(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリクロロブタジエンが、2-クロロ-1,3-ブタジエンのポリマー、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンのポリマー、および2-クロロ-1,3-ブタジエンと2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとを含むコポリマーからなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
前記カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、前記ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の10〜60重量%の塩素を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
前記架橋剤が、カルバメート、チオカルバメート、チウラム、チオ尿素、チアゾール、グアニジン、アルデヒド/アミン系加硫促進剤、イオン性架橋剤、有機金属酸化物および無機金属酸化物、有機金属水酸化物および無機金属水酸化物、有機過酸化物および無機過酸化物、共有結合性架橋剤、硫黄、架橋性モノマー、反応性オリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー、官能性架橋型(crosslinkable)ポリマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートの誘導体、メチレンビスアクリルアミドの誘導体、ホルムアルデヒドを含まない架橋剤、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、ジビニルスルホン、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンジブロックコポリマー、スチレントリブロックコポリマー、アクリルポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される第2のエラストマーをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
前記第2のエラストマーが、カルボキシル化エラストマー、非カルボキシル化エラストマー、または、カルボキシル化エラストマーと非カルボキシル化エラストマーの混合物である、請求項13に記載の組成物。
前記カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、カルボン酸またはエステルのグラフトを、前記ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の約0.5〜約5重量%、約0.5〜約4重量%、約0.5〜約3.5重量%、または約1重量%〜約2.5重量%の量で含有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、主鎖中にカルボン酸基またはエステル基を含有しないポリクロロブタジエンポリマーである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
前記カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、カルボン酸またはエステルのグラフトを、前記ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01〜4重量%の量で含有する、請求項18に記載の浸漬品。
前記エラストマーフィルムが、1〜15枚、2〜6枚、2〜5枚、1〜4枚、2〜3枚、または1〜3枚の層を含み、かつ各層が、別々の浸漬させる工程によって生成される、請求項18〜22のいずれか一項に記載の浸漬品。
約2000psi超もしくは約2000psiの引張強さ、約100〜2000psiの300%モジュラス、約200〜3000psiの500%応力、および/または約400〜1500%の破断伸びを有する、請求項18〜23のいずれか一項に記載の浸漬品。
カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、主鎖中にカルボン酸基またはエステル基を含有しないポリクロロブタジエンポリマーである、請求項18〜24のいずれか一項に記載の浸漬品。
(i) 成形具上にエラストマーフィルム形成組成物の層を生成するために、該成形具を、(a)カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンと(b) 1つまたは複数の架橋剤とを含むエラストマーフィルム形成組成物に浸漬させる工程であって、
該カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、カルボン酸またはエステルのグラフトを、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01重量%〜5重量%の量で含有する工程、ならびに
(ii) 該エラストマーフィルム形成組成物を乾燥および硬化させる工程
を含む、エラストマーフィルムを製造する方法。
エラストマーフィルム形成組成物中のカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、カルボン酸またはエステルのグラフトを、前記ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01〜4重量%の量で含有する、請求項26に記載の方法。
カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、主鎖中にカルボン酸基またはエステル基を含有しないポリクロロブタジエンポリマーである、請求項26〜31のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本発明の特定の態様のエラストマーフィルム形成組成物、浸漬品、手袋、その製造方法、およびその使用を以下で説明する。
【0031】
本発明は特に、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを含有する組成物に、および該組成物から作製された手袋または他の製造物などの浸漬品に関する。本発明の組成物を、例えば添加剤の添加によって、または他の成分の相対量を改変することによって、本組成物から作製された浸漬品または手袋の目的に合うように修正することができることが認識されよう。
【0032】
エラストマーフィルム形成組成物
エラストマーフィルム形成組成物は、クロロブタジエン単位と1個または複数のカルボン酸残基またはそのエステルとを含有するポリマーの液体中分散液または液体中乳濁液を含む。本組成物は一般に、ポリマーおよび架橋剤を液体媒体中に含む。
【0033】
液体媒体は通常は水であるが、アルコール(脂肪族アルコールおよび芳香族アルコールを含む)または芳香族溶媒などの他の溶媒を使用してもよい。好適な溶媒の例としては水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ブタンジオール、ジエタノールアミン、ブトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリン、メチルジエタノールアミン、プロパンジオール、ペンタンジオール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、フルフラールアルコール、ベンジルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ベンゾニトリル、クロロベンゼン、および1,2-ジクロロベンゼンが挙げられる。好ましくは、使用する溶媒は水である。水を使用する場合、ポリマーはコロイド形態であり、加工および取扱いは簡単になる。
【0034】
溶媒、好ましくは水は、希釈剤として、組成物全体の所要の全固形分、またはエラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分の所要の全固形分に到達する量で添加される。一態様では、溶媒は組成物全体の40〜95重量%を構成する。別の態様では、本組成物は水を組成物全体の40〜95重量%の量で含有する。以下でさらに詳細に説明する他の任意の成分が組成物中に存在してもよい。
【0035】
エラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分の全固形分は組成物の5重量%〜60重量%である。エラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分は、当該量のカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン、および、存在する場合には当該量の第2のエラストマーを含む。全固形分パーセント(TSC%)はこの範囲内で変動しうる。好ましくは、エラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分の全固形分は、約5〜55%、10〜60%、10〜55%、15%〜60%、15%〜55%、20%〜60%、20%〜55%、5%〜50%、10%〜50%、20%〜50%、30%〜60%、30%〜55%、30%〜50%、35%〜60%、35%〜50%、40%〜60%、40%〜55%、40%〜50%、45%〜60%、45%〜55%、または45%〜50%である。
【0036】
エラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分と他の成分は、所望の濃度に到達するように液体媒体(水などの)で希釈される。エラストマーフィルム形成組成物の全固形分は組成物の5重量%〜60重量%である。全固形分パーセント(TSC%)はこの範囲内で変動しうる。好ましくは、エラストマーフィルム形成組成物の全固形分は約5〜55%、10〜60%、10〜55%、15%〜60%、15%〜55%、20%〜60%、20%〜55%、5〜50%、10%〜50%、20%〜50%、30%〜60%、30%〜55%、30%〜50%、35%〜60%、35%〜50%、40%〜60%、40%〜55%、40%〜50%、45%〜60%、45%〜55%、または45%〜50%である。
【0037】
一般に、手術用手袋または健康診断用手袋などの薄手のまたは使い捨ての手袋を形成するにあたっては、全固形分はこの範囲の下限に近くなる。例えば、全固形分は以下の範囲のうち1つの範囲内でありうる: 5〜50%、10〜50%、5〜40%、10〜40%、5〜35%、10〜35%、5%〜30%、10〜30%、5%〜25%、10〜25%、5%〜20%、10〜20%、15%〜50%、15%〜40%、15%〜35%、15%〜30%、15%〜25%、15%〜20%、20%〜50%、20%〜40%、20%〜35%、20%〜30%、20%〜25%、25%〜35%、35%〜40%、または35%〜50%。家庭用手袋または工業用手袋などのより厚手の手袋を形成するにあたっては、全固形分がより高くなる傾向にあるか、または、手袋がより多くの層から生成される。したがって、より厚手の手袋では、全固形分は以下の範囲のうち1つの範囲内である傾向にある: 5%〜60%、10〜60%、15〜60%、20〜60%、25〜60%、30%〜60%、35%〜60%、40〜60%、5〜55%、10%〜55%、15〜55%、20〜55%、25〜55%、30%〜55%、35%〜55%、40%〜55%、5〜50%、10%〜50%、15〜50%、20〜50%、25〜50%、30%〜50%、35%〜50%、40%〜50%、45〜55%、50〜60%、または40〜50%。
【0038】
本発明のエラストマーフィルム形成組成物を使用して自立フィルムまたは無支持フィルムを形成することができる。自立フィルムまたは無支持フィルムは、フィルムが接着または付着している他の構造成分または層なしで存在するフィルムである。
【0039】
本発明の技術分野においては、ポリマーの量を100phr(「ゴム」100部当たりの部)と呼ぶことが一般的であり、かつエラストマーフィルム形成組成物の残りの成分の相対量をポリマー100phrに対する重量部の数として算出することが一般的である。したがって、重量比で組成物中のポリマーの量の1/100である架橋剤の量について、架橋剤の量を1.0phrと呼ぶ。
【0040】
当技術分野においては、任意のポリマーを一般的に指すように「ラテックス」または「ゴム」という表現を使用することも一般的である。したがって、特に以下の例においては、これらの用語が浸漬用組成物のポリマーを指すための省略表現として使用されていることを理解すべきである。
【0041】
ポリマー
本発明のエラストマーフィルム形成組成物において使用されるポリマーは、1個または複数のカルボン酸残基またはそのエステルがグラフト化されているクロロブタジエン単位からなる単一のポリマーを含む。これらのポリマーでは、カルボン酸残基が、ポリマーの骨格を形成するクロロブタジエン単位に共有結合している。
【0042】
ポリマーを「カルボキシレート置換もしくはエステル置換ポリクロロブタジエン」または「カルボキシレートグラフト化もしくはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン」と呼ぶ場合がある。
【0043】
ポリマー骨格は、1種のクロロブタジエンモノマーを含有するホモポリマー、または、2種もしくはそれ以上の異なるクロロブタジエンモノマーを含有するコポリマーでありうる。同様に、ポリマー骨格にグラフト化されるカルボン酸残基またはそのエステルは、1種のカルボン酸残基もしくはそのエステル、または2種以上のカルボン酸残基もしくはそのエステルからなりうる。
【0044】
ポリクロロブタジエン骨格はクロロブタジエン単位を含む。いくつかの態様では、ポリマーの主鎖中にカルボン酸基またはそのエステルが存在しない。カルボン酸残基はポリクロロブタジエン上の置換基としてクロロブタジエン単位に共有結合している。ポリマーを「カルボン酸置換もしくはエステル置換ポリマー」または「カルボン酸グラフト化もしくはエステルグラフト化ポリマー」と呼ぶ場合がある。
【0045】
一般に、ポリクロロプレンの安定性は、自己触媒的脱塩化水素反応による分解が理由で、他のラテックスに比べて低い。したがって、ポリクロロプレンは一般に、そのような分解を回避するために高pHで調製される。この場合、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンは約8.5〜約13.5の範囲内のpHで調製される。好ましくは、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンは約8.5〜11、9.0〜11.5、9.5〜12、10〜12.5、11〜13、11.5〜13.5の範囲内のpHを有する。pHを例えば酸または塩基の付加によって組成物の目的に合うように修正することができることが認識されよう。
【0046】
本発明のエラストマーフィルム形成組成物において使用されるカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンの貯蔵寿命は、カルボキシル基の存在によって影響されうる。いくつかの場合では、ポリマーおよび/またはエラストマー組成物をより低温で貯蔵し、pHをモニタリングし、必要な場合に(例えばアルカリ溶液、好ましくは水酸化カリウムおよび/または水酸化アンモニウムの添加によって)調節してもよい。
【0047】
カルボキシレートグラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン
カルボキシレートグラフト化またはエステルグラフト化ポリマーは、クロロプレン単位を含有するポリマー上に1個または複数のカルボン酸残基またはそのエステルをグラフト化することによって調製することができる。グラフト工程を供給業者が行い、かつポリマーを製造業者に、エラストマーフィルム形成組成物の調製、および最終的にはエラストマーフィルムの製造または手袋などの浸漬品の製造において使用されるカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリマーとして提供することができる。グラフト工程を製造業者が、エラストマーフィルム形成組成物の調製における第1の段階として行うこともできる。
【0048】
グラフト工程を製造業者が行う場合、生成されるグラフト化ポリマーの可撓性によって、組成物から生成されるフィルムまたは浸漬品の加工性を改善し、性質を改善することができ、フィルムを作製する際に使用される材料の量を節約することができる。
【0049】
多くの場合、市販のポリマー配合物は様々であることができ、かつ、異なる供給業者が提供するポリマーの間には差が存在しうる。したがって、製造業者がグラフト工程をその場で行う場合、グラフト化ポリマーを改善された一貫性を伴って生成することができ、製造業者は、生成するグラフト化ポリマーの種類を制御することができるか、または、最終的に生成するエラストマーフィルムまたは浸漬品の所期の用途に最も好適なグラフト化ポリマーを作製するためにグラフトプロセスに対する特定の調節を行うことができる。
【0050】
一例として、ポリマー骨格にグラフトされた特定量のカルボン酸またはエステルを有するグラフト化ポリマーを生成するために、プロセスをカスタマイズすることができる。より多い量のカルボン酸またはエステルをポリマー中に有するカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンがいくつかの用途に好ましい場合がある一方で、より少ない量のカルボン酸またはエステルをポリマー中に有するカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが他の用途に好ましい場合がある。グラフトプロセスをインサイチューで行うことによって、製造業者が、ポリマー骨格にグラフト化されるカルボン酸またはエステルの量などのパラメータを制御すること、およびそのエラストマーフィルム形成組成物をその最終用途に合わせて調節することが可能になる。
【0051】
グラフト工程は標準的方法を使用して行われ、任意の好適なグラフト技術を使用してポリクロロプレンおよび好適なカルボン酸またはそのエステルからポリマーを作製することができることが理解されよう。グラフト工程は、その内容が参照により本明細書に組み入れられる"Polymer Grafting and Cross-linking" Edited by Dr.Amit Bhattacharya, Dr.James W. Rawlins, and Dr.Paramita Ray, John Wiley & Sons, Inc., 2009および"Grafting: a versatile means to modify polymers: Techniques, factors and applications" Bhattacharyaa, A. and Misrab, B.N., Progress in Polymer Science, 2004, Volume 29, Issue 8, pages 767-814に記載の様々な方法のうちの1つにより行うことができる。
