた右側補助動力および左側補助動力をそれぞれ右側車輪および左側車輪に与えて前記車体の走行をアシストする電動アシスト車椅子の制御方法であって、
前記シートの左右方向において路面が傾斜するときに前記アシスト値を補正して傾斜アシスト値を求める工程と、
前記傾斜アシスト値に対応する前記右側補助動力および前記左側補助動力を与えることで前記車体を傾斜する路面上で直進走行させる片流れ防止動作を実行する工程と、
前記片流れ防止動作において前記使用者が前記右側ハンドリムおよび前記左側ハンドリムの少なくとも一方を操作する、ハンドリムの操作に応じて前記傾斜アシスト値を補正する工程と
を備えることを特徴とする電動アシスト車椅子の制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
A.第1実施形態
図1は、本発明にかかる電動アシスト車椅子の第1実施形態を示す側面図である。
図2は、
図1の電動アシスト車椅子の平面図である。
図3は、
図1の電動アシスト車椅子および同車椅子の制御端末装置の電気的構成を示すブロック図である。本発明にかかる電動アシスト車椅子(以下、単に「車椅子」という)1は、既存の折り畳み式手動車椅子に補助動力装置(Power Assist System) を装備したものである。車椅子1は、左右一対の車輪2L、2Rと、パイプ枠状のフレーム3と、左右一対のキャスタ4L、4Rを有している。
【0013】
フレーム3の中央部には布製のシート5(
図2)が張設され、このシート5にユーザが着座可能となっている。このフレーム3は複数のアームを有している。それらのうち左右一対のハンドルアーム3bはフレーム3の後方部で立設されている。各ハンドルアーム3bの上端部は後方に折曲され、その折曲部に対して介助者用のグリップ7が取り付けられている。
【0014】
各ハンドルアーム3bの中間高さ位置から車体前方にアーム3cが車体前方に水平に延びている。このように設けられた左右一対のアーム3cの前端部は略直角に折り曲げられて垂直下方に延びている。そして、左右アーム3cの下端部に対してキャスタ4L、4Rがそれぞれ回転自在に支持されている。
【0015】
左右アーム3cの下方には、左右一対のアーム3dが配置されている。各アーム3dの前方部分は車体前方に向かって斜め下方に延出されており、各延出端(前端部)にステップ9が取り付けられている。こうして左右一対のステップ9が設けられ、ユーザの足置きとして機能する。
【0016】
キャスタ4L、4Rの後方側で、車輪2L、2Rがそれぞれフレーム3の左右部に対して着脱自在に取り付けられ、キャスタ4L、4Rと協働してフレーム3を移動自在に支持する。図示を省略するが、各車輪2L、2Rはフレーム3に溶接されたボス部に支持された車軸にボールベアリングを介して回転自在に支承されている。
【0017】
車輪2Lの外側には、リング状のハンドリム13Lが設けられ、ユーザによる車輪2Lの手動操作を可能としている。また、当該左側ハンドリム13Lをユーザが操作することで車輪2Lに加えられるトルクを検出するトルクセンサ14Lが設けられ、トルク値に応じた信号が車輪2Lを制御する左輪コントローラ30L(
図3)に出力される。一方、車輪2Lの内側には、車輪2Lに補助動力を与えるための駆動モータ(補助動力源)21Lと、左輪コントローラ30Lとが設けられている。左輪コントローラ30Lは駆動モータ21Lを制御して車輪2Lに与えられる補助動力を調整する。なお、車輪2Rに対しても、車輪2Lと同様に、外側にハンドリム13Rが設けられてユーザによる車輪2Lの手動操作を可能とするとともに、内側に駆動モータ21Rおよび右輪コントローラ30R(
図3)が設けられて車輪2Rへの補助動力の調整可能となっている。また、ユーザがハンドリム13Rを手動操作した際に、車輪2Rに加えられるトルクをトルクセンサ14Rが検出し、その検出値に応じた信号が右輪コントローラ30Rに出力される。なお、車輪に対するハンドリムおよび駆動モータの取り付け構造の詳細については、周知であるため、ここでは上記構造の説明については省略する。
【0018】
駆動モータ21L、21Rおよびコントローラ30L、30Rへの電力供給を行うために、バッテリ22が車椅子1に搭載されている。本実施形態では、当該バッテリ22は車輪2Rの近傍位置で脱着可能に取り付けられ、駆動モータ21Rおよび右輪コントローラ30Rに直接的に給電する。また、車体(フレーム)3にワイヤーハーネス23が車輪2R側から車輪2L側に設置されており、バッテリ22はワイヤーハーネス23を介して駆動モータ21Lにおよび左輪コントローラ30Lに給電する。
【0019】
次に、左輪コントローラ30Lおよび右輪コントローラ30Rの構成について
図3を参照しつつ説明する。ここでは、左輪コントローラ30Lの構成を説明した後で、右輪コントローラ30Rについて説明する。左輪コントローラ30Lは、主制御部31と、不揮発性メモリ32と、モータ出力I/F33と、エンコーダI/F34と、トルクセンサI/F35と、右輪コントローラ30Rとの間で通信を行うための通信I/F36とを備えている。主制御部31はCPU等を有するコンピュータにより構成されており、不揮発性メモリ32に記憶されているプログラムやデータに基づいてアシスト値を計算するとともに、当該計算されたアシスト値に基づいて駆動モータ21Lを作動させる。なお、本実施形態では、片流れを防止するために単に推定外乱値を用いるのではなく、左輪コントローラ30Lはユーザのハンドリム操作に応じて推定外乱値を補正する。そして、補正された推定外乱値を上記計算されたアシスト値から除去してアシスト値を補正し、当該アシスト値に相当する補助動力が得られるようにモータ出力I/F33を介して駆動モータ21Lを制御する。