【0052】
グラフトとは、カルボン酸基またはエステル基をポリマー鎖に共有結合させることによってクロロブタジエンのポリマーまたはコポリマーを修飾する方法のことである。特に、グラフトは、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを調製するために使用される。
【0053】
グラフトは、化学的手段によって(例えばフリーラジカル反応もしくはイオン性反応によって)、放射線、光化学技術、もしくはプラズマ誘起技術を使用して、または酵素的グラフトによって実現することができる。
【0054】
一例として、クロロプレン単位のポリマーを含有する溶液を調製して、反応可能な(reactable)カルボン酸またはエステル残基を添加することによって、グラフト化ポリマーを形成することができる。次にクロロプレン単位のポリマーおよび反応可能なカルボン酸またはエステル残基をフリーラジカル反応またはイオン性反応に供し、放射線、光化学刺激、プラズマ誘起技術、または酵素に曝露して、反応可能なカルボン酸またはエステル残基をクロロプレン単位のポリマーに共有結合させることができる。
【0055】
いくつかの態様では、グラフトは化学的手段によるものであり、開始剤によってフリーラジカルが生成され、フリーラジカルはポリマーに移動され、続いて反応可能なカルボン酸またはエステル残基と反応して、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリマーを形成する。他の態様では、放射線照射を使用してポリマー上にフリーラジカルを形成することができ、次にフリーラジカルは反応可能なカルボン酸またはエステル残基と反応して、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリマーを形成する。一般に、フリーラジカルの発生は直接的方法または間接的方法により起こりうる。間接的方法によるフリーラジカルの生成の一例は、例えば過硫酸塩による酸化還元反応を通じたフリーラジカルの生成である。いくつかの態様では酸化還元触媒系が使用される。
【0056】
いくつかの態様では、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンは、ポリクロロブタジエンポリマーと、反応可能なカルボン酸またはエステル残基とを架橋剤または連鎖移動剤の存在下で組み合わせることによって調製される。架橋剤または連鎖移動剤は例えばジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、またはポリビニルアルコール(PVA)などの乳化剤兼安定剤でありうる。ポリクロロブタジエンポリマー、反応可能なカルボン酸またはエステル残基、および架橋剤または連鎖移動剤を溶液中で組み合わせることができ、乳化させて水中油型乳濁液を形成することができる。触媒を必要に応じて添加して、グラフトプロセスを開始させ、維持することができる。好適な触媒の例としては亜硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムが挙げられる。
【0057】
グラフトは通常、反応可能なカルボン酸またはエステル残基がほとんどまたは完全にポリマー上にグラフト化されるまで行われる。例えば、反応可能なカルボン酸またはエステル残基の90%超、好ましくは約98%がポリクロロブタジエン上にグラフト化された際に、完全な変換が実現されうる。グラフト度は、分析的方法を使用して未反応カルボン酸またはエステルの量を決定し、カルボン酸またはエステルの添加量からこの量を差し引くことによって確認することができる。
【0058】
任意の他の好適なグラフト技術を使用してカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを作製することができることが認識されよう。さらに、使用するグラフト技術を、例えば触媒の添加、異なる架橋剤もしくは連鎖移動剤の使用、または成分の相対量の改変によって修正することができる。
【0059】
いくつかの場合では、カルボン酸基がpHを低下させるものであり、クロロプレンポリマーを不安定化しうることから、グラフト中にpHを制御することが重要である。通常、グラフト工程は、カルボン酸残基またはそのエステルをゆっくりと添加することで行われる。
【0060】
手袋製造業者の末端においてカルボン酸基またはその誘導体(エステル-アクリレート)を組み合わせることによるポリクロロプレンラテックスのグラフトは、しかるべき注意によって可能である。適切なpH調整剤および/または乳化剤を使用してグラフト工程を行うことが必要でありうる。好ましくは、クロロプレン単位を含有するポリマーをカルボン酸残基のエステルとグラフト化し、場合によっては続いてエステルをカルボン酸残基に変換する。いくつかの場合では、カルボン酸残基は、ポリマーを不安定化しうるか、または有害でありうる。また、未反応カルボン酸残基を取り除くことが必要な場合がある。
【0061】
クロロブタジエン単位
任意の塩素化ブタジエン単位を使用して本発明のカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを形成することができる。好適なクロロブタジエン単位の例としては、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
一態様では、2-クロロ-1,3ブタジエンおよび2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの組み合わせがポリマー骨格中に存在しており、続いてこれをカルボン酸またはそのエステルとグラフト化することができる。別の態様では、2-クロロ-1,3ブタジエンまたは2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンがホモポリマーを形成するために使用されており、続いてこれをカルボン酸またはそのエステルとグラフト化することができる。
【0063】
エラストマーフィルム形成組成物において使用されるポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の数および種類は、異なりうるものであり、該組成物が使用される目的に依存する。クロロブタジエン単位の数、および該クロロブタジエン単位の塩素化の程度を、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の重量パーセントとして表すことができる。
【0064】
特定の塩素化レベルを有するポリマーを生成するために、ポリクロロブタジエンの調製を、ポリクロロブタジエンを形成するために使用するクロロブタジエンおよびジクロロブタジエンの相対量を調整することによって行うことができる。
【0065】
一態様では、ポリマーは、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の約10〜約60重量%の塩素を含む。好ましくは、ポリマーは、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の約10重量%〜約58重量%、約25重量%〜約60重量%、約25重量%〜約58重量%、約30重量%〜約60重量%、約30重量%〜約58重量%、約30重量%〜約45重量%、または約35重量%〜約45重量%の塩素を含む。より好ましくは、ポリマーはポリマー全体の約40重量%の塩素を含む。
【0066】
塩素含有量がこの範囲の下限にある場合、得られた浸漬品はより柔らかくなり、より安定になり、公称強度(nominal strength)を有する。塩素含有量がこの範囲の上限にある場合、得られた浸漬品はより強靱になる。塩素含有量が高くなるほど、分子量が増加し、ZnOとの結合反応性が増加すると考えられる。
【0067】
より低い塩素含有量を使用する場合、エラストマーフィルム形成組成物は、より柔らかいかまたはより弾性が高いフィルムが着用者に良好な触覚を与えることができる手術用手袋などの用途における使用に好適でありうる。例えば、より薄く、より柔らかく、より弾性の高いフィルムの生成に好適な塩素含有量は、約10〜50%、例えば約10〜45%、約25%〜45%、約10〜40%、約25%〜40%、約30〜45%、約30〜40%、約10〜35%、約25%〜35%、約20%〜30%、または約10〜30%の範囲内でありうる。
【0068】
より高い塩素含有量を使用する場合、エラストマーフィルム形成組成物は、より硬くより弾性が低いフィルムが必要である家庭用手袋、工業用手袋、または特別丈夫な手袋などの用途における使用に好適でありうる。例えば、より硬くより弾性が低いフィルムの生成に好適な塩素含有量は約30〜60%、例えば約30〜58%、約35〜60%、約35〜58%、約40〜60%、約40〜58%、約40〜55%、約45〜60%、約45〜58%、約40〜50%、約50〜60%、または約50〜58%の範囲内でありうる。
【0069】
カルボン酸残基
任意のカルボン酸またはエステル残基を本発明のエラストマーフィルム形成組成物において使用することができる。一例として、カルボン酸またはそのエステルは単純に、カルボン酸置換基-C(O)-OH、またはRがアルキル基であるそのエステル-C(O)-ORでありうる。いくつかの態様では、アルキル基は1〜10個の炭素原子または1〜4個の炭素原子を有する。別の例として、カルボン酸またはエステルは、カルボン酸含有またはエステル含有モノマーでありうる。
【0070】
好適なカルボン酸含有またはエステル含有モノマーとしてはエチレン性不飽和カルボン酸またはそのエステルが挙げられる。カルボン酸および/または誘導体は、飽和または不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、またはマルチカルボン酸を含む任意の種類のものであることができ、あるいは、本質的に脂肪族または芳香族であることができる。好適なカルボン酸の例としてはメタクリル酸、アクリル酸、またはテレフタル酸が挙げられる。好適なカルボン酸誘導エステルの例としては酢酸ビニル、メチルアクリレート、メタクリレートエステル、エチレンジオールジメタクリレート、および/または他の関連アクリレートモノマーがある。
【0071】
一態様では、カルボン酸またはエステル、およびそのシスまたはトランス異性体は式:
CR
1H=CR
2-C(O)-OR
3
または
CR
1H=CR
2-O-C(O)-R
3
を有する:
式中、
R
1は水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、-C(O)-OR
4、または-R
5-C(O)-OHであり、ここでR
4は水素、または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、R
5は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり;
R
2は水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、またはカルボキシメチル基であり;
R
3は水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、または-R
6O-C(O)-CR
7=CR
8であり、ここでR
6は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、R
7およびR
8はそれぞれ独立して水素、または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基である。
【0072】
好適なカルボン酸またはエステルの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メタクリレートエステル、エチレンジオールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート(例えばBASFによる市販の1,3,BDDMAを使用することができる)、メチルメタクリレート(例えばThe DOW Chemical CompanyもしくはRohm&Haasによる市販のMMA)、ブチルメタクリレート(BMA)、および氷メタクリル酸(GMAA)、他の関連アクリレートモノマー、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
エラストマーフィルム形成組成物において使用されるグラフト化ポリクロロプレンポリマー中に存在するカルボン酸またはエステル残基の数および種類は異なりうるものであり、該組成物が使用される目的に依存する。グラフト化ポリクロロプレンポリマー中に存在するカルボン酸またはエステル残基の数はポリマーに対する重量部で表すことができる。カルボン酸含有量は特に限定されない。
【0074】
特定の量のカルボン酸またはエステルを有するカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロプレンを生成するために、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンの調製を、ポリマーを形成するために使用するポリクロロブタジエンの量に対するカルボン酸またはエステルの使用量を調整することによって行うことができる。カルボン酸もしくはエステルの量(またはポリマーのグラフト度もしくはカルボキシル化度)は、分析的方法を使用して未反応カルボン酸またはエステルの量を決定し、カルボン酸またはエステルの添加量からこの量を差し引くことによって確認することができる。
【0075】
一態様では、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンは、カルボン酸またはエステルを、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01重量%〜8重量%の量で含有する。言い換えれば、クロロプレン対CO
2H基のモル比は1:0.000196〜1:0.1573であり、CO
2H基は約6モル毎〜5102モル毎のクロロブタジエン単位上に存在する。言い換えれば、いくつかの態様では、ポリマー中のクロロブタジエン単位の0.02%〜15%がカルボン酸基に結合している。好ましくは、ポリマーはカルボン酸残基またはそのエステルを、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の約0.5〜約5重量%、約0.5〜約4重量%、約0.5〜約3.5重量%、または約1重量%〜約2.5重量%の量で含有する。
【0076】
ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01〜8重量%の量でカルボン酸基またはエステル基を有するカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを使用することによって、改善された性質を有するエラストマーフィルムが提供されることができる。一例として、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01〜8重量%の量でカルボン酸基またはエステル基を有することによって、薄いフィルム、例えば0.01〜3.0mm、例えば0.01〜2.5mm、0.01〜2.0mm、0.01〜1.5mm、0.01〜1.0mm、0.01〜0.5mm、0.01〜0.4mm、0.01〜0.3mm、0.01〜0.2mm、0.02〜0.2mm、0.01〜0.10mm、0.03〜3.0mm、0.03〜2.5mm、0.03〜2.0mm、0.03〜1.5mm、0.03〜1.0mm、0.03〜0.5mm、0.03〜0.4mm、0.03〜0.3mm、0.03〜0.2mm、0.03〜0.10mm、0.05〜3.0mm、0.05〜2.5mm、0.05〜2.0mm、0.05〜1.5mm、0.05〜1.0mm、0.05〜0.5mm、0.05〜0.4mm、0.05〜0.3mm、0.05〜0.2mm、0.05〜0.10mm、0.08〜3.0mm、0.08〜2.5mm、0.08〜2.0mm、0.08〜1.5mm、0.08〜1.0mm、0.08〜0.5mm、0.08〜0.4mm、0.08〜0.3mm、0.08〜0.2mm、0.08〜0.10mm、0.1〜3.0mm、0.1〜2.5mm、0.1〜2.0mm、0.1〜1.5mm、0.1〜1.0mm、0.1〜0.5mm、0.1〜0.4mm、0.1〜0.3mm、0.1〜0.2mm、0.15〜3.0mm、0.15〜2.5mm、0.15〜2.0mm、0.15〜1.5mm、0.15〜1.0mm、0.15〜0.5mm、0.15〜0.4mm、0.15〜0.3mm、0.15〜0.2mm、0.02〜0.08mm、0.03〜0.08mm、または0.05〜0.08mmの範囲内の厚さを有するフィルムの生成が可能になる。別の例として、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01〜8重量%の量でカルボン酸基またはエステル基を有することによって、より低い300%モジュラス、より低い500%モジュラス、および/またはより高い破断伸び、例えば300%モジュラス660psi未満、500%応力約2400psi未満、および/または破断伸び約520%超を有するエラストマーフィルムの生成が可能になる。
【0077】
カルボン酸残基またはそのエステルが上記の範囲の下限の量で存在することによって、非常に弾性または可撓性が高いエラストマーフィルムまたは浸漬品が得られるが、そのような組成物の加工性はより複雑である。カルボン酸残基またはそのエステルが上記の範囲の上限の量で存在することによって、より強靱なエラストマーフィルムまたは浸漬品が得られるが、そのような組成物の加工性は改善される。したがって、エラストマーフィルムまたは浸漬品の所望の柔らかさと組成物の加工性との間でバランスを取らなければならない。
【0078】
ポリマー中により少ない量のカルボン酸またはエステルを有するカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを含有する組成物から作製されたエラストマーフィルムまたは浸漬品は、より柔らかいかまたはより弾性が高いフィルムが着用者に良好な触覚を与えることができる手術用手袋などの用途における使用に好適でありうる。例えば、より薄く、より柔らかく、より弾性が高いフィルムの生成に好適なカルボン酸またはエステルの含有量は約0.01〜5.0%、例えば約0.01〜3%、0.01〜2.5%、0.01〜2%、約0.01〜1.8%、約0.01〜1.6%、約0.01〜1.5%、約0.01〜1.4%、約0.01〜1.3%、約0.01〜1.2%、約0.01〜1.1%、約0.01〜1%、約0.01〜0.9%、約0.01〜0.8%、約0.01〜0.7%、約0.01〜0.6%、約0.01〜0.5%、約0.01〜0.4%、約0.01〜0.3%、約0.01〜0.2%、約0.01〜0.1%、または約0.01〜0.05%の範囲内でありうる。
【0079】
ポリマー中により多い量のカルボン酸またはエステルを有するカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを含有する組成物から作製されたエラストマーフィルムまたは浸漬品は、より硬くより弾性が低いフィルムが必要である家庭用手袋、工業用手袋、または特別丈夫な手袋などの用途における使用に好適でありうる。例えば、より硬いか、より弾性が低いか、またはより耐久性が高いフィルムの生成に好適なカルボン酸またはエステル含有量は約0.5〜8%、例えば約1〜8%、約0.5〜6%、約1〜6%、約0.5〜7%、約1〜7%、約1.5〜7%、約1.5〜6%、約2〜8%、約2〜7.5%、約2〜7%、約2〜6%、約2.5〜8%、約2.5〜7.5%、約2.5〜7%、約2.5〜6%、約3〜8%、約3〜7%、約3〜6%、約4〜8%、約4〜7%、約4〜6%、約5〜8%、約5〜7%、約5〜6%、約6〜8%、または約6〜7%の範囲内でありうる。
【0080】
架橋剤
カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを1つまたは複数の架橋剤で架橋させて、エラストマーフィルムを生成することができる。様々な種類の架橋剤を使用することができる。
【0081】
加硫促進剤は、架橋剤の1つのサブクラスであり、硫黄を放出するかまたは硫黄含有化合物と作用して、でエラストマー形成ポリマーの硫黄ベースの共有結合性架橋を促進する。一般に、加硫促進剤は、硬化(加硫)時間を短縮するか、硬化時間を少なくするか、または組成物中で使用することが必要な架橋剤の量を減少させることから、有利でありうる。しかし、否定的側面として、加硫促進剤は、紅斑、小水疱、丘疹、そう痒、疱疹、および/または痂皮形成を含む症状を伴うアレルギー性接触皮膚炎などのアレルギー反応を生じさせる場合がある。好適な加硫促進剤の例としてはチオカルバメート(例えばジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC)、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDEC))などのカルバメート; チウラム(例えばテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)); チオ尿素(エチルチオ尿素(ETU)およびジフェニルチオ尿素(DPTU); チアゾール(例えばメルカプトベンゾチアゾール(MBT)、メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)、亜鉛2-メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)); グアニジン(例えばジフェニルグアニジン(DPG))、ならびにアルデヒド/アミン系加硫促進剤(例えばヘキサメチレンテトラミン)が挙げられる。他の例は当技術分野において周知であり、様々な公的に利用可能な供給源から得ることができる。
【0082】
架橋剤の別のクラスはイオン性架橋剤であり、これは金属酸化物、金属水酸化物、および過酸化物(有機および無機)を含む。これらはエラストマー形成ポリマー中でイオン的に架橋可能な基をイオン的に架橋させることによって作用する。例えば、金属酸化物架橋剤は、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンのカルボン酸基をイオン的に架橋させることによって作用しうる。好適な金属酸化物架橋剤の例としては酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、およびそれらの組み合わせなどの多価金属酸化物架橋剤が挙げられる。好適な金属水酸化物架橋剤の例としては水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ならびに水酸化バリウム、水酸化マンガン、水酸化銅、および水酸化ニッケルなどの他の金属水酸化物が挙げられる。過酸化物架橋剤の一例は1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンであり、これは商品名Trigonox 29-40B-pdとして購入することができる。エラストマーフィルム形成組成物における使用に好適な他の架橋剤は以下より選択されるがそれらに限定されない: 架橋性モノマー、反応性オリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー、官能性架橋型ポリマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートの誘導体(エチレングリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、テトラ(メチレン/エチレングリコール)ジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート(DEDMA)、トリ(メチレン/エチレングリコール)ジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEDMA)などの)、メチレンビスアクリルアミドの誘導体(N,N-メチレンビスアクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、N,N-(1,2ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドなどの)、ホルムアルデヒドを含まない架橋剤(N-(1-ヒドロキシ-2,2-ジメトキシエチル)アクリルアミドなどの)、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、ジビニルスルホンなど。これらの架橋剤のうちいくつかは市販されており、Aldrichなどの企業により供給されている。これらの架橋剤の組み合わせを使用してもよい。
【0083】
架橋剤の量は通常0.5〜15.0phrの範囲内である。いくつかの態様では、架橋剤の量は以下の範囲のうち1つの範囲内であることが好適である: 0.5〜15.0phr、1.0〜15.0phr、1.5〜15.0phr、0.5〜13.0phr、1.0〜13.0phr、1.5〜13.0phr、0.5〜11.0phr、1.0〜11.0phr、1.5〜11.0phr、0.5〜10.0phr、1.0〜10.0phr、1.5〜10.0phr、0.5〜8.0phr、1.0〜8.0phr、1.5〜8.0phr、0.5〜7.0phr、1.0〜7.0phr、1.5〜7.0phr、2.0〜8.0phr、2.5〜10.0phr、5.0〜10.0phr、3.0〜7.0phr、3.0〜6.0phr、4.0〜7.0phr、4.0〜6.0phr、4.0〜5.0phr、2.0〜5.0phr、2.0〜4.0phr、3.0〜4.0phr、6〜10phr、7〜10phr、6〜8phr、5〜9phr、8〜10phr、0.01〜3.5phr、0.01〜3.0phr、0.01〜2.0phr、0.01〜1.5phr、0.01〜1.0phr、または0.01〜0.5phr。
【0084】
金属酸化物は、本発明のエラストマーフィルム形成組成物において2つの機能を果たすことができる。第1に、金属酸化物は、クロロブタジエン単位のゆっくりとした脱塩化水素反応により形成される塩酸を中和することができ、第2に、金属酸化物は、官能基を架橋させて優れた結合強さおよび耐熱性を与えることができる。カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン中の塩化アリル構造は、金属酸化物との反応による主要架橋部位として機能する。少なくともこの理由により、金属酸化物および過酸化物などのイオン性架橋剤を、通常使用される量よりも多い量で使用する必要がありうる。例えば、いくつかの態様では、酸化亜鉛を、乾燥ゴム100部当たり3〜10部または5〜10部で変動する非常に多い量で添加してもよい。アクリロニトリル、ポリイソプレンのような他の合成エラストマーのため、さらには天然ゴムのための酸化亜鉛必要量は、より少なくてもよく、例えば2phrまたはさらにそれ未満であってもよい。
【0085】
好適な加硫活性剤は、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化銅、酸化アルミニウム、および酸化ニッケル、好ましくは酸化亜鉛などの金属酸化物を含む。
【0086】
架橋剤のさらなるクラスは共有結合性架橋剤であり、これは硫黄および硫黄含有加硫剤を含む。これらはエラストマー形成ポリマー中に存在する不飽和二重結合を共有結合的に架橋させることによって作用する。硫黄は元素硫黄の形態で存在しうる。硫黄含有加硫剤中の硫黄は、有機硫黄化合物、例えばTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)によって供与されてもよい。これのような硫黄供与体または硫黄含有加硫剤は、化学アレルギーの原因となりがちであり、アレルギー性内容物が問題である場合には手袋の製造においてそれらの使用を最小限に維持することが好ましい。したがって、使用する場合、硫黄は元素硫黄の形態で存在することが好ましい。
【0087】
一般に、架橋量がエラストマーフィルムの弾性を決定する。したがって、架橋剤の量および種類が最終エラストマーフィルムの架橋度および弾性に寄与する。
【0088】
金属酸化物および過酸化物の架橋剤などのイオン性架橋剤を使用する場合、量は通常1.0〜10.0phrの範囲内である。金属酸化物架橋剤の量は以下の範囲のうち1つの範囲内であることが好適である: 1.0〜10.0phr、2.0〜8.0phr、2.5〜10.0phr、5.0〜10.0phr、3.0〜7.0phr、3.0〜6.0phr、4.0〜7.0phr、4.0〜6.0phr、4.0〜5.0phr、2.0〜5.0phr、2.0〜4.0phr、3.0〜4.0phr、6〜10phr、7〜10phr、5〜8phr、5〜6phr、6〜8phr、5〜9phr、または8〜10phr。ポリマーのカルボキシル化度がより低い、いくつかの態様では、金属酸化物の使用量はこの範囲の上限にある。例えば、金属酸化物架橋剤の量は以下の範囲のうち1つの範囲内であることが好適である: 3〜10phr、5〜10phr、6〜10phr、7〜10phr、5〜8phr、5〜6phr、6〜8phr、5〜9phr、または8〜10phr。カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン中のカルボン酸またはエステルの量がより多い、いくつかの態様では、金属酸化物の使用量はこの範囲の下限にある。例えば、金属酸化物架橋剤の量は以下の範囲のうち1つの範囲内であることが好適である: 1.0〜5phr、2.0〜5phr、2.0〜4.0phr、2.5〜5phr、または3.0〜5.0phr。しかし、第2のエラストマーなどの他のエラストマーを組成物に添加し、クロロブタジエン単位を含むポリマー、および1個または複数のカルボン酸残基またはそのエステルとブレンドする場合には、さらなる金属酸化物または過剰の金属酸化物の存在による影響は減少することまたは著しくないことがある。
【0089】
硫黄は他の架橋剤に比べて高い硬化エネルギー(したがって高い硬化温度および/または多い硬化時間)を必要とする。しかし、硫黄によって、より高い耐薬品性を有する手袋などの得られた浸漬品が提供されることから、硫黄はこの理由で望ましい場合がある。硫黄の量は以下の範囲のうち1つの範囲内であることが好適である: 0.0〜3.5phr、例えば0.01〜3.5phr、0.01〜3.0phr、0.01〜2.0phr、0.01〜1.5phr、0.01〜1.0phr、0.01〜0.5phr、0.5〜3.5phr、0.5〜3.0phr、0.5〜2.0phr、および0.5〜1.5phr。
【0090】
カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン中のカルボン酸またはエステル中のカルボン酸またはエステルの量がより多い、いくつかの態様では、本発明のエラストマーフィルム形成組成物から加硫促進剤を減少させること、さらには除去することが可能でありうる。例えば、より大きなフィルム厚を有する浸漬品では、加硫促進剤の除去が実行可能であり、この場合、強度は損なわれない。しかし、加硫促進剤を使用して、さらなる改善された柔らかさなどのさらなる改善された物性を得ることができる。この性質が望ましい場合、十分な加硫促進剤を使用することが好ましい。したがって、エラストマーフィルムを生成するための組成物は、いくつかの態様では加硫促進剤を含まず、他の態様では加硫促進剤をさらに含む。
【0091】
加硫促進剤の量は好適には0.1〜2.0phr、例えば0.1〜1.5phr、0.1〜1.0phr、0.2〜1.0phr、0.3〜2.0phr、0.3〜1.5phr、0.2〜0.6phr、0.5〜2.0phr、または0.5〜1.5phrである。好適な加硫促進剤としてはメルカプトベンゾチアゾールおよびその誘導体、ジチオカルバメートおよびその誘導体、硫黄供与体、グアニジン、チオ尿素、ならびにアルデヒド-アミン反応生成物が挙げられる。
【0092】
いくつかの態様では、本組成物は硬化量の硬化剤を含まない。多くの場合、硬化剤は、接着剤と樹脂などの他の成分とが混合される際に接着剤を硬化させるために接着剤組成物中で使用される。本発明の組成物をフィルム、および手袋などの浸漬品の調製において使用することができる。いくつかの態様では、本発明の組成物を使用して、弾性がある手袋などの浸漬品を形成することができる。硬化剤を添加することによって、硬質または剛直であり、いくつかの場合では脆性でありうるエラストマーフィルムが形成される。
【0093】
一態様では、本発明のエラストマーフィルム形成組成物に使用される架橋剤は硫黄、硫黄含有加硫剤、有機過酸化物、金属酸化物、金属水酸化物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましくは、本組成物は、硫黄または硫黄含有加硫剤と金属酸化物または金属水酸化物との組み合わせを含有する。硫黄および金属酸化物などの架橋剤の組み合わせの使用によって、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンの不飽和二重結合を横切るイオン性架橋および共有結合性架橋を有するポリマーが提供される。金属酸化物はポリマー中のカルボン酸基またはエステル基および塩素へのイオン性結合を形成する。イオン性結合の形成によって、必要なエネルギーがより少なくなり、エラストマーフィルム形成組成物の生成がより速やかになる。硫黄は特に炭素部位においてブタジエンと共有結合を形成する。これらの共有結合の形成によって、必要なエネルギーはより多くなるが、得られるエラストマーフィルムは改善された透過性を有しうる。したがって、これらの種類の架橋剤の組み合わせによって、エラストマーフィルムを生成するために必要な時間およびエネルギーとエラストマーフィルムの性能との間のバランスがもたらされる。また、ポリマー中のイオン性架橋および共有結合性架橋の組み合わせによって、フィルムの改善された強度および耐久性などの改善された性質を有するエラストマーフィルムを得ることができる。また、架橋の量および種類がフィルムの弾性に寄与する。
【0094】
第2のエラストマー
カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを、第2のエラストマーとも呼ばれる1つまたは複数の別のエラストマーとブレンドすることができる。例えば、別のエラストマーは、より低コストのエラストマーであることができ、これは最終製造物のコストを減少させるために添加される。エラストマーフィルム形成組成物に添加される1つまたは複数の第2のエラストマーの種類および量は、該組成物に使用されるカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン、および該組成物の所期の用途に依存する。
【0095】
好適な第2のエラストマーの例としてはニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンジブロックコポリマー、スチレントリブロックコポリマー、アクリルポリマー、もしくは他の合成エラストマー、またはそれらの混合物などの合成エラストマーまたは合成ゴムが挙げられる。第2のエラストマーはカルボキシル化エラストマー(例えばグラフトもしくは共重合およびまたはそれらの混合による)、非カルボキシル化エラストマー、あるいはカルボキシル化エラストマーと非カルボキシル化エラストマーの混合物、あるいは様々なカルボキシル化度を有するエラストマーの混合物でありうる。
【0096】
いくつかの態様では、第2のエラストマーの量は乾燥ベースでエラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分の95%を超えない。エラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分は、当該量のカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン、および当該量の第2のエラストマーを含む。例えば、第2のエラストマーの量は乾燥ベースでエラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分の0〜95%、例えば約5〜95%、0〜65%、0〜50%、5〜65%、10〜95%、10〜65%、15〜95%、15〜65%、20〜95%、20〜65%、25〜95%、25〜65%、30〜95%、30〜65%、35〜95%、35〜65%、40〜95%、40〜65%、50〜60%、50〜65%、50〜95%、60〜65%、60〜75%、60〜80%、60〜95%、70〜90%、70〜95%、80〜95%、0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、または40〜50%の範囲内でありうる。
【0097】
ブレンド組成物が、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンの使用によってもたらされた好ましい性質を保持することが認識されよう。好ましくは、第2のエラストマーの量は、乾燥ベースでエラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分の約75%未満、例えば0〜75%、65%未満、0〜65%、5〜75%、5〜65%、10〜75%、10〜65%、15〜75%、15〜65%、20〜75%、20〜65%、25〜75%、25〜65%、30〜75%、30〜65%、35〜75%、35〜65%、40〜75%、または40〜65%である。
【0098】
いくつかの態様では、第2のエラストマーの量は、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン中のカルボン酸またはエステルの量に依存する。適切な厚さを有し、フィルムまたは物品を形成するために使用される好適な量の材料を使用し、かつその用途に好適な性質を有する、エラストマーフィルムまたは浸漬品(袋などの)を生成するために、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン中のカルボン酸またはエステルの量と、組成物において使用される第2のエラストマーの量との間で、バランスを取らなければならない。したがって、第2のエラストマーの使用量は、使用されるカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン、および、生成される予定の最終製造物に依存する。