【0020】
また、本実施形態では、主制御部31は、駆動モータ21Lに取り付けられたエンコーダ24Lから出力される信号をエンコーダI/F34を介して受け取り、駆動モータ21Lを高精度に制御可能となっている。エンコーダ24Lは駆動モータ21Lに内蔵される内蔵タイプを用いてもよいし、外付けタイプを用いてもよい。
【0021】
また、本実施形態では、主制御部31はエンコーダ24Lからの信号に基づいて車輪2Lの速度、つまり車輪速度(Wheel Speed)を検出可能となっているが、車輪2Lの回転を直接検出して信号を出力するセンサを別途設け、当該センサからの信号に基づいて車輪速度を求めるように構成してもよい。
【0022】
主制御部31はトルクセンサ14Lから出力される信号をトルクセンサI/F35を介して受け取り、左側ハンドリム13Lの操作により車輪2Lに与えられたトルクを正確に検出可能となっている。なお、同図中の符号37Lは左輪コントローラ30L用のスイッチである。
【0023】
右輪コントローラ30Rは、制御端末装置200との通信を行うための通信I/F38を追加装備している点を除き、基本的に左輪コントローラ30Lと同一構成を有している。すなわち、右輪コントローラ30Rの主制御部31は、トルクセンサ14Rから出力される信号に基づいて右側ハンドリム13Rの操作により車輪2Rに与えられたトルクを検出するとともに、エンコーダ24Rからの信号に基づき車輪2Rの車輪速度を検出する。なお、同図中の符号37Rは右輪コントローラ30R用のスイッチである。また、本明細書では、車輪2R、2Lを区別せずに説明する際には単に「車輪2」と称し、ハンドリム13R、13Lを区別せずに説明する際には単に「ハンドリム13」と称し、トルクセンサ14R、14Lを区別せずに説明する際には単に「トルクセンサ14」と称し、駆動モータ21R、21Lを区別せずに説明する際には単に「駆動モータ21」と称し、エンコーダ24R、24Lを区別せずに説明する際には単に「エンコーダ24」と称し、コントローラ30R、30Lを区別せずに説明する際には単に「コントローラ30」と称する。
【0024】
また、右輪コントローラ30Rおよび左輪コントローラ30Lは通信I/F36を有しており、双方向通信が可能となっている。さらに、右輪コントローラ30Rは通信I/F38を介して制御端末装置200と双方向通信が可能となっている。このため、ハンドリム13の操作により車輪2に与えられたトルク、駆動モータ21により車輪2に与えられるトルクならびに各車輪2の車輪速度は右輪コントローラ30Rおよび左輪コントローラ30Lに共有されており、これらに基づいてコントローラ30は車体走行を制御する。
【0025】
さらに、車椅子1は
図3に示すように右輪コントローラ30Rを経由して制御端末装置200と通信可能となっている。ここで、制御端末装置200としては、パーソナル・コンピュータ(PC)、携帯電話やスマートフォンなどを用いることができる。制御端末装置200は、主制御部210と、不揮発性メモリ220と、通信I/F230と、操作入出力I/F240と、タッチパネルなどの操作パネル250とを備えている。主制御部210はCPU等を有するコンピュータにより構成されており、不揮発性メモリ220に記憶されているプログラムにしたがって動作し、車椅子1の制御に必要な情報を設定可能となっている。
【0026】
上記のように構成された車椅子1では、使用者によるハンドリム13の操作に応じて左右車輪2内部に設置したモータ21がトルクを発生させ、車椅子1の走行をアシストするが、片流れの問題を
図4および
図5に示す片流れ防止動作を実行することで解消している。以下、
図4および
図5を参照しつつ本発明の第1実施形態について詳述する。
【0027】
図4はコントローラのブロック線図である。また、
図5は旋回方向の外乱値補正処理を示すフローチャートである。なお、
図4では右輪コントローラ30Rを中心に記載されているが、左輪コントローラ30Lも基本的に右輪コントローラ30Rと同様に構成されている。以下においては、右輪側について詳述し、左輪側については同一また相当符号を付して説明を省略する。
【0028】
右輪コントローラ30Rでは、不揮発性メモリ32に記憶されているプログラムやデータに基づいて主制御部31が、アシスト計算部311、アシスト制限部312、符号調整部313、駆動指令生成部314、車体に加わるトルク推定部(以下、単に「トルク推定部」という)315、旋回方向の外乱値補正部(以下、単に「外乱値補正部」という)316および車輪の外乱値推定部(以下、単に「外乱値推定部」という)317として機能する。
【0029】
アシスト計算部311は、右側ハンドリム13Rの操作により車輪2Rに与えられたトルクT
RHと、左側ハンドリム13Lの操作により車輪2Lに与えられたトルクT
LHとに基づいて車輪2Rに対するアシスト値を計算し、アシスト制限部312に出力する。なお、トルクT
RHはトルクセンサI/F35を介してトルクセンサ14Rから直接与えられる一方、トルクT
LHは通信I/F36を介して左輪コントローラ30Lから与えられる。
【0030】
アシスト制限部312は、アシスト計算部311で計算されたアシスト値が予め設定されたアシスト範囲に収まっているか否かを判断する。というのも、駆動モータ21Rの出力限界や温度などの要因によって、車輪2Rに与えることができる補助動力に上限値が存在するからである。そこで、本実施形態では、アシスト制限部312を設けることによって、上記計算されたアシスト値が上限値を超えないときには、アシスト計算部311での計算値をそのままアシスト値とする一方、上限値を超えているときには、上限値を新たなアシスト値として書き換える。
【0031】
こうしてアシスト値が求まると、符号調整部313でアシスト値の符号が調整された後、駆動指令生成部314がアシスト値に応じた駆動指令信号を駆動モータ21Rに与えて右側車輪2Rを駆動する。なお、車椅子1では、左右車輪2L、2Rはシート5を挟んで鏡合わせ状態に配置されているため、一方の車輪2が正回転するとき、他方の車輪2が逆回転することを考慮し、符号調整部313を設けている。したがって、例えば右側車輪2Rの回転を基準に設定するのであれば、右輪コントローラ30Rには符号調整部313を設けずに、左輪コントローラ30Lにのみ符号調整部313を設けてもよい。
【0032】
ここで、アシスト計算部311で計算されたアシスト値のみに基づいて車輪2への補助動力を決定する場合、上記した片流れの問題が発生することがある。そこで、本実施形態では、トルク推定部315、外乱値補正部316および外乱値推定部317を設けて路面状況に対応する外乱値を推定するとともに、使用者によるハンドリム操作に応じて当該外乱値を補正する。そして、補正された外乱値に基づいてアシスト制限部312から出力されるアシスト値を補正して傾斜アシスト値を求め、当該傾斜アシスト値に基づいて片流れ防止動作におけるモータトルクを決定している。より詳しくは、以下に示すように推定外乱値を用いて片流れ防止動作を実行する。
【0033】
図4に示すように、エンコーダ24Rからの出力に基づく車輪2Rの車輪速度ω
Rとエンコーダ24Lからの出力に基づく車輪2Lの車輪速度ω
Lとが右輪コントローラ30Rに与えられ、トルク推定部315が車輪速度の差(=ω
R−ω
L)から車体(=フレーム3+シート5)に加わるトルクを推定する。また、トルク推定部315で推定されたトルクに対し、ハンドリム操作によってハンドリム13に加わるトルクの差、つまりハンドリムトルク差(=T
RH−T
LH)と、駆動モータ21Rから右側車輪2Rに与えられるモータトルクT
RMと駆動モータ21Lから左側車輪2Lに与えられるモータトルクT
LMとの差、つまりモータトルク差(=T
RM−T
LM)とが減算されて旋回方向(車体ヨー方向)の推定外乱値
【数1】
【0034】
(なお、本明細書では、推定外乱値d
ROTハットと称する)が求められる。
【0035】
ここで、旋回方向の推定外乱値d
ROTハットから右側車輪2Rの外乱値
【数2】
【0036】
(なお、本明細書では、推定外乱値d
Rハットと称する)を推定し、その推定外乱値d
Rハットでアシスト値を補正してもよい。つまり、旋回方向の推定外乱値d
ROTハットを外乱値推定部317に与えるように構成してもよい。ただし、このような制御を行う場合、仮に使用者は直進しようとしているにもかかわらず、ハンドリム操作のタイミングや大きさが左右でずれると、推定外乱値d
ROTハットが大きくなり、その結果、使用者の意図と異なるアシスト動作を行うことがある。
【0037】
そこで、本実施形態では、
図5に示すように外乱値補正部316でハンドリム操作に応じて推定外乱値d
ROTハットを補正した上でアシスト値の補正を行うように構成している。すなわち、外乱値補正部316では、片流れ防止動作を行っている間に、ハンドリム13L、13Rのいずれに対しても使用者による操作がなかったか否かを判定する(ステップS11)。そして、いずれの操作もないときには、推定外乱値d
ROTハットをそのまま外乱値推定部317に出力する。一方、少なくとも一方のハンドリム13に対して操作がなされたとき、つまり(T
RH≠0)or(T
LH≠0)のとき、推定外乱値d
ROTハットに「1」よりも小さく、かつゼロよりも大きい値、例えば0.5〜0.6の補正係数を掛けたものを新たな推定外乱値d
ROTハットとし(ステップS12)、これを外乱値推定部317に出力する。なお、補正係数については、予め不揮発性メモリ32に設定しておいてもよいし、制御端末装置200を通じて設定するようにしてもよい。また、補正係数は0.5〜0.6に限定されるものではない。また、補正係数を左右で一致させることは必須ではなく、使用者の利き腕や車体バランスなどの要因に応じて左右で異なる値に設定してもよい。
【0038】
そして、外乱値推定部317で右側車輪2Rの外乱値d
Rハットが推定され、その推定外乱値d
Rハットで右側車輪2R用のアシスト値を補正し、補正アシスト値を算出する。また、左側車輪2Lについても、外乱値
【数3】
【0039】
(なお、本明細書では、推定外乱値d
Lハットと称する)が推定され、その推定外乱値d
Lハットで左側車輪2L用のアシスト値を補正して補正アシスト値を算出する。
【0040】
以上のように、本実施形態では、ハンドリム13に加えられるトルクT