【0099】
一例として、多量のカルボン酸またはエステルがカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン中に存在し、かつ組成物中で使用される第2のエラストマーの量が、乾燥ベースでエラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分の0〜95%という範囲の上限に近い場合に、より硬いか、より弾性が低いか、またはより耐久性が高いフィルムは生成されることができる。例えば、カルボン酸またはエステル含有量が約1〜8%の範囲内である場合、第2のエラストマーの量は以下の範囲のうち1つの範囲内でありうる: 50〜60%、50〜65%、50〜95%、60〜65%、60〜75%、60〜80%、60〜95%、70〜90%、70〜95%、80〜95%、または0〜50%。
【0100】
別の例として、少量のカルボン酸またはエステルがカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン中に存在し、かつ組成物中で使用される第2のエラストマーの量が、乾燥ベースでエラストマーフィルム形成組成物のポリマー成分の0〜95%という範囲の下限に近い場合に、より柔らかくより弾性が高いフィルムは生成されることができる。例えば、カルボン酸またはエステル含有量が約0.01〜5%の範囲内である場合、第2のエラストマーの量は以下の範囲のうち1つの範囲内でありうる: 0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜50%、または50〜95%。
【0101】
他の成分または添加剤
他の成分または添加剤は、組成物中に含まれてもよく、可塑剤、抗オゾン化物質、pH安定剤などの安定剤、乳化剤、酸化防止剤、加硫剤、重合開始剤、顔料、充填剤、着色料、および増感剤からなる群より選択される1つまたは複数の添加剤を含むことができる。
【0102】
安定剤をエラストマーフィルム形成組成物において使用することができる。安定剤は例えばオレアート、ステアラート、または他の非イオン性界面活性剤でありうる。エラストマー形成ポリマーを水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、および/または水酸化ナトリウムなどの安定剤の溶液で希釈することができる。安定剤の使用量は、エラストマーフィルム形成組成物において使用されるポリマー、該組成物のpH、および他の要因に依存する。安定剤は0.1〜5.0phr、例えば0.5〜2phr、好ましくは1.0〜1.5phrの範囲であることができ、水、好ましくは濾水もしくは脱イオン水、または水中全固形分約5ppmレベルを有する水で希釈される。
【0103】
乳化剤をエラストマーフィルム形成組成物において使用することができる。好適な乳化剤としてはアルキル硫酸ナトリウムまたは他の非イオン性およびイオン性界面活性剤が挙げられる。乳化剤の使用量は、エラストマーフィルム形成組成物において使用されるポリマー、該組成物のpH、および他の要因に依存する。乳化剤の量は約0.1〜5phr、0.5〜5phr、0.1〜3phr、または0.5〜3phrの範囲でありうる。
【0104】
pH安定剤は、エラストマー形成ポリマーがカルボン酸基を含有している場合にありうる不安定化の可能性を回避するために使用することができる。好適なpH安定剤としては水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、および/または水酸化ナトリウムが挙げられる。好ましくは、pH安定剤は水酸化カリウムである。希釈安定剤溶液をエラストマー形成ポリマーと混合することができる。混合物のpHを約8.5〜約13.5、または約8.5〜約11.0に好適に調整する。次に架橋剤を混合物に添加することができる。pH安定剤の量は約0.1〜3.0phr、0.1〜2.5phr、0.1〜2.0phr、0.1〜1.5phr、0.1〜1.0phr、0.1〜0.5phr、0.2〜3.0phr、0.2〜2.5phr、0.2〜2.0phr、0.2〜1.5phr、0.2〜1.0phr、0.2〜0.5phr、0.5〜3.0phr、0.5〜2.5phr、0.5〜2.0phr、0.5〜1.5phr、または0.5〜1.0phrの範囲でありうる。
【0105】
オゾン劣化防止剤をエラストマーフィルム形成組成物において使用することができる。好適なオゾン劣化防止剤としてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、および中間型(パラフィンワックスとマイクロクリスタリンワックスとの両方のブレンドである)が挙げられる。オゾン劣化防止剤の量は約0.1〜5.0phr、0.1〜3.0phr、0.1〜1.5phr、0.5〜5.0phr、0.5〜3.0phr、または0.5〜1.5phrの範囲でありうる。
【0106】
酸化防止剤を本発明のエラストマーフィルム形成組成物に添加することができる。好適な酸化防止剤としてはヒンダードアリールアミンまたはポリマーヒンダードフェノール、ならびにWingstal L(p-クレゾールおよびジシクロペンタジエンの生成物)が挙げられる。酸化防止剤は例えば約0.1〜5.0phr、例えば0.1〜3.0phr、0.5〜3.0phr、0.1〜1.5phr、0.1〜1.0phr、または0.3〜0.5phrの範囲の量で添加することができる。
【0107】
二酸化チタンなどの顔料は、顔料による着色のために、または最終エラストマーフィルムの透明性を減少させるために選択される。顔料を不透明化物質(opaqueness provider)と呼ぶこともある。顔料は例えば約0.01〜10.0phr、例えば0.01〜5.0phr、0.01〜3.0phr、0.01〜2.0phr、0.01〜1.5phr、または1.5〜2.0phrの範囲の量で添加することができ、着色料も所望の量で添加することができる。次に混合物を水などの液体の添加によって目標の全固形分に希釈する。エラストマーフィルム形成組成物において使用される顔料は、EN/USFDAが承認した染料からなる群より選択することができる。
【0108】
ゴム付香剤(reoderant)をエラストマーフィルム形成組成物において使用することができる。好適なゴム付香剤としては天然起源または合成起源の香油が挙げられる。ゴム付香剤の量は約0.001〜2.0phrの範囲でありうる。
【0109】
湿潤剤をエラストマーフィルム形成組成物において使用することができる。好適な湿潤剤兼乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはラウリルエーテル硫酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤、またはオクチルフェノキシポリエトキシエタノールなどの非イオン性エトキシル化アルキルフェノール、または他の非イオン性湿潤剤が挙げられる。湿潤剤の量は約0.001〜2.0phrの範囲でありうる。
【0110】
脱泡剤または消泡剤をエラストマーフィルム形成組成物において使用することができる。脱泡剤はナフタレン型脱泡剤、シリコーン型脱泡剤、および精製植物起源の他の非炭化水素型脱泡剤または消泡剤より選択することができる。脱泡剤の量は約0.001〜2.0phr、例えば約0.001〜1.0phr、0.001〜0.1phr、0.001〜0.01phrの範囲でありうる。
【0111】
また、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを無機充填剤とブレンドすることができる。好適な無機充填剤としては炭酸カルシウム、カーボンブラック、またはクレーが挙げられる。好ましくは、ブレンドに含まれる無機充填剤の量は単独でまたは組み合わせで30%を超えない。ブレンド組成物が、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンの使用によってもたらされた好ましい性質を保持することが認識されよう。
【0112】
増感剤とは、エラストマーフィルムを生成するための組成物において、浸漬中に型の上にコーティングされたままである該組成物の量を制御するために使用可能な、化学物質のことである。エラストマーフィルムを生成するための組成物において使用可能な当技術分野において公知の増感剤の例としてはポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、硝酸アンモニウム、および塩化アンモニウムが挙げられる。増感剤を使用する場合、その量は、浸漬中に型の上にとどまる所望のフィルム厚に基づいて選択され、一般に0.01〜5.0phrである。より薄いフィルムでは、量は一般に約0.01〜2.0phr、例えば約0.1〜1.0phrである。型の上のフィルム厚を制御するために他の技術を使用する場合、例えばエラストマーフィルムを生成するための組成物中への複数回浸漬に着手する前に型を凝固剤に予め浸漬させる技術を使用する場合、エラストマーフィルムを生成するための組成物は増感剤を含まなくてもよい。
【0113】
いくつかの態様では、本組成物は粘着付与剤を含まない。多くの場合、粘着付与剤は、接着剤組成物、特に感圧性接着剤において、接着剤の粘着性、または接触時に表面との即時の結合を形成する接着剤の能力を改善するために使用される。通常、粘着付与剤は樹脂、例えばロジンおよびそれらの誘導体、テルペンおよび修飾テルペン、脂肪族、脂環式、および芳香族樹脂、水添炭化水素樹脂、テルペン-フェノール樹脂、またはそれらの混合物である。本発明の組成物をフィルム、および手袋などの浸漬品の調製において使用することができる。粘着付与剤を添加することによって、手袋などの物品における使用に好適ではない粘着性のエラストマーフィルムが形成される。
【0114】
当業者であれば、使用される特定のポリマー、および所望の特定の最終物品に合うようにエラストマーフィルム形成組成物の成分を容易に変動させることができるであろう。また、当業者であれば、上記で列挙した特定の化学物質または化合物が、エラストマーフィルム形成組成物を配合する際に使用可能な従来の材料を代表するように意図されており、単に該組成物のそのような各成分の非限定的な例として意図されていることを理解するであろう。
【0115】
エラストマーフィルム形成組成物の調製
エラストマーフィルムを生成するための組成物は、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンと1つまたは複数の架橋剤、場合によっては1つまたは複数の添加剤、および場合によっては第2のエラストマーとを液体(例えば水)中で混合することによって調製することができる。上記のように、カルボン酸グラフト化もしくはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン、または該ポリマーと他の成分との組み合わせを、組成物の所望の全固形分に到達するように液体で希釈する。
【0116】
上記の好適な添加剤または他の成分を、本組成物に含めることができ、かつ、架橋剤の添加前にポリマーに添加すること、またはポリマーと架橋剤の混合物に添加することができる。
【0117】
本組成物の調製は当技術分野において公知の工程を含み、本組成物は従来のやり方で調製することができる。
【0118】
通常、本組成物の粉体成分を組み合わせて、好適な粉砕装置を使用して粉砕して粒径を好適な範囲に減少させる。好ましくは、平均粒径は5マイクロメートル未満である。均一な粒径が望ましく、粗粉砕は不均一な粒子、したがって不均一なフィルムを生じさせる場合があり、これによりフィルムの性質の大きな変動が生じうる。
【0119】
界面活性剤およびpH安定剤を使用する場合、これらを液体(例えば水)に添加し、泡形成がないように適切に混合する。次にこの液体を使用して、ポリマーまたはポリマーと第2のエラストマーおよび他の添加剤または成分とのブレンドを所望の全固形分に希釈する。エラストマーフィルム形成組成物の全固形分は予定されるフィルム厚に依存する。
【0120】
次に分散液のpHを必要に応じて好ましくは8.5〜13.5の範囲内のpH(例えばpH 9超または好ましくはpH 10〜11)に調整することができる。希釈ポリマーと分散液との間の任意の大きな変動が、ミクロレベルからマクロレベルまでの凝固を生じさせる。
【0121】
成分が均一にまたは均質に混合された時点で、着色料および乳化剤などの他の添加剤を添加する。次にエラストマーフィルム形成組成物を熟成のために放置する。熟成の長さは架橋剤のレベルおよびポリマーのカルボキシル化度に応じて変動しうる。一般に本組成物が最低12〜18時間放置される一方で、いくつかの場合では、浸漬品を調製するための要件および存在する架橋剤のレベルに応じて、熟成が数日間にわたって行われてもよい。好適な添加剤を有する混成エラストマーフィルム組成物の早期熟成を、該組成物を制御された高温に保持することによって行ってもよい。例えば、エラストマーフィルム組成物を、温度、ポリマーのカルボキシル化度、加硫活性剤および加硫促進剤の量および種類、ならびにpH安定剤および乳化剤兼安定剤および湿潤剤/界面活性剤の種類および量に応じて20℃〜60℃に例えば約4時間〜約24時間保持してもよい。
【0122】
エラストマーフィルムの調製
エラストマーフィルムの製造では従来の装置を使用することができる。
【0123】
成形具を凝固剤に浸漬させる任意の工程(a)
生成される物品の形状(例えばフィルムでは平ら、または手袋では手袋形)に基づく好適な成形具を凝固剤に浸漬させることができる。成形具の清潔さは、エラストマーフィルムにおけるピンホール形成、またはエラストマーフィルムの清潔さに関する重要な局面である。したがって、通常はセラミックス材料で作製される成形具を、弱酸溶液、水、および/またはアルカリ溶液に順次浸漬させ、ブラシおよび熱水に通す。洗浄上の要件に応じて順序を変更してもよい。いくつかの態様では、成形具の洗浄は、成形具を酸性溶液およびアルカリ性溶液に浸漬させることを包含する。
【0124】
洗浄後、付着水が蒸発により除去されるように成形具を乾燥機に通す。乾燥機温度は通常105℃超であり、ラインの速度およびオーブンの長さに従って調整可能である。次のステーションに入る前に成形具が乾燥していることが好ましい。
【0125】
次に、上記のように乾燥させた成形具を凝固剤に浸漬させて、成形具の表面上に凝固剤の薄いコーティングを得る。いくつかの態様では、凝固剤は、イオンを含有する塩溶液である。この態様では、成形具を凝固剤に浸漬させることによって、成形具の表面上に荷電イオンの薄いコーティングが残る。荷電イオンコーティングは、電荷相互作用を通じて、エラストマーフィルムを形成するための組成物に浸漬させた後に成形具の表面上に残留する該組成物の量を制御することを支援しうる。
【0126】
イオンは、カチオン性(例えばナトリウムイオン含有凝固剤またはカルシウムイオン含有凝固剤の場合のように)でもアニオン性でもよく、選択はエラストマー系ポリマーの固有性に基づく。いくつかの態様では、凝固剤はpH 7超、例えばpH 8〜10を有する。
【0127】
一般に、カチオンを含有する金属イオン溶液は、広範なエラストマー系ポリマーに適している。そのような金属塩イオンの例としてはナトリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、およびアルミニウムがある。対イオンとしてはハロゲン化物イオン(塩化物イオンなどの)、硝酸イオン、酢酸イオン、または硫酸イオンなどがありうる。カルシウムイオン含有凝固剤の場合、カルシウムイオンを硝酸カルシウムまたは塩化カルシウムの溶液として与えることができる。
【0128】
凝固剤は、任意の他の剤、例えば、湿潤剤(脂肪アルコールエトキシドもしくは他の好適な界面活性剤などの)、粘着防止剤、消泡剤、および/または離型剤、例えばシリコンエマルジョン、ポリマー離型剤、ならびにその例がステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸カリウムである金属ステアラートを含んでもよい。
【0129】
凝固剤中のイオンの濃度は、エラストマーフィルム層の所望の厚さ、および塗布される層の数(すなわち1枚の層または2枚もしくはそれ以上の層)に応じて、大まかに凝固剤溶液の0.0〜50重量%の範囲内でありうる(多価イオンの溶液中の多価イオンの化合物として測定)。より薄い層の場合、濃度は好適には0.0〜20%、0.0〜15%、0.0〜12%、1.5〜20%、1.5〜15%、1.0〜10%、1.5〜10%、4〜10%、5〜10%、5〜35%、10〜30%、7〜40%、8〜50%、および5〜45%の範囲内である。好ましくは、濃度は10〜30%の範囲内である。湿潤剤および粘着防止剤などの他の成分の量は、これらの剤の使用を通じての所望の性質に依存し、適宜変動する。
【0130】
また凝固剤は、約0.1〜5.0重量%の範囲内の濃度の金属ステアラート、約0.001〜1.0%の範囲内の濃度の好適な湿潤剤、および/または0.001〜1.0重量%の範囲内の濃度の消泡剤を含みうる。
【0131】
凝固剤中での型の持続時間または滞留時間は、好適には1〜30秒である。いくつかの態様では、凝固剤中での型の滞留時間は1〜10秒である。いくつかの態様では、凝固剤中での型の滞留時間は30秒よりも長くてもよい。型が浸漬される凝固剤の温度は例えば30℃〜80℃であってもよい。
【0132】
凝固剤に成形具を浸漬させる前に、成形具を加熱に供することができる。加熱は、予備的な型洗浄および乾燥手法の一部を構成しうる。この場合、型を25℃〜85℃の範囲内の表面温度、例えば30℃〜70℃の範囲内の温度に加熱することができる。
【0133】
凝固剤に浸漬させた成形具を乾燥または部分乾燥させる任意の工程(b)
成形具を凝固剤に浸漬させる場合、以下の工程に従って成形具を乾燥または部分乾燥させる。
【0134】
乾燥(または部分乾燥)は、多層エラストマーフィルムまたは浸漬品の生成中にいくつかの段階で繰り返すことができる工程である。各乾燥または部分乾燥させる工程において、熱気もしくは輻射熱の適用、または赤外(IR)線および遠赤外線などの乾燥放射線源を含む、当技術分野において公知である任意の好適な技術または装置によって、乾燥を行うことができる。これはオーブンまたは任意の他の好適な乾燥装置もしくは乾燥環境中で行うことができる。オーブン中でまたは熱気もしくは輻射熱の影響下で乾燥させる場合、成形具を乾燥ゾーンに通すことができ、乾燥ゾーンは、熱を高温で、過剰の水分/液体を十分な乾燥度まで取り除くために十分な時間にわたって適用する。成形具上に残留する凝固剤を乾燥させる場合、例えば乾燥ゾーン(オーブンなどの)を50℃〜250℃の温度に保持することができ、または、乾燥ゾーンはその温度で熱を適用することができる。通常、水の蒸発を可能にするために温度を105℃超に維持する。いくつかの態様では、温度を約110℃〜約130℃に維持する。乾燥のために使用する方法に応じて、ラインの速度、乾燥ゾーンの長さ、および乾燥時間などの要因に従って温度を調整することができる。
【0135】
通常、成形具は、目標の乾燥レベル、および場合によっては成形具上の凝固剤の目標の表面温度に到達するために十分な時間にわたって、このゾーンにとどまる(かまたはこのゾーンを通過する)。これは25℃〜85℃、例えば40℃〜70℃でありうる。