RH、T
LHと、車椅子1の走行をアシストするために車輪2に与えられるモータトルクT
RM、T
LMと、車輪速度ω
R、ω
Lとに基づいて旋回方向の推定外乱値d
ROTハットを求めている。しかも、使用者が左右のハンドリム13の少なくとも一方に対して操作したときには、推定外乱値d
ROTハットを5割ないし6割程度に減じている。したがって、直進走行中に使用者が意図していないハンドリム13への入力のタイミングや大きさのズレが生じた場合であっても、左右にぶれて走行することなく、車椅子1を直進させることができる。このように使用者の意図に近づけた形で車椅子1を動作させることができる。
【0041】
B.第2実施形態
図6は本発明にかかる電動アシスト車椅子の第2実施形態で実行される制御のブロック線図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、外乱値補正部316から出力される推定外乱値d
ROTハットに対してローパスフィルタ処理を加えるLPF処理部318が追加されている点である。なお、その他の構成は第1実施形態と同一であるため、同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
第1実施形態では、使用者によるハンドリム操作の有無に応じて旋回方向の推定外乱値d
ROTハットを補正している。具体的には、ハンドリム操作が行われている間、推定外乱値d
ROTハットを半分程度に減少させている。したがって、使用者がハンドリム13から手を離すと、推定外乱値d
ROTハットが直ちに元に戻って車椅子1の急激な動作変化、例えば急停止などが発生するおそれがある。
【0043】
そこで、第2実施形態では、
図6に示すように、外乱値補正部316と外乱値推定部317との間にLPF処理部318を介挿させ、推定外乱値d
ROTハットの急激な変化を抑えている。特に、本実施形態では、ハンドリム13へ加わるトルクとヨー角速度(左右車輪相対速度)の状況に応じて推定外乱値d
ROTハットを補正すべく、次式
【数4】
【0044】
ただし、
Y(s)はローパスフィルタ処理後の推定外乱値であり、
U(s)はローパスフィルタ処理前の推定外乱値であり、
A、Bは定数であり、
τは時定数である、
で示すローパスフィルタ処理をLPF処理部318で実行する。
【0045】
以上のように、第2実施形態によれば、旋回方向における推定外乱値をそのまま用いるのではなく、当該推定外乱値に対して上記時定数τでローパスフィルタ処理した値を旋回方向における推定外乱値d
ROTハットとして用いている。このため、上記第1実施形態で得られる作用効果に加え、ハンドリム操作による入力がなくなった瞬間に推定外乱値が大きく変化するのを緩和して車椅子1を滑らかに動作させることができる。
【0046】
C.第3実施形態
図7は本発明にかかる電動アシスト車椅子の第3実施形態で実行される制御のブロック線図である。また、
図8はトルク差の補正処理を示すフローチャートである。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、推定外乱値d
ROTハット自体を補正する代わりに、推定外乱値d
ROTハットを導出するのに用いるハンドリムトルク差およびモータトルク差を補正している点である。つまり、主制御部31は
図7に示すようにハンドリムトルク差の補正部319とモータトルク差の補正部320が設けられている。
【0047】
補正部319では、
図8に示すようにしてハンドリムトルク差の補正が行われる。つまり、ステップS31で制御端末装置200により設定されて不揮発性メモリ32に記憶されている補正係数を読み出した後、ハンドリムトルク差(=T
RH−T
LH)に補正係数を掛けてハンドリムトルク差を補正する(ステップS32)。この実施形態では、補正係数は「1」よりも小さく、かつゼロよりも大きい値、例えば0.5〜0.6に設定されており、補正処理によってハンドリムトルク差は小さくなる。また、モータトルク差の補正部320においても、補正部319での補正処理と同様に、0.5〜0.6に設定された補正係数を読み出した後、モータトルク差(=T
RM−T
LM)に補正係数を掛けてモータトルク差を補正する。
【0048】
これらの補正処理を行う理由は次のとおりである。ハンドリム操作による入力のタイミングや大きさのズレが大きくなるほど、ハンドリムトルク差とモータトルク差は大きくなる。これによって、電動アシスト車椅子1は、使用者の意図と異なる運動を実行してしまうことがある。そこで、上記補正処理を行うことでハンドリムトルク差とモータトルク差を実際の値よりも小さくしている。そのため、推定外乱値d
ROTハットを導出するために上記のように補正されたハンドリムトルク差とモータトルク差を用いているので、推定外乱値d
ROTハットも小さくなる。その結果、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0049】
なお、本実施形態では、補正係数を制御端末装置200によって設定しているが、予め不揮発性メモリ32に設定しておいてもよい。また、補正係数は0.5〜0.6に限定されるものではない。また、補正係数を左右で一致させることは必須ではなく、使用者の利き腕や車体バランスなどの要因に応じて左右で異なる値に設定してもよい。
【0050】
また、第3実施形態では、ハンドリムトルク差およびモータトルク差に対して補正処理を施しているが、いずれか一方のみに補正処理を施すように構成してもよい。
【0051】
D.第4実施形態
上記第3実施形態では、
図8に示すようにハンドリムトルク差に補正係数を掛けるという比較的単純な補正処理が行われているが、補正処理の内容はこれに限定されるものではなく、例えばハンドリムトルク差の補正部319を
図9に示すように構成してもよい。以下、
図9を参照しつつ第4実施形態について説明する。
【0052】
図9は本発明にかかる電動アシスト車椅子の第4実施形態で実行される制御を示す図である。この第4実施形態では、
図9に示すように、ハンドリム操作によってハンドリム13に入力されるトルクのうち、旋回方向の入力トルクT
ROTHと、直進方向の入力トルクT
STRHとを次式、
T
ROTH=(T
RH−T
LH)
T
STRH=(T
RH+T
LH)/2
に基づいて求めている。また、車輪速度ω
R、ω
Lから旋回方向の車輪速度ω
ROTと、直進方向の車輪速度ω
STRとを
ω
ROTH=(ω
RH−ω
LH)
ω
STRH=(ω
RH+ω
LH)/2
に基づいて求めている。なお、上記旋回方向の入力トルクT
ROTHはハンドリムトルク差に相当している。
【0053】
そして、これら4つの成分(T
ROTH、T
STRH、ω
ROT、ω
STR)から補正係数αを演算している。ここで、補正係数αが「1」以上となると、ハンドリムトルク差を大きくさせる方向に作用する。そこで、演算された補正係数αが「1」以上であるときには、補正係数αを強制的に「1」に設定する。一方、演算された補正係数αが「1」未満であるときには、演算された補正係数αをそのまま用いる。
【0054】
こうして求められた補正係数αをハンドリムトルク差(T
RH−T
LH)に掛けてハンドリムトルク差の補正処理を行っている。したがって、第4実施形態においても、推定外乱値d
ROTハットを導出するために上記のように補正されたハンドリムトルク差を用いているので、推定外乱値d
ROTハットも小さくなり、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、第4実施形態では、旋回方向の入力トルクT
ROTH、直進方向の入力トルクT
STRH、旋回方向の車輪速度ω
ROTおよび直進方向の車輪速度ω
STRから補正係数αを導出し、これを用いているため、第3実施形態よりも高度にハンドリムトルク差の補正を行うことができる。その結果、推定外乱値が大きく変化するのを緩和して車椅子1を滑らかに動作させることができる。
【0055】
なお、第4実施形態では、ハンドリムトルクの補正部319のみで補正係数αを用いた補正処理を行っているが、モータトルク差の補正部320においても補正係数αを用いた補正処理を行ってもよい。また、ハンドリムトルクの補正部319およびモータトルク差の補正部320の両方で、補正係数αを用いた補正処理を行ってもよいことは言うまでもない。
【0056】
E.第5実施形態
第3実施形態および第4実施形態では、ハンドリムトルク差やモータトルク差に補正係数を掛けて小さくなるように補正しているが、
図10に示すように、補正部319、320としてLPF処理部318H、318Mをそれぞれ設けてもよい。例えば補正部319としてLPF処理部318Hを設けることで、LPF処理部318Hでは、第2実施形態のLPF処理部318と同様のローパスフィルタ処理を行う。なお、ここでは、
Y(s)はローパスフィルタ処理後のハンドリムトルク差であり、
U(s)はローパスフィルタ処理前のハンドリムトルク差であり、
当該ハンドリムトルク差に対して上記時定数τでローパスフィルタ処理した値を用いて推定外乱値d
ROTハットが導出される。したがって、補正部319としてLPF処理部318Hを設けることで、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。この点については、補正部320としてLPF処理部318Mを設ける場合も同様である。なお、
図10に示す第5実施形態では、LPF処理部318H、318Mを設けているが、いずれか一方のみを設けるように構成してもよい。
【0057】
F.第6実施形態
上記第1実施形態ないし第5実施形態では、ハンドリム操作に応じて推定外乱値d
ROTハットを小さくするための具体的構成は相互に異なっている。ここで、説明の便宜から、それらの具体的構成をまとめると、
・第1実施形態:推定後の外乱値補正処理(これを「構成A」という)
・第2実施形態:推定後のローパスフィルタ処理(これを「構成B」という)
・第3実施形態:推定前のトルク差の第1補正処理(これを「構成C」という)
・第4実施形態:推定前のトルク差の第2補正処理(これを「構成D」という)
・第5実施形態:推定前のトルク差の第3補正処理(これを「構成E」という)
となる。そして、これらの構成を適宜組み合わせることも可能である。例えば
図11に示すように、構成Aと構成Bと構成Cとを組み合わせてもよく、それらの構成による相乗効果によって車椅子1を使用者の意図に近づけた形で円滑に動作させることができる。
【0058】
なお、上記構成の組み合わせは
図11に示すものに限定されず、例えば以下のような組み合わせ、
・構成A+構成B+構成D
・構成A+構成B+構成E