【0136】
成形具上のコーティング(この場合は凝固剤)の表面温度を任意の好適な技術によって試験することができる。一例は、物体が放出する赤外線エネルギーによって物体の表面温度を測定するための装置の使用を包含する。この種類の装置の一例はOptex Co. Ltd.製のThermo-Hunterモデル: PT-2LDである。フィルムの表面温度を測定するための他の技術は当技術分野において公知である。
【0137】
成形具上にエラストマーフィルム形成組成物の層を生成するために、成形具を本発明のエラストマーフィルム形成組成物に浸漬させる工程(i)
成形具をエラストマーフィルム形成組成物に浸漬させる前に、エラストマーフィルム形成組成物を保持タンク中で成熟または熟成させることができる。上記のように、熟成の長さは架橋剤のレベルおよびポリマーのカルボキシル化度に応じて変動しうる。一般に本組成物が最低12〜18時間放置される一方で、いくつかの場合では、浸漬品を調製するための要件および存在する架橋剤のレベルに応じて、熟成が数日間にわたって行われてもよい。任意の好適な添加剤を伴うエラストマーフィルム形成組成物の早期熟成を、該組成物を制御された高温に保持することによって行ってもよい。例えば、エラストマーフィルム形成組成物を、温度、ポリマーのカルボキシル化度、加硫活性剤および加硫促進剤の量および種類、ならびにpH安定剤および乳化剤兼安定剤および湿潤剤/界面活性剤の種類および量に応じて20℃〜60℃で例えば約4時間〜約24時間保持してもよい。
【0138】
成形具を、エラストマーフィルムを生成するための組成物に浸漬させる。その態様は上記で詳述した通りである。
【0139】
成形具は、成形具が均一にコーティングされることを確実にする量の時間であるが、必要を超えて厚いコーティングを発生させるほどには長くない時間にわたって、浸漬タンク中に存在する。コーティングの必要な厚さに応じて、浸漬タンク中での成形具の滞留時間は約1〜60秒、例えば約5〜60秒、1〜30秒、1〜10秒、または2.0〜7.0秒でありうる。
【0140】
成形具が浸漬される組成物の温度は、一般に10℃〜60℃、例えば10℃〜50℃、15℃〜50℃、20℃〜50℃、25℃〜50℃、25℃〜45℃、20℃〜40℃、または20℃〜35℃の範囲内である。好ましくは、成形具が浸漬される組成物を冷水で常に冷却し、ラテックス浴温度を20〜35℃、例えば20℃〜30℃、より好ましくは25℃に保持する。いくつかの態様では、エラストマーフィルム形成組成物に含まれる化学物質のクリーミングおよび沈殿を回避するために、組成物をタンク中で常に循環させる。
【0141】
好ましくは、成形具の表面温度は、エラストマーフィルム形成組成物の温度を80℃を超えて上回ることはない。本出願人は、成形具の表面温度が、エラストマーフィルムを生成するための組成物の温度を80℃を超えて上回る場合に、成形具上でのエラストマーフィルム形成組成物のコーティングの収縮が生じうることを発見した。いくつかの態様では、成形具の表面温度は、エラストマーフィルム形成組成物の温度よりも低い。しかし、通常は、成形具の表面温度はエラストマーフィルム形成組成物の温度よりも約20℃〜60℃高い。
【0142】
成形具上のエラストマーフィルム形成組成物の層を乾燥または部分乾燥させる工程(ii)
凝固した湿潤フィルムが一連の前濾過タンクに入る前にいくらかの強度を得るように湿潤フィルムを部分風乾させる。前濾過タンクでは、抽出可能な界面活性剤、およびナイトレート含む他の可溶性化学物質を掃去するために周囲水または加熱水(好ましくは約50℃)が連続補給される。
【0143】
次に、含水量を0〜22%超に減少させるために、型の上のエラストマーフィルム形成組成物のコーティングまたは層を乾燥または部分乾燥させる。エラストマーフィルム形成組成物を部分乾燥させる場合、それは22重量%超、22重量%〜80重量%、例えば25重量%〜75重量%、30重量%〜77重量%、または25重量%〜60重量%の含水量を有しうる。
【0144】
乾燥または部分乾燥は、工程(b)に関して先に記載したものと同じ種類の乾燥技術を使用して、完全または部分乾燥状態に到達するために必要な条件を使用して行うことができる。
【0145】
乾燥または部分乾燥は、熱気もしくは輻射熱の適用、または赤外(IR)線および遠赤外線などの乾燥放射線源を含む、当技術分野において公知である任意の好適な技術または装置によって行うことができる。これはオーブンまたは任意の他の好適な乾燥装置もしくは乾燥環境中で行うことができる。
【0146】
オーブン中でまたは熱気もしくは輻射熱の影響下で乾燥させる場合、エラストマーフィルム形成組成物の層またはコーティングを有する成形具を乾燥ゾーンに通すことができ、乾燥ゾーンは、熱を高温で、過剰の水分/液体の一部または全部を十分な完全または部分乾燥度まで取り除くために十分な時間にわたって適用する。この場合、乾燥ゾーン(オーブンなどの)を約50℃〜約300℃、例えば約100℃〜約300℃の温度(乾燥時間に応じて)に保持することができ、または、乾燥ゾーンはその温度で熱を適用することができる。乾燥のために使用する方法に応じて、ラインの速度、乾燥ゾーンの長さ、および乾燥時間などの要因に従って温度を調整することができる。
【0147】
乾燥時間は2〜300秒であることができる(オーブンの温度に応じて)。一般に、オーブン温度が高いほど乾燥ゾーン内での時間は短くなり、逆もまた同様である。
【0148】
一般に、乾燥中に、成形具は、成形具上のエラストマーフィルム形成組成物の層の表面温度を約25℃〜約85℃、例えば約40℃〜約80℃の最大温度まで上昇させるのに十分な時間にわたって、乾燥ゾーンにとどまる(またはこのゾーンを通過する)。より高い表面温度に到達する場合、過剰なまたは不均一な乾燥が生じうる。さらに、成形具上のエラストマーフィルム形成組成物は次の浸漬工程の前に冷却を必要とする場合がある。さらなる冷却工程は、エラストマーフィルムまたは物品の製造における遅延または追加コストを生じさせる場合がある。
【0149】
成形具上のエラストマーフィルム形成組成物の表面温度は、凝固剤層の表面温度に関して先に記載した同じ技術を使用して測定することができる。
【0150】
乾燥または部分乾燥には、成形具上のエラストマーフィルム形成組成物の含水量を減少させることが求められる。乾燥または部分乾燥エラストマーフィルム形成組成物の含水量は0〜22%超、例えば22%〜80%、25%〜75%、30%〜75%、または25〜60%である。成形具上のエラストマーフィルム形成組成物の含水量は、部分乾燥させる工程の完了時点の試料製造物の質量を測定し、次に試料製造物中の残留水分/液体を取り除いて製造物の乾燥質量を得て、これら2つの値から全含水量を決定することによって決定することができる。したがって、この時点での単層製造物の重量が100mgであり、かつ乾燥製造物の重量が90mgである場合、含水量は10%である。
【0151】
本発明の方法は、単層または多層エラストマーフィルムの調製を包含する。したがって、いくつかの態様では、本方法は工程(v)を含むことができ、工程(v)は、本工程の直後に成形具上の積層エラストマーフィルムを乾燥および硬化させて単層エラストマーフィルムを調製することを包含する。他の態様では、本方法は、多層エラストマーフィルムを生成するために、本工程の後の任意の工程(iii)および(iv)の数回繰り返しを含みうる。
【0152】
成形具上にエラストマーフィルム形成組成物のさらなる層を生成するために、エラストマーフィルム形成組成物の乾燥層または部分乾燥層でコーティングされた成形具をエラストマーフィルム形成組成物に任意で浸漬させる工程(iii)
エラストマーフィルム形成組成物の乾燥層または部分乾燥層でコーティングされた成形具をエラストマーフィルム形成組成物に浸漬させてもよい。成形具が浸漬される組成物は、第1の層を形成するために使用される組成物と同じでもよいかまたは異なっていてもよい。本組成物は、エラストマー形成ポリマーの固有性(ブレンド率およびカルボキシル化レベルの程度を含む)ならびに/または量、任意の架橋剤の固有性ならびに/または量、他の添加剤の固有性ならび/または量、ならびに全固形分に関して異なりうる。いくつかの態様では、第2の組成物中のエラストマー形成ポリマーの固有性は第1の組成物中で使用されるそれと同じである。そのような態様では、架橋剤の量も通常は同じである。他の態様では、第2の組成物のエラストマー形成ポリマーの固有性は第1の組成物中のそれと異なる。第2の組成物の全固形分は第1の組成物のそれと同一でもよいかまたは異なっていてもよい。全固形分は、塗布される第2の(またはさらなる)層の所望の厚さに部分的に依存する。
【0153】
第2の組成物中での成形具の滞留時間は、例えば1〜90秒、例えば1〜30秒、5〜90秒、1〜60秒、5〜60秒、1〜20秒、1〜10秒、または2〜5秒である。
【0154】
型が浸漬される組成物の温度は、一般に10℃〜60℃、例えば10℃〜50℃、15℃〜50℃、20℃〜50℃、25℃〜50℃、25℃〜45℃、20℃〜40℃、または20℃〜35℃の範囲内である。好ましくは、成形具が浸漬される組成物を冷水で常に冷却し、ラテックス浴温度を20℃〜40℃、20℃〜35℃、20℃〜30℃、または25〜40℃、より好ましくは25℃に保持する。いくつかの態様では、エラストマーフィルム形成組成物に含まれる化学物質のクリーミングおよび沈殿を回避するために、組成物をタンク中で常に循環させる。
【0155】
好ましくは、成形具上のエラストマーフィルム形成組成物の乾燥または部分乾燥層の表面温度は、エラストマーフィルムを形成するための組成物の温度を約80℃を超えて上回ることはない。本出願人は、表面温度がエラストマーフィルムを形成するための組成物の温度を約80℃を超えて上回る場合に、成形具上でのエラストマーフィルム形成組成物の収縮が生じうることを発見した。いくつかの態様では、表面温度は、エラストマーフィルムを形成するための組成物の温度よりも低い。しかし、通常は、表面温度はエラストマーフィルムを形成するための組成物の温度よりも約20℃〜60℃高い。
【0156】
乾燥または部分乾燥させる工程(ii)とさらなる浸漬させる工程(iii)とを任意で繰り返す工程(iv)
乾燥または部分乾燥させる工程とさらなる浸漬させる工程とを繰り返すことができる。これらの工程を少なくとも1回は好適に繰り返すものであり、複数回繰り返すことができる。繰り返される各工程において、条件は当初の部分乾燥条件、および第2の層を生成するための浸漬条件に比べて異なりうる。したがって、一例として、エラストマーフィルムを形成するための組成物の乾燥の程度および/または全固形分は各層で異なりうる。
【0157】
各乾燥させる工程では、成形具上のエラストマーフィルムの部分乾燥層が0〜22%超の含水量を有するようにエラストマーフィルム形成組成物の含水量を減少させるために、成形具上のエラストマーフィルム形成組成物の層を乾燥または部分乾燥させる。この含水量は、型の上のエラストマーフィルム層全体(すなわち、複数回の浸漬により形成されるエラストマーフィルム層)の含水量に関して測定される。エラストマーフィルム形成組成物を部分乾燥させる場合、それは22重量%超、22重量%〜80重量%、例えば25重量%〜75重量%、30重量%〜77重量%、または25重量%〜60重量%の含水量を有しうる。
【0158】
乾燥または部分乾燥は、工程(b)に関して先に記載したものと同じ種類の乾燥技術を使用して、完全または部分乾燥状態に到達するために必要な条件を使用して行うことができる。
【0159】
エラストマーフィルム形成組成物の最後の層が成形具に塗布された後、エラストマーフィルム形成組成物を部分乾燥させるよりもむしろ乾燥させることができる。この最終の乾燥させる工程は以下の工程(v)において説明する。
【0160】
乾燥または部分乾燥させる工程(ii)、およびさらなる浸漬させる工程(iii)は、フィルムが十分な数の層を有するまで繰り返され、各層は別々の浸漬させる工程によって生成される。さらなる浸漬させる工程は、工程(a)に関して先に記載したものと同じ技術を使用して、成形具上のエラストマーフィルムの好適な層に到達するために必要な条件を使用して行うことができる。
【0161】
成形具が浸漬される組成物は、第1の層または先行層を形成するために使用された組成物と同じでもよいかまたは異なっていてもよい。本組成物はエラストマー形成ポリマーの固有性(ブレンド率およびカルボキシル化レベルの程度を含む)ならびに/または量、任意の架橋剤の固有性ならびに/または量、他の添加剤の固有性ならび/または量、ならびに全固形分に関して異なりうる。いくつかの態様では、さらなる浸漬させる工程において使用されるエラストマー形成ポリマーの固有性は、先行層を形成するために使用されたものと同じである。そのような態様では、架橋剤の量も通常は同じである。他の態様では、さらなる浸漬させる工程において使用されるエラストマー形成ポリマーの固有性は、先行層を形成するために使用されたものと異なる。さらなる浸漬させる工程において使用される組成物の全固形分は、先行層を形成するために使用された組成物のものと同じでもよいかまたは異なっていてもよい。全固形分は、塗布されるさらなる層の所望の厚さに部分的に依存する。
【0162】
複数層のエラストマーフィルムが調製される場合、エラストマーフィルムの少なくとも1枚の層は、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンと1つまたは複数の架橋剤とを含むエラストマーフィルム形成組成物から作製される。エラストマーフィルムの他の層は、本発明のエラストマーフィルム形成組成物、または他のエラストマーもしくは他のエラストマーのブレンドを含むエラストマーフィルム形成組成物から作製することができる。
【0163】
各層の平均厚は通常、最終エラストマーフィルムの6%〜90%であり、いくつかの層(第1の層などの)は好適にはフィルム全体の厚さの30〜70%または40〜65%である。各層の平均厚は、最終エラストマーフィルムを形成する組成物の層の数に依存する。最終エラストマーフィルムは例えば1〜15枚の層からなりうる。いくつかの態様では、エラストマーフィルムは、1〜15枚の層、2〜14枚の層、1〜13枚の層、2〜12枚の層、3〜15枚の層、1〜11枚の層、2〜10枚の層、3〜11枚の層、6〜10枚の層、8〜12枚の層、10〜15枚の層、1〜9枚の層、2〜8枚の層、3〜7枚の層、4〜8枚の層、1〜6枚の層、2〜5枚の層、2〜6枚の層、3〜6枚の層、1〜5枚の層、1〜4枚の層、1〜3枚の層、または1〜2枚の層からなる。
【0164】
一般に、但し必ずではないが、フィルム中の層の数が多いほど、各後続層を生成するための組成物のTSC%が低くなる。これは、多層フィルムの厚さを最小限に維持するためのものである。第1の層の後で、各後続層を生成するために使用される組成物のTSC%は、TSC 5%〜50%、例えばTSC 5〜48%、TSC 5〜45%、TSC 5〜30%、TSC 5〜12%、TSC 10〜30%、TSC 10〜40%、TSC 10〜50%、またはTSC 10〜20%の範囲内でありうる。
【0165】
各層は、ほぼ等しい厚さ、または異なる厚さを有しうる。例えば、3層フィルムでは、第1の層は50%、第2の層は30%、第3の層は20%でありうる。ほぼ等しい厚さは、各層の組成物の全固形分と、層が堆積される温度とを変動させることによって実現することができる。各層において異なる堆積メカニズムが生じる場合があり、かつTSC%が同じレベルに維持されたとしても異なる厚さが堆積される場合がある。したがって、同じレベルの厚さを維持するには、TSC%を変動させることが時として必要である。堆積層の厚さは、凝固剤溶液中のイオンの濃度、または組成物のエラストマーフィルム温度を生じさせるために組成物中に存在する任意の増感剤の量、および組成物中での型の滞留時間に従って変動する場合もある。
【0166】
乾燥および硬化の前の任意のさらなる工程
エラストマーフィルムまたは物品の製造を微調整するためにさらなる工程を行うことができる。抽出可能な成分を除去するためにフィルムまたは物品を濾過することができる。抽出可能な成分をフィルムまたは物品から濾過するために好適な条件は、周囲温度〜80℃、例えば40〜80℃、または周囲温度〜55℃の温度でフィルムまたは物品と加熱水とを(例えば液浸によって)接触させることを包含しうる。濾過は1〜50分間行うことができる。この濾過プロセスの間に、かなりの量の可溶性の抽出可能な成分(界面活性剤、イオン性化合物などの)を除去することができる。次に、濾過された膜をアクリレート/アクリル/ウレタンポリマー(または他の好適なコーティング材料)の溶液に浸漬させることができる。このコーティングの目的は、物品の装着側を不粘着性にすることである。好ましくは、アクリレート/アクリル/ウレタンポリマー(または他のコーティング材料)の溶液の強度は約1〜10% w/wである。
【0167】
手袋製造の場合、手袋をビード加工/袖口加工(beading/cuffing)に供して、手袋の手首端にビードまたは袖口を作製することができる。次にビード加工手袋を、様々な温度ゾーンを有する一組の長い加硫オーブンに通して、フィルム中の水を蒸発させ、かつより良好な架橋を可能にすることができる。好ましくは、温度ゾーンを100〜150℃に維持する。加硫をフィルム厚に応じて1〜50分間または約15〜30分間行うことができる。
【0168】
成形具上で積層エラストマーフィルムを乾燥および硬化させる工程(v)
浸漬させる工程および乾燥または部分乾燥させる工程を1回または複数回繰り返すことによってフィルムの所要数の層を追加した後、フィルムまたは物品を乾燥および硬化させることができる。この工程はオーブン中で、最低温度80℃、例えば80〜150℃もしくは80〜120℃の範囲内の温度、または最低温度90℃(例えば90〜150℃もしくは90〜120℃)にて、最低限の時間10分、10〜60分または約15〜120分の範囲内の時間で行うことができる。使用可能な他の乾燥および硬化技術としては紫外線硬化が挙げられる。手袋製造の場合、得られた手袋を熱気を使用して温度約40〜120℃で約10〜120分間回転式乾燥機にかけることができる。
【0169】
乾燥および硬化の後の任意のさらなる工程
形成プロセスの終わりにフィルムまたは物品を成形具から剥離する。
【0170】
フィルムまたは物品を成形具から剥離する前に、フィルムまたは物品を1つまたは複数のさらなる加工工程に供することができる。これらの任意の工程としては、冷却工程、塩素処理工程、硬化後すすぎ工程、ポリマーコーティング工程、粉体コーティング工程、およびさらなる乾燥工程が挙げられる。
【0171】
いくつかの態様では、塩素処理工程を用いて、ポリマーをキャップしかつ/またはフィルムもしくは物品の粘着性を減少させる。これらの態様では、フィルムまたは物品を塩素処理槽中にてオンラインで塩素処理することができる。遊離塩素200〜1500ppmまたは遊離塩素800〜1000ppmの溶液を使用することができる。塩素処理プロセスは、約20〜60秒間または約25秒間行うことができる。塩素処理プロセスが長くなるほど、塩素処理プロセスに必要な塩素の濃度が低くなる。通常、塩素処理されたフィルムは、中和して洗浄した後で乾燥させ、硬化させ、かつ加硫する。
【0172】