・構成A+構成D
・構成A+構成E
においても、
図11に示す第6実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0059】
G.第7実施形態
上記第1実施形態ないし第6実施形態では、上記したように外乱値の推定を行って片流れ防止動作を実行する車椅子1に対して本発明を適用しているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、外乱値を推定せずに片流れ防止動作を実行する車椅子1に対して本発明を適用することができる。ここで、「外乱値の推定を行って片流れ防止動作を実行する」とは、上記第1実施形態ないし第6実施形態で説明したように、ハンドリム13を介して入力されるハンドリムトルクと、その時の車椅子1の動き(車輪速度)とに基づき車椅子モデルを作成し、入力したトルク以外の力、つまり外乱値を推定するとともに、当該推定外乱値によりアシスト値を補正して傾斜アシスト値を求め、当該傾斜アシスト値に基づくアシスト制御によって片流れを防止することを意味している。これに対し、「外乱値を推定せずに片流れ防止動作を実行する」とは、例えば特許文献1に記載されたフィードフォワード制御やフィードバック制御によりアシスト値を補正して傾斜アシスト値を求め、当該傾斜アシスト値に基づくアシスト制御によって片流れを防止することを意味している。以下、外乱値を推定せずに片流れ防止動作を実行する車椅子1に対して本発明を適用した第7実施形態を
図12および
図13を参照しつつ説明する。
【0060】
図12は本発明にかかる第7実施形態の電気的構成を示すブロック図である。
図12(第7実施形態)と
図3(第1実施形態)との比較から明らかなように、第7実施形態にかかる車椅子1が第1実施形態と大きく相違する点は、車体3がロール軸周りに回転して傾斜したときのロール角を検出するロール角センサ41L、41Rが追加されている点であり、その他の電気的構成は第1実施形態と同一である。ただし、第7実施形態では、フィードフォワード制御やフィードバック制御によりアシスト値を補正して片流れ防止を図っており、制御方式は大きく相違している。
【0061】
図13は
図12に示す電動アシスト車椅子で実行される制御のブロック線図である。各コントローラ30R、30Lでは、不揮発性メモリ32に記憶されているプログラムやデータに基づいて主制御部31が種々の演算処理などを行い、両主制御部31で車椅子1全体を制御する。ここでは、第7実施形態の理解を容易にするため、まず本発明の特徴部分(ハンドリムトルク差を補正する第1補正部321、旋回方向におけるアシストトルクを補正する第2補正部322、フィードバック制御後の旋回方向におけるアシストトルクを補正する第3補正部323および傾斜面補正値をさらに補正する第4補正部324)を除き、両主制御部31による基本的なアシスト制御の内容について説明する。その後で、第1補正部321ないし第4補正部324で実行される調整内容について説明する。
【0062】
主制御部31は、
図13に示すように、ハンドリム操作によってハンドリム13に入力されるトルクT
RH、T
LHに基づいて、直進方向の入力トルクT
STRHと、旋回方向の入力トルクT
ROTHとを求める。すなわち、次式
T
STRH=(T
RH+T
LH)/2
T
ROTH=(T
RH−T
LH)
により入力トルクT
STRH、T
ROTHを求める。
【0063】
また、直進方向については入力トルクT
STRHに対して関数
【数5】
【0064】
ただし、
α
STR:直進方向アシスト率、
τ
STR:直進方向アシストトルク用時定数
を掛け合わせて直進方向のアシストトルクT
STRAを求める。
【0065】
また、旋回方向については入力トルクT
ROTHに対して関数
【数6】
【0066】
ただし、
α
ROT:旋回方向アシスト率、
τ
ROT:旋回方向アシストトルク用時定数
を掛け合わせて旋回方向のアシストトルクT
ROTAを求める。さらに、旋回方向については、現時点での旋回方向のモータトルクT
ROTMからアシストトルクT
ROTAを減算する。このモータトルクT
ROTMは車椅子1の走行をアシストするために車輪2に与えられるモータトルクT
RM、T
LMの差(=T
RM−T
LM)である。
【0067】
また、上記のようにしてモータトルクT
ROTMに基づく旋回方向のアシストトルクのフィードバック補正によって得られたフィードバック後の旋回方向のアシストトルクT
FBに対し、傾斜面補正値T
ROLLを加算して旋回方向のアシストトルクをフィードフォワード補正する。この傾斜面補正値T
ROLLは、ロール角センサ41L、41Rで検出された車体(=フレーム3+シート5)のロール角θに基づいて傾斜面補正部325が路面の傾斜している方向と傾斜角とから重力に従って落ちてしまう力を算出し、これを補正するためのモータトルク(モータ出力調整値)を傾斜面補正値T
ROLLとして出力する。
【0068】
さらに傾斜面補正値T
ROLLで旋回方向のアシストトルクをフィードフォワード補正して得られる旋回方向のアシストトルクT′
ROTAの半分の値と、上記直進方向のアシストトルクT
STRAとに基づいて、右側車輪2RのアシストトルクT
RAと左側車輪2LのアシストトルクT
LAとを求める。すなわち、次式
T
RA=T
STRA+(T′
ROTA/2)
T
LA=T
STRA−(T′
ROTA/2)
によりアシストトルクT
RA、T
LAが決定され、駆動モータ21が駆動される。
【0069】
このようにフィードバック制御とフィードフォワード制御とを加えることで片流れ防止動作を実行している。
【0070】
しかしながら、上記のように構成された車椅子1においても、ハンドリム操作による入力のタイミングや大きさのズレが大きくなるほど、ハンドリムトルク差とモータトルク差は大きくなり、使用者の意図と異なる運動を実行してしまう。
【0071】
そこで、第7実施形態では、第1補正部321が、第3実施形態の補正部319と同様に、制御端末装置200により設定されて不揮発性メモリ32に記憶されている補正係数を読み出した後、旋回方向の入力トルクT
ROTHに補正係数を掛けて旋回方向の入力トルクT
ROTHを補正する。この実施形態では、補正係数は「1」よりも小さく、かつゼロよりも大きい値、例えば0.5〜0.6に設定されており、補正処理によって旋回方向の入力トルクT
ROTHは小さくなる。
【0072】
この補正処理を行う理由は次のとおりである。ハンドリム操作による入力のタイミングや大きさのズレが大きくなるほど、ハンドリムトルク差、つまり旋回方向の入力トルクT
ROTHが大きくなる。これによって、電動アシスト車椅子1は、使用者の意図と異なる運動を実行してしまうことがある。そこで、第1補正部321での補正処理により旋回方向の入力トルクT
ROTHを実際の値よりも小さくすることで、旋回方向のアシストトルクT′
ROTAも小さくなる。その結果、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0073】
また、第7実施形態では、第2補正部322が、第3実施形態の補正部319と同様に、制御端末装置200により設定されて不揮発性メモリ32に記憶されている補正係数を読み出した後、フィードバック制御前の旋回方向のアシストトルクT
ROTA、つまり左右車輪2のアシストトルクの差に補正係数を掛けて旋回方向のアシストトルクT
ROTAを補正する。この実施形態では、補正係数は「1」よりも小さく、かつゼロよりも大きい値、例えば0.5〜0.6に設定されており、補正処理によって旋回方向のアシストトルクT
ROTAは小さくなる。その結果、第1補正部321と同様の作用効果が得られる。
【0074】
また、第7実施形態では、第3補正部323が制御端末200により設定されて不揮発性メモリ32に記憶されている補正係数を読み出した後、フィードバック後の旋回方向のアシストトルクT
FBに補正係数を掛けてアシストトルクT
FBを補正する。この実施形態では、補正係数は「1」よりも小さく、かつゼロよりも大きい値、例えば0.5〜0.6に設定されており、補正処理によってフィードバック後の旋回方向のアシストトルクT
FBは小さくなる。その結果、第1補正部321と同様の作用効果が得られる。
【0075】
さらに、第7実施形態では、第4補正部324が制御端末200により設定されて不揮発性メモリ32に記憶されている補正係数を読み出した後、傾斜面補正値T
ROLLに補正係数を掛けて傾斜面補正値T
ROLLを補正する。この実施形態では、補正係数は「1」よりも小さく、かつゼロよりも大きい値、例えば0.5〜0.6に設定されており、補正処理によって傾斜面補正値T
ROLLは小さくなる。その結果、第1補正部321と同様の作用効果が得られる。
【0076】
このように第7実施形態では、旋回方向のアシストトルクT′
ROTA、T
FBが本発明の「傾斜アシスト値」に相当しており、第1補正部321ないし第4補正部324を設けることでハンドリム操作に応じた傾斜アシスト値の補正が行われている。ただし、第1補正部321ないし第4補正部324の一部のみを設けるように構成してもよい。要は、第1補正部321ないし第4補正部324のうちの少なくとも1つを設けることで、車椅子1を使用者の意図に近づけた形で動作させることができる。
【0077】
H.第8実施形態
上記第7実施形態では、第1補正部321ないし第4補正部324は
図13に示すように補正対象(旋回方向の入力トルクT
ROTH、フィードバック制御前の旋回方向のアシストトルクT
ROTA、フィードバック後の旋回方向のアシストトルクT
FB、傾斜面補正値T
ROLL)に対し、補正係数を掛けるという比較的単純な補正処理が行われている。しかしながら、補正処理の内容はこれに限定されるものではない。例えば第4実施形態と同様に、4つの成分(T
ROTH、T
STRH、ω
ROT、ω
STR)から補正係数αを演算し、当該補正係数αに基づいて補正対象を補正するようにしてもよい。なお、第8実施形態においても、第1補正部321ないし第4補正部324の全部を設けることは必須要件ではなく、これらのうちの少なくとも1つを設けることで、車椅子1を使用者の意図に近づけた形で動作させることができる。
【0078】
I.第9実施形態
第7実施形態および第8実施形態では、補正対象に補正係数を掛けて小さくなるように補正しているが、第5実施形態と同様に、第1補正部321ないし第4補正部324としてLPF処理部をそれぞれ設けてもよい。また、第9実施形態においても、第1補正部321ないし第4補正部324の全部を設けることは必須要件ではなく、これらのうちの少なくとも1つを設けることで、車椅子1を使用者の意図に近づけた形で動作させることができる。