また、硬化フィルムを熱水中で後濾過し、場合によっては潤滑剤溶液または任意のシリコーンフリーポリマーに浸漬させて、容易な剥離およびより良好な装着を可能にすることができる。装着に関して特定の特質を必要とする手術用手袋および他の特殊手袋では、処理の後にさらなる特定の工程を必要とする場合がある。
【0173】
フィルム品質、装着、色、物性、および他の品質特性などに関して所望の結果を実現するために、上記に対して軽微な改変を加えることができることが認識されよう。
【0174】
浸漬品、およびエラストマーフィルム形成組成物の使用
本発明のエラストマーフィルム形成組成物を使用して種々の浸漬品を調製することができる。ありうる浸漬品の例としては手術用手袋および健康診断用手袋、工業用手袋、指サック、カテーテル、チューブ、保護カバー、カテーテル用バルーン、コンドームなどが挙げられる。好ましくは、エラストマーフィルム形成組成物は、パウダーフリー手袋などの手袋の製造において使用される。
【0175】
最終フィルム(または物品)の厚さは、例えば0.01〜3.0mm、例えば0.01〜2.5mm、0.01〜2.0mm、0.01〜1.5mm、0.01〜1.0mm、0.01〜0.5mm、0.01〜0.4mm、0.01〜0.3mm、0.01〜0.2mm、0.02〜0.2mm、0.01〜0.10mm、0.03〜3.0mm、0.03〜2.5mm、0.03〜2.0mm、0.03〜1.5mm、0.03〜1.0mm、0.03〜0.5mm、0.03〜0.4mm、0.03〜0.3mm、0.03〜0.2mm、0.03〜0.10mm、0.05〜3.0mm、0.05〜2.5mm、0.05〜2.0mm、0.05〜1.5mm、0.05〜1.0mm、0.05〜0.5mm、0.05〜0.4mm、0.05〜0.3mm、0.05〜0.2mm、0.05〜0.10mm、0.08〜3.0mm、0.08〜2.5mm、0.08〜2.0mm、0.08〜1.5mm、0.08〜1.0mm、0.08〜0.5mm、0.08〜0.4mm、0.08〜0.3mm、0.08〜0.2mm、0.08〜0.10mm、0.1〜3.0mm、0.1〜2.5mm、0.1〜2.0mm、0.1〜1.5mm、0.1〜1.0mm、0.1〜0.5mm、0.1〜0.4mm、0.1〜0.3mm、0.1〜0.2mm、0.15〜3.0mm、0.15〜2.5mm、0.15〜2.0mm、0.15〜1.5mm、0.15〜1.0mm、0.15〜0.5mm、0.15〜0.4mm、0.15〜0.3mm、0.15〜0.2mm、0.02〜0.08mm、0.03〜0.08mm、または0.05〜0.08mmの範囲内でありうる。いくつかの態様では、最終フィルム(または物品)の厚さは例えば、薄手のまたは使い捨ての手袋では0.05〜0.08mmの範囲内、厚手の手袋では0.1〜3.0mmの範囲内でありうる。
【0176】
いくつかの態様では、所望の厚さに到達するようにフィルムの薄い複数の層で厚いフィルムが作製される。
【0177】
厚さは、特に手袋において「平均厚」として、以下に記載の測定点を使用して好適に測定される。いくつかの態様では、手袋のフィルム厚は、2mm未満(例えば0.01mm〜2mm)である。例えば、フィルム厚は0.04mm〜2mmの範囲内でありうる。
【0178】
別の態様では、手袋は重量約4gを有しうるが、一方で、手袋が使用される目的に応じて、より大きなおよびより小さな手袋の重量を得ることもできることが理解されよう。
【0179】
最終フィルム(または物品)は、例えば1枚の層を有してもよく、別々の浸漬させる工程によって生成される複数枚の層から作製されてもよい。例えば、最終フィルム(または物品)は1〜15枚の層を含みうる。
【0180】
本発明のエラストマーフィルム形成組成物から調製される最終フィルムは、天然ゴムフィルムにより近い好ましい感触および快適性を保持するが、天然ゴムに付随するタンパク質および他の潜在的アレルゲン(I型アレルギーを引き起こす)を含まない。いくつかの態様では、本発明のエラストマーフィルム形成組成物から調製される最終フィルムは、天然ゴムフィルムに比べて減少した皮膚刺激性を示す。例えば、本発明のエラストマーフィルム形成組成物から調製される最終フィルムは、天然ゴムフィルムに比べてI型アレルギーの危険性を減少させる。好ましくは、本発明のエラストマーフィルム形成組成物から調製されるフィルムはI型アレルギーを回避する。
【0181】
浸漬品が手袋である場合、天然ゴム手袋の性質を保持することは、目に見える粉体状の粘着防止材料なしでこの製造物が容易に装着可能であることも意味する。天然ゴム手袋と同様に、本発明の手袋は、タルク、コーンスターチ、または炭酸カルシウムのような目に見える粉体状の粘着防止材料なしで容易に装着可能でありうる。いくつかの態様では、本発明の手袋は、ユーザーが手袋を装着することを支援するための、手袋の内面に塗布されるコーティング、例えばアクリレートのポリマー積層物、または粉体を有しうる。さらに、フィルムの適切な硬化によって粘着性が除去され、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンの結合特性によって、一般的なコーティング材料が、適切な装着効果および非粘着効果、ならびに好適なパウダーフリー条件を与えるために十分なものになる。さらに、本発明のエラストマーフィルム形成組成物において使用されるポリマー中の塩素の存在は、微生物抑制物質として作用する。
【0182】
また、本発明のエラストマーフィルム形成組成物から調製される浸漬品は、改善された物性を有する。いくつかの態様では、本発明のエラストマーフィルム形成組成物から調製される浸漬品は、浸漬品または手袋を形成するための他のエラストマーに比べて高い引張強さ、低い300%モジュラスおよび/または低い500%モジュラス、ならびに高い破断伸びを有する。いくつかの態様では、本発明のエラストマーフィルム形成組成物から調製される浸漬品は、約2000psi超もしくは約2000psiの引張強さ、約100〜2000psiの300%モジュラス、約200〜3000psiの500%応力、および/または約400〜1500%の破断伸びを有する。例えば、本発明の組成物から調製されるエラストマーフィルムは、少なくとも約2100psiの引張強さ、660psi未満の300%モジュラス、約2400psi未満の500%応力(好ましくは、500%応力は約200psi〜1015psiである)、および/または約400〜1100%の破断伸びを有する。いくつかの態様では、本発明の組成物から調製されるエラストマーフィルムは、2100psi〜4000psi、2200psi〜4000psi、または2500psi〜4000psiの引張強さを有する。いくつかの態様では、本発明の組成物から調製されるエラストマーフィルムは、200psi〜2400psi、200psi〜1015psi、200psi〜800psi、または200psi〜400psiの500%応力を有する。いくつかの態様では、本発明の組成物から調製されるエラストマーフィルムは、520%超の破断伸びを有する。好ましくは、本発明の組成物から調製されるエラストマーフィルムは、520%〜1100%、650%超、650%〜1100%、750%〜1100%、800%〜1100%、900%〜1100%、または1000%超の破断伸びを有する。
【0183】
本発明のエラストマーフィルム形成組成物を使用することによって、本組成物において使用される成分の量および本組成物において使用される成分の種類が変動することによってフィルムの柔らかさが非常に柔らかい〜中程度〜非常に硬いという範囲になる、エラストマーフィルムまたは浸漬品を形成することができる。いくつかの態様では、エラストマーフィルムまたは浸漬品の柔らかさを、ポリマー/コポリマーのカルボキシル化レベル、本組成物において使用される第2のエラストマーの量および種類、架橋剤の量および種類、ならびに/またはポリマー/コポリマー中の塩素の量を調整することによって変動させることができる。一例として、本発明の組成物から調製されるエラストマーフィルムを使用して、約2100psi超もしくは約2100psiの引張強さ、約660psi未満もしくは約660psiの300%モジュラス、約1015psi未満もしくは約1015psiの500%応力、および/または約800%超の破断伸びを有する柔らかいフィルムを形成することができる。別の例として、本発明の組成物から調製されるエラストマーフィルムを使用して、約2100psi超もしくは約2100psiの引張強さ、約1200psi未満もしくは約1200psiの300%モジュラス、約2800psi未満もしくは約2800psiの500%応力、および/または約500〜800%の破断伸びを有する柔らかい〜中程度のフィルムを形成することができる。さらなる例として、本発明の組成物から調製されるエラストマーフィルムを使用して、約2100psi超もしくは約2100psiの引張強さ、約1200psi未満の300%モジュラス、約2800psi未満の500%応力、および/または約400〜700%の破断伸びを有する中程度の〜硬いフィルムを形成することができる。
【0184】
エラストマーフィルムの性質がカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンのカルボキシル化レベル、および1つまたは複数の第2のエラストマーとのブレンド量によって部分的に決定されることから、これらの特徴を、所望のエラストマーフィルムに到達するように調整することができる。この改善は、架橋剤としてのイオン性架橋剤(例えば金属酸化物または金属水酸化物)および共有結合性架橋剤(例えば硫黄または硫黄含有加硫剤)とカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンとの組み合わせを使用する場合に、いっそう大きなものとなりうる。
【0185】
例えば、カルボン酸またはエステル含有量が約0.01〜5.0%の範囲内であるかまたは塩素含有量が約10〜50%の範囲内である場合に、より薄く、より柔らかく、より弾性が高いフィルムが生成される。例えば、カルボン酸またはエステル含有量が約0.5〜8%の範囲内であるかまたは塩素含有量が約30〜58%の範囲内である場合に、より硬いか、より弾性が低いか、またはより耐久性が高いフィルムが生成される。第2のエラストマーを本組成物において使用する場合、使用する量はカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンのカルボン酸またはエステル含有量および塩素含有量、ならびに得られるエラストマーフィルムまたは浸漬品に必要な性質に依存する。第2のエラストマーの量は、乾燥ベースでの本組成物のポリマー成分に対するパーセントとして表され、以下の範囲のうち1つの範囲内より選択することができる: 0〜95%、5〜95%、0〜75%、0〜65%、5〜75%、5〜65%、10〜95%、10〜75%、10〜65%、16〜95%、15〜75%、15〜65%、20〜95%、20〜75%、20〜65%、25〜95%、25〜75%、25〜65%、30〜95%、30〜75%、30〜65%、35〜95%、35〜75%、35〜65%、40〜95%、40〜75%、40〜65%。ブレンド組成物が、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンの使用によってもたらされた好ましい性質を保持することが認識されよう。好ましくは、第2のエラストマーの量は約75%未満、例えば0〜75%、5〜75%、10〜75%、15〜75%、20〜75%、25〜75%、30〜75%、35〜75%、または40〜75%である。
【0186】
フィルムの所望の耐久性は物品の最終用途によって決定される。例えば、非手術用の手袋では、着用時間は通常3時間未満、一般的には2時間未満である。フィルムの耐久性は硬化条件によって制御することができる。一般に、硬化温度が高いほど、エラストマーフィルムの耐久性が高くなる。
【0187】
手袋(具体的には手袋を形成する多層エラストマーフィルム)の厚さに関する「平均厚」という用語は、エラストマーフィルムの層に沿った複数の地点において取得する3つの厚さ測定値の平均を意味する。測定値は袖口、手掌、および指先において取得する。手袋の個々の層の厚さを測定する場合、「平均厚」とは、3つの測定地点において取得するフィルムのその層の平均厚を意味する。これは定数項(mm単位)として、または多層手袋の全厚に対するパーセントとして測定することができる。エラストマー系の物品では、3つの厚さ測定値を使用する同様の技術を使用して「平均厚」を決定することができる。
【0188】
特許請求の範囲および前記の説明において、明確な言辞または必要な暗示によって文脈的に別途必要となる場合を除いて、「含む(comprise)」という用語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」という変種は、非排他的な意味で使用されるものであり、すなわち、本発明の様々な態様において、記載の特徴の存在を規定するために使用されるが、さらなる特徴の存在または付加を排除するためには使用されない。
【0189】
本発明を以下の実施例により例示する。当業者であれば、製造される物品、使用される特定のカルボキシル化ポリクロロプレンのコポリマーまたはブレンド、当該ラテックスのカルボキシル化レベルに関して選択される特定の配合成分に従ってプロセスの回数および温度をどのようにして変動させるかを理解しているものと理解されよう。
【実施例】
【0190】
ここで本発明を以下の非限定的な実施例を参照してさらに詳細に説明する。すべての試験手法を試験手法のセクションに示し、これらの試験の結果を示す。組成物および試験結果のすべての表を表のセクションに示す。
【0191】
一般的手法
以下の記載の実施例では、以下の一般的手法を利用してエラストマーフィルム、特に手袋を生成した。また、一般的手法を使用して、生成される多層エラストマーフィルムの品質にエラストマーフィルム形成組成物の特定の加工条件および成分が与える影響(もしあれば)を示した。
【0192】
以下に記載のすべての実施例(1〜10)に関して以下の一般的手法に従った。
【0193】
1. 洗浄
成形具上で既に作製された手袋を取り外した後、残留物を洗い流すために成形具を前洗浄に供する。成形具を弱酸/弱アルカリおよび熱水中で洗浄する。次に成形具を、送風機もしくはエアカーテンによって空気を吹き付けることで、または温度105℃超を有する熱風と共にオーブンを使用して、乾燥させる。
【0194】
2. 凝着浸漬
洗浄した乾燥成形具を、硝酸カルシウムの0〜50重量%溶液を含有する凝固剤浴に浸す。凝固剤は金属ステアラート0.1重量%〜5.0重量%、好適な湿潤剤(0.001〜1.0%)、および消泡剤(0.001〜1.0%)も含有する。
【0195】
3. 乾燥
凝固剤でコーティングされた成形具を熱風循環オーブン中にて温度約110℃〜130℃で乾燥させる。
【0196】
4. 第1の浸漬工程
乾燥凝固剤でコーティングされた成形具を、所与の例に関して規定された成分を含有する、エラストマーフィルムを形成するための組成物のタンクに浸漬させる。使用する組成物は濃度約5〜60重量%、好ましくは10〜40重量%を有する。組成物を温度約20〜35℃に維持し、クリーミングおよび化学物質の沈殿を回避するためにタンク中で常に循環させる。成形具を滞留時間5秒〜60秒にわたって組成物に浸漬させる。
【0197】
5. 乾燥
組成物でコーティングされた成形具をゲル化オーブン中にて温度約100〜300℃および持続時間2〜300秒でゲル化する。
【0198】
6. 前濾過
前濾過を、温水中で短時間すすぐことによって行う。成形具上のゲル化フィルムコーティングを一連のタンク中にて周囲温度〜55℃で前濾過する。
【0199】
7. 第2の浸漬工程
次に、所与の例に関して規定された成分を含有する、エラストマーフィルムを形成するための組成物のタンクに、成形具上の前濾過されたゲル化フィルムコーティングを浸漬させる。組成物は、濃度約5〜50重量%、好ましくは8〜35重量%を有する。組成物を温度約10〜60℃、好ましくは20〜40℃に維持し、クリーミングおよび化学物質の沈殿を回避するためにタンク中で常に循環させる。成形具を滞留時間5〜90秒にわたって組成物に浸漬させる。
【0200】
8. ゲル化/前濾過/ビード加工
第2の浸漬工程の後の生成物をゲル化および前濾過およびビード加工に供する。
【0201】
ビード加工工程、乾燥工程、および前濾過工程は、任意の順序で行うことができる。袖口ビード加工の品質に応じて、ビード加工および硬化前濾過のプロセスを入れ替えてもよい。
【0202】
9. 加硫
次に、ビード加工された手袋を、フィルム厚に応じて約100℃〜150℃で約15〜30分間加硫する。
【0203】
10. 後濾過/潤滑剤/最終乾燥/剥離/回転乾燥
加硫された手袋を後濾過し、潤滑剤に浸漬し(任意)、最終乾燥後に剥離する。さらなる硬化または表面処理が必要な場合、手袋を熱気を使用して温度約40〜120℃で約10〜120分間回転式乾燥機にかけることができる。
【0204】
一般的配合
手袋の一般的配合は以下の通りである。
【0205】
(表1)
* カルボン酸含有量は重要である。エラストマーフィルムの性質に対するカルボン酸含有量の効果を以下でさらに詳細に説明する。
** 実施例3〜10において使用されるSynthomer Type X3000などの市販の第2のエラストマーは、多くの場合カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムの形態で供給される。
【0206】
上記に示した一般的配合以外にも、必要に応じて以下の成分を配合物に追加してもよいことが認識されよう。
・pH安定剤は例えばオレアート、ステアラート、もしくは他の非イオン性界面活性剤、または水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、およびもしくは水酸化ナトリウムでありうる。
・好適な乳化剤兼安定剤はアルキル硫酸ナトリウム、樹脂/ロジン酸のカリウム塩、または他の非イオン性界面活性剤でありうる。
・使用されるオゾン劣化防止剤はパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、および中間型でありうる。金属酸化物の加硫活性剤は酸化マグネシウムまたは酸化亜鉛でありうる。
・架橋剤は硫黄および/または他の有機過酸化物および/または架橋反応性モノマーでありうる。
・加硫促進剤はメルカプトベンゾチアゾールおよび誘導体、ジチオカルバメートおよび誘導体、硫黄供与体、グアニジンおよびその誘導体、チオ尿素およびその誘導体、ならびにアルデヒドアミン反応生成物より選択される。
・酸化防止剤はヒンダードポリマーフェノールまたはアリールアミンでありうる。不透明化物質は酸化チタンまたは他の鉱物でありうる。
・脱泡剤はナフタレン型脱泡剤、植物油系脱泡剤、シリコーン型脱泡剤などでありうる。
【0207】
ポリクロロブタジエンのカルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化
カルボキシレートグラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンは、その内容が参照により本明細書に組み入れられる"Polymer Grafting and Cross-linking" Edited by Dr.Amit Bhattacharya, Dr.James W. Rawlins, and Dr.Paramita Ray, John Wiley & Sons, Inc., 2009および"Grafting: a versatile means to modify polymers: Techniques, factors and applications" Bhattacharyaa, A. and Misrab, B.N., Progress in Polymer Science, 2004, Volume 29, Issue 8, pages 767-814に記載の様々な方法のうちの1つを使用して調製することができる。
【0208】
一例として、カルボキシレートグラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンを以下の一般的手法を使用して調製することができる。
【0209】
ポリ-2-クロロ-1,3-ブタジエン92〜99部、メタクリル酸1〜8部、およびジイソプロピルキサントゲンジスルフィド0.8部を含有する第1の溶液を調製する。水中でポリビニルアルコール(PVA)3〜8部を含有する第2の溶液も調製した。第1の溶液および第2の溶媒を乳化させて水中油型乳濁液を形成した。90〜100部の量の水を使用した。使用する酸化還元触媒系を亜硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウムとし、これらを必要に応じて添加してグラフトを開始および維持した。反応を完全変換(約98パーセント)まで温度45℃で行った。反応の終わりに、フェノチアジンおよび4-tertブチルピロカテコール各約0.01部を含有する乳濁液を添加して、任意のさらなる反応に対して安定化した。
【0210】
以下に記載のすべての実施例(1〜10)では、一般的手法を使用してエラストマーフィルム形成組成物を調製した。
【0211】
カルボキシル化レベル0.01%、1.5%、および2.5%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを生成するために、この方法を、ポリクロロブタジエンの使用量に対してカルボン酸またはエステルの使用量を調整することによって制御した。ポリ-2-クロロ-1,3-ブタジエン100kgに対して、メタクリル酸の使用量をそれぞれ0.02kg、2.925kg、および4.875kgとした(変換率98%で算出)。カルボン酸もしくはエステルの量(またはポリマーのグラフト度もしくはカルボキシル化度)は、分析的方法を使用して未反応カルボン酸またはエステルの量を決定し、カルボン酸またはエステルの添加量からこの量を差し引くことによって確認することができる。
【0212】
実施例1
本実施例は、単層または多層手袋(1〜15枚の層)が、上記で概要を示した一般的手法を使用して作製可能であることを示す。手袋を、以下の表2で概要を示す組成物を使用して作製した。本実施例では、カルボキシル化レベル1.5%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンコポリマー(CPC)を上記のように調製した。
【0213】
(表2)
【0214】
先に記載した上記の配合物および条件を使用して生成された手袋は、柔らかく、天然ポリイソプレン材料から作製された手袋のような感触であった。しかし、モジュラスおよび伸びは天然ポリイソプレンから作製された手袋よりも優れていた。フィルムは均一であり、ウィークスポットまたはピンホールは認められなかった。手袋の厚さは袖口から指先まで0.05〜0.11と変動した。
【0215】
実施例2
本実施例は、単層または多層手袋(1〜15枚の層)が、上記実施例1で使用した組成物とは異なる組成物を使用する場合に作製可能であることを示す。本実施例では、カルボキシル化レベル2.5%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレン(CPC) コポリマーを上記のように調製した。手袋を、一般的手法を使用しかつ以下の表3で概要を示す組成物を使用して作製した。
【0216】
(表3)
*カルボキシル化レベル - 2.5%
【0217】
先に記載した上記の配合物および条件を使用して生成された手袋は、柔らかく、天然ポリイソプレン材料から作製された手袋のような感触であった。モジュラスおよび伸びは天然ポリイソプレンから作製された手袋のそれとほぼ等しかった。フィルムは均一であり、ウィークスポットまたはピンホールは観察されなかった。手袋の厚さは袖口から指先まで0.05〜0.10と変動した。手袋のモジュラスは実施例1の手袋よりも高いことがわかった。これはより高いカルボキシル化レベル(実施例1の1.5%に対して2.5%)が理由でありうる。
【0218】
実施例3
本実施例は、単層または多層手袋(1〜15枚の層)が、上記実施例1で使用した組成物とは異なる組成物を使用する場合に作製可能であることを示す。本実施例では、使用したポリマーはCPCB(カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンブレンド)であった。ブレンドは最大15%のニトリルブタジエンゴムラテックスからなる(本実施例ではSynthomer、Nippon Zeon、Khumho、LG、NanTexから市販されているSynthomer Type X3000を使用したが、ほぼ等しい仕様の他の材料を使用してもよい)。カルボキシル化レベル1.5%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを上記のように調製した。組成物はより多い量の酸化亜鉛、硫黄、およびZDBCなどの架橋剤、ならびにより多い量の酸化防止剤も含んだ。手袋を、一般的手法を使用しかつ以下の表4で概要を示す組成物を使用して作製した。
【0219】
(表4)
*カルボキシル化レベル - 1.5%
【0220】
フィルムは均一であり、ウィークスポットまたはピンホールは観察されなかった。手袋の厚さは袖口から指先まで0.05〜0.10と変動した。手袋のモジュラスは実施例2の手袋よりも高いことがわかった。これはニトリルブタジエンゴムラテックスとのブレンドが理由でありうる。しかし、伸びは通常のニトリルブタジエンゴムよりも優れていた。
【0221】
実施例4
本実施例は、単層または多層手袋(1〜15枚の層)が、上記実施例1で使用した組成物とは異なる組成物を使用する場合に作製可能であることを示す。本実施例では、使用したポリマーはCPCB(カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンブレンド)であった。ブレンドは最大15%のニトリルブタジエンゴムラテックスからなる(本実施例ではSynthomer、Nippon Zeon、Khumho、LG、NanTexから市販されているSynthomer Type X3000を使用したが、ほぼ等しい使用の他の材料を使用してもよい)。カルボキシル化レベル2.5%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを上記のように調製した。組成物は、より多い量の酸化亜鉛、硫黄、およびZDBCなどの架橋剤、ならびにより多い量の酸化防止剤も含んだ。手袋を、一般的手法を使用しかつ以下の表5で概要を示す組成物を使用して作製した。
【0222】
(表5)
*カルボキシル化レベル - 2.5%
【0223】
フィルムは均一であり、ウィークスポットまたはピンホールは観察されなかった。手袋の厚さは袖口から指先まで0.05〜0.10と変動した。実施例3の手袋に比べて、手袋は強靱であることがわかり、手袋のモジュラスは高いことがわかった。これはニトリルブタジエンゴムラテックスとのブレンドおよび/またはベースポリマーのより高いカルボキシル化レベルが理由でありうる。しかし、伸びは通常のニトリルブタジエンゴム製品よりも優れていた。
【0224】
実施例5
本実施例は、単層または多層手袋(1〜15枚の層)が、上記実施例1で使用した組成物とは異なる組成物を使用する場合に作製可能であることを示す。本実施例では、使用したポリマーはCPCB(カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンブレンド)であった。ブレンドは最大15%のニトリルブタジエンゴムラテックスからなる(本実施例ではSynthomer、Nippon Zeon、Khumho、LG、NanTexから市販されているSynthomer Type X3000を使用したが、ほぼ等しい使用の他の材料を使用してもよい)。カルボキシル化レベル1.5%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを上記のように調製した。組成物は、実施例3および4において使用した量よりも少ない量の酸化亜鉛、硫黄、およびZDBCなどの架橋剤、ならびに同じ量の酸化防止剤も含んだ。手袋を、一般的手法を使用しかつ以下の表6で概要を示す組成物を使用して作製した。
【0225】
(表6)
*カルボキシル化レベル - 1.5%
【0226】
フィルムは均一であり、ウィークスポットまたはピンホールは観察されなかった。手袋の厚さは袖口から指先まで0.05〜0.11と変動した。実施例4の手袋に比べて、手袋は優れていることがわかり、手袋のモジュラスは低いことがわかった。これはより低いレベルの化学物質の使用が理由でありうる。しかし、伸びは通常のニトリルブタジエンゴム製品よりもはるかに優れていた。
【0227】
実施例6
本実施例は、単層または多層手袋(1〜15枚の層)が、上記実施例1で使用した組成物とは異なる組成物を使用する場合に作製可能であることを示す。本実施例では、使用したポリマーはCPCB(カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンブレンド)であった。ブレンドは最大15%のニトリルブタジエンゴムラテックスからなる(本実施例ではSynthomer、Nippon Zeon、Khumho、LG、NanTexから市販されているSynthomer Type X3000を使用したが、ほぼ等しい使用の他の材料を使用してもよい)。カルボキシル化レベル2.5%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを上記のように調製した。組成物は、実施例3および4において使用した量よりも少ない量の酸化亜鉛、硫黄、およびZDBCなどの架橋剤、ならびに同じ量の酸化防止剤も含んだ。手袋を、一般的手法を使用しかつ以下の表7で概要を示す組成物を使用して作製した。
【0228】
(表7)
*カルボキシル化レベル - 2.5%
【0229】
フィルムは均一であり、ウィークスポットまたはピンホールは観察されなかった。手袋の厚さは袖口から指先まで0.05〜0.10と変動した。実施例5の手袋に比べて、手袋は強靱であることがわかり、手袋のモジュラスは高いことがわかった。これはベースポリマーのより高いカルボキシル化レベルが理由でありうる。しかし、伸びは通常のニトリルブタジエンゴム製品よりも優れていた。手袋の強度は、より高いレベルの化学物質ならびに同じカルボキシル化レベルおよびブレンド率が使用された実施例4の手袋よりも優れている。
【0230】
実施例7〜10: カルボキシル化の下限およびブレンドの上限を検証するための実験
本実施例では、0.01%のカルボキシル化、および組成物と最大95%の量の低コストフィルム形成ラテックスとのブレンドについて検証を行う。
【0231】
0.01%のカルボキシル化を一定に保持し、ブレンド条件を30%、45%、75%、および95%の段階で選択した。
【0232】
これらの実施例は、単層または多層手袋(1〜15枚の層)が、以下の表に示す異なる組成物を使用する場合に作製可能であることを示す。これらの実施例では、使用したポリマーはCPCB(カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンブレンド)であった。ブレンドは最大95%のニトリルブタジエンゴムラテックスからなる(これらの実施例ではSynthomer、Nippon Zeon、Khumho、LG、NanTexから市販されているSynthomer Type X3000を使用したが、ほぼ等しい使用の他の材料を使用してもよい)。カルボキシル化レベル0.01%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを上記のように調製した。組成物は酸化亜鉛、硫黄、およびZDBCなどの架橋剤、ならびに以下の表に示す酸化防止剤も含んだ。手袋を、一般的手法を使用しかつ以下の表8で概要を示す組成物を使用して作製した。
【0233】
(表8)
*カルボキシル化レベル - 0.01%
【0234】
上記組成物から作製された手袋は均一なフィルムを有し、ウィークポイントまたはピンホールは観察されなかった。手袋の厚さは袖口から指先まで0.05〜0.10と変動した。
【0235】
実施例7 -得られた手袋は強靱であり、ほぼニトリル手袋のようであり、弾性は最小限であった。しかし、カルボキシル化ポリクロロプレンの存在が理由で、通常のニトリル手袋よりも感触および柔らかさが優れている。
【0236】
実施例8 - 生成された手袋は実施例7の手袋よりも柔らかかった。
【0237】
実施例9 - 得られた手袋は柔らかく、実施例7および8の手袋よりも優れた伸縮性を有していた。
【0238】
実施例10 - 得られた手袋は強靱であり、ほぼニトリル手袋のようであり、弾性は最小限であった。そのような手袋は、快適さが決定的な要因とならない低コスト用途に好適でありうる。しかし、架橋剤の量または種類を減少させて配合物をさらに修正することによって、より柔らかくかつ/またはより伸縮性の高い手袋を作製することができることが認識されよう。
【0239】
試験手法
すべての実施例において、以下の試験技術を使用した。
【0240】
一般的試験手法
引張強さ、300%モジュラスおよび500%モジュラス時の応力、ならびに破断伸びを、ASTM D 412-06a (2013)に準拠して行われる試験手法によって測定した。この基準はASTM Internationalから入手可能であり、加硫ゴムおよび熱可塑性エラストマーを試験するための標準規格および試験基準を詳述している。これらの試験を多層フィルムおよび手袋(医療用途向けの健康診断用手袋および手術用手袋などの)に適用することができる。
【0241】
結果
実施例1〜6のエラストマーフィルム形成組成物を使用して調製したエラストマーフィルムを試験し、エラストマーフィルムの以下の性質を測定した。
・300%モジュラス;
・500%モジュラス;
・引張強さ(Psi); および
・伸び%。
【0242】
これらの測定の結果を表9に示す。
【0243】
(表9)
# CPCとは、特定のカルボキシル化%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを意味する。CPCBとは、上記実施例3〜6に記載の通りの特定のカルボキシル化%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンおよび第2のエラストマーを含有するブレンドを意味する。
【0244】
(表10)
# CPCとは、特定のカルボキシル化%を有するカルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを意味する。
【0245】
これら各組成物について得られた値を比較することによって以下の一般的結論を得ることができる。
1. ポリマーのカルボキシル化度が低いほど、フィルムの弾性が高くなる。上記表9に示すように、カルボキシル化レベル1.5%を有するポリマーを使用した実施例1、3、および5の伸び%が、カルボキシル化レベル2.5%を有するポリマーを使用した実施例2、4、および6に比べて高い。したがって、カルボキシル化レベルが高いほど、300%モジュラス、500%モジュラス、および引張強さが高くなるが、フィルムは低い伸び%を有する。
2. ポリマーのカルボキシル化度が低いほど、フィルムのモジュラスが低くなる。上記表9に示すように、カルボキシル化レベル1.5%を有するポリマーを使用した実施例1、3、および5のモジュラスが、カルボキシル化レベル2.5%を有するポリマーを使用した実施例2、4、および6に比べて低い。
3. 実施例3および4において使用される架橋剤のより高いレベルは、実施例5および6において使用される架橋剤のより低いレベルに比べて有意な、引張強さに対する効果を示さない。しかし、実施例5および6に比べて、実施例3および4のモジュラス値はわずかに高く、伸びはわずかに低い。この結果は、架橋剤の量の増加が大きな影響を与えないことを示唆している。
4. 実施例1および2のモジュラス値を実施例3〜6のモジュラス値に対して比較することによって、カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを使用する場合のエラストマーフィルムのモジュラスが、カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを含有するブレンドを使用する場合よりも低いことを見出すことができる。しかし、カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンを含有するブレンドを使用して調製される物品を選択された用途で使用することができることが認識されよう。
5. 実施例5および6を等しいレベルの架橋剤(ZnO 2.5phr、硫黄0.5phr、およびZDBC 0.5phr)およびブレンド率15重量%を用いて作製した。しかし、実施例5および6のカルボキシル化レベルはそれぞれ1.5および2.5%であった。
図1からは、限定的なブレンド(すなわちより少ない量の第2のエラストマー)であっても、より高いカルボキシル化レベルによって、より高い300%モジュラス、500%モジュラス、および引張強さが生じ、一方でより低い伸び%が生じることが明らかである。
6. 実施例1および2における全化学的消費%は、ポリクロロプレンポリマーに使用される従来の硬化系に比べて少ない。特に、金属酸化物の全化学的消費%はわずか1.8%であり、一方、ポリクロロプレンポリマーに使用される従来の硬化系では、金属酸化物の全化学的消費%は約3〜5倍以上の6〜10%と変動する。さらに、硬化をオーブン滞留時間15〜30分間にわたって100〜130℃で実行することができる。酸化亜鉛の量の減少と硬化に必要な温度および持続時間の減少との組み合わせによって環境上の利点が得られる。
7. 実施例9、8、7、および10はカルボキシル化レベル0.01%で作製されたが、第2のエラストマーの量はそれぞれ30、45、75、および95である。ZnOレベルは4phr、3phr、2phr、および1.2phrであり(それぞれ実施例9、8、7、および10において)、硫黄レベルは1.5phrであり、ZDBCレベルは1.5phr、1.25phr、1.0phr、および0.8phrであった(それぞれ実施例9、8、7、および10において)。第2のエラストマーの量が増加するに従って、300%モジュラス、500%モジュラス、および引張強さが増加し、一方で伸び%が減少した。
8. 実施例1〜10のうち、実施例1は最小のモジュラス(150psi)および最大の伸び(1050%)を示した。
【0246】
カルボキシル化レベルの下限およびブレンドの上限を検証する(表10)