【0079】
J.その他
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能であり、以下のように構成してもよい。
【0080】
上記第1実施形態ないし第6実施形態では、右側車輪2Rについては右輪コントローラ30Rにより制御し、左側車輪2Lについては左輪コントローラ30Lにより制御しているが、例えば右輪コントローラ30Rで上記制御を行い、モータへの動作指令のみを共有するように構成してもよい。一方、上記第7実施形態ないし第9実施形態において、第1実施形態ないし第6実施形態と同様に、左右それぞれが
図13に示す制御を行うように構成してもよい。
【0081】
上記第7実施形態ないし第9実施形態では、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを組み合わせているが、いずれか一方のみを行って片流れ防止動作を行う電動アシスト車椅子に対して本発明を適用することができる。
【0082】
上記実施形態では、補正係数のすべてを0.5〜0.6に設定しているが、補正係数はこれに限定されるものではなく、また全てが必ずしも一致している必要はなく、制御端末200などにより適宜設定してもよい。
【0083】
以上説明したように、上記実施形態においては、シート5が取り付けられたフレーム3が本発明の「車体」の一例に相当している。また、駆動モータ21R、21Lがそれぞれ本発明の「右側駆動部」および「左側駆動部」の一例に相当している。また、外乱値補正部316による外乱値補正、補正部319によるハンドリムトルク差の補正、補正部320によるモータトルク差の補正、LPF処理部318、318H、318Mによるローパスフィルタ処理、第1補正部321によるハンドリムトルク差の補正、第2補正部322による旋回方向におけるアシストトルクの補正、第3補正部323によるフィードバック制御後の旋回方向におけるアシストトルクの補正、ならびに第4補正部324による傾斜面補正値の補正が、本発明の「ハンドリム操作に応じてアシスト値を補正」の一例に相当している。さらに、ロール角センサ41R、41Lが本発明の「ロール角検出部」の一例に相当している。
【0084】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明は以下にように構成してもよい。
【0085】
制御部は、ハンドリム操作により右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、右側補助動力および左側補助動力の差と、車体のヨー角速度とに基づいて車体の旋回方向における外乱値を推定し、外乱値に基づいてアシスト値を補正して傾斜アシスト値を求め、ハンドリム操作があるときに外乱値を小さくする。
【0086】
制御部はハンドリム操作の有無に応じて外乱値を補正する。
【0087】
制御部は、補正された外乱値に対し、ハンドリム操作により右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、車体のヨー角速度とに基づきローパスフィルタ処理に施す。
【0088】
制御部は、右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、右側補助動力および左側補助動力の差との少なくとも一方を補正することで外乱値を補正する。
【0089】
制御部は、右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、右側補助動力および左側補助動力の差との少なくとも一方に、1よりも小さくかつゼロよりも大きい補正係数を掛けて補正する。
【0090】
制御部は、右側ハンドリムに加えられるトルク、左側ハンドリムに加えられるトルク、右側補助動力および左側補助動力に基づいて1以下でかつゼロよりも大きい補正係数を算出し、右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、右側補助動力および左側補助動力の差との少なくとも一方に補正係数を掛けて補正する。
【0091】
制御部は、右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、右側補助動力および左側補助動力の差との少なくとも一方に対し、ハンドリム操作により右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、車体のヨー角速度とに基づくローパスフィルタ処理に施す。
【0092】
制御部は、旋回方向の車輪速度によりアシスト値をフィードバック制御して傾斜アシスト値を求め、右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、右側補助動力および左側補助動力の差と、フィードバック制御されたアシスト値とのうちの少なくとも一つを補正する。
【0093】
車体のロール角を検出するロール角検出部を備え、制御部は、ロール角検出部で検出されたロール角に対応する傾斜面補正値に基づいてアシスト値をフィードフォワード制御して傾斜アシスト値を求め、右側ハンドリムおよび左側ハンドリムに加えられるトルクの差と、右側補助動力および左側補助動力の差と、傾斜面補正値とのうちの少なくとも一つを補正する。