最低カルボキシル化レベルおよび最高ブレンドレベルによって、好適な手袋が提供されるが、製造物は実施例1〜6の製造物ほど柔らかくない。
【0247】
実施例7、8、9、および10の手袋は、ポリクロロプレン材料を使用して作製される医療用手袋に関するASTM規格に合格するものであり、したがってこれらの限界は手袋を作製するために検証された。
【0248】
実施例7、8、9、および10の場合、カルボン酸グラフト化ポリクロロプレン(0.01カルボキシル化パーセントを有する)の量が増加するに従って、手袋が柔らかくなり、言い換えれば、カルボン酸グラフト化ポリクロロプレンの量が減少しかつニトリルブタジエンゴム含有量が増加するに従って、モジュラス値および引張値が増加することがわかった。カルボン酸グラフトの量が増加するに従って伸びが増加する。
【0249】
前述の説明および実施例は本発明の好ましい態様のみに関するものであり、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の真意および範囲を逸脱することなく数多くの変更および修正を行うことができる。
【0250】
本明細書において任意の先行技術の刊行物が参照される場合、そのような参照が、該刊行物がオーストラリアまたは任意の他国において当技術分野における共通の一般的知識の一部を形成するということの承認を構成するものではないことを理解すべきである。
【0251】
添付の特許請求の範囲および前記の本発明の説明において、明確な言辞または必要な暗示によって文脈的に別途必要となる場合を除いて、「含む(comprise)」という用語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」という変種は、非排他的な意味で使用されるものであり、すなわち、本発明の様々な態様において、記載の特徴の存在を規定するために使用されるが、さらなる特徴の存在または付加を排除するためには使用されない。
【0252】
項目
本発明は以下の項目に関する。
1. カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン、および
1つまたは複数の架橋剤
を含む、エラストマーフィルム形成組成物。
2. 前記クロロブタジエンが、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の組成物。
3. 前記カルボン酸または前記エステルが、式:
CR
1H=CR
2-C(O)-OR
3
または
CR
1H=CR
2-O-C(O)-R
3
を有するエチレン性不飽和のカルボン酸またはエステル、および、そのシスまたはトランス異性体である、項目1または2に記載の組成物:
式中、
R
1は、水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、-C(O)-OR
4、または-R
5-C(O)-OHであり、ここでR
4は水素、または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、かつR
5は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり;
R
2は、水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、またはカルボキシメチル基であり;
R
3は、水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、または-R
6O-C(O)-CR
7=CR
8であり、ここでR
6は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、かつR
7およびR
8はそれぞれ独立して水素、または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基である。
4. 前記カルボン酸または前記エステルが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メタクリレートエステル、エチレンジオールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、氷メタクリル酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1〜3のいずれかに記載の組成物。
5. 前記カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、該カルボン酸または該エステルを、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01重量%〜8重量%の量で含有する、項目1〜4のいずれかに記載の組成物。
6. 前記ポリマーが、該ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の10〜60重量%または10〜58重量%の塩素を含む、項目1〜5のいずれかに記載の組成物。
7. 前記組成物中の全固体の濃度が該組成物の5〜60重量%である、項目1〜6のいずれかに記載の組成物。
8. 前記架橋剤が、カルバメート、チオカルバメート、チウラム、チオ尿素、チアゾール、グアニジン、アルデヒド/アミン系加硫促進剤、イオン性架橋剤、有機金属酸化物および無機金属酸化物、有機金属水酸化物および無機金属水酸化物、有機過酸化物および無機過酸化物、共有結合性架橋剤、硫黄、架橋性モノマー、反応性オリゴマー、ポリイソシアネートオリゴマー、官能性架橋型ポリマー、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートの誘導体、メチレンビスアクリルアミドの誘導体、ホルムアルデヒドを含まない架橋剤、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、フタル酸ジアリル、ジビニルスルホン、ならびに、それらの組み合わせからなる群より選択される、項目1〜7のいずれかに記載の組成物。
9. 前記架橋剤がイオン性架橋剤および共有結合性架橋剤を含む、項目8に記載の組成物。
10. 前記イオン性架橋剤が金属酸化物または金属水酸化物である、項目9に記載の組成物。
11. 前記金属酸化物または金属水酸化物が、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化銅、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化マンガン、水酸化銅、水酸化アルミニウム、および水酸化ニッケルからなる群より選択される1つの剤または複数の剤の混合物である、項目10に記載の組成物。
12. 前記共有結合性架橋剤が硫黄または硫黄含有加硫剤である、項目9に記載の組成物。
13. 前記組成物中の架橋剤の量が、0.5〜15.0phr、1.0〜15.0phr、1.5〜15.0phr、0.5〜13.0phr、1.0〜13.0phr、1.5〜13.0phr、0.5〜11.0phr、1.0〜11.0phr、1.5〜11.0phr、0.5〜10.0phr、1.0〜10.0phr、1.5〜10.0phr、0.5〜8.0phr、1.0〜8.0phr、1.5〜8.0phr、0.5〜7.0phr、1.0〜7.0phr、1.5〜7.0phr、2.0〜8.0phr、2.5〜10.0phr、5.0〜10.0phr、3.0〜7.0phr、3.0〜6.0phr、4.0〜7.0phr、4.0〜6.0phr、4.0〜5.0phr、2.0〜5.0phr、2.0〜4.0phr、3.0〜4.0phr、0.01〜3.5phr、0.01〜3.0phr、0.01〜2.0phr、0.01〜1.5phr、0.01〜1.0phr、または0.01〜0.5phrの範囲内である、項目1〜12のいずれかに記載の組成物。
14. 前記組成物中の金属酸化物または金属水酸化物の架橋剤の量が、1.0〜10.0phr、2.0〜8.0phr、2.5〜10.0phr、5.0〜10.0phr、3.0〜7.0phr、3.0〜6.0phr、4.0〜7.0phr、4.0〜6.0phr、4.0〜5.0phr、2.0〜5.0phr、2.0〜4.0phr、または3.0〜4.0phrの範囲内である、項目10または11に記載の組成物。
15. 前記組成物中の硫黄または硫黄含有加硫剤の量が、0.01〜3.5phr、0.01〜3.0phr、0.01〜2.0phr、0.01〜1.5phr、0.01〜1.0phr、または0.01〜0.5phrの範囲内である、項目12に記載の組成物。
16. ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンジブロックコポリマー、スチレントリブロックコポリマー、アクリルポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される第2のエラストマーをさらに含む、項目1〜13のいずれかに記載の組成物。
17. 前記第2のエラストマーが、カルボキシル化エラストマー、非カルボキシル化エラストマー、または、カルボキシル化エラストマーと非カルボキシル化エラストマーの混合物である、項目16に記載の組成物。
18. 前記第2のエラストマーが、前記組成物のポリマー成分の0〜95重量%、5〜95重量%、0〜75重量%、5〜75重量%、0〜65重量%、5〜65重量%、0〜50重量%、5〜50重量%、10〜95重量%、10〜75重量%、10〜65重量%、15〜95重量%、15〜75重量%、15〜65重量%、20〜95重量%、20〜75重量%、20〜65重量%、25〜95重量%、25〜75重量%、25〜65重量%、30〜95重量%、30〜75重量%、30〜65重量%、35〜95重量%、35〜75重量%、35〜65重量%、40〜95重量%、40〜75重量%、40〜65重量%、50〜95重量%、50〜75重量%、50〜60重量%、50〜65重量%、60〜65重量%、60〜75重量%、60〜80重量%、60〜95重量%、70〜90重量%、70〜95重量%、80〜95重量%、1〜5重量%、5〜10重量%、10〜15重量%、15〜20重量%、20〜25重量%、25〜30重量%、30〜35重量%、35〜40重量%、または40〜50重量%の量で存在する、項目16または17に記載の組成物。
19. カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン、および
1つまたは複数の架橋剤
の硬化組成物の少なくとも1枚の層
を含むエラストマーフィルムから作製された浸漬品。
20. 項目1〜18のいずれかに記載のエラストマーフィルム形成組成物から作製された浸漬品。
21. 手袋である、項目19または20に記載の浸漬品。
22. 前記エラストマーフィルムの平均厚が約0.01mm〜約3mmである、項目19〜21のいずれかに記載の浸漬品。
23. 前記エラストマーフィルムが、1〜15枚の層を含み、かつ各層が、別々の浸漬させる工程によって生成される、項目19〜22のいずれかに記載の浸漬品。
24. 1つまたは複数の架橋剤で架橋されている、カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン
を含むエラストマーフィルムの少なくとも1枚の層を含む、手袋。
25. 約2000psi超もしくは約2000psiの引張強さ、約100〜2000psiの300%モジュラス、約200〜3000psiの500%応力、および/または約400〜1500%の破断伸びを有する、項目24に記載の手袋。
26. 前記クロロブタジエンが、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目24または25に記載の手袋。
27. 前記カルボン酸または前記エステルが、式:
CR
1H=CR
2-C(O)-OR
3
または
CR
1H=CR
2-O-C(O)-R
3
を有するエチレン性不飽和のカルボン酸またはエステル、および、そのシスまたはトランス異性体である、項目24〜26のいずれかに記載の手袋:
式中、
R
1は、水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、-C(O)-OR
4、または-R
5-C(O)-OHであり、ここでR
4は水素、または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、かつR
5は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり;
R
2は、水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、またはカルボキシメチル基であり;
R
3は、水素、1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、または-R
6O-C(O)-CR
7=CR
8であり、ここでR
6は1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、かつR
7およびR
8はそれぞれ独立して水素、または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基である。
28. 前記カルボン酸または前記エステルが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、酢酸ビニル、メチルアクリレート、メタクリレートエステル、エチレンジオールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、氷メタクリル酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目24〜27のいずれかに記載の手袋。
29. 前記カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエンが、該カルボン酸または該エステルを、ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の0.01重量%〜8重量%の量で含有する、項目24〜28のいずれかに記載の手袋。
30. 前記ポリマーが、該ポリマー中に存在するクロロブタジエン単位の10〜60重量%または10〜58重量%の塩素を含む、項目24〜29のいずれかに記載の手袋。
31. 前記架橋剤がイオン性架橋剤および共有結合性架橋剤を含む、項目24〜30のいずれかに記載の手袋。
32. 前記イオン性架橋剤が金属酸化物または金属水酸化物である、項目31に記載の手袋。
33. 前記金属酸化物または前記金属水酸化物が、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化銅、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化マンガン、水酸化銅、水酸化アルミニウム、および水酸化ニッケルからなる群より選択される1つの剤または複数の剤より選択される、項目32に記載の手袋。
34. 前記共有結合性架橋剤が硫黄または硫黄含有加硫剤である、項目31に記載の手袋。
35. 組成物中の金属酸化物または金属水酸化物の架橋剤の量が、1.0〜10.0phr、2.0〜8.0phr、2.5〜10.0phr、5.0〜10.0phr、3.0〜7.0phr、3.0〜6.0phr、4.0〜7.0phr、4.0〜6.0phr、4.0〜5.0phr、2.0〜5.0phr、2.0〜4.0phr、3.0〜4.0phrの範囲内である、項目32または33に記載の手袋。
36. 前記硫黄または硫黄含有加硫剤の量が、0.0〜3.5phr、0.01〜3.5phr、0.01〜3.0phr、0.01〜2.0phr、0.01〜1.5phr、0.01〜1.0phr、または0.01〜0.5phrの範囲内である、項目34に記載の手袋。
37. 前記エラストマーフィルムが、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、スチレンジブロックコポリマー、スチレントリブロックコポリマー、アクリルポリマー、およびそれらの混合物からなる群より選択される第2のエラストマーをさらに含む、項目24〜36のいずれかに記載の手袋。
38. 前記第2のエラストマーが、カルボキシル化エラストマー、非カルボキシル化エラストマー、または、カルボキシル化エラストマーと非カルボキシル化エラストマーの混合物である、項目37に記載の手袋。
39. 前記第2のエラストマーが、前記組成物のポリマー成分の0重量%〜95重量%の量で存在する、項目37または38に記載の手袋。
40. 前記エラストマーフィルムの平均厚が約0.01mm〜約3mmである、項目24〜39のいずれかに記載の手袋。
41. エラストマーフィルム組成物の1〜15枚の層を含み、かつ各層が、別々の浸漬させる工程によって生成される、項目24〜40のいずれかに記載の手袋。
42. (i) 成形具上にエラストマーフィルム形成組成物の層を生成するために、該成形具を項目1〜18のいずれかに記載の組成物に浸漬させる工程、ならびに
(ii) 該エラストマーフィルム形成組成物を乾燥および硬化させる工程
を含む、エラストマーフィルムを製造する方法。
43. 工程(i)の前に、
(a) 前記成形具を凝固剤に浸漬させる工程、続いて
(b) 凝固剤に浸漬させた該成形具を乾燥または部分乾燥させる工程
をさらに含む、項目42に記載の方法。
44. (i) 成形具上にエラストマーフィルム形成組成物の層を生成するために、該成形具を項目1〜18のいずれかに記載の組成物に浸漬させる工程、
(ii) 該エラストマーフィルム形成組成物を乾燥させる工程、ならびに
(v) 積層エラストマーフィルムを乾燥および硬化させる工程
を含む、エラストマーフィルムを製造する方法。
45. (i) 成形具上にエラストマーフィルム形成組成物の層を生成するために、該成形具を項目1〜18のいずれかに記載の組成物に浸漬させる工程、
(ii) 該エラストマーフィルム形成組成物を乾燥させる工程、
(iii) 該成形具上に該エラストマーフィルム形成組成物のさらなる層を生成するために、該成形具を項目1〜18のいずれかに記載の組成物に浸漬させる工程、
(iv) 乾燥させる工程(ii)とさらなる浸漬させる工程(iii)とを任意で繰り返す工程、ならびに
(v) 積層エラストマーフィルムを乾燥および硬化させる工程
を含む、該積層エラストマーフィルムを製造する複数回コーティング方法。
46. 工程(i)の前に、
(a) 前記成形具を凝固剤に浸漬させる工程、続いて
(b) 凝固剤に浸漬させた該成形具を乾燥または部分乾燥させる工程
をさらに含む、項目44または45に記載の方法。
47. 前記乾燥させる工程および前記浸漬させる工程が、2〜15枚の層を有するフィルムを生成するように繰り返される、項目42〜46のいずれかに記載の方法。
48. 前記フィルムが、1〜15枚、2〜6枚、2〜5枚、1〜4枚、2〜3枚、または1〜3枚の層を有する、項目42〜47のいずれかに記載の方法。
49. 前記成形具が手型であり、かつ前記積層エラストマーフィルムが、手袋の形状である、項目42〜48のいずれかに記載の方法。
50. 項目42〜49のいずれかに記載の方法によって生成されたエラストマーフィルム。
51. 手袋の製造における、
カルボン酸グラフト化またはエステルグラフト化ポリクロロブタジエン、および
1つまたは複数の架橋剤
を含むエラストマーフィルム形成組成物の使用